説明

ガラスフリット及びこれを用いたカーボン微粒子の酸化方法

【課題】ディーゼルエンジン等の排気ガス中に含まれるようなカーボン微粒子を比較的低い温度で酸化することのできる、貴金属が用いない、安価な触媒を提供する。
【解決手段】酸化物換算で、60〜80重量%のSiOと、9〜20重量%のAlと、3〜12重量%のKOと、3〜12重量%のNaOを含むガラスフリット。ガラスフリットは、分子状酸素の共存下で、カーボン微粒子を加熱するカーボン微粒子の酸化方法に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフリットと、これを用いたカーボン微粒子の酸化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、焼却炉、石油精製設備あるいは外燃機関などからの排気ガス中に含まれるカーボン微粒子を二酸化炭素に酸化する方法として、分子状酸素の存在下でカーボン微粒子を酸化触媒と接触させる方法が知られている。かかる触媒としては、貴金属の微粒子を担体上に担持させた触媒が知られている。かかる貴金属としては白金等が用いられており、かかる担体としてはジルコニア、シリカ、アルミナなどの結晶質の担体が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−35587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、かかる従来の触媒では、貴金属が用いられているため、かかる従来の触媒は、製造コストが高い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記<1>、<2>及び<3>を提供する。<1> 酸化物換算で、60〜80重量%のSiOと、9〜20重量%のAlと、3〜12重量%のKOと、3〜12重量%のNaOを含むガラスフリット。<2> 酸化物換算で、0.1重量%以下のCaOを含む<1>に記載のガラスフリット。<3> <1>又は<2>に記載のガラスフリット及び分子状酸素の共存下で、カーボン微粒子を加熱するカーボン微粒子の酸化方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のガラスフリットは、貴金属を含まないため、安価である。また、本発明のガラスフリットは、カーボン微粒子の酸化触媒として効果的に働く。本発明のガラスフリットと分子状酸素との共存下で、カーボン微粒子を加熱することによって、該カーボン微粒子の酸化を比較的低温で行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(ガラスフリット) ガラスフリットとは、フレーク状又は粉末状のガラスをいう。本発明のガラスフリットは、酸化物換算で、60〜75重量%のSiOと、9〜20重量%のAlと、3〜12重量%のKOと、4〜12重量%のNaOとを含む。上記含有量が上記範囲外であると、ガラスフリットは、カーボン微粒子の酸化触媒としての働きが劣る。
【0008】
本発明のガラスフリットは、ケイ素、アルミニウム、カリウム、ナトリウム及び酸素以外の元素を含んでもよい。本発明のガラスフリットが元素としてカルシウムを含む場合には、本発明のガラスフリットは、酸化物換算で、0.1重量%未満のCaOを含むことが好ましい。本発明のガラスフリットが0.1重量%未満のCaOを含むと、カーボン微粒子の酸化を更に低温で行うことができる。
【0009】
(製造方法) 本発明のガラスフリットは、一般的な、溶融−急冷−粉砕法により製造することができる。すなわち、ガラスを構成する酸化珪素、アルミナ、アルカリ金属化合物(例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩)などの主原料とその他の副原料とを、ともに白金るつぼなどの容器に入れ、ガラスの融点よりも200〜300℃高い温度の溶融炉内で加熱溶融させ、得られた溶融物を十分に均質化させる。その後、得られた均質な溶融物を水中に投入するなどして冷却することによりガラス化し、得られたガラスを粉砕することでガラスフリットを製造することができる。ガラスの副原料は、ガラスの融点、結晶化温度、熱膨張係数、誘電率などガラスの物性値に影響を与える。ガラスの副原料とは、ガラスの主原料以外の物質であって、ガラス物性を変化させる物質であれば特に限定されず、CaO,MgO,ZnO,ZrO,F,Bなどが挙げられる。なおガラスの融点とはその粘度が10dpa/s以下になる温度をいう。
【0010】
(カーボン微粒子の酸化方法) 本発明のガラスフリットは、カーボン微粒子の酸化触媒として用いることができる。本発明のカーボン微粒子の酸化方法は、分子状酸素と本発明のガラスフリットとの共存下で、カーボン微粒子を加熱する方法である。本発明の方法において、カーボン微粒子の加熱時、本発明のガラスフリットとカーボン微粒子とは接触していることが好ましい。本発明のガラスフリットは、カーボン微粒子の酸化触媒として効果的に作用する。本発明の方法では、600〜650℃程度の比較的低温で、カーボン微粒子の酸化を行うことが可能である。
【実施例】
【0011】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の様態のみに限定されない。
【0012】
(ガラスフリットA、B、C及びDの製造) 表1記載の元素の重量比になるようにガラスフリットの各原料を混合し、得られた混合物を加熱溶融し、得られた溶融物を十分に均質化し、得られた均質な溶融物を冷却してガラス化し、得られたガラスを粉砕することで表1記載のガラスフリットA,B,C及びDを得ることができる。
【0013】
【表1】

【0014】
(実施例1) ガラスフリットA4.5gとカーボンブラック粉末(電気化学工業(株)製、製品名「デンカブラック」平均粒径36nm)0.5gを乳鉢で混合して試料を得た。得られた試料では、ガラスフリットとカーボンブラック粉末とが接触している。この試料のカーボン酸化温度を確認するために、熱重量(TG−DTA)測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製,「TG/DTA6300」)を用い、空気雰囲気の下、流量200ml/min、昇温速度10℃/分で室温から800℃まで昇温しながら、カーボンの酸化開始温度を調べたところ、カーボンの酸化開始温度は594℃であった。
【0015】
(実施例2) ガラスフリットAの代わりに、ガラスフリットBを用いた以外は実施例1と同様にカーボンの酸化開始温度を調べたところ、カーボンの酸化開始温度は595℃であった。
【0016】
(実施例3) ガラスフリットAの代わりに、ガラスフリットCを用いた以外は実施例1と同様にカーボンの酸化開始温度を調べたところ、カーボンの酸化開始温度は650℃であった。
【0017】
(比較例1) ガラスフリットAの代わりに、ガラスフリットDを用いた以外は実施例1と同様にカーボンの酸化開始温度を調べたところ、カーボンの酸化開始温度は704℃であった。
【0018】
(比較例2) ガラスフリットAの代わりに、福島長石(東海セラミックス社製)を用いた以外は実施例1と同様にカーボンの酸化開始温度を調べたところ、カーボンの酸化開始温度は731℃であった。
【0019】
(参考例) カーボンブラック粉末(電気化学工業(株)製、製品名「デンカブラック」平均粒径36nm)を、熱重量(TG−DTA)測定装置を用い、昇温速度10℃/分で室温から800℃まで昇温しながら、カーボンの酸化開始温度を調べたところ、カーボンの酸化開始温度は697℃であった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のガラスフリットは、貴金属を含まないため、安価である。本発明のガラスフリットは、低温でカーボン微粒子を酸化させるための触媒として用いることができる。そのため、本発明のガラスフリットは、産業上の利用可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物換算で、60〜80重量%のSiOと、9〜20重量%のAlと、3〜12重量%のKOと、3〜12重量%のNaOを含むガラスフリット。
【請求項2】
酸化物換算で、0.1重量%以下のCaOを含む請求項1に記載のガラスフリット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のガラスフリット及び分子状酸素の共存下で、カーボン微粒子を加熱するカーボン微粒子の酸化方法。

【公開番号】特開2011−93787(P2011−93787A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218196(P2010−218196)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】