説明

ガラス繊維巻き取り用チューブとその作製方法、及びガラス繊維の製造方法

【課題】ガラス繊維を巻き取るため強度を有し、吸水問題を回避し、環境面にも配慮したチューブの作製方法。
【解決手段】略円筒体20の外周面20aが樹脂フィルム材30で被覆され、その外周面20aに一端20b側から他端20c側に至る少なくとも1以上の折れ線加工が施されてなる。ガラス繊維巻き取り用チューブ10の作製方法は、円筒状の樹脂フィルム30内に折れ線加工部を形成した略円筒体20を円筒の内側へと折り込み、略円筒体20を挿入後に折り込みを解除する。ガラス繊維の製造方法は、本発明のガラス繊維巻き取り用チューブ10に熔融ガラスから急冷されたガラスフィラメントを集束したガラスストランドを、巻き取り径に応じた回転速度で連続的に巻き取り、ガラスストランドに一定の張力を付与しつつガラス繊維回巻体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維ストランド等のガラス繊維を巻き取るのに適したガラス繊維巻き取り用チューブと、ガラス繊維巻き取り用チューブの作製方法、さらにこのガラス繊維用巻き取りチューブを使用するガラス繊維の製造方法に関する。
【0002】
一般にガラス繊維を巻き取るために使用されるガラス繊維巻き取りチューブは、各種ガラス繊維製品の製造工程において使用されるものである。このガラス繊維巻き取りチューブは、ガラス溶融炉に配されたブッシングから引き出された複数のガラスフィラメントの表面に集束剤等の薬剤を塗布し、さらにトラバースを経てその複数本を集束したガラス繊維束(ガラスストランド)を巻き取るために、ターレット形ワインダ等の巻き取り装置のコレットに装着して用いられる。従来、ガラス繊維巻き取りチューブは、紙製のもの、あるいは樹脂製のものが使用されている。ガラス繊維巻き取りチューブを使用するガラス繊維製品の製造工程は、このガラス繊維巻き取りチューブの外周にガラス繊維束を巻き取ってゆき、ガラス繊維束の巻き取りを完了した、すなわち満巻き状態となった状態で、コレットから抜き取られてガラスストランドが円筒状に巻き取られたケーキ、あるいはチーズと呼称されるガラス繊維回巻体とする。そしてさらにガラス繊維の用途によっては、必要に応じてこのガラス繊維回巻体からガラスストランドを解除してゆき、ガラスロービングとする、あるいは所定長で切断することでガラスチョップドストランド等が製造されている。
【0003】
ガラス繊維巻き取りチューブは、このように紡糸されたガラス繊維束を一纏めにすることによって、この後に続く乾燥や保管、様々な2次加工等での取り扱いを行い易くして、各種の作業を効率よく施すために、ガラス長繊維の製造工程では基本的で重要な部材の一つである。このため、これまでにもガラス繊維巻き取りチューブについては、多くの発明が行われてきた。例えば特許文献1には、紙製のガラス繊維巻き取りチューブ、すなわち紙管と呼ばれるものの弱点である紡糸工程での集束剤を含む水分の吸水や搬送時の取り扱い等によって生じる傷等に起因してチューブの再使用回数が少ないという問題やチューブを抜き取りにくいという問題を改善するために、耐久性が高く、ガラス繊維の巻回体から容易に抜き取りが行えるものとして、軸芯に対して0±60°の傾きを有する溝が外表面に形成されてなる樹脂製巻き取りチューブが開示されている。
【0004】
また特許文献2では、チューブに水分が多く含まれるとチューブをガラス繊維の巻回体から抜き取り難くなるのを防ぐために、軸芯に対して垂直な断面が谷部と山部からなる波形状を有し、略楕円形である樹脂製の巻き取りチューブが開示されている。
【0005】
さらに特許文献3では、集束剤に含まれる水や有機溶剤によって巻き取りチューブの破断やガラス繊維の着色が発生するという問題を解決するために、合成繊維不織布筒状体とその内面に1又は2以上の接合部材により一端が固定された紙製シートを備えるもので、紙製シートは、合成繊維不織布筒状体の内面に沿うようにしてロール状に巻かれ、紙製シートの他端が、上記一端に内設する構造とすることが開示されている。
【特許文献1】特開2001−122636号公報
【特許文献2】特開2002−104739号公報
【特許文献3】特開2003−292335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしこれまでに行われた発明だけでは、ガラス繊維を製造する環境をより高い水準へと向上させ、産業界が求めるさらに高品位のガラス繊維製品を潤沢に製造するには充分なものとは言えない。近年、あらゆる業種で様々な環境問題への取り組みが強化される中で、炭酸ガスの排出規制等、環境に対して大きな負荷をかける材料等は極力負荷の小さいものへと転換が行われつつあるが、このような状況の中にあって、ガラス繊維の製造に関わる各種資材、物流関連品等に関しても、なるべく環境に優しい材料で、しかも従来よりも一層高い機能を有するものが求められるようになってきている。特許文献1や特許文献2のガラス繊維巻き取りチューブに関する構成は、確かにチューブの性能を高めるものとはなるが、耐用期間の過ぎた、あるいは損傷などにより使用できなくなったこのような部材を如何にして環境に負担をかけることなく処分するかという点で注意が必要となる。1つでも環境負荷を高めるものが存在する限り、他の数多くの努力は水泡に帰す場合もあるからである。
【0007】
また従来の紙管については、水を含有した状態での強度の問題があり、水等で膨潤した状態の紙管では、前記したようにガラス繊維の巻回体から抜き取り難く、作業性が悪いという問題もある。さらに、紙管が水分を浸み込ませやすいと、強度や作業性以外にもガラス繊維の性能にも悪影響を及ぼすものとなる。つまり、紙管に巻き取られたガラス繊維に付着している水分の紙管への移行に伴い、ガラス繊維に付着している集束剤もケーキの内層方向に移動することになる。そして集束剤成分を構成する有機分子等は、分子レベルの寸法が水分子よりも大きいため、紙管に浸み込む量が水よりも少なく、浸み込むことができなかった集束剤はケーキ内層部に溜まることになる。この結果として、ケーキ内層部の集束剤付着量が異常に高くなり、1つのケーキに集束剤の大きな濃度勾配が生じた状態となり製品化できなくなる品位となるものもある。このように集束剤が時間とともに移行し、ガラス繊維の集束剤付着量が局所的に多くなるマイグレーション(Migration)と呼ばれる現象を抑止するためにも、チューブは水分を浸み込みにくくすることが求められることになる。また従来のチューブでは、巻き取られたガラス繊維と巻き取りチューブ表面がガラスストランドに付着している集束剤により接着された状態になってしまったり、あるいは集束剤成分がチューブ表面に付着、残留したりして、チューブを再利用できないというものが発生するという問題もあった。
【0008】
一方、特許文献3のように合成繊維不織布筒状体を用いて接合部材を使用することで紙製シートと一体化した構造とする場合には、老朽化後には、環境面を考慮するならば、合成繊維不織布筒状体と紙製シートを分別する必要性から、廃棄あるいはリサイクル時に強固に接着された状態になっている接合箇所を一つずつはずしていくという作業を行う必要性が生じ、時間と労力を要し、経済的なものとは言えない。またガラス繊維巻き取り用チューブは、ガラス繊維を巻き取っていない未使用時にチューブを高い品質を維持した状態で保管しようとすると、筒状であるため嵩張ってしまうので保管スペースを確保するための保管費用が嵩む問題がある。また従来の紙管は、長時間に亘る保管を行う場合に、チューブ品質が維持できる相応の環境条件を満足するそれなりの保管場所を探す手間を要するという問題もある。また強度や吸水性のみに対処するならば、コスト度外視で高価な材料や設備を使用するということも可能ではあるが、そのようなことをすると製造費用が高価になり過ぎるので、製品の価格を維持するためにもこれら諸問題を全て同時に解決することのできる新たなる発明が必要であった。
【0009】
本発明は、上述した状況に鑑み行われたものであって、上述したような様々な問題に適性に対処することが可能であって、周囲にガラス繊維を巻き取るための充分な強度を有し、しかも集束剤使用時に問題となる水の吸水によって生じる問題を回避し、さらに環境面にも配慮した構成となるガラス繊維巻き取り用チューブと、このガラス繊維巻き取り用チューブの作製方法、さらにこのガラス繊維巻き取り用チューブを使用するガラス繊維の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、外周面にガラス繊維を巻き取る略円筒体を有するガラス繊維巻き取り用チューブであって、前記略円筒体は、その外周面が樹脂フィルム材によって被覆されており、略円筒体の外周面に一端側から他端側に至る少なくとも1以上の折れ線加工部が形成されてなることを特徴とする。
【0011】
ここで、外周面にガラス繊維を巻き取る略円筒体を有するガラス繊維巻き取り用チューブであって、前記略円筒体は、その外周面が樹脂フィルム材によって被覆されており、略円筒体の外周面に一端側から他端側に至る少なくとも1以上の折れ線加工部が形成されてなるとは、次のようなものである。すなわち、ガラス溶融炉から紡出された熔融ガラスが急速に冷却されてガラスフィラメントとなった後に所定の表面被覆剤を塗布されて集束されたガラス繊維束として巻き取られる際に使用される略円筒形状を呈するガラス繊維巻き取りチューブについて、略円筒体の外周の表面が樹脂製フィルムによって被覆された状態となっており、しかも略円筒体の一方側の外周端から他方側の外周端に至るまでチューブを外周側面に対して中心に向けて折り曲げる際に使用される、少なくとも1本以上の線状の折れ加工部が形成された状態となっていることを意味している。
【0012】
本発明者は、従来の紙管の利便性を損なわず、しかも紙管の欠点を補うことが可能となるガラス繊維巻き取り用チューブの構成について研究を重ねた結果、強度が弱く耐久性に問題がある紙管の表面に樹脂フィルムを施す際に、樹脂フィルムと紙管とに接着剤等の使用を行わずとも強固に接合した構造とすることが可能で、老朽化した際には分別等の操作が容易な構成とすることができるガラス繊維巻き取りチューブを見出し、ここに提示するものである。
【0013】
本発明のガラス繊維巻き取り用チューブの略円筒状体の側面に施される、一端側から他端側に至る少なくとも1以上の折れ線加工部については、一端側から他端側に至るものとなっていれば、直線状であっても曲線状であってもよいが、加工の労力や加工費用等から最も好ましいのは、円筒の円周方向に垂直な方向の円筒側面上に折れ線加工部を1本だけ施すことである。また本発明における折れ線加工部とは、本発明のガラス繊維巻き取り用チューブの略円筒状体を一時的に内側、すなわちガラス繊維巻き取り用チューブの側面の円周に垂直な仮想的な軸方向へと側面を折り曲げた状態とする必要性が生じる場合に、大きな労力を伴うことなく、しかもチューブが同じ形状、あるいは類似した形状となるように折り曲げた状態にすることが可能となるような予備的な加工を略円筒状体の側面に施してあるものである。すなわちこのような折れ線加工の種類としては、型押し加工、エンボス加工、グルーブ加工あるいはノッチ加工等を施すことが可能であり、様々な加工を複数選択して適宜に施してもよい。ただし切れ込み等を不用意に施すと、その切れ込み箇所に応力が集中する結果、容易に破断し易くなる場合もあるので、注意を要する。
【0014】
本発明に係る樹脂フィルム材については、ガラス繊維を周囲に巻き取る操作時にガラス繊維の表面に損傷を及ぼす、あるいは焼却する場合に人体や環境に有害なガス成分が発生するといった問題がないものであれば、特に限定されることはなく様々な材質の樹脂フィルム材を使用してよい。
【0015】
また略円筒体についても、ガラス繊維を巻き取る際に加えられる力に耐えることのできる強度を有し、さらに弾性も有するものであって、環境上問題となるものでなければよく、焼却あるいは化学的に分解処理等を行った場合であっても有害ガスの発生などの悪影響が生じることのない材料で構成されたものとすることが好ましい。よって略円筒状体とする材料は、コルクのような柔軟性や弾力性を有する木材、段ボールのような紙材、木材と紙材とを併用、あるいは複合化したもの等を使用してよい。
【0016】
また本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、上述に加え略円筒体が紙製及び/又は木製であって、樹脂フィルム材が、ポリオレフィン樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂であるならば、環境上問題となるようなものにはならず、入手が容易な材料であるために製作費も要せずにチューブを構成することが可能である。
【0017】
ここで、略円筒状体が紙製及び/又は木製であって、樹脂フィルム材がポリオレフィン樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂であるとは、本発明のガラス繊維巻き取り用チューブを構成する略円筒体が紙材あるいは木材よりなるものであって、この略円筒体の外側表面等に施された樹脂フィルム材が、オレフィン系炭化水素物を原料とするポリオレフィン樹脂やPETとも略記され、エチレングリコールとテレフタル酸から作られるポリエチレンテレフタレート樹脂の何れかを含む構成よりなるものであることを表している。
【0018】
ポリオレフィン樹脂については、樹脂材をポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等の樹脂材を採用することができる。ポリオレフィン樹脂は、供給量や価格面で入手が容易であり、ガラス繊維に使用される集束剤に対する化学的な耐久性が高く、焼却などの処理でダイオキシン等の有害物質が発生し難いという点で優れている。
【0019】
ポリエチレンテレフタレート樹脂については、非晶質PET(A−PET)であっても結晶PET(C−PET)であっても所望の性能を有するものであれば使用してよい。またポリエチレンテレフタレート樹脂については、環境面に配慮するとハロゲン系難燃剤を含有しないものであれば、より好ましい。
【0020】
またこれらの樹脂材については、シュリンクフィルムであってもそうでなくてもよい。また耐熱性が好まれる場合にはそれに見合う材質、磨耗性を注視する場合にはそれに見合う材質とするため、添加物等を加えて複合化したもの、あるいは改質したものであってもよい。またガラス繊維巻き取りチューブは、外周にガラス繊維束を巻き取った状態で乾燥するため、これらの樹脂材については、室温よりも温度を上昇させた場合にそれなりの耐熱性は必要である。
【0021】
また本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、上述に加え略円筒体がライナー紙及び/又は中芯原紙よりなるものであれば、ガラス繊維巻き取り用チューブを製造する費用が高価にならないので好ましい。
【0022】
略円筒体がライナー紙及び/又は中芯原紙よりなるものとは、略円筒体の構成部材が段ボールで使用される波形に加工される中芯に相当する原紙であるか、あるいは中芯を挟むように表紙あるいは裏紙として使用されるライナー紙によって構成されていることを意味している。
【0023】
また本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、上述に加え略円筒体がスパイラル紙管であれば、略円筒状体が老朽化した際に、紙管をガラス繊維巻き取り用チューブから取り除く作業が容易なため、分別回収、廃棄作業等の効率化が図れるため好ましいものである。
【0024】
略円筒体がスパイラル紙管であるとは、紙管が複数の帯状紙をスパイラル状、すなわち螺旋状に巻くことで形成されたものであって、しかも2以上の帯状紙がそれぞれ異なる位置に接目を有するように、そして積層された状態となるように巻き取った構成を有するものであることを意味している。このような構成であれば、例えばロール状ライナー紙から連続生産することが可能であり、かつ使用時に働く中心から周方向への遠心力に対して帯状紙の接目で破断しにくく、機械的な強度についても支障のないものとなる。複数の帯状紙を積層する際に、澱粉やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどの接着剤を使用することで、環境面でも問題となる有毒ガスや環境ホルモン等を危惧されるものではなくなる。
【0025】
また本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、上述に加え略円筒体の平均内径が100mmから400mm、長さが150mmから400mmの範囲にあるならば、これまでに構築された各種のガラス繊維紡糸技術に関わる多くの設備、例えば巻き取り装置や台車、乾燥炉等の様々な設備や、蓄積されてきた工程管理手法等を大きな変更を施すことなく使用し続けることができ、製造設備の変更を施さないため経済的で好ましい。
【0026】
ここで、略円筒体の平均内径が100mmから400mm、長さが100mmから400mmの範囲にあるとは、本発明のガラス繊維巻き取り用チューブの略円筒形状の筒内径として、最大直径値と最小直径値の和を2で除した値を平均内径とする時に、その値が0.1mから0.4mの範囲にあり、円周に対して垂直な方向の長さ寸法が0.1mから0.4mの範囲にあることを意味している。
【0027】
ガラス繊維巻き取り用チューブの略円筒体の平均内径が100mmに満たないものであると、ガラス繊維を製造する製造効率が低くなるので好ましくない。逆に略円筒体の平均内径が400mmを超えるものであると、従来設備の大きな仕様変更が必要となる場合もある。以上のような観点からガラス繊維巻き取り用チューブの略円筒体の平均内径については、120mmから350mmの範囲とするのがより好ましく、さらに好ましくは140mmから320mmの範囲とすることである。
【0028】
またガラス繊維巻き取り用チューブの略円筒体の長さが100mm未満であると、ガラス繊維の製造効率が低いものとなる場合があるので好ましくない。一方、略円筒体の長さが400mmを超えると従来設備の大きな仕様変更が必要となる場合もあるので好ましくない。以上のような観点からガラス繊維巻き取り用チューブの略円筒体の長さは、120mmから380mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは140mmから370mmの範囲とすることである。
【0029】
また本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、上述に加え略円筒体の折れ線加工部が型押し加工によるものであるならば、折れ線加工部の強度が局所的に著しく弱くなることもなく、安定した機械的強度が維持されることになるので、折れ線加工部に起因するガラス繊維巻き取り用チューブの劣化、弱体化が起こりにくく、ガラス繊維巻き取り用チューブの耐用期間が十分に長いため好ましい。
【0030】
略円筒体の折れ線加工部が型押し加工によるものであるとは、プレスによって折れ線加工を施す位置に略円筒体の側外面が凹状となるような加工が施されていることを意味している。むろんこの加工によって略円筒体の側内面が凸状となるような加工が施されるものとなってもよい。
【0031】
チューブ側外面が凹状となっていることによって、樹脂フィルム材が略円筒体に密着した状態となっても、この凹状となっている箇所は、樹脂フィルム材が略円筒体と密着していない部分が生じることになる。この密着していない箇所を利用すると、ガラス繊維巻き取りチューブから樹脂フィルム材を除去する際に、略円筒体を変形させて樹脂フィルムから抜き取るという方法以外にも、樹脂フィルム材のみを切断することによって除去するという方法を採用することができる。この場合には、チューブ側外面が凹状となっている密着していない箇所にカッター等の刃先を挿入して樹脂フィルム材のみを切断できるからである。汚れた樹脂フィルム材の交換などにもこの方法は有効である。
【0032】
また本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、上述に加え略円筒体の厚み寸法が0.2mmから5mmの範囲であれば、様々な繊維径のガラス繊維を巻き取ることができる。
【0033】
略円筒体の側面厚み寸法が0.2mmから5mmの範囲にあるとは、略円筒体の略円筒体の中心を貫通する仮想軸の方向に対して垂直な方向の略円筒体の厚み寸法が0.2mm以上で、かつ5mm以下であることを意味している。略円筒体の側面厚み寸法が0.2mmに満たないと略円筒体の強度が弱くなる場合もあり、使用耐用期間を短くすることになるので好ましくない。一方略円筒体の側面厚み寸法が5mmを超えると、費用の割に使用耐用期間は延びない。このような観点から略円筒体の厚み寸法は、より好ましくは0.5mmから4mmの範囲とすることである。
【0034】
本発明のガラス繊維巻き取り用チューブの作製方法は、円筒状の樹脂フィルム材に、折れ線加工部を円筒の中心軸側に向けて折り込んだ状態で略円筒体を挿入し、その後、折れ線加工部が折り込まれた状態を解除することによって樹脂フィルム材の内周面と略円筒体の外周面とを密着させてガラス繊維巻き取り用チューブを作製することを特徴とする。
【0035】
ここで円筒状の樹脂フィルム材に、折れ線加工部を円筒の中心軸側に向けて折り込んだ状態で略円筒体を挿入し、その後、折れ線加工部が折り込まれた状態を解除することによって樹脂フィルム材の内周面と略円筒体の外周面とを密着させてガラス繊維巻き取り用チューブを作製するという点について説明する。この作製方法は、まず予め所定寸法の円筒状の樹脂フィルム材を準備する。そして略円筒体は、その略円筒体の外側面に施された折れ線加工部について、略円筒体の外周に対して垂直方向の円筒断面の中心を貫通する仮想軸の方向へと押圧力を印加する。こうすることによって、略円筒体外周面を略円筒体の中心を貫通する仮想軸の方向へと折り込んだ状態を一時的に保持した状態のまま、略円筒体を円筒状の樹脂フィルム材の筒の中空部へと挿入する。次いで、押圧力を除き、略円筒体外周面を折り込んだ状態を解除して、略円筒体が弾性力によって元の形状へと復元することによって、円筒状の樹脂フィルムが略円筒体の外周面を密着した状態で被覆した状態となることを意味している。
【0036】
円筒状の樹脂フィルム材と略円筒体の界面には、必要に応じて澱粉、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどの環境に対して無害、あるいは大きな負荷をかけることのない接着剤を介在させることで両者を接着してもよいが、そのようなことが不要となるような寸法構成である場合には、接着剤は不要であり、好ましくは接着剤を何も使用しないことである。
【0037】
また本発明のガラス繊維巻き取り用チューブの作製方法は、上述に加え円筒状の樹脂フィルム材の内周長寸法Lに対する略円筒体の外周寸法Kの比K/Lが、1.0以下である樹脂フィルム材と略円筒体とを使用するならば、円筒状の樹脂フィルムと略円筒体の界面に接着剤を使用する必要もなく円筒状の樹脂フィルム材を略円筒体に強固に固定することが可能となる。
【0038】
ここで円筒状の樹脂フィルムの内周長寸法Lに対する略円筒体の外周寸法Kの比K/Lが、1.0以下であるとは、円筒状の樹脂フィルムの筒内周面についての一周分の長さLを分母とし、略円筒体の筒外周面についての一周分の長さKを分子として比率を求めると、その値が1.0以下となることを表している。
【0039】
本発明のガラス繊維巻き取り用チューブの作製方法は、上述に加え円筒状の樹脂フィルム材の内周長寸法Lに対する略円筒体の外周寸法Kの比K/Lが、1.0を超える場合は、シュリンクフィルムであればよいが、そうでない場合には糊剤などを使用して界面を接着することが必須となる。
【0040】
本発明のガラス繊維の製造方法は、請求項1から請求項5の何れかに記載の本発明のガラス繊維巻き取り用チューブの略円筒体の外周面に、熔融ガラスから紡糸されたガラスフィラメントを集束したガラスストランドを、巻き取り径に応じた回転速度で連続的に巻き取ることによって、ガラスストランドに一定の張力を付与しつつガラス繊維回巻体とすることを特徴とする。
【0041】
ここで、本発明のガラス繊維巻き取り用チューブ略円筒体の外周面に、熔融ガラスから紡糸されたフィラメントを集束したガラスストランドを、巻き取り径に応じた回転速度で連続的に巻き取ることによって、ガラスストランドに一定の張力を付与しつつガラス繊維回巻体とするという点について以下に説明する。本発明のガラス繊維の製造方法は、ガラス繊維を外周面に巻き取るために使用される略円筒体からなるガラス繊維巻き取り用チューブであって、前記略円筒体は、その外周面が樹脂フィルム材によって被覆されており、略円筒体の外周面に一端側から他端側に至る少なくとも1以上の折れ線加工部が形成されてなる特徴とするガラス繊維巻き取り用チューブの周囲にガラス繊維に好適な組成となるように調整された原料を熔解して得られる熔融ガラスをブッシングから引き出して急冷したガラスフィラメントに集束剤などを塗布することによって集束させ、巻き取り直径に応じた回転動作をチューブに行わせることによってガラスストランドにほぼ一定の引張応力を付与しながら巻き取ることを表している。
【0042】
巻き取り径に応じた回転速度を実現する手段としては、光学的に回転速度を測定する装置、あるいは電気的に計測する装置などによってチューブの装着されたコレットの回転を計測しつつ、最適な回転速度となるように調整することで所定の回転速度とすることが可能である。
【0043】
なお本発明のガラス繊維の製造方法は、複合材料用途のガラス繊維とは限らず、光学ガラス繊維、すなわち光ファイバの製造、あるいはカーボンファイバ、セラミックスファイバ等の各種機能性繊維の製造にも適用してよい。
【発明の効果】
【0044】
(1)以上のように、本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、外周面にガラス繊維を巻き取る略円筒体を有するガラス繊維巻き取り用チューブであって、前記略円筒体は、その外周面が樹脂フィルム材によって被覆されており、略円筒体の外周面に一端側から他端側に至る少なくとも1以上の折れ線加工部が形成されてなるものである。このため、本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、外周面にガラス繊維を巻き取るための充分な強度を有し、しかも集束剤使用時にガラス繊維巻き取り用チューブへの水の吸水によって生じる問題を回避し、さらに環境面にも配慮した構成となるものであり、使用耐用期間を十分に延ばすことが可能となるものである。そして本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、樹脂フィルムにより水分の移行を抑制でき、ケーキ内層部の集束剤付着量を正常範囲とすることができる。また略円筒体に施された1以上の折れ線加工部を利用することによって、ガラス繊維が巻かれていない複数のガラス繊維巻き取り用チューブを重ね合わせて一時的に保持することができ、収納時や一時保管時、あるいは搬送時にも過剰な空間を要することがない。さらに本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、1以上の折れ線加工部を利用することで、樹脂フィルム材の着脱も容易となり様々な仕様に対応することができ、ガラス繊維巻き取り用チューブの製造時及び樹脂フィルム材の損傷時の交換も可能なものである。
【0045】
(2)また本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、略円筒体が紙製及び/又は木製であって、樹脂フィルム材がポリオレフィン樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂であるならば、ガラス繊維の種類や、その用途に応じて様々な材質のものを選択して使用することができ、しかも老朽化による廃棄時にも環境負荷の少ないものであるので好ましい。また集束剤と接着しにくい上記の材質の樹脂フィルム材を使うことで、略円筒体を繰返し利用できる。あるいは樹脂フィルム材が、集束剤により汚染されても樹脂フィルム材を交換することで母材である略円筒体を再利用できる。
【0046】
(3)さらに本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、略円筒体がライナー紙及び/又は中芯原紙よりなるものであれば、ガラス繊維巻き取り用チューブの単価を経済的なものとすることができ、また環境にも適応したものとなるので好ましい。
【0047】
(4)また本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、略円筒体の平均内径が100mmから400mm、長さが100mmから400mmの範囲にあるものであるならば、ガラス繊維の大量生産ラインに容易に適応させることのできる仕様であるので、経済的であり、しかもチューブ製造時にも安定した品位のものを製造することが可能となる。
【0048】
(5)さらに本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、略円筒体の折れ線加工部が型押し加工によるものであるならば、折れ線加工部を加工する際に略円筒体の表面にガラス繊維巻き取りチューブの強度を弱くするような傷などの欠陥を生じさせる危険性が少ない。そのため本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、夫々のガラス繊維巻き取り用チューブの外観品位や、その機械的強度に関する性能面でのばらつきが少なく、安定した品位を有するものとなる。
【0049】
(6)本発明のガラス繊維巻き取り用チューブの作製方法は、円筒状の樹脂フィルム材に、折れ線加工部を円筒の中心軸側に向けて折り込んだ状態で略円筒体を挿入し、その後、折れ線加工部が折り込まれた状態を解除することによって樹脂フィルム材の内周面と略円筒体の外周面とを密着させてガラス繊維巻き取り用チューブを作製することでガラス繊維巻き取り用チューブを作製する。このため、予め所定寸法の直径の円筒状樹脂フィルム材を準備すれば、ガラス繊維巻き取り用チューブの製造が容易で、効率的に円筒状樹脂フィルムとチューブを密着した状態とすることができる。またガラス繊維巻き取りチューブが老朽化する等して不要となったガラス繊維巻き取り用チューブの廃棄、あるいは再生を行う際、あるいは略円筒状体に施す樹脂フィルム材の種別を意図的に変更する際に、樹脂フィルム材をガラス繊維巻き取りチューブから容易に取り除くことができる。
【0050】
(7)本発明のガラス繊維巻き取り用チューブの作製方法は、円筒状の樹脂フィルム材の内周長寸法Lに対する略円筒体の外周寸法Kの比K/Lが、1.0以下である樹脂フィルム材と略円筒体とを使用するものであるならば、樹脂フィルム材と略円筒体との間に接着剤などを介在させる必要もなく、製造が容易で経済的であり安定した品位のガラス繊維巻き取り用チューブを得ることができる。
【0051】
(8)本発明のガラス繊維の製造方法は、本発明のガラス繊維巻き取り用チューブの略円筒体の外周面に、熔融ガラスから紡糸されたフィラメントを集束したガラスストランドを、巻き取り径に応じた回転速度で連続的に巻き取ることによって、ガラスストランドに一定の張力を付与しつつガラス繊維回巻体とするものである。このため、本発明のガラス繊維の製造方法は、様々な高機能ガラス繊維の製造を高い効率で行うことを可能とし、ガラス繊維の巻き取り時にガラス繊維巻き取り用チューブに加わる負荷も安定するため、より一層のチューブ耐用期間の延長にも繋がるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下に本発明のガラス繊維巻き取り用チューブとその作製方法及びガラス繊維の製造方法について、実施例に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0053】
図1に本発明のガラス繊維巻き取りチューブを説明するための図を示す。図1(A)は斜視図を、図1(B)は、図1(A)のX領域を拡大した平面図を示している。図中で10は、本発明のガラス繊維巻き取り用チューブ、13はチューブの外周面、20は略円筒体、20aは略円筒体の外周面、20bは略円筒体の一端、20cは略円筒体の他端、24は接目、25は折れ線加工部、30は樹脂フィルム材、Xは、図1(B)で拡大表示する領域をそれぞれ表している。
【0054】
この図1のガラス繊維巻き取りチューブ10は、プリント配線基板等に使用されるEガラスのヤーンをケーキとして巻き取るために使用されるものであり、内径寸法が350mm、長さが290mmで、チューブ10の厚み寸法が1.2mmの外観を呈するものである。また、このチューブ10の略円筒体20は、スパイラル状にライナー紙製の帯状紙を積層させ、帯状紙間を澱粉糊によって接着、固定したものであって、帯状紙が重なっている接目24が、外周面20aに螺旋状に形成されているものである。そしてこのガラス繊維巻き取りチューブ10の外周面13は、ポリエチレン製のフィルム材30が略円筒体20の外周面20aを被覆した状態になっている。このため、ガラスフィラメントの表面に塗布される集束剤等によって多くの水分を含んだガラスストランドがガラス繊維巻き取りチューブ10の外周面13に巻き取られても、水分がライナー紙に染み込んで、ライナー紙が膨潤することもなく、何回も再利用することができるだけの耐久性を有している。またこのように略円筒体20の表面が被覆されているため、ガラス繊維がチューブ表面を擦る等してチューブ10の表面が傷ついても、樹脂フィルム材30を新品のものに交換すればよいため、略円筒体20は長い期間に亘り使用し続けることが可能である。
【0055】
このガラス繊維巻き取りチューブ10のもう一つの特徴は、略円筒状体20の外周面20aに一端20b側から他端20c側にまで達する連続した折れ線加工部15が形成されていることである。この折れ線加工部15は、型押し加工によって略円筒状体20の外周面20a上に一端20b側から他端20c側に至る、円周に対して垂直な直線形状となるように形成されたものである。折れ線加工部15の詳細については、図1(B)に拡大して示しているが、ここに示したように略円筒状体20を外周面20aが凹状となるようにし、かつチューブ側内周面が凸状となるような形態となっている。また図1(B)からも判るように、外周面20aが凹状となっていることによって、樹脂フィルム材が略円筒体に密着した状態となっても、この凹状となっている箇所は、樹脂フィルム材が略円筒体と密着していない。この部分は、樹脂フィルム材を剥がす際に役立つこともある。
【0056】
このような折れ線加工部25が形成されていることの長所は、次のようなものである。すなわち、その1つは、折れ線加工部25は略円筒体20の筒内側へと折り込む操作を行い易くするためのものであるが、使用しないガラス繊維巻き取りチューブ10を保管する場合、あるいは他の場所へ移送する必要がある場合に、折れ線加工部25に外圧を加えてチューブ10の外周面13をチューブの円周に垂直な断面の中心を貫通する仮想的な軸方向に押すことによって円筒内側へ折り込んだ状態とし、10以上の複数のガラス繊維巻き取りチューブ10を積層させた状態で保持することができるというものである。さらにこの折れ線加工部25が形成されているならば、ガラス繊維巻き取りチューブ10を形成する際にも次のような長所がある。
【0057】
以下では、ガラス繊維巻き取りチューブ10の作製方法について説明しながら、この折れ線加工部15があることのもう一つの長所についても説明する。
【0058】
ガラス繊維巻き取りチューブ10を作製するためには、まず先にも述べたように、ライナー紙製の帯状紙をスパイラル状に積層させて、帯状紙同士を接着剤により接合して円筒形状となるようにして略円筒体20を得る。この際に略円筒体20の外周面20a上に一端20b側から他端20c側に至る、円周に対して垂直な直線形状となるように形成された折れ線加工部15を型押し加工を使用して形成する。型押し加工の方法としては、溝のある金属製芯材に略円筒体20を挿入する。そして略円筒体20の外周面20aを金属芯材の溝に沿って、接触部の細い金属リングを押し付けながら転がすことで折れ線加工部25を形成する。また他の型押し加工の方法としては、溝の入った円弧状のベース材に略円筒体20をセットして、略円筒体20の外周面20aからベースの溝に合わせて刃形状の雄型を押し付けることで折れ線加工部25を形成してもよい。
【0059】
次いで、これとは別に樹脂フィルム材を準備する。この場合に樹脂フィルム材30は円筒状のものを使用することになるが、樹脂フィルム材30としてシュリンクフィルムを使用する場合、あるいはそうでないものを選択する場合、いずれであっても準備した円筒状の樹脂フィルム材30の中空部に略円筒体20を挿入する必要が生じる。この際に略円筒体20の外周面20a上に一端20b側から他端20c側に至る、円周に対して垂直な直線形状となるように形成された折れ線加工部25を略円筒体20の内側方向に折り曲げたままで挿入することによって、円筒状の樹脂フィルム材30の中空部に略円筒体20を挿入する操作が極めて円滑に行えるようになる。
【0060】
折れ線加工部25の折り曲げについては、樹脂フィルム材30の中空部に略円筒体20を挿入した後に解除すればよい。もし、シュリンクフィルムを使用している場合であれば、この後にシュリンク操作を行えばよく、またそうでない場合には、円筒状を呈する樹脂フィルム材30の内周長寸法Lに対する略円筒体20の外周寸法Kの比K/Lが、1.0以下であれば、樹脂フィルム30と略円筒体20の固定性は強固なものとなるが、そうでない場合には両者の固定のために澱粉等の接着剤を局所的に使用してもよい。ちなみにこの図1のガラス繊維巻き取りチューブ10では、円筒状を呈する樹脂フィルム材30の内周長寸法Lに対する略円筒体20の外周寸法Kの比K/Lが0.98の寸法となるものを使用しているので、澱粉等の接着剤は使用していない。
【0061】
また、このような構成を有するため、ガラス繊維巻き取りチューブ10は、樹脂フィルム材30が老朽化する、あるいは常温で液状の集束剤が用いられ、水が蒸発してチューブ表面がべたべたに汚れた状態になり、付着した汚れが酷くなったものを交換する場合にも、樹脂フィルム材30のみを再び取り外して、新規のものと交換することによって安価に再生することも可能である。以上のように、本発明のガラス繊維巻き取りチューブ10は、単に含水によるチューブの劣化を防ぐという点以外にも実用面で優れた性能を発揮するものである。
【0062】
次いでこのガラス繊維巻き取りチューブ10を使用するガラス繊維の製造方法について、説明する。
【0063】
本発明のガラス繊維巻き取りチューブ10は、従来使用されていた紙製のガラス繊維巻き取りチューブと同じ寸法となるように設計することができるので、巻き取り装置のコレットやその他の設備の設計変更などを行う必要もなく、Eガラスを熔融しているガラス溶融炉に配設された耐熱性ブッシングから引き出したガラスフィラメントに集束剤を塗布し、その後集束させた後にガラスストランドとして巻き取るために使用される巻き取り装置のコレットにそのまま装着して使用することができる。
【0064】
Eガラスのガラスストランドを巻き取る際には、ガラス繊維に働く張力を一定に保持しつつ巻き取ることが大切で、この張力が大きくなり過ぎると糸切れ等の問題が発生することになる。そのため、ここでは回転速度を電気的に確認しつつ、巻き取られるガラスストランドの回巻体の径が大きくなるにつれて、その回転速度を小さくしてゆき、同じ張力がガラスストランドに加わるようにすることが行われている。そして本発明のガラス繊維巻き取りチューブ10は、適性は剛性と弾力性とを有し、しかも従来と同じ寸法に設計されたものであるので、ガラス繊維の巻き取り時にガラス繊維巻き取りチューブ10を使用することによって、巻き取り動作が安定し、得られたガラス繊維製品の品位も安定したものとなる。
【0065】
そして、こうして得られた本発明のガラス繊維巻き取りチューブ10にガラス繊維束が巻き取られたガラス繊維回巻体のケーキでは、ガラス繊維巻き取りチューブがポリエチレン製のフィルム材30に被覆された構造であるため、経時的に集束剤がケーキ内層部に移行する、所謂マイグレーションが認め難くなり、1つのケーキから得られるガラスストランドの集束剤の付着量に差異が生じないものとなる。
【実施例2】
【0066】
次いで、本発明の他のガラス繊維巻き取りチューブについて説明する。
【0067】
図2に本発明の他のガラス繊維巻き取りチューブ10aを示す。この図2(A)は、平均内径が200mm、長さが360mmとした以外は上述の実施例1と同じ材質の略円筒体21を使用したものであるが、この図2(A)からも判るように、略円筒体21には2つの折れ線加工部25a、25bが設けてある。このため、ガラス繊維巻き取りチューブ10aを二箇所の折れ線加工部25a、25bで内側に折り曲げることによって積層することができ、収納などを行う際には実施例1よりもさらに収納性が高く、50以上のガラス繊維巻き取りチューブ10aを1つにまとめることができ、実施例1よりもさらにコンパクトに移送することも可能である。
【0068】
また図2(B)は、平均内径が150mm、長さが180mmであるチューブ10bとなるようにライナー紙の代わりにコルク材を使用して図2(A)と同様の2つの折れ線加工部25a、25bが設けてある構造としたものである。略円筒体22にコルク材を採用した場合は、略円筒体22は紙材よりもさらに耐久性が高くなり、耐用期間をさらに延長することが可能である。また折れ線加工部25a、25bが設けてあるため、収納性も申し分ない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のガラス繊維巻き取り用チューブは、ガラス繊維製造業ばかりでなく、各種有機繊維、無機繊維、そして繊維ばかりでなく様々な材質のフィルム、ネットあるいはマット等のシート巻き取り用チューブとしても、その構成を応用して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明のガラス繊維巻き取り用チューブの説明図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)図中のX領域の拡大平面図。
【図2】本発明の他のガラス繊維巻き取り用チューブの平面図。(A)は折れ線予備加工部を2ヵ所に設けたもので、(B)は略円筒状体の材質を木製としたものである。
【符号の説明】
【0071】
10、10a、10b ガラス繊維巻き取り用チューブ
13 チューブの外周面
20、21、22 略円筒状体
20a 外周面
20b 一端
20c 他端
24 接目
25 折れ線加工部
30 樹脂フィルム材
X 図1(B)で拡大表示する領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にガラス繊維を巻き取る略円筒体を有するガラス繊維巻き取り用チューブであって、
前記略円筒体は、その外周面が樹脂フィルム材によって被覆されており、略円筒体の外周面に一端側から他端側に至る少なくとも1以上の折れ線加工部が形成されてなることを特徴とするガラス繊維巻き取り用チューブ。
【請求項2】
略円筒体が紙製及び/又は木製であって、樹脂フィルム材がポリオレフィン樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維巻き取り用チューブ。
【請求項3】
略円筒体がライナー紙及び/又は中芯原紙よりなることを特徴とする請求項2に記載のガラス繊維巻き取り用チューブ。
【請求項4】
略円筒体の平均内径が100mmから400mm、長さが100mmから400mmの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のガラス繊維巻き取り用チューブ。
【請求項5】
略円筒体の折れ線加工部が型押し加工によるものであることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のガラス繊維巻き取り用チューブ。
【請求項6】
円筒状の樹脂フィルム材に、折れ線加工部を円筒の中心軸側に向けて折り込んだ状態で略円筒体を挿入し、その後、折れ線加工部が折り込まれた状態を解除することによって樹脂フィルム材の内周面と略円筒体の外周面とを密着させてガラス繊維巻き取り用チューブを作製することを特徴とするガラス繊維巻き取り用チューブの作製方法。
【請求項7】
円筒状の樹脂フィルム材の内周長寸法Lに対する略円筒体の外周寸法Kの比K/Lが、1.0以下である樹脂フィルム材と略円筒体とを使用することを特徴とする請求項6に記載のガラス繊維巻き取り用チューブの作製方法。
【請求項8】
請求項1から請求項5の何れかに記載のガラス繊維巻き取り用チューブの略円筒体の外周面に、熔融ガラスから紡糸されたガラスフィラメントを集束したガラスストランドを、巻き取り径に応じた回転速度で連続的に巻き取ることによって、ガラスストランドに一定の張力を付与しつつガラス繊維回巻体とすることを特徴とするガラス繊維の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−29621(P2009−29621A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136392(P2008−136392)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】