説明

ガラス製造用装置

【解決課題】 ガラス製造工程で用いられる各種装置において、溶融ガラスによる摩耗が少なく、安定的な供給が可能なものを提供する。
【解決手段】 本発明は、ガラス製造工程で用いられ、溶融ガラスと接触する溶解槽、清澄槽、スロート、フォアハース、フィーダー、フュージョンセルにおいて、焼結煉瓦からなる芯材に白金又は白金合金からなる溶射膜が形成されてなるものである。例えば、溶解槽10、清澄槽20、スロート50は、所定の形状に成形された焼結煉瓦からなるブロック11、21、51を組合わせて製造される。本実施形態では、これらのブロックについて、溶融ガラスとの接触面12、22、52及び隣接するブロックの合わせ面13、23、53について白金溶射膜が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製造工程で使用される各種装置(溶解槽、清澄槽、スロート、フィーダー、フュージョンセル)に関する。詳しくは、浸食・摩耗による溶融ガラスの汚染が従来品より抑制されており、高品質のガラス製品を製造することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
光学ガラス、ガラス建材等の各種のガラスの製造においては、ガラス原料(カレット)を高温で溶解し、製造された溶融ガラスを清澄し均質化した後に成形して製品としている。そして、ガラス製造装置において高温の溶融ガラスと接する、ガラス溶解槽、清澄槽等の槽類や、各槽間のガラスの流通、供給を担うスロート、フィーダーといった機器を構成する材料には、溶融ガラスを汚染することがないような安定性、強度が要求される。また、近年、板ガラスの成形工程として、オーバーフロー法が用いられている。この方法は、溶解したガラスを樋状の成形体(フュージョンセル)の上部から溢れさせて成形する方法であり、ガラス表面が成形部材と全く接触しないため高品位の表面が得られるというメリットがある。この成形工程で使用するフュージョンセルの材料でも同様の高温安定性、強度が要求される。
【0003】
従来からこれら溶解槽、清澄槽、スロート、フィーダー、フュージョンセルの構成材料は、電鋳煉瓦と称される耐火物材料が用いられている。電鋳煉瓦とは、電気溶融鋳造(電鋳)により製造される煉瓦であり、電気炉にて溶融したレンガ原料(Al2 3 −ZrO2 −SiO2 質セラミックやAl2 3 −SiO2 質セラミック等)を鋳型に流し込んで冷却させたものである。電鋳煉瓦は、緻密で硬度が高いことから、高温の溶融ガラスを取り扱うのに好適である。
【特許文献1】特開平05−8210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電鋳煉瓦でも溶融ガラスによる侵食が全く生じないとはいえず、長時間の使用による摩耗は回避できない。そして、煉瓦素材の摩耗は溶融ガラスを汚染し、製品の品質を低下させるおそれがある。また、電鋳煉瓦は、現在、需要が増大しており、その供給が不安定となっているが、このような供給が安定しない材料を用いるのは装置のコストに影響を与える。
【0005】
そこで、本発明は、電鋳煉瓦に替わる材料を用いた溶解槽、清澄槽、スロート、フィーダー、フュージョンセルであって、高温の溶融ガラスによる摩耗が少なく、また、安定的な供給が可能なものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決すべく検討を行い、従来用いられていた電鋳煉瓦に対して焼結煉瓦を用いることを検討した。焼結煉瓦とは、セラミック原料と適宜の結合材とを混練し成形した後、焼成することによって得られる煉瓦材料であり、電鋳煉瓦よりも緻密性には欠けるが、高温での強度においては十分なものがある。そして、本発明者等は、焼結煉瓦の緻密性の不足による摩耗の問題を解決するため、焼結煉瓦を芯材とし、これに溶射により白金膜を形成した各種装置を見出し本発明に想到した。
【0007】
即ち、本発明は、ガラス製造工程で用いられ、溶融ガラスと接触する溶解槽、清澄槽、スロート、フォアハース、フィーダー、フュージョンセルにおいて、焼結煉瓦からなる芯材に白金又は白金合金からなる溶射膜が形成されてなるものである。
【0008】
本発明において、焼結煉瓦とは、上記のようにして製造されるものであるが、具体的な物性は、アルミナ、シリカ、ジルコニアを主成分とする耐熱温度1000℃以上の耐熱煉瓦であって、見掛気孔率5〜50%の耐火物煉瓦である。この点、従来、ガラス製造分野で用いられてきた電鋳煉瓦は、見掛気孔率が2%以下のものが主であり、両者は明確に区別されるものである。
【0009】
そして、本発明において各装置に施す溶射膜の厚さは、100〜1000μmとするのが好ましい。これは、100μm未満の膜厚では、溶融ガラスの焼結煉瓦への侵入を防ぐことが困難となるからである。また、膜厚が1000μmを超えても効果には差が生じず、溶射時の溶射膜が収縮する際に剥離が生じやすくなるからである。溶射膜を形成する溶射法は、特に制限されるものはなく、フレーム溶射、プラズマ溶射などが知られているが、何れも適用できる。尚、本発明においては、焼結煉瓦からなる芯材に直接、溶射膜を形成しても良いが、芯材上に適宜の中間層を形成し、その上に溶射膜を形成しても良い。また、溶射膜は白金の他に白金合金、例えば、白金−ロジウム合金、白金−イリジウム合金、白金−金合金からなる。白金合金については、白金より硬度等の特性に優れるものがあり、ガラス製造装置の部位によっては適用が好ましい場合がある。
【0010】
焼結煉瓦の上に形成された溶射膜は、その表面が鏡面処理されたものが好ましい。高温の溶融ガラスと白金との界面で泡の発生を抑制し、成形するガラスの形状を安定させるためである。この鏡面処理は、予定厚さより厚く溶射膜を形成し、これを物理的に研磨するの方法で行なわれる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係る溶解槽、清澄槽、スロート、フィーダー、フュージョンセルは、表面の白金溶射膜により耐摩耗性が向上され、溶融ガラス中での長期使用にあっても摩耗が低減されており、溶融ガラスの汚染も少ない。そして、本発明では、その構成材料として入手が比較的に容易な焼結煉瓦を用い、装置の安定的供給を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、ガラス製造設備の構成の概略を示す図である。このガラス製造設備は、ガラス原料を溶解し溶融ガラスの供給源となる溶解槽10と、溶解槽10の下流に設けられる清澄槽20、それらの下流側に設けられた攪拌槽30、フュージョンセル40から構成される。そして、溶解用10と清澄槽20との間には、溶解槽10内の溶融ガラス上層の不均一層の流出を遮るための幅狭の通路であるスロート50が連結されている。また、攪拌槽から成形装置へ溶解ガラスを供給するためのフォアハース60が設置されている。
【0013】
図2は、溶解槽10、清澄槽20、及び、スロート50を示す。これらの装置は、所定の形状に成形された焼結煉瓦(商品名:M390、東芝セラミックス社製)からなるブロック11、21、51を組合わせて製造される。本実施形態では、これらのブロックについて、溶融ガラスとの接触面12、22、52及び隣接するブロックの合わせ面13、23、53について白金溶射膜が形成されている。白金溶射膜は、ブロック表面に溶射膜の密着性向上のための中間層を形成した後、フレーム溶射法にて形成した。膜厚は、溶融ガラス接触面12、22、52について400μm、ブロックの合わせ面13、23、53について200μmとしている。
【0014】
図3は、フォアハース60を示す。このフォアハース60は、焼結煉瓦(商品名:M315、東芝セラミックス社製)からなるチャンネルブロック61を複数連結して製造される。本実施形態では、各チャンネルブロックについて、溶融ガラスとの接触面62、及び、隣接するチャンネルブロックの合わせ面63について白金溶射膜が形成されている。フレーム溶射法及び溝内についてプラズマ溶射法を用い、白金溶射膜を焼結煉瓦に直接形成した。膜厚は、溶融ガラス接触面62について400μm、ブロックの合わせ面63について200μmとしている。
【0015】
また、このフォアハース60は、スターラーによる溶融ガラスの攪拌部を備える。このガラス攪拌部には、焼結煉瓦(商品名:M390、東芝セラミックス社製)からなるチャンネルブロックの底部と側壁に中間層を形成した後、白金よりも高硬度で耐摩耗性に優れる白金−10%ロジウム合金からなる溶射膜を形成した。溶射膜は、フレーム溶射法にて、溶融ガラス接触面について350μm、ブロックの合わせ面について200μm形成した。
【0016】
図4は、フュージョンセル40を示す。フュージョンセル40は、その各部材を焼結煉瓦(商品名:M390、東芝セラミックス社製)を成形加工して接合して製造される。そして、製造後、溶融ガラスとの接触面について白金溶射膜が形成されている。白金溶射膜は、ブロック表面に中間層を形成した後、フレーム溶射法にて形成した。溶射膜の厚さは、溶融ガラスが直接接触するセルの内外面42については350μmとし、溶融ガラスの接触のないフォアハースとの接合部43を200μmとした。また、セル外壁の傾斜部分44については、溶射膜厚を500μmとし、その後研磨を行い表面を平滑化処理している。
【0017】
以上のガラス製造設備を用いたガラス製造の方法については、従来と変わる点はない。即ち、目的組成に調合されたガラス原料を溶解槽10に投入し、加熱して溶融ガラス化する。溶融ガラスは、スロート50を通って清澄槽20へ導入され、清澄剤を導入して溶解槽での反応時に発生した泡を除去する。そして、清澄された溶融ガラスを攪拌槽30へ導入し。スターラーで溶融ガラスを均質化する。このようにして、清澄、均質化された溶融ガラスをフォアハースを通過させてフュージョンセル40に供給し成形してガラス製品が製造される。
【0018】
本実施形態に係るガラス製造装置にて1年間の連続的にガラス製造を行なったところ、白金溶射膜により保護された面には摩耗による変形も見られず清浄な面を呈していた。この点、従来の電鋳煉瓦(例えば、サンゴバン社製の商品名CZ、CS)を使用する同様の構成のガラス製造装置の使用後の状態と比較すると、従来品では摩耗・変形が見られており、白金溶射膜による効果が確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ガラス製造装置の概略図
【図2】本実施形態で使用したガラス溶解槽、清澄層、スロートの外観図。
【図3】本実施形態で使用したフォアハースの外観図。
【図4】本実施形態で使用したフュージョンセルの外観図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製造工程で用いられ、溶融ガラスと接触するガラス溶解用スロートにおいて、焼結煉瓦からなる芯材に白金又は白金合金からなる溶射膜が形成されてなるガラス溶解用スロート。
【請求項2】
ガラス製造工程で用いられ、溶融ガラスと接触するガラス溶解槽において、焼結煉瓦からなる芯材に白金又は白金合金からなる溶射膜が形成されてなるガラス溶解槽。
【請求項3】
ガラス製造工程で用いられ、溶融ガラスと接触するガラス清澄槽において、焼結煉瓦からなる芯材に白金又は白金合金からなる溶射膜が形成されてなる清澄槽。
【請求項4】
ガラス製造工程で用いられ、溶融ガラスと接触するフィーダー又はフォアハースにおいて、焼結煉瓦からなる芯材に白金又は白金合金からなる溶射膜が形成されてなるフィーダー又はフォアハース。
【請求項5】
ガラス製造工程で用いられ、溶融ガラスと接触するフージョンセルにおいて、焼結煉瓦からなる芯材に白金又は白金合金からなる溶射膜が形成されてなるフュージョンセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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