説明

ガラス印刷方法及びガラス容器

【課題】 印刷表面の凹凸を強調して見えるようにすることで、印刷表面を和紙のように見せたり、しぼ加工したように見せたり、従来無かった意匠的効果を得ることができる印刷方法を開発する。
【解決手段】 ガラス表面に、ガラス粉末と無機顔料を含むインキを塗布し、地色を形成するステップと、該地色の上に、ガラス粉末と5重量%未満の無機顔料を含む凹凸形成インキを斑状に塗布し、表面に凹凸を形成するステップと、前記凹凸形成インキの上に、ガラス粉末と無機顔料を含むインキを塗布し、任意の文字又は模様を形成するステップと、前記ガラスを加熱して前記インキを焼き付けるステップにより印刷を行う。凹凸形成インキの無機顔料を5重量%未満とすることで、透明性が高くなり、地色から反射して出た光が凹凸形成インキで屈折し、凹凸が強調されて見え、斑状のパターン形状によって、印刷面が和紙のように見えたり、しぼ加工を施してあるように見えたりする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なガラス印刷方法、及びこの印刷方法で印刷を施したガラス容器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示されるように、従来から、サテンインキを用いて印刷することで、印刷表面をマット状に焼き付けることができることが知られている。マット状とは、印刷表面が粗くなってザラザラした状態をいう。マット状とすることで、印刷表面に鉛筆で字を書けるようにしたり、印刷表面がつや消し状又はすりガラス状に見えるようにすることができる。
【特許文献1】特開昭63−258971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
サテンインキを用いて印刷すると、印刷表面に非常に細かい凹凸が形成されて、表面がザラザラした感じになるが、印刷表面がつや消し状又はすりガラス状に見える程度の意匠的効果しか得ることができない。本発明は、印刷表面の凹凸を強調して見えるようにすることで、印刷表面を和紙のように見せたり、しぼ加工したように見せたり、従来無かった意匠的効果を得ることができる印刷方法を開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(構成1)
本発明は、ガラス表面に、ガラス粉末と無機顔料を含むインキを塗布し、地色を形成するステップと、
該地色の上に、ガラス粉末と5重量%未満の無機顔料を含む凹凸形成インキを斑状に塗布し、表面に凹凸を形成するステップと、
前記凹凸形成インキの上に、ガラス粉末と無機顔料を含むインキを塗布し、任意の文字又は模様を形成するステップと、
前記ガラスを加熱して前記インキを焼き付けるステップとを有することを特徴とするガラス印刷方法である。
【0005】
地色を形成するインキ、及び文字又は模様を形成するインキは、従来普通に用いられるガラス印刷用のインキを用いることができる。このようなインキは、例えば次のような成分を持ったものである。
ガラス粉末 60〜75重量%
無機顔料 10〜15重量%
高級アルコール 10〜29重量%
セルロース樹脂 1〜5重量%
ガラス粉末は、例えばホウ珪酸ガラスのように、比較的軟化点の低いガラスを用いる。高級アルコール及びセルロース樹脂はインキに流動性と粘性を与えるためのバインダーであるが、バインダーはこれに限らず種々の有機溶媒や樹脂を用いることができる。また、これらの成分に加えて、消泡剤、アルミナ、雲母などの各種添加剤を加えてもよい。
【0006】
凹凸形成インキは、上記従来のインキの成分から無機顔料を5重量%未満(0重量%を含む)に減らしたものとすることができる。凹凸形成インキは無機顔料が5重量%未満であるので、透明性が高く、地色から反射して出た光が凹凸形成インキで屈折し、凹凸が強調されて見える。したがって、斑状のパターン形状によって、印刷面が和紙のように見えたり、しぼ加工を施してあるように見えたりする。無機顔料を5重量%以上とすると、凹凸が強調されて見える効果が減少し、凹凸の立体感が薄れ、意匠的効果が減少する。凹凸形成インキは斑状に塗布するが、この場合の斑状とは、凹凸形成インキが塗布される領域と塗布されない領域とが細かく入り混じっている状態をいう。
【0007】
インキの焼き付け工程は、従来の通常のガラス印刷の場合と同様である。すなわち、インキをガラスに焼き付ける際の加熱温度は、インキに含まれるガラス粉末が軟化して焼き付く温度で、印刷対象となっているガラス(ベースガラス)に影響を与えない温度が好ましい。ベースガラスがソーダ石灰ガラスで、インキのガラス粉末がホウ珪酸ガラスの場合、600〜620℃程度が適当である。
【0008】
(構成2)
また本発明は、前記構成1の印刷方法において、前記表面に凹凸を形成するステップで、前記文字又は模様を形成する領域に前記凹凸形成インキをべた塗りすることを特徴とするガラス印刷方法である。
【0009】
文字又は模様を形成する領域に凹凸形成インキをべた塗りすると、文字又は模様を印刷するインキは、べた塗りされた凹凸形成インキの上に塗布されるから、文字又は模様がかすれることなく、鮮明に印刷される。
【0010】
(構成3)
また本発明は、前記構成1又は2の印刷方法において、前記各インキを塗布するステップをスクリーン印刷で行うと共に、前記凹凸形成インキを塗布する場合のスクリーンのメッシュの粗さを150〜180としたことを特徴とするガラス印刷方法である。
【0011】
凹凸形成インキを塗布する場合のスクリーンのメッシュの粗さを150〜180(下限値及び上限値を含む)とすることでインキを厚く塗布し、凸の部分の高さを高くすることができ、和紙調、しぼ加工調に見える意匠的効果が大きくなる。メッシュの粗さとは、縦又は横の辺の25.4mm(1インチ)当たりの網目の数であり、メッシュの粗さが150〜180とは、縦の辺と横の辺の双方共に150〜180メッシュであることを意味する。
【0012】
(構成4)
また本発明は、前記構成1〜3の印刷方法による印刷を施したことを特徴とするガラス容器である。ガラス容器とは、ガラスびん、ガラス食器、花瓶などである。特に、ガラスびんの外面に、本発明方法によりラベルを印刷すると、ガラスびんに和紙のラベル、しぼ加工したラベルを貼り付けたような意匠的効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガラス印刷方法は、印刷表面に凹凸が形成されると共に、その凹凸が強調されて見えるので、印刷部分が和紙や、しぼ加工した紙を貼付したような意匠的効果を得ることができ、商品価値が高められる。
【実施例】
【0014】
図1はラベルを印刷部2によって形成したガラスびん1の正面図、図2は印刷の工程の説明図、図3は凹凸形成インキを斑状に塗布するパターン形状の説明図である。
【0015】
図1のガラスびん1は飲料を包装するソーダ石灰ガラス製の透明なガラスびんで、ラベルを印刷部2によって形成している。ラベルを印刷によって形成すると、ラベル紙を貼付するのに比べて、リターナブルびんを反復使用する場合にラベルを貼り直す必要がない、びんが濡れたときなどラベルが剥がれるおそれがない、ラベルを改ざんできない、などの利点がある。印刷部2は、全体が白い地色となっており、中央部に大きく「ABC」と黒字で表示され、その下段に小さく「ABC」と赤字で表示されている。
【0016】
次に、印刷部2を形成する工程を図2、3に基づいて説明する。
(1)地色の形成
図2(A)は地色の印刷領域(斜線部)を示している。この領域は印刷部2の全体である。奥野製薬工業株式会社製のZ−738(商品名)白色インキを250メッシュのスクリーン印刷で塗布した上に、同社製のHS−72(商品名)白色インキを200メッシュのスクリーン印刷で重ねて塗布し、地色を形成した。
(2)凹凸の形成
図2(B)の斜線部は、凹凸形成インキを斑状に塗布する領域、黒色の部分は凹凸形成インキをべた塗りで塗布する領域(後工程で文字を形成する領域)を示している。凹凸形成インキは奥野製薬工業株式会社製のS−1059(商品名)を用い、165メッシュのスクリーン印刷で塗布した。このインキは無機顔料を含まない(含有量0wt%)ものである。図3は凹凸形成インキを斑状に塗布する場合のパターン形状の例を示している。同図で黒色の部分はインキが塗布される部分、白色の部分はインキが塗布されない部分である。インキが塗布された部分はインキによって盛り上がり、凸部となる。インキが塗布されない部分は凹部となる。これによって、地色の上に斑状の凹凸が形成される。
(3)文字の形成
図2(C)に示すように、奥野製薬工業株式会社製のHZ−5423(商品名)黒色インキを用い、250メッシュのスクリーン印刷で大きな「ABC」の文字を形成した。さらに、図2(D)に示すように、同社製のHZ−10014(商品名)赤色インキを用い、200メッシュのスクリーン印刷で小さな「ABC」の文字を形成した。
(4)インキの焼き付け
インキを塗布した常温のガラスびん1を電気炉に入れ、600〜620℃の温度まで昇温、8分間加熱保持し、その後常温まで徐冷することによりインキを焼き付けた。
【0017】
印刷部2は、その白の地色部分に、細かい斑状の凹凸が形成されおり、あたかも和紙のラベルを貼付したようで、たいへんに見栄えがよいものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ラベルを印刷部2によって形成したガラスびん1の正面図である。
【図2】印刷の工程の説明図である。
【図3】凹凸形成インキを斑状に塗布するパターン形状の説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 ガラスびん
2 印刷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス表面に、ガラス粉末と無機顔料を含むインキを塗布し、地色を形成するステップと、
該地色のインキ上に、ガラス粉末と5重量%未満の無機顔料を含む凹凸形成インキを斑状に塗布し、表面に凹凸を形成するステップと、
前記凹凸形成インキの上に、ガラス粉末と無機顔料を含むインキを塗布し、任意の文字又は模様を形成するステップと、
前記ガラスを加熱して前記各インキを焼き付けるステップとを有することを特徴とするガラス印刷方法。
【請求項2】
請求項1の印刷方法において、前記表面に凹凸を形成するステップで、前記文字又は模様を形成する領域に前記凹凸形成インキをべた塗りすることを特徴とするガラス印刷方法。
【請求項3】
請求項1又は2の印刷方法において、前記各インキを塗布するステップをスクリーン印刷で行うと共に、前記凹凸形成インキを塗布する場合のスクリーンのメッシュの粗さを150〜180(下限値及び上限値を含む)としたことを特徴とするガラス印刷方法。
【請求項4】
外面に、請求項1〜3の印刷方法による印刷を施したことを特徴とするガラス容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−55150(P2007−55150A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245143(P2005−245143)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000222222)東洋ガラス株式会社 (102)
【Fターム(参考)】