説明

ガラス中間膜用樹脂及び太陽電池封止材用樹脂

【課題】
本発明は、建築用合わせガラス、自動車フロントガラス、太陽電池モジュールなどの多層構造体の一層として使用される樹脂(又はフィルム)に含まれるハロゲン系元素により、樹脂に直接又は間接的に接触する金属又は有機化合物が腐食、劣化することを抑制できる樹脂、及び、これらの樹脂により得られる、長期間の使用が可能な多層構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】
ハロゲン系元素を吸収する性能をもつハイドロタルサイト、エチレンジアミン四酢酸、金属酸化物などを樹脂中に添加することで、変色、腐食を防止し、多層構造体の長寿命化を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用合わせガラスや自動車フロントガラス、太陽電池モジュールなどの多層構造体の一層として使用される樹脂であって、その樹脂および樹脂に添加した安定剤等の添加物に含まれるハロゲン系元素に直接又は間接的に接触する金属又は有機化合物が腐食し、劣化することを防止、抑制できる樹脂、および、これらの樹脂を用いて得られる多層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築用合わせガラスや自動車フロントガラスなどには、2枚の無機ガラス又は有機ガラスの間に、装飾の為の金属や有機物、光線反射の為の金属蒸着層、光線吸収のための透明金属化合物膜などが配されている。また、太陽電池モジュールには2枚のガラスあるいは耐候性プラスチックフィルムの間に太陽電池セル(結晶系シリコン、薄膜系シリコン、金属化合物薄膜、有機薄膜、及び、透明又は不透明電極層)を配し、その隙間を樹脂(又はフィルム)により充填し、且つ、両ガラス面等を接着する構成とすることが、広く行なわれている。この構成において、中間に配される金属や有機物等の物質は、ハロゲン系元素を有する化合物により腐食あるいは反応劣化を起こすことがあり、長期間、使用をすると、性能が低下したり、変色あるいはデラミネーション(剥離)を発生する事があった。
【0003】
これらの腐食等の問題を解決する為、たとえば、特許文献1〜3に開示されているように、充填材として、エチレンビニルアセテート(EVA)又はポリオレフィン系の樹脂をベースとする比較的透湿性、吸湿性の低い部材を選ぶか、または、特許文献4に記載のように、端面に防水シールを行い水分の浸入を防ぐなどして、水分自体による腐食を防ぐ対策などが行われている。しかし、これらの方法では、ガラス等の中間に配される金属や有機物等の腐食の発生を、十分に防止・抑制できるものではなかった。
【0004】
また、特許文献5にはハイドロタルサイトを樹脂中に含有せしめ、この腐食を抑制する方法が示されているが、このままではフィルムの延伸性が低下し、本来期待されている落球強度等が大幅に低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−23870号公報
【特許文献2】特開平06−177412号公報
【特許文献3】特開平08−295541号公報
【特許文献4】特開平05−218482号公報
【特許文献5】特開2008−38093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、建築用合わせガラスや自動車フロントガラス、太陽電池モジュールなどの多層構造体の一層として使用される樹脂(又はフィルム)であって、その樹脂および添加物に含まれるハロゲン系元素に直接又は間接的に接触する金属又は有機化合物が腐食し、劣化することを防止、抑制できる樹脂(又はフィルム)、および、これらの樹脂を用いて得られる多層構造体を提供することである。
【0007】
建築用合わせガラス、自動車フロントガラスは、2枚のガラスの間に樹脂(又はフィルム)を中間層として挟み込ませることにより、ガラスが割れた際にガラス破片が飛散しない、或いは、人や物などがガラスを突き抜けて外部に飛び出さないといった機能を持たせることができる。この2枚のガラスと樹脂(又はフィルム)の構成に、更に、装飾の為の金属や有機物、光線反射の為の金属蒸着層、光線吸収の為の透明金属化合物膜などが、ガラスと樹脂(フィルム)の間、あるいは、樹脂(又はフィルム)の中に配されることが、増えている。また、太陽電池モジュールは2枚のガラスあるいは耐候性プラスチックフィルムの間に太陽電池セル(結晶系シリコン、薄膜系シリコン、金属化合物薄膜、有機薄膜、および、透明又は不透明電極層)を配し、その隙間に封止層として樹脂(又はフィルム)を充填し、且つ、両ガラス面等を接着する構成とすることが、広く、行なわれている。これらの建築用合わせガラス、自動車フロントガラス、太陽電池モジュールは、いずれも長期間使用されるものであるが、上記のようにガラス等に挟み込まれた金属や有機化合物等の物質が長期間の使用中に変色や腐食を生じ、外観や性能を悪化させる場合があった。特に、太陽電池における最大の課題は、火力や原子力による発電コストと同程度か、それ以下の発電コストを達成することであるが、モジュールを長寿命化することが可能となれば、生涯発電量が増え、コストダウンの効果があるため、太陽電池モジュールの長寿命化は重要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者はこれらの変色、腐食の原因を調査した結果、樹脂(又はフィルム)に含まれるハロゲン系元素、或いは、装飾等の為にガラス等に挟み込まれた金属や有機物等の物質そのものに含まれるハロゲン系元素が、多層化の際に加える熱により分離、活性化することで、その後、長期間にわたる使用により、建築用合わせガラス、自動車フロントガラス又は太陽電池モジュールに浸入する微量の水分と接触し、その結果、更に活性化し、これらの金属や有機化合物等の物質と腐食反応を起こしていると判断し、これを捕捉、失活させる物質を樹脂(又はフィルム)中に含有させることにより、変色、腐食が大幅に改善されることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明は、樹脂100質量部に対して、周期律表第I族又は第II族の元素を含むハイドロタルサイト系化合物0.01〜10質量部を含み、フィルムとした際の23℃、30%RHでのISO527引張試験に基く引張伸度が150%以上であることを特徴とする、建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂に関する。
【0010】
また、本発明は、樹脂100質量部に対して、周期律表第I族又は第II族の元素とエチレンジアミン四酢酸との金属塩0.01〜10質量部を含み、フィルムとした際の23℃、30%RHでのISO527引張試験に基く引張伸度が150%以上であることを特徴とする、建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂に関する。
【0011】
さらに、本発明は、樹脂100質量部に対して、周期律表第I族、第II族又は第XII族の元素の酸化物0.01〜10質量部を含み、フィルムとした際の23℃、30%RHでのISO527引張試験に基く引張伸度が150%以上であることを特徴とする、建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂に関する。
【0012】
樹脂100質量部に対して、ハロゲン系元素0.01〜5質量部を含むことが、後述する接着剤調整用アルカリ金属の活性をコントロールし易いなどの点で好ましい。
【0013】
樹脂は、可塑化ポリビニルアセタール又は無可塑化ポリビニルアセタールであることが好ましく、ポリビニルアセタールは、ポリビニルブチラールであることがより好ましい。
【0014】
樹脂は、エチレンビニルアセテートであることが好ましい。
【0015】
樹脂は、不飽和カルボン酸共重合体であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、前記建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂からなるフィルムに関する。
【0017】
また、本発明は、前記建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂と、ガラスとを積層して得られる多層構造体に関する。
【0018】
さらに、本発明は、前記建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂と、ガラスとを積層する多層構造体の製造方法に関する。樹脂中の揮発分を除去して、揮発分を0.01〜6質量%に調整する工程を含むことが好ましい。
【0019】
本発明は、樹脂100質量部、及び、周期律表第I族又は第II族の元素を含むハイドロタルサイト系化合物0.01〜10質量部を樹脂温度200〜250℃で溶融混練することを特徴とする建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂の製造方法に関する。
【0020】
本発明は、樹脂100質量部、及び、周期律表第I族又は第II族の元素とエチレンジアミン四酢酸との金属塩0.01〜10質量部を樹脂温度200〜250℃で溶融混練することを特徴とする建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂の製造方法に関する。
【0021】
本発明は、樹脂100質量部、及び、周期律表第I族、第II族又は第XII族の元素の酸化物0.01〜10質量部を樹脂温度200〜250℃で溶融混練することを特徴とする建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、十分な落球強度を有し、ハロゲン系元素、又は、ハロゲン系元素を分子内に有する化合物の吸収性を持つ、建築用合わせガラス、自動車フロントガラス、太陽電池モジュールの中間膜用樹脂(又はフィルム)を提供することができ、長期間の使用が可能な多層構造体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、建築用合わせガラス、自動車フロントガラス、太陽電池モジュールなどの多層構造体の一層として使用される樹脂(又はフィルム)に含まれるハロゲン系元素により、樹脂に直接又は間接的に接触する金属又は有機化合物が腐食、劣化することを抑制できる樹脂(又はフィルム)、及び、これらの樹脂により得られる、長期間の使用が可能な多層構造体を提供するものである。
【0024】
本発明で使用されるポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂をアルデヒド類によりアセタール化することにより得られる樹脂であり、これらは公知の方法により製造されたフィルムが挙げられる。
【0025】
ここで、原料となるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが使用され、好ましくは、炭素数1〜12のアルデヒド化合物であり、更に好ましくは炭素数1〜6の飽和アルキルアルデヒド化合物であり、特に炭素数1〜4の飽和アルキルアルデヒド化合物が好ましく、なかでも、機械的強度の点で、ブチルアルデヒドであることが特に好ましい。また、アルデヒド類は単一のものが使用されていても良いし、2種以上が併用されていても良い。更に、多官能アルデヒド類やその他の官能基を有するアルデヒド類などを全アルデヒド類の20質量%以下の範囲で少量併用されていても良い。
【0026】
また、ポリビニルアセタール樹脂の原料として用いられるポリビニルアルコール系樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ビニルエステル系単量体を重合し、得られた重合体をけん化することによって得たものを挙げることができる。ビニルエステル系単量体を重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、従来公知の方法を適用することができる。重合開始剤としては、重合方法に応じて、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などが適宜選ばれる。けん化反応は、従来公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いる加アルコール分解、加水分解などが適用でき、この中でもメタノールを溶剤とし苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いるけん化反応が簡便である。本発明の対象となるポリビニルアルコール系樹脂のケン化度に、特に制限はないが、95モル%以上が好ましく、98%以上であることが更に好ましい。
【0027】
ポリビニルアルコール系樹脂の原料となるビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられるが、とりわけ酢酸ビニルが好ましい。
【0028】
また、前記ビニルエステル系単量体は、リサイクル混合物の物性を著しく低下させない範囲で他の単量体と共重合させたものであっても良い。他の単量体の例としては、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレンなどのα−オレフィン、アクリル酸またはその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル又はアクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル類、メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル又はメタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン若しくはその塩(例えば、4級塩)、又は、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン若しくはその塩(例えば、4級塩)又はN−メチロールメタクリルアミド若しくはその誘導体などのメタクリルアミド誘導体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル又はステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類、塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン又はフッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン、酢酸アリル又は塩化アリルなどのアリル化合物、マレイン酸およびその塩、そのエステルまたはその無水物、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニルなどが挙げられる。これらの単量体単位は、通常ビニルエステル系単量体に対して20モル%未満、より好ましくは10モル%未満の割合で用いられる。
【0029】
前記ビニルエステル系単量体を重合する場合、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物や、その他の連鎖移動剤の存在下で重合を行っても良い。
【0030】
本発明に使用される、ポリビニルアセタール樹脂としては、公知の製造法により製造されたものが挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール水溶液中、アルデヒド化合物を酸性条件下で反応させたものを挙げることができる。
【0031】
ポリビニルアセタール樹脂を製造するための溶媒には、特に制限はないが、例えば、水を溶媒として製造されたものなどが挙げられる。
【0032】
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液に、アルデヒド類を反応させるための触媒としては、特に限定されず、有機酸および無機酸のいずれを使用したものであっても良い。例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸、炭酸、等が挙げられる。特に塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が、反応後の洗浄が容易であることから好ましく用いられている。
【0033】
必要に応じて、得られたポリビニルアセタール樹脂のガラス等に対する接着性を向上させることも可能である。接着性を改良する方法としては、通常、合わせガラスの接着性改良剤として使用される添加剤を添加する方法、接着性を向上させるための各種添加剤を添加する方法等が挙げられる。
【0034】
本発明の樹脂は、さらに、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、機能性無機化合物等を、必要に応じて添加しても良い。また、必要に応じて、可塑剤や各種添加剤を抽出し、又は、洗浄することで、一旦、これらの添加剤の含有量を低減させてから、可塑剤や各種添加剤等を、再度、添加しても良い。
【0035】
使用される可塑剤は特に制限はないが、例えば、トリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジ−(2−ブトキシエチル)−アジピン酸エステル(DBEA)、ジ−(2−ブトキシエチル)−セバシン酸エステル(DBES)、ジ−(2−ブトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル(DBEEA)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−セバシン酸エステル(DBEES)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−セバシン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−セバシン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ブトキシエチル)−フタル酸エステル及び/又はジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−フタル酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、分子を構成する炭素数及び酸素数の和が28以上の可塑剤であることが好ましい。例えば、トリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−セバシン酸エステルなどが挙げられる。可塑剤の含有量は、ポリビニルアセタール系樹脂100質量部に対して、5〜100質量部が好ましく、8〜80質量部がより好ましい。また、2種以上の可塑剤を併用しても良い。
【0036】
また、本発明のポリビニルアセタール樹脂は、酸化防止剤を含んでいても良い。使用される酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0037】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート又は2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどのアクリレート系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−)ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン又はトリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン又は2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物などがある。
【0038】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド又は10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(C12〜C15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン又はテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスファイトなどのジホスファイト系化合物などがある。これらの中でもモノホスファイト系化合物が好ましい。
【0039】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどがある。
【0040】
これらの酸化防止剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の配合量は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜1質量部の範囲である。
【0041】
また、本発明のポリビニルアセタール樹脂(又はフィルム)は、紫外線吸収剤を含んでいても良い。使用される紫外線防止剤としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α’ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール又は2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート又は4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート又はヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤の添加量は、ポリビニルアセタール樹脂に対して質量基準で10〜50000ppmであることが好ましく、100〜10000ppmの範囲であることがより好ましい。また、これら紫外線吸収剤は2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0042】
使用される接着性改良剤としては、例えば、WO03/033583A1に開示されているものを使用することができ、有機酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩が好ましく使用され、なかでも、酢酸カリウム及び/又は酢酸マグネシウムなどが好ましい。また、シランカップリングなどの他の添加剤を添加しても良い。接着性改良剤の最適な添加量は、使用する添加剤により異なり、また得られるモジュールや合わせガラスが使用される場所によっても異なるが、得られるフィルムのガラスへの接着力が、パンメル試験(Pummel test;WO03/033583A1等に記載)において、一般には3〜10になるように調整することが好ましく、特に高い耐貫通性を必要とする場合は3〜6、高いガラス飛散防止性を必要とする場合は7〜10に調整することが好ましい。高いガラス飛散防止性が求められる場合は、接着性改良剤を添加しないことも有用な方法である。
【0043】
これらの添加剤を添加し、フィルムを製造する方法は特に制限はなく、公知の方法が用いられるが、押出機を用いてフィルムを製造する方法が好適に用いられる。押出し時の樹脂温度は200〜250℃が好ましく、210〜230℃がより好ましい。樹脂温度が高くなりすぎるとポリビニルアセタール系樹脂が分解を起こし、揮発性物質の含有量が多くなる。逆に温度が低すぎると、やはり揮発性物質の含有量は多くなる。揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から減圧により、揮発性物質を除去することが好ましい。
【0044】
本発明で使用されるエチレンビニルアセテート(以下、EVAという)は、酢酸ビニルの含有率が10〜50質量部%のものを用いることができるが、特にEVAそのものの水蒸気透過率を考えると酢酸ビニル含有率が35%以下のものが好ましい。
【0045】
また、本発明では、EVAに有機過酸化物を予め加え、これを熱分解することでEVA組成物に架橋構造を持たせることができる。有機過酸化物としては、110℃以上でラジカルを発生するものであれば、いずれでも使用可能であるが、配合時の安定性を考慮にいれれば、半減期10時間の分解温度が70℃以上であることが好ましい。
【0046】
例えば、2、5−ジメチルヘキサン−2、5−ジハイドロパーオキサイド;2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、ジ−tブチルパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド;2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;ジクミルパーオキサイド;α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;n−ブチル−4、4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン;2、2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン;1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;1、1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;t−ブチルパーオキシベンズエート;ベンゾイルパーオキサイドなどを用いることができる。これらの有機過酸化物の配合量は、EVAに対して5質量%以下で充分である。
【0047】
また、本発明では、EVAに光増感材を予め加え、これに光照射することで分解しEVA組成物に架橋構造を持たせることができる。本発明で用いられる光増感材としては光照射でラジカルを生じるものであれば、いかなるものでもよい。
【0048】
例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソエチルエーテル、ベンゾインイソプロピリエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジベンゾイル、ヘキサクロロシクロペンタジエン、パラニトロジフェニル、パラニトロアニリン、2−4−6−トリニトロアニリン、1−2−ベンズアントラキノン等がある。これらの光増感材はEVAに対して10質量%以下で充分である。
【0049】
太陽電池モジュールにおいて、ガラスまたは/および封止材とバックカバー及び発電素子との接着力を更に向上させる目的でEVAにシランカップリング剤を添加することができる。
【0050】
この目的に供されるシランカップリング剤としては、公知のものとして、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリクロロシラン;ビニルトリエトキシシラン;ビニルートリス(β−メトキシエトキシ)シラン;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β−(3、4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリアセトキシシラン;γ−メルカトプロピルトリエメトキシシラン;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン;N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を上げることをできる。中でも、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらのシランカップリング剤の配合量はEVAに対して5質量%以下で充分である。
【0051】
また、EVA組成物の架橋度を向上させ、耐久性を向上するために、さらに架橋助剤を添加することも可能である。
【0052】
この目的に供せられる架橋助剤としては、公知のものとしてトリアリルイソシアヌレート;トリアリルイソシアネート等の3官能の架橋助剤の他、NKエステル等の単官能の架橋助剤等もあげることができる。これらの架橋助剤はEVAに対して10質量%以下で充分である。
【0053】
本発明では、EVA組成物の安定性を向上させる目的でハイドロキノン;ハイドロキノンモノメチルエーテル;P−ベンゾキノン;メチルハイドロキノン等をEVAに対して5質量%以下で加えることができる。
【0054】
また、上記以外に着色剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、変色防止剤等を添加することができる。
【0055】
着色剤の例としては、金属酸化物、金属粉等の無機顔料、アゾ系、フタロシアニン系、アチ系等の有機顔料がある
【0056】
紫外線吸収剤には、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン;2−ヒドキシ−4−メトキシ−5−スルフォベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、フェニルサルシレート;p−t−ブチルフェニルサリシレート等のヒンダードアミン系がある。
【0057】
老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、ビスフェニル系、ヒンダードアミン系があるが、例えば、ジ−t−ブチル−pクレゾール;ビス(2−2−6−6−テトラメチル−4−ビペラジル)セバケート等がある。
【0058】
本発明で使用される不飽和カルボン酸共重合体としては、カルボン酸、カルボン酸塩及びカルボン酸無水物からなる群より選ばれる極性基を有する、不飽和の極性モノマーを1質量%以上含有するエチレン・極性モノマー共重合体があげられる。不飽和の極性モノマーが1質量%未満となると、ガラスや太陽電池セルとの接着力が不十分となる傾向にある。不飽和カルボン酸共重合体中の不飽和の極性モノマーは、30質量%以下であることが好ましい。30質量%を超えると、変色や強度低下となる傾向にある。
【0059】
また、不飽和カルボン酸共重合体として、カルボン酸、カルボン酸塩及びカルボン酸無水物からなる群より選ばれる極性基を有する、不飽和の極性モノマーを1質量%以上含有するエチレン・極性モノマー共重合体100質量部に対し、さらに、アミノ基を含有するアルコキシシラン3質量部以下を配合したエチレン共重合体組成物を用いることができる。
【0060】
前記エチレン・極性モノマー共重合体において、極性モノマーとしては、不飽和カルボン酸、その塩またはその無水物が好ましい。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸モノエステルなどがあげられ、とくにアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。エチレン・アクリル酸共重合体およびエチレン・メタクリル酸共重合体は、特に好ましいエチレン・極性モノマー共重合体の例である。
【0061】
本発明におけるエチレン・不飽和カルボン酸塩の好適な例は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーである。エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー中の金属種としては、リチウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムなどの多価金属を例示することができる。このようなアイオノマーを使用する利点は、透明性、高温における貯蔵弾性率が高いことである。その中和度としては、例えば、30〜95モル%程度のものを使用することが望ましいが、接着性等を勘案すると、中和度が40〜90%、特に45〜85%程度のものを使用することが好ましい。
【0062】
本発明においてエチレン・極性モノマー共重合体として、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体またはそのアイオノマーを用いる場合、得られる共重合体の透明性、接着性の観点から、不飽和カルボン酸の含有量が1質量%以上であることが好ましい。不飽和カルボン酸の含有量が大きくなると、透明性に関してはより優れたものが得られるが、融点が低くなったり、吸湿性が増すという問題が発生したり、或いは、接着性についても不充分なものとなるので、不飽和カルボン酸の含有量は、20質量%以下、好ましくは15質量%以下であることが望ましい。
【0063】
エチレン・極性モノマー共重合体の融点は55℃以上、好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上であることが望ましい。上記共重合体やアイオノマーの融点が低すぎると、耐熱性が充分でなく、太陽電池素子封止材に用いた場合、太陽電池使用時における温度上昇により封止材層が変形したり、太陽電池モジュールを加熱圧着法で製造するときに、これら封止材が必要以上に流れ出してバリを生じたりする恐れがある。
【0064】
また、エチレン・極性モノマー共重合体としては、成形加工性、機械的強度などを考慮すると、JIS K7210−1999、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR、以下同じ)が1〜300g/10分、とくに5〜100g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0065】
本発明において、エチレン極性モノマー共重合体としては、極性モノマー以外のモノマーを含有していてもよい、例えば、ビニルエステルや(メタ)アクリル酸エステルなどが共重合されたものを使用したときに、柔軟性付与の効果が得られる。その含有量は、本発明の目的を損なわない範囲で使用することが好ましい。
【0066】
このような、エチレン・極性モノマー共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合により得ることができる。また、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体と金属化合物を反応させることによって得ることができる。
【0067】
本発明においては、エチレン共重合体組成物にはアミノ基を含有するアルコキシシランを含有していてもよい。本発明においてエチレン共重合体組成物に配合されるアミノ基を含有するアルコキシシランとしては、具体的には、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン又はN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシキシシランなどのアミノトリアルコキシシラン類、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロプルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロプルメチルジエトキシシラン、3−メチルジメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、又は3−メチルジメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンなどのアミノ−ジアルコキシシラン類などを挙げることができる。
【0068】
これらの中でも3−アミノプロピルトリメトキシキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどが好ましい。
【0069】
エチレン共重合体組成物にジアルコキシシランを用いた場合には、シート成形時の加工安定性を維持することができるので、より好ましい。
【0070】
アミノ基を有するアルコキシシランは、接着性改良効果及びシート成形時の加工安定性の観点から、エチレン・極性モノマー共重合体100質量部に対し、3質量部以下(0〜3質量部)、好ましくは0.03〜3質量部、とくに0.05〜1.5質量部の割合で配合される。
【0071】
また、エチレン共重合体組成物には、太陽光線中の紫外線に基づく封止材の劣化を防ぐために、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの耐候安定剤の少なくとも一種を配合するのが効果的である。酸化防止剤として、例えば、各種ヒンダードフェノール系やホスファイト系のものを好適に使用することができる。また、光安定剤としては、ヒンダードアミン系のものを好適に使用することができる。
【0072】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフエノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフエノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−カルボキシベンゾフエノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフエノンなどのベンゾフエノン系、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第3ブチルフエニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフエニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−第3オクチルフエニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系、フエニルサリチレート、p−オクチルフエニルサリチレートなどのサリチル酸エステル系のものなどが使用できる。これら、耐候安定剤は、エチレン・極性モノマー共重合体100質量部に対し、5質量部以下、特に、0.1〜3質量部の割合で配合するのが効果的である。
【0073】
更に、エチレン共重合体組成物には、その使用目的を損なわない範囲において、任意の他の添加剤を配合することができる。そのような他の添加剤としては、公知の各種添加剤を使用することができる。他の添加剤の例としては、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、発泡剤、発泡助剤、無機充填剤などを例示することができる。
【0074】
本発明において、エチレン共重合体組成物を太陽電池セル封止材として用いる場合は、例えば、変色防止剤として、カドミウム、バリウム等の金属の脂肪酸塩を配合することができる。また、下部の裏面保護材側の封止材として用いる場合においては、透明性は要求されないので、着色や発電効率の向上などの目的で、顔料、染料、無機充填剤などを配合することができる。例えば、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ウルトラマリンなどの青色顔料、カーボンブラックのような黒色顔料などのほか、ガラスビーズや光拡散剤などを例示することができる。とくに酸化チタンのような無機顔料を配合する系に適用すると、絶縁抵抗低下の防止効果が優れているので好ましい。無機顔料の好適な配合量は、エチレン・極性モノマー共重合体100質量部に対し、100質量部以下、好ましくは0.5〜50質量部、特に好ましくは4〜50質量部である。
【0075】
本発明において、上記エチレン共重合体組成物よりなる太陽電池封止材は、一般にはシート状にして使用される。封止材用シートの成形は、T−ダイ押出機、カレンダー成形機、インフレーション成形機などを使用する公知の方法によって行なうことができる。例えば、エチレン・極性モノマー共重合体及びシランカップリング剤、必要に応じて添加される無機顔料、その他の添加剤を予めドライブレンドして、押出機のホッパーから供給し、その他の配合成分は、マスターバッチにより添加することができる。
【0076】
本発明において、周期律表第I族又は第II族の元素を含むハイドロタルサイト系化合物、周期律表第I族又は第II族の元素とエチレンジアミン四酢酸との金属塩、及び、周期律表第I族、第II族又は第XII族の元素の酸化物から選ばれる化合物の1種または2種以上を含有することにより、ハロゲン系元素、又はハロゲン系元素を有する化合物に起因する腐食を大幅に改善する事ができる。これらのうち、ハイドロタルサイト系化合物が好適である。なお、周期律表第I族の元素としては、具体的に、リチウム、ナトリウム、カリウム等があげられ、周期律表第II族の元素としては、マグネシウム、カルシウム等があげられ、周期律表第XII族の元素としては、亜鉛等があげられる。
【0077】
周期律表第I族又は第II族の元素を含むハイドロタルサイト系化合物としては、天然物でも、合成物でもよいが、特にMAl(OH)2x+3y−2z(A)・aHO(MはMg、CaまたはZn、AはCOまたはHPO、x、y、zは正数、aは0〜正数)で示される複塩であるハイドロタルサイト系化合物を挙げることができる。これらのうち、好適なものとしては、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)20CO・5HO、MgAl(OH)14CO・4HO、Mg10Al(OH)22(CO・4HO、MgAl(OH)16HPO・4HO、CaAl(OH)16CO・4HO、Zn(OH)16CO・4HOがあげられる。なかでも、MgAl(OH)16CO・4HOが、ハロゲン系元素の吸収性に優れている点で好ましい。
【0078】
周期律表第I族又は第II族の元素とエチレンジアミン四酢酸との金属塩は、周期律表第I族又は第II族の元素が含まれていれば良く、他の族に属する金属元素が含まれていても良い。これらの金属塩としては、例えば、二ナトリウム塩、三ナトリウム塩、四ナトリウム塩、二カリウム塩、三カリウム塩、四カリウム塩、二ナトリウム一マグネシウム塩、二ナトリウム一カルシウム塩、二ナトリウム一鉄塩、二ナトリウム一亜鉛塩、二ナトリウム一バリウム塩、二ナトリウム一マンガン塩、二ナトリウム一鉛塩、二カリウム一マグネシウム塩などが好適である。なかでも、エチレンジアミン四酢酸のカルシウム塩が、ハロゲン系元素の吸収性に優れている点で好ましい。
【0079】
周期律表第I族、第II族又は第XII族の元素の酸化物としては多くの化合物が挙げられるが、とりわけ酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛が挙げられる。なかでも、酸化カルシウムが、ハロゲン系元素の吸収性に優れている点で好ましい。
【0080】
周期律表第I族又は第II族の元素を含むハイドロタルサイト系化合物の添加量は、樹脂に対して、0.01〜10質量%である。より好ましくは、0.05〜7質量%であり、さらに好ましくは、0.1〜5質量%である。0.01質量部未満の場合、ハロゲン系元素を有する化合物の吸収性能が不足し、変色、腐食防止効果が不十分であり、10質量%を超えると、樹脂とガラス等との接着性やラミネート加工時の流動性が著しく低下する。周期律表第I族又は第II族の元素とエチレンジアミン四酢酸との金属塩の添加量は、樹脂に対して、0.01〜10質量%である。より好ましくは、0.05〜7質量%であり、さらに好ましくは、0.1〜5質量%である。0.01質量部未満の場合、ハロゲン系元素を有する化合物の吸収性能が不足し、変色、腐食防止効果が不十分であり、10質量%を超えると、樹脂とガラス等との接着性やラミネート加工時の流動性が著しく低下する。周期律表第I族、第II族又は第XII族の元素の酸化物の添加量は、樹脂に対して、0.01〜10質量%である。より好ましくは、0.05〜7質量%であり、さらに好ましくは、0.1〜5質量%である。0.01質量部未満の場合、ハロゲン系元素を有する化合物の吸収性能が不足し、変色、腐食防止効果が不十分であり、10質量%を超えると、樹脂とガラス等との接着性やラミネート加工時の流動性が著しく低下する。
【0081】
樹脂(又はフィルム)中のハイドロタルサイト、エチレンジアミン四酢酸の金属塩または金属酸化物の平均粒子径は、10μm以下であることが好ましい。平均粒子径が10μmを超えると、大きな粒子や粒子の凝集塊が原因となって、後述する樹脂の引張伸度が150%未満となるおそれがある。ここでいう平均粒子径とはJIS Z8901中の8.3.1の光散乱法で定義される平均粒子径である。
【0082】
本発明の建築用合わせガラスラミネート用樹脂、自動車安全ガラスラミネート用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂は、樹脂100質量部に対してハロゲン系元素0.01〜5質量部程度が含まれていても、ハロゲン系元素を有する化合物を吸収して、樹脂の変色及び腐食を大幅に低減できる。本発明は、前記建築用合わせガラスラミネート用樹脂、自動車安全ガラスラミネート用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂の樹脂中の揮発分を除去して、0.01〜6質量%、より好ましくは0.1〜2質量%に調整することが好ましい。樹脂中の揮発分が6質量%より多くなると、長時間の使用による変色、腐食を十分に抑制することができなくなる傾向にある。樹脂中の揮発分の除去の方法としては、本発明のハイドロタルサイト系化合物、エチレンジアミン四酢酸の金属塩、又は、酸化物と樹脂を混合した後に、減圧下で揮発分を除去しながら、フィルムを製造する方法があげられる。
【0083】
本発明においては、フィルムの23℃、30%RHでのISO527引張試験に基く引張伸度が150%以上であることが重要であり、好ましくは200%以上、更に好ましくは250%以上である。樹脂の引張伸度が150%未満であると、中間層或いは封止材としての目的のひとつである落球強度が得られない。引張伸度を測定するための測定資料としてのフィルムの作製方法は特に限定されない。例えば、2枚の50μmの二軸延伸PETフィルムの間に十分な量の樹脂を投入し、スペーサーを用いて200℃、5気圧、30分のホットプレスを行い0.5mm厚のフィルムを作製し、測定試料とする方法があげられる。この測定試料を、23℃、30%RHに調整した後、一般的なフィルム引っ張り試験機にてISO527に規定された方法で引張試験を行い測定する。
【0084】
上記の樹脂(又はフィルム)中にハイドロタルサイト、エチレンジアミン四酢酸の金属塩または金属酸化物を混合、添加する方法は、その機能を消失させず、かつ上述したフィルムの伸度が満たされる方法であれば特に制限されないが、熱により溶融させて混練する方法、溶解液に樹脂を溶かし、これら添加剤を添加した後、乾燥する方法などが均一に分散性できる点で有用である。具体的には、L/D40以上の同方向二軸混練押出機で樹脂温度200〜250℃、好ましくは210〜230℃で溶融混練する方法、溶解液に樹脂を溶解し上記添加剤を添加した後乾燥する方法等が挙げられる。溶融混練において、樹脂温度が200℃未満であると、樹脂(又はフィルム)中のハイドロタルサイト、エチレンジアミン四酢酸の金属塩または金属酸化物の平均粒子径が10μmを越え、その結果、樹脂の引張伸度が150%未満となるおそれがある。ハイドロタルサイト、エチレンジアミン四酢酸の金属塩または金属酸化物の平均粒子径を小さくするには、混合の前にあらかじめ振動ボールミル等で粉砕する、篩に掛ける等して微細粒子としておくこと、粒子に表面処理を施すこと、金属石鹸等の分散剤を使用することも効果的である。ただし、分散剤を使用する際は、遊離した分散剤がガラスとの接着力を阻害しない程度の使用量とすることが好ましい。
【0085】
本発明のフィルムは、ラミネート工程での脱気性を高めるため、表面に凹凸を設けることが好ましい。凹凸を設ける方法としては、従来公知の方法が使用でき、例えば、押出し条件を調整することによりメルトフラクチャー構造を設ける方法、押出したフィルムにエンボス構造を付与する方法等が挙げられる。
【0086】
本発明のフィルムの厚さは、特に制限はないが、0.30mm〜2.28mmが好ましい。0.30mmより薄い場合は建築用合わせガラス、自動車用安全ガラスの耐貫通性能を満足する事が出来ず、太陽電池モジュールではセルや配線の周りの空間を十分に充填することができず、2.28mmより厚い場合はフィルム自体のコストが高く、またラミネート工程のサイクルタイムも長くなることから好ましくない。
【0087】
本発明の合わせガラスは、無機ガラスまたは有機ガラスからなる2枚以上のガラスの間に、本発明のガラス中間膜用樹脂(又はフィルム)を挿入し、積層したものである。また、合わせガラスの内部で、ガラス中間膜用樹脂(又はフィルム)と接する位置に装飾性、機能性の物質を備えた構成とする場合は、本発明のガラス中間膜用フィルムとして、ポリビニルアセタールフィルムを使用することは、特に有用である。
【0088】
2枚のガラスの間に配する装飾性、機能性物質としては特に制限はないが、装飾の為の金網や金属箔、光散乱材のための金属あるいは金属化合物、熱線吸収のための透明金属化合物、微粉末、他の有機、無機装飾物、印刷したプラスチックフィルム、熱センサー、光センサー、圧力センサー、薄膜静電容量センサー、液晶表示フィルム、エレクトロルミネッセンス機能膜、発光ダイオード、カメラ、ICタグ、アンテナ等、および、それらを接続するための電極や配線等が挙げられる。
【0089】
本発明に使用されるガラスは、特に制限はないが、フロートガラス、強化ガラス、網入りガラス、有機ガラスなどが使用できる。また、太陽電池モジュールの場合は、耐候性プラスチックフィルムを用いることも可能である。ガラスの厚さは特に制限はないが、1〜10mmが好ましく、2〜6mmがより好ましい。本発明の建築用合わせガラス、自動車安全ガラス、太陽電池モジュールは、公知の方法により製造され、充填材として本発明の樹脂(又はフィルム)が使用される。
【0090】
本発明で使用される太陽電池セルのタイプとしては、特に制限はないが、結晶型セルと薄膜型セル等が挙げられ、結晶型セルとしては、単結晶シリコン、多結晶シリコン等が挙げられ、薄膜型セルとしては、アモルファスシリコン及びそれと多結晶薄膜等との積層物等の薄膜シリコンタイプ、CIS、CIGS、CdTe、GaAsなどを使用した化合物半導体タイプ、その他、有機太陽電池タイプなどが挙げられる。
【0091】
結晶型セルの場合、本発明の樹脂(又はフィルム)が、ガラスなどの表面透明基板と結晶型セルの間、及び/又は、結晶型セルと裏面ガラス若しくはバックシートとの間に挿入され、ラミネートされることで、本発明の太陽電池モジュールを得ることができる。また、薄膜タイプのいわゆるスーパーストレートタイプの場合、太陽電池セルが装着された表面透明基板と裏面ガラス又はバックシートとの間に、本発明の樹脂(又はフィルム)が挿入される。サブストレートタイプの場合は、表面透明基板と、太陽電池セルが装着された基板との間に、本発明の樹脂(又はフィルム)が挿入される。さらに、これらの積層体に対して、更に透明基板やバックシート、その他の補強基板等との積層用の接着層として本発明のフィルムを使用することもできる。
【0092】
本発明の太陽電池モジュールは、上記充填材の全て又は一部に本発明のフィルムを使用する以外は、太陽電池モジュールの構造として公知の構造をとることができる。
【0093】
本発明の合わせガラスは、無機ガラス又は有機ガラスからなる2枚以上のガラスの間に本発明の樹脂を配置するか又はフィルムを挿入し、積層したものである。また、該合わせガラスの内部に、本発明のポリビニルアセタールフィルムと接する位置に機能性ユニットを備えたものにおいて、本発明のポリビニルアセタールフィルムの使用は特に有用である。
【0094】
本発明に使用されるバックシートは、特に制限はないが、耐候性に優れ、透湿度の低いものが好ましく使用され、ポリエステル系フィルム,フッ素系樹脂フィルム、及びそれらの積層物、及びそれらに無機化合物が積層されたものなどが使用できる。
【0095】
本発明に使用されるバックシートは、本発明の樹脂(又はフィルム)とのラミネート体において、例えば、180℃剥離試験での剥離強度が5N/cm以上であることが好ましく、7N/cm以上がより好ましく、10N/cm以上が更に好ましい。
【0096】
その他、本発明の建築用合わせガラス、自動車用安全ガラス、太陽電池モジュールには、公知のフレームやシーリング剤、ジャンクションボックス、取り付け治具及び架台、反射防止膜、太陽熱を利用した各種設備、雨樋構造などと組み合わせることが可能である。
【0097】
本発明の建築用合わせガラス、自動車用安全ガラス、太陽電池モジュールを得るためのラミネート方法は、公知の方法を取ることが可能であり、例えば、真空ラミネーター装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、ニップロールを用いる方法等が挙げられる。また、仮圧着後に、オートクレーブ工程に投入する方法も付加的に行なうことができる。
【0098】
真空ラミネーター装置を用いる場合、例えば、太陽電池の製造に用いられる公知の装置を使用し、1〜30000Paの減圧下、100〜200℃、特に130〜160℃の温度でラミネートされる。真空バッグ又は真空リングを用いる方法は、例えば、EP1235683B1に記載されており、例えば、約20000Paの圧力下、130〜145℃でラミネートされる。
【0099】
ニップロールを用いる場合、例えば、可塑化ポリビニルアセタール樹脂の流動開始温度以下の温度で1回目の仮圧着した後、さらに流動開始温度に近い条件で仮圧着する方法が挙げられる。具体的には、例えば、赤外線ヒーターなどで30〜70℃に加熱した後、ロールで脱気し、さらに50〜120℃に加熱した後ロールで圧着して接着又は仮接着させる方法が挙げられる。
【0100】
仮圧着後に付加的に行なわれるオートクレーブ工程は、モジュールや合わせガラスの厚さや構成にもよるが、例えば、約1〜1.5MPaの圧力下、130〜145℃の温度で約2時間実施される。
【0101】
本発明の建築用合わせガラス、自動車用安全ガラスは、窓、フロントガラス、壁、屋根、サンルーム、防音壁、ショーウィンドー、バルコニー、手すり壁等の部材として、または会議室などの仕切りガラス部材等として使用でき、家電製品として使用することもできる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。なお、以降の実施例において、「%」および「部」は、特に記載がない限り、それぞれ「質量%」および「質量部」を意味する。
【0103】
揮発分は、樹脂またはフィルム100gを140℃で30分加熱し、式(1)により求めた。
【0104】
【数1】

【0105】
ハロゲン濃度の測定は以下の方法により行なう。まず、HNO1ml、蒸留水10ml、エタノール80mlを三角フラスコに入れた溶液を作製し、約1gのPVBサンプルを精秤したのち、前述の三角フラスコにPVBサンプルを添加し、加熱下(50〜60℃程度)で攪拌・溶解する。別途、ブランクサンプルも、PVBを添加しないこと以外は同様にして、調製する。各サンプルに0.001mol/l AgNO水溶液を滴下し、伝導度の変化により滴定し、式(2)によりハロゲン濃度を求めた。
【0106】
【数2】

【0107】
w:ハロゲン量(ppm)
V(B1):ブランクサンプルのAgNO滴下量(ml、n=2の平均値)
V(サンプル):PVBサンプルの滴定で消費されたAgNO滴下量(ml、n=2の平均値)
35.45:0.001モル/LのAgNOを用いる際の係数
固形分:サンプルの固形分割合
m:秤量されたサンプルの質量(g)
【0108】
PVB樹脂における酢酸ビニル単位の含有率はJIS K6728:1977の規定に基づき測定した。PVB樹脂におけるビニルアルコール単位の含有率はJIS K6728:1977の規定に基づき測定した。
【0109】
フィルムの引張伸度は、23℃、30%RHで、ISO527引張試験に基く試験を行い、測定した。
【0110】
(実施例1)
攪拌機を取り付けた2m反応器に、PVA(PVA−1:重合度1700、けん化度99モル%)7.5%の水溶液1700kgと、ブチルアルデヒド74.6kg、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.13kgを仕込み、全体を14℃に冷却した。これに、濃度20質量%の塩酸160.1Lを添加して、PVAのブチラール化を開始した。塩酸の添加が終了してから10分後、90分かけて65℃まで昇温し、更に120分反応を行った。その後、室温まで冷却して析出した樹脂をろ過し、イオン交換水(樹脂に対して10倍量のイオン交換水で10回)で洗浄した。その後、0.3質量%水酸化ナトリウム溶液を用いて充分に中和を行い、さらに、樹脂に対して10倍量のイオン交換水で10回洗浄し、脱水したのち、乾燥させ、PVB樹脂(PVB−1)を得た。得られたPVB樹脂は、酢酸ビニル単位0.9モル%、ビニルアルコール単位28.5モル%であった。
【0111】
ここで得られたPVB樹脂100部に対して、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキサノエート)30部、平均粒子径が6μmのMgAl(OH)16CO・4HOを3.0部添加し、予備混合した後、L/D44、スクリュー径30mm、ツーチップのニーディングディスクを先端より20〜30cmの位置に配した同方向二軸押出機を用いて、押出機のベント口1つを真空ポンプに接続し、減圧により揮発分を除去しながら、吐出量8kg/hr、回転数250rpmで混練押出を行い、樹脂温度が240±5℃になるように調整して、混練ペレットを製造し、更に40mm径のフルフライト1軸押出機、60cm幅のコートハンガーダイで製膜して厚さ760μm、幅50cmのPVBフィルム(BF−1)を製造した。このときのフィルムの揮発分は0.4%、ハロゲン元素含有量は150ppmであった。フィルムの引張伸度は250%であった。
【0112】
旭ガラス株式会社製フロート板ガラス3.2mm×20cm×20cmのガラス2枚、住軽アルミ箔株式会社製アルミ箔1N30、30μm×15cm×15cm1枚、上記フィルム(BF−1)20cm×20cm2枚を、ガラス/BF−1/アルミ箔/BF−1/ガラスの様に重ね、バキュームラミネーターを用いて熱板温度145℃、真空度10−1Pa、ラミネート時間30分で、合わせガラスを作製した。合わせガラスには気泡は無く、アルミ箔に変色、腐食は見られなかった。
【0113】
長期保存性評価のための加速試験として、上記合わせガラスの端面を保護することなく、90℃、85%RHの恒温恒湿チャンバー内に2000時間保持した。保持後の外観に変化は見られなかった。
【0114】
(実施例2)
実施例1のアルミ箔に替えて、結晶シリコンセルに電流を取り出す為、はんだコートした銅線(厚さ0.3mm×幅5mm)をはんだ付けした物を間に配して、他は同様にして結晶シリコン型太陽電池モジュールを作製した。モジュールには気泡は無く、変色、腐食も見られなかった。このモジュールを標準光にて初期の発電量を測定した後、実施例1と同様にして、90℃、85%RHの恒温恒湿チャンバー内に2000時間保持した。保持後の外観に変化は見られず、発電量の低下は5%であった。
【0115】
(実施例3)
実施例1のMgAl(OH)16CO・4HOに替えて、平均粒子径を4μmに調整したエチレンジアミン四酢酸のカルシウム塩を1部添加した他は同様にして、フィルムを得た(BF−2)。揮発分は0.5%、ハロゲン元素含有量は150ppmであった。フィルムの引張伸度は260%であった。これを用いて、実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。合わせガラスには気泡は無く、変色、腐食も見られなかった。これを実施例1と同様に90℃、85%RHの恒温恒湿チャンバー内に2000時間保管した後の外観を確認したが、変色、腐食は見られなかった。
【0116】
(実施例4)
実施例1のMgAl(OH)16CO・4HOに替えて、平均粒子径を8μmに調整した酸化カルシウム5部を添加した他は同様にして、フィルムを得た(BF−3)。揮発分は0.4%、ハロゲン元素含有量は180ppmであった。フィルムの引張伸度は230%であった。このフィルムを用いて、実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。合わせガラスには気泡は無く、変色、腐食も見られなかった。これを実施例1と同様に90℃、85%RHの恒温恒湿チャンバー内に2000時間保管した後の外観を確認したが、変色、腐食は見られなかった。
【0117】
(実施例5)
酢酸ビニルユニット30質量%、MFR(190℃、2.16kg荷重、JIS規格K7210:1999年)が14g/10分のEVA100部に、有機過酸化物(日油株式会社製「ナイパーFF」、ベンゾイルパーオキサイド)を3部、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)1部、実施例1で使用したMgAl(OH)16CO・4HO 3.0部を添加し、樹脂温度を100℃以下に維持したまま溶融混練し、連続して押出し、0.4mmのフィルムを得た(EF−1)。揮発分は0.1質量%、ハロゲン元素含有量は100ppmであった。フィルムの引張伸度は410%であった。このフィルムを実施例1のPVBフィルム(BF−1)に替えて使用し、実施例1と同様にして、合わせガラスを作製した。合わせガラスには気泡は無く、変色、腐食も見られなかった。これを実施例1と同様に90℃、85%RHの恒温恒湿チャンバー内に2000時間保管した後の外観を確認したが、変色、腐食は見られなかった。
【0118】
(実施例6)
実施例1のPVBに替えて、メタクリル酸2.4質量%、アクリル酸エステル20.0質量%、亜鉛での中和度70モル%、MFR1.3g/10分(190℃、2.16kg)のアイオノマーを使用し、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキサノエート)を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、フィルムを得た(IF−1)。揮発分は0.1%以下、ハロゲン元素含有量は200ppmであった。フィルムの引張伸度は380%であった。これを用いた他は実施例1と同様にして、合わせガラスを作製した。合わせガラスには気泡は無く、変色、腐食も見られなかった。これを実施例1と同様に90℃、85%RHの恒温恒湿チャンバー内に2000時間保管した後の外観を確認したが、変色、腐食は見られなかった。
【0119】
(実施例7)
実施例1で用いたフィルムを水分にて吸湿させ、揮発分を4質量%に調整した。フィルムの引張伸度は360%であった。その後、実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。ラミネート直後に発泡による気泡が多数見られたがアルミ箔に変色や腐食は見られなかった。90℃、85%RH、1000時間後には、アルミ箔に変色、腐食は見られなかったが、2000時間後には、アルミ箔の一部に変色、腐食が見られた。
【0120】
(比較例1)
実施例1でMgAl(OH)16CO・4HOを添加しなかった以外は同様にしてフィルムを得た(BF−4)。揮発分は0.5%、ハロゲン元素含有量は170ppmであった。フィルムの引張伸度は340%であった。これを用い、実施例1と同様にして、合わせガラスを作った。ラミネート直後に異常は見られなかったが、90℃、85%RH、2000時間後には、アルミ箔の一部に変色、腐食が見られた。
【0121】
(比較例2)
比較例1で作製したフィルムを用いた以外は、実施例2と同様にして、太陽電池モジュールを作った。ラミネート直後に異常は見られなかったが、90℃、85%RH、2000時間後には、発電効率が13%低下した。
【0122】
(比較例3)
実施例1で、二軸押出機での混錬をニーディングディスクのないスクリューに替えて、吐出量12kg/hr、回転数200rpm、樹脂温度188℃の混練で押出しペレット化した、その後は同様にしてフィルムを得た。このフィルムの引張伸度は120%であった。
【0123】
(比較例4)
実施例5でMgAl(OH)16CO・4HOを添加しなかった以外は同様にしてフィルムを得た(EF−2)。揮発分は0.1%、ハロゲン元素含有量は170ppmであった。フィルムの引張伸度は520%であった。これを用いた以外は、実施例5と同様にして合わせガラスを作った。ラミネート直後に異常は見られなかったが、90℃、85%RH、2000時間後には、アルミ箔の一部に変色、腐食が見られた。
【0124】
(比較例5)
実施例6でMgAl(OH)16CO・4HOを添加しなかった以外は同様にしてフィルムを得た(IF−2)。揮発分は0.1%以下、ハロゲン元素含有量は120ppmであった。フィルムの引張伸度は480%であった。これを用いた以外は、実施例6と同様にして、合わせガラスを作った。ラミネート直後に異常は見られなかったが、90℃、85%RH、2000時間後には、アルミ箔の一部に変色、腐食が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明により、建築用合わせガラス、自動車フロントガラス、太陽電池モジュールなどの多層構造体の一層として使用される樹脂(又はフィルム)に含まれるハロゲン系元素により、樹脂に直接又は間接的に接触する金属や有機化合物等が腐食、劣化することを抑制できる樹脂、及び、これらの樹脂により得られる、長期間の使用が可能な多層構造体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂100質量部に対して、周期律表第I族又は第II族の元素を含むハイドロタルサイト系化合物0.01〜10質量部を含み、フィルムとした際の23℃、30%RHでのISO527引張試験に基く引張伸度が150%以上であることを特徴とする、建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂。
【請求項2】
樹脂100質量部に対して、周期律表第I族又は第II族の元素とエチレンジアミン四酢酸との金属塩0.01〜10質量部を含み、フィルムとした際の23℃、30%RHでのISO527引張試験に基く引張伸度が150%以上であることを特徴とする、建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂。
【請求項3】
樹脂100質量部に対して、周期律表第I族、第II族又は第XII族の元素の酸化物0.01〜10質量部を含み、フィルムとした際の23℃、30%RHでのISO527引張試験に基く引張伸度が150%以上であることを特徴とする、建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂。
【請求項4】
樹脂100質量部に対して、ハロゲン系元素0.01〜5質量部を含む請求項1〜3のいずれかに記載の建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂。
【請求項5】
樹脂が、可塑化ポリビニルアセタール又は無可塑化ポリビニルアセタールである請求項1〜4のいずれかに記載の建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂。
【請求項6】
樹脂が、エチレンビニルアセテートである請求項1〜4のいずれかに記載の建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂。
【請求項7】
樹脂が、不飽和カルボン酸共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載の建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂。
【請求項8】
ポリビニルアセタールがポリビニルブチラールであることを特徴とする請求項5記載の建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂からなるフィルム。
【請求項10】
請求項9に記載のフィルムと、ガラスとを積層して得られる多層構造体。
【請求項11】
請求項9に記載のフィルムと、ガラスとを積層する多層構造体の製造方法。
【請求項12】
さらに、樹脂中の揮発分を除去して、揮発分を0.01〜6質量%に調整する工程を含む、請求項11に記載の多層構造体の製造方法。
【請求項13】
樹脂100質量部、及び、周期律表第I族又は第II族の元素を含むハイドロタルサイト系化合物0.01〜10質量部を樹脂温度200〜250℃で溶融混練することを特徴とする建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂の製造方法。
【請求項14】
樹脂100質量部、及び、周期律表第I族又は第II族の元素とエチレンジアミン四酢酸との金属塩0.01〜10質量部を樹脂温度200〜250℃で溶融混練することを特徴とする建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂の製造方法。
【請求項15】
樹脂100質量部、及び、周期律表第I族、第II族又は第XII族の元素の酸化物0.01〜10質量部を樹脂温度200〜250℃で溶融混練することを特徴とする建築用合わせガラス中間膜用樹脂、自動車安全ガラス中間膜用樹脂又は太陽電池封止材用樹脂の製造方法。