説明

ガラニン受容体および脳障害

脳障害、脳損傷または脳疾患の予防または治療用の薬物の調製におけるGALR2特異的作動薬の使用方法を提供する。脳障害または脳損傷は、塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中、または出血性脳卒中;脳または脊髄への直接的または間接的な外傷または外科手術;心肺バイパス手術または腎臓透析中の脳への虚血性損傷または塞栓性損傷;心筋梗塞に伴う再潅流脳損傷;脳疾患;過剰なアルコール消費または癌治療のための化学療法薬剤の投与の結果としての化学的損傷;放射線損傷;もしくは細菌またはウイルス感染の結果としての免疫学的損傷;のうちの1つによって引き起こされる。脳疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、または変異型クロイツフェルト・ヤコブ病のうちの1つであり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害、損傷または疾病から中枢神経系を保護する分野に関する。
本発明は、特に(a)塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中、または出血性脳卒中;(b)脳または脊髄への直接的または間接的な外傷;(c)脳または脊髄への外科手術;(d)心肺バイパス手術、腎臓透析、および心筋梗塞に伴う再潅流脳損傷によって生じる脳への虚血性損傷または塞栓性損傷;(e)アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、vCJD(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)を始めとする神経損傷;(f)細菌またはウイルス感染、アルコール、腫瘍の化学療法、および腫瘍の放射線療法により引き起こされるような免疫学的損傷、化学的損傷または放射線損傷;の有害な影響から脳を保護または治療することに関するが、それらに限定されるわけではない。
【0002】
本発明は、特に、脳障害、脳損傷または脳疾病の予防または治療における第2のガラニン受容体サブタイプ(GALR2)のリガンドの使用に関する。有利には、GALR2特異的作動薬を使用して中枢神経系の一連の疾病を予防または治療することができ、GALR1および/またはGALR3の活性化に起因する潜在的な副作用が最小限にされるかまたは除去される。本発明はさらに、脳障害、脳損傷または脳疾病の予防または治療に使用される薬物の候補を決定するための発見方法と、脳障害、脳損傷または脳疾病の予防または治療用の医薬組成物とに関する。
【背景技術】
【0003】
脳卒中
脳卒中は、脳の一部の領域の酸素欠乏を引き起こし、関連する機能的な神経学的障害を伴う永久的な脳損傷につながる塞栓性、血栓性、または出血性の症状である。そのような脳卒中が西欧諸国での三番目に大きな死因であるにも拘わらず、そのような神経学的障害に対する満足のいく治療は存在しない。脳卒中は老齢人口で観察される大部分の身体障害の原因であり、脳卒中患者の30%までが、日常活動に長期援助を必要とする。米国で毎年生じる脳卒中数は700,000件を超えると推定されており、英国では500,000人が一生のうちの何らかの時点で脳卒中に罹っている。脳卒中の影響を最小限にするために多くの神経保護薬が開発されているが、これらは実際満足のいくものではなく、広範にまたは定期的に臨床で使用されるものではない。そのような薬には、藤沢薬品工業(Fujisawa)製のニルヴァジピン(Nivadil、登録商標)およびバイエル(Bayer)社製のニモジピン(Nimotop、登録商標)、ファルマシア・アップジョン(Pharmacia&Upjohn)社の
抗酸化剤であるチリラザド(Freedox、登録商標)、インターニューロン(Interneuron)社のシチコリン(CerAxon、登録商標)、アサヒ(Asahi)社のプロテインキナーゼ阻害剤であるファスジル(Eril、登録商標)が含まれるがそれらに限定されるわけではない。カルシウムチャネル拮抗薬およびフリーラジカルスカベンジャーに加えて、開発中の神経保護薬には、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)拮抗薬、α−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソキサゾール(AMPA)拮抗薬、ならびにグルタミン酸拮抗薬およびグリシン拮抗薬を始めとする毒性の神経伝達物質の放出を阻害するように設計された他の化合物が含まれる。
【0004】
外傷性または外科的な脳障害
脳卒中以外に、脳損傷が生じるのには、広範な条件が存在する。そのような条件には、心肺バイパス、腎臓透析、および心筋梗塞に伴う再潅流を含めた手術後の脳または脊髄への直接的または間接的な外傷または外科手術が含まれる。これらは最も一般的に、冠動脈バイパス移植術(CABG)の最中かまたはその後で起こる。米国では毎年、600,000件のCABG手術が行なわれており、心肺バイパス患者全体のうちの25%は手術後
三ヶ月以内に神経障害を示す。 脳を損傷させる疾病
アルツハイマー病(AD)は、西欧諸国の大きな健康上の負担である。ADは高齢者の最も一般的な認知症の形式であり、世界で推定二千万人がこの病気にかかっている。ADの発生率は老人増加の人口が増加するにつれて次の25年間で二倍になると予想されている。英国ではAD罹患者のケアにかかる年間コストが約一兆一千万円(55億ポンド、1ポンド=約200円で換算)を超える。現在まで、アルツハイマー病のための基地の治療法は存在せず、アルツハイマー病の進行を実質的に遅らせる治療方法は(アセチルコリンエステラーゼ阻害因子以外は)ほとんど示されていない。
【0005】
多発性硬化症(MS)は若年青年の間で最も一般的な身体に障害を引き起こす神経学的疾病であり、英国では約85,000人、西欧諸国では50万人以上に常に影響を及ぼしている。MSは20歳から40歳の間の人で最も頻繁に診断され、女性では男性のほぼ2倍その疾患を発現する可能性がある。多発性硬化症は優先的に北欧系の人々を優先的にターゲットにするように思われる。MSは、ニューロンを取り囲むミエリン鞘の損失と、それによって生じる進行的なニューロンの機能不全および神経細胞損失により特徴付けられる自己免疫疾患である。患者は、視力障害および失明、運動および/または感覚機能の損失、ならびに腸機能および尿機能に関する問題を含む広範な問題を経験する。
【0006】
神経の損傷および/または細胞死を引き起こすことが知られている他の疾病には、パーキンソン病および変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が含まれる。
他の脳障害の形式には、細菌またはウイルス感染、アルコール、腫瘍の化学療法、および腫瘍の放射線療法により引き起こされる免疫学的損傷、化学的損傷、または放射線損傷が含まれる。
【0007】
ガラニン
29アミノ酸から成る神経ペプチドであるガラニン(非特許文献1)は中枢神経系および末梢神経系の両方で広範に発現しており、また多くの典型的な神経伝達物質の数の放出を減少させることによりシナプス伝達に対する強い阻害作用を有している(非特許文献2−7)。このような阻害作用により、
a)作動記憶(非特許文献8)および長期電位(LTP、記憶と電気生理学的相関があると考えられている)(非特許文献9)の低下、
b)発作の機能活動が起こりやすい傾向の減少に伴う海馬の興奮の減少(非特許文献10)、および
c)無傷動物(intact animal)におけるおよび神経損傷後の侵害刺激反応の顕著な阻
害(非特許文献11)、
を含む多様な生理学的効果が生じる。
【0008】
ガラニンのこれらの神経調節作用は、神経系のペプチドによって果たされている主な役割と、長い間みなされていた。しかしながら現在、それらの多くの神経系への損傷がmRNAレベルとペプチドレベルの両方でガラニンの発現を顕著に引き起こすという大きな一連の証拠が存在する。そのような病変研究の例には、
a)末梢神経軸索切断後の後根神経節(DRG)(非特許文献12)、
b)下垂体切除後の視床下部の大形細胞の分泌ニューロン(非特許文献13)、
c)前頭頭頂葉皮質の切除(剥皮術)後の背側縫線核および視床(非特許文献14)、
d)内嗅皮質病変後の海馬の分子層(非特許文献15)、ならびに
e)海馬采脳弓脚線維束の切断後の内側中隔(MS)および垂直脚対角帯(vdB)(非特許文献16)、
におけるガラニンのアップレギュレーションが含まれる。
【0009】
これらの研究により、多くの研究者は、ガラニンがその典型的な神経調節効果に加えて
、細胞を生存させまたは増殖を促進する役割を果たす可能性があることを推測するに至った。
【0010】
この仮説を試験するために、トランスジェニック動物を作製し、ガラニン遺伝子における機能喪失型変異および機能獲得型変異を生じさせた(非特許文献17−20)。ガラニンノックアウト動物の表現型分析から、驚いたことに、ガラニンが成長中の末梢および中枢神経系のニューロンのサブセットに対して生存因子として作用することが明らかとなった(非特許文献21)。最近では、このニューロンの生存の役割が成人DRGにも関連することが明らかになっている。感覚ニューロンは、PKC依存的な様式で第2のガラニン受容体サブタイプの活性化によって媒介され、ガラニンに依存して損傷後に軸索を伸長する(非特許文献22)。従って、ガラニンは中枢神経系に同様の様式で作用し、脳障害、脳損傷または脳疾患の動物モデルにおける細胞死を低減する可能性があると仮定された。
【0011】
特許文献1は、ヒトガラニンの配列を開示している。モルヒネの効果を増強するためにラットガラニンまたはそのN末端断片を投与することを含めて他の研究者による研究が論じられている。特許文献1が、ガラニンがそれ単独でまたは他の鎮痛剤と組み合わせて投与され得るように鎮痛効果を示すと期待できることを示唆している。特許文献1は痛みの治療におけるガラニンまたはその類似体(analog)の使用方法ならびに特定の他の症状の治療におけるガラニン拮抗薬の使用方法を権利主張している。
【0012】
特許文献2は、多くの推定ガラニン拮抗薬を開示している。記載されている拮抗薬はすべて、ガラニンの最初の12のアミノ酸に、他のペプチド(例えばキメラペプチド)の部分的配列が続いているものに基づいている。受容体のサブタイプに依存して、作動薬であると思われるものもあれば、拮抗薬であると思われるものもあり、その両方であると思われるものもある。特許文献2は、アルツハイマー病型の認知症および腸疾患を含むインスリン関連疾患、成長ホルモン関連疾患、アセチルコリン関連疾患、ドーパミン関連疾患、サブスタンスP関連疾患、ソマトスタチン関連疾患、およびノルアドレナリン関連疾患、ならびに内分泌学、摂食行動、神経病学および精神医学の分野における疾患の治療に有益な拮抗薬を開示している。かかる拮抗薬は鎮痛剤としても有用であり得る。特許文献2は、グルコース刺激によるインスリン放出のガラニンによる阻害;スコポラミン誘導のアセチルコリン(ACh)の海馬での放出のガラニンによる阻害;屈筋反射のガラニンによる促進;膜結合試験における結合ヨウ化ガラニンの移動;を始めとする種々の効果に対する特許文献2に記載されているいくつかの拮抗薬を使用した研究結果を開示している。特許文献2には、そのような拮抗薬が鎮痛用に示され得ることを示唆しているが、そのような効果に対する結果を特許文献2では開示していない。ガラニン作動薬の使用方法に関しては積極的または有益な権利請求はなされてない。
【0013】
非特許文献23は、マウスの記憶過程に対するガラニンの影響の研究について記載している。結果は、ガラニンが記憶および他の認識機能を損ない、ガラニンの中間用量が特に記憶喪失を誘発することを示唆している。ガラニン作動薬の使用方法に関しては積極的または有益な権利請求はなされていない。
【0014】
特許文献3は、アルツハイマー病の予防および治療のためのガラニン拮抗物質として有用と期待される、ガラニンのインシュリン分泌抑制作用を効果的に阻害する合成ペプチドおよび誘導体を開示している。
【0015】
非特許文献24は、その当時のガラニンの作用の知見を要約し、一連の高親和性ガラニン拮抗薬について説明した概要論文である。この概要は、ガラニン拮抗薬がアルツハイマー病の治療に有用であり得ることを示している。
【0016】
非特許文献25は、基本のおよび卵胞ホルモン刺激性のプロラクチン産生ならびにプロラクチンホルモンの放出へのガラニンの関与について論じている。
特許文献4は、ヒトガラニンのアミノ酸配列を有するペプチドおよび該ペプチドをコードするDNAクローンを開示している。特許文献4は、ガラニンが膵活性に役割を果たす可能性を示唆しており、膵活性を調節する方法または成長ホルモンの生産を刺激する方法であって、開示されたペプチドの使用方法を含む方法について権利請求している。
【0017】
特許文献5は、ガラニン拮抗薬を識別するためのヒトガラニンをコードするDNAおよび方法を開示している。
特許文献6−9は、GALR2(第2のガラニン受容体サブタイプ)をコードするGALR2 cDNAならびにGALR2に特異的に結合する化合物を識別する方法を開示している。GALR2拮抗薬がアルツハイマー病の治療に有効であり得るとの言及がある。化合物がGALR2作動薬か否かに基づいて、脳障害の予防用または治療用の化合物を選択する方法についての開示はない。
【0018】
非特許文献26は、その当時のガラニンの作用についての知見を概説した概要論文である。非特許文献26は、中枢に投与したガラニンがラットの学習および記憶の作業に血管を生じさせること、およびガラニン拮抗薬の使用がアルツハイマー病の治療に有用であり得ることを示している。アルツハイマー病の治療のためのガラニン作動薬の使用については言及されていない。
【0019】
非特許文献27は、ラットの中枢流体振動によって引き起こされる外傷性脳障害(TBI)の程度に対するガラニンの脳室内注射の影響について説明しており、ガラニン処理されたラットが様々な感覚運動作業において欠点が少ないことを示した。この論文は、そのような影響をガラニンの神経調節作用であって、グルタミン酸等の興奮性のアミノ酸の放出が減少することに起因すると考えているが、記憶試験(モリス水迷路試験)ではガラニン処理ラットと非処理ラットの間に差が無かった。
【0020】
非特許文献28は、慢性の苦痛状態の発達の測定手段としての、除脳し脊髄化した無麻酔状態のラットの屈筋反射の興奮性に対する坐骨神経の急性の切断の影響を調べた研究である。ガラニンが苦痛反応を阻害するのに有用であり得ることが判明した。脳障害、脳傷害または脳疾患の予防または治療へのGALR2作動薬の使用についての言及はない。
【0021】
特許文献10は、野生型マウスと比較して、ガラニン遺伝子欠損マウスで、破壊障害からの回復(坐骨神経の感覚軸索の再生能を示す)、成長中のニューロンの生存、および長期電位(LTP)が低減されることを開示している。これらの結果から、ガラニン作動薬が神経損傷の修理用の薬剤の調製に使用するのに適当である可能性が示唆された。また、ガラニン作動薬がアルツハイマー病および関連の記憶喪失の治療においても有用であることが言及されている。しかしながら、どのガラニン受容体サブタイプがそのような結果を媒介するか、および、アルツハイマー病以外の障害、損傷または疾病から中枢神経系を保護する際のガラニン作動薬の影響については言及されていなかった。
【0022】
さらに特許文献10は、特許文献11と共に、ガラニン遺伝子を欠損するように作製された哺乳動物、特にマウスについて説明している。
特許文献12は、癲癇(てんかん)で起こるような痙攣を治療するために使用可能な一連のガラニン作動薬化合物を開示している。そのような化合物を無酸素症による損傷を予防するためにCNS障害にまたは心臓切開手術に使用し得ることを言及しているが、特許文献12に含まれる実験結果はすべて痙攣の治療に関するため、その根拠は存在しない。特許文献12の発明者がその一部を構成している研究グループは、続いて、それらの化合物のうちの一つである「ガルノン(galnon)」という化合物に関する情報を公表した(非
特許文献29)ガルノンはGALR1とGALR2を等しく活性化し、両方に対して作動的な活性を有する。さらに、最近の仕事は、このガルノンがニューロテンシン受容体を含む多くの他のGPCR受容体をも活性化することを示している(非特許文献30,31)。このガルノンはそのガラニン受容体の活性について特異的でなく、GALR2特異的作動薬でもない。特許文献12は苦痛、癲癇の治療におけるガルノンの使用方法を権利主張しているが、脳障害、脳外傷または脳疾病の治療でのそのような化合物の使用に関して特に権利主張しているわけではない。
【0023】
非特許文献32−34は癲癇、オピオイド依存性、および摂食に関する研究におけるガルノンの使用についてそれぞれ論じている。
ガラニン受容体
3つのGタンパク質共役型ガラニン受容体サブタイプであるGALR1,GALR2およびGALR3が同定されている(非特許文献35−44)。GALR1およびGALR3へのガラニンの結合は抑制性Giタンパク質への共役によりアデニルシクラーゼを阻害
することが示されている(Wang, 1998、非特許文献35、および非特許文献44)。これとは対照的に、GALR2の活性化は、Gq/11への共役によりホスホリパーゼCおよびプロテインキナーゼC活性を刺激する(Fathi, 1997、非特許文献37、非特許文献39お
よび非特許文献45)し、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)カスケードを活性化する。アデニリルシクラーゼへのGALR1およびGALR3の負の共役は、神経損傷または疾病後にニューロンの機能に抑制的効果を有すると予想される。また、そのような共役は、挙動(behavior)に否定的で望ましくない影響を及ぼし、傷害および疾病後の回復を阻害するかまたは遅延させるとも予想される。さらに、GALR1とGALR3はいずれも心臓および腸で発現しており、GALR1は肺および膀胱でも発現している。
【0024】
受容体サブタイプに特異的な抗血清が無いことおよび受容体サブタイプに特異的なガラニンリガンドが不足していることで、各受容体によって果たされる機能的役割の分析が阻まれ続けていた。この分野における主な進歩は、ガラニン2−11(AR−M1896と称する)が、ペプチドGALR1と比べて500倍の特異性で、かつGALR1活性化をほぼ完全に喪失した状態で、GALR2に優先的に結合することを発見したことである(非特許文献46および非特許文献47)。AR−M1896がGALR3に結合するか、または活性化させるか否かについて公表されたデータはない。AR−M1896は以前、GALR2の活性化が、ガラニンが成人の末梢神経系の感覚ニューロンからの神経突起の成長を刺激する主要な機序であるらしいことを実証するために使用された(非特許文献22)。ガラニン1−15ペプチドおよびガラニン1−16ペプチドもガラニン受容体を活性化する完全長ガラニン神経ペプチドの一部分であることがわかっている。
【0025】
本明細書全体を通じて、用語「GALR」は、GALR1,GALR2およびGALR3から成る受容体のグループのうちの1つである受容体を示す。かかるグループは、ヒト、ラットおよびマウスの受容体を含むが、それらに限定されるわけではない。さらに受容体は、キメラ型(すなわち異なる種由来のGALR配列を含む)、切断型(すなわち天然GALR配列よりも短い)、または延長型(すなわち天然GALR配列を超える追加配列を含む)であってもよい。受容体の活性化は、例えば、細胞内のカルシウムレベルの増加によって決定することが可能である。
【0026】
本明細書全体を通じて、用語「GALR2特異的作動薬」は、その物質によるGALR2の活性化の結果として細胞内での応答を引き起こすことができる物質であって、GALR1および/またはGALR3を活性化しない(あるいは少しの効力でしか活性化しない)物質のことを示す。ある化合物がガラニン受容体の作動薬か否かを識別する方法は当該技術分野で周知である(例えば非特許文献48および非特許文献49)。GALR2特異的作動薬は、GALR1の結合および活性化と比較して、少なくとも30倍の選択性で、
好ましくはGALR1に比べて50倍よりも大きい選択性で、より好ましくはGALR1に比べて100倍よりも大きい選択性で、GALR2と優先的を結合および活性化する。GALR2特異的作動薬はさらに、GALR3の結合および活性化と比較して、少なくとも30倍の選択性で、好ましくはGALR3と比べ50倍よりも大きい選択性で、より好ましくはGALR3と比べ100倍よりも大きい選択性で、GALR2と優先的を結合および活性化する。
【特許文献1】WO92/12997
【特許文献2】WO92/20709
【特許文献3】JP−A−6172387
【特許文献4】WO92/15681
【特許文献5】WO92/15015
【特許文献6】WO97/26853
【特許文献7】US2003/0129702
【特許文献8】US2003/0215823
【特許文献9】US6,586,191
【特許文献10】EP−A−0918455
【特許文献11】EP−A−1342410
【特許文献12】WO02/096934
【非特許文献1】Tatemoto et al. (1983) FEBS Lett. 164 124-128
【非特許文献2】Fisone et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 7339-7343
【非特許文献3】Misane et al. (1998) Eur. J. Neurosci. 10 1230-1240
【非特許文献4】Pieribone et al. (1995) Neurosci. 64 861-876
【非特許文献5】Hokfelt et al. (1998) Ann. N. Y. Acad. Sci. 863 252-263
【非特許文献6】Kinney et al. (1998) J. Neurosci. 18 3489-3500
【非特許文献7】Zini et al. (1993) Eur. J. Pharmacol. 245 1-7
【非特許文献8】Mastropaolo et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 9841-9845
【非特許文献9】Sakurai et al. (1996) Neurosci. Lett. 212 21- 24
【非特許文献10】Mazarati et al. (1992) Brain Res. 589 164-166
【非特許文献11】Wiesenfeld et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 3 334-3337
【非特許文献12】Hokfelt et al. (1987) Neurosci. Lett. 83 217-220
【非特許文献13】Villar et al. (1990) Neurosci. 36 181-199
【非特許文献14】Cortes et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87 7742-7746
【非特許文献15】Harrison & Henderson (1999) Neurosci. Lett. 266 41-44
【非特許文献16】Brecht et al. (1997) Brain Res. Mol. Brain Res. 48 7-16
【非特許文献17】Bacon et al. (2002) Neuroreport 13 2129-2132
【非特許文献18】Holmes et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 11563-11568
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【非特許文献20】Blakeman et al. (2001) Neuroreport 12 423- 425
【非特許文献21】Holmes, 2000; O'Meara et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97 11569-11574
【非特許文献22】Mahoney et al. (2003) J. Neurosci. 23 416-421
【非特許文献23】Ukai et al. (1995) Peptides 16 1283-1286
【非特許文献24】Bartfai et al. (1992) TiPS 13 312-3
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【非特許文献26】placeCrawley (1996) Life Sci. 58 2185-2199
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【非特許文献28】Luo et al. (1995) Neuropeptide 28 161-166
【非特許文献29】Wu et al. (2003) Eur. J. Pharmacol. 482 133- 137
【非特許文献30】Wang et al., Functional activity of galanin peptide analogues. Program No. 960.4 2004 Abstract Viewer/Itinerary Planner. placeCityWashington StateDC
【非特許文献31】非特許文献31のオンライン版 Society for Neuroscience, 2004. Online. (http ://sfn. scholarone. com/itin2004/index. html
【非特許文献32】Saar et al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 99 7136-7141
【非特許文献33】Zachariou e al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. U . S. A. 100 9028-9033
【非特許文献34】Abramov et al. (2003) Neuropeptides 38 55-61
【非特許文献35】Habert-Ortoli et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 9780-9783
【非特許文献36】Burgevin et al. (1995) J. Mol. Neurosci. 6 33-41
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【非特許文献38】Smith et al. (1997) J. Biol. Chem. 272 24612-24616
【非特許文献39】Wang et al. (1997a) Mol. Pharmacol. 52 337-343
【非特許文献40】Wang et al. (1997b) J. Biol. Chem. 272 31949-31953
【非特許文献41】Ahmad et al. (1998) Ann. N. Y. Acad. Sci. 863 108-119
【非特許文献42】Bloomquist et al. (1998) Biophys. Res. Commun. 243 474-479
【非特許文献43】Kolakowski et al. (1998) J. Neurochem. 71 2239-2251
【非特許文献44】Smith et al. (1998) J. Biol. Chem. 273 23321-23326
【非特許文献45】Wittau et al. (2000) Oncogene 19 4199-4209
【非特許文献46】Liu et al, (2001) Proc. Natl. Acad. Sci. placecountry-regionUSA 98 9960-9964
【非特許文献47】Berger et al. (2004) Endocrinology 145 500-507
【非特許文献48】Botella et al. (1995) Gastroenterology 108 3-11
【非特許文献49】Barblivien et al. (1995) Neuroreport 6 1849-1852.
【0027】
(発明の開示)
本発明の第1の態様によれば、脳障害、脳損傷または脳疾患の予防または治療用の薬物の調製におけるGALR2特異的作動薬の使用方法が提供される。
【0028】
有利なことに、GALR2特異的作動薬の使用により、ガラニンおよびガラニン作動薬がそのような状況での細胞死を減少させる能力がある結果として、脳障害、脳損傷または脳疾患を患っている個体の脳障害、脳損傷または脳疾患が予防されるか、またはそのような個体の症状が改善される。GALR1および/またはGALR3を活性化させないGALR2特異的作動薬は脳障害または脳疾患を治療する効果があり、それら3つの受容体の各々により利用されるシグナルカスケードが異なる結果、GALR1またはGALR3の活性化による望ましくないまたは有害な末梢の副作用を最小限にする。
【0029】
脳障害または脳損傷は、塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中、または出血性脳卒中;脳または脊髄への直接的または間接的な外傷または外科手術;心肺バイパス手術または腎臓透析中の脳への虚血性損傷または塞栓性損傷;心筋梗塞に伴う再潅流脳損傷;脳疾患;免疫学的損傷;化学的損傷;または放射線損傷;のうちの1つによって引き起こされる。免疫学的損傷は細菌またはウイルス感染の結果であり得る。化学的損傷は過剰なアルコール消費または癌治療のための化学療法薬剤の投与の結果であり得る。放射線損傷は放射線療法の結果であり得る。
【0030】
脳疾患は、好ましくはアルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症または変異型クロイツフェルト・ヤコブ病のうちの1つである。
GALR2特異的作動薬はガラニンのアミノ酸配列の一部分を含むポリペプチドであってよく、好ましくはAR−M1896である。
【0031】
代わりに、GALR2特異的作動薬は非ペプチドの小さな化学物質であってもよい。
GALR2特異的作動薬は、0から100μMの間、好ましくは0から1μMの間のGALR2に対する結合親和性を有し、GALR1に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい結合特異性、好ましくは50倍よりも大きい結合特異性、最も好ましくは100倍よりも大きい結合特異性を有し得る。さらにGALR2特異的作動薬は、GALR3に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい結合特異性、好ましくは50倍よりも大きい結合特異性、最も好ましくは100倍よりも大きい結合特異性を有し得る。
【0032】
本発明の第2の態様によれば、脳障害、脳損傷または脳疾患を予防または治療する方法であって、そのような予防または治療を必要とする個体に有効量のGALR2特異的作動薬を投与することを含む方法が提供される。
【0033】
脳障害または脳損傷は、塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中、または出血性脳卒中;脳または脊髄への直接的または間接的な外傷または外科手術;心肺バイパス手術または腎臓透析中の脳への虚血性損傷または塞栓性損傷;心筋梗塞に伴う再潅流脳損傷;脳疾患;免疫学的損傷;化学的損傷;または放射線損傷;のうちの1つによって引き起こされ得る。免疫学的損傷は細菌またはウイルス感染の結果であり得る。化学的損傷は過剰なアルコール消費または癌治療のための化学療法薬剤の投与の結果であり得る。放射線損傷は放射線療法の結果であり得る。
【0034】
脳疾患は、好ましくはアルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症または変異型クロイツフェルト・ヤコブ病のうちの1つである。
GALR2特異的作動薬はガラニンのアミノ酸配列の一部分を含むポリペプチドであってよく、好ましくはAR−M1896である。
【0035】
代わりに、GALR2特異的作動薬は非ペプチドの小さな化学物質であってもよい。
GALR2特異的作動薬は、0から100μMの間、好ましくは0から1μMの間のGALR2に対する結合親和性を有し、GALR1に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい結合特異性、好ましくは50倍よりも大きい結合特異性、最も好ましくは100倍よりも大きい結合特異性を有し得る。さらにGALR2特異的作動薬は、GALR3に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい結合特異性、好ましくは50倍よりも大きい結合特異性、最も好ましくは100倍よりも大きい結合特異性を有し得る。
【0036】
本発明の第2態様によれば、脳障害、脳損傷または脳疾患を予防または治療する化合物の候補を選択する方法であって、少なくとも1つの試験化合物はGALR2特異的作動薬であるか否かを決定し、少なくとも1つの試験化合物がGALR2特異的作動薬である場合に該少なくとも1つの試験化合物を候補化合物として選択することを含む方法が提供される。
【0037】
少なくとも1つの試験化合物が、0から100μMの間、好ましくは0から1μMの間の結合親和性でGALR2と結合することが決定され得る。試験化合物は、GALR1への結合に比べて30倍よりも大きい選択性で、好ましくは50倍よりも大きい選択性で、最も好ましくは100倍よりも大きい選択性で、GALR2に結合する。好ましくは、試験化合物はさらに、GALR3への結合に比べて30倍よりも大きい選択性で、好ましく
は50倍よりも大きい選択性で、最も好ましくは100倍よりも大きい選択性で、GALR2に結合する。
【0038】
GALR2はヒトGALR2の少なくとも一部分を含んでもよく、完全長のヒトGALR2であってもよい。
GALR2は非ヒトGALR2の少なくとも一の部分を含んでもよく、ラットGALR2またはマウスGALR2であってもよく、または完全長GALR2であってもよい。
【0039】
GALR2はキメラ受容体構築物であってもよい。
本発明の上記態様による方法を用いて、試験化合物の選択がハイスループットスクリーニング検定によりスクリーニングされ得る。
【0040】
本発明の第4態様によれば、脳障害、脳損傷または脳疾患の予防または治療に使用される医薬組成物であって、
a)有効量の少なくとも1つのGALR2特異的作動薬または医薬として許容されるその塩;および
b)医薬として適切なアジュバント、キャリアまたは賦形剤;
を含む組成物が提供される。
【0041】
脳障害または脳損傷は、塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中、または出血性脳卒中;脳または脊髄への直接的または間接的な外傷または外科手術;心肺バイパス手術または腎臓透析中の脳への虚血性損傷または塞栓性損傷;心筋梗塞に伴う再潅流脳損傷;脳疾患;免疫学的損傷;化学的損傷;または放射線損傷;のうちの1つによって引き起こされ得る。免疫学的損傷は細菌またはウイルス感染の結果であり得る。化学的損傷が過剰なアルコール消費または癌治療のための化学療法薬剤の投与の結果であり得る。放射線損傷が放射線療法の結果であり得る。
【0042】
脳疾患は、好ましくはアルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症または変異型クロイツフェルト・ヤコブ病のうちの1つである。
GALR2特異的作動薬はガラニンのアミノ酸配列の一部分を含むポリペプチドであってよく、好ましくはAR−M1896である。
【0043】
代わりに、GALR2特異的作動薬は非ペプチドの小さな化学物質であってもよい。
GALR2特異的作動薬は、0から100μMの間、好ましくは0から1μMの間のGALR2に対する結合親和性を有し、GALR1に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい結合特異性、好ましくは50倍よりも大きい結合特異性、最も好ましくは100倍よりも大きい結合特異性を有し得る。さらにGALR2特異的作動薬は、GALR3に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい結合特異性、好ましくは50倍よりも大きい結合特異性、最も好ましくは100倍よりも大きい結合特異性を有し得る。
【0044】
医薬組成物は経口投与されても非経口的に投与されてもよく、好ましくは経口投与される。
医薬組成物が経口投与される場合、それはカプセルまたは錠剤の形をしていてもよく、好ましくはラクトースおよび/またはコーンスターチを含んでいてもよい。医薬組成物はさらに、潤滑剤、好ましくはステアリン酸マグネシウムを含んでいてもよい。医薬組成物は水性懸濁液または水溶液の形をしていいてもよく、さらに乳化剤または懸濁剤のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。医薬組成物は甘味剤、着香料、または着色剤のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0045】
医薬組成物は、注射により、無針装置により、吸入スプレーにより、局所に、直腸に、
経鼻で、口腔に、膣内に、または埋設したリザーバを介して投与され得る。
医薬組成物が注射または無針装置によって投与される場合、それは無菌の注射可能な製剤の形をしていてもよく、無針装置による投与に適した剤形をしていてもよい。無菌の注射可能な製剤または無針装置による投与に適した剤形は、水性または油性の懸濁液、もしくは非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶剤に溶かした懸濁液であってよい。水性懸濁液は、マンニトール、水、リンゲル液または等張食塩水に溶かして調製され得る。油性懸濁液は、合成モノグリセリド、合成ジグリセリド、脂肪酸または天然の医薬として許容される油に溶かして調製され得る。脂肪酸はオレイン酸またはオレイン酸グリセリド誘導体であり得る。天然の医薬として許容される油は、オリーブ油、ヒマシ油またはポリオキシエチル化オリーブ油、またはヒマシ油である。油性懸濁液は、長鎖アルコールの希釈剤または分散剤、好ましくはPh.Helvを含んでもよい。
【0046】
医薬組成物が直腸に投与される場合、それは直腸投与用の坐薬の形をしていてもよい。坐薬は、室温で固体かつ直腸温で液体になる非刺激性の補形剤を含んでよい。非刺激性の補形剤は、カカオ脂、蜜ろうまたはポリエチレングリコールのうちの1つであってよい。
【0047】
医薬組成物が局所に投与される場合、それはミネラルオイル、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、および水から選択されるキャリアを含む軟膏であってよい。代わりに、それはミネラルオイル、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルろう、ステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水から選択されたキャリアを含むローションまたはクリームであってもよい。
【0048】
医薬組成物が経鼻で投与される場合、それは鼻エアゾールおよび/または吸入により投与されてもよい。
本発明の第5態様によれば、細胞死を抑制する方法であって、細胞死を抑制するのに有効な量のGALR2特異的作動薬と細胞を接触させることを含む方法が提供される。細胞がニューロンであってよく、好ましくは中枢神経系由来のニューロンであり、好ましくは海馬または皮質のニューロンである。好ましくは、細胞はヒト細胞である。この方法において、細胞中に存在するGALR2の活性化の結果として細胞死は抑制される。細胞死が起こる確率が下がるか、細胞の生命が延長されるかのいずれかが起これば、細胞死は抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明の実施形態を図1−4を参照しながらあくまで例示として説明する。
動物
動物はすべて、標準固形飼料および水を自由摂取させた。動物の世話と手順は英国ホームオフィスのプロトコルおよびガイドラインの範囲で行なった。
【0050】
ガラニンノックアウトマウス
系統と育種の履歴についての詳細は以前に刊行物で発表されている(Wynick et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95 12671-12676)。簡単に説明すると、ガラニン遺伝子に標的変異についてホモ接合型のマウスをE14細胞系を用いて作製した。逆方向のPGK−Neoカセットを使用して、エキソン1−5を置換し、突然変異体を同型接合性に育種し、129 OlaHsd系統で同系交配した。週齢および性別が一致する野生型の同腹仔をすべての実験でコントロールとして使用した。
【0051】
ガラニン過剰発現マウス
系統と育種の履歴についての詳細は以前に刊行物で発表されている(Bacon et al. (2002) Neuroreport 13 2129-2132)。簡単に説明すると、ガラニン過剰発現マウスをCBA
/B6第1世代雑種のバックグラウンドで作製した。マウス129svコスミドゲノムライブラリーをスクリーニングして、マウスガラニンのコード領域全体と約20kbの上流配列を含む約25kbの領域をサブクローニングした。導入遺伝子を制限酵素によって切断し、5ng/μlの採集濃度で受精卵母細胞に微量注入した。以前に記載されていたように(Bacon et al. (2002) Neuroreport 13 2129-2132)、4つのガラニン過剰発現トランスジェニック系統が生じ、海馬におけるガラニン発現を免疫細胞化学によって評価した(以下を参照)。46系統は、他の3つ系統および野生型コントロールと比較して、海馬のCA1およびCA3領域ならびに歯状回において最も高レベルのガラニン発現を有することが判明した。したがって、後続のすべての実験には46系統を使用した。
【0052】
海馬の器官培養
器官培養は以前に記載されていた通りに準備した(Elliott-Hunt et al. (2002) J. Neurochem. 80 416-425; Stoppini et al. (1991) J. Neurosci. Methods 37 173-182)。
簡単に説明すると、5−6日齢の子からの海馬を、解剖顕微鏡下で迅速に除去し、McIlwain組織切断機(Mickle Laboratory Engineering Co. Ltd.社、英国Gomshall所在)を使用して400μmで横方向に切断した。切片は、6ウェルプレートにEarleの塩類は含むがL−グルタミンは含まない50%の最小基礎培地(Gibco BRL社、英国 Paisley所在)、50%のハンクス平衡塩類溶液(Gibco BRL社)、25%のウマ血清(加熱不活性化済;Harlan Serum Labs社、英国Loughborough所在)、5mg/mlグルコース(Sigma Chemical Co. 社、英国Poole所在)、および1mlグルタミン酸(Sigma社)を入れた微孔性膜貫通型biopore(登録商標)膜(Millipore社,英国Poole所在)上で、
95%の空気および5%のCO2の中、37℃で培養した。
【0053】
初代ニューロン培養物の調製
2−3日齢の子から海馬を切除し、ハンクス平衡塩類溶液(カルシウムおよびマグネシウムを含まない)(Gibco BRL社、英国 Paisley所在)、10%(v/v) N−2−ヒ
ドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)(ICN Biomedicals Inc.社、米国オハイオ州Aurora所在)、50U/mlペニシリン(Britannia Pharmaceuticals Ltd.社、英国Surrey, Redhill所在)、100ml量の0.05mg/ml
ストレプトマイシン(Sigma Chemical Company 社、英国Poole, Dorset所在)および0.5%(v/v) ウシ血清アルブミン(BSA;ICN Biomedicals Inc.社、米国オハイオ州Aurora所在)を用いて調製した4℃の収集緩衝液に入れた。海馬ニューロンの酵素による消化、単離、および培養を以前に記載されている通りに行った(McManus & Brewer (1997) Neurosci. Lett. 224 193-196)細胞数を計測し、D−L−ポリ−オルニチン(Sigma社)コートした96ウェルプレートに40,000細胞/ウェルになるよう蒔いた。24時間後、10μg/ml 5’フルオロ2’デオキシウリジン(Sigma社、 有糸分裂阻害剤)は添加した。実験前の9日間、培養物を周囲の酸素および5% CO2で37℃でイ
ンキュベートした。培地は最初の3日後と、その後は四日ごとに変えた。
【0054】
免疫組織化学
マウスを4% パラホルムアルデヒド/リン酸塩緩衝溶液(PBS)で心臓内潅流した。脳を室温で除去し、その後4時間固定した。その後、脳は20%のスクロースで4℃にて一晩平衡化し、最適切削温度(OCT)化合物(Tissue Tek Ltd社、英国Eastbourne所在)の封入剤に包埋し、ドライアイスで冷凍し、低温切削した(30μmの切片)。切片を10% 正常ヤギ血清/PBS 0.2% Triton−100(PBST)で室温にて1時間ブロックし、透過処理した。その後、切片を、1:1000でPBSTに溶かしたガラニンに対するウサギのポリクローナル抗体(Affinity社、英国Nottingham所在)で室温にて一晩インキュベートし、PBSで3×10分洗浄し、1:800でイソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)−ヤギ(The Jackson La boratory社、米国ペンシル
ベニア州Westgrove所在)で室温にて3時間インキュベートした。洗浄後、切片をVec
tashield(登録商標)(Vector Laboratories Inc.社、米国カリフォルニア州Burlington所在)に装着した。画像を、ライカ蛍光顕微鏡((Leica Microsystems社、英国Milton Keynes所在)を使用して、RT Color SpotカメラおよびSpot A
dvance画像撮像システム・ソフトウェア(Diagnostic Instruments社、米国ミズーリ州Sterling Heights所在)で得た。
【0055】
4%パラホルムアルデヒドで固定し、Triton−100で透過処理し、上述のように処理した分散された海馬ニューロンおよび器官培養物についても、ガラニン免疫組織化学を行った。
【0056】
スタウロスポリンおよびグルタミン酸により誘発した海馬の損傷
14日目の海馬の器官培養物を0.1%BSAの無血清培地に16時間入れ、その後様々な濃度のグルタミン酸と共に3時間、スタウロスポリンと共に9時間、インキュベートした。スタウロスポリンおよびグルタミン酸はともにそのような細胞培養物に興奮毒性の損傷を引き起こすことが分かっている(Prehn et al. (1997) J. Neurochem. 68 1679-1685; Ohmori et al. (1996) Brain Res. 743 109-115)。培養物を無血清培地で洗浄し、
画像処理の前にさらに24時間インキュベートした。ヨウ化プロピジウムの存在下で実験を行うことにより、器官培養物においてニューロンの障害の局所的パターンが観察された。細胞膜の障害後に、染料が細胞に入り、核酸に結合し、蓄積し、細胞を明るく蛍光にした(Vornov et al. (1994) Stroke 25 457-465)。CA1ニューロン亜領域が明視野イメージではっきり見えた。CA1領域を含むエリアにおけるニューロンの損傷を、背景を超えるシグナルを確立するために、NIHイメージソフトウェア(Scion Image社、米国メ
リーランド州所在)で密度スライス機能を使用して評価した。排他染料であるヨウ化プロピジウムを発現している亜領域のエリアを測定し、明視野イメージで評価される亜領域のエリアの合計面積の割合として表わした。さらに、密度スライス機能を使用する場合にパラメータを正確に設定することを一貫するために、10mMグルタミン酸に暴露した陽性コントロールの培養物のセットに対して閾値を設定した。
【0057】
9日目に、初代海馬培養物を24時間スタウロスポリンに暴露した。ニューロンの生存率は、生存/死亡キット(Molecular Probes社、オランダ国Lieden所在)を使用して、生きたニューロンと死んだニューロンをマニュアルで計数することにより測定した。
【0058】
処理
器官型または分散型の初代海馬培養物を、以下の化学物質を添加するか添加しないで、様々な時間、培養した:スタウロスポリン(Sigma社)、L−グルタミン酸(Sigma社)、ガラニンペプチド(Bachem社、英国Merseyside所在)、高親和性GALR2特異的作動薬AR−M1896[Gal(2−11)Trp−Thr−Leu−Asn−Ser−Ala−Gly−Tyr−Leu−Leu−NH2](AstraZeneca社、カナダ国ケベック州Montreal所在)、アミロイド−ベータ(1−42)(Aβ(1−42))および逆Aβ(42−1)ペプチド(American Peptide Company, 93906 カリフォルニア州Sunnyvile所在)。以下の実験で使用する前に、Aβ(1−42)を培養培地中で予めインキュベ
ートすることにより原繊維を形成するよう誘導した。詳細には、0.45mgのAβペプチドを20μlのジメチルスルホキシド(DMSO−Sigma社)に溶解し、培地で100
μMのストック溶液になるよう希釈した。これを穏やかに振盪して室温で24時間インキュベートした。
【0059】
カイニン酸により誘発した海馬の障害
8週齢の雌のマウスにカイニン酸(Tocris Cookson社、英国 Bristol所在)(20mg/kg)または賦形剤(vehicle)(PBS、1ml/kg)を腹腔内注射した。カイニ
ン酸は以前に記載されているように海馬の障害を引き起こすことが分かっている(Beer et
al. (1998) Brain Res. 794 255-266; Mazarati et al (2000) J. Neurosci. 16 6276-6281).海馬の細胞死は、末端デオキシヌクレオチド転移酵素媒介フルオレセイン−dUT
Pニック末端ラベル(TUNEL)によって測定した。動物はカイニン酸または賦形剤を注射した72時間後に屠殺した。マウスを、4%のパラホルムアルデヒド/PBSで心臓内潅流し、脳を迅速に除去し、その後室温で4時間固定した。脳を20%のスクロースで4℃にて一晩平衡化し、最適切削温度(OCT)封入剤に包埋し、ドライアイスで冷凍した。切片を低温保持装置で切断(16μm)し、ゼラチンコートしたスライド上に載せて回答し、使用するまで−80℃で保存した。アポトーシスは、インサイチュ細胞検出キット(Boehringer社、米国Berkshire所在)の使用により評価した。第6番目ごとの切片を
収集し、メタノールでブロックし、triton(0.1%)およびクエンナトリウム(0.1%)で透過処理し、加湿ボックス中で1時間、37℃にてフルオレセインdUTPで標識した。その後、切片を西洋わさびペルオキシダーゼと結合させ、ジアミノベンジジン(DAB)と共に共存させ、ヘマトキシンで対比染色した。コントロールは、フルオレセインdUTPの標識を付けるのを省略した以外は、同じ取り扱いを受けた。洗浄後に、切片をVectashield(登録商標)(Vector Labs Inc.社)に装着した。細胞を、ライカ蛍光顕微鏡((Leica Microsystems社、英国Milton Keynes所在)を使用して、R
T Color SpotカメラおよびSpot Advance画像撮像システム・ソフトウェア(Diagnostic Instruments社、米国ミズーリ州Sterling Heights所在)で得た。
【0060】
EAEモデル
MSの標準的なEAEモデルを以前に記載された通りに使用した(Radu et al. (2000)
Int. Immunol. 12 1553-60)マウスを、4mg/mlのMycobacterium
tuberculosis(ヒト結核菌)株であるH37RA(Difco社、ミシガン州Detroit所在)を添加した完全フロイントアジュバント(Sigma社)で懸濁した全量200μ
gのMBP 1−9(AcASQKRPSQR、Abimed社、ドイツ国Langenfeld所在により合成)で片方の後肢で皮下に免疫した。M.tuberculosisの生成タンパク質誘導体(PPD)は、UK Central Veterinary Laboratory (英国Weybridge所在)より入手した。マウスはEAEの徴候に関して、以下のようにスコアを付けた:0、徴候無し;1、尾の弛緩;2、部分的な後肢の麻痺および/または立ち直り反射の障害;3、完全な後肢の麻痺;4、後肢と前肢の麻痺;5、瀕死または致死。
【0061】
統計分析
データは平均+SEMとして示す。グループ内のスタウロスポリン濃度の差を分析するのに、スチューデントt検定を使用した。遺伝子型と、異なるリガンドおよび/またはスタウロスポリンの点ならびにグルタミン酸の点との間の差を分析するのに、適宜、ANOVAまたはノンパラメトリックMann−Whitney U事後検定を使用した。0.05より小さいP値を有意であるとみなした。
【0062】
候補化合物のスクリーニング方法
ヒトGALR1、GALR2またはGALRのいずれかをコードするcDNAを形質導入し、そのcDNAを安定に発現しているCHO細胞を、Euroscreen(ベルギー国Brussels所在)より入手した。細胞は、3つの層培養フラスコ中に10% ウシ胎児血清(Gibco BRL社、英国Paisley所在)および0.4mg/ml G418(Sigma社)を添加した
Nutrient Mix(HAMS)F12(Gibco BRL社)を入れて、37℃で5%
CO2/95% 大気雰囲気で培養した。細胞を約80%の今フルエンスまで増殖させ
、37°Cで10分間、0.02% EDTAのD−PBSに入れて分離させた。細胞を5分間1000rpmで遠心分離により収集し、実験の日に必要な密度になるよう培地に再懸濁した。その後、様々な化合物の添加に対する細胞の応答をFLIPR384(Molecular Devices Ltd社、英国Wokingham所在)を使用して測定した。細胞を20,000細
胞/30ulの密度で培養培地に懸濁し、384ウェル黒色/透明Greiner培養プレート(30μl/ウェル)に移動させ、37℃で2時間、5% CO2/95%空気の
調湿雰囲気でインキュベートした。各ウェルに30μlのFluo−4−AM(0.8%
プルロニックF−127および1% FBSを含む4μMのアッセイバッファ)を追加することにより、細胞に染料をロードし、37℃で1時間、5% CO2/95%空気の
調湿雰囲気でインキュベートした。細胞を、EMBLAプレート洗浄機(4×80μl洗浄)を使用して、FLIPRアッセイバッファ(20mM Hepes、1mM MgCl2、2mM CaCl2、2.5mM プロベネシド、および0.1% BSAを追加したカルシウムもマグネシウムも含まないHBSS)で洗浄し、洗浄後に各ウェルに45μlが残るようにした。
【0063】
化合物に対する反応をFLIPR384を使用して測定した。基本の蛍光を、化合物の添加前(5μl;最終濃度10μM)に毎秒10秒間記録し、蛍光を、毎秒60回読取りの間、次ぎに6秒ごとにさらに20回読取りの間記録した。データは相対蛍光単位(RFU)として記録し、3分間の記録にわたる最大のRFUを記録するデータ転送された統計について分析を行った。データはXLFit 3.0を使用して分析した。データはすべて、リリースに先立った適切な品質管理(QC)手順を受けた。各化合物に対するEC50を、GALRを発現していえる細胞系の各々に対して計算し、そのデータからGALR特異的作動薬として作用している化合物を識別した。
【0064】
結果
実験1
20mg/kgのカイニン酸の腹腔内投与を使用して、以前に記載された通りに興奮毒性の海馬損傷を誘発した(Beer, 1998; Mazarati, 2000; Tooyama et al. (2002) Epilepsia 43 Suppl 9 39-43)。三日後、脳を採取し、海馬の細胞死をTUNEL陽性細胞の数を計測することにより評価した。その結果を図1に示す。系統を一致させた野生型のコントロール(WT)と比較して、ガラニンノックアウト動物(KO)のCA1およびCA3領域の両方ではアポトーシスを起こしたニューロンの数が有意に多くなり(図1)、それぞれ62.9%および44.8%増加した(**P<0.01および***P<0.001)
。逆に、ガラニン過剰発現動物(OE)のCA1およびCA3領域の両方では、系統を一致させた野生型のコントロール(WT)よりも、細胞死の程度が有意に低下し(図1)、それぞれ55.6%および50.4%減少した(p<0.05)。
【0065】
実験2
ガラニンにより果たされている神経保護の役割をより制御しやすいインビトロ系でさらに細かく調べるために、初代分散型海馬培養物および器官型海馬培養物の両方(Elliott-Hunt, 2002)を使用した。分散型海馬培養物は観察された効果がニューロン特異的であることを保証し、器官型培養物はニューロンの回路のシナプスおよび解剖学的構成を保存する(Elliott-Hunt, 2002)と共にインビボで見出される機能持性の多くを保持しているため(Adamschik et al. (2000) Brain Res. Prot. 5 153-158)、これらの2つの技術は相互に補い合う関係にある。海馬培養物におけるニューロンの細胞死にスタウロスポリンおよびグルタミン酸が及ぼす効果(Prehn, 1997; Ohmori, 1996)を研究した。細胞死はヨ
ウ化プロピジウム染色により目に見えるようにした。結果を、未処理の「コントロール」培養物と比較した蛍光を示すエリアの百分率として表す。1μMおよび100nMのスタウロスポリンは、野生型(WT)およびガラニンノックアウト(KO)培養物の両方で有意かつ一貫したレベルの神経毒性を引き起こした。図2Aに示されるように、いずれの用量でも、野生型コントロールに比べてガラニンノックアウト動物では細胞死の百分率が有意に過剰であった(1μM:68±0.5% 対 38±8%;100nM:65±10% 対 40±26%;n=4、p<0.05)。同様に、4mMグルタミン酸に9時間暴露した後では、野生型コントロールに比べてガラニンノックアウト器官型培養物での細
胞死は顕著かつ有意に多かった(85±8.6% 対 61±9.3%;n=4、p<0.05)。
【0066】
上記の効果がニューロン特異的であることを確かめるために、分散型の初代海馬ニューロンにおけるスタウロスポリンの効果も調査した。やはり、野生型コントロールに比べてガラニンノックアウト培養物では、10nM−1μMのスタウロスポリンの範囲にわたって、有意に過剰な細胞死が観察された。主要な海馬のニューロンも研究された(n=4、p<0.01)(図2B)。
【0067】
実験3
ガラニンが欠如していると海馬の細胞死に対する感受性が増加することが実証されたため、調査をガラニン過剰発現マウスにまで拡張した。50nMまたは100nMのスタウロスポリンへの暴露後、系統を一致させた野生型コントロール(WT)と比較して、ガラニン過剰発現動物(OE)では細胞死の有意な減少が観察された(図2C;n=4および**p<0.01)。
【0068】
実験4
外因性のガラニンが野生型の海馬ニューロンを損傷から保護するか否かを試験するために、野生型の器官型培養物に、100mM ガラニンを100nM スタウロスポリンと同時投与した。この同時投与はそれらの培養物に有意な神経保護を与えた(n=4およびp<0.05)(図3A)。同様に、野生型の器官型培養物に4mM グルタミン酸と同時投与した場合にも、ガラニンは10nM−1μMの範囲で保護的であった(図3B)。器官型培養物を使用したこれらの知見と一致して、100nM ガラニンは10nM スタウロスポリンによって誘発される細胞死から野生型の分散型初代海馬ニューロンをも保護した(図3C;n=3およびp<0.05)。
【0069】
実験5
海馬におけるガラニンの神経保護効果は、Gタンパク質共役型ガラニン受容体サブタイプであるGALR1、GALR2およびGALR3のうちの1または複数の活性化により媒介されていると考えられる。GALR2の活性化が、ガラニンが成人の末梢神経系の感覚ニューロンからの神経突起の成長を刺激する主要な機序であるらしいことが先に示された(Mahoney, 2003)。したがって、100nM AR−M1896(高親和性GALR
2特異的作動薬)の影響も、野生型動物由来の器官型培養物に100nM スタウロスポリンを同時投与する時に、同様に試験した。AR−M1896がGALR1を弱く活性化するとしても、これはGALR1に対するIC50が879nMである100nMの濃度ではほぼ起こり得ないことに留意する。AR−M1896は等モル濃度のガラニンで観察されたのと同様な量に、野生型の器官型培養物の細胞死の量を有意に減少させた(p<0.05、図3A)。さらにAR−M1896の追加は、野生型の器官型培養物で観察されたのと同様にガラニンノックアウト培養物におけるスタウロスポリン誘導細胞死について効果的であった(データは図示しない)。分散型の初代海馬ニューロンもAR−M1896およびスタウロスポリンで処理したところ、完全長ガラニンで観察されるのと同様のAR−M1896の同様な保護効果が実証された(図3C)器官型または初代培養物でスタウロスポリンがない場合には、ガラニンまたはAR−M1896の有意な効果は見られなかった。
【0070】
実験6
AD(アルツハイマー病)における病気の進行は、脳内でアミロイド−β原繊維が蓄積し、α−セクレターゼによるアミロイド前駆タンパク質の開裂に由来するペプチドから成る老人斑の形成に関連する(Gamblin et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 100 10032-10037)。原繊維のアミロイド−βの蓄積はADの神経病発生における原因と
なる役割を有すると仮定されている。内因性ガラニンが原繊維Aβにより誘発された神経毒性に対して保護的な効果を有するか否かを試験するために、14日目の海馬の器官型培養物をガラニンノックアウト、ガラニン過剰発現、および系統を一致させた野生型コントロールトランスジェニック動物から得た。これらの培養物を10μMの原繊維Aβ(1−42)で、逆のコントロールペプチドAβ(42−1)で、またはペプチドの添加なしで、72時間まで処理した。10μMの原繊維Aβ(1−42)は先に記載されている通りに使用した(Zheng et al. (2002) Neuroscience 115 201-211)。実験は三連(triplicate)で行ない、細胞死をヨウ化プロピジウム蛍光(PIF)強度を使用して上述のように測定した。画像はScion Image分析ソフトウェア使用して撮像し、分析した。結果は、ガラニンノックアウト動物では野生型コントロールに比べて統計的に多くの量の原繊維Aβ(1−42)誘発の海馬の細胞死が実証された。逆に、ガラニン過剰発生動物では系統を一致させた野生型コントロールに比べて統計的に少ない繊維Aβ(1−42)誘発の海馬の細胞死が実証された。
【0071】
実験7
上述の以前に記載されたEAEモデルを使用して、ガラニンノックアウト、ガラニン過剰発現、および系統を一致させた野生型コントロールのトランスジェニック動物にMSの表現型を引き起こした。図4Aはガラニンノックアウト動物が系統を一致させた野生型コントロールよりもより進行性で重篤な疾病の形式を進展させたことを実証している(N=5、P<0.01)。逆に、ガラニン過剰発現マウスではその野生型コントロールと比べて著しく異なるような疾病の徴候を発達させていない(図4B;N=5、p<0.001)。繰り返しになるが、これらのデータは、中枢神経系におけるニューロン傷害の炎症性のモデルにガラニンが保護的な役割を果たすことを実証している。
【0072】
要約
障害の多くのインビボおよびインビトロのモデルにおいて、ガラニンが海馬への内因性の神経保護因子として作用することが実証された。さらに、外因性ガラニンと先に記載された高親和性のGALR−2特異的作動薬とは、いずれも細胞死を減少させる。従って、GALR2はこれらの保護効果を媒介する主要な受容体サブタイプである。これらのデータは、GALR2特異的作動薬が様々な形式の脳障害、脳損傷または脳疾病の治療または予防に治療の用途を有するであろうことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】インビボにおける海馬の細胞死に対する20mg/kgのカイニン酸の腹腔内投与の効果を示すグラフ。
【図2】インビトロにおける10nM−1μMのスタウロスポリン(St)とのインキュベート後のガラニンノックアウト、ガラニン過剰発現、および野生型海馬培養物の応答を示すグラフ。
【図3】インビトロにおけるガラニン野生型海馬培養物に対する、スタウロスポリンまたはグルタミン酸の、ガラニンまたはAR−M1896との同時投与の効果を示すグラフ。
【図4】インビボにおけるMSの実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルのノックアウト、過剰発現、および野生型動物の応答を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳障害、脳損傷または脳疾患の予防または治療用の薬物の調製におけるGALR2特異的作動薬の使用方法。
【請求項2】
脳障害または脳損傷が、塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中、または出血性脳卒中;脳または脊髄への直接的または間接的な外傷または外科手術;心肺バイパス手術または腎臓透析中の脳への虚血性損傷または塞栓性損傷;心筋梗塞に伴う再潅流脳損傷;脳疾患;免疫学的損傷;化学的損傷;または放射線損傷;のうちの1つによって引き起こされる、請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
免疫学的損傷が細菌またはウイルス感染の結果である、請求項2に記載の使用方法。
【請求項4】
化学的損傷が過剰なアルコール消費または癌治療のための化学療法薬剤の投与の結果である、請求項2に記載の使用方法。
【請求項5】
放射線損傷が放射線療法の結果である、請求項2に記載の使用方法。
【請求項6】
脳疾患がアルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症または変異型クロイツフェルト・ヤコブ病のうちの1つである、請求項1または2に記載の使用方法。
【請求項7】
GALR2特異的作動薬がガラニンのアミノ酸配列の一部分を含むポリペプチドである、請求項1−6のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項8】
GALR2特異的作動薬がAR−M1896である、請求項7に記載の使用方法。
【請求項9】
GALR2特異的作動薬が非ペプチドの小さな化学物質である、請求項1−6のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項10】
GALR2特異的作動薬が、0から100μMの間のGALR2に対する結合親和性を有すると共に、GALR1に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項1−9のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項11】
GALR2特異的作動薬が、0から100μMの間のGALR2に対する結合親和性を有すると共に、GALR1に比べてGALR2に対して50倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項1−10のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項12】
GALR2特異的作動薬が、0から100μMの間のGALR2に対する結合親和性を有すると共に、GALR1に比べてGALR2に対して100倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項1−11のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項13】
GALR2特異的作動薬が、GALR3に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項10−12のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項14】
GALR2特異的作動薬が、GALR3に比べてGALR2に対して50倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項10−12のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項15】
GALR2特異的作動薬が、GALR3に比べてGALR2に対して100倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項10−12のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項16】
GALR2特異的作動薬が、0から1μMの間のGALR2に対する結合親和性を有する、請求項10−15のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項17】
脳障害、脳損傷または脳疾患を予防または治療する方法であって、そのような予防または治療を必要とする個体に有効量のGALR2特異的作動薬を投与することを含む、方法。
【請求項18】
脳障害または脳損傷が、塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中、または出血性脳卒中;脳または脊髄への直接的または間接的な外傷または外科手術;心肺バイパス手術または腎臓透析中の脳への虚血性損傷または塞栓性損傷;心筋梗塞に伴う再潅流脳損傷;脳疾患;免疫学的損傷;化学的損傷;または放射線損傷;のうちの1つによって引き起こされる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
免疫学的損傷が細菌またはウイルス感染の結果である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
化学的損傷が過剰なアルコール消費または癌治療のための化学療法薬剤の投与の結果である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
放射線損傷が放射線療法の結果である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
脳疾患がアルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症または変異型クロイツフェルト・ヤコブ病のうちの1つである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項23】
GALR2特異的作動薬がガラニンのアミノ酸配列の一部分を含むポリペプチドである、請求項17−22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
GALR2特異的作動薬がAR−M1896である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
GALR2特異的作動薬が非ペプチドの小さな化学物質である、請求項17−22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
GALR2特異的作動薬が、0から100μMの間のGALR2に対する結合親和性を有すると共に、GALR1に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項17−25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
GALR2特異的作動薬が、0から100μMの間のGALR2に対する結合親和性を有すると共に、GALR1に比べてGALR2に対して50倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項17−26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
GALR2特異的作動薬が、0から100μMの間のGALR2に対する結合親和性を有すると共に、GALR1に比べてGALR2に対して100倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項17−27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
GALR2特異的作動薬が、GALR3に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項26−28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
GALR2特異的作動薬が、GALR3に比べてGALR2に対して50倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項26−29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
GALR2特異的作動薬が、GALR3に比べてGALR2に対して100倍よりも大
きい結合特異性を有する、請求項26−30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
GALR2特異的作動薬が、0から1μMの間のGALR2に対する結合親和性を有する、請求項26−31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
脳障害、脳損傷または脳疾患を予防または治療する化合物の候補を選択する方法であって、少なくとも1つの試験化合物はGALR2特異的作動薬であるか否かを決定し、少なくとも1つの試験化合物がGALR2特異的作動薬である場合に該少なくとも1つの試験化合物を候補化合物として選択することを含む、方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つの試験化合物が、0から100μMの間のGALR2に対する結合親和性と、GALR1に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい特異性で、GALR2に結合することが決定される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの試験化合物が、0から100μMの間のGALR2に対する結合親和性と、GALR1に比べてGALR2に対して50倍よりも大きい特異性で、GALR2に結合することが決定される、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの試験化合物が、0から100μMの間のGALR2に対する結合親和性と、GALR1に比べてGALR2に対して100倍よりも大きい特異性で、GALR2に結合することが決定される、請求項33、34、または35に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つの試験化合物が、GALR3に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい特異性で、GALR2に結合することが決定される、請求項34−36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つの試験化合物が、GALR3に比べてGALR2に対して50倍よりも大きい特異性で、GALR2に結合することが決定される、請求項34−37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つの試験化合物が、GALR3に比べてGALR2に対して100倍よりも大きい特異性で、GALR2に結合することが決定される、請求項34−38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つの試験化合物が、0から1μMの間のGALR2に対する結合親和性でGALR2に結合することが決定される、請求項34−39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
GALR2がヒトGALR2の少なくとも一部分を含む、請求項33−40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
GALR2が完全長のヒトGALR2である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
GALR2が非ヒトGALR2の少なくとも一の部分を含む、請求項33−40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
GALR2がラットGALR2またはマウスGALR2である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
GALR2が完全長GALR2である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
GALR2がキメラ受容体構築物である請求項33−40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
試験化合物の選択がハイスループットスクリーニング検定によりスクリーニングされる、請求項33−46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
脳障害、脳損傷または脳疾患の予防または治療に使用される医薬組成物であって、
a)有効量の少なくとも1つのGALR2特異的作動薬または医薬として許容されるその塩;および
b)医薬として適切なアジュバント、キャリアまたは賦形剤;
を含む組成物。
【請求項49】
脳障害または脳損傷が、塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中、または出血性脳卒中;脳または脊髄への直接的または間接的な外傷または外科手術;心肺バイパス手術または腎臓透析中の脳への虚血性損傷または塞栓性損傷;心筋梗塞に伴う再潅流脳損傷;脳疾患;免疫学的損傷;化学的損傷;または放射線損傷;のうちの1つによって引き起こされる、請求項48に記載の医薬組成物。
【請求項50】
免疫学的損傷が細菌またはウイルス感染の結果である、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
化学的損傷が過剰なアルコール消費または癌治療のための化学療法薬剤の投与の結果である、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項52】
放射線損傷が放射線療法の結果である、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項53】
脳疾患がアルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症または変異型クロイツフェルト・ヤコブ病のうちの1つである、請求項48または49に記載の医薬組成物。
【請求項54】
GALR2特異的作動薬がガラニンのアミノ酸配列の一部分を含むポリペプチドである、請求項48−53のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項55】
GALR2特異的作動薬がAR−M1896である、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
GALR2特異的作動薬が非ペプチドの小さな化学物質である、請求項48−53のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項57】
GALR2特異的作動薬が、0から100μMの間のGALR2に対する結合親和性を有すると共に、GALR1に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項48−56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
GALR2特異的作動薬が、0から100μMの間のGALR2に対する結合親和性を有すると共に、GALR1に比べてGALR2に対して50倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項48−57のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項59】
GALR2特異的作動薬が、0から100μMの間のGALR2に対する結合親和性を有すると共に、GALR1に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項48−58のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項60】
GALR2特異的作動薬が、GALR3に比べてGALR2に対して30倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項57−59のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項61】
GALR2特異的作動薬が、GALR3に比べてGALR2に対して50倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項57−60のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項62】
GALR2特異的作動薬が、GALR3に比べてGALR2に対して100倍よりも大きい結合特異性を有する、請求項57−61のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項63】
GALR2特異的作動薬が、0から1μMの間のGALR2に対する結合親和性を有する、請求項57−62のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記医薬として適切なアジュバント、キャリアまたは賦形剤が、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンを始めとする血清タンパク質、リン酸塩を始めとするバッファ物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸、水、塩類、または硫酸プロタミンを始めとする電解質の部分的グリセリド混合物、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂、から選択される、請求項48−63のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項65】
経口または非経口的に投与される、請求項48−64のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項66】
経口投与される、請求項65に記載の医薬組成物。
【請求項67】
カプセルまたは錠剤の形をしている、請求項66に記載の医薬組成物。
【請求項68】
ラクトースおよび/またはコーンスターチを含む、請求項67に記載の医薬組成物。
【請求項69】
潤滑剤をさらに含む、請求項68に記載の医薬組成物。
【請求項70】
潤滑剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項69に記載の医薬組成物。
【請求項71】
水性懸濁液または水溶液の形をしている、請求項66に記載の医薬組成物。
【請求項72】
乳化剤または懸濁剤のうちの少なくとも一つを含む、請求項71に記載の医薬組成物。
【請求項73】
甘味剤、着香料、または着色剤のうちの少なくとも一つを含む、請求項66−72のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項74】
注射により、無針装置により、吸入スプレーにより、局所に、直腸に、経鼻で、口腔に、膣内に、または埋設したリザーバを介して投与される、請求項65に記載の医薬組成物。
【請求項75】
注射によって投与される、請求項74に記載の医薬組成物。
【請求項76】
無菌の注射可能な製剤の形をしている、請求項75に記載の医薬組成物。
【請求項77】
無菌の注射可能な製剤が、水性または油性の懸濁液、もしくは非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶剤に溶かした懸濁液である、請求項76に記載の医薬組成物。
【請求項78】
無針装置によって投与される、請求項74に記載の医薬組成物。
【請求項79】
無針装置による投与に適した剤形である、請求項78に記載の医薬組成物。
【請求項80】
無針装置による投与に適した剤形が、水性または油性の懸濁液、もしくは非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶剤に溶かした懸濁液である、請求項79に記載の医薬組成物。
【請求項81】
前記水性懸濁液が、マンニトール、水、リンゲル液または等張食塩水に溶かして調製される、請求項77〜80のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項82】
前記油性懸濁液が、合成モノグリセリド、合成ジグリセリド、脂肪酸または天然の医薬として許容される油に溶かして調製される、請求項77〜80のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項83】
前記脂肪酸はオレイン酸またはオレイン酸グリセリド誘導体である、請求項82に記載の医薬組成物。
【請求項84】
前記天然の医薬として許容される油は、オリーブ油、ヒマシ油またはポリオキシエチル化オリーブ油、またはヒマシ油である、請求項82に記載の医薬組成物。
【請求項85】
前記油性懸濁液が、長鎖アルコールの希釈剤または分散剤を含む、請求項82、83または84に記載の医薬組成物。
【請求項86】
前記長鎖アルコールの希釈剤または分散剤がPh.Helvである、請求項85に記載の医薬組成物。
【請求項87】
直腸に投与される、請求項74に記載の医薬組成物。
【請求項88】
直腸投与用の坐薬の形をしている、請求項87に記載の医薬組成物。
【請求項89】
坐薬が室温で固体かつ直腸温で液体になる非刺激性の補形剤を含む、請求項88に記載の医薬組成物。
【請求項90】
非刺激性の補形剤が、カカオ脂、蜜ろうまたはポリエチレングリコールのうちの1つである、請求項89に記載の医薬組成物。
【請求項91】
局所に投与される、請求項74に記載の医薬組成物。
【請求項92】
ミネラルオイル、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、および水から選択されるキャリアを含む軟膏である、請求項91に記載の医薬組成物。
【請求項93】
ミネラルオイル、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルろう、ステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水から選択されたキャリアを含むローションまたはクリームである。請求項91に記載の医
薬組成物。
【請求項94】
経鼻で投与される、請求項74に記載の医薬組成物。
【請求項95】
鼻エアゾールおよび/または吸入により投与される請求項94に記載の医薬組成物。
【請求項96】
細胞死を抑制する方法であって、細胞死を抑制するのに有効な量のGALR2特異的作動薬と細胞を接触させることを含む、方法。
【請求項97】
前記細胞がニューロンである、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記細胞は中枢神経系由来のニューロンである、請求項96または97に記載の方法。
【請求項99】
前記細胞は海馬または皮質のニューロンである、請求項96、97または98に記載の方法。
【請求項100】
前記細胞がヒト細胞である、請求項96〜99のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−501632(P2008−501632A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552676(P2006−552676)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000188
【国際公開番号】WO2005/080427
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506276239)ニューロターゲッツ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】NEUROTARGETS LIMITED
【Fターム(参考)】