説明

ガラスフィラー材料およびその製造方法

本発明は、平均粒度0.1〜20μmを有するガラスフィラー材料に関する。本発明はさらに、ガラスフィラー材料を製造する方法に関する。このガラスフィラー材料は、二酸化ケイ素(SiO2)65〜99.95モル%、酸化アルミニウムおよび/または酸化ホウ素(Al23、B23)0〜15モル%、酸化ジルコニウムおよび/または酸化チタニウムおよび/または酸化ハフニウム(ZrO2、TiO2、HfO2)、Y23および/またはSc23および/またはLa23および/またはCeO2および/または他のランタニド酸化物0〜30モル%、アルカリ金属酸化物(Na2O、Li2O、K2O、Rb2O、Cs2O)0.05〜4モル%、アルカリ土類金属酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO)0〜25モル%を含有する。このガラスフィラー材料は、低濃度のアルカリイオンを示し、かつカチオン硬化特性を有する複合材に、かつ歯科用複合材および歯科用修復材に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ガラスフィラー材料に関する。さらに具体的には、本発明は、カチオン硬化特性を有する複合材用および歯科用複合材料用のガラスフィラー材料を開示する。
【背景技術】
【0002】
このガラスフィラー材料は、複合材の硬化特性に影響を及ぼさず、硬化されたプラスチックポリマー(つまり、歯科充填)の機械的性質を低下させず、複合材の貯蔵寿命安定性を低下させない。
【0003】
これは、この材料の粒子が内部領域および外部領域を有するガラスフィラー材料によって達成することができ、その外部領域は、アルカリ金属酸化物をほとんど含有せず、内部領域のアルカリ金属酸化物は外部領域に著しく移動しない。
【0004】
本発明はさらに、複合材の硬化特性に影響を及ぼさず、硬化されたプラスチックポリマーの機械的性質を低下させず、複合材の貯蔵寿命安定性を低下させないガラスフィラー材料を製造する方法に関する。さらに具体的には、本発明は、カチオン硬化特性を有する複合材用、さらに具体的には歯科用複合材用のガラスフィラー材料を製造する方法に関する。
【0005】
「重合性樹脂」という用語は、直前の初期設定(adjacent initialization)による重合を受けるモノマーまたはモノマーの混合物を意味する。重合性樹脂は、モノマーをベースとする、一定量の予備重合オリゴマーおよび/またはポリマーを含有し得る。
【0006】
未硬化材料の特性を高めるために、重合性樹脂はフィラー材料と混合される場合が多い。以下において、この材料は、「複合材」または「複合材料」、つまり歯科用複合材料と呼ばれる。本発明において「プラスチックポリマー」という用語は、モノマーを含有しない、または少量しか含有しない、重合後の硬化材料を指す。適切な硬化後に得られるプラスチックポリマーは、重合性樹脂にフィラーを添加することによって向上した特性を示す。
【0007】
硬化性複合材に用いられるガラスフィラー材料が多くの文献に開示されている。
【0008】
(特許文献1)には、以下のとおり(重量%で):シリカ50〜75、ジルコニア5〜30、酸化リチウム0〜5、酸化ナトリウム0〜25、酸化カリウム0〜25およびアルカリ金属酸化物0〜25(酸化物に対する重量)を含有する、優れたX線吸収特性を有するバリウム非含有歯科用ガラスが開示されている。
【0009】
(特許文献2)には、以下のとおり(重量%で):シリカ45〜65、酸化ホウ素5〜20、酸化アルミニウム5〜20、酸化カルシウム0〜10、酸化ストロンチウム15〜35、フッ素0〜2を含有する、優れたX線吸収特性を有するバリウム非含有歯科用ガラスが開示されている。
【0010】
(特許文献3)は、改善された機械的性質および加水分解安定性を有する歯科用修復材組成物に関する。この文献に開示されているフィラーは、SiO2、BaO、B23およびAl23の共融組成物である。したがって、それは、規定の比較的高い量のBaO、B23およびAl23を含有する。
【0011】
(特許文献4)は、歯科用複合材および歯科用修復物において使用されるフィラー材料であって、繊維状材料と、表面改質粒子の1つまたは複数の形態と、を含有するフィラー材料に関する。表面改質粒子は繊維状材料に結合し、繊維状材料の表面積を増大し、繊維状材料の結合特性を向上させ、繊維状材料が歯科用複合材中の樹脂マトリックスにより良く結合することを可能にする。
【0012】
(特許文献5)には、ガラス繊維フィラーを含有する歯科用複合材料を形成するための組成物を製造する方法が記載されている。これらの繊維は、実質的にガラス繊維の軟化点未満の温度でガラス繊維を加熱することによって密度が高められ、脆化されたガラス繊維を粉砕することによって得られる。
【0013】
(特許文献6)は、SiO2を50〜85重量%、Al23を2〜18重量%、フラックスを2〜23重量%含有する磁器組成物に関する。フラックスは、K2O、Na2O、Li2O、CaO、P25、F、BaO、B23およびその混合物からなる群から選択される。
【0014】
(特許文献7)には、以下の:二酸化ケイ素20〜45重量%、酸化アルミニウム5〜35重量%、酸化亜鉛2〜20重量%、酸化ジルコニウム2〜10重量%、フッ素2〜10重量%および酸化ナトリウム1〜10重量%を含有するX線不透過性バリウム非含有歯科用ガラスが開示されている。
【0015】
(特許文献8)には、重合性モノマー、エポキシド、有機変性ポリシロキサン、液晶モノマー、オキシエタン(oxethane)、バインダーとしてのスピロ−オルトエステルまたはカーボネート、熱、冷または光重合用の触媒、無機フィラー(A)20〜70重量%、他のフィラー(B)0〜60重量%および従来の添加剤0〜20重量%をベースとする歯科材料が記載されている。無機フィラー(A)は、任意に重合状態のバインダーで充填されたミクロおよび/またはメソ孔を有する多孔質ガラスセラミックからなる。
【0016】
(特許文献9)には、フィラー材料を含む重合性歯科材料が記載されている。そのフィラー材料は、溶融法を使用することによって製造され、それが屈折率nD=1.49〜1.54を有するように、それが温度範囲20〜25℃で保存される少なくとも9ヶ月の期間後に、重合性歯科材料の粘度が、重合性歯科材料が製造されて24時間後に測定された初期値の±50%の値を有するように、かつ重合が一旦開始されたら、歯科材料により発生される最大熱流束の量が少なくとも0.8mW/mgに等しく、この最大熱流束が60秒以下の時間内に得られるタイプの反応性を有するように選択される。
【0017】
(特許文献10)は、少なくとも0.5μmの平均粒度を有するフルオロケイ酸カルシウムアルミニウムガラス粉末に関し、その粉末粒子は、その表面でカルシウムが欠乏しているため、粉末粒子表面での原子比Si/Caをコア領域での原子非Si/Caで割った商は少なくとも2.0である。この文献にはさらに、これらのイオンを粒子表面から約50nmの深さまで除去する方法が記載されている。このフルオロケイ酸カルシウムアルミニウムガラス粉末は、ガラスイオノマーセメントに使用される。
【0018】
ガラス基材の製造方法が、(特許文献11)に開示されている。1つの工程において、シリカソーダ石灰ガラス基材の表面が、十分な第1時間および第1温度にてイオン交換処理で第1の深さに処理され、強化表面を有するイオン交換処理ガラスが得られる。以下の工程において、イオン交換処理ガラスの表面が、十分な第2時間および第2温度で脱アルカリ化処理で第2の深さに処理され、ガラス表面からアルカリイオンが除去される。第2深さは、第1深さよりも浅い。この開示内容において、脱アルカリ化の方法は、1μm未満の深さまでイオンを除去するのに有用なだけである。それにはさらに、100℃を超える温度が必要である。脱アルカリ化は、AlCl3または(NH42SO4で行われる。これらの試薬で処理されたフィラーは、短い貯蔵時間などのフィラー添加複合材の他の問題が生じることから、本明細書に記載の複合材には使用できない。脱アルカリ化は、ディスクなどの硬質表面についてのみ記述されており、粉末粒子については記述されていない。
【0019】
脱アルカリ化ガラスの他の製造方法が、(特許文献12)に開示されている。脱アルカリ化媒体の酸性ガスとガラスを接触させる。鏡などのコートガラス部品を有する製品に特に有用である。
【0020】
ガラスフィラー材料を使用して、プラスチックポリマーの機械的性質が高められる。重合性樹脂にガラスフィラー材料を添加することによって、得られた複合材料は、成形可能であり、かつ取り扱い器具に粘着しないことから、優れた取扱適性を示す。これらのフィラー添加複合材料の硬化プラスチックポリマーはさらに、硬化プラスチックポリマーに関して、向上した強度、弾性率、硬度および耐摩耗性を示す。かかる複合材は、ハウジングを作製するために電子技術、精密加工技術において、家庭用途において、および関節インプラントまたは歯科材料として医療用途において使用される。
【0021】
歯科用複合材料に関しては、フィラーは、X線不透過性、誘電特性、生体適合性および特定の屈折率などの更なる条件を満たさなければならない。可視光において望ましい半透明性を有する歯科材料を得るために、この屈折率は、重合性樹脂の屈折率に近いほうがよい。
【0022】
重合性樹脂組成物ではさらに、フィラーの特定の化学的性質が要求される。これは、フィラーが重合反応に影響を及ぼさず、開始剤系と相互に作用しないほうがよいことを意味する。例えば、樹脂のベース部分を樹脂の開始剤含有部分(二成分系)と混合することによって、または感光性開始剤系を含有する樹脂に光を照射することによって、異なる方法で重合が開始される。現況技術で使用されている開始剤系は、ラジカルで、またはイオンで、好ましくはカチオンで反応する。したがって、それらは、水、塩基性物質または酸の存在に影響を受けやすい。
【0023】
主に使用されているフィラー材料は、石英またはガラスである。化学組成が定義されているため、石英材料は、屈折率nD=1.55を有する。異なる屈折率を有する多くの重合性樹脂については、この屈折率を有するフィラーは、半透明の複合材が利用可能ではないことから、それほど適していない。ガラスフィラーに関しては、フィラーの適切な屈折率は、ガラスの隣接組成物によって調節可能である。
【0024】
ガラスフィラー材料を得るために、SiO2、B23、P25の主要成分を、第IおよびII属の元素、遷移元素またはランタニドの他の酸化物、水酸化物、またはカーボネートと共に混合する。温度1250〜1650℃にて、混合物をガラスに溶融する。溶融温度ならびに溶融ガラスの粘度を著しく低減する、主族Iの元素(Li、Na、K、Rb、Cs)を有する成分が重要である。したがって、現況技術から公知のガラスフィラー材料については、これらの元素の量は通常、5〜40モル%の範囲である。
【0025】
23またはP25などの異なる酸性成分もまた、ガラス混合物の溶融温度を低下させることがさらに知られている。
【0026】
酸性、両性または塩基性酸化物の存在は、これらのガラスフィラー材料が要求される化学的性質を持たないため、フィラーにとって不利である。重合性樹脂のフィラーとして使用される場合、酸性、両性または塩基性酸化物は、モノマーと、または開始剤系と相互作用する。複合材において前記濃度で主族Iの元素を有するガラスフィラー材料を使用すると、硬化プラスチックポリマーの機械的性質が低下する。現況技術において開示されている一定量の酸性または両性酸化物によって、複合材の貯蔵時間が短くなる。貯蔵時間は、カチオン硬化性モノマーを有する複合材に関して特に低下する。
【0027】
主族Iのこれらの元素または酸性成分を含有しないガラス材料が望まれる場合には、溶融プロセスは、非常に高温で行わなければならない。この高温溶融法は、時間がかかり、非常にコストがかかる。得られたガラス材料は結晶化する傾向があり、それは歯科材料で使用されるフィラーには許容されない。
【0028】
【特許文献1】EP 716 049 A2号明細書
【特許文献2】EP 634 373号明細書
【特許文献3】EP 0 102 199号明細書
【特許文献4】米国特許第6,270,562 B1号明細書
【特許文献5】国際公開第99/20225号パンフレット
【特許文献6】米国特許第6,022,819号明細書
【特許文献7】EP 997 132 A1号明細書
【特許文献8】DE 198 46 556号明細書
【特許文献9】国際公開第02/055028 A2号パンフレット
【特許文献10】EP 023 013 B1号明細書
【特許文献11】EP 819 103号明細書
【特許文献12】DE 37 41 031 A1号明細書
【特許文献13】米国特許第4,376,835号明細書
【特許文献14】EP−A2−0 189 540号明細書
【特許文献15】EP−B−0 238 025号明細書
【特許文献16】米国特許第6,306,926 B1号明細書
【特許文献17】国際公開第98/47046号パンフレット
【特許文献18】国際公開第01/51540 A2号パンフレット
【特許文献19】国際公開第98/22521号パンフレット
【非特許文献1】R.S.スウィングル(Swingle)IIおよびW.M.リッグス(Riggs)、「Critical review in Analytical Chemistry」(第5巻、第3号、267−321頁1975年)
【非特許文献2】K.レブセン(Levsen)、「Chemie unserer Zeit」(10th annual、1976年、no.2,48−53頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
したがって、本発明の目的は、上述の問題のうち1つまたは複数を防ぐことである。
【0030】
更なる目的は、複合材料用の新規なガラスフィラー材料を提供すること、および改善された特性を有するガラスフィラー材料を提供することである。他の更なる目的は、適切な温度でガラスフィラー材料を溶融することを可能にし、それと同時に、優れた重合特性および硬化プラスチックポリマーの優れた機械的性質を有する複合材料を可能にする、一定濃度のアルカリ金属酸化物を有するガラスフィラー材料を提供することである。
【0031】
更なる目的は、かかるガラスフィラー材料を製造する方法を提供することである。他の更なる目的は、これらのガラスフィラー材料を含有する歯科用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
1つまたは複数の目的は、以下に記載のようにガラスフィラー材料を提供することによって達成することができる。
【0033】
本発明に従って、ガラスフィラー材料は、
a)二酸化ケイ素(SiO2)65〜99.95モル%、
b)酸化アルミニウムおよび/または酸化ホウ素(Al23、B23)0〜15モル%、
c)酸化ジルコニウムおよび/または酸化チタニウムおよび/または酸化ハフニウム(ZrO2、TiO2、HfO2)、Y23および/またはSc23および/またはLa23および/またはCeO2および/または他のランタニド酸化物0〜30モル%、
d)アルカリ金属酸化物(Na2O、Li2O、K2O、Rb2O、Cs2O)0.05〜4モル%、
e)アルカリ土類金属酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO)0〜25モル%
を含有する。
【0034】
好ましくは、ガラスフィラー材料は、
a)二酸化ケイ素(SiO2)75〜96.95モル%、
b)酸化アルミニウムおよび/または酸化ホウ素(Al23、B23)0〜10モル%、
c)酸化ジルコニウムおよび/または酸化チタニウムおよび/または酸化ハフニウム(ZrO2、TiO2、HfO2)、Y23および/またはSc23および/またはLa23および/またはCeO2および/または他のランタニド酸化物3〜30モル%、
d)アルカリ金属酸化物(Na2O、Li2O、K2O、Rb2O、Cs2O)0.05〜3モル%、
e)アルカリ土類金属酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO)0〜15モル%、
を含有する。
【0035】
他の好ましい実施形態では、ガラスフィラー材料は、
a)二酸化ケイ素(SiO2)75〜96.95モル%、
b)酸化アルミニウムおよび/または酸化ホウ素(Al23、B23)0〜5モル%、
c)酸化ジルコニウムおよび/または酸化チタニウムおよび/または酸化ハフニウム(ZrO2、TiO2、HfO2)、Y23および/またはSc23および/またはLa23および/またはCeO2および/または他のランタニド酸化物3〜30モル%、
d)アルカリ金属酸化物(Na2O、Li2O、K2O、Rb2O、Cs2O)0.05〜2モル%、
e)アルカリ土類金属酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO)0〜5モル%、
を含有する。
【0036】
本発明のガラスフィラー材料の粒子は、内部領域および1.5μmまでの外部領域を有し、内部領域のアルカリイオンの平均濃度に対して外部領域のアルカリイオンの平均濃度は10%以下であり、内部領域のアルカリイオンは、外部領域に著しく移動しない。
【0037】
本発明のガラスフィラー材料の粒子の内部または外部領域におけるアルカリイオンの濃度は主に、勾配になる。通常、アルカリイオンの濃度は、粒子の表面からその中央へと増加する。したがって、本明細書に記載されているアルカリイオンの平均濃度は、勾配にかかわりなく、内部または外部領域全体に存在するアルカリイオンの平均濃度を意味する。
【0038】
アルカリイオンの移動が本発明のガラスフィラー材料によって避けられるため、酸性、両性または塩基性酸化物を有するガラスフィラー材料を、これらの酸化物を含有しないガラスフィラー材料と等しい方法で使用することができる。
【0039】
特に歯科用複合材、詳細には、カチオン硬化性歯科用複合材に対しては、これらの酸化物を放出しないフィラーが、高い貯蔵寿命安定性が得られるため有用である。本発明のガラスフィラー材料は、重合性樹脂の重合反応に影響を及ぼさず、かかる歯科用複合材の開始剤系と相互作用しない。
【0040】
ガラスフィラー粒子は、平均粒度0.1〜20μmを有し、好ましくは平均粒度0.5〜3μmであり、さらに好ましくは0.5〜1μmである。これらの好ましい粒度内で、本発明の粒子は、内部領域および外部領域を有し、外部領域は1.5μmまでである。一部の場合には、外部領域の厚さは、約2μm以上でさえあり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明の意図は、粒子の層深さに対するアルカリイオン濃度またはアルカリ酸化物濃度のプロファイルによって、粒子の内部領域を外部領域と区別することである。
【0042】
このプロファイルは、適切な方法によって、粒子表面のアルカリ濃度を分析することにより得ることができる。本発明に使用される方法は、光電子分光法(ESCA)である。この分析方法は、(非特許文献1)ならびに(非特許文献2)に記述されている。
【0043】
粒子のプロファイルは、粒子の表面を示す0nmで開始するx軸上の粒子の層の深さ[nm]に対して、y軸上のNa+または他のアルカリイオンの濃度[モル%]を示す。通常、プロファイルは、粒子の半径に相当する、またはこの半径を下回る深さに応じて検出される。それは通常、粒子が外部領域から内部領域に通過する際に、アルカリイオン濃度の著しい増加を有する。層深さに対する濃度の一次導関数(first derivation)(f’=d(濃度)/d(深さ))の最大値での層深さが、外部領域の厚さを表す。最大値は、二次導関数(second derivation)が深さの同じ値で0となること(f’’=0)を特徴とする。
【0044】
外部領域約850nmおよび直径4μm以上を有する粒子の一般的なプロファイルを図1に示す。
【0045】

【0046】
粒子の外部領域の深さは好ましくは、非常に大きな粒子でさえ約1.5μmである。どのアルカリイオンがガラスフィラー材料中に存在するかに応じて、それより大きい場合もある。
【0047】
3μmより小さい直径を有するこれらの粒子の場合には、粒子のほぼ全体が、外部領域からなり、おそらく、内部領域は、ESCAによって検出不可能である。
【0048】
本発明による粒子に関しては、内部領域のアルカリイオンの平均濃度に対する外部領域のアルカリイオンの平均濃度は10%以下であり、内部領域のアルカリイオンは外部領域に著しく移動しない。粒子のアルカリ金属酸化物の濃度が、酸化物またはカチオンで計算されるかどうかは、本発明において問題ではない。それにもかかわらず、フィラー材料における移動プロセスでは、酸化物のイオン部分のみが、検出可能な移動にさらされるため、カチオンのみが対象となることは極めて明白である。
【0049】
アルカリイオンが「著しく」移動しないという限度は、特にこれらの動きが非常に限定されており、小さい場合に、イオンの動きを完全に無視することが可能ではないという事実に基づく。しかしながら、ほとんど移動が起こらないことが本発明の重要な特徴である。これは、例えば、温度25℃で9ヶ月間、フィラー材料を貯蔵した期間後に、内部領域のアルカリイオンのわずか0.5%が移動することを意味する。アルカリイオンの0.1%のみがこれらの貯蔵条件下にて外部領域に移動することが最も好ましい。
【0050】
特に、アルカリイオンは、乾燥プロセスによって粒子中に固定されることが本発明の一部である。乾燥プロセスは、以下にさらに詳細に記述される。
【0051】
それによって優れた機械的性質を有する複合材および適切な貯蔵が得られる、ガラスフィラー材料を提供するために、フィラー材料は、0.05〜2モル%の量のアルカリ金属酸化物を有することが好ましい。最も好ましくは、フィラー材料中のアルカリ金属酸化物の濃度は、1モル%を超えない。アルカリ金属酸化物の請求される量は、粒子の内部および外部領域の異なる濃度にかかわりなく、粒子の総量である。
【0052】
ガラスフィラー材料の最大粒度は100μmである。最大粒度5μmがさらに好ましい。歯科セメントのフィラーとしてガラスフィラー材料が使用される場合には、最大粒度は25μm、好ましくは20μmである。硬化プラスチックポリマーの優れた機械的性質を達成するためには、粒度の統計分布を狭くすべきではない。この適切な分布は、公知の微粉砕(milling)プロセスおよび粗粒子部分の分離によって利用可能である。
【0053】
本発明のフィラー材料は、屈折率(nD)1.49〜1.55を有する。その屈折率は、重合性樹脂の屈折率に近似するように選択される。
【0054】
本発明のガラスフィラー材料は、歯科修復分野において複合材配合物中で、特に充填、接着、歯科セメント、小窩裂溝封鎖材、窩洞裏装材、コア作製に使用される。
【0055】
さらに、フィラーは、暫間クラウンおよびブリッジ、根管充填のための材料、インレー、オンレー、クラウン、ブリッジなどの歯科補綴材料および義歯材料に使用することができる。
【0056】
重合性材料におけるその使用、特にカチオン硬化特性を有する複合材におけるその使用が最も好ましい。
【0057】
それらはさらに、ガラスイオノマーセメント、コンポマーなどの他の歯科材料、クラウンまたはブリッジ、セラミックスのブレンド材(blending material)に有用である。
【0058】
記載のガラスフィラー材料は以下の方法によって利用可能である。
a)SiO254〜91モル%、Al23および/またはB230〜13.6モル%、ZrO2および/またはTiO2および/またはHfO2および/またはY23および/またはSc23および/またはLa23および/またはCe23および/または他のランタニド酸化物0〜27.3モル%、アルカリ金属酸化物9〜20モル%、アルカリ土類金属酸化物0〜22.7モル%の組成物を温度1200〜1800℃で少なくとも30分間溶融する工程、
b)冷水中にまたは金属ローラー上に移すことによって、溶融ガラスを粉砕する工程、
c)b)によって得られた粒状ガラスを平均粒度d500.1〜20μmに微粉砕する工程、
d)過剰量の脱アルカリ化剤でガラス粉末を脱アルカリ化する工程、
e)脱アルカリ化剤を除去し、濾液が中性に反応するまで、ガラス粉末を極性溶媒で洗浄する工程、
f)温度200〜1100℃で少なくとも30分間、ガラス粉末を乾燥させる工程。
【0059】
最良の溶融温度は、様々な成分の量に依存する。特に、Al23、B23およびアルカリ金属酸化物は、混合物の溶融温度を下げるのに役立つ。溶融温度は、好ましくは1400〜1700℃、さらに好ましくは1450〜1550℃である。
【0060】
溶融ガラスは粉砕される。これは、冷水中にまたは金属ローラー上にそれを移すことによって、行うことができる。同時に、溶融されたガラスが冷却される。全溶融および粉砕手順が、非連続的または連続プロセスで行われる。可能な溶融るつぼは、白金るつぼである。
【0061】
溶融物を粉砕した後、得られた粒状ガラスを平均粒度d500.1〜20μmに微粉砕する。粉砕ガラスを粒度約300μmに予め微粉砕するために、メノウディスクミルを使用することができる。平均サイズ300μm以下の粒子をd50<20μmの範囲に微細に粉砕するための好ましい微粉砕方法はボールミルである。これらのミルにおいて、好ましいボールは、直径0.8mmのイットリウム安定化ZrO2ボールである。これらのボールミルのミリング容器は、Al23でコーティングすることができる。
【0062】
脱アルカリ化剤は、アルカリイオンを溶解することができる酸性組成物であるべきである。脱アルカリ化剤の例は、HCl、HJ、HBr、H2SO4、H3PO4、HNO3、HClO4、CH3COOH、COOH−COOH、H−COOH、クエン酸、酒石酸またはポリカルボン酸などの無機酸または有機酸である。これらの酸は、水中で濃度10〜30%で使用される。好ましい例は、10%CH3COOH、10%HCOOH、30%HClまたは15%HNO3である。記載の酸の混合物も使用することができる。脱アルカリ化工程は、温度50〜200℃で行われる。100〜120℃の温度が最も好ましい。脱アルカリ化剤は、過剰量で使用される。脱アルカリ化剤と、脱アルカリ化されるガラス粉末とのこの余剰比(surplus ratio)は本発明にとって重要である。特に、それは少なくとも1:5〜1:1000の比である。
【0063】
ガラス粉末と脱アルカリ化剤との比は、1:1〜1:1000。好ましくは1:10、さらに好ましくは1:20であることは、本発明の特徴である。
【0064】
驚くべきことに、この脱アルカリ化工程で、1.5μmまでの外部領域を有するガラスフィラー材料が得られ、この外部領域はアルカリイオンをほとんど含有しない。当技術分野で知られている洗浄方法では、粒子表面上の非常に小さな層においてCa++(特許文献13)またはBa++またはSr++(特許文献3)などの特定のイオンの枯渇が起こるだけである。枯渇した表面は、約50nmの層厚に制限される。したがって、1.5μmまでの非常に広い外部領域がアルカリイオンをほとんど含有しないことから、本発明のプロセスは利点を有する。
【0065】
内部領域のアルカリが外部領域に著しく移動しないことは、さらに期待されない。異なる濃度間のバランスの原理では、濃度が高い領域から濃度が低い領域への移動が起こると推定されるだろう。このことにもかかわらず、2つの領域間で著しい移動は起こらない。
【0066】
脱アルカリ化されたガラス粉末を洗浄する極性溶媒は、水、または水と他の極性溶媒、好ましくはエタノールもしくはアセトンとの混合物からなる。洗浄工程は、極性溶媒に応じて、異なる温度で行われる。好ましくは、室温で行われる。
【0067】
ガラス粉末の乾燥は、温度200〜1100℃で少なくとも0.5時間行われる。粒子の焼結を防ぐために、ガラス組成物の焼結温度よりも明確に低い温度でなければならない。この温度は、ガラスの異なる組成物に対して様々である。ガラス組成物の大部分で500〜1000℃の温度が有用であり、800〜1000℃の温度が好ましい。
【0068】
乾燥後、篩い分けプロセスを加えて、粒子の粗い部分を除去することもできる。例えば、200μmメッシュスクリーンが使用される。この篩い分け工程は必須ではない。
【0069】
記載の方法によって得られる粒子は、平均粒度d500.1〜20μmを有する。好ましくは、それらは、平均粒度d500.5〜3μm、さらに好ましくは0.5〜1μmを有する。
【0070】
これらのガラスフィラー材料の中で、
a)1種または複数種のカチオンおよび/またはラジカル硬化性モノマー3〜80重量%、
b)本発明のガラスフィラー材料3〜90重量%、
c)1種または複数種の放射線不透過性フィラー0〜90重量%、
d)開始剤、遅延剤および/または促進剤0.01〜25重量%、
e)助剤0〜25重量%、
を含有する重合性歯科材料が利用可能である。
【0071】
硬化性モノマーは、例えば、エチレン不飽和モノマーの群から、例えばメタクリレートまたはアクリレート樹脂から選択され、エポキシ、オキセタン、ビニルエーテルおよびスピロ−オルトカーボネート樹脂、およびその組み合わせから選択することが好ましい。好ましくは、カチオン重合性モノマーは、エポキシ樹脂、特にケイ素含有エポキシ樹脂、またはケイ素含有エポキシ樹脂と、ケイ素を含有しないエポキシ樹脂とのブレンドを含む。
【0072】
放射線不透過性配合物に適しているフィラーは、(特許文献14)、(特許文献15)および(特許文献16)に記載されている。
【0073】
開始剤として、ヨードニウム塩および可視光増感剤、任意に促進剤を含む系が可能である。ヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム塩、例えばジアリールヨードニウムヘキサフルオロリン酸塩、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、4−オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、4−(2−ヒドロキシテトラジルエコキシフェニル(hydroxytetradylecoxyphenyl)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩、4−(1−メチルエチル)フェニル4−メチルフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩、およびその組み合わせであることができる。
【0074】
可視光増感剤は、ケトン、クマリン染料、キサンテン染料、フルオロン染料、フルオレセイン染料アミノケトン染料、p−置換アミノスチリルケトン化合物、およびその組み合わせから選択される。さらに好ましくは、可視光増感剤は、α−ジケトンであり;カンファーキノンが特に好ましい。
【0075】
促進剤は、多環式芳香族化合物の群から選択される。
【0076】
本発明のガラスフィラー材料を含有できる重合性歯科材料は、例えば、この開示内容に参照により組み込まれる、(特許文献17)、(特許文献18)、(特許文献19)および(特許文献9)に記載されている。複合材としてカチオン硬化性モノマーを含有する重合性材料が最も好ましい。
【0077】
記載の方法によって得られる本発明のガラスフィラー材料は、歯科分野において上記のように使用される。歯科修復分野において、それは、好ましくは複合材配合物に、特に充填、接着、歯科セメント、小窩裂溝封鎖材、窩洞裏装材、コア作製に使用される。重合性材料におけるその使用、特にカチオン硬化特性を有する複合材におけるその使用が最も好ましい。
【実施例】
【0078】
すべての実施例に関して、相当する元素の酸化物、カーボネートまたは水酸化物などのガラス溶融に使用される従来の原料が使用される。溶融後にそれらが生じる通り、これらの元素の酸化物として計算された溶融ガラス混合物の組成を以下の表1に示す(すべての酸化物がモル%で示され、各実施例に対して150.0gまでの量である)。
【0079】
【表1】

【0080】
実施例1〜10のそれぞれに関して、得られるガラス溶融物において上記のモル濃度組成物150gが得られる量および比の酸化物、カーボネートおよび/または水酸化物などの原料が共に混合される。各実施例の混合物を400ml白金るつぼ(PT10Rh)中で温度1500〜1640℃で溶融する。実験室規模での本出願では、非連続的プロセスが用いられる。多量の材料の場合には、連続プロセスがより有用である。1〜2時間の溶融時間の後、蒸留水10Lを有するステンレス鋼容器中に溶融ガラスを注ぐことによって、急冷する。
【0081】
第1工程において、各実施例のガラス材料をメノウディスクミルで粒度d50<300μmの粉末に微粉砕する。第2工程において、予め粉砕された粉末をボールミルで微細に粉砕する。したがって、予め粉砕された粉末150g、イソプロピルアルコール200mlおよびZrO2で製造されたイットリウム安定化ボール1100gを容積1Lの容器中に入れる。そのボールは直径0.8mmを有する。容器は、Al23でコーティングされている。微粉砕工程は、粉末の平均直径d50が0.6〜1μmになるまで行う。
【0082】
微粉砕後に、実施例1〜3の粉末を15%HNO3で処理し、実施例4の粉末を10%CH3COOHで処理し、実施例5〜8の粉末を10%CHOOHで処理し、実施例9および10の粉末を30%HClで処理する。温度100〜120℃にて、還流冷却器において16時間加熱および攪拌しながら、すべての実施例を上記の酸で脱アルカリ化する。すべての実施例において粉末と液体との比は1:15である。
【0083】
各粉末の脱アルカリ化後に、脱アルカリ化剤を除去する。0.4μm PTFE(テフロン(Teflon)(登録商標))膜を含有するガラス濾板を備えた加圧濾過漏斗において酸粉末混合物を濾過する。150gの量の各粉末を洗浄するために、10Lの量の蒸留水を使用する。
【0084】
次いで、各粉末をAl23るつぼに入れ、実施例4の粉末を920℃で乾燥させることを除いては、循環オーブン内で温度600℃にて乾燥させる。
【0085】
乾燥粉末を200μmメッシュスクリーンを通して篩い分けする。
【0086】
以下の表2は、記載のプロセス後の実施例1〜10のガラスフィラー材料の組成(モル%)を示す。分析は、ICPによって行う(ドイツのフラウンホーファー研究機構(Fraunhofer Gesellschaft))。
【0087】
【表2】

【0088】
表3に、ガラスフィラー材料の物理的性質を示す。屈折率は、浸漬法によって定義される(Infracor Hanau)。ガラスフィラー材料のpH値は、脱アルカリ化工程前および後に測定され、塩基性酸化物が外部領域から外に移動する程度を示す。したがって、マグネティックスターラーを使用して、粉末1gを蒸留水100mL中に分散する。一定の値が表れた後に、H+電極でpH値が得られる。X線不透過度を測定するために、ガラスフィラー材料を含有する複合材料を製造する。そこで、光を排除して
1,3,5,7−テトラキス(2,1−エタンジイル−3,4−エポキシシクロヘキシル)−1,3,5,7−テトラメチル−シクロテトラシロキサン30g、
トリルクミルヨードニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート1.8g、
2−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート0.2g、
カンファーキノン0.5g、
を共に混合する。次いで、実施例1〜10のガラスフィラー材料72gをモノマー組成物中に混練する。得られた複合材を、Elipar Freelight(登録商標)で40秒間光照射することによって硬化された材料の円形試験小板(直径1.5cm、厚さ1.5mm)にする。得られた硬化プラスチックポリマー小板をISO4049に従って測定する。
【0089】
【表3】

【0090】
実施例1〜10のすべてのガラスフィラー材料が、1.47〜1.54の屈折率を示し、それは、一般的な重合性樹脂の大部分で半透明硬化プラスチックポリマーを得る範囲内である。すべてのガラスフィラーが、複合材料中にそれを組み込んだ後に、十分なX線不透過度を示す。
【0091】
貯蔵前および後(9ヶ月、25℃)の、粒子の外部領域(深さ約2μmまでの表面層)におけるアルカリイオン(Li+、Na+およびK+)の平均モル濃度をESCAによって調べた。粒子の内部領域(深さ3μm以上のより深い層)に関して、同じ調査を行った。
【0092】
ESCAを用いて、粒子の特定の深さ(nm)におけるアルカリイオン濃度を示す濃度プロファイルをモニターした。このプロファイルの範囲外で、内部領域と外部領域との間の境界は容易に定義された。各領域に関して、プロファイルを積分することによって、アルカリイオンの平均モル濃度を計算した。
【0093】
異なる領域におけるアルカリイオン(Na++Li++K+)の平均濃度[モル%]を以下の表4に示す。
【0094】
【表4】

【0095】
驚くべきことに、貯蔵後にアルカリイオンの検出可能な移動が起こらないことがデーターから示されている。さらに、本発明による粒子に関して、内部領域のアルカリイオンの平均濃度に対して外部領域のアルカリイオンの平均濃度は10%以下であることが示されている。現況技術に鑑みて、ガラスフィラー材料を製造するこの方法によって、粒子の外部領域が1.5μmまでの深さを有し得ることは期待されなかった。
【0096】
本発明によるフィラーを使用して製造された複合材料は、優れた取扱適性を有し、これらの複合材から製造された硬化プラスチックポリマーは、強度、硬度、弾性率および耐摩耗性などの非常に優れた機械的性質を示す。さらに、それらは、向上した貯蔵寿命を有し、完全に重合する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)二酸化ケイ素(SiO2)65〜99.95モル%、
b)酸化アルミニウムおよび/または酸化ホウ素(Al23、B23)0〜15モル%、
c)酸化ジルコニウムおよび/または酸化チタニウムおよび/または酸化ハフニウム(ZrO2、TiO2、HfO2)、Y23および/またはSc23および/またはLa23および/またはCeO2および/または他のランタニド酸化物0〜30モル%、
d)アルカリ金属酸化物(Na2O、Li2O、K2O、Rb2O、Cs2O)0.05〜4モル%、
e)アルカリ土類金属酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO)0〜25モル%、
を含有する、歯科用複合材および歯科用修復物において使用されるガラスフィラー材料であって、
前記ガラスフィラー粒子は、平均粒度0.1〜20μmを有し、かつこれらの粒子は、内部領域および1.5μmまでの外部領域を有し、かつ内部領域のアルカリイオンの平均濃度に対する外部領域のアルカリイオンの平均濃度が10%以下であり、内部領域のアルカリイオンが外部領域に著しく移動しない、ガラスフィラー材料。
【請求項2】
f)二酸化ケイ素(SiO2)75〜96.95モル%、
g)酸化アルミニウムおよび/または酸化ホウ素(Al23、B23)0〜10モル%、
h)酸化ジルコニウムおよび/または酸化チタニウムおよび/または酸化ハフニウム(ZrO2、TiO2、HfO2)、Y23および/またはSc23および/またはLa23および/またはCeO2および/または他のランタニド酸化物3〜30モル%、
i)アルカリ金属酸化物(Na2O、Li2O、K2O、Rb2O、Cs2O)0.05〜3モル%、
j)アルカリ土類金属酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO)0〜15モル%、
を含有する、歯科用複合材および歯科用修復物において使用されるガラスフィラー材料であって、
これらの粒子が、内部領域および1.5μmまでの外部領域を有し、かつ内部領域のアルカリイオンの平均濃度に対する外部領域のアルカリイオンの平均濃度が10%以下であり、内部領域のアルカリイオンが、乾燥プロセスによって粒子中に固定されている、ガラスフィラー材料。
【請求項3】
f)二酸化ケイ素(SiO2)75〜96.95モル%、
g)酸化アルミニウムおよび/または酸化ホウ素(Al23、B23)0〜5モル%、
h)酸化ジルコニウムおよび/または酸化チタニウムおよび/または酸化ハフニウム(ZrO2、TiO2、HfO2)、Y23および/またはSc23および/またはLa23および/またはCeO2および/または他のランタニド酸化物3〜30モル%、
i)アルカリ金属酸化物(Na2O、Li2O、K2O、Rb2O、Cs2O)0.05〜2モル%、
j)アルカリ土類金属酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO)0〜5モル%、
を含有する、請求項1または2に記載のガラスフィラー材料。
【請求項4】
e)アルカリ金属酸化物の濃度が、2モル%を超えない、好ましくは1モル%を超えない、請求項1または2に記載のガラスフィラー材料。
【請求項5】
前記ガラスフィラー粒子が、平均粒度0.5〜3μm、好ましくは0.5〜1μmを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラスフィラー材料。
【請求項6】
最大粒度が、100μmまで、好ましくは5μmまでである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラスフィラー材料。
【請求項7】
ガラスフィラー材料の屈折率nDが、1.49〜1.55の範囲である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のガラスフィラー材料。
【請求項8】
平均粒度0.1〜20μmを有する、歯科用複合材および歯科用修復物において使用されるガラスフィラー材料を製造する方法であって、
g)SiO254〜91モル%、Al23および/またはB230〜13.6モル%、ZrO2および/またはTiO2および/またはHfO2および/またはY23および/またはSc23および/またはLa23および/またはCe23および/または他のランタニド酸化物0〜27.3モル%、アルカリ金属酸化物9〜20モル%、アルカリ土類金属酸化物0〜22.7モル%の組成物を温度1200〜1800℃で少なくとも30分間溶融する工程、
h)冷水中にまたは金属ローラー上に移すことによって、溶融ガラスを粉砕する工程、
i)b)によって得られた粒状ガラスを平均粒度d500.1〜20μmに微粉砕する工程、
j)過剰量の脱アルカリ化剤でガラス粉末を脱アルカリ化する工程、
k)脱アルカリ化剤を除去し、濾液が中性に反応するまで、ガラス粉末を極性溶媒で洗浄する工程、
l)温度200〜1100℃で少なくとも30分間、ガラス粉末を乾燥させる工程、
による方法。
【請求項9】
前記溶融温度が、1400〜1700℃、好ましくは1450〜1550℃である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記脱アルカリ化剤が酸性組成物である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記脱アルカリ化剤が、無機酸または有機酸、好ましくはHCl、HJ、HBr、H2SO4、H3PO4、HNO3、HClO4、CH3COOH、COOH−COOH、H−COOH、クエン酸、酒石酸またはポリカルボン酸である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記極性溶媒が、水、または水と他の極性溶媒、好ましくはエタノールもしくはアセトンとの混合物からなる、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
脱アルカリ化が、50〜200℃の温度で行われる、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ガラス粉末と、脱アルカリ化剤との比が、1:5〜1:1000、好ましくは1:10、さらに好ましくは1:20である、請求項8〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
a)二酸化ケイ素(SiO2)75〜96.95モル%、
b)酸化アルミニウムおよび/または酸化ホウ素(Al23、B23)0〜10モル%、
c)酸化ジルコニウムおよび/または酸化チタニウムおよび/または酸化ハフニウム(ZrO2、TiO2、HfO2)、Y23および/またはSc23および/またはLa23および/またはCeO2および/または他のランタニド酸化物3〜30モル%、
d)アルカリ金属酸化物(Na2O、Li2O、K2O、Rb2O、Cs2O)0.05〜3モル%、
e)アルカリ土類金属酸化物(MgO、CaO、SrO、BaO)0〜15モル%、
を含有する、歯科用複合材および歯科用修復物において使用されるガラスフィラー材料であって、
前記ガラスフィラー材料の粒子が、請求項8〜14に記載の方法によって製造される、ガラスフィラー材料。
【請求項16】
a)1種または複数種のカチオンおよび/またはラジカル硬化性モノマー3〜80重量%、
b)請求項1〜7に記載のガラスフィラー材料3〜90重量%、
c)1種または複数種の放射線不透過性フィラー0〜90重量%、
d)開始剤、遅延剤および/または促進剤0.01〜25重量%、
e)助剤0〜25重量%、
を含有する重合性歯科材料。
【請求項17】
前記硬化性モノマーがエポキシドモノマーである、請求項16に記載の重合性歯科材料。
【請求項18】
歯科用充填材料、歯科用セメント、歯科用接着材料、歯科用修復材料のための、請求項1〜7のいずれか一項に記載のガラスフィラー材料の使用。


【公表番号】特表2007−515450(P2007−515450A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546060(P2006−546060)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014614
【国際公開番号】WO2005/060921
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(504169278)スリーエム イーエスピーイー アーゲー (43)
【Fターム(参考)】