説明

ガラス製品の表面を処理するための腐食防止剤

【課題】水性洗浄液中でガラス製品の表面、例えば食器及びグラスを処理するための腐食防止剤ならびにこれらの腐食防止剤を組み込む処理システムの提供。
【解決手段】a)有効量の、1nm〜100nmの範囲の粒径、及び200反射ピークで0.4〜0.8625FWHM単位の結晶化度値を有する亜鉛含有層状物質と、b)ポリアスパルテート、デンプン類、セルロース類及びアルギネート類から成る群から選択される分散性ポリマーとを含み、水性洗浄液のpHは9超14以下を有する腐食防止剤。図1に亜鉛含有層状構造を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製品の表面、例えば食器及びグラスを処理するための腐食防止剤、特に亜鉛含有物質を含む腐食防止剤に関する。これらの腐食防止剤を組み込む処理システム及び物質の組成物もまた提供される。
【背景技術】
【0002】
自動食器洗い洗剤は、一般に認識される別個の種類の洗剤組成物を構成し、それら組成物の目的には、食品汚れを破壊及び除去すること、発泡を抑制すること、視覚的に観察可能な染み付き及び被膜形成を最小化又は排除するために洗浄物品の濡れを促進すること、コーヒー及び紅茶のような飲料又はカロチノイド汚れのような野菜の汚れによって生じた可能性のある染みを除去すること、洗浄品表面への汚れ被膜の蓄積を防ぐこと、並びに実質的にエッチング又は腐食することなく、ないしは別の方法でガラス類又は食器の表面を損傷することなく、皿類の曇りを低減することを挙げることができる。自動食器洗い処理における洗浄サイクル中でのガラス製品の表面腐食の問題は、長い間知られている。現在の見解では、問題は2つの別々の現象によるものであるとされている。1つは、洗浄に必要とされる高いpHが、シリカの加水分解を引き起こすことである。この溶解されたシリカ/ケイ酸塩は、(陶磁器及び金属の腐食を防ぐために意図的に添加されたケイ酸塩と一緒になって)ガラス製品の表面に付着して、真珠光沢及び曇りをもたらす。一方、ビルダーは腐食を生じさせる。ビルダーは、ガラス製品の表面上で金属イオンをキレート化し、これは結果として金属イオンの浸出をもたらし、耐久性及び耐化学性の低いガラスにする。自動食器洗い機において数回の洗浄の後、両方の現象が、曇り、傷及び筋のような著しい腐食による損傷をガラス製品の表面に引き起こすことが可能であり、これは結果として消費者に不満をもたらす。
【0003】
ほとんどの消費者は、自動食器洗い(ADW)機の使用により結果として生じるガラス製品表面の腐食は、満たされていない要求の最も深刻なもののうちの1つであることに同意する。ガラス製品の表面腐食を低減する1つの手法は、ガラス製品の表面に幾らかの規模の保護を与えるために、水溶性金属塩(例えば、塩化物、硫酸塩又は酢酸塩の亜鉛塩)を含む腐食防止剤を提供することである。別の手法は、高いpH環境で可溶性亜鉛塩を導入することによって生じる沈殿の形成を、顆粒のポリリン酸塩粒子上に水溶性亜鉛塩の溶液を噴霧することによって低減することである。別の手法は、可溶性亜鉛とキレート化剤とを組み合わせることである。別の手法は、被膜形成を回避するために、すすぎ洗いにおいてZn2+イオンの放出を不溶性の亜鉛塩を使用して制御することである。別の手法は、二ケイ酸塩とメタケイ酸塩との混合物を有する自動食器洗い組成物を提供することである。別の手法は、アルカリ金属二ケイ酸塩とアルカリ金属シリコネート(siliconate)との縮合重合によって得られる有機鉱物シリコネート(organomineral siliconate)のコポリマーのような添加剤を自動食器洗い組成物に提供することである。別の手法は、対イオンとして、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム又はセリウムで部分的に置換されたアルカリ金属ケイ酸塩を提供することである。別の手法は、金属塩、特にアルミニウムの塩を使用することであり、その際、金属塩は封鎖されて、金属塩−金属イオン封鎖剤錯体、例えばアルミニウム(III)−金属イオン封鎖剤錯体を形成する。更に別の手法では、迅速に溶解するアルミニウム塩が使用されるが、このアルミニウム塩は、高アルカリ性製品中で約10重量%を超えるケイ酸塩と組み合わされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように多くの手法が利用可能であるが、著しいガラスケア効果を達成しながら、ガラス製品の表面腐食の問題も低減するように、ガラス製品の表面を処理するための別の腐食防止剤の開発への継続的要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ガラス製品の表面を処理するための、家庭用、施設用、工業用、及び/又は商業用の腐食防止剤、特に特定の亜鉛含有物質、例えば粒子状亜鉛含有物質(PZCM)及び亜鉛含有層状物質(ZCLM)に関する。腐食防止剤は、自動食器洗い処理においてガラス製品の表面腐食を低減するために、単独で、又は洗剤組成物との組み合わせで、又は処理システムの一部として及び/若しくは物質の組成物の一部として使用することができる。
【0006】
1つの態様によると、水性洗浄溶液中でガラス製品の表面を処理するための腐食防止剤が提供される。腐食防止剤は、a)有効量の、1nm〜100nmの範囲の粒径及び200反射ピークで0.4〜0.8625FWHM単位の結晶化度値を有する亜鉛含有層状物質と、b)ポリアスパルテート、デンプン類、セルロース類及びアルギネート類から成る群から選択される分散性ポリマーとを含み、該水性洗浄溶液が9超14以下のpHを有することを特徴とする。
【0007】
別の態様によると、処理システムが提供される。有効量の特定の亜鉛含有物質、例えばPZCM及びZCLMを含む腐食防止剤は、自動食器洗い機においてガラス製品の表面腐食を低減するための処理システムの一部であることができる。別の態様によると、物質の組成物が提供される。物質の組成物は、特定の亜鉛含有物質、例えばPZCM及びZCLMを含む腐食防止剤を含む洗浄溶液を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】亜鉛含有層状物質の構造。
【図2】正反射IRを用いたガラス製品の表面強度の比較。
【発明を実施するための形態】
【0009】
驚くべきことに、自動食器洗浄におけるガラス製品は、ガラス製品の表面を粒子状亜鉛含有物質(PZCM)及び亜鉛含有層状物質(ZCLM)のような特定の亜鉛含有物質を含有する腐食防止剤と接触させることにより保護できることが判明した。これは、キレート化剤及びビルダー類がガラス構造自体内で金属イオンをキレート化することによりガラス製品を損傷し得る軟水条件において、特に当てはまる。従って、そのような厳しい環境下においてさえ、表面腐食によるガラスの損傷は、ZCLMをADW洗剤組成物中で用いることによって、金属塩を用いることによる負の効果、例えば、(a)製造費用の増加、(b)不溶性物質の可溶性の不足による、処方中のより高い塩濃度の必要性、(c)金属イオン、例えば、Al3+イオン及びZn2+イオンと増粘剤物質との相互作用によるゲル洗剤組成物の希薄化、又は(d)全洗浄サイクルを通しての漂白剤の妨害により紅茶の染み(tea, stains)のクリーニング性能が低減することなしに、低減することができる。
【0010】
また驚くべきことに、腐食防止剤の製造プロセスに加える前に、又はその製造プロセス中に、ZCLMが分散される時、ZCLMのガラスケア効果が著しく向上することが判明した。腐食防止剤中のZCLM粒子の良好な分散が達成されることが、洗浄溶液中のZCLM粒子のアグロメレーションを著しく低減させる。
【0011】
いかなる好適な腐食防止剤もが、単独で、若しくは物質の組成物(例えば、洗浄溶液)との組み合わせで、並びに/又はPZCM及びZCLMのような有効量の特定の亜鉛含有物質を有するキットを含む処理システムの一部として使用されてもよい。本明細書における「有効量」は、本明細書に記載されている比較試験条件下で、処理されたガラス製品上の洗浄全体にわたるガラス製品表面腐食による損傷を低減するのに十分である量を意味する。
【0012】
(粒子状亜鉛含有物質(PZCM))
粒子状亜鉛含有物質(PZCM)は、配合された組成物中でほとんど不溶性のままである。特定の非限定的実施形態で有用なPZCMの例には、以下を挙げることができる。
【0013】
無機物質:アルミン酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛及び酸化亜鉛を含有する物質(すなわち、カラミン)、リン酸亜鉛(すなわち、オルトリン酸塩及びピロリン酸塩)、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、ケイ酸亜鉛(すなわち、オルト−及びメタ−ケイ酸亜鉛)、ケイフッ化亜鉛、ホウ酸亜鉛、水酸化亜鉛及びヒドロキシ硫酸亜鉛(zinc hydroxide and hydroxy sulfate)、亜鉛含有層状物質、並びにこれらの組み合わせ。
【0014】
天然の亜鉛含有物質/鉱石及び鉱物:スファレライト(閃亜鉛鉱)、ウルツ鉱、菱亜鉛鉱、フランクリン鉄鉱、紅亜鉛鉱、ケイ酸亜鉛鉱、トルースタイト、異極鉱、及びこれらの組み合わせ。
【0015】
有機塩:脂肪酸亜鉛塩(すなわち、カプロエート、ラウレート、オレエート、ステアレートなど)、アルキルスルホン酸の亜鉛塩、ナフテン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、タンニン酸亜鉛、フィチン酸亜鉛、亜鉛モノグリセロレート(zinc monoglycerolate)、アラントイン酸亜鉛(zinc allantoinate)、尿酸亜鉛、アミノ酸亜鉛塩(すなわち、メチオネート(methionate)、フェニルアリネート(phenylalinate)、トリプトファネート(tryptophanate)、システイネート(cysteinate)など)、及びこれらの組み合わせ。
【0016】
高分子塩:ポリカルボン酸亜鉛(zinc polycarboxylate)(すなわち、ポリアクリレート)、ポリ硫酸亜鉛(zinc polysulfate)、及びこれらの組み合わせ。
【0017】
物理的に吸着された形態:亜鉛負荷イオン交換樹脂、粒子表面上に吸着された亜鉛、亜鉛塩が組み込まれた複合粒子(すなわちコア/シェル又は凝集体形態として)、及びこれらの組み合わせ。
【0018】
亜鉛塩:シュウ酸亜鉛、タンニン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、クエン酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、オレイン酸亜鉛、リン酸亜鉛、ケイ酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、硫化亜鉛、ウンデシレン酸亜鉛など、及びこれらの組み合わせ。
【0019】
酸化亜鉛の市販の供給元には、Z−コート(Cote)及びZ−コートHPI(BASF)、並びにUSP I及びUSP II(ジンク・コーポレーション・オブ・アメリカ(Zinc Corporation of America))が挙げられる。
【0020】
(PZCM粒子の物理的性質)
腐食防止剤中にPZCMを使用することの多くの利益は、可溶性でなくともZn2+イオンが化学的に有効であることを必要とする。これは、「亜鉛反応活性度」と呼ばれる。PZCMの特定の物理的性質は、亜鉛反応活性度に影響を与える可能性を有する。発明者たちは、PZCM亜鉛反応活性度を最適化することに基づいて、より有効な腐食防止剤を開発した。
【0021】
亜鉛反応活性度に影響を与えることができるPZCMの幾つかの物理的性質には、結晶化度、表面積及び粒子のモルホロジー、並びにこれらの組み合わせを挙げることができるが、それらに限定されない。PZCMの亜鉛反応活性度に影響を与える可能性のあるPZCMの他の物理的性質には、容積密度、表面電荷、屈折率、純度、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0022】
(結晶化度)
結晶構造のより少ないPZCMでは、相対亜鉛反応活性度がより高くなる可能性がある。粒子の結晶の欠陥又は結晶性の一体性を、X線回析(XRD)パターンの反射の半値全幅(FWHM)により測定することができる。理論に束縛されるものではないが、FWHM値が大きいほどPZCMにおいて結晶化度のレベルが低いことが想定される。亜鉛反応活性度は、結晶化度が減少すると増大すると思われる。いかなる好適なPZCM結晶化度も使用されてよい。例えば、好適な結晶化度値は、200(約13°2θ、6.9Å)反射ピークで、約0.01〜1.00、又は約0.1〜約1.00、又は約0.1〜約0.90、又は約0.20〜約0.90、あるいは約0.40〜約0.86FWHM単位の範囲で変わってもよい。
【0023】
(粒径)
腐食防止剤中のPZCM粒子は、いかなる適切な平均粒径を有してもよい。特定の非限定的実施形態において、より小さい粒径が相対亜鉛反応活性度(%)の増大に正比例することが判明している。適切な平均粒径には、約10nm〜約100μm、又は約10nm〜約50μm、又は約10nm〜約30μm、又は約10nm〜約20μm、又は約10nm〜約10μm、あるいは約100nm〜約10μmの範囲が挙げられるが、それらに限定されない。別の非限定的実施形態において、PZCMは、約15μm未満、又は約10μm未満、あるいは約5μm未満の平均粒径を有してもよい。
【0024】
(粒径分布)
いかなる好適なPZCM粒径分布を使用してもよい。好適なPZCM粒径分布には、約1nm〜約150μm、又は約1nm〜約100μm、又は約1nm〜約50μm、又は約1nm〜約30μm、又は約1nm〜約20μm、又は1nm〜約10μm、又は約1nm〜約1μm、又は1nm〜約500nm、又は約1nm〜約100nm、又は約1nm〜約50nm、又は約1nm〜約30nm、又は約1nm〜約20nm、あるいは約1nm以下〜約10nmの範囲が挙げられるが、それらに限定されない。
【0025】
(亜鉛含有層状物質(ZCLM))
上記で既に定義されているように、ZCLMは、PZCMのサブクラスである。層状構造は、主に二次元で起こっている結晶の成長を有するものである。層構造を、全ての原子が明確に画定された層に組み込まれるものとしてだけではなく、ギャラリーイオン(gallery ion)と呼ばれる、層の間にイオン又は分子があるものとして記載することが慣例的である(A.F.ウェルズ(A.F.Wells)の「構造無機化学(Structural Inorganic Chemistry)」、クラレンドン出版(Clarendon Press)、1975年)。例えば、ZCLMは、層に組み込まれている及び/又はギャラリーイオンのより不安定な構成成分として、Zn2+イオンを有してもよい。
【0026】
多くのZCLMは、鉱物として天然に生じる。一般例には、水亜鉛鉱(炭酸水酸化亜鉛)、塩基性炭酸亜鉛、水亜鉛銅鉱(炭酸水酸化銅亜鉛)、亜鉛孔雀石(炭酸水酸化亜鉛銅)、及び亜鉛を含有する多くの関連する鉱物が挙げられる。天然のZCLMもまた生じることができ、そこでは、粘土型鉱物(例えばフィロケイ酸塩)のようなアニオン性層の種は、イオン交換した亜鉛ギャラリーイオンを含有する。他の好適なZCLMには、水酸化酢酸亜鉛、水酸化塩化亜鉛、水酸化ラウリル硫酸亜鉛、水酸化硝酸亜鉛、水酸化硫酸亜鉛、ヒドロキシ複塩、及びこれらの混合物が挙げられる。天然ZCLMは、また、合成的に得ることができるか、又は組成物中にその場で若しくは製造プロセス中に形成できる。
【0027】
ヒドロキシ複塩は、以下の一般式により表されることができ、
[M2+1-x2+1+x(OH)3(1-y)+n-(1=3y)/n・nH2
式中、2つの金属イオンは異なっていてもよく、もし同じであり、亜鉛で表される場合には、式は、[Zn1+x(OH)22x+2xA-・nH2Oに簡素化される(H.モリオカ(Morioka)、H.タガヤ(Tagaya)、M.カラス(Karasu)、J.カドカワ(Kadokawa)、K.チバ(Chiba)、無機化学(Inorg.Chem.)1999年、38、4211〜6を参照すること)。この後者の式(式中、x=0.4)は、ヒドロキシ塩化亜鉛(zinc hydroxychloride)及びヒドロキシ硝酸亜鉛(zinc hydroxynitrate)のような一般物質を表す。二価のアニオンが一価のアニオンを置き換える時、これらは水亜鉛鉱にも関連する。
【0028】
炭酸亜鉛の市販の供給元には、炭酸亜鉛塩基(zinc carbonate basic)(ケイター・ケミカルズ(Cater Chemicals):米国イリノイ州ベンセンビル(Bensenville))、炭酸亜鉛(シェパード・ケミカルズ(Shepherd Chemicals):米国オハイオ州ノーウッド(Norwood))、炭酸亜鉛(CPSユニオン社(CPS Union Corp.):米国ニューヨーク州ニューヨーク)、炭酸亜鉛(エレメンティス・ピグメンツ(Elementis Pigments):英国ダラム(Durham))、及び炭酸亜鉛AC(zinc carbonate AC)(ブリュッグマン・ケミカル(Bruggemann Chemical):米国ペンシルベニア州ニュータウンスクエア(Newtown Square))が挙げられる。
【0029】
上記の種類のZCLMは、一般カテゴリーの比較的に一般的な例を表し、この定義に合う物質のより広い範囲に関する限定を意図するものではない。
【0030】
いかなる好適な量のいかなる好適なZCLMもが、使用されてよい。ZCLMの好適な量には、前記組成物の約0.001重量%〜約20重量%、又は約0.001重量%〜約10重量%、又は約0.01重量%〜約7重量%、あるいは約0.1重量%〜約5重量%の範囲が挙げられるが、それらに限定されない。
【0031】
(ZCLMガラス網状組織強化機構)
シリカガラスが、角共有Si−O四面体を欠いている対称性及び周期性の連続三次元(3D)網状組織であることは、よく知られている(W.H.ザカリアセン(Zachariasen)、米国化学会誌(J.Am.Chem.Soc.)54、3841、1932年を参照すること)。Si4+イオンは、網状組織形成イオンである。各四面体の頂点において、2つの四面体の間で共有されているものは、架橋酸素として知られている酸素原子である。
【0032】
耐化学性、熱安定性及び耐久性のようなガラス表面の機械的特性は、ガラス製品の表面構造自体に左右され得る。理論に束縛されることを望まないが、幾つかの網状組織形成位置が、亜鉛化合物又はZn2+イオンにより占められている時、ガラス製品表面構造の機械的特性が向上すると考えられる(G.カラス(Calas)ら、C.R.化学(C.R.Chimie)5 2002、831〜843を参照すること)。
【0033】
図1は、結晶の成長が主に二次元で起こっている亜鉛含有層状構造を示す。Zn2+イオンは層に、及び/又はギャラリーイオンのより不安定な構成成分として組み込まれる。例えば、合成炭酸水酸化亜鉛(ZCH)又は天然水亜鉛鉱(HZ)のようなZCLMは、以下の式:
3Zn(OH)2.2ZnCO3又はZn5(OH)6(CO32
を有してもよく、また図1で示されるように、幾つかの八面体の空間をもつZn2+イオン形成水滑石型水酸化物層から成る。幾つかのZn2+イオンは、水酸化物層の外側に四面体(Td)配位で空間部位の真上及び真下に位置する。層間アニオンはTd Zn2+イオンに弱く結合して、Td配位を完成する。洗浄溶液において、不安定なTd Zn2+イオンを有するADW洗剤組成物は、典型的なアルカリ性pHにおいて安定している。
【0034】
ZCLMが洗浄水に存在する場合、水滑石型水酸化物層のカチオン性電荷は、負荷電されたガラス表面と相互作用する推進力である。これは亜鉛化合物又はZn2+イオンのガラス表面への効率的な付着をもたらし、その結果、効果をもたらすのに極めて低いレベルのZCLMしか必要とされない。水滑石型水酸化物層がガラスと接触するように置かれるとすぐに、亜鉛化合物又はZn2+イオンは、ガラスに容易に付着し、ADW製品で通常起こる金属イオン浸出及びシリカ加水分解により作り出される空間を充填することができる。従って、ガラス網状組織形成剤として導入される新たな亜鉛化合物又はZn2+イオンは、ガラスを強化し、更なる洗浄の際にガラスの腐食を防ぐ。
【0035】
(腐食防止剤及び物質の組成物)
洗浄サイクルの少なくとも幾らかの部分の間に腐食防止剤により処理された時、ガラス製品の表面に少なくとも幾らかのガラス製品表面腐食保護が提供される。1つの非限定的実施形態では、腐食防止剤は、ZCLMがガラス製品の表面に接触するように置かれた時、亜鉛化合物又はZn2+イオンのある量が、ガラス製品表面の欠陥若しくは空隙上及び/又はその内部に付着するような、有効量のZCLMを含む。例えば、処理されたガラス製品の表面は、処理されたガラス製品表面の上方及び/又は下方に約1nm〜約1μmまで、又は1nm〜約500nm、又は約1nm〜約100nm、又は約1nm〜約50nm、又は約1nm〜約20nm、あるいは約1nm〜約10nmで存在する、亜鉛化合物又はZn2+イオンを有してもよい。
【0036】
別の非限定的実施形態では、物質の組成物は洗浄溶液を含み、これは、自動食器洗い機において洗浄サイクルの少なくとも一部分の間、有効量のZCLMを含む腐食防止剤を含み、その際、約0.0001ppm〜約100ppm、又は約0.001ppm〜約50ppm、又は約0.01ppm〜約30ppm、あるいは約0.1ppm〜約10ppmのZCLMが洗浄溶液中に存在してもよい。
【0037】
ZCLMを含有する水性腐食防止剤のいかなる好適なpHが使用されてもよい。特定の実施形態において、好適なpHは、約6.5〜約14の範囲内のどこでもよい。例えば、腐食防止剤の特定の実施形態は、約6.5以上、又は約7以上、又は約9以上、あるいは約10.0以上のpHを有する。
【0038】
(補助剤成分)
いかなる好適な補助剤成分がいかなる好適な量及び形態で使用されてもよい。例えば、洗剤活性物質及び/又はすすぎ補助剤活性物質、補助剤、及び/又は添加剤を、ZCLMと組み合わせて使用して複合腐食防止剤を形成してもよい。好適な補助剤成分には、洗浄剤、界面活性剤(例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性、双極性、及びこれらの混合物)、キレート化剤/金属イオン封鎖剤のブレンド、漂白系(例えば、塩素漂白剤、酸素漂白剤、漂白活性化剤、漂白触媒、及びこれらの混合物)、酵素(例えば、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、及びこれらの混合物)、アルカリ性供給源、軟水剤、二次溶解度変性剤、増粘剤、酸、汚れ放出ポリマー、分散性ポリマー、増粘剤、ヒドロトロープ、結合剤、担体媒質、抗菌活性物質、洗剤充填剤、研磨剤、泡抑制剤、消泡剤、再付着防止剤、閾値剤又は系、審美性向上剤(すなわち、染料、着色剤、香料など)、油、溶媒、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0039】
(分散性ポリマー)
いかなる好適な分散性ポリマーがいかなる好適な量で使用されてもよい。重合して適切な分散性ポリマー類(例えば、ホモポリマー類、コポリマー類、又はターポリマー類)を形成できる不飽和モノマー酸には、アクリル酸、マレイン酸(又は無水マレイン酸)、フマル酸、イタコン酸、アコニット酸、メサコン酸、シトラコン酸、及びメチレンマロン酸が挙げられる。メチルビニルエーテル、スチレン、エチレンなどのようなカルボキシレートラジカル類を含有しないモノマーセグメントの存在は、このようなセグメントが分散性ポリマーの約50重量%を超えて構成しないという条件下で好適である可能性がある。好適な分散性ポリマー類には、米国特許3,308,067号、同第3,308,067号及び同第4,379,080号で開示されているものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0040】
実質的に中和されていない形態のポリマーもまた腐食防止剤に使用されてもよい。ポリマーの分子量は、例えば約1,000〜約500,000、あるいは約1,000〜約250,000の広範囲で変わることができる。約3,000〜約100,000、又は約4,000〜約20,000の分子量及び分散性ポリマーの約50重量%未満、あるいは約20重量%未満のアクリルアミド含有量を有するアクリルアミドとアクリレートとのコポリマーも使用できる。分散性ポリマーは、約4,000〜約20,000の分子量及びポリマーの約0重量%〜約15重量%のアクリルアミド含有量を有してもよい。好適な変性ポリアクリレートコポリマー類には、米国特許第4,530,766号及び同第5,084,535号、並びに欧州特許0,066,915で開示されている不飽和脂肪族カルボン酸の低分子量コポリマー類が挙げられるが、それらに限定されない。
【0041】
好適な他の分散性ポリマー類には、約950〜約30,000の分子量を有するポリエチレングリコール類及びポリプロピレングリコール類が挙げられ、これらは、ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル社(Dow Chemical Company)から入手できる。例えば、約30℃〜約100℃の範囲内で融点を有するそのような化合物は、1450、3400、4500、6000、7400、9500及び20,000の分子量で得ることができる。そのような化合物は、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドと必要モル数のエチレングリコール又はプロピレングリコールとの重合によって形成され、それぞれ及びポリプロピレングリコールの所望の分子量及び融点を提供する。ポリエチレン、ポリプロピレン及び混合グリコールは、以下の式を用いて参照され、
HO(CH2CH2O)m(CH2CH(CH3)O)n(CH(CH3)CH2O)OH
式中、m、n及びoは、上記で示された分子量及び温度要件を満たす整数である。
【0042】
また好適な分散性ポリマー類には、米国特許第3,723,322号で記載されている、ポリアスパルテート、カルボキシル化多糖類、特にデンプン類、セルロース類及びアルギネート類、米国特許番号3,929,107号で開示されているポリカルボン酸のデキストリンエステル類、米国特許第3,803,285号で記載されているヒドロキシアルキルデンプンエーテル類、デンプンエステル類、酸化デンプン類、デキストリン類及びデンプン加水分解産物、米国特許番号3,629,121号で記載されているカルボキシル化デンプン類、並びに米国特許第4,141,841号で記載されているデキストリンデンプン類が挙げられる。上記で記載された好適なセルロース分散性ポリマー類には、セルロースサルフェートエステル類(例えば、セルロースアセテートサルフェート、セルロースサルフェート、ヒドロキシエチルセルロースサルフェート、メチルセルロースサルフェート、ヒドロキシプロピルセルロースサルフェート、及びこれらの混合物)、ナトリウムセルロースサルフェート、カルボキシメチルセルロース、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0043】
特定の実施形態において、分散性ポリマーは、前記組成物の約0.01重量%〜約25重量%、又は約0.1重量%〜約20重量%、あるいは約0.1重量%〜約7重量%の範囲の量で存在してもよい。
【0044】
(担体媒質)
いかなる好適な担体媒質がいかなる好適な形態においていかなる好適な量で使用されてもよい。好適な担体媒質には、所望の腐食防止剤の形態に応じて、液体と固体の両方が挙げられる。固体担体媒質は、乾燥粉末、顆粒、錠剤、封入製品、及びこれらの組み合わせで使用されてもよい。好適な固体担体媒質には、周囲温度で非活性の固体である担体媒質が挙げられるが、それに限定されない。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)のようないかなる好適な有機ポリマーが使用されてもよい。特定の実施形態において、固体担体媒質は、前記組成物の約0.01重量%〜約20重量%、又は約0.01重量%〜約10重量%、あるいは約0.01重量%〜約5重量%の範囲の量で存在してもよい。
【0045】
好適な液体担体媒質には、水(蒸留水、脱イオン水、又は水道水)、溶媒、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。液体担体媒質は、前記水性組成物の約1重量%〜約90重量%、又は約20重量%〜約80重量%、あるいは約30重量%〜約70重量%の範囲の量で存在してもよい。しかし、液体担体媒質は他の物質を含有してもよく、それは液体であるか、又は室温で液体担体媒質に溶解し、また担体の機能以外に他の幾つかの機能を果たす可能性もある。これらの物質には、分散剤、ヒドロトロープ類、及びこれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0046】
腐食防止剤は、「濃縮」系で提供できる。例えば、濃縮液体組成物は、従来の液体組成物と比較して低量の好適な担体媒質を含有することができる。濃縮系の好適な担体媒質含有量は、前記濃縮組成物の約30重量%〜約99.99重量%の量で存在してもよい。濃縮系の分散剤含有量は、前記濃縮組成物の約0.001重量%〜約10重量%の量で存在してもよい。
【0047】
(製品形態)
いかなる好適な製品形態が使用されてもよい。好適な製品形態には、固体、顆粒、粉末、液体、ゲル、ペースト、半固体、錠剤、水溶性小袋、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。腐食防止剤は、また、ガラス製品の表面腐食を低減するために、(a)パッケージ、(b)有効量の亜鉛含有層状物質、(c)任意で、補助剤成分及び(d)腐食防止剤の使用説明書を含んでもよいキットを含む、例えば処理システムの一部として、いかなる好適な形態で包装されてもよい。腐食防止剤は、処理システムの一部として、単一区画水溶性小袋及び/又は他の構成成分との負の相互作用が低減されるように複数区画水溶性小袋に配合されてもよい。
【0048】
本明細書に使用するのに好適な腐食防止剤は、分与バスケット又はカップ、ボトル(ポンプ補助付きボトル、スクイーズボトルなど)、機械式ポンプ、複数区画ボトル、カプセル、複数区画カプセル、ペーストディスペンサー、単一及び複数区画水溶性小袋、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されないいかなる適切な装置からも分与できる。例えば、多相錠剤、水溶性又は水分散性小袋、及びこれらの組み合わせは、腐食防止剤を任意の好適な溶液又は基材に放出するために使用されてもよい。好適な溶液及び基材には、熱水及び/又は冷水、洗浄溶液及び/又はすすぎ溶液、硬質表面、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。多相製品は、単一又は複数区画の水溶性小袋に収容されてもよい。特定の実施形態において、腐食防止剤は、制御放出(例えば、遅延、徐放、誘発、又は持続放出)を可能にする1回用量を含んでもよい。1回用量は、錠剤、単一及び複数区画水溶性小袋、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されないいかなる好適な形態で提供されてもよい。例えば、腐食防止剤は、固体(例えば、顆粒又は錠剤)、並びに複数区画の水溶性小袋で別個に提供される液体及び/又はゲルを含む多相製品の形態の1回用量として提供されてもよい。
【0049】
(製造方法)
任意の好適な形態(例えば、固体、液体、ゲル)で本明細書に記載される腐食防止剤を製造するために、好適なプロセス工程を幾つでも有するいかなる好適な方法が使用されてもよい。腐食防止剤は、いかなる好適な形態でいかなる好適な量のZCLMで、単独で又は補助剤成分と組み合わせて配合されてもよい。ZCLMは、砕けにくく、水溶性若しくは水分散性であってもよく、並びに/又は約20℃〜約70℃の温度範囲で溶解、分散及び/若しくは溶融してもよい。腐食防止剤は、粉末、顆粒、結晶、コア粒子、コア粒子の凝集体、粒塊、粒子、フレーク、押出品、プリルの形態で、又は複合物(例えば、複合粒子、フレーク、押出品、プリルの形態)として、及びこれらの組み合わせで製造されてもよい。
【0050】
複合粒子、プリル、フレーク及び/又は押出品の形態の複合腐食防止剤は、粉末形態の原料ZCLM粒子を、所望の補助剤成分(例えば、界面活性剤、分散性ポリマー、及び/又は担体媒質)と任意の順序で混合することにより、別個に作製されてもよい。複合腐食防止剤の使用は、凝離を低減する傾向がある。従って、最終製品において腐食防止剤が沈殿又は凝集する傾向が低減する。更に、洗浄サイクル中に複合腐食防止剤が放出されるとすぐに、洗浄溶液においてZCLM粒子の分散性が向上することが観察される。また、ZCLM粒子の増大した分散を洗浄溶液にもたらすことによって、補助剤成分を組み込まずに同じ濃度で原料ZCLM粒子を含む腐食防止剤を使用することと比較して、ガラスケア(glasscare)表面の腐食保護性能に著しい改善が起こることが観測された。
【0051】
上記の複合腐食防止剤が、1つ以上の担体構成成分を含む場合、担体構成成分は、所望の構成成分(例えば、ZCLM、及び/又は補助剤成分)を加える前に、それらの融点を超えて加熱されてもよい。凝固溶融物を調製するのに好適な担体構成成分は、典型的には、液体を形成するために融点を超えて加熱されることができる非活性構成成分であり、所望の構成成分を有効に捕捉できる分子間マトリックスを形成するために冷却される。
【0052】
腐食防止剤はまた、液体の腐食防止剤(例えば、ZCLMと液体担体との混合物)を所望の構成成分、例えば固体ベースの洗剤顆粒に噴霧することにより、水溶性小袋製剤に入れられた粉末、顆粒、錠剤及び/又は固体に組み込まれることができる。液体担体は、例えば、水、溶媒、界面活性剤、及び/又は腐食防止剤が分散できる他のいかなる好適な液体であることもできる。上記の噴霧工程は、腐食防止剤製造プロセス中の好適などの時点で起こってもよい。
【0053】
特定の実施形態では、液体腐食防止剤は、原料ZCLM粒子を液体担体又は組成物中に直接混合する及び/又は分散させることにより作製できる。ZCLMは、他の所望の構成成分の添加の前に、水(及び/又は溶媒)に分散できる。液体腐食防止剤が、ボトル又は水溶性小袋のようなディスペンサーに入れられると、上記の複合粒子、プリル、フレーク及び/又は押出品を作製することを必要としないで、単独で又は好適な補助剤成分と組み合わされることのいずれかで組成物中で腐食防止剤を安定化することにより、ZCLMの十分な分散が液体中で達成できる。
【0054】
別の非限定的実施形態は、有効量のZCLMを溶融担体媒質(例えば、ポリエチレングリコール)に混合することにより、溶融腐食防止剤を形成するプロセス工程を含む。この溶融腐食防止剤は、所望であれば、次に、例えば顆粒、粉末、及び/又は錠剤上に噴霧されてもよい。
【0055】
別の非限定的実施形態は、固体の腐食防止剤を形成する方法を対象としている。これは、水溶性小袋中に入れられた顆粒、粉末、錠剤及び/又は固体についての用途である。この方法は、上記の溶融腐食防止剤を、所望の粒径及び形態(例えば、複合粒子、プリル、又はフレーク)に粉砕する前に、冷却させて固体にする。任意で、1つ以上の補助剤成分が、冷却工程の前に、溶融担体媒質に、任意の量、形態、又は順序で添加されてもよい。溶融混合物は、また、押し出されて押出品複合物を形成し、必要であれば次に冷却され、粉砕されて、所望の形態及び粒径となることができ、上記で記載されるように混合できる。これらの粉砕された混合物は、所望の腐食防止剤を形成し、上記のいずれかの形態の1つ以上で多くの用途に(すなわち、単独で又はADW洗剤組成物と組み合わせて)使用するために放出されて、処理されたガラス製品の表面上に最適化された腐食防止性能を促進することができる。
【実施例】
【0056】
(試験結果)
腐食防止剤についての様々な試験の結果が、表I〜IX及び図2に提示される。発光及びエッチング試験は、特に指示のない限り、同一又は同様の基材(例えば、ガラス、ガラススライド、及び/又はプレート)を使用する同一の条件下で実施される。それぞれの試験において、基材は、ゼネラル・エレクトリック(General Electric)モデルGE2000自動食器洗い機において、以下の洗浄条件:0mg/L(0gpg)水−54℃(130°F)、標準洗浄サイクル、加熱乾燥サイクル入で50〜100サイクル洗浄される。GE2000の上段ラックに以下の基材が置かれる:4個のリビー(Libbey)53非熱処理300mL(10oz)コリンズ(Collins)グラス、3個のリビー8564SRブリストル・バレー(Bristol Valley)250mL(8 1/2oz)白ワイングラス、3個のリビー139 380mL(13oz)イングリッシュ・ハイボール(English Hi-Ball)グラス、3個のルミナーク・メトロ(Luminarc Metro)470mL(16oz)クーラーズ(Coolers)又は350mL(12oz)ビバレッジ(Beverage)グラス(1つの試験に1つのサイズのみを使用)、1個のロンシャン・クリスタル・ダルク(Longchamp Cristal d’Arques)170mL(5 3/4oz)ワイングラス、及び1個のアンカー・ホッキング・プー(Anchor Hocking Pooh)(CZ84730B)240mL(8oz)ジュースグラス(1つの箱に1つ以上のデザインがある場合は、1つの試験に1つのデザインのみを使用)。GE2000の下段のラックに以下の基材が置かれる:2枚のリビー・サンレイ(Libbey Sunray)No.15532ディナープレート23cm(9 1/4in)、及び2枚のギブソン・ブラック・ストーンウエア(Gibson black stoneware)ディナープレート#3568DP(選択肢−使用しない場合は、2枚のバラスト(ballast)ディナープレートに代える)。
【0057】
グラス及び/又はプレートは、全て、洗浄及び乾燥後に真珠光沢について1〜5の評価尺度(以下で概説される)を使用して視覚的に等級付けされる。またグラス及び/又はプレートは、全て、エッチングの形跡について真珠光沢試験で使用されるのと同じ1〜5の評価尺度を使用して視覚的に等級付けされる。評価尺度の値は以下の通りである:「1」は、基材に対する極めて重大な損傷を表し、「2」は、基材に対する重大な損傷を表し、「3」は、基材に対する幾らかの損傷を表し、「4」は、基材に対する極めて僅かな損傷を表し、「5」は、基材に対する損傷がないことを示す。
【0058】
発光試験の結果は、表I〜IIIに示され、基材の真珠光沢の比較を表す。エッチング試験の結果は、表IV〜VIIに示され、エッチング等級の比較を表す。X線光電子分光法(XPS)試験の結果は、表VIIに示され、水亜鉛鉱を使用した、亜鉛化合物又はZn2+イオンの基材への付着の比較を表す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

【0065】
【表7】

【0066】
少量のZCLM(例えば、0.1%HZ及び/又は0.1%ヒドロキシ硫酸亜鉛(zinc hydroxy sulfate))でも、真珠光沢を維持するのを助けるのに十分であり、また処理されたガラス製品の表面に対する実質的なエッチング防止効果を可能にすることが観察される。0.1%HZの液体ゲル洗剤への添加は、約7ppmの活性Zn2+イオンを洗浄溶液に提供する。
【0067】
【表8】

【0068】
処方中の少量のZCLM(例えば0.25%HZ)の添加は、結果として亜鉛化合物又はZn2+イオンの実質的な付着をガラス製品の表面上にもたらすことがまた観察される。この試験では、ガラス製品の表面上に付着された亜鉛化合物又はZn2+イオンの量が洗浄サイクルの回数とは相関しないことがまた観察される。理論に束縛されることを望まないが、亜鉛化合物又はZn2+イオンがガラス製品の表面上に蓄積しないように見えるということは、ガラス製品の表面上に初めに付着された亜鉛化合物又はZn2+イオンの一部が洗い流され、その後に再洗浄によって再び補充されることを示す場合もある。角度分解XPSの結果(示されず)は、亜鉛化合物又はZn2+イオンが、処理されたガラス製品の表面上に層化されるか、又はその中に組み込まれることを示す。また、亜鉛化合物又はZn2+イオンは、洗浄サイクル後にガラス製品の表面の最初の10nm以内において実質的に均質であるように見える。
【0069】
(結晶の一体性試験)
結晶性の一体性試験は、ZCLM粒子結晶化度の間接的な測定である。X線回折(XRD)パターンの反射のFWHM(半値全幅)は、結晶性の欠陥の測定値であり、計測的要因と物理的要因との組み合わせである。同様の解像度の機器を用いて、結晶の欠陥又は結晶性の一体性を、準結晶特性に反応しやすいピークのFWHMに関連付けることができる。この手法に従って、結晶性の歪み/完全性が種々のZCLM試料に割り当てられる。
【0070】
3つのピーク(200、約13°2θ、6.9Å;111、約22°2θ、4.0Å;510、36°2θ、2.5Å)が格子歪みに反応しやすいことが判明し、分析のために200の反射が選択される。ピークは、MDIによるジェイド(Jade)6.1ソフトウェアで標準ピアソンVII(Pearson VII)及び擬似ヴォイトアルゴリズム(Pseudo-Voigt algorithms)を使用して、個別に特性を適合させる。各ピークは、バックグラウンド定義及びアルゴリズムを変えて10回特性を適合されて、標準偏差の平均FWHMを得る。試験結果は表IXにまとめられている。
【0071】
【表9】

【0072】
結晶化度は、その供給源のFWHMに関連しているように思われる。理論に束縛されることを望まないが、より低い結晶化度が、亜鉛反応活性度を最大限にする可能性があると想定される。
【0073】
(強化試験)
図2は、正反射IR(IRRAS−赤外線反射吸収分光法)を用いたガラス製品の表面強度の比較を表す。基材である顕微鏡のガラススライドが、エッチング試験において上に記載されたのと同じ洗浄条件を用いて、市販の洗剤組成物により洗浄される。顕微鏡のスライドのスペクトルが、スプリットピー・アクセサリー(SplitPea accessory)(ハリック・サイエンティフィック・インスツルメンツ(Harrick Scientific Instruments))と共に供給される照準鏡から集められたバックグラウンドを有する、デジラボ機器(Digilab instrument)(バイオ−ラッド(Bio-Rad))上で分光透過率%として、低入射角をその正反射率のために用いて集められる。従って、結果として得られるスペクトルは反射率スペクトルである。
【0074】
ガラス製品の表面構造の強化は、Si−O伸縮振動領域におけるIRスペクトルの変化に相関する。理論に束縛されることを望まないが、少量のZCLM(例えば0.1%〜1%HZ)を含有する液体ゲル洗剤組成物により処理されたガラスのスペクトルにおいて、1050cm−1以上でのSi−O伸縮振動の減少は、ガラス製品の表面強度を示す粗さの増加、及びガラス製品の表面の損傷を示す、バルクガラスの架橋Si−O結合の数の減少に起因する可能性があると考えられている。
【0075】
ZCLMなしの液体ゲル洗剤組成物と比較して、少量のZCLM(例えば0.1%〜1%HZ)を有する液体ゲル洗剤組成物により処理されたガラス製品の表面においては、50サイクル後に、ガラス製品の表面への損傷がほとんどないか又は全くないこと(すなわち、より高い強度)が観察される。液体ゲル洗剤組成物へのZCLMの添加は、処理されたガラス製品の表面のIRRASの結果を変化させない(すなわち、ガラス製品の表面に損傷がない)ため、増大したガラス製品の表面強度が想定される。
【0076】
本明細書で記載されているポリマーに関しては、重量平均分子量という用語は、ゲル透過クロマトグラフィーを使用して、コロイド及び表面 A.物理化学及び工学の観点(Colloids and Surfaces A.Physico Chemical & Engineering Aspects)、162巻、2000年、107頁〜121頁で見出されるプロトコルに従って測定された重量平均分子量である。単位はダルトンである。
【0077】
本明細書の全体にわたって記載されている全ての特許、特許出願(及びそれに記載されているいかなる特許、加えて関連して発行されたいかなる外国特許出願も)、並びに刊行物の開示は、本明細書に参考として組み込まれる。しかし、本明細書に参考として組み込まれる文献のいずれもが本発明を教示又は開示していることを認めるものではないことを明言する。
【0078】
本明細書全体にわたって示されるあらゆる最大数値限定は、それより低いあらゆる数値限定を、そのようなより低い数値限定が本明細書に明確に記載されたものとして含むことが理解されるべきである。本明細書全体にわたって示されるあらゆる最小数値限定は、それより大きいあらゆる数値限定を、そのようなより大きい数値限定が本明細書に明確に記載されているかのように含む。本明細書全体にわたって示されるあらゆる数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内に入るそれよりも狭いあらゆる数値範囲を、そのようなより狭い数値範囲が全て本明細書に明確に記載されているかのように含む。
【0079】
主題発明の特定の実施形態を記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、主題発明の様々な変更や修正が可能であることは当該技術分野において当業者には明らかであろう。
【0080】
様々な変更や修正が、本発明の範囲から逸脱することなく実施されることができ、本発明が、本明細書に記載されている実施形態及び実施例に限定されるものではないことが、当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性洗浄溶液中でガラス製品の表面を処理するための、家庭用、施設用、工業用及び/又は商業用の腐食防止剤であって、
a)有効量の、1nm〜100nmの範囲の粒径及び200反射ピークで0.4〜0.8625FWHM単位の結晶化度値を有する亜鉛含有層状物質と、
b)ポリアスパルテート、デンプン類、セルロース類及びアルギネート類から成る群から選択される分散性ポリマーとを含み、
該水性洗浄溶液が9超14以下のpHを有することを特徴とする腐食防止剤。
【請求項2】
前記亜鉛含有層状物質が、塩基性炭酸亜鉛、炭酸水酸化亜鉛銅(copper zinc carbonate hydroxide)、金属が亜鉛のみであるヒドロキシ複塩、Zn2+イオンを含有するフィロケイ酸塩、水酸化酢酸亜鉛(zinc hydroxide acetate)、炭酸水酸化亜鉛、水酸化塩化亜鉛(zinc hydroxide chloride)、炭酸水酸化銅亜鉛(zinc copper carbonate hydroxide)、水酸化ラウリル硫酸亜鉛、水酸化硝酸亜鉛(zinc hydroxide nitrate)、水酸化硫酸亜鉛(zinc hydroxide sulfate)及びこれらの混合物の1つ以上を含む請求項1に記載の腐食防止剤。
【請求項3】
前記亜鉛含有層状物質が、以下の式:
3Zn(OH)2.2ZnCO3又は
Zn5(OH)6(CO32
を有する炭酸水酸化亜鉛である請求項2に記載の腐食防止剤。
【請求項4】
前記亜鉛含有層状物質が、炭酸水酸化亜鉛銅である請求項2に記載の腐食防止剤。
【請求項5】
前記亜鉛含有層状物質が、以下の式:
[ZnCO32.[Zn(OH)23
を有する塩基性炭酸亜鉛である請求項2に記載の腐食防止剤。
【請求項6】
前記亜鉛含有層状物質が、水酸化塩化亜鉛である請求項2に記載の腐食防止剤。
【請求項7】
前記亜鉛含有層状物質が、水酸化硝酸亜鉛である請求項2に記載の腐食防止剤。
【請求項8】
前記亜鉛含有層状物質が、水酸化硫酸亜鉛である請求項2に記載の腐食防止剤。
【請求項9】
0.001重量%〜10重量%の前記亜鉛含有層状物質を含む請求項1に記載の腐食防止剤。
【請求項10】
0.01重量%〜7重量%の前記亜鉛含有層状物質を含む請求項9に記載の腐食防止剤。
【請求項11】
自動食器洗い機においてガラス製品の表面腐食を低減するための家庭用、施設用、工業用及び/又は商業用の処理システムであって、
(a)パッケージ、
(b)請求項1〜10の何れか一項に記載の腐食防止剤、及び
(c)前記腐食防止剤を使用するための説明書
を含むキットを備える処理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−68894(P2011−68894A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234674(P2010−234674)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【分割の表示】特願2006−535443(P2006−535443)の分割
【原出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】