説明

ガラス複合体及びそのガラス複合体を用いた入力装置

【課題】 加飾部材を厚くしても平坦面領域を有するガラス複合部材、及び、これを用いて視認性に優れるとともに、破損時の安全性を兼ね備えた狭額縁構造の入力装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 ガラス複合体10は、透光性の樹脂基材20と、樹脂基材20の一方の面に積層された加飾部材21と、樹脂基材20と対向するガラス部材30と、加飾部材21と対向する枠体40と、樹脂基材20の一方の面とガラス部材30の一方の面とを貼り合わせる透光性の接着部材60と、を有し、加飾部材21は窓状の透光領域11を囲む枠状の加飾領域12を構成するように設けられており、枠体40はガラス部材30に遊嵌し、その一方の面が接着部材60を介して加飾部材21と固設され、ガラス部材30の他方の面と枠体40の他方の面とはガラス部材30近傍において同一平面内の平坦面を構成していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス部材と枠体とを有するガラス複合体及びそのガラス複合体を用いた入力装置に関し、特に、加飾部材を厚くしてもガラス部材と枠体との平坦面領域を有するガラス複合体及び良好な視認性を有する入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯用の電子機器などに、表示装置に重ねて配置される入力装置が設けられている。入力装置は、表示装置の画面が視認できるように、透光性の基材を主体として構成され、それを通して表示内容を視認しながら、検知領域に指などを触れることで、入力操作を行うことができる。
【0003】
入力操作の検知方式はいくつかの方式に分類され、抵抗膜式、静電容量式などが採用されている。静電容量式では、検知領域に、X方向に延びる透光性のX導電層とY方向に延びる透光性のY導電層が互いに対向しており、X導電層とY導電層に交互に電位が与えられる。ほぼ接地電位である人の指が接近すると、X導電層およびY導電層と指との間に静電容量が形成され、X導電層やY導電層に電位を与えたときの電圧や電流が変化する。この変化を検知して、指が接近した位置が検出される。
【0004】
このような静電容量式の入力装置はセンサ基板を保護するため、表面保護部材が一体に設けられている。表面保護部材の一方の面は入力操作面であり、他方の面には透光性のX導電層とY導電層とを有するセンサ基板が粘着層によって貼り合わされている。表面保護部材は、入力装置及び表示装置の画面領域を透光領域とするように透明部材で構成されなければならない。また、平面視でセンサ基板の配線部を含むその他の領域は非透光領域となるように、加飾領域が不透明な加飾部材を用いて形成されている。
【0005】
しかし、筐体等の不透明な枠体を入力操作面の周囲で外面に突設する加飾部材の構成は、入力操作面と枠体との段差が生じるので好ましくない。そこで、外面に枠体を突設させないような加飾部材の形成方法として、透光性の基材内面に加飾部材を印刷する「加飾印刷」がおこなわれてきた。たとえば特許文献1には透光性基板の内部やシート状フィルムに加飾印刷をおこない、配線部を含むその他の領域を非透光領域とした入力装置が開示されている。このような加飾印刷は製造方法として容易であり、所望の着色をおこなうことが可能であるため、単色の加飾部材ではもっとも好ましい加飾方法である。しかしながら、近年、2種類以上の着色をおこなったり、白色等の色合いをより高品位に出すため、印刷層を厚く形成することがおこなわれるようになり、その厚さによる段差が大きいものが使用されるようになってきた。
【0006】
このような入力装置は表示装置に重ねるように配置されて電気光学装置を構成しており、操作者は入力装置を通して表示装置の画面表示を見ることになるため、その画面の視認性に関する性能がきわめて重要である。光学特性に優れたガラス基材を使用する場合は視認性がもっとも良好であり、平板を切断しただけの平面ガラス形状であればガラス基材コストはあまり問題にならない。したがって、このような入力装置の透光領域には表面保護部材として平面ガラスを用いることが最適である。しかし、ガラスが装置表面に露出する構造は破損時にガラス片が飛散するという別の問題を内包している。
【0007】
いっぽう、入力装置は電子機器の筐体との一体化が望ましい。このため、枠体を筐体材料で形成したガラス複合体が工夫された。特許文献2には、樹脂枠と一体化している平面ガラスに静電容量型センサ基板を貼り合わせた静電容量センサ付ガラスインサート成形品において、樹脂枠の内側領域にセンサ基板の入力領域を貼り合わせるようにするため、樹脂枠の形状を傾斜面とした狭額縁構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−173970号公報
【特許文献2】特開2009−154479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ガラスと樹脂のように線膨張係数が異なる部材を一体に成形することは、樹脂材料や着色材料を自由に選べないという制約があり、部材のクラックや部材間の境界における段差の発生などの量産課題が多かった。さらに、特許文献2の構造は、図7および図8に示すように、樹脂枠140の形状を傾斜面とするガラスインサート成形品110を用いて、矩形画面における対向する2辺にのみ、傾斜面による狭額縁構造を設けることができるものであった。矩形の4辺すべての傾斜面に対応してセンサ基板180を変形させることができないので、2組の対向する2辺のうち、いずれか1組は、センサ基板180の外周と樹脂枠140との平面距離を離すように設計しなければならない(図8)。したがって、矩形の4辺すべてが狭額縁構造のガラスインサート成形品110にすることはできなかった。また、傾斜面に貼り合わせるため、変形させたセンサ基板180の信頼性低下や、粘着層170の貼り合わせ強度の劣化が懸念された。
【0010】
さらに、センサ基板180の配線部を視認できないようにするため、平面ガラス130に加飾印刷等の加飾部材131を形成した加飾領域12が必要であった。操作者から見ると、透明な平面ガラス130の4辺に沿った内方に、不透明な加飾部材131が見えており、透光領域11は平面ガラス130と樹脂枠140の境界より一回り小さくなっている。
【0011】
また、加飾部材131を厚くする必要がある場合は、加飾部材131と平面ガラス130の段差を生じるので、印刷層を厚く形成した入力装置には適用できなかった。さらに、最表面に平面ガラス130が露出する構成であるため、落下等の強い衝撃で割れたガラス片が飛散する心配があった。
【0012】
そこで、本発明は、ガラスを部材とする複合体において、入力装置の表面保護部材としての上記問題を解決するためのものであり、加飾部材を厚くしてもガラス部材と枠体との平坦面領域を有するガラス複合体、及び、これを用いて視認性に優れるとともに破損時の安全性を兼ね備えた狭額縁構造の入力装置、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のガラス複合体は、透光性の樹脂基材と、前記樹脂基材の一方の面に積層された加飾部材と、前記樹脂基材と対向するガラス部材と、前記加飾部材と対向する枠体と、前記樹脂基材の一方の面と前記ガラス部材の一方の面とを貼り合わせる透光性の接着部材と、を有し、前記加飾部材は窓状の透光領域を囲む枠状の加飾領域を構成するように設けられており、前記枠体は前記ガラス部材に遊嵌し、その一方の面が前記接着部材を介して前記加飾部材と固設され、前記ガラス部材の他方の面と前記枠体の他方の面とは前記ガラス部材近傍において同一平面内の平坦面を構成している、ことを特徴とするものである。
【0014】
この構成にすれば、樹脂基材の一方の面に積層する加飾部材を厚くしても、それに合わせてガラス部材の厚さと枠体の平坦面領域の厚さとを個別に設定することができるので、ガラス部材の他方の面と枠体の他方の面との平坦面領域を有するガラス複合体としての応用が可能である。さらに、透光領域においては、視認性に優れたガラス部材を用い、ガラス部材の一方の面は樹脂基材で覆われているので、破損してもガラス片を飛散させないことが可能である。
【0015】
したがって、本発明によれば、ガラス部材と枠体との平坦面領域を有するガラス複合体としての応用が可能であり、視認性に優れるとともに破損時の安全性を兼ね備えたガラス複合体を実現できる。
【0016】
さらに、前記枠体は前記ガラス部材と遊嵌する空隙部が形成されるように配置されるとともに、前記空隙部には接着樹脂が充填されていることが望ましい。こうすれば、ガラス部材と枠体との線膨張係数が異なる場合でも接着樹脂によって応力を緩和できる。
【0017】
また、前記樹脂基材の他方の面は、前記透光領域と前記加飾領域との境界において平坦であることが好適である。平坦で段差をもたないことから、入力装置の表面部材として入力操作面に適している。
【0018】
また、前記ガラス部材の一方の面は周縁部が面取りされていることが好ましい。こうすれば、加飾部材の端面近傍で接着部材の厚さが急峻に変化することが無いから、樹脂基材とガラス部材の接着がより良好にできる。したがって、樹脂基材とガラス部材とを接着したガラス複合体の品質が安定する。
【0019】
本発明における入力装置は、入力部と配線部とを備えたセンサ基板と、ガラス部材と枠体との平坦面領域を有するガラス複合体と、前記センサ基板と前記ガラス複合体とを貼り合わせる粘着層と、を有し、前記センサ基板は前記粘着層を介して前記平坦面に固着されるとともに、前記入力部が前記透光領域と平面的に重なるように位置し、前記配線部が前記加飾領域と平面的に重なるように位置していることを特徴とするものである。
【0020】
こうすれば、入力操作面側から見たときに、センサ基板の配線部は加飾領域に平面的に重なるので視認されることがない。また、ガラス部材と枠体との平坦面領域にセンサ基板を貼り合わせているので、狭額縁構造が可能である。枠体を筐体の外観と合わせることにより、筐体と一体化した入力装置にすることもできる。さらにガラスの良好な視認性を有するとともに、最表面は樹脂基材としているので、破損してもガラス片を飛散させないことが可能である。したがって、視認性に優れるとともに破損時の安全性を兼ね備えた狭額縁構造の入力装置を実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、樹脂基材の一方の面に積層する加飾部材を厚くしても、それに合わせてガラス部材の厚さと枠体の平坦面領域の厚さとを個別に設定することができるので、ガラス部材と枠体との平坦面領域を有するガラス複合体としての応用が可能であり、視認性に優れるとともに破損時の安全性を兼ね備えたガラス複合体を実現できる。
【0022】
本発明によれば、ガラス部材と枠体との平坦面領域にセンサ基板を貼り合わせ、ガラスの良好な視認性を有するとともに、最表面は樹脂基材としているので、視認性に優れるとともに破損時の安全性を兼ね備えた狭額縁構造の入力装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるガラス複合体を示す斜視図である。
【図2】図1のガラス複合体をII−II線で切断した模式断面図である。
【図3】第1の実施形態における入力装置を示す模式断面図である。
【図4】第1の実施形態におけるセンサ基板を示す模式平面図である。
【図5】第2の実施形態におけるガラス複合体を示す模式断面図である。
【図6】従来の入力装置における気泡不良を示す部分拡大断面図である。
【図7】従来の静電容量センサ付ガラスインサート成形品を示す模式断面図である。
【図8】従来の静電容量センサ付ガラスインサート成形品における他の方向の模式断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法の比率などは適宜異ならせて示してある。
【0025】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態におけるガラス複合体10を示す斜視図、図2は図1のII−II線で切断した模式断面図、図3はガラス複合体10にセンサ基板80が設けられた入力装置1の模式断面図である。図1及び図2に示すガラス複合体10は、入力装置1を構成する基材であり、図3のようにセンサ基板80が固設される。図3に示す入力装置1は、携帯電話や携帯用情報端末などの携帯機器、ゲーム装置、カメラ、ビデオ撮影装置など各種電子機器に搭載される。これらの電子機器は表示装置90を有し、操作に必要な情報が表示画面に表示される。入力装置1は、入力操作を検知するとともに表示画面を視認可能なように、表示装置90の表示画面の前方に設置される。前記表示装置90は、背部に照光装置を有している液晶表示パネルやエレクトロルミネッセンスパネルなどの自己発光型である。
【0026】
本実施形態におけるガラス複合体10は、図1に示すように、窓状の透光領域11を囲む加飾領域12が形成されている。ガラス複合体10の最表面は、透光性の樹脂基材20であり、窓状の透光領域11は光を透過させることができる。本明細書での透光性とは、透明または半透明など光を透過可能な状態を意味しており、透過率が50%以上で好ましくは80%以上であることを意味している。
【0027】
一方、枠体40は金型に熱可塑性樹脂を充填して成形したものである。図1に示すように、樹脂基材20及び枠体40には開口22、23が設けられている。開口22は受話口として、開口23は送話口として、透光領域11は表示部として、携帯電話の筐体に適用することが可能である。なお、この場合、マイクロホン、スピーカ、表示用の電気光学装置はガラス複合体10の裏面側に配設される。
【0028】
図2に示すガラス複合体10は、あらかじめ製作されたガラス部材30と、これとは別の工程で製作された枠体40と、加飾印刷によって加飾部材21が形成された樹脂基材20と、が接着部材60を介して一体化されている。枠体40は、ガラス部材30の側面と接着樹脂50によって接着されている。加飾部材21は窓状の透光領域11を囲む枠状の加飾領域12を構成するように設けられている。窓状の透光領域11は平面視でほぼ一致するようにガラス部材30が配置される。
【0029】
また、加飾部材21の厚さに応じて、ガラス部材30の厚さよりも枠体40の平坦領域の厚さを薄く設計しておくことにより、ガラス部材30の接着部材60と反対側の面において、枠体40の平坦領域とガラス部材30とを同一平面内の平坦面になるようにして、この領域での段差の発生を抑制している。
【0030】
本実施形態における入力装置1は、図3に示すように、ガラス複合体10に透光性のセンサ基板80が取り付けられている。ガラス複合体10の一方の面は入力操作面10aであり、他方の面には透光性の上部電極84と下部電極86とを有する透光性基材83等からなるセンサ基板80が粘着層70によって貼り合わされている。粘着層70は、例えば、透光性のアクリル樹脂系粘着テープであり、ガラス複合体10及びセンサ基板80の貼り合わせ面がもつ各々の段差を吸収して密着している。透光性基材83には光学特性の優れたガラス基材を用いている。上部電極84及び下部電極86は、いずれもITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料で、透光性基材83表面にスパッタや蒸着により成膜される。
【0031】
入力装置1は、入力操作面10aを指で操作したときに透光領域11内部に配置された上部電極84及び下部電極86と指の間で生じる容量変化に基づいて、指の操作座標位置を検出する。
【0032】
図4にセンサ基板80をより詳しく説明するための模式平面図を示す。センサ基板80は、入力操作面10aと平面的に重なる入力部81と、電気接続のための配線部82と、を有する。図4では入力部81内部に配置された上部電極84及び下部電極86は省略し、上部配線85を実線(透光性基材83の一方の面)、下部配線87を点線(透光性基材83の他方の面)で表している。平面視で入力部81の周囲に、センサ基板80の配線部82が配置されており、配線部82において、上部電極84は上部配線85に接続され、下部電極86は下部配線87に接続され、さらに、上部配線85及び下部配線87とフレキシブルプリント基板とを接続する電気接続部88が設けられている。また、図3に示すように、下部電極86と下部配線87を保護するため、粘着層71を介して保護基材89を貼り付けることが好ましい。
【0033】
図3及び図4に示すように、センサ基板80の配線部82は加飾部材21によって形成された加飾領域12と平面視で重なるようにガラス複合体10に貼り合わされている。したがって、センサ基板80の配線部82は入力操作面10a側の操作者から視認されることがない。また、ガラス複合体10の貼り合わせ領域が平坦面になっているので、センサ基板80は、なんら変形させる必要がない。したがって、センサ基板80の透光性基材83に光学特性の優れたガラス基材を用いることができる。
【0034】
本実施形態における構成とその効果を明確にするために、従来例と比較して説明する。図6は従来の入力装置101における気泡不良を示す部分拡大断面図である。従来の特許文献1のように、加飾部材121を積層した透光性の樹脂基材120と平板(センサ基板等)125とを貼り合わせる場合に、そのまま加飾部材121を厚くすると、加飾部材121と樹脂基材120との段差によって、加飾部材121の段差部に接着部材126が追随できずに気泡123を生じていて、入力操作面120a側から気泡123が視認されてしまう。
【0035】
図7及び図8は従来の静電容量センサ付ガラスインサート成形品を示す模式断面図である。従来の特許文献2のように、画面領域である透光領域11に平面ガラス130を用い、平面ガラス130の周囲に樹脂枠140を設けたガラスインサート成形品110では、加飾部材131の段差に加えて樹脂枠140の段差を生じる。したがって、ここに貼り付けるセンサ基板180を変形させることなく、4辺を狭額縁構造にした入力装置100は実現不可能である。したがって、センサ基板180にガラス基材を用いることは不可能である。さらに平面ガラス130と樹脂枠140との異種材料によるインサート成形であるため、線膨張係数が異なる材料間での大きな熱応力を生じてしまう等の問題がある。
【0036】
これらの問題を解決できる本実施形態の詳細を以下に説明する。
【0037】
本実施形態のガラス複合体10は、ガラス部材30の表面30aは透光性の樹脂基材20の裏面20bに接着固定され、枠体40の表面40aは加飾部材21に接着固定される。また、加飾部材21の厚さは、ガラス部材30の表面30aと、枠体40の表面40aとの間の段差によって接着部材60を介して吸収し、透光性の樹脂基材20の表面20aを平坦な面に形成するとともに、ガラス部材30の裏面30bと枠体40の裏面40bについて、センサ基板80を貼り合わせる領域をほぼ平坦な面に形成したものである。とくに、樹脂基材20の裏面20bに積層する加飾部材21を厚くしても、それに合わせてガラス部材30の厚さと枠体40の平坦面領域の厚さとを個別に設定することができる。また、接着部材50の表面50aと枠体40の表面40aを略面一にすることが加飾部材21の厚さを吸収するうえで好ましい。また、接着樹脂50の裏面50bを、枠体40の裏面40bと、ガラス部材30の裏面30bと面一にすることがセンサ基板80を粘着層70を介して貼り合わせるうえで好ましい。
【0038】
本実施形態のガラス複合体10及び入力装置1は以下の工程をおこなって製作した。
【0039】
透光性の樹脂基材20はポリエチレンテレフタレート(PET)をハードコート処理したフィルム基材で、その厚みは約125μmである。加飾部材21は印刷法によって所望の模様、文字、マーク、絵柄、着色等の加飾を施したものであり、表裏面間が充分に遮光されるように、その厚みは約15μmとした。
【0040】
ガラス部材30は厚さ0.7mmの平板で40mm×60mmの矩形状の設計寸法に対して、大判ガラスの板材から切り出し、側面に適切な研削処理がなされたものを使用した。一方、枠体40はガラス部材30と遊嵌する空隙部の幅を0.6mmとするように成形金型寸法が設計され、ポリカーボネート(PC)樹脂を成形した。次に、これらの部材を一体化する工程において、平面位置関係が一定となるように治具を用いて、接着部材60を介して樹脂基材20とガラス部材30及び枠体40を固定した。なお、接着部材60にはアクリル樹脂系粘着テープで厚さ50μmのものを用いた。
【0041】
こうして製作したガラス複合体10を、別の工程で準備されたセンサ基板80と、粘着層70を介して固着した。センサ基板80は透光性基材83に厚さ0.55mmのガラス基材を用いており、粘着層70にはアクリル樹脂系粘着テープで厚さ25μmのものを用いた。なお、センサ基板80の入力部81がガラス複合体10の透光領域11と平面的に重なるように位置し、センサ基板80の配線部82がガラス複合体10の加飾領域12と平面的に重なるように位置させている。
【0042】
このことにより、透光領域11に平面視で入力部81が重なるセンサ基板80をガラス部材30と平坦に貼り合わせて、センサ基板80の配線部82を加飾部材21で隠すとともに、加飾領域12を最小限の平面寸法に抑えた枠体40とする狭額縁構造が可能である。こうすれば、入力操作面10a側から見たときに、センサ基板80の配線部82が視認されることがなく、また、ガラス部材30と枠体40の境界が露出して見えることがない。また、ガラス部材30の裏面30bと枠体40の裏面40bとの平坦面領域にセンサ基板80を貼り合わせているので、センサ基板80を無理に変形させる必要がない。
【0043】
本実施形態において、光学特性に優れたガラス部材30を用いているので、表示装置90の画面の視認性が良好な入力装置1を得ることができる。枠体40を筐体の外観と合わせることにより、入力装置1は電子機器の筐体と一体化することもできる。なお、さらに、表示装置90と入力装置1の間に空気層を持たないように一体化する場合は、入力操作面10aが押されても表示装置90を変形する集中応力が発生しないことも重要であり、変形しにくいガラス部材30を有する効果のひとつである。
【0044】
さらに、ガラス複合体10の最表面は樹脂基材20であるので、破損してもガラス片を飛散させないことが可能である。したがって、視認性に優れるとともに、破損時の安全性を兼ね備えたガラス複合体10、及び、視認性に優れるとともに、破損時の安全性を兼ね備えた狭額縁構造の入力装置1を実現できる。
【0045】
粘着層70に用いるアクリル樹脂系粘着テープは20μm〜100μm程度の厚さが一般的であり、10μm〜20μm程度の急峻な段差を生じると粘着テープだけでは隙間無く覆い難くなることが分かっている。透光性の画面領域に視認しうる大きさの気泡を発生させる原因となる。ガラス複合体10とセンサ基板80とを貼り付ける粘着層70で隙間を生じ、視認される気泡不良となることや、センサ基板80が剥れてしまってセンサ感度や検出位置精度などの特性不良になる可能性が高い。また、温湿度環境などの変化によって不良が顕在化する場合がある。したがって、本実施形態の特徴である、段差を低減したガラス複合体10はきわめて顕著な効果を有する。
【0046】
本実施形態は、以下のように変形可能である。樹脂基材20は、ポリエチレンテレフタレート(PET)以外に、ポリメタクリル酸メチル樹脂系ポリマー、ポリメチルペンテン、トリアセチルセルロース、シクロオレフィン系ポリマー等などの透光性のフィルム基材を用いることができる。
【0047】
加飾部材21は、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法により形成できる。印刷法で形成することにより、比較的安価に、かつ容易に加飾層を形成する事が可能である。また、加飾部材21の形成方法は印刷法に限らず、加飾部材21をあらかじめ形成してある転写シートから加飾部材21を転写する転写法や、蒸着法により形成する事も可能である。なお、白色等の色合いの場合では、非透光性とするために印刷層を重ねる必要があり、15〜50μm程度の厚さになる。
【0048】
接着部材60は感圧接着剤(Pressure Sensitive Adhesive)や紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、熱硬化併用型紫外線硬化接着剤、湿気型接着剤、紫外線湿気硬化型接着剤などを用いることができ、透明タイプであればよい。両面テープのように貼り付ける粘着タイプ、もしくは、液体を塗布する接着タイプの、どちらかのタイプを適宜選択することができる。
【0049】
図1に示すようなガラス複合体10は、枠体40の側面が曲面を有するように設計することができ、樹脂成形によって形成されることが一般的である。樹脂材料は熱可塑性樹脂が成形容易であり、例えば、ポリカーボネート(PC)やポリメタクリル酸メチル(PMMA)を使用できる。枠体40は透光性部材であってもよいし、外形形状は平面の組み合わせや円弧状などの曲面であってもよい。枠体40として成形樹脂を用いることが好ましいが、線膨張係数の制約を緩和できることから、種々の異種材料を適用可能であり、たとえばマグネシウム合金などの合金材料であってもよい。
【0050】
枠体40とガラス部材30との遊嵌する空隙部は接着樹脂50を充填することが実際的である。たとえば、両部材の平面位置関係が一定となるように配置され固着した後、空隙部に熱硬化併用型の紫外線硬化樹脂を塗布し、ひきつづき紫外線照射および加熱硬化をおこなって、空隙部に接着樹脂50を充填すればよい。たとえば、硬化条件は紫外線照射による仮止め15秒(照射光365nm、150mW/cm)、熱硬化80℃、60分である。こうすれば、ガラス部材30と枠体40との線膨張係数が異なる場合でも接着樹脂50によって応力を緩和できる。
【0051】
なお、接着樹脂50は可視光を透過する透明樹脂であることが好ましい。接着樹脂50に可視光を透過する透明タイプの樹脂を用いれば、ガラス部材30との境界が目立たず、ほとんど一体化して透光性の領域を形成できる。
【0052】
また、接着樹脂50は熱硬化型や紫外線硬化型の樹脂を用いることもできる。このうち、紫外線硬化型の樹脂は短時間で硬化でき、接着時の温度変化や体積収縮が少ないため残留応力が小さい。また、ガラス部材30と枠体40とを接着する工程が簡単であり、量産性に優れている。低収縮・低応力であれば接着時の残留応力が小さいので、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系などのいずれであってもよい。また、接着樹脂50は空隙部全周のうち数箇所に塗布されただけの構造であってもよい。
【0053】
本実施形態では、センサ基板80の透光性基材83はガラス基材としていたが、ガラス基材に限定されず、フィルム基材であってもよい。ただし、入力装置1がフィルム基材だけでは、入力操作時に変形してしまう。本実施形態では、表面保護部材としてガラス部材30を用いているので、入力装置1の入力操作面10aを強く押しすぎても、フィルム基材で構成したセンサ基板80が変形してしまう心配がない。センサ基板80には、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル樹脂系ポリマー、ポリメチルペンテン、トリアセチルセルロース、シクロオレフィン系ポリマー等などのフィルム基材を用いることができる。タッチパネルに使用されるフィルム基材の厚さは、一般に200μm以下であり、ガラス基材の厚さは一般に0.3mm〜1.1mmであるので、フィルム基材を使用することにより、全体の厚みをより薄くする事が可能である。
【0054】
本実施形態のガラス複合体10は、透光性の樹脂基材20を有することを特徴とするが、樹脂材料は透光性であれば、とくに限定されず、上述と同様に、各種のフィルム基材等を用いることができる。また、樹脂基材20の加飾部材21を積層していない面は、透光領域11と加飾領域12との境界において平坦である。平坦で段差をもたないことから、入力装置1の入力操作面10aに適している。
【0055】
また、樹脂基材20の加飾部材21を積層していない面には、上述のようにハードコート処理を有することが好ましい。例えば、入力装置1の入力操作面10aに適用すれば、傷や汚れを防止する効果が得られるので、好適である。なお、本実施形態では、透光領域11の透光性を損なわないハードコート材料が望ましい。さらに、ハードコート処理は反射防止膜の効果を有することが望ましい。とくに、ガラス部材30よりも樹脂基材20の屈折率が小さく、樹脂基材20よりもハードコート材料の屈折率が小さいことが好ましい。こうすれば、入力装置1に適用して、最適な反射防止効果を得ることができる。
【0056】
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態におけるガラス複合体10を示す模式断面図である。本実施形態でガラス部材30は、少なくとも一方の面において周縁部が面取りされている。この面取りは厚さ0.7mmのガラス部材30を端面から30μm幅程度で45度程度の角度に研削加工して形成した。面取りの幅と角度は適宜調整してもよい。とくに、加飾部材21の透光領域11近傍の端面が傾斜面である場合に、その傾斜に近いことが好ましい。
【0057】
こうすれば、加飾部材21の端面近傍で接着部材60の厚さが急峻に変化することが無いから、樹脂基材20とガラス部材30の接着がより良好にできる。したがって、樹脂基材20とガラス部材30とを接着したガラス複合体10の品質が安定する。
【0058】
とりわけ、加飾部材21を15〜50μm程度に厚くする必要がある場合に、加飾部材21の段差部に接着部材60が追随できずに気泡を生じて、気泡が視認されてしまう不良が起きやすい。このような加飾部材21に適用する場合には、面取りをおこなったガラス部材30とすることが好ましい。こうすれば、加飾部材21の端面近傍で接着部材60の厚さが急峻に変化することが無いから、気泡不良を低減できる。また、樹脂基材20が変形して凹凸を生じることも防止できる。
【0059】
なお、第2の実施形態においても、第1の実施形態に記載したと同様の変形例が可能である。また、第1の実施形態及び第2の実施形態において、ガラス複合体10と入力装置1について記載した構造は、その製造方法を限定するものではない。たとえば、センサ基板80にガラス部材30と枠体40を貼り合せてから樹脂基材20を貼り合せてもよい。
【0060】
第1の実施形態及び第2の実施形態に詳述したガラス複合体10は、入力装置1だけでなく、電子機器の筐体の一部に広く用いることができる。入力装置1をもたない場合でも、とくに、表示装置90のように平面的に取り付ける光学部品を筐体に取り付ける場合に好適である。したがって、視認性が良好なガラス複合体10を用いた電子機器を提供できる。
【0061】
ガラス複合体10の加飾領域12には必要に応じて、マイクロホン、スピーカのような電子部品用に開口部が形成され、あるいはカメラレンズ、赤外通信用の透光窓を内包する場合がある。このような加工は曲面を自在に形成可能でき、穴加工が比較的容易な樹脂成形で形成された部材が望ましい。また、ガラス複合体10は開口22、23を形成していないものであってもよい。とくに、4辺が狭額縁構造になっている電子機器に好適であり、電子書籍や電子手帳、あるいはデジタルフォトフレームのように音声機能が主でない電子機器に、とくに適している。
【0062】
さらに、図1のような矩形のガラス部材30に限定されないことも言うまでもない。たとえば、円形の画面を有する電子水槽や電子時計などの電子機器に用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1、101 入力装置
10 ガラス複合体
10a、110a 入力操作面
11 透光領域
12 加飾領域
20、120 樹脂基材
21、121 加飾部材
22、23 開口
30 ガラス部材
40 枠体
50 接着樹脂
60、126 接着部材
70、71 粘着層
80、180 センサ基板
81 入力部
82 配線部
83 透光性基材
84 上部電極
85 上部配線
86 下部電極
87 下部配線
88 電気接続部
89 保護基材
90 表示装置
100 静電容量センサ付ガラスインサート成形品
110 ガラスインサート成形品
123 気泡
125 平板(センサ基板等)
130 平面ガラス
131 加飾部材
140 樹脂枠
170 粘着層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の樹脂基材と、前記樹脂基材の一方の面に積層された加飾部材と、前記樹脂基材と対向するガラス部材と、前記加飾部材と対向する枠体と、前記樹脂基材の一方の面と前記ガラス部材の一方の面とを貼り合わせる透光性の接着部材と、を有し、
前記加飾部材は窓状の透光領域を囲む枠状の加飾領域を構成するように設けられており、前記枠体は前記ガラス部材に遊嵌し、その一方の面が前記接着部材を介して前記加飾部材と固設され、前記ガラス部材の他方の面と前記枠体の他方の面とは前記ガラス部材近傍において同一平面内の平坦面を構成している、ことを特徴とするガラス複合体。
【請求項2】
前記枠体は前記ガラス部材と遊嵌する空隙部が形成されるように配置されるとともに、前記空隙部には接着樹脂が充填されていることを特徴とする請求項1に記載のガラス複合体。
【請求項3】
前記樹脂基材の他方の面は、前記透光領域と前記加飾領域との境界において平坦であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガラス複合体。
【請求項4】
前記ガラス部材の一方の面は周縁部が面取りされていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のガラス複合体。
【請求項5】
入力部と配線部とを備えたセンサ基板と、請求項1〜請求項4にいずれか1項に記載のガラス複合体と、前記センサ基板と前記ガラス複合体とを貼り合わせる粘着層と、を有し、
前記センサ基板は前記粘着層を介して前記平坦面に固着されるとともに、前記入力部が前記透光領域と平面的に重なるように位置し、前記配線部が前記加飾領域と平面的に重なるように位置している、ことを特徴とする入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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