説明

ガラスペースト包装袋およびその管理方法

【課題】ガラスペースト包装袋に充填されるガラスペーストに含まれる異物の混入量を可及的に低減する。
【解決手段】上部にガラスペーストGの出入口となる筒状口部3を有する袋本体2と、筒状口部3を開閉するための蓋部4とを備え、ガラスペーストGが筒状口部3を介して袋本体2の内部に充填されるガラスペースト包装袋1であって、ガラスペーストGの充填前の状態で、袋本体2の内部の異物数が0.3個/リットル以下に管理されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスペーストが内部に充填されるガラスペースト包装袋およびその管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、実用化された代表的な平面ディスプレイの一つにプラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)がある。PDPは、粉末ガラスを焼成した多くの部材から構成されており、その製作には数種類のガラスペーストが使用されている。一般に、PDPの製造ラインに供給されるガラスペーストは、融点や膨張係数等が所定の特性を有するガラス粉末を、バインダー等の樹脂を含む溶媒に分散させたものが使用される。
【0003】
このガラスペーストは、樹脂製の包装袋の内部に充填された状態で、金属製のドラム缶などの収容体の内部に収容され、ガラスペースト製造メーカーからPDP製造メーカーに出荷される。
【0004】
この種のガラスペースト包装袋としては、充填時にガラスペーストが飛散したり、ガラスペースト中に気泡が混入するのを抑制する目的で、上部にガラスペーストの出入口を有する袋本体と、出入口を開閉するための蓋部材とを備え、袋本体の上方の開口面積を規制した密閉タイプのものが利用されつつある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−23687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、PDPの分野においても、フルハイビジョンへの対応などにより、表示画像の高解像度化が進められているのが実情である。そのため、PDPの製造過程で、ガラスペーストによって製作されるリブ(隔壁)や誘電体層などの構造物にも、異物の混入量などに対して厳しい制限が課せられている。すなわち、ガラスペーストから製作されるリブや誘電体層においては、高解像度化に伴って、リブの幅の狭小化や誘電体層の厚みの薄肉化が必要とされ、各寸法精度もより厳格なものとなっている。そのため、従前であれば問題とならない大きさの異物がガラスペーストに含まれている場合であっても、当該異物がリブや誘電体層の外部に露出してリブ幅や誘電体層の厚みに狂いが生じる原因となり得る。したがって、ガラスペーストによって製作されるリブや誘電体層などの構造物を高品位に保つためには、ガラスペースト中に含まれる異物を可及的に低減することが必要不可欠となる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているような密閉タイプのガラスペースト包装体では、それに充填されるガラスペーストの異物の混入量を低減するために積極的な対策が講じられておらず、またその異物混入の主たる原因も解明されていないのが実情である。
【0008】
以上の実情に鑑み、本発明は、ガラスペースト包装袋に充填されるガラスペーストに含まれる異物の混入量を可及的に低減することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、ガラスペーストに異物が混入する主たる原因が、ガラスペーストを充填する前のガラスペースト包装袋の状態にあり、その状態を厳格に管理すれば、ガラスペーストへの異物の混入を低減できるという知見を得た。付言すれば、ガラスペースト包装袋は、一般環境下において溶着や切断などの加工工程を経て製作されることが通例であることから、その加工工程で雰囲気中の異物(繊維や樹脂の微細片など)が包装袋の内部に侵入し、後から充填されるガラスペーストに混入しやすい。そのため、これらの異物が、充填されるガラスペーストに混入する異物の主たる原因となっている。したがって、ガラスペーストを充填する前のガラスペースト包装袋の状態を厳格に管理すれば、ガラスペーストへの異物の混入を低減できるという上述の知見を得るに至った。
【0010】
すなわち、上記課題を解決するために創案された本発明に係るガラスペースト包装袋は、上部にガラスペーストの出入口を有する袋本体と、前記出入口を開閉するための蓋部材とを備え、前記ガラスペーストが前記出入口を介して前記袋本体の内部に充填されるガラスペースト包装袋であって、前記ガラスペーストの充填前の状態において、前記袋本体の内部の異物数が、0.3個/リットル以下であることに特徴づけられる。なお、ここでいう「異物」は、#635の金網で補足可能なものを意味し、当該金網を通過するものは異物から除外するものとする。また、異物は、袋本体の内表面に付着しているもの以外にも、袋本体の内表面から離れて内部空間を浮遊しているものも含む。以下、同様とする。
【0011】
このような構成によれば、ガラスペースト包装袋の袋本体の異物の数が適正に低減されるので、その内部に充填されるガラスペーストに異物が混入する割合を確実に低減することができる。
【0012】
上記の構成において、前記ガラスペーストが、PDPの製作に利用されるものであることが好ましい。
【0013】
すなわち、本発明に係るガラスペースト包装袋であれば、上述のように、ガラスペースト充填前の袋本体の内部における異物数が厳格に管理されていることから、PDPの製作に使用されるガラスペーストのように、異物の混入が厳しく制限されるガラスペーストであっても、その要求品位を問題なく確保することが可能となる。
【0014】
また、上記課題を解決するために創案された本発明に係るガラスペースト包装袋の管理方法は、上部にガラスペーストの出入口を有する袋本体と、前記出入口を開閉するための蓋部とを備え、前記ガラスペーストが前記出入口を介して前記袋本体の内部に充填されるガラスペースト包装袋の管理方法であって、前記ガラスペーストの充填前に、前記袋本体の内部の異物数が0.3個/リットル以下になるように、前記袋本体の内部を洗浄することに特徴づけられる。
【0015】
このような方法によれば、袋本体の内部の異物数が、洗浄によって上記数値範囲内に抑えられ状態で管理されることから、既に述べた作用効果を同様に享受することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、ガラスペーストが充填されるガラスペースト包装袋の袋本体の内部の異物の数が適正に管理されることから、ガラスペーストの異物の混入量を可及的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るガラスペースト包装袋の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すガラスペースト包装袋を備えたガラスペースト包装体を示す縦断面図である。
【図3】図1に示すガラスペースト包装袋を使用した場合のガラスペースト取出工程を示す縦断面図である。
【図4】図1に示すガラスペースト包装袋の袋本体の内表面を洗浄する洗浄装置の概略図である。
【図5】図4に示す洗浄装置による洗浄工程のフローである。
【図6】図1に示すガラスペースト包装袋の袋本体の外表面を洗浄する洗浄装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るガラスペースト包装袋(以下、単に包装袋ともいう。)の縦断面図である。この包装袋1は、袋本体2と、袋本体2に固着され且つ袋本体2にガラスペーストGの充填および取出し用の出入口を形成する筒状口部3と、筒状口部3の上端開口を開放又は閉塞する蓋部4とを備えている。
【0020】
袋本体2は、全体として略均一な肉厚を有し、その上下端を閉塞した形状をなすものである。この実施形態では、袋本体2は、円筒状の胴部2aの上部を天部2bによって閉塞すると共に、胴部2aの下部を底部2cによって閉塞した形状を呈している。
【0021】
このうち、天部2bは、天部2bの最上端部となる外径部2b1と、外径部2b1よりも半径方向中央でかつ下方に位置する中央部2b2とを有する。外径部2b1と中央部2b2とは、外径部2b1から下方に傾斜して中央部2b2に至る環状の傾斜部2b3によって連結されている。そして、中央部2b2の上面には、筒状口部3の下端部が固着されている。これにより、筒状口部3の開口下端が、天部2bの外径部2b1よりも下方に位置するようになっている。
【0022】
また、傾斜部2b3は、図1中の破線で示すように、外径部2b1から上方に傾斜して中央部2b2に至るように変形可能であって、ガラスペーストGの充填時に、傾斜部2b3を変形させることにより、筒状口部3の下端開口が、外径部2b1よりも上方位置まで変位できる構成とされている。また、筒状口部3の外周面には螺旋溝3aが形成されており、蓋部4が螺着可能になっている。
【0023】
一方、底部2cは、胴部2aから伸びる内径縮小領域2c1と、内径縮小領域2c1につながる最底部2c2とを有する。内径縮小領域2c1は、胴部2aの下端から縮径を伴って下方に伸びる部分であって、袋本体2の底部2cにおいて最も下方に位置する最底部2c2とつながっている。
【0024】
ここで、内径縮小領域2c1の最底部2c2に対する傾斜角θは、内径縮小領域2c1上のガラスペーストGを最底部2c2に集め、かつ、図3に例示のガラスペースト吸出し用のノズル9で吸出し得る程度の大きさに設定される。
【0025】
なお、袋本体2の材料としては、ガラスペーストGと反応し難い材料であることが好ましく、例えばポリエチレンやナイロン等の樹脂が用いられる。一方、筒状口部3及び蓋部4の材料としては、袋本体2よりも硬質な材料が用いられる。具体的には、例えば硬質ポリエチレンや、硬質ナイロン等が用いられる。
【0026】
上記構成の包装袋1は、例えば図2に示す形態に梱包される。ここで、同図に示すガラスペースト梱包体8は、ガラスペーストGが内部に充填されたガラスペースト包装袋1と、ガラスペースト包装袋1を収容する金属製のドラム缶5と、ドラム缶5の底部5aに配置され且つガラスペースト包装袋1を受ける緩衝体6と、ドラム缶5の上方開口部を閉塞する金属製の上蓋7とを備えている。このうち緩衝体6は、例えば発泡樹脂等の材料でドラム缶5の内面に応じた形状に形成されており、その上方には、ガラスペースト包装袋1の底部を受ける受け面6aを有している。
【0027】
上記構成のガラスペースト梱包体8は、例えば以下の手順を経て製作される。まず、上方を開口した状態のドラム缶5の内部に緩衝体6を挿入しておき、然る後、ドラム缶5内に蓋部4を取り外した状態のガラスペースト包装袋1を収容する。そして、筒状口部3から袋本体2内にガラスペースト充填用のノズル(図示は省略する)を挿入して、当該ノズルの先端から袋本体2内にガラスペーストGを充填する。
【0028】
なお、上記充填の際、図1の破線に示すように、天部2bの傾斜部2b3を変形させて、筒状口部3の下端開口を天部2bの外径部2b1よりも上方に位置させた状態でガラスペーストGを充填することも可能である。このようにして充填することで、筒状口部3の下端開口を天部2bの外径部2b1よりも下方に位置させた状態で充填した場合(図1中実線に示す状態)よりも、天部2bの外径部2b1にガラスペーストGに混入した気泡が筒状口部3側に逃げ易くなる。そのため、充填時にガラスペーストG内に混入する気泡の量を減らすことができる。
【0029】
そして、ガラスペーストGの充填が完了した後、蓋部4で筒状口部3の開口を閉じると共に、ドラム缶5に金属製の上蓋7をして包装袋1を内部に収容することで、図2に示す形態のガラスペースト梱包体8が得られる。
【0030】
上記梱包体8は、ガラスペースト製造メーカーからPDPの製造メーカーに輸送される。そして、梱包体8に収容された包装袋1に充填されたガラスペーストGが取り出されて、PDPの製造ラインに供給される。このガラスペーストGの取出工程は次のような手順で行われる。
【0031】
図3に示すように、まず、上蓋7および蓋部4を取り外した状態で、ガラスペースト包装袋1の筒状口部3を介してガラスペースト吸出し用のノズル9を袋本体2の内部に挿入する。この際、ノズル9の先端開口部9aが袋本体2の最底部2c2に当接する位置までノズル9を挿入するようにしてもよい。そして、ノズル9の上方開口部の側に設けたポンプ(図示は省略)を駆動させ、筒状口部3を介して袋本体2内に充填されたガラスペーストGの吸引を開始する。これにより、ガラスペーストGは、袋本体2の底側から順に取り出されていき、その気液界面は吸出しに伴い徐々に下がっていく。
【0032】
そして、袋本体2内のガラスペーストGがある程度吸出された状態においては、袋本体2の下側に位置する内径縮小領域2c1上にあるガラスペーストGが最も下端側に位置する最底部2c2に向けて滑り落ち易い形態となっている。そのため、吸出し時、ガラスペーストGを内径縮小領域(テーパ面)2c1上になるべく残すことなく、その大部分を最低部(底面)2c2上に集めることができる。よって、袋本体2に充填したガラスペーストGを効率よくかつ漏れなく取出すことができる。
【0033】
そして、本実施形態の特徴的な事項は、以上の構成を備えたガラスペースト包装袋1において、ガラスペーストG充填前の空の状態で、袋本体2の内部(内表面を含む内部空間)の単位体積(リットル)当りの異物数が0.3個以下に規制されている点が挙げられる。ここでいう異物とは、#635の金網で補足可能なものを意味するものとし、当該金網を通過するものについては、ここでいう異物から除外する。具体的には、例えば、内容量85リットルの袋本体2を備えた包装袋1の場合、袋本体2に1リットルの純水を注入するとともに、この注入した純水で袋本体2の内表面を洗浄し、その洗浄した純水を#635の金網に通し、この金網に補足された異物数を数える。そして、この異物数を袋本体2の内容量(85リットル)で除算し、単位体積当りの異物数を算出する。なお、例えば内容量85リットルの袋本体2の場合、異物数は20個以下、すなわち、約0.26個/リットル以下であることが好ましい。
【0034】
このようにすれば、ガラスペースト包装袋1の袋本体2の異物の数が適正に低減されることから、その内部に充填されるガラスペーストGに異物が混入する割合を確実に低減することができる。したがって、充填されたガラスペーストGをPDPの製造工程で使用したとしても、異物の混入による不良が生じる割合が大幅に低減し、製品歩留まりを向上させることができる。
【0035】
なお、ガラスペースト包装袋1の袋本体2の異物数は、以下に示す洗浄装置によりガラスペーストGを充填する前の袋本体2を洗浄することで管理される。
【0036】
図4に示すように、袋本体2の内表面を洗浄する洗浄装置10は、筒状口部3側を下方に向けた状態で配置されたガラスペースト包装袋1の袋本体2の内表面を洗浄する構成とされている。具体的には、洗浄装置10は、筒状口部3を介して挿入される洗浄ノズル11と、循環水が貯溜された循環水貯溜タンク12と、図外から洗浄ノズル11に純水を供給する純水供給ライン13と、循環水貯溜タンク12に貯溜された循環水を洗浄ノズル11に供給する循環水供給ライン14と、図外から洗浄ノズル11にエアを供給するエア供給ライン15とを備えている。すなわち、この実施形態では、洗浄ノズル11に供給される純水と循環水が、袋本体2の内表面を洗浄する洗浄水として使用される。一方、洗浄ノズル11に供給されるエアは、袋本体2の内表面の乾燥処理に使用される。なお、エア供給ライン15は適宜省略することができる。
【0037】
純水供給ライン13には、フィルタ(例えば、1μm以上の異物を補足するフィルタ)16が配置されており、このフィルタ16を通過した純水が下流側に移送される。また、純水供給ライン13は、フィルタ16の下流側で2つに分岐しており、一方の第1分岐ライン13aが洗浄ノズル11に接続され、他方の第2分岐ライン13bが循環水貯溜タンク12に接続されている。純水供給ライン13の各分岐ライン13a,13bには、流路を開閉するためのバルブ17,18が設けられている。なお、純水は、図外のRO膜(逆浸透膜)を通過した後に、純水供給ライン13に供給される。
【0038】
循環水供給ライン14は、一端側が循環水貯溜タンク12に接続されており、他端側が洗浄ノズル11に接続されている。また、循環水供給ライン14には、循環水貯溜タンク12に貯溜された循環水を洗浄ノズル11へ循環させるためのポンプ19と、循環水貯溜タンク12に貯溜された循環水に含まれる異物を取り除くためのフィルタ(例えば、1μm以上の異物を補足するフィルタ)20とが設けられている。
【0039】
エア供給ライン15には、流路を開閉するためのバルブ21が設けられている。
【0040】
循環水貯溜タンク12には、袋本体2の筒状口部3から流下する使用済みの洗浄水を回収する回収ホッパー22が設けられている。回収ホッパー22で回収された洗浄水は、回収ホッパー22の内部に配置された#635の金網23を通過した後、循環水貯溜タンク12に回収される。すなわち、袋本体2内に異物が存在する場合には、金網23でその異物が補足され、循環水貯溜タンク12には侵入しない。なお、循環水貯溜タンク12には、バルブ24で流路が開閉可能な排水ライン25が設けられている。また、この実施形態では、循環水貯溜タンク12の上方が開口しており、その開口部から溢れ出た水を回収して排水するための補助排水ライン26も設けられている。
【0041】
次に、以上のように構成された洗浄装置10の動作を図4及び図5に基づいて説明する。
【0042】
まず、純水供給ライン13の第2分岐ライン13bを通じて循環水貯溜タンク12に純水を供給し、循環水貯溜タンク12内に給水する(ステップS1)。その後、ガラスペースト包装袋1の袋本体2を下方に筒状口部3を向いた状態で洗浄装置10に配置する(ステップS2)。このとき、洗浄ノズル11を筒状口部3から袋本体2の内部空間に挿入する。次に、循環水供給ライン14のポンプ19を稼働させ、洗浄ノズル11に循環水供給ライン14を通じて循環水貯溜タンク12内の循環水を供給する。そして、洗浄ノズル11を回転させながら循環水を袋本体2の内表面の略全域に噴射して本洗浄を行う(ステップS3)。この本洗浄工程では、金網23及びフィルタ20で異物を取り除きながら同じ水を循環させ、袋本体2の洗浄が行われる。そのため、洗浄時間の長短に関わらず水の使用量を最小限に抑えることが可能となる。
【0043】
そして、この実施形態では、本洗浄の終了後に、純水供給ライン13の第1分岐ライン13aを通じて洗浄ノズル11に直接純水を供給し、袋本体2の内表面を純水でリンス洗浄(仕上洗浄)する(ステップS4)。また、リンス洗浄の終了後には、エア供給ライン15を通じて洗浄ノズル11にエアを供給し、袋本体2の内表面に付着した水を吹き飛ばして乾燥させる(ステップS5)。この場合、乾燥効率を上げるために、洗浄ノズル11から温風を噴射するようにしてもよい。そして、このように一連の洗浄処理(ステップS3〜S5)が終了した後、洗浄装置10からガラスペースト包装袋1を取り出す(ステップS6)。なお、必要に応じて、洗浄装置10から取り出したガラスペースト包装袋1に対して、事後的に真空乾燥処理を行ってもよい。そして、ガラスペースト包装袋1を洗浄装置10から取り出した時点で、循環水貯溜タンク12に貯溜された水の清浄性が保たれていれば、引き続き、別のガラスペースト包装袋1を洗浄装置10に配置し、ステップS2〜S6の工程を繰り返し、複数のガラスペースト包装袋1を同様の手順に従って順に洗浄する。一方、循環水貯溜タンク12に貯溜された循環水の清浄性が保たれていなければ、排水ライン25を通じて循環水貯溜タンク12の内部の循環水を排水する(ステップS7)。なお、循環水の清浄性の有無は、例えば、ガラスペースト包装袋1の洗浄個数などによって管理される。また、循環水貯溜タンク12の内部の循環水を排水した場合には、別のガラスペースト包装袋1を新たに洗浄する際に、循環水貯溜タンク12に純水を予め給水する(ステップS1)。
【0044】
そして、このような洗浄工程を経て得られるガラスペースト包装袋1は、袋本体2の内部(内表面を含む内部空間)の単位体積当りの異物数が0.3個以下に規制される。ここで、未洗浄のガラスペースト包装袋1は、袋本体2の内部の単位体積当りの異物数が3.5〜5.9個となることから、洗浄によって異物の数が大幅に低減されることが認識できる。なお、本願発明者等は、ガラスペースト包装袋1の袋本体2の内表面を手洗い洗浄することも試みたが、この場合にも単位体積当りの異物数を0.3個以下に規制することは困難であり、概ね0.7個前後に改善するに止まった。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の形態で実施することができる。例えば、上記実施形態では、ガラスペースト包装袋1の袋本体2の内表面を洗浄する場合を説明したが、外表面も洗浄することが好ましい。これは、ガラスペーストGが充填されたガラスペースト包装袋1は、クリーンルームなどの清浄空間において、ガラスペーストGの取出作業が行われることが多いことから、ガラスペースト包装袋1の袋本体2の外表面に異物が付着していると、その異物がクリーンルーム内に飛散したり、その飛散した異物がガラスペーストG内に混入するおそれがあるためである。袋本体2の外表面を洗浄する洗浄装置30としては、例えば、図6に示すように、洗浄水が貯溜された貯溜容器31に袋本体2を略水平に倒した状態で浮かべておき、洗浄ノズル32によって洗浄水を上方から袋本体2の円筒状の胴部2aに掛けながら袋本体2を回転させることにより、袋本体2の外表面を洗浄するように構成されたものが挙げられる。なお、図示例では、洗浄水が貯溜された貯溜容器31に胴部2aの外表面に当接するスポンジなどからなる洗浄具33が配置されており、この洗浄具33によって回転する胴部2aの外表面から異物が確実に取り除かれるようになっている。また、貯溜容器31には、排水ライン34が設けられており、適宜洗浄水を排水するようになっている。
【0046】
また、上記実施形態では、主にPDP用のガラスペーストGを充填し、取出す場合について説明したが、本発明に係る包装袋は、PDP以外のディスプレイ用、あるいはディスプレイ用以外の用途に用いるガラスペーストを充填し、出荷する場合にも適用できる。
【0047】
また、包装袋は、上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、密閉タイプのものであれば種々の形態を採用することができる。例えば、上記実施形態では、包装袋1の袋本体2の天部2bの一部が変形を伴って上下に可動するものを説明したが、天部2bは、積極的に変形を許容する形態を採用せずに非可動としてもよい。また、包装袋1の袋本体2の底部2cの一部がテーパ状になったものを説明したが、底部2cは平坦であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ガラスペースト包装袋
2 袋本体
3 筒状口部
4 蓋部
8 ガラスペースト梱包体
10 洗浄装置
11 洗浄ノズル
12 循環水貯溜タンク
13 純水供給ライン
14 循環水供給ライン
15 エア供給ライン
16 フィルタ
22 回収ホッパー
23 金網
25 排水ライン
26 補助排水ライン
30 洗浄装置
31 貯溜容器
32 洗浄ノズル
33 洗浄具
34 排水ライン
G ガラスペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部にガラスペーストの出入口を有する袋本体と、前記出入口を開閉するための蓋部とを備え、前記ガラスペーストが前記出入口を介して前記袋本体の内部に充填されるガラスペースト包装袋であって、
前記ガラスペーストの充填前の状態において、前記袋本体の内部の異物数が、0.3個/リットル以下であることを特徴とするガラスペースト包装袋。
【請求項2】
前記ガラスペーストが、プラズマディスプレイパネルの製作に利用されるものであることを特徴とする請求項1に記載のガラスペースト包装袋。
【請求項3】
上部にガラスペーストの出入口を有する袋本体と、前記出入口を開閉するための蓋部とを備え、前記ガラスペーストが前記出入口を介して前記袋本体の内部に充填されるガラスペースト包装袋の管理方法であって、
前記ガラスペーストの充填前に、前記袋本体の内部の異物数が、0.3個/リットル以下になるように、前記袋本体の内部を洗浄することを特徴とするガラスペースト包装袋の管理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−81990(P2012−81990A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230501(P2010−230501)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】