説明

ガラスパッケージ、パッケージ用ベース部材およびその製造方法

【課題】 ガラス基板を一体加工してキャビティを形成し、そのキャビティの底板部に貫通電極を設けた製造プロセスの簡素化を図るガラスパッケージを提供する。
【解決手段】 ガラスパッケージは、ベースがガラス基板の一方の面から肉厚の一部分に金属ロッド埋設し、他方の面からキャビティ所望の面積部分をサンドブラスト等により切削して作られる。この際に、キャビティ実装品に応じて、側壁部に段差を設けて収容体の配置安定化を図る。また、金属ピンは底板部の裏面側で突出部を所定寸法にカットし、キャビティ内で所定寸法の突起を残して貫通電極として利用する。このような製造方法によるベースは、製造プロセスが短くコスト面でのメリットと寸法の高精度化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は貫通電極付きガラスパッケージに関し、特に、ガラスパッケージに用いるベース部材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶片や発光ダイオードなどの電気素子は、外部環境に影響され難くするために気密パッケージ化される。周知のセラミックパッケージは、アルミナ粉末を主材料とするグリーンシートに金属ペーストを印刷した積層体を焼結加工して電極や配線パターンを形成してパッケージ内外の電気的接続を図っている。通常、パッケージは、電子素子を収容するスペースを形成するベースと、このベースの開口を気密封着するリッドとから構成される。セラミックパッケージ用ベースでは、電気素子にインプット用動作信号を供給したり、アウトプット用出力信号を導出したりするため、多数の印刷配線をしたグリーンシートが準備され、重ね合わせて焼結加工されて多数の端子電極群が形成される。特許文献1は、セラミック用パッケージに発光素子を収容し、封止用樹脂材の流出を防止したLED発光装置を開示し、特許文献2はセラミックパッケージの導出用電極の構造上の弱点を補強するために、内部電極と外部電極の材料上の組合せについて開示する。一方、気密性を有するウエハーレベルパッケージを可能にするガラスにタングステンを貫入させてビアを形成するガラス基板が公表され、配線が短く、効率の良い電気信号の入出力端子群の実現を可能にしている。特許文献3はガラスパッケージを利用した発光デバイスの製造方法を開示し、特許文献4はイメージセンサ全体を小型化するCSP(Chip Size Packaging)のパッケージの製造方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−324150号公報
【特許文献2】特開2000−012728号公報
【特許文献3】特開2010−171381号公報
【特許文献4】特開2007−312012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1および2に示されるセラミックパッケージは、内外の配線や電極間接続において、グリーンシート焼結時の収縮問題が生ずる。また、キャビティの傾斜面や段差形状を製作する際の積層状グリーンシートの焼結加工は、多大の工数と設備を要し、寸法ばらつきを制御するため焼結時の厳しい管理が必要とされるなど作業効率上の欠点があった。この様な問題は、主に電極の金属印刷配線と使用するセラミック材の熱膨張係数(CTE)に依存し、また、プロセス上の高温処理の厳しい管理に依存する。例えば、電極や配線用金属に比べて小さいアルミナの熱膨張係数(CTE=6.5〜8)が原因であり、製造プロセスでの1500℃を超える高温処理が問題である。一方、特許文献1および3は電気素子がLEDである発光装置に関するが、セラミックとガラスを材料として使用する場合のそれぞれのパッケージの製造方法を詳述する。しかし、両者は同様に組立時の電極接合の難しさや製造プロセスの長さ等の問題があった。特に、セラミック基板では、形成された印刷電極や配線体が薄い焼結金属層であることに伴う、高い抵抗Rや寄生インダクタンスLおよび容量Cの大きさと、それらの値の変動が問題であった。例えば、使用材料がアルミナの場合、それ自体の比誘電率の大きさも加わり、電気的特性の悪化を招いていた。また、セラミック焼結時の収縮が最終寸法のばらつきを大きくし、寸法精度上の問題も生起する。
【0005】
特許文献3は、ガラスパッケージに伴うプロセス上の問題として、ガラス基板の表面にリードフレームが埋め込まれるように加熱押圧して、リードフレームをガラス基板に接合する工程を含む。それゆえ、フレーム埋め込みの際に形成するガラス基板の表面の窪みと、この窪み底面から露出したリードフレームへの発光素子の実装工程が問題である。換言すると、パッケージの収容空間を所望する形状にしてその空間の所定位置に発光素子を接合する上でプロセス上の問題となる。この製造方法はガラス基板中にリードフレームを一括処理する上で簡素化されるが、ガラス基板へのリードフレームの埋め込みが難点で作業上の熟練と工数上の問題が伴い、実装上の精度面とコスト面での不利を招く。
【0006】
したがって、本発明の第一の目的は、従来のセラミックパッケージ焼結加工の欠点および従来のガラス基板パッケージの製作上の欠点に鑑み、これらを排除するために提案するものであり、ガラス基板を用いたパッケージ用ベースとして構造の簡素化を図り、製造作業の容易化を可能にする新規かつ改良されたガラスパッケージとそのベース部材を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、キャビティ空間を形成した窪み状のガラス基板からなるベース部材の底板部に貫通電極を有するガラスパッケージを提供することにある。特に、パッケージ用ベース部材を短いプロセスと比較的低い加工温度で処理して、配線電極の電気的性能の向上に加えて寸法精度を向上させる新規かつ改良されたくりぬき空間と貫通電極を有するパッケージ用ベース部材とその製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、キャビティ空間を形成する底板部に複数個の導出用電極体を有し、底板部とこの周辺を取り囲むように底板部と一体の側壁部とを備えた一体加工のガラス基板からなるガラスパッケージに用いるベース部材が提供される。このベース部材は、その製造過程に関し、プロセスの短縮化と処理温度の低温化とが図られて、作業の簡素化と効率化を実現し、同時に電気的性能の良いローコストパッケージを提供する。すなわち、パッケージ用ベース部材は、実質上900℃以下のガラス材の溶融温度で処理されるので、セラミックパッケージの約1500℃の処理温度に比べ大幅に低くできる。ここで、ベース部材のキャビティを構成する側壁部に段差を設け、この段差を利用して収容する回路部品の配置を安定化させるガラスパッケージを提供する。また、収容する回路部品として水晶片を気密封止することで改良された水晶振動子用パッケージを提供する。この場合、キャビティ空間に配置して封止された水晶振動子に対し、ガラスパッケージの底板部の透明性を利用し、水晶振動子をトリミングすることにより周波数調整をする。
【0009】
本発明の別の観点によれば、軟化溶融状態のガラス基板を上下の型治具で挟み、その一方の治具に事前に複数個の金属ロッドを突出配置し、ガラス基板の一方の面から肉厚の一部に金属ロッドを貫入し植設した後の常温状態において、このガラス基板の他方の面から所定部分を切削等により金属ロッドの先端が露呈するまでくりぬき、残された側壁部と底板部により所定空間の窪みによるキャビティを形成する。それにより、周辺の側壁部と一体の底板部とを備え、底板部に金属ロッドが露呈する貫通電極を有するベース部材が提供される。なお、金属ロッドが貫入されるガラス基板の一方面に突出する部分は導出用外部端子となるが、上述するくりぬき加工に先立ち所定位置でカットされる。ここで、底板部に残された金属ロッドは、ガラス基板の両面からの磨き加工により貫通電極として利用される。さらに、キャビティの側壁部はテーパ状に形成されたり、その傾斜面に所定位置で段差を設けたりする加工を施す。くりぬき加工にはサンドブラストやエッチング等の切削加工が適用される。切削により形成した段差はキャビティ空間に収容する電気的素子や部品の正確な配置に役立てられ、実装回路の安定化を図る。また、キャビティの底板部は鏡面研磨等の仕上げ加工により透過性を付与する。この場合に、キャビティ内の収容物品のパッケージ外部からの目視による観察やレーザー等を利用した微細構造の修正に利用できる。
【0010】
本発明のガラスパッケージ用ベース部材は、ガラス材に耐熱ガラス、例えば、SCHOTT社の登録商標テンパックスなどが使用され、貫入電極の植設を容易にする。テンパックス(登録商標)は、最高使用温度490℃の耐熱ガラスであり、急激に加えられる熱に耐える力(耐熱衝撃性)は、一般的なソーダガラスに比べ優れている。また、熱膨張(温度による寸法変化)が小さく、ガラスの熱的処理で優れた耐熱性、耐衝撃性を発揮する。一方、テンパックス(登録商標)を使用することで、高い光透過性と光学的歪みのないガラスとして、ガラスパッケージにすぐれた光学品質を付与する。特に、製造プロセスでガラス基板を軟化溶融させるために、1000℃以下の加熱温度とする。その結果、作業の簡素化やプロセスの短縮により処理コストを安価にすることができる。また、ガラス基板に植設する金属ロッドの熱膨張係数をガラス部材と整合させることで、貫通電極に高度な気密性を付与させると共に、金属ロッドをバルク金属にすることで貫通電極を低抵抗値にし、寄生インダクタンス(L)、容量(C)を小さくして貫通電極の電気的性能の向上に寄与する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガラス基板を一体加工してキャビティを形成し、そのキャビティの底板部に貫通電極を設けた製造プロセスの簡素化を図るガラスパッケージまたはパッケージ用ベース部材が提供されるので、作業の簡素化と電気的性能の向上と共に製造費のローコスト化が図れる。すなわち、一体のガラス基板を切削して所望のキャビティを形成すると共に、このガラス基板に部分的に埋設した金属ロッドを切断およびガラス基板の切削により貫通電極体とするので、製造プロセスが短く作業の容易化が図れる。一方、本発明は金属ロッドにバルク金属を使用するので貫通電極体の抵抗R、インダクタンスL、および容量Cは小さくでき電気的性能の向上に寄与する。貫通電極はロッド状であるため基板内部の気泡残りを防止する。この点で、従来のセラミックパッケージの処理と比べて作業性の簡素化とコスト面の改善及び電気的特性の向上が図られるなど実用的効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施例のガラスパッケージ用ベース部材を示す断面図であり、図1(a)は実施例1でキャビティの底板部に面一の貫通電極を有するベース部材、および図1(b)は変形例でキャビティの底板部に突起を有する貫通電極のベース部材である。
【図2】図1のガラスパッケージ用ベース部材の実施例2のガラスパッケージ用ベース部材を示す断面図である。
【図3】図1の実施例3として、水晶振動子におけるガラスパッケージ用ベース部材の製造方法で、図3の(a)〜(g)はガラスパッケージ用ベース部材の主な製造プロセスにおける断面図、図3の(h)は完成直前の水晶振動子用ガラスパッケージの平面図である。
【図4】同じく図3(a)の製造方法と異なる別の実施例として、実施例4であるガラスパッケージ用ベース部材の主な製造プロセスを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のガラスパッケージは、ベース部材がガラス基板の一方の面から肉厚の一部分に金属ピンまたは金属ロッドが埋設され、他方の面からキャビティ対応の所定範囲の面積部分がサンドブラスト等により切削される。この切削加工は、金属ロッドの貫入・埋設側の反対側のガラス基板表面から実施され、側壁部を残して金属ロッドが露呈するまで切削する。この切削は底板部を残すことで側壁部と一体構成のキャビティ空間を形成する。このキャビティに収容する実装部品に応じて、側壁部に段差を設けて収容物品の配置安定化を図ることがきる。また、金属ロッドは底板部の裏面側で突出部を所定寸法にカットし、キャビティ内で頭部を露呈させてフラット電極または所定寸法突出の突起電極とする。このような製造方法によるベース部材は、製造プロセスが短く作業が簡素化されてコストメリットが得られ、かつ寸法の高精度化が図れる。
【0014】
本発明に関するパッケージ用ベース部材は、図1および図2に示すように、ガラス基板の切削状況に応じて、底板部の貫通電極の構造やキャビティ形状を任意に選定し得る。すなわち、図1(a)に示すように、貫通電極の先端面が底板部と面一にして露呈させたフラット電極とする場合と、図1(b)に示すように、貫通電極の先端を底板部から突出する突起電極とする場合とがある。また、図2に示すように、ガラス基板の周辺を囲繞する側壁部に段差を設け、底板部の電極に突起部を設けた場合がある。この場合、キャビティの収容部品の実装を容易にする。この段差構造の側壁部では、底板部の突起電極を段差と面一にすることで実装部品の取付安定化に役立つ。また、上述する各実施例とも、ガラス基板の切削によるキャビティ内を外部から観察可能に底板部を鏡面研磨して透過性を付与することもできる。鏡面研磨に対し、切削後の底板部と粗面状態のまま残すこともできる。いずれの場合においても、本発明のガラス基板の切削によるキャビティ形成は製造プロセスの短縮を図るもので作業効率の向上により低コストパッケージを実現する。
【0015】
一方、本発明のパッケージ用ベース部材の製造方法は、図3および図4に示すように、異なる実施態様がある。図3は水晶振動子用パッケージの製造方法に適用する場合であり、ガラス基板に金属ロッドを植設後、サンドブラストによる切削工程でキャビティを形成する。切削工程で側壁部に段差を設け、水晶振動子の組立にこの段差を水晶片の載置に利用し、組立安定化を図る、なお、貫通電極に突起部を設けることで接続を容易にして安定構造を得る。変形例2は、図4(a)に示すように、下型の凸部を利用しガラス基板を加熱状態で押圧して、くりぬきによるキャビティを形成する方法である。この場合、上型から金属ロッドを植設して底板部とする。変形例3は変形例2と同様のくりぬき加工でキャビティを形成するが、キャビティの底板部を鏡面研磨してガラスの透明性を図り、パッケージ外部からの収容空間の配置等の監視や調整を可能にする。図4は加工治具の一方(下型)にキャビティ状の凸部を設けており、くりぬきの異なる方法である。従って、プロセス面ではより簡素化されるが加熱加工となり、常温後の精度加工を要することもある。なお、リードカットの方法や底板部の鏡面加工についての異なる変形例にはそれによるメリットが得られる。
【実施例1】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る実施例1について説明する。図1(a)は本発明のガラスパッケージ用ベース部材10であり、側壁部14と底板部16を一体化結合したガラス基板12により構成される。ガラス基板12の底板部16には面一の貫通電極18が設けられている。必要に応じて、底板部16は鏡面研磨により透明に仕上げられ、キャビティ内の監視や調整に役立てられる。なお、キャビティの製作工程によっては粗面状態のままにしてもよく、工程省略により作業の簡素化になる。図1(b)は実施例1の変形例であり、貫通電極18は内面側が面一でなく、底板部16からの伸び出る突起19を有する。この突起19は電気素子の取付に接続点として利用され作業の容易化に役立つ。なお、各図面において、同一部分は同じ符号を用い詳細な説明を省略する。
【実施例2】
【0017】
図2は本発明に係る実施例2のガラスパッケージ用ベース部材20を示し、段差25付き側壁部24と底板部26とを有する一体化のガラス基板22により構成される。ガラス基板22の底板部26には突起29を有する貫通電極28が設けられている。底板部26は、好ましくは、鏡面研磨により透明に仕上げられ、キャビティ内の電気素子の監視や調整を容易にする。この実施例では、段差25と突起29とを同一面にすることで、組立部品の配置や接続に便宜を図り、組立体の安定化に役立てられる。
【実施例3】
【0018】
図3は本発明に係る実施例3の水晶振動子用ガラスパッケージの製造方法を示す。ここで、(a)〜(g)は各プロセスにおける部分断面図、および(h)は、リッド封着前の完成直前の水晶振動子用パッケージの平面図である。なお、各プロセスは多数のベース部材が連結状態で一括処理されており、その内の1個を破断して示し、最終工程後に個別に分離分割される。したがって、別プロセスは単独のベース部分が断面的に示されている。以下、工程順に各プロセスを説明する。プロセス(a)はガラス基板32を挟んでカーボン製治具の上型31と下型33が配置され、下型33には所定数の金属ロッド38が用意されている。プロセス(b)は、加熱により軟化状態のガラス基板32が上下型に挟まれて、その結果、金属ロッド38がガラス基板32に部分的に貫入された状態を示す。ガラス軟化は1000℃以下の温度であるが、ガラス基板32は加熱により軟化状態にされる。使用するガラス基板32は、好ましくは、耐熱ガラスのテンパックス(登録商標)を使用する。一方、使用する金属ロッド38は、例えば、タングステン線材を予備処理により酸化膜を形成し、所定寸法にして下型33の所定位置に配置・保持され、軟化状態のガラス基板32に打ち込まれる。ここで、ガラス−金属の気密封着の主条件として、両者の膨張特性の整合が図られる。プロセス(c)は上型・下型を取り除いた常温状態のガラス基板32と金属ロッド38を示す。プロセス(d)は、ガラス基板32から下方に延びる金属ロッド38の飛び出し部分がカットされ、ガラス基板32に残った金属ロッドがガラス基板中に貫入・植設されて貫通電極となる。プロセス(e)は、ガラス基板32の所定位置が上方の表面側からサンドブラストにより切削され、キャビティ37を形成する。このプロセス(e)の完了により、図1(a)の実施例1に示されるガラスパッケージ用ベース部材10が作製完了する。引き続き、プロセス(f)では、図2の実施例2に示されるベース部材20が製作される。なお、プロセス(g)に示すように、ガラス基板32は、段差35付き側壁部と金属ロッド38の突起付き貫通電極を有する底板部とを備える一体化ガラス基板32により構成されたベース部材となり、このキャビティ37に水晶片50が組み込まれる。ベース部材30では側壁部34の段差35および貫通電極38の突起39を利用して、水晶片が安定に配置され接合され、貫通電極38を経て信号の外部導出が図られる。(h)は水晶片50をキャビティ37に段差35を利用して組み込んだ水晶振動子用パッケージが示される。ここで、段差35と突起39とが同一面にされて配置や接続に便宜が図られるので、組立体は安定状態を維持する。さらに、底板部36は鏡面研磨により透明に仕上げることで、キャビティ内の水晶片50を監視し、トリミングによる周波数調整に利用することができる。
【0019】
図4は本発明に係る実施例3の変形例を示す。以下、図4のプロセス(a)〜(f)は図3のプロセスに対応して示される。この変形例では、上型41に金属ピンが配置されることと、下型43にキャビティ47の窪みを形成させる所定の突出部が設けられたこととが相違する。したがって、この変形例では切削工程を簡素化することができる。なお、多数のベース部材が連結状態で一括処理されて、最終工程で分離分割されるなど、実施例3と類似するプロセスであり、同様なプロセスについては詳細な説明を省略する。この場合、製造方法としての特徴は、プロセス(b)に示すように、先ず、軟化状態のガラス基板42に対して、下型43の突出部によりガラス基板42にキャビティ用の窪みが形成され、次いで、この窪みの薄肉部分の底板部に、金属ロッド48が上型41の上部から押し込んで打ち込まれることにある。したがって、プロセス(c)の金属ロッド48のカッテング後のプロセス(e)は、ガラス基板42のキャビティ用窪み部分を僅かに磨いて金属ピンの頭だしであり、実質的なサンドブラストによる切削を省略できる。このプロセス(e)の完了により、図1(a)の実施例1と同様なガラスパッケージ用ベース部材10が作製完了する。必要に応じて、ガラス基板42を段差45付き側壁部44としたり、突起49付き貫通電極48としたりすることができる。同一面に段差45と突起49を設けることは、電子素子の配置や接続に便宜が図られるので、組立体は安定状態を維持する。また、底板部46を鏡面研磨により透明に仕上げて、キャビティ内の監視やレーザーを利用して内部の微細構造を調整することができる。
【0020】
本発明は貫通電極を設けたガラス基板からなるガラスパッケージ用ベース部材を提供する。本発明の特徴は、製造工程のガラス基板に一方の面から金属ピンを打ち込む貫入工程と、ガラス基板を他方の面から切削する窪み形成工程とにより、底板部と周辺側壁部とを具備するベース部材を製造する方法にある。すなわち、底板部の貫通電極がガラス基板の他方の面からの切削により露呈または露出突起させることでガラスと金属との良好な封着状態を維持させることにある。また、ガラス基板の他方の面からの切削加工は、障害となる金属ロッドもなく容易かつ所望する形状の側壁部を設けることができる。ここで、ガラス基板に窪み部分を形成する切削加工は、軟化状態のガラス基板に凸部を有する型治具の押圧で実施した後にサンドブラストにより高精度の窪み部分に仕上げることもできる。切削加工は、サンドブラストやエッチング等で行うのは勿論であり、その仕上げ方法は、ガラス基板を鏡面研磨してガラス基板を透明化することで、完成後にパッケージ内収容部品に関し、外部からの監視や調整を可能にする。
【符号の説明】
【0021】
10,20・・・ガラスパッケージ用ベース部材、
12,22,32,42・・・ガラス基板、
14,24,34,44・・・側壁部、 16,26,36,46・・・底板部、
18,28,38,48・・・貫通電極(金属ロッド)、
19,29,39,49・・・突起、 25,35,45・・・段差、
31,41・・・上型、 33,43・・・下型、
37,47・・・キャビティ、 50・・・水晶片。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ロッド材を気密封着した貫通電極を有する底板部と、この底板部と一体結合する周辺側壁部とを備えてキャビティ空間を形成したガラス基板であって、前記金属ロッド材はガラス基板の加熱軟化状態で貫入して植設され、前記キャビティはガラス基板の切削または型枠によりくりぬき形成されたことを特徴とするガラスパッケージ用ベース部材。
【請求項2】
前記ガラス基板は耐熱ガラス部材からなり、金属ロッド材は前記耐熱ガラス部材の膨張特性と整合性を有するように選択されたことを特徴とする請求項1に記載のガラスパッケージ用ベース部材。
【請求項3】
軟化溶融状態のガラス基板を上下の型治具で挟み、その一方の治具に事前に複数個の金属ロッドを突出配置し、ガラス基板の一方の面から肉厚の一部に金属ロッドを貫入し植設した後、前記ガラス基板の他方の面から所定部分を切削により金属ロッドの先端が露呈するようくりぬいて側壁部と底板部とが一体結合したキャビティを形成し、前記底板部に前記金属ロッドが露呈した貫通電極を設けたガラスパッケージ用ベース部材。
【請求項4】
前記側壁部は内面に段差を設けて前記キャビティの収容部品の位置決め手段としたことを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載のガラスパッケージ用ベース部材。
【請求項5】
金属ロッド材を気密封着した貫通電極を有する底板部と、この底板部と一体結合する周辺側壁部とを備えてキャビティ空間を形成したガラス基板であって、前記金属ロッド材はガラス基板の加熱軟化状態で貫入して植設され、前記キャビティはガラス基板の切削または型枠によりくりぬき形成されたガラスパッケージ用ベース部材が使用され、前記側壁部は内面に段差を設けて前記キャビティ空間に収容した水晶片の位置決めに利用され、前記底板部は鏡面研磨され、ガラス透明性を利用し前記水晶片のトリミングを可能にしたことを特徴とする水晶振動子用ガラスパッケージ。
【請求項6】
軟化状態のガラス基板を上下の型治具で挟み込み、一方の治具に配置した金属ピンを前記ガラス基板に打ち込み気密封着する貫入工程、前記金属ロッド材の非植設側にキャビティを形成する工程、前記キャビティを切削または押圧により形成する切削工程、前記金属ピンをキャビティ内に頭出または突起部分を形成する電極形成工程を含み、前記キャビティは前記金属ピンの貫通電極が気密封着された底板部とその周辺を囲繞する側壁部とを備えるガラス基板の一体加工により形成したことを特徴とするガラスパッケージ用ベース部材の製造方法。
【請求項7】
前記キャビティの側壁部が所定位置で段差を設けた内面傾斜状に切削加工されたことを特徴とする請求項6に記載のパッケージ用ベース部材の製造方法。
【請求項8】
前記ガラス基板は軟化溶融の加熱温度が1000℃以下の硬質ガラス材からなり、前記金属ロッド材は前記ガラス材の膨張係数と整合する金属部材から選択することを特徴とする請求項6に記載のパッケージ用ベースの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−74649(P2012−74649A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220276(P2010−220276)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(300078431)エヌイーシー ショット コンポーネンツ株式会社 (75)