説明

ガラス又はセラミックスの低温接合用無鉛ハンダ合金

【課題】 人体に有害なPbを含有せず、しかも接合強度が高い、ガラス、セラミックスの低温接合用ハンダ合金を提供する。
【解決手段】
本発明に関わるガラス又はセラミックスの低温接合用無鉛ハンダ合金は、錫及び/又はビスマスを主体とし鉛を含まない融点120℃〜200℃の範囲の低融点無鉛ハンダ合金にガリウムを0.001〜3重量%添加したものである。ガリウムの添加量は、特に0.01〜2重量%の範囲が好ましい。ガリウムの添加量が0.001重量%でも添加効果が認められ接合強度7kg/mmとなるが、0.01重量%では10kg/mm台となる。ガリウムの添加量を2重量%以上にしても接合強度のさらなる改善は認められない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に有害な鉛を含有しない無鉛錫(Sn)系ハンダ合金に関し、特に、電子部品関係の金属とガラス、セラミックスとの接合への適用において有用な無鉛ハンダ合金に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラスやセラミックスの接合に用いる軟ロウ材(ハンダ合金)としては、錫(Sn)と鉛(Pb)の共晶組成付近の合金が一般に使用されてきた。特公昭45−1739号にはPb(40〜98重量%)−Sn(1.8〜50重量%)−Zn(0.05〜10重量%)−Sb(0.05〜10重量%)系の窯業体用ハンダ、特公昭51−4046号にはPb(40〜85重量%)−Sn(5〜50重量%)−Bi(3〜18重量%)−Sb(0.5〜12重量%)−Zn(0.5〜10重量%)系のガラス用ハンダが提案されている。その後鉛の人体に対する毒性が問題になり、鉛を含まないガラス、セラミックスの用ハンダ合金として特開昭62−252693号にはBi(25〜85重量%)−Sn(18〜68重量%)−Zn(0.1〜10重量%)−Sb(0.1〜10重量%)系のセラミックス用ハンダ、特開平11−77370号にはBi(30〜80重量%)−Sn(18〜88重量%)−Ti(0,1〜5重量%)系のガラス、セラミックス用ハンダなどが提案されているが、接合強度は鉛を含むハンダ合金に比べ劣り7kg/mm以上の特性が出ない。
【特許文献1】特開昭45−1739号公報
【特許文献2】特公昭51−4046号公報
【特許文献3】特開昭62−252693号公報
【特許文献4】特開平11−77370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、人体に有害なPbを含有せず、しかも接合強度が高い、具体的には7kg/mm以上あるガラス、セラミックスの低温接合用ハンダ合金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に関わるガラス又はセラミックスの低温接合用無鉛ハンダ合金は、錫及び/又はビスマスを主体とし鉛を含まない融点120℃〜200℃の範囲の低融点無鉛ハンダ合金にガリウムを0.001〜3重量%添加したものである。
【発明の効果】
【0005】
ガラスやセラミックス相互、又はそれらと金属の接合強度が7kg/mm以上あるガラス、セラミックスの低温接合用ハンダ合金が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のベース(ガリウム添加前)となる錫及び/又はビスマスを主体とする低融点無鉛ハンダ合金としては、錫30〜85重量%、ビスマス15〜60重量%、インジウム0〜15重量%よりなり鉛を含まない融点120℃〜200℃の範囲の低融点無鉛ハンダ合金が推奨される。またこの低融点無鉛ハンダ合金に対するガリウムの添加量は0.001〜3重量%の範囲、特に0.01〜1重量%の範囲が好ましい。ガリウムの添加量画0.001重量%でも添加効果が認められ接合強度7kg/mmとなるが、0.01重量%では10kg/mm台となる。一方ガリウムの添加量を2重量%以上にしても接合強度のさらなる改善は認められない。
【実施例】
【0007】
表1に示す実施例1〜9の組成のハンダ合金及び比較例1〜3の組成(ガリウムを含まず)のハンダ合金を調製し、ガラス管の熱衝撃破壊指数及びガラスと金属の接合強度を測定した。結果を表1、2、3に示す。表1は実施例及び比較例の全てをまとめた表、表2は共通のベースハンダ合金(Bi:28.0重量%、In:3.0重量%、Sn:残り)においてGaの添加量の影響がわかるように編集したもの、表3は同一のGa添加量(0.001重量%及び2重量%)において異なるベースハンダ合金組成の影響を示したものである。ガラス管の熱衝撃破壊指数の測定は、外径4mm、肉厚0.5mmのガラス管10本を溶融金属中に挿入し挿入2秒後に取り出し10本中の破壊した本数で示す。ガラスと金属の接合強度の測定は、ガラス板の表面に金属線の先端をハンダ付けしたものをガラス板面に対して45度の方向に引っ張り、剥がれたときの強度(kg/mm)で示す。
【0008】
【表1】

【0009】
【表2】

【0010】
表2より、ガリウムの添加量は0.001〜3重量%の範囲、特に0.01〜2重量%の範囲が好ましこと。ガリウムの添加量が0.001重量%でも添加効果が認められ接合強度7kg/mmとなるが、0.01重量%では10kg/mm台となること、ガリウムの添加量を2重量%以上にしても接合強度のさらなる改善は認められないことなどが分かる。
【0011】
【表3】

【0012】
表3の結果を見れば、ガラス管の熱衝撃破壊指数やガラスと金属の接合強度はガリウムの添加量の影響が支配的であり、ベースの錫及び/又はビスマスを主体とし鉛を含まない合金における組成の変化は支配的でないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錫及び/又はビスマスを主体とし鉛を含まない融点120℃〜200℃の範囲の低融点無鉛ハンダ合金にガリウムを0.001〜3重量%添加したものであることを特徴とするガラス又はセラミックスの低温接合用無鉛ハンダ合金。
【請求項2】
ガリウムの添加量が0.01〜2重量%の範囲である請求項1に記載のガラス又はセラミックスの低温接合用無鉛ハンダ合金。
【請求項3】
錫30〜85重量%、ビスマス15〜60重量%、インジウム0〜15重量%よりなり鉛を含まない融点120℃〜200℃の範囲の低融点無鉛ハンダ合金にガリウムを0.001重量%〜3重量%添加したものであることを特徴とするガラス又はセラミックスの低温接合用無鉛ハンダ合金。
【請求項4】
ガリウムの添加量が0.01〜2重量%の範囲である請求項3に記載のガラス又はセラミックスの低温接合用無鉛ハンダ合金。