説明

ガラス膜形成用エアゾール

【課題】 誰がやっても基材に対して簡単かつ手軽にガラス膜を形成することができるガラス膜形成用エアゾールを提供すること。
【解決手段】 200℃以下の温度でガラス化して単一または多成分系金属酸化物ガラス膜を形成するガラス塗料を、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、イソヘキサンの1種または2種以上からなる希釈剤で希釈した充填用組成物を、噴射剤とともに容器本体に充填したエアゾールとした。充填用組成物は、ガラス塗料が5〜95wt%で、残部を希釈剤とすることが好ましい。また、充填用組成物中にジルコニアゾルおよび/またはチタニアゾルを添加することも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に対して簡単かつ手軽にガラス膜を形成することができるガラス膜形成用エアゾールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材の光沢等の外観品質向上、汚れ防止、防錆性・耐熱性・絶縁性付与等を目的として、ガラス膜を形成することが知られている。また、このようなガラス膜の形成方法としては、ガラス塗料をスプレーガンにより塗布して行うのが普通である。しかしながら、スプレーガンを用いて塗膜を形成する場合は、装置が大掛かりで高額であるため一般家庭では扱いにくいという問題点や、天候等の作業環境により成膜にバラツキが生じるという問題点あった。また、ガラス塗料は開封すると数週間程度しかもたないため、一般家庭で使い切るということはほとんど不可能であった。
【0003】
そこで、一般家庭等でも簡単かつ手軽にガラス膜を形成することができるガラス膜形成用エアゾールが要望されており、本発明者も特許文献1に示されるようなガラス塗料を充填したエアゾールの開発を行ってきた。しかしながら、エアゾールにガラス塗料を充填する場合、エアゾール用希釈剤として一般的なイソプロピルアルコール(IPA)を用いると、乾燥に長時間がかかり実用的でないという問題点や、均一なガラス膜を成形することが難しく場合によっては成膜できない個所が生じるという問題点があり、現時点ではまだガラス膜形成用エアゾールの商品化はなされていないのが現状であった。
【特許文献1】特開平6−199528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような問題点を解決して、スプレー後、短時間で乾燥させることが可能であり、また均一なガラス膜を成形することが可能で、誰がやっても基材に対して簡単かつ手軽にガラス膜を形成することができる新規なガラス膜形成用エアゾールを提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本発明のガラス膜形成用エアゾールは、200℃以下の温度でガラス化して単一または多成分系金属酸化物ガラス膜を形成するガラス塗料を、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、イソヘキサンの1種または2種以上からなる希釈剤で希釈した充填用組成物を、噴射剤とともに容器本体に充填したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のガラス膜形成用エアゾールは、低温でガラス化するガラス塗料を、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、イソヘキサンの1種または2種以上からなる希釈剤で希釈した充填用組成物を、噴射剤とともに容器本体に充填したものとすることによって、エアゾール用希釈剤として一般的なイソプロピルアルコールを用いた場合と異なり、スプレー後に短時間で乾燥させることができ、また均一なガラス膜を成形することができることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の好ましい形態を示す。
本発明のガラス膜形成用エアゾールは、200℃以下の温度でガラス化して単一または多成分系金属酸化物ガラス膜を形成するガラス塗料を、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、イソヘキサンの1種または2種以上からなる希釈剤で希釈した充填用組成物を、噴射剤とともに容器本体に充填した点に特徴的構成を有する。
【0008】
ここで、200℃以下の温度でガラス化して単一または多成分系金属酸化物ガラス膜を形成するガラス塗料とは、例えば特許文献1に示されるように、加水分解可能な金属アルコキシド等の有機金属化合物を、水と有機溶媒とからなる反応液中において、ホウ素イオンの存在下でF、Cl等のハロゲンイオンを触媒とし、phを4.5〜5.0に調整しながら加水分解、脱水縮合させて200℃以下の低温度でガラス化させるものをいう。
なお、200℃以下の温度でガラス化するとは、従来のガラスは約1000℃以上の加熱条件下でガラス化したものであるのに対して、何ら加熱することなく常温でガラス化するという意味である。
【0009】
本発明では、希釈剤としてシクロヘキサン、キシレン、トルエン、イソヘキサンの1種または2種以上からなるものを用い、この希釈剤で希釈して充填用組成物とする。
従来、エアゾール用希釈剤としてはイソプロピルアルコールを用いるのが一般的であったが、この場合は乾燥に長時間がかかり実用的でなく、また均一なガラス膜を成形することが難しいという問題点があり、本発明者はイソプロピルアルコールに替わる希釈剤として鋭意研究した結果、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、イソヘキサンの1種または2種以上からなるものを用いるのが有効であることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
希釈剤としてシクロヘキサン等が最適である理由は、十分に解明されていないが、おそらくシクロヘキサン等を用いた場合は、希釈剤中の水分量が少なくなりガラス塗料をエアゾール中で完全に密封することとなって、外気中の水分に影響されることなく安定した状態を保持できるためと推測される。また、エアゾール噴射後において初めて水分と反応することで均一なガラス膜が成形されると推測される。
【0010】
充填用組成物は、ガラス塗料が5〜95wt%で、残部を希釈剤としたものである。ガラス塗料が5wt%未満では、十分な光沢等の外観品質向上、汚れ防止、防錆性・耐熱性・絶縁性付与等を発揮することができず、95wt%より多いとエアゾールで均一に噴霧することが難しくなる。好ましくは、ガラス塗料が15〜85wt%、より好ましくは、30〜70wt%の範囲である。
【0011】
以上のようにして得られた充填用組成物を、噴射剤とともに容器本体に充填してガラス膜形成用エアゾールとする。
噴射剤としては、ブタン、プロパン、炭酸ガス、窒素ガス、HFC134a、HFC152a等のフロンガス、ジメチルエーテル(DME)等を用いることができる。充填用組成物と噴射剤の混合割合は、充填用組成物:5〜90wt%、噴射剤:5〜90wt%の範囲で任意に調合することができ、充填用組成物:噴射剤がほぼ1:1となるように混合するのが最も好ましい。
【0012】
また、充填用組成物中にジルコニアゾル(Zr)、またはチタニアゾル(Ti)、あるいはジルコニアゾル(Zr)とチタニアゾル(Ti)の双方を添加することもできる。これにより、ガラス膜の乾燥速度を向上させることができ、また製膜状況も均一で良好なものとすることができる。
ジルコニアゾルおよび/またはチタニアゾルの添加量は、ガラス塗料に対して3〜40wt%の割合で添加するのが好ましい。
【0013】
以上の説明からも明らかなように、本発明のガラス膜形成用エアゾールは、200℃以下の温度でガラス化して単一または多成分系金属酸化物ガラス膜を形成するガラス塗料を、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、イソヘキサンの1種または2種以上からなる希釈剤で希釈した充填用組成物を、噴射剤とともに容器本体に充填したものであり、基材に対して光沢等の外観品質向上、汚れ防止、防錆性・耐熱性・絶縁性付与等を達成するガラス膜を、誰がやっても簡単かつ手軽に形成することができることとなる。しかも、乾燥時間も短く、均一なガラス膜を成形することが可能となる。
【実施例1】
【0014】
<充填用組成物> ガラス塗料 :15wt%
シクロヘキサン:85wt%
<噴射剤> ジメチルエーテル(DME)
上記からなる充填用組成物90mlと噴射剤90mlを充填したエアゾールを製造し、鉄板基材(20cm×20cm)上にスプレーした。スプレー膜は約1時間後に自然乾燥して色ムラがなく均一で光沢性に優れたガラス膜となった。
【実施例2】
【0015】
<充填用組成物> ガラス塗料 :16.7wt%
ジルコニアゾル:1.7wt%
チタニアゾル :1.7wt%
シクロヘキサン:81.6wt%
<噴射剤> ジメチルエーテル(DME)
上記からなる充填用組成物90mlと噴射剤90mlを充填したエアゾールを製造し、鉄板基材(20cm×20cm)上にスプレーした。スプレー膜は約30分後に自然乾燥して色ムラがなく均一で光沢性に優れたガラス膜となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
200℃以下の温度でガラス化して単一または多成分系金属酸化物ガラス膜を形成するガラス塗料を、シクロヘキサン、キシレン、トルエン、イソヘキサンの1種または2種以上からなる希釈剤で希釈した充填用組成物を、噴射剤とともに容器本体に充填したことを特徴とするガラス膜形成用エアゾール。
【請求項2】
充填用組成物は、ガラス塗料が5〜95wt%で、残部が希釈剤である請求項1に記載のガラス膜形成用エアゾール。
【請求項3】
充填用組成物中にジルコニアゾルおよび/またはチタニアゾルを添加する請求項1または2に記載のガラス膜形成用エアゾール。

【公開番号】特開2006−77135(P2006−77135A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263317(P2004−263317)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(504345780)四日市印刷工業株式会社 (1)
【出願人】(593213939)東海電子熱錬株式会社 (1)
【Fターム(参考)】