説明

ガレージを利用した地中熱利用システム

【課題】建物の敷地が不必要に占用されない地中熱利用システムの提供。
【解決手段】ガレージ2内の空気を通過させて地中と熱交換させるために建物1内のガレージ2の土間部2bの床面より下方の地中に設けられた地中経路6a、地中経路6a内へガレージ2内の空気を流入させるために設けられた流入口18a、および地中経路6aを通過したガレージ2内の空気が吹きすように設けられたガレージ2内の空気の流出口21aを有する地中熱利用装置を備えた地中熱利用システムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭い敷地の建物であっても、建物周囲のスペースを十分に確保するための地中熱利用システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中熱を利用するための地中熱交換装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この地中熱交換装置は、駐車場の敷地の地下部に埋設され、これにより地熱交換装置の上部地表面を略平坦にし、車の移動によりメンテナンス用の作業スペースを容易に確保することができるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4318516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば都市部周辺等の建物の立地条件を考慮すると、必ずしも特許文献1のように、駐車場の設置ができる程に建物周囲にスペースを確保できるとは限らない。
【0006】
そのため、例えば敷地が狭いために駐車場が周囲にない場合には、改めて地中熱交換装置を設けるスペースを建物周囲に確保しなければならず、建物周囲のスペースが不必要に占用されてしまうことにも繋がる。
【0007】
そこで、本発明は、建物の敷地が不必要に占用されない地中熱利用システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係る地中熱利用システムは、熱搬送流体を通過させて地中と熱交換させるために建物のガレージの土間部の床面より下方の地中に設けた地中経路、該地中経路内へ前記熱搬送流体を流入させるために前記ガレージ内に設けた流入口、および前記地中経路を通過した熱搬送流体が吹きすように設けられた流出口を有する地中熱利用装置を備えたことを特徴とする。
【0009】
さらに、前記建物の室内に設置された室内機、前記ガレージの内部又は前記建物の周囲に設置された室外機、および前記室内機と室外機を循環する冷媒を有するヒートポンプシステムを備えるとともに、前記流出口から吹き出す熱搬送流体が前記室外機の熱交換部を通過している冷媒と熱交換するように前記流出口が設けられていてもよい。
【0010】
また、前記ヒートポンプの室外機と前記流出口とが前記ガレージの内部に設けられていてもよい。
【0011】
さらに、前記地中経路を前記ガレージの土間部又はこの土間部直下の地盤部を主として通過するように設けてもよい。
【0012】
また、前記ガレージの土間部に前記地中熱利用装置のメンテナンス用の開口部を設けてもよい。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された本発明に係る地中熱利用システムによれば、地中熱と熱交換するための地中熱利用装置が建物のガレージに設けられるので、建物周囲に地中熱利用装置や空調装置の室外機を設置するためのスペースを改めて確保する必要がなく、敷地の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る実施の形態の地中熱利用システムを設けた建物を模式的に示した説明図である。
【図2】図1の建物のガレージを拡大表示した斜視図である。
【図3】図1のガレージの土間部に設けた採熱管を拡大表示した斜視図である。
【図4】図1のガレージ内に設けた室外機を示し、その外気取込口と地中経路の流出口との接続部分を模式的に示した斜視図である。
【図5】本発明に係る実施例の地中熱利用システムを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態の地中熱利用システムについて図1〜図4を参照して説明する。
【0016】
地中熱利用システムは、ガレージ2を有する建物1に設けたヒートポンプとしての空調装置3と、地中との熱交換した後に空調装置3の冷媒と熱交換して地中熱を利用するための地中熱利用装置6とを有している。
<建物>
この建物1は、鉄筋コンクリート製の底版1bと、その外縁に立設される側壁1aとによって形成された基礎部の上に構築されている。さらに、図1に示すように、底版1bの一部分(ガレージの土間部)と建物1の壁とによりガレージ2が形成されている(図1及び図2参照)。
【0017】
ガレージ2の出入口にはガレージシャッタ2aが設けられており、ガレージシャッタ2aが閉じた状態ではガレージ2の内と外との換気は殆どなされることはない。
【0018】
また、ガレージ2の土間部2bは、コンクリート、各種骨材等を用いて形成され、土間部2bは地盤部Gより熱伝導性の高いものを用いることができる。
<地中熱利用装置>
地中熱利用装置6は、建物1のガレージ2に設けられ、ガレージ2の土間部2bに形成された地中経路6aと、ガレージ2内の空気を地中経路6aに流入させるための流入部8と、地中経路6aを通過して地中熱と熱交換した空気をガレージ2内の室外機7に向けて流出させる流出部9とを有している。
【0019】
ここで、ガレージ2内の空気は、地中経路6aを通過して地中の土間部2b内と熱交換されるので熱搬送流体として機能する。
<地中経路>
地中経路6aは、図2に示すように、ガレージ2の土間部2bに埋設された略環状の環状管10と、この環状管10に設けられた複数の接続部材11と、接続部材11から分岐して下方に延びる複数のU字状の採熱管12等とを有している。なお、図1において、接続部材11の図示については、理解の便宜のために省略している。
【0020】
環状管10は両端の開口6b,6cが後述の流入部8の起立管18と流出部9の起立管21とにそれぞれ連通接続されている。
【0021】
環状管10や採熱管12は、その管自体の内外で熱交換可能なものであり、鋼管、塩化ビニル管などの管材によって構築されている。このうち、採熱管12は、図3に示すように熱交換用埋設管に覆われていて、この熱交換用埋設管を介してガレージ2の土間部2bの内部と熱交換可能となっている。
【0022】
また、図2に示すように、ガレージ2の土間部2bには、環状管10、採熱管12等の設置や、それら部材のメンテナンスをするための開口13が形成されている。
【0023】
そして、土間部2bの開口13の底部14には採熱管12用の挿脱穴15が所定の間隔で形成され(図1参照)、上記採熱管12が挿脱可能となっている。採熱管12を設置した状態で、採熱管12の内部を通過するガレージ2の空気が、地中のガレージ2の土間部2b内と熱交換される。
【0024】
そして、開口13に露出する各採熱管12の上部を巡回するように環状管10が設けられており、上記接続部材11により、この環状管10と採熱管12とが連通接続されている。この環状管10と採熱管12は互いに着脱可能となっており、メンテナンス用に分解可能となっている。
【0025】
なお、採熱管12が設置された状態で、図3に示す符号H1は、ガレージの開口13内に露出している高さ位置を示し、符号H2は、土間部2bに埋設されている高さ位置を示す。そして、符号H3は、土間部2bより下方の地盤部G1に相当する位置である。
【0026】
また、図1に示すように土間部2bの開口13には、車Mの重量に耐えうるように蓋体16が開閉可能に設けられており、蓋体16が閉じられた状態で形成されるガレージ2の開口13内の空間を埋めるように任意に断熱材等が敷き詰められている。
【0027】
土間部2bの開口13と蓋体16とにより地中熱利用装置6のメンテナンス用の開口部17をなしている。
<流入部>
図1および図2に示すように、地中熱利用装置6の流入部8は、ガレージ2の土間部2bの床面から起立した起立管18と、起立管18の先端部に設けられ流入口18aと、流入口18aに設けられた吸込ファン19と、吸込ファン19より上流の流入口18aに設けられた防塵フィルタ(図示省略)等とを有している。
【0028】
この流入口18aは、ガレージ2内の高さ位置で略中央に設けられている。なお、この吸込ファン19の回転が停止している状態で吸込ファン19の上流側と下流側とは連通した状態となっている。
【0029】
吸込ファン19は、室内5に設けられた室内機4の操作用のリモコン4aと電気的に接続され(図示省略)、後述するように、空調装置3と連動した制御ができるようになっている。
【0030】
また、防塵フィルタは、吸込時にガレージ2内の塵や埃の起立管18への侵入を防止するためのもので着脱可能に設けられている(図示省略)。
<流出部>
図2および図4に示すように、地中熱利用装置6の流出部9は、環状管10の下流側の開口端6cに連通接続されてガレージ2の床面から起立した起立管21と、この起立管21の下流側の開口端の流出口21aから流出する空気をガレージ2内にある室外機7の外気取込口7aへ案内するカバー部22等とを有している。
【0031】
カバー部22は、起立管21の流出口21aと室外機7の外気取込口7aとの間を覆っている。そして、このカバー部22は、図2および図4に示すように、一方の端部が起立管21の流出口21aと略同じ大きさの断面形に形成されており、そこから徐々に広がって他方の端部は室外機7の外気取込口7aと略同じ大きさの断面形に形成されている。
【0032】
そして、空調装置3の室外機7のファンや流入部8の吸込ファン19の回転により地中で熱交換され起立管21の流出口21aから吹き出た空気が、カバー部22の内空を通って室外機7の外気取込口7aに供給されるようになっている。
<空調装置>
図1に示すように、空調装置3は、建物1の室内5に設置された室内機4と、建物1のガレージ2内に設置された室外機7と、この室内機4と室外機7を循環する冷媒の経路23(一部図示省略)とを有する(図2および図4参照)。
【0033】
図2や図4に示すように、冷媒の経路23は、冷媒管24,25により主として構成され、この冷媒管24,25内を上記冷媒が搬送される。
【0034】
この冷媒の経路23は、建物1の壁等を介して室内5とガレージ2とに配管されており、これより室内5の室内機4とガレージ2の室外機7とが接続されている。
【0035】
したがって、本実施の形態で説明する空調装置3は、一般的なヒートポンプ式のエアコンと同等の構成であり、上述したように、この空調装置3により室内5の冷房や暖房が行われる。
【0036】
具体的には、空調装置3の室内機4により、上記冷媒管24,25を移送される冷媒と室内5の空気とが熱交換される。熱交換された冷媒は、室外機7によりガレージ2内の空気又は土間部2bと熱交換された空気(以下、温調空気と略す。)と熱交換される。
【0037】
空調装置3の冷房時と暖房時について、図4を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0038】
冷房時では、冷媒管25を通って圧縮機26に流れ込んだ気体状の冷媒は、圧縮機26内で圧縮されて高圧・高温状態になる。
【0039】
そして、その状態で室外機7の熱交換部27に流れ込み、室外機7の外気取込口7aから取り込まれたガレージ2内の空気又は温調空気と熱交換される。
【0040】
このとき、冷媒は温度が下がって液状になり、熱交換部27を通過したガレージ2内の空気又は温調空気の温度は上昇して排気口28から排出される。
【0041】
なお、室外機7の排気口28にはグリル28aが取り付けられているが、図2では理解の便宜のために取り外した状態で示されている。
【0042】
続いて、液状になった冷媒は膨張弁29に搬送され、圧力を一気に下げられて低圧・低温状態になって液状のまま冷媒管24を通って室内5の室内機4の熱交換機に搬送される。
【0043】
一方、図1に示すように、建物1内の室内機4は、その吸気口から室内5の空気を取り込んで、室内機4の熱交換機に搬送された冷媒と熱交換した後、送風口から室内5へ排出する。
【0044】
つまり、空調装置3の冷媒が室内機4内で室内5の空気の熱を奪って蒸発し、熱を奪われた空気が冷風として吹き出る。これにより、地中熱が室内5の空調に利用されたこととなる。
【0045】
一方、暖房時では、冷房時とは逆向きに冷媒が循環することになる。すなわち、室内機4の熱交換機には高圧・高温の気体状の冷媒が搬送され、室内機4は、室内5の空気をその吸気口から取り込み温風に変えてその送風口から吹き出す。
【0046】
そして、室内機4の熱交換機において熱を奪われて液状になった冷媒は、図4に示す冷媒管24を通ってガレージ2の室外機7の膨張弁29に搬送される。この膨張弁29で圧力を一気に下げられて低圧・低温状態になった冷媒は、液状のまま室外機7の熱交換部27に搬送される。
【0047】
続いて、熱交換部27に搬送された冷媒は、室外機7の外気取込口7aから取り込まれたガレージ2内の空気又は温調空気と熱交換を行なう。この結果、冷媒は気体になって温度が上昇し、室外機7の熱交換部27を通過したガレージ2内の空気又は温調空気の温度は下降してその排気口28から排出される。
【0048】
さらに、室外機7の熱交換部27から圧縮機26に流れ込んだ気体状の冷媒は、圧縮機26内で圧縮されて高圧・高温状態になって冷媒管25を通って空調装置3の室内機4に搬送される。これにより、地中熱が室内5の空調に利用されたこととなる。
【0049】
なお、室内5には空調装置3の操作用のリモコン4aが設けられており、このリモコン4aにより地中熱利用装置6の各種制御に関する設定ができるようになっている。
【0050】
この設定では、地中熱の空調装置3を駆動させるとともに地中熱利用装置6を駆動するような連動設定や、地中熱利用装置6の流入部8の吸込ファン19の回転量の制御等の設定が可能となっている。
<地中熱利用システムの作用>
次に、本実施の形態の建物1の地中熱利用システムの作用について説明する。
【0051】
[熱交換作用]
室内機4のリモコン4aを操作して空調装置3の電源を入れて空調装置3を稼働させるとともに、上記連動設定されている場合には、地中熱利用装置6の流入口18aの吸込ファン19がこれに連動して稼働する。
【0052】
室外機7のファンや流入部8の吸込ファン19の回転により、ガレージ2の土間部2bに設けた地中経路6a内が負圧となってガレージ2内の空気が流入口18aから吸い込まれて地中経路6a内を移送される。さらに、この空気はU字状の採熱管12の中を移送される。この移送の最中に吸い込まれた空気がガレージ2の土間部2bと熱交換する。
【0053】
夏季のように、吸い込まれたガレージ2内の空気の温度が土間部2bの温度より高ければ、この移送中に空気の熱が土間部2bに移動して空気の温度が低下し、ガレージ2内の空気より低い温度の空気が流出部9から吹き出される。
【0054】
逆に、冬季のように、吸い込まれたガレージ2内の空気の温度が土間部2bの温度より低ければ、地中経路6aの移送中に土間部2bの熱が空気に移動して温度が上昇し、ガレージ2内の空気より高い温度の空気が流出部9から吹き出される。
【0055】
そして、この吹き出した空気は、既に説明したようにガレージ2内の室外機7の熱交換部27を通過している冷媒と熱交換される。この結果、地中熱が空調装置3に利用され、建物1外の外気(ガレージシャッタ開成時)やガレージ2内の空気と熱交換するよりも効率良く熱交換されることとなる。
【0056】
ところで、ガレージ2の土間部2bの温度は、建物1からの漏出熱により建物1の周囲の地盤部Gの温度と比較して夏は低く、冬は高い。そして、この土間部2bに熱利用装置6が設けられていることから、建物1の周囲に設ける場合よりもさらに効率良く熱交換されることとなる。
[空調装置の運転効率化作用]
ガレージ2内は、建物1外の屋外環境の影響を受けにくく、このガレージ2内に空調装置3の室外機7が設けられているので、夏季の日射やその照り返しがあたらず、空調装置3の冷房運転時の運転効率の低下を防ぐことができる。
【0057】
同様に、地中熱利用装置6の採熱管12が、この土間部2b内に設けられており、ガレージ2の床面には夏季の日射が直接当たらない、又は当たっても一部であるので、夏季の日射によるガレージ2の土間部2bの温度上昇を抑止される。そのため、建物1の周囲に設ける場合よりも日射の影響を受けにくく、熱交換効率が高いものとなり、空調装置3の運転効率の向上に繋がる。
【0058】
また、空調装置3の冷房運転時には、建物1の室内5から空調装置3の冷熱がガレージ2や建物1の直下に漏出することから、ガレージ2内の空気やガレージ2の土間部2bに設けた地中経路6aの採熱管12等により、上記冷熱が回収される。
【0059】
そして、回収された冷熱が地中熱利用装置6により最終的にガレージ2内の室外機7の熱交換部27に集められて室外機7の冷媒と熱交換させられるので、漏出した冷熱の回収・再利用をすることができる。そのため、空調装置3をより効率良く運転することができる。
【0060】
一方、冬季の場合について、室外機7がガレージ2内に設けられているので、建物1外に設置する場合のような放射冷却が発生せず、放射冷却によって空調装置3の暖房運転時の運転効率が低下することがない。
【0061】
冬の日の高さは夏より低く、地中熱利用装置6の採熱管12が設けられた土間部2bに冬の日射が当たりやすいので温度上昇しやすいものとなる。
【0062】
また、空調装置3の暖房運転時には建物1の室内5から空調装置3の温熱がガレージ2や建物1の直下に漏出することから、ガレージ2内の空気やガレージ2の土間部2bに設けた地中経路6aでこの温熱が回収される。
【0063】
そして、回収された温熱が地中熱利用装置6により最終的にガレージ2内の室外機7の熱交換部27に集められて室外機7の冷媒と熱交換させられるので、漏出した温熱の回収・再利用をすることができる。そのため、空調装置3をより効率良く運転することができる。
【0064】
また、ガレージ2内に駐車した直後には、例えば車Mのエンジンや電動モータの余熱によりガレージ2内の空気や土間部2bが加温されることとなるが、ガレージ2に設けた地中熱利用装置6により、このような余熱をも回収することができる。
[メンテナンス性向上作用]
地中熱利用装置6と空調装置3の室外機7がガレージ2に設けられるので、それらをメンテナンスする際に、ガレージ2の土間部2bをメンテナンス用の作業スペースとして用いることができる。
【0065】
ガレージ2内でのメンテナンス作業となるので建物1の屋外の天候条件(降雨や降雪など)に拘わらずメンテナンスすることができる。また、地中熱利用装置6や空調装置3の室外機7がガレージ2に設けられているので、風雨にさらされず、汚れが付着しにくいものとなる。
【0066】
また、ガレージ2内に臨むようにガレージ2の土間部2bに地中熱利用装置6のメンテナンス用の開口13が設けられ、蓋体16により開閉可能となっているので、蓋体16を取り外すことで、土間部2b内の採熱管12等を簡単に取り出すことでき、メンテナンスもしやすい。
<地中熱利用システムの効果>
以下、本発明に係る実施の形態の地中熱利用システムの効果を説明する。
【0067】
この地中熱利用システムは、ガレージ2を有する建物1の室内5に設置された室内機4、建物1のガレージ2内に設置された室外機7、および室内機4と室外機7を循環する冷媒を有する空調装置3と、ガレージ2内の空気を通過させてガレージ2の土間部2bと熱交換させるためにガレージ2の土間部2bの床面より下方の地中に設けた地中経路6a、地中経路6a内へガレージ2内の空気を流入させるためにガレージ2内に設けた流入口18a、および地中経路6aを通過したガレージ2内の空気と室外機7の熱交換部27を通過している冷媒とが熱交換するように設けられたガレージ2内の空気の流出口21aを有する地中熱利用装置6と、を有したものであることから、空調装置3とガレージ2を有する建物1に対して、上記各作用を奏する地中熱利用システムを設置して提供することができる。
【0068】
建物1の周囲に地中熱利用装置6や空調装置3の室外機7を設ける必要がなくなり、建物1の敷地が不必要に占有されず有効利用することができる。
【実施例】
【0069】
図5は、実施例に係る建物1の別の地中熱利用システムを示す図である。
【0070】
実施例の地中熱利用システムは、実施の形態では土間部2bに設けられていた地中熱利用装置6の採熱管12をガレージ2の土間部2bより下方へ延長して主として地盤部G1と熱交換するように設けた点で異なり、その他の構成は実施の形態の地中熱利用システムと同様の構成である。
【0071】
すなわち、実施例の地中熱利用システムは、実施の形態で既に説明した、空調装置3と、ガレージ2の土間部2bの下方の地盤部G1に主として設けられた地中経路6ab、ガレージ2内の空気を地中経路6abへ流入させるための流入部8、および地中経路6abから空気を流出させるための流出部9を有した地中熱利用装置6Aを有している。なお、図5においても、接続部材11の図示については、理解の便宜のために省略している。
【0072】
この実施例の地中熱利用システムによれば、実施の形態の地中熱利用システムの作用や効果に加えて、ガレージ2の土間部2bがいわゆる断熱材と同様の機能を果たすので、土間部2bの直下の地盤部G1に特に蓄積されやすい冷熱や温熱を、採熱管12Aにより効率良く回収して、地中熱利用装置6Aの熱交換効率が向上する。この結果、空調装置3の運転効率も高まることとなる。
【0073】
以上、本発明に係る地中熱利用システムを実施の形態及び実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施の形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0074】
空調装置3の室外機7とガレージ2内の空気の流出口21aについて、実施の形態や実施例ではガレージ2内に設けているが建物1やその周囲に設けてもよい。
【0075】
ここで、実施の形態や実施例では、ガレージ2の下方の地中(土間部2bや地盤部G1)に地中経路6a,6abを設け、これにより地中と熱交換したガレージ2内の空気をガレージ2内に設置した室外機7の外気取込口7aに吹き出すようにしているが、この構成に限定するものではなく、室外機7の熱交換部27を通過している冷媒と熱交換できる構成であればよい。
【0076】
例えば、熱搬送流体として空気の代わりに液状の冷媒、気体の冷媒等を用い、ガレージ2内の流入口18aと流出口21aとを接続して循環させるようにしてもよい。
【0077】
この場合、ガレージ2内の空気と熱交換するための熱交換器や送出ポンプ等が別途設ける必要がある。
【0078】
特に液状の冷媒とする場合には、冷媒が気体ではないので直接的に室外機7の外気取込口7aに吹き出す構成とすることはできない。
【0079】
そこで、例えば室外機7の熱交換部27と地中経路6a,6abを通過した液状の冷媒とを熱交換させるための熱交換機を設けることにより、地中熱を利用した熱交換をさせるようにしてもよい。このような構成とすれば、熱交換効率がさらに向上することとなる。
【0080】
また、ガレージ2の床面から起立した流入部8の起立管18の長さを変更できるように起立管18に伸縮部を設けてガレージ2内における流入口18aの高さ位置を調節できるようにしてもよい。
【0081】
このようにすることで、ガレージシャッタ2aを閉めた状態で、例えば、冬季にはガレージ2の天井に近い箇所のより暖かい空気を吸い込んで地中と熱交換することで、極力暖かい空気を空調装置3の室外機7に提供して空調装置3のより高効率の暖房運転を行うことができる。
【0082】
逆に、夏季においては、ガレージシャッタを閉めた状態で、例えば、吸い込み口の高さ位置をよりガレージ2の床面に近い位置に設置することで、極力冷えた空気を空調装置3の室外機7に提供して空調装置3のより高効率の冷房運転を行うことができる。
【0083】
別の構成として、地中経路6aを設けた土間部2bを地盤部G1より熱伝導性の高い別の素材により構成すれば、建物1から漏出する冷熱や温熱を効率よく土間部2bに導いて地中経路6aから回収することもできる。
【符号の説明】
【0084】
1・・・建物
2・・・ガレージ
2b・・・土間部
2a・・・ガレージシャッタ
3・・・空調装置(ヒートポンプ)
4・・・室内機
4a・・・リモコン
5・・・室内
6,6A・・・地中熱利用装置
6a,6ab・・・地中経路
7・・・室外機
7a・・・外気取込口
8・・・流入部
9・・・流出部
10・・・環状管
11・・・接続部材
12,12A・・・採熱管
15・・・挿脱穴
16・・・蓋体
18・・・起立管
18a・・・流入口
19・・・吸込ファン
21・・・起立管
21a・・・流出口
22・・・カバー部
24,25・・・冷媒管
26・・・圧縮機
27・・・熱交換部
28・・・排気口
29・・・膨張弁
G1・・・地盤部
M・・・車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱搬送流体を通過させて地中と熱交換させるために建物のガレージの土間部の床面より下方の地中に設けた地中経路、該地中経路内へ前記熱搬送流体を流入させるために前記ガレージ内に設けた流入口、および前記地中経路を通過した熱搬送流体が吹き出すように設けられた流出口を有する地中熱利用装置を備えたことを特徴とする地中熱利用システム。
【請求項2】
前記建物の室内に設置された室内機、前記ガレージの内部又は前記建物の周囲に設置された室外機、および前記室内機と室外機を循環する冷媒を有するヒートポンプシステムを備えるとともに、前記流出口から吹き出す熱搬送流体が前記室外機の熱交換部を通過している冷媒と熱交換するように前記流出口が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の地中熱利用システム。
【請求項3】
前記ヒートポンプの室外機と前記流出口とが前記ガレージの内部に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地中熱利用システム。
【請求項4】
前記地中経路を前記ガレージの土間部を主として通過するように設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の地中熱利用システム。
【請求項5】
前記地中経路を前記ガレージの土間部直下の地盤部を主として通過するように設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の地中熱利用システム。
【請求項6】
前記ガレージの土間部に前記地中熱利用装置のメンテナンス用の開口部を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の地中熱利用システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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