説明

ガンマセクレターゼの阻害剤の基質特異性を同定するための組成物および方法

本発明はガンマセクレターゼ阻害剤の基質特異性を決定するための、およびガンマセクレターゼの基質特異的(および基質アイソフォーム特異的)な阻害剤を同定するためのアッセイおよび方法を提供する。本発明は、化合物が部位特異的または基質特異的にガンマセクレターゼを阻害するか否かを決定するためのアッセイおよび方法を提供する。本発明は、修飾されたガンマセクレターゼ基質を含んでなる単離されたポリペプチド配列およびそのポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列を提供する。さらに、本発明はガンマセクレターゼを阻害する化合物、そのような化合物を含有する医薬組成物、およびそのような化合物を用いたアルツハイマー病の治療方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルツハイマー病の治療に関する。より具体的には、本発明は、ガンマ(γ)セクレターゼによるAPP様基質の開裂を、他のガンマセクレターゼの基質と比較して優先的に阻害する化合物を同定するための分析、試薬および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳のβアミロイド蓄積は、アルツハイマー病の主な病理学的特徴である。A−β(Aβ)型アミロイド前駆体タンパク質(APP)の生成は、2つのプロテアーゼ、即ちベータ−(β−)およびガンマ−(γ−)セクレターゼ、による一連の開裂を要する複合的プロセスである(Selkoe, D. J., Physiol. Rev. (2001) 81:741-766)。β−セクレターゼは、内腔部分でAPPを開裂して、99アミノ酸からなるカルボキシル末端(C−末端)フラグメント(C99/β−CTF)を生じる膜結合型アスパラチルプロテアーゼである。β−CTF/C99は続いて膜貫通ドメイン(TMD)内の2つの主要な部位(γおよびε)でガンマセクレターゼにより開裂され、AβおよびAPP細胞内ドメイン(AICD)として知られる細胞内フラグメントを生じる(Sinha, S., et al., Nature (1999) 402:537-540; Vassar, R., et al., Science (1999) 286:735-741; Yan, R., et al., Nature (1999) 402:533-537; Lin, X., et al., Proc Natl Acad Sci U S A., (2000) 97:1456-1460)。これら、γおよびε開裂は、それぞれ、膜貫通ドメイン(TMD)の真ん中付近、および細胞質面の付近で起きる。いくつかの実験的証拠により、ガンマセクレターゼ基質(特にAPPおよびNotch)のガンマセクレターゼ開裂が、ガンマでの開裂に先だってイプシロンでの開裂により順次に起きることが示されている。さらに、イプシロン部位の開裂が、ガンマ開裂と独立しているが、ガンマ部位の開裂は、先行するイプシロン開裂の後で起き、それに依存していることが確認されている(Zhao, G., et al., J. Biol. Chem., (2004); 279:50647-50; Qi-Takahara, Y., et al., J. Neurosci., (2005); 25:436-45)。あるいは、APPのαセクレターゼ依存的プロセシングにより、同様の開裂を受け得る短いα−CTF/C83フラグメントを生じる(Selkoe, D. J., Physiol. Rev. (2001) 81:741-766)。ガンマセクレターゼはまた、Notch、CD44および数多くの他のI型膜貫通タンパク質を開裂することが知られている(De Strooper B., Neuron (2003) 38:9-12)。膜貫通ドメイン内の開裂部位付近のガンマセクレターゼ依存開裂に必要とされるアミノ酸配列は、特定の配列の認識よりも基質の細胞外ドメインのサイズに依存しており、比較的寛大であるようである(Struhl, G., and Adachi, A., Molecular Cell (2000) 6:625-636)。NotchプロセシングはAPPのそれと類似しており、それぞれTMDの中央付近および細胞質側の単分子層(cytoplasmic leaflet)付近に位置する2つのホモローガスなガンマセクレターゼ開裂部位S4およびS3を有している(Hartmann, D., et al., J. Mol. Neurosci. (2001) 17:171-181; Okochi, M., et al., EMBO J. (2002) 21:5408-5416)。NotchβおよびNotch細胞内ドメイン(NICD)は2つの開裂産物であり、後者は重要な転写活性化因子である(Mumm, J. S., and Kopan, R., Dev. Biol. (2000) 228:151-165)。Notchシグナル伝達および関連するプロセスにおける重要なエレメントには、4つのNotch膜貫通レセプターアイソフォーム(Notch1−4)、2つのNotch膜貫通リガンド(DeltaおよびJagged)およびガンマセクレターゼがある。ガンマセクレターゼの他の多くの基質は、APPのγおよびε開裂部位やNotchのS4およびS3開裂部位に類似して、2以上の膜内(即ちTMD内)開裂部位を有することが知られている。
【0003】
ガンマセクレターゼは、少なくとも4つの異なる膜タンパク質(プレセニリン(PS)、ニカストリン、Aph-1およびPen-2)からなるマルチサブユニットのアスパラチルプロテアーゼである(De Strooper B., Neuron (2003) 38:9-12)。PSは、ホロ酵素の触媒サブユニットと考えられ、基質の開裂に必須の2つの保存された膜内アスパラギン酸残基を含む(Wolfe, M.S., et al., Nature (1999) 398:513-517; Kimberly, W.T., et al., J. Biol. Chem. (2000) 275:3173-3178)。ガンマセクレターゼが認識しその基質を開裂する詳細なメカニズムは、1つには、これらのタンパク質分解イベントが脂質二重層の膜の疎水的環境内で起こるということもあって、未だ分かっていない。
【0004】
同一の(または非常に類似した)ガンマセクレターゼ酵素活性はAPP、Notchおよび他の基質のプロセシングに関与していると考えられる。ガンマセクレターゼは、その膜貫通ドメイン内の数多くのI型の1つの膜にまたがるタンパク質基質を開裂し、時として調節された膜内タンパク質開裂(RIP)と称される。多くのガンマセクレターゼ基質が、様々な生理学的プロセスや疾患プロセスに関与している。多くの場合、これらの基質の核でのシグナル伝達活性は、ガンマセクレターゼプロセシング、次いで、核転座、続いて遊離した細胞内ドメイン(ICD)による遺伝子活性化に依存する。Notchプロセシングの阻害(S3/イプシロン部位)は、非選択的ガンマセクレターゼ基質阻害剤の主要な望ましくない効果である。このように、いずれか特定のガンマセクレターゼ基質についてのガンマセクレターゼ活性の阻害に関して選択性(Notchと比較してAPP)を有するガンマセクレターゼ阻害剤の同定および開発は、効果的且つ十分な耐性を有するガンマセクレターゼ阻害剤の開発の成功のための重要な目標である。
【0005】
任意の与えられたガンマセクレターゼ基質に対するガンマセクレターゼ活性を減少させる(例えば他のガンマセクレターゼ基質に有意に影響を及ぼすことなしにAβ産生が減少する等)1つの可能性のある方法は、ガンマセクレターゼ活性を、他の基質(例えばAPPおよぶNotch)のイプシロン開裂部位と比較してガンマ開裂部位にて優先的に阻害するガンマセクレターゼの阻害剤を同定することである。任意の与えられたガンマセクレターゼ基質に対するガンマセクレターゼ活性を減少させる(例えば他のガンマセクレターゼ基質に有意に影響を及ぼすことなしにAβ産生が減少する等)別の可能性のある方法は、その基質に対する特異的な(例えばNotchよりもAPPに対して特異的な)阻害剤であるガンマセクレターゼの阻害剤を同定することである。そのような阻害剤の同定は、基質分子のガンマセクレターゼプロセシングに関連する様々な状態(例えば癌またはAD)の治療において使用するための更なる治療候補を提供するであろうし、それら阻害剤が示す有害な副作用はより少ないであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、本明細書において、基質特異的にガンマセクレターゼを阻害する化合物を同定するための組成物および方法、並びにAPPのイプシロン開裂部位での開裂と比較して、および他のガンマセクレターゼ基質の開裂と比較して、APPのガンマセクレターゼ開裂部位で優先的に開裂を阻害する化合物を同定するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本発明は、化合物が基質特異的にガンマセクレターゼを阻害するか否かを決定するための方法に関する。本方法は、
(a)ガンマ開裂部位を含んでなる第1のガンマセクレターゼ基質と、該化合物およびガンマセクレターゼとを、ガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(b)別途、ガンマ開裂部位を含んでなる第2のガンマセクレターゼ基質と、該化合物およびガンマセクレターゼとを、ガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(c)第1の基質および第2の基質のガンマ開裂部位でのガンマセクレターゼ活性の量を測定すること;
(d)工程(a)でのガンマ開裂部位でのガンマセクレターゼ活性の量と、工程(b)でのガンマ開裂部位でのガンマセクレターゼ活性の量とを比較し、工程(a)でのガンマ開裂部位でのガンマセクレターゼ活性の量が、工程(b)での量と相違する場合、その化合物がガンマセクレターゼを基質特異的に阻害していると決定すること
を含む。
【0008】
本発明の様々な態様において、第1のガンマセクレターゼ基質は天然に存在する基質である(例えば、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、Notch、アミロイド前駆体様タンパク質(APLP2)、チロシナーゼ、CD44、erbB4、n−カドヘリン、p75NTFRおよびSCNB2等)。
【0009】
本発明の方法はまた、第1の膜近傍のドメイン配列[JMD1]と膜貫通ドメイン配列[TMD1]とを有する第1のポリペプチドである第1のガンマセクレターゼ基質、および第2の膜近傍のドメイン配列[JMD2]と第1のガンマセクレターゼ基質の膜貫通ドメイン配列[TMD1]とを有する第2のポリペプチドである第1のガンマセクレターゼ基質を含む。例えば、[TMD1]は、APPの膜貫通ドメインであり、[JMD1]および[JMD2]は、APLP2、Notch,erbB4、チロシナーゼ、p75NTFR、SCNB2、n−カドヘリンおよびCD44から独立に選択される(ここで[JMD1]および[JMD2]は同一でない)。
【0010】
本発明の方法はさらに、式:
[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD](式II)
[式中、
JMDΔC4は、ガンマセクレターゼ基質の膜近傍ドメイン(JMD)配列のアミノ酸配列を含み、ここでJMDは4つのC末端ペプチドを欠いており;
[TMD]は、ガンマセクレターゼ基質の膜貫通ドメイン配列を含んでなり;
X1、X2、X3およびX4は、独立して任意のアミノ酸から選択される]
を含む第2のガンマセクレターゼ基質を含む。
【0011】
具体的な態様では、X1はS、T、G、P、Q、R、V、L、N、P、A、K、E、I、F、H、WおよびDから選択され;X2は任意のアミノ酸であり;X3はS、N、D、P、E、R、T、F、I、K、L、V、G、W、HおよびAから選択され;X4は任意のアミノ酸である。
【0012】
具体的な態様では、X1はS、T、G、P、Q、R、V、L、N、P、A、K、E、I、F、H、WおよびDから選択され;X3はS、N、D、P、E、R、T、F、I、K、L、V、G、W、HおよびAから選択され;X2およびX4はL、I、H、E、V、A、S、T、D、N、P、K、QおよびRから選択される。
【0013】
具体的な態様では、X1はS、T、G、P、Q、RおよびDから選択され;X2は任意のアミノ酸であり;X3はS、N、D、PおよびAから選択され;X4は任意のアミノ酸である。
【0014】
具体的な態様では、(JMD)は、APLP2、Notch,erbB4、チロシナーゼ、p75NTFR、SCNB2、n−カドヘリンおよびCD44のうち1つのガンマセクレターゼ基質の膜近傍ドメインを有し、TMDはAPLP2、Notch,erbB4、チロシナーゼ、p75NTFR、SCNB2、n−カドヘリンおよびCD44のうち1つの膜貫通ドメインを有する。
【0015】
本発明の更なる態様は、化合物が、第2のガンマセクレターゼ基質と比較して第1のガンマセクレターゼ基質において、ガンマセクレターゼ活性を選択的に阻害するか否かを決定するための方法を包含する。本方法は、
(a)第1のトランスフェクションされたセルカルチャーと種々の濃度の該化合物とをガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(b)第2のトランスフェクションセルカルチャーと種々の濃度の該化合物とをガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(c)第1および第2の種々の化合物濃度でトランスフェクションされたセルカルチャーのそれぞれによって産生したICDを測定し、第1のトランスフェクションされたセルカルチャーに対する化合物の効果の第1の用量応答曲線と、第2のトランスフェクションされたセルカルチャーに対する化合物の効果の第2の用量応答曲線とを作成すること;および
(d)第1と第2の用量応答曲線を比較すること
を含んでなる。
【0016】
この態様では、第1のトランスフェクションされたセルカルチャーは、式[JMD1][TMD1](ここで、[JMD1]は第1のガンマセクレターゼ基質に由来する)で示される膜近傍ドメイン配列(JMD1)と膜貫通ドメイン配列(TMD1)を有する第1のポリペプチドをコードする、第1のポリヌクレオチドでトランスフェクションし、第2のトランスフェクションされたセルカルチャーは、式[JMD2][TMD1](ここで、[JMD2]は第2のガンマセクレターゼ基質に由来し、第1と第2のポリペプチドのTMD1は同一である)で示される膜近傍ドメイン配列(JMD2)と膜貫通ドメイン配列(TMD1)を有する第2のポリペプチドをコードする、第2のポリヌクレオチドでトランスフェクションする。
【0017】
また、この態様では、第1の用量応答曲線と比較して、第2の用量応答曲線における高濃度側へのシフトは、その化合物が、第2のガンマセクレターゼ基質と比較して、第1のガンマセクレターゼ基質に対して選択的であることを示している。
【0018】
この態様の様々な態様において、第1のガンマセクレターゼ基質は、APLP2、Notch,erbB4、チロシナーゼ、p75NTFR、SCNB2、n−カドヘリンまたはCD44である。従って、式[JMD1][TMD1]および[JMD2][TMD1]の[TMD1]は、APPの膜貫通ドメインであり、[JMD1]および[JMD2]はそれぞれAPLP2、Notch,erbB4、チロシナーゼ、p75NTFR、SCNB2、n−カドヘリンまたはCD44から選択される(ここで[JMD1]と[JMD2]は同一でない)膜近傍配列ドメインである。
【0019】
本発明のセルカルチャーアッセイの様々な態様において、活性なガンマセクレターゼは、セルカルチャーによって内因的におよび構造的に産生される。セルカルチャーとしては、例えばHEK293細胞が挙げられる。ICDは、VMLKKKC(配列番号39)に特異的に結合するモノクローナル抗体を用いて測定することができる。
【0020】
更なる態様では、本発明は、化合物が、第2のガンマセクレターゼ基質と比較して、第1のガンマセクレターゼ基質のガンマセクレターゼ活性を選択的に阻害するか否かを決定するための方法を包含する。本方法は、
(a)第1のトランスフェクションされたセルカルチャーと種々の濃度の該化合物とをガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(b)第2のトランスフェクションセルカルチャーと種々の濃度の該化合物とをガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(c)種々の化合物濃度でトランスフェクションされた第1および第2のセルカルチャーのそれぞれによって産生したICDを測定し、第1のトランスフェクションされたセルカルチャーに対する化合物の効果の第1の用量応答曲線と、第2のトランスフェクションされたセルカルチャーに対する化合物の効果の第2の用量応答曲線とを作成すること;および
(d)第1と第2の用量応答曲線を比較すること
を含む。
【0021】
この方法では、第1のトランスフェクションされたセルカルチャーは、式II:
[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD]
[式中、
JMDΔC4は、ガンマセクレターゼ基質の膜近傍ドメイン(JMD)配列のアミノ酸配列を含み、ここでJMDは4つのC末端ペプチドを欠いており;
[TMD]は、ガンマセクレターゼ基質の膜貫通ドメイン配列を含んでなり;
X1−X2−X3−X4は、独立して任意のアミノ酸から選択される]
を含んでなる第1のポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドでトランスフェクションし、
第2のトランスフェクションされたセルカルチャーは、式II:
[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD]
[式中、[TMD1]および[JMDΔC4]は前記と同意義であり、X1−X2−X3−X4は、独立して任意のアミノ酸から選択される]
を含んでなる第2のポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチドでトランスフェクションする。
【0022】
具体的な態様では、X1はS、T、G、P、Q、R、V、L、N、P、A、K、E、I、F、H、WおよびDから選択され;X2は任意のアミノ酸であり;X3はS、N、D、P、E、R、T、F、I、K、L、V、G、W、HおよびAから選択され;X4は任意のアミノ酸である。
【0023】
具体的な態様では、X1はS、T、G、P、Q、R、V、L、N、P、A、K、E、I、F、H、WおよびDから選択され;X3はS、N、D、P、E、R、T、F、I、K、L、V、G、W、HおよびAから選択され;X2およびX4はL、I、H、E、V、A、S、T、D、N、P、K、QおよびRから選択される。
【0024】
具体的な態様では、X1はS、T、G、P、Q、RおよびDから選択され;X2は任意のアミノ酸であり;X3はS、N、D、PおよびAから選択され;X4は任意のアミノ酸である。
【0025】
この態様の一態様では、第1のポリペプチドのX1−X2−X3−X4は第1のガンマセクレターゼ基質に由来し、第2のポリペプチドのX1−X2−X3−X4は第2のガンマセクレターゼ基質に由来する。
【0026】
この方法の一態様では、第1の用量応答曲線と比較して、第2の用量応答曲線における高濃度側へのシフトは、その化合物が、第2のガンマセクレターゼ基質と比較して、第1のガンマセクレターゼ基質に対して選択的であることを示している。
【0027】
具体的な態様では、第1および第2のポリペプチドのX1−X2−X3−X4は、独立してGLNK、SLSS、GSNK、GSNS、PPAQ、SSNK、GSSK、QHAR、QASR、TTDN、RDST、DVDRまたはQIPEから選択される。第1および第2のポリペプチドの[TMD]は、配列番号13を含み得る。第1および第2のポリペプチドの[JMDΔC4]は、配列番号3〜5および7〜12から独立に選択することができる。
【0028】
具体的な例として、式IIで示されるポリペプチドは、以下の配列のいずれかを包含する:
(e) (C99GVP-APLP2): LEDAEFRHDS GLEEERESVG PLREDFSLSS GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号16);
(f) (C99GVP-NOTCH1): LEDAEFRHDS GPYKIEAVQS ETVEPPPPAQ GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号17);
(g) (C99GVP-SREBP1): LEDAEFRHDS GAKPEQRPSL HSRGMLDRSR GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号18);
(h) (C99APPD4-APLP2): LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVSLSS GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号42);
(i) (C99-APP-(G25S): LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVSSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号43)
(j) C99-APP-(S26L): LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVGLNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号44)
(k) C99-APP-(N27S): LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVGSSK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号45)
(l) C99-APP-(K28S): LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVGSNS GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号46)
(m) (C99APPΔ4-NOTCH1): LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVPPAQ GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号100);
(n) (C99APPΔ4-SREBP1): LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVDRSR GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号101);
(o) (C99GVP-APLP2-gsnk): LEDAEFRHDS GLEEERESVG PLREDFGSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号19);
(p) (C99GVP-NOTCH1-gsnk): LEDAEFRHDS GPYKIEAVQS ETVEPPGSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号20);および
(q) (C99GVP-SREBP1-gsnk): LEDAEFRHDS GAKPEQRPSL HSRGMLGSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号21)。
【0029】
具体的な態様では、X2はセリンでありX4はリジンであるか、またはX2はロイシンでありX4はセリンである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1−1】APPおよびNotchΔEでのガンマおよびイプシロン開裂の模式図である。(A)APP C99におけるα−セクレターゼ、β−セクレターゼおよびγ−セクレターゼ部位。NotchΔE、S4およびS3における対応するγ−セクレターゼ部位の全体での位置。Figure 1Aはまた、ガンマセクレターゼ阻害剤のAPP/Aβ>Notch/NICD選択性についての可能性のある機構モデル;基質のN末端の長さ;基質の一次配列を示す。
【図1−2】APPおよびNotchΔEでのガンマおよびイプシロン開裂の模式図である。(B)APP C99におけるメジャー(太い矢印)およびマイナー(細い矢印)ガンマセクレターゼγおよびε開裂部位、並びにNotchΔEにおける対応するS4およびS3γ−セクレターゼ部位。
【0031】
【図2】ガンマセクレターゼにより生じたAβ40に対する点変異の効果。膜貫通ドメインに隣接するGSNK残基におけるAPP膜近傍ドメイン内でのいくつかの点変異(S26LおよびK28S)は、ガンマセクレターゼにより生じたAβ40の量に対して効果を有する。上のグラフは、コントロール(HEK)のみの細胞;野生型APP(APP−WT);S26L突然変異(APP−S26L);およびK28S突然変異(APP−K28S)においてガンマセクレターゼにより生じたAβ40の量を示す。下の図は、各突然変異体のガンマ基質の発現が野生型の発現レベルに標準化されることを示している。
【0032】
【図3】AβおよびAICD ELISAおよびAICDルシフェラーゼ活性化を示したアッセイの模式図である。上段は、APPにおけるα−、β−およびγ−セクレターゼ(γおよびε)開裂部位一般的な配置とJMDの位置を示し;中段は、GVPインサートを組み込んだC99−GVPアミノ酸配列の一般的な配置を示し、γ−セクレターゼ開裂によって生じるAβおよびAICD(GVPインサートを伴う)フラグメントを示し、AβおよびAICD ELISAによるそれらの検出を示す。下段は、GVPトランス活性化ドメインを含んでなるAICDフラグメントが如何にして結合し、フェラーゼレポーター遺伝子系を活性化するかを示している。
【0033】
【図4】様々なJMDスワップドメインおよび点変異の非限定的なキメラ配列のいくつかを示す。これらの配列は、さらにN末端のLEDAEFRHDSG配列(配列番号37)およびC末端−VHHQKLVFFA EDVGSNKGAI IGLMVGGVVI ATVIVITLVM LKKK*QYTSIH HGVVEVDAAV TPEERHLSKM QQNGYENPTY KFFEQMQN配列(配列番号38)を含んでなり、配列番号38の任意の点にて付加あるいは挿入したGVP配列のC末端を有する。ある特定の非限定的な構築物はGVP配列を配列番号38の*と示した点で挿入する。
【0034】
【図5−1】キメラ基質分子の開裂プロファイル。(A)C99GVPのγ−セクレターゼ依存プロセシングおよびAICD産生を測定するルシフェラーゼレポーターアッセイの模式図。TMD領域内の2つのタンパク質開裂部位(γおよびε)(黒矢印)、(LE)シグナルペプチドの開裂部位(白矢印)を示す。
【図5−2】キメラ基質分子の開裂プロファイル。(B)AICD−GVP(黒の矢頭)がγ−セクレターゼ依存的にC99GVPから生じることを示している、抗体2H3、抗VP16、抗APP、または抗AICDneo−エピトープ抗体(22B11等)を用いたウェスタンブロット。白の矢頭はC99GVPのN末端欠失体であるC83GVPを示す。HEKトランスフェクション細胞は、阻害剤で処理しない(レーン1、2)、γ−セクレターゼ阻害剤L−685,458で処理(24hr)した(レーン3(1μM)、レーン4(20μM))またはDAPTで処理した(レーン5(1μM)、レーン6(20μM))。
【図5−3】キメラ基質分子の開裂プロファイル。(C)ガンマセクレターゼ阻害剤は、AICD−GVP(C99−GVPから生じた)によるルシフェラーゼレポータートランス活性化を用量依存的にブロックする。HEK293細胞におけるL−685,458およびDAPTはルシフェラーゼレポーターでトランスフェクションした。データを3回の独立した実験の平均(+/−SD)ルミネセンス単位で示す。*p<0.01対レポーターのみ(コントロール)、**p<0.05対C99GVPトランスフェクション細胞(阻害剤なし)。
【図5−4】キメラ基質分子の開裂プロファイル。(D)阻害剤は分泌されたAβをブロックしている。細胞からの培地をDMSO、L−685,458(5μM)またはDAPT(5μM)で処理し、サンドウェッチELISAを用いてAβ40(斜線)およびAβ42(空白)について分析した。補足/検出抗体ペアを2G3/2H3および21F12/2H3とした。出たは3回の実験の平均+/−SDである。同じ培地中の全分泌Aβ(下段)を免疫沈降し、を用いる2H3抗体を用いるウェスタンブロットにより分析した。*p<0.01対DMSO処理C99GVPトランスフェクト体のAβ40、**p<0.01対同一グループからのAβ42。
【図5−5】キメラ基質分子の開裂プロファイル。(E)阻害剤は、C99GVPおよび天然の基質と同等のAβ効力を示している。APPまたはC99GVPのいずれかでトランスフェクトした細胞をL−685,458(左)またはDAPT(右)の段階希釈で処理し、ELISAで分析した(DMSO処理のコントロールに対する百分率で示す)。算出されたIC50値を表として各グラフに挿入した。
【図5−6】キメラ基質分子の開裂プロファイル。(F)トランスフェクトしたCOS−7細胞におけるC99GVPおよびAICD−GVPの細胞内分布:(N)DMSO処理した細胞に存在する核染色はDAPT(5μM)の添加後に消失し、C99GVP発現がより明瞭に認められた(右下)。
【0035】
【図6−1】C99−GVPは生理学的な開裂を受け、JMDキメラの作用を受ける機能的なガンマセクレターゼ基質である。(A)C99GVPおよびいくつかのJMDキメラの模式図およびアミノ酸配列(TMD内にγおよびε開裂部位、Aβ免疫ベースの検出および分析に用いられる抗体により認識されるエピトープを含む)(配列番号16、17、18)。
【図6−2】C99−GVPは生理学的な開裂を受け、JMDキメラの作用を受ける機能的なガンマセクレターゼ基質である。(B)DMSOまたはDAPT(5μM)で処理した一時的にトランフェクトしたHEK細胞由来の細胞リゼートの2H3(上段)および抗APP(中段)抗体を用いたイムノブロット。下段は、細胞溶解の前に、同じサンプルから集めた調整済培地のイムノブロットを示す。
【図6−3】C99−GVPは生理学的な開裂を受け、JMDキメラの作用を受ける機能的なガンマセクレターゼ基質である。(C)JMDキメラおよびレポーター活性。トランスフェクション後48時間での、DMSO(グレー)またはDAPT(5μM、黒)で処理した細胞のルシフェラーゼ分析。データをDMSO処理したC99GVPコントロールに対する百分率で示す。
【図6−4】C99−GVPは生理学的な開裂を受け、JMDキメラの作用を受ける機能的なガンマセクレターゼ基質である。(D)JMDキメラおよび分泌されたAβ40に対する効果。ルシフェラーゼ分析からの調整済培地のELISA分析(データはDMSO処理したC99GVPコントロールに対する百分率で示す)。
【図6−5】C99−GVPは生理学的な開裂を受け、JMDキメラの作用を受ける機能的なガンマセクレターゼ基質である。(E)JMDキメラおよび分泌されたAβ42に対する効果。ルシフェラーゼ分析からの調整済培地のELISA分析(データはDMSO処理したC99GVPコントロールに対する百分率で示す)。
【図6−6】C99−GVPは生理学的な開裂を受け、JMDキメラの作用を受ける機能的なガンマセクレターゼ基質である。(F)JMDキメラはガンマセクレターゼとの総合作用を阻害していない。PS−1またはAPPのN末端フラグメントに対する抗体を用いたトランスフェクトしたHEK細胞からの細胞リゼートのイムノブロットは、C99GVPおよびJMDキメラがPS−1と同様の結合を示している。黒の矢頭はAICD−GVPフラグメントを示す。
【図6−7】C99−GVPは生理学的な開裂を受け、JMDキメラの作用を受ける機能的なガンマセクレターゼ基質である。(G)COS−7細胞におけるJMDキメラの細胞内分布はDAPT処理により消失する核染色(N)を示している。DAPT処理した細胞のJMDキメラの均一な発現プロファイル。
【0036】
【図7−1】C99−GVP膜近傍ドメインスワップが分泌されたAβおよびAICD産生に個別的に影響を及ぼす。(A)分泌されたAβ40に対するα−セクレターゼの効果。DMSO(グレー)または40μMのTAPI−1(黒)で処理した細胞からの調整済培地を集め、Aβ40に特異的なELISAにより分析した。データをC99GVPコントロールで処理したTAPI−1の百分率で示した。*,p<0.01、**,p<0.05。
【図7−2】C99−GVP膜近傍ドメインスワップが分泌されたAβおよびAICD産生に個別的に影響を及ぼす。(B)分泌されたAβ40に対するAβ分解酵素阻害剤の効果。DMSO(グレー)または40μMホスホラミドン+1mg/mLバシトラシン(チェックのバー)をAβ40に特異的なELISAで分析した。データはC99GVPコントロールで処理した阻害物質の百分率で示した;*,p<0.01。
【図7−3】C99−GVP膜近傍ドメインスワップが分泌されたAβおよびAICD産生に個別的に影響を及ぼす。(C)C99GVPまたはC99GVP−APLP2でトランスフェクトしたHEK細胞における長いAβ種の細胞内蓄積を示す:合成Aβペプチド標準(レーン1)、細胞リゼート(レーン2,4)、調整済培地(レーン3,5)、C99GVP−APLP2から得られたAβ’ペプチド標準(レーMTI−MMP6)。
【0037】
【図8−1】APP JMDにおけるGSNKモチーフは、ガンマセクレターゼ開裂において役割を果たしている。(A)APPからGSNKモチーフを保持する修飾JMDキメラ基質の発現プロファイル。配列のアライメント(配列番号15、19、20および21)に、JMD領域(上段)における配列との相違を強調して示す。中段は、DMSOおよびDAPT(5μM)で処理したトランスフェクトしたHEK細胞からの細胞リゼートの2H3抗体イムノブロットを示す。下段は、同じ細胞リゼートのAPP抗体イムノブロットを示す。白の矢頭は基質に由来するC83GVP様フラグメントを示す。
【図8−2】APP JMDにおけるGSNKモチーフは、ガンマセクレターゼ開裂において役割を果たしている。(B)JMDキメラは、DMSO(グレー)またはDAPT(5μM、黒)での処理後の48時間での細胞におけるAICD−GVPフラグメントにより媒介されるルシフェラーゼレポータートランス活性化を示す。データは、DMSO処理したC99GVPコントロールと比較した活性の百分率で示す。
【図8−3】APP JMDにおけるGSNKモチーフは、ガンマセクレターゼ開裂において役割を果たしている。(C)JMDキメラは正常なAβ分泌を示す。2H3抗体を用いたDMSO処理した細胞からの調整済培地のウェスタンブロット(下段)は、合成Aβ40ペプチド標準を用いた密度測定により定量し、C99GVPコントロールの百分率で示した。
【図8−4】APP JMDにおけるGSNKモチーフは、ガンマセクレターゼ開裂において役割を果たしている。(D)JMDキメラは正常なAβ40分泌を示している。DMSO(グレー)またはDAPT(黒)処理した細胞から集めた調整済培地のAβ40ELISA分析。データはDMSO処理したC99GVPコントロールの百分率として示す。
【0038】
【図9−1】効果的なガンマ開裂に関与する膜近傍残基のマッピング。(A)点変異を有するC99GVP配列のアライメント(置換残基を下線で表示)(配列番号15、42、43、44、45、46)についてのGSNKモチーフにおける点変異を含む新しい突然変異基質の発現プロファイル。DMSOまたはDAPT(5μM)で処理したトランスフェクトしたHEK細胞からの細胞リゼートの細胞リゼートの2H3抗体(中段)または抗APP抗体(下段)を用いたイムノブロット。白い矢頭は基質に由来するC83GVP様フラグメントを示す。
【図9−2】効果的なガンマ開裂に関与する膜近傍残基のマッピング。(B)DMSOで処理した細胞からの調整済培地の免疫沈降およびウェスタンブロット(2H3抗体)。上のグラフは密度測定による定量を示し、C99GVPコントロールに対する百分率で示す。
【図9−3】効果的なガンマ開裂に関与する膜近傍残基のマッピング。(C)DMSO処理(グレー)またはDAPT処理した細胞からの調整済培地のAβ40ELISA分析(C99GVPコントロールに対する百分率で示す)。
【図9−4】効果的なガンマ開裂に関与する膜近傍残基のマッピング。(D)DMSO(グレー)またはDAPT(5μM、黒)で処理した細胞のルシフェラーゼシグナル(トランスフェクション後48時間)は、突然変異がAICD−GVP介在のレポータートランス活性化における変化を誘導しないことを示している。データはDMSO処理したC99GVPコントロールに対する百分率で示す。
【0039】
【図10】AICDサンドウィッチELISAから作成した標準曲線を、合成AICD標準(AICD1-6+Cys(配列番号39)、スペーサー、およびAICD36-48(配列番号38)を用いて示す。また、AICD50ネイティブ標準配列を示す(配列番号41)。
【0040】
【図11−1】AβおよびAICDの非選択的阻害剤による同時阻害。(A)Aβ ELISA;(B)AICD ELISA。
【図11−2】(C)ガンマ阻害剤の濃度の増大に伴い、AICD−DD阻害およびキメラCTFの安定化を示す、抗APP C末端抗体(Sigma)を用いたイムノブロット。
【図11−3】(D)他のガンマセクレターゼ阻害剤DAPTおよびL−685,458(Merck)と比較した、非選択的な、公開された化合物(Elan's 44989および46719)のAPPγ対ε選択性。
【0041】
【図12】AβおよびAICDのELANスルホンアミドによる同時阻害(APP/Aβ>Notch/NICD選択的ガンマセクレターゼ阻害剤);(A)A−β ELISA;(B)AICD ELISA。これらの化合物は、他のガンマ基質(Notch等)と比較してAPPに対する選択性を有するガンマセクレターゼ阻害剤のクラスを形成する。ELISAの結果は、阻害剤がAPPにおけるガンマおよびイプシロン部位で作用することを示している。
【0042】
【図13−1】選択的または非選択的阻害剤によるキメラC99−GVPからのAICD産生の阻害。(A)野生型C99(APP)およびキメラJMDスワップ、C99−APLP2およびC99−Notchによる選択的および非選択的阻害剤についてのAICD ELISA;
【図13−2】選択的または非選択的阻害剤によるキメラC99−GVPからのAICD産生の阻害。(B)APPキメラJMD基質(それぞれ、APLP2:42.2および26.2;Notch;33.6および15.9)と比較した、ネイティブAPP基質についての阻害剤化合物475516および477899の選択性を示す(A)のデータのまとめ。
【0043】
【図14−1】キメラJMC C99GVP基質からのAICD産生の阻害についての選択的および非選択的化合物の相対的効力。(A)様々なC99−GVP構築物(APP(配列番号47);APLP2(配列番号48);Notch(配列番号49);Notch−GNSK (配列番号50);SLSS(配列番号51))に対する選択的化合物475516によるAICD阻害のIC50(2回の能動応答実験のIC50の平均)をWT APP JMDによるC99−GVPについてのIC50に対して標準化した(エラーバーはIC50の反復測定にもとづくCVを示す)。(B)様々な構築物に対する非選択的化合物44989によるAICD阻害のIC50(1回の測定)をWT APP JMDによるC99−GVPについてのIC50に対して標準化した。(C)様々な構築物に対する化合物475516によるAICD阻害のIC50値(2回の能動応答実験のプールデータからの単一のIC50)をWT APP JMDによるC99−GVPについてのIC50に対して標準化した。
【図14−2】(D)選択的スルホンアミド阻害剤およびC99キメラ基質配列を用いたAICDのガンマセクレターゼ産生の阻害:野生型(C99GVP−APP);C99GVP−Notch;C99GVP−APPΔ4−SLSS;C99GVP−NotchΔ4−GSNK。ネイティブAPP JMD領域の保持または膜貫通領域のN末端に隣接して存在するGSNK配列は、選択的阻害剤化合物480271および48970の存在下でガンマセクレターゼにより産生したガンマセクレターゼAICDの比率を減少させる。
【0044】
【図15】AICD neo−エピトープに対するMAb 22B11の選択性を過剰のAICD neo−エピトープペプチドの能力によって示し、ELISA分析実験における結合について濃度依存的に競合するが、開裂部位にまたがるペプチドおよびタンパク質は競合しない。また、これらのデータは、AICD neo−エピトープに対する結合に関する22B11のKdが約5μMであることを示唆している。
【0045】
【図16】AICD ELISAは細胞リゼートにおけるAICDを検出する。補足のためにAICD neo−エピトープモノクローナル22B11を用いたサンドウィッチELISAは、増大する量のAPP基質を発現するHEK293細胞からの抽出物においてガンマセクレターゼ産生AICD−DDの増大する量を検出する(Fas−APP−DD cDNAの一時的トランスフェクトの増大する濃度から)。
【0046】
【図17】ベースライン、様々な異なる基質に由来するJMD構築物でトランスフェクトした、およびガンマセクレターゼ阻害剤処理なしでの、HEK293細胞からの細胞リゼートにおける様々なガンマセクレターゼ開裂産物の非阻害レベル。構築物は、C99−Notch、C99−ErbB4;C99−APLP2;C99−p75NTFR;C99−N−カドヘリン;C99−SCNB2;C99−チロシナーゼ;およびコントロールの非トランスフェクト細胞を含む。データは、C99−APP−GVP構築物開裂産物について、生成物(ICD、Abeta40、Abeta42およびC99)の量に標準化して示している。即ち、C99−APP構築物についてのすべての開裂産物を100%とし、試験した他の基質からの生成物を、C99−APP構築物からのそれぞれの産物に対して相対的に示す。
【0047】
【図18】様々なJMD構築物からのICDの阻害についての選択的対非選択的阻害剤の相対的な効力。構築物は、C99−APP;C99−Notch、C99−ErbB4; C99−APLP2;C99−p75NTFR;C99−SCNB2;およびC99−チロシナーゼを含む。データは、C99−APPからのAICD産生の阻害についてのEC50値について標準化して示す。即ち様々な基質に対する化合物が相対的に「x倍」選択的であることを示す。
【0048】
【図19】APP JMD領域のGSNKアミノ酸配列でのアミノ酸突然変異誘発に応じて変化する、非選択的ジベンゾカプロラクトン(ELN−44989)および選択的なスルホンアミド(ELN−475516およびELN−481090)ガンマセクレターゼ阻害剤の効力の効果。APLP2のJMDからの対応するアミノ酸並びにC99−APP−GVPにおける完全な4つのアミノ酸置換を一連の点変異として挿入した。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、単一のモジュラー構築物を用いる、既知のまたは想定されるガンマセクレターゼの基質におけるガンマセクレターゼにより媒介される開裂をモニターするための便利で簡便なシステムを提供する。本発明の様々な側面は、ガンマセクレターゼ開裂に関する阻害剤の効力についての基質の同一性と構造の変化の効果をモニターするためのポータブルなシステムを提供する。このシステムにおいて基質間の効力の比較は様々な基質および基質の変異体において阻害剤の選択性を推定するために用いることができる。
【0050】
本明細書に記載の分析は、モジュラー、シングル−フォーマットの分析システムであり、ガンマセクレターゼ阻害化合物の基質選択性を測定する。この分析は、複数のガンマセクレターゼ基質に対するガンマ阻害剤の効力、そしてそれら基質間の選択性の測定を可能にするので、任意の所望の基質選択性のプロファイルを有するガンマセクレターゼ阻害剤を発見するのに用いることができる。例えば、このアッセイを用い、Aβ産生を阻害しNotchの生理学的プロセシングを調節しない、APP選択的化合物を同定することによってアルツハイマー病の治療に有用な化合物を発見することができる。
【0051】
同様に、研究により、様々なヒトの癌(T細胞急性リンパ性白血病、乳癌、前立腺および膵臓ならびにCNS新生物を含む)は、異常に高アイソフォーム特異的なNotchシグナリングが関与し得、Notchアイソフォーム特異的ガンマセクレターゼ基質阻害剤は治療上の利点を有することを示唆している。Notchが、自己免疫、増殖性及び炎症疾患を含む様々な末端器官(end organ)の疾患に関与するという証拠もある(Arumugam Thiruma, et al., Nat. Med., (2006) 12(6): 621-3; Barsky Sanford, H., et al., FASEB J. (2007); Jurynczyk, M., et al. (2005) J. Neuroimmunol., 170(1-2): 3-10; Kogoshi, H., et al., Oncology Reports (2007) 18(1): 77-80; Liu, H., et al., Br. Cancer Res. and Treatment (2006); Meng Raymond, D., et al. (2006) Proceedings of the American Association for Cancer Research Annual Meeting; Nefedova, Y., et al., Blood (2008) 111(4): 2220-9; Setoeuchi, T., et al., J. Bone and Min. Res. (2007); Sun, Y,et al., Br. Cancer Res. and Treatment (2006); Teachey David, T., et al., Blood (2008) 111(2): 705-14; van Es Johan, H. and H. Clevers, Trends Molec. Med. (2005) 11(11): 496-502; Zhang, P., et al. (2006) Proceedings of the American Association for Cancer Research Annual Meeting)。Notch依存の癌や自己免疫の理解が急速に進んでおり、Notchの特定のアイソフォームが問題となる個々の疾患に重要であることが示唆されている:例えば、T細胞白血病(Vacca, et al., EMBO J. (2006) 25(5): 1000-8; Bellavia, D., et al., EMBO J. (2007) 26(6): 1670-80) (Ellisen, L.W., et al., Cell (1991) 66: 649-661; Nickoloff, B.J., et al., Oncogene (2003) 22: 6539-6608)およびEAE (Jurynczyk, M.A., et al., J Immunol (2008) 180(4): 2634-40).)。
従って、これらのNotch依存の癌(及び自己免疫疾患等の他の状態)に関して、本明細書に記載したアッセイ及び方法は、特定のNotchアイソフォームに関して選択的で、疾患に関連しない他のNotchアイソフォームの正常なプロセシングは阻害しないガンマセクレターゼ阻害剤を同定するのに用いることができる。従って、本明細書に記載のアッセイ及び方法は、アルツハイマー病、癌及び自己免疫疾患が挙げられるがこれに限定されない、何らかの疾病に関与する特定のガンマセクレターゼ基質に対してアイソフォーム選択性を示す化合物を同定するのに用いることができる。
【0052】
当業者は、本明細書に記載の方法及びアッセイが、任意の現在知られているまたはこの先同定されるガンマセクレターゼ基質に対して好ましい阻害プロファイルを有する化合物を同定するために有利に用いることができることを認識する。
【0053】
一つには、本発明は、ADを処置するためのガンマセクレターゼ阻害剤を発見における大きな挑戦の一つに関する。例えば、APPプロセシング(Aβを生じる)に加えて、ガンマセクレターゼはいまや、他の多くの基質をプロセシングすることが認識されている。ひとつの主な他の基質はNotchである。ガンマセクレターゼ阻害剤の臨床錠の開発は、これらの化合物が、APPからのAβ産生の阻害と同等の効力でNorchのプロセシングを阻害するという事実によって制約を受けている。これらの非限定的ガンマセクレターゼ基質阻害剤によるNotchプロセシングの阻害は、前臨床安全性モデルにおいて(例えば、ラット及びイヌ)機構的な毒性をもたらすことが知られている(主に消化管)。さらに、ガンマセクレターゼは知られている拡大を続ける一連の基質(それに属するものはガンマセクレターゼによるその開裂がAPPのそれと同等の効力で阻害されれば、機構的な毒性として現れ得る)をプロセシングすることが示されている。
【0054】
本発明以前、APP開裂の調節に関する他の既知のガンマセクレターゼ基質の任意のものに対する任意のガンマセクレターゼモジュレーターの選択性の研究は、実験下で各基質の発現を必要とする骨の折れる集中的な一連のステップを必要とし、その上、その基質の開裂を定量する分析法をそれぞれ別個に開発し用いること、異なる条件下で行い、異なる開裂産物の検出を必要とするものであった。本発明は存在する課題を解決するものであり、a)ガンマセクレターゼモジュレーターの選択性を、類似性の高い基質と共通の計測値で単一のアッセイフォーマットで調べること(2種類鋸となるタイプのアッセイから得られた開裂産物の測定を行い比較する代わりに)、およびb)APPに加えてガンマセクレターゼの他の基質を容易に同定し、そのプロセシングが明かにAPP選択的化合物によって調節され得ることを含む。
【0055】
本発明は、別のγ−セクレターゼ基質と比較して、特定のγ−セクレターゼ基質に対するγ−セクレターゼ活性を優先的に調節する化合物の同定に用いる方法を提供する。いくつかの方法は、例えば異なるガンマセクレターゼ基質の膜近傍ドメイン(JMD)またはアミノ酸配列に修飾を有するJMDを有するAPPアナログの、膜貫通ドメイン(TMD)を有するガンマセクレターゼ基質を用いるアッセイにおいて化合物のスクリーニングを必要とする。基質としては、細胞内ドメインにおけるその基質の安定性のためおよびガンマセクレターゼによる基質の開裂からもたらされる様々な開裂産物を検出するのに用いることができる部分を提供するための、さらに他の様々なポリペプチド配列が挙げられる。従って、基質のJMDが様々なガンマセクレターゼ基質に由来する可変のJMDを有するユニバーサルな基質を提供する。可変のJMDを有する単一の基質を用いて、ガンマセクレターゼモジュレーターの効力を決定することができ、JMDがそこからコピーまたは由来している天然の基質に対するモジュレーターの効力と関連づけることができる。従って、本発明は、天然の基質に対して阻害剤をテストする必要なしに、様々なガンマセクレターゼ基質に対するガンマセクレターゼモジュレーターの選択性を評価する方法を提供する。
【0056】
本発明はさらに、他のガンマセクレターゼ基質と比較して、基質のガンマ(γ)またはイプシロン(ε)開裂部位のいずれかで特定のガンマセクレターゼ基質に対するガンマセクレターゼ活性を優先的に調節する化合物を同定するのに用いられる方法を提供する。本アッセイは、ガンマセクレターゼ開裂産物を検出する既知の方法を利用することができる。さらに、本発明は開裂産物(例えばICD)の検出のためのモノクローナル抗体を提供する。本発明はさらに、ある特定のクラスのガンマセクレターゼ阻害剤が別のガンマセクレターゼ基質と比較して増大したまたは減少した阻害効力を有する、ガンマセクレターゼ基質を同定するための方法を提供する。いくつかの方法は、Notch基質S3/ε−開裂部位の開裂と比較してγ−開裂部位でのAPP基質のγ−セクレターゼ開裂を優先的に調節する化合物を同定のために用いることができる。
【0057】
本発明についてさらに記載する前に、用語について定義する。本明細書に用いられるように、単数形の「a」、「an」および「the」は、特に明示しないかぎりは複数形を包含する。
【0058】
用語「ガンマセクレターゼ基質」、「γ−セクレターゼ基質」および「ガンマセクレターゼの基質」は、本明細書においていずれも同語に交換可能に用いられ、ガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で、マルチユニットプロテアーゼ、即ちガンマセクレターゼによりプロセシングされる(即ち、開裂/タンパク質分解される)タンパク質またはポリペプチドを意味する。ガンマセクレターゼのいくつかの非限定的な例としては、本明細書に記載のもの、例えばアミロイド前駆体タンパク質(APP)、Notch、アミロイド前駆体様タンパク質(APLP2)、チロシナーゼ、CD44、erbB4、n−カドヘリンおよびSCNB2等が挙げられる。ガンマセクレターゼ基質はまた、既知のガンマセクレターゼ基質の任意のアイソタイプ(アイソフォーム)、例えばNotch1、Notch2、Notch3およびNotch4等、を包含する。さらに、ガンマセクレターゼ基質はヒトの配列に限定されないが、マウス、ラット、モルモット、霊長類等を含む他の哺乳動物由来の基質(オルソログ)も包含する。「基質分子」なる語は、ガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で、マルチユニットプロテアーゼ、即ちガンマセクレターゼによりプロセシングされ得る(即ち、開裂/タンパク質分解される)、合成、キメラ、および/または組換えポリペプチドを意味する。「天然に存在するガンマセクレターゼ基質」または「ネイティブな基質」とは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、Notch、アミロイド前駆体様タンパク質(APLP2)、チロシナーゼ、CD44、erbB4、n−カドヘリンまたはSCNB2、または他の非キメラ、そのアイソフォームを含むガンマセクレターゼ基質として作用する天然に存在するポリペプチド、から誘導される非キメラのペプチドを意味する。天然に存在するガンマセクレターゼの一例は、APPに由来するJMDおよびTMDを含んでなるポリペプチドである。天然に存在するガンマセクレターゼ基質を含む、いくつかのガンマセクレターゼ基質および基質分子は、膜貫通タンパク質またはポリペプチドとして内因的または組換えにより細胞内で発現させることができる。
【0059】
本明細書に用いられる、「ガンマセクレターゼ活性が可能な条件」は、in vitroまたはin vivoで(例えば、細胞ベースのアッセイ)で、本発明の基質分子をコードするcDNAの発現が可能で、正常な発現、外因的に発現した基質分子の突然変異および取引が可能な条件下でガンマセクレターゼ酵素を含んでなる状態を言う。そのような条件は、ガンマセクレターゼ活性が通常それが発現する細胞内に存在する、典型的な培養条件を含む、培地での細胞の増殖が可能な条件を含む。そのような条件の特定の非限定的な例を本明細書の実施例の項に記載するが、10%ウシ胎児血清および50ユニット/mLのペニシリンおよびストレプトマイシンを添加した高グルコースDMEM中のセルカルチャーが挙げられる(37℃、5%CO)。細胞増殖およびin vitroバッファー系を可能にする他の具体的な条件は当業者に知られている。当業者はまた、ガンマセクレターゼは、数多くの条件下でおよび様々な細胞のタイプにおいて安定で活性であり、数多くの発現系/ベクターを用いて発現させることができることを理解している。従って、様々な発現ベクター/宿主を含ませて本発明のキメラガンマセクレターゼ基質をコードするポリヌクレオチド分子を発現させることができる。これらの系は、組換えバクテリオファージ、プラスミド、コスミドDNA発現ベクターでトランスフェクトしたバクテリア等の微生物、酵母発現ベクターでトランスフェクトされた酵母、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)でトランスフェクトされた昆虫細胞、ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスCaMV、タバコモザイクウイルスTMV)でトランスフェクトされたまたはバクテリア発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)でトランスフェクトされた植物細胞または動物細胞系が挙げられるがこれに限定されない。組換えタンパク質生成に有用な哺乳動物細胞としては、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系、COS細胞(COS−7等)、W138、BHK、HepG2、3T3、RIN、MDCK、A549、PC12、K562、および293細胞が挙げられるがこれに限定されない。
【0060】
従って、本発明の方法およびアミノ酸配列は、ガンマセクレターゼ活性を可能にするまたはアミノ酸配列の発現を可能にする、任意の発現系を用い、および任意の細胞のタイプにおいて、予め形成し作製することができる。当業者は、HEK−293細胞やCOS細胞を含む本明細書に記載された非限定的な例のような、そのような細胞のタイプを同定することができる。
【0061】
本明細書に用いられる用語「ベータペプチド」または「β−ペプチド」は、ガンマ開裂部位で、ガンマセクレターゼ基質の開裂から生じるN末端産物を意味する。例えば、AβおよびNotch1−βは、それぞれ基質APPおよびNotch1のガンマセクレターゼ開裂から生じるベータペプチドである。
【0062】
「細胞内ドメイン」、「細胞内ドメインペプチド」、「細胞内ドメインフラグメント」または「ICD」は、ガンマ(γ)またはイプシロン(ε)部位でのガンマセクレターゼ基質の開裂から生じるC末端産物を意味する。典型的には、ICDは、最も細胞質に近接した部位(ε部位等)での開裂から生じるが、膜貫通ドメイン(TMD)内の2つのガンマセクレターゼ開裂部位を欠くいくつかの基質に対するγ部位での開裂であってもよい。例えば、AICDおよびNICDは、それぞれ、APPおよびNotch1のε/S3部位でのガンマセクレターゼ開裂から生じる細胞内ドメインペプチドである。
【0063】
「ガンマ」、および「イプシロン」なる語は、本明細書において一般に、ガンマセクレターゼ基質の特定の開裂部位に関して用いられる。これらの用語は、ガンマ部位での開裂がβペプチドのC末端を生じ(例えばAβ40またはAβ42)、イプシロン部位での開裂が細胞内ドメインペプチドのN末端を生じる(例えば、AICD、NICD等)、ガンマセクレターゼが基質において作用するTMD内の2つの別個の開裂部位を意味する。また、イプシロン開裂非存在下でのガンマ部位での開裂はICDおよびAβ様ペプチドを生じる。
【0064】
「C99GVP」は、膜貫通ドメインの末端から3アミノ酸残基C末端側にGal4−VP16 DNA結合/トランス活性化ドメインがインフレームで挿入された、β−セクレターゼによるAPPの開裂から生じる99アミノ酸のC末端フラグメントのポリペプチド配列を意味する。このタイプのポリペプチドの例としては、Karlstrom, H., et al., J. Biol. Chem., (March 1, 2002); 277(9):6763-6766に記載されているような配列が挙げられるがこれに限定されない。
【0065】
「膜貫通ドメイン」、「膜貫通領域」または「TMD」は、細胞膜の脂質二重層内に位置するガンマセクレターゼ基質の領域を意味する。一般にTMDは疎水性であり、荷電残基によりN末端とC末端で結合している。本明細書において用いられる、いくつかのガンマセクレターゼ基質(例えば、APPおよびNotch)の膜貫通ドメインは、ガンマセクレターゼが基質を開裂する両部位(即ち、ガンマおよびS3/イプシロン開裂部位)を含む。TMDのN末端は、基質の膜近傍ドメインのC末端に隣接する。例えば、APPのJMDのC末端は配列番号1のだいたい28番目の残基に位置し、APPのTMDのN末端は配列番号1のだいたい29番目の残基に位置する。膜貫通ドメイン(TMD)を含むタイプIの内在性膜タンパク(ここで「タイプI」は細胞質/内腔側に位置するC末端により特徴付けられる)は、典型的には疎水性で荷電残基を含まない、しばしばαヘリックスの、膜を貫通するまたは膜に「またがって」いる、ポリペプチドの部分である。TMDは平均して長さが約20アミノ酸であり、ハイドロパシー解析アルゴリズムやX線回折等が挙げられるがこれに限定されない他の様々な実験技術を含む、当業者に知られている方法により、計算で予測することができる。TMDはしばしば、一方または両側で、疎水性で荷電した残基に結合しているかまたは「挟まれ」ている。本発明の特定の態様では、基質のJMDは、TMDの細胞外側のN末端側(TMDのN末端側)に、15〜20残基、通常約19残基、の長さで延びている。TMDは、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体のような特定の結合物質に特異的に結合するアミノ酸配列を含んでなることができる。
【0066】
本明細書において用いられる「膜近傍ドメイン」または「JMD」は、膜貫通領域のN末端側の直ぐ隣に位置するガンマセクレターゼ基質の領域を意味する。膜近傍ドメインは、典型的には約15〜約30アミノ酸残基、通常約19〜約25アミノ酸、の長さである。本明細書に用いられる「JMDCΔ4」は、膜貫通ドメイン(TMD)のN末端の直ぐ隣に隣接して位置する4つのC末端ペプチドを欠くJMDを意味する。
【0067】
本明細書において用いられる「AGBP」および「AGBP」は、特定の結合ペアの部分であるエピトープまたは共有結合により結合した部分を意味する。そのような配列の例としては、抗体によって認識されるAβ配列を有する内部またはネオ−エピトープのいずれか、抗体によって認識される少なくとも10〜15残基のAPP C末端内のエピトープ、抗体によって認識されるAICDneo−エピトープ(イプシロン部位でのガンマセクレターゼ開裂によって生じる)および基質のN末端またはC末端のいずれかのエピトープタグ(HA−タグ、myc−タグ等が挙げられるがこれに限定されない)が挙げられる。
【0068】
本明細書において用いられる「Sig」は、特定の細胞または細胞外の場所に結合するポリペプチドのトランスポートおよび/またはトランスロケーションを指示する機能を有する一般的なアミノ酸シグナル配列を意味する。そのようなシグナル配列は当分野でよく知られている(例えば、Devillers-Thiery A, et al., "Homology in amino-terminal sequence of precursors to pancreatic secretory proteins" Proc Natl Acad Sci U S A. 1975 Dec;72(12):5016-5020を参照)。
【0069】
一態様では、本発明は、化合物が基質特異的にガンマセクレターゼを阻害するか否かを測定するための方法及びアッセイを提供する。本方法は、ガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で、ガンマ開裂部位を有する2種以上のガンマセクレターゼ基質を、ガンマセクレターゼおよびガンマセクレターゼ活性を調節する1以上の化合物と接触させることを含む。接触工程は、細胞ベースのアッセイ等のin vivoの条件を含むことができ、あるいはin vitroで行うこともできる。適当な時間の後、各基質についてのガンマ開裂部位でのガンマセクレターゼの量を測定する。活性を比較して化合物が基質特異的に活性を阻害するか否か決定することができる。例えば、ある一つの基質についての活性の量がもう一つの基質についての活性と異なる場合、その化合物はガンマセクレターゼを基質特異的に阻害すると決定することができる。
【0070】
本発明のこの態様において、1以上のガンマセクレターゼ基質は天然に存在する基質であってよい(例えば、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、Notch、アミロイド前駆体様タンパク質APLP2、チロシナーゼ、CD44、erbB4、n−カドヘリン、p75 NTFRおよびSCNB2から選択されるガンマセクレターゼ基質)。例えば、第1のガンマセクレターゼ基質はAPPであり、第2のガンマセクレターゼ基質はAPLP2、Notch、erbB4、チロシナーゼ、p75 NTFR、SCNB2、n−カドヘリンまたはCD44である。
【0071】
別の態様では、1以上のガンマセクレターゼ基質は同じ膜貫通ドメイン[TMD]を有するが、異なる膜近傍ドメイン[JMD]を有する。例えば、第1のガンマセクレターゼ基質は式[TMD1][JMD1](式中、[JMD1]は第1の膜近傍ドメイン配列を含んでなり[TMD1]は膜貫通ドメインを含む)を含む第1のポリペプチドであり、第2のガンマセクレターゼ基質は式[JMD2][TMD1](式中、[JMD2]は第2の膜近傍ドメイン配列を含んでなり[TMD1]は前記と同意義)を含む第2のポリペプチドであり、ここで膜近傍ドメイン配列及び膜貫通ドメイン配列は本明細書において定義したとおり(現在知られている他のガンマセクレターゼ基質の任意の膜近傍ドメイン及び膜貫通ドメインを含む(例えば、Beel and Sanders Cell. Mol. Life Sci. (2008) 65:1311-1334参照)である。一態様では、[TMD1]はAPPの膜貫通ドメインであり、[JMD1]および[JMD2]はそれぞれ独立にAPLP2、Notch、erbB4、チロシナーゼ、p75 NTFR、SCNB2、n−カドヘリンおよびCD44、ならびに可能性のある/推定されるガンマセクレターゼ基質から選択され、[JMD1]と[JMD2]は同一の配列ではない。本発明の更なる態様では、同じTMDと異なるJMDを有する更なる基質を用いてガンマセクレターゼ調節化合物の基質選択性を比較することができる。
【0072】
本発明の更なる態様では、第2のガンマセクレターゼ基質には式II:
[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD]
[式中、
JMDΔC4は、ガンマセクレターゼ基質の膜近傍ドメイン(JMD)配列のアミノ酸配列を含み、ここでJMDは4つのC末端ペプチドを欠いており;
[TMD]は、ガンマセクレターゼ基質の膜貫通ドメイン配列を含んでなり;
X1、X2、X3およびX4は、独立して任意のアミノ酸から選択される]
で示されるペプチドを含む。
【0073】
具体的な態様では、X1はS、T、G、P、Q、R、V、L、N、P、A、K、E、I、F、H、WおよびDから選択され;X2は任意のアミノ酸であり;X3はS、N、D、P、E、R、T、F、I、K、L、V、G、W、HおよびAから選択され;X4は任意のアミノ酸である。
【0074】
具体的な態様では、X1はS、T、G、P、Q、R、V、L、N、P、A、K、E、I、F、H、WおよびDから選択され;X3はS、N、D、P、E、R、T、F、I、K、L、V、G、W、HおよびAから選択され;X2およびX4はL、I、H、E、V、A、S、T、D、N、P、K、QおよびRから選択される。
【0075】
具体的な態様では、X1はS、T、G、P、Q、RおよびDから選択され;X2は任意のアミノ酸であり;X3はS、N、D、PおよびAから選択され;X4は任意のアミノ酸である。
【0076】
一態様では、本発明の方法またはアッセイは、2以上のトランスフェクションセルカルチャーを種々の濃度でガンマセクレターゼ調節活性を有する1以上の化合物と接触させた後、種々の化合物濃度でトランスフェクションセルカルチャーにおいてガンマセクレターゼ開裂により生じたICDの量を測定することを含む。セルカルチャーはそれぞれ、ガンマセクレターゼ基質をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクションする。トランスフェクションセルカルチャーそれぞれについての化合物の効果の用量応答曲線を決定し比較する。例えば、第1のトランスフェクションセルカルチャーは第1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトされ、第2のトランスフェクションセルカルチャーは第2のポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチドでトランスフェクトされ、各ポリペプチドは式II:
[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD]
[式中、
[JMDΔC4]、[TMD]およびX1−X2−X3−X4は本明細書において定義したとおりであり、式IIは第1及び第2のポリペプチドの両方が同じ配列であると定義しない。この方法において、第1の用量応答曲線と比較して、第2の用量応答曲線における高濃度側へのシフトは、その化合物が、第2のガンマセクレターゼ基質と比較して、第1のガンマセクレターゼ基質に対して選択的(またはその逆)であることを示している。
【0077】
本発明鋸の態様の方法及びアッセイは、当業者が認識するであろう幅広い有用性を有する。ガンマセクレターゼ阻害剤化合物(または候補阻害化合物)とガンマセクレターゼ基質の任意の組合せまたは置換を用いて、任意の化合物の選択性プロファイル、またはガンマセクレターゼ阻害剤化合物の任意のシリーズ、任意のガンマセクレターゼ基質に対する選択性を、1以上のガンマセクレターゼ基質に対して決定することができる。同様に、本方法およびアッセイを用いて一連の(多数の)阻害剤化合物から2つ(またはそれ以上)のガンマセクレターゼ基質間で最良の選択性を有する阻害化合物を同定することができる。例えば、本方法またはアッセイが2つの異なるガンマセクレターゼ基質(SBT1およびSBT2)を含む場合、それらの基質をいくつかの濃度の一連の阻害剤化合物(例えば、10種類の阻害剤化合物、CMP1、CMP2、CMP3等)と接触させ、一連のようよう応答曲線を作成し、2(またはそれ以上)の基質のそれぞれについて分析することができる。各基質に対する各化合物についてのIC50値を決定し、IC50値の比(即ち、[SBT1についてのCMP1のIC50]:[SBT2についてのCMP1のIC50])として示すことができる。この比選択性を用いて、どの阻害剤化合物が最良(最悪)の選択性を有するかを決定し、アッセイにおいて用いた基質に対する選択性について化合物をランク付けすることができる。
【0078】
一態様において、本発明はガンマセクレターゼに対する基質分子を提供する。この基質分子は、ある一つのガンマセクレターゼ基質(例えばAPP)に由来するTMDと第2の基質(例えばNotch)に由来するJMD含むキメラポリペプチド配列を含んでいてもよい。いくつかの基質分子においては、JMDのC末端がTMDのN末端に結合している。基質のTMD内のガンマおよび/またはイプシロン開裂部位の開裂についてのガンマセクレターゼ活性は、基質のJMDを交換することによって調節することができる。そのような1つの基質分子は式I:
JMD(1)−TMD(2)(式I)
[式中、JMD(1)は第1のガンマセクレターゼ基質のJMDであり、JMD(2)は第2のガンマセクレターゼ基質のTMDである]
で示される。
【0079】
いくつかのキメラポリペプチドは、ガンマセクレターゼ基質(例えばAPP)に由来するTMDと、同じ基質または第2の基質(例えばNotch)に由来するJMDを含み、天然のJMD配列の4個のC末端アミノ酸の1以上が修飾されている。キメラ基質のTMDにおけるガンマまたはイプシロン部位の開裂について、4個のC末端アミノ酸の修飾によりガンマセクレターゼの活性を調節し得ることが見出された。
【0080】
そのようなひとつのキメラポリペプチドは式II:
[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD](式II)
[式中、
JMDΔC4は、ガンマセクレターゼ基質の膜近傍ドメイン(JMD)配列のアミノ酸配列を含み、ここでJMDは4つのC末端ペプチドを欠いており;
[TMD]は、ガンマセクレターゼ基質の膜貫通ドメイン配列を含んでなり;
X1、X2、X3およびX4は、独立して任意のアミノ酸から選択され、
但し、
[JMDΔC4]のJMDがAPPのJMDである場合、[TMD]はAPPの膜貫通ドメイン配列を含んでなり、X1−X2−X3−X4はG−S−N−Kではなく;
[JMDΔC4]のJMDがAPLP2のJMDである場合、[TMD]はAPLP2の膜貫通ドメイン配列を含んでなり、X1−X2−X3−X4はS−L−S−Sではなく;
[JMDΔC4]のJMDがNotch1のJMDである場合、[TMD]はNotch1の膜貫通ドメイン配列を含んでなり、X1−X2−X3−X4はP−P−A−Qではなく;
[JMDΔC4]のJMDがerbB4のJMDである場合、[TMD]はerbB4の膜貫通ドメイン配列を含んでなり、X1−X2−X3−X4はQ−H−A−Rではなく;
[JMDΔC4]のJMDがチロシナーゼのJMDである場合、[TMD]はチロシナーゼの膜貫通ドメイン配列を含んでなり、X1−X2−X3−X4はQ−A−S−Rではなく;
[JMDΔC4]のJMDがp75 NTFRのJMDである場合、[TMD]はp75 NTFRの膜貫通ドメイン配列を含んでなり、X1−X2−X3−X4はQ−A−S−Rではなく;
[JMDΔC4]のJMDがSCNB2のJMDである場合、[TMD]はSCNB2の膜貫通ドメイン配列を含んでなり、X1−X2−X3−X4はR−D−S−Tではなく;
[JMDΔC4]のJMDがn−カドヘリンのJMDである場合、[TMD]はn−カドヘリンの膜貫通ドメイン配列を含んでなり、X1−X2−X3−X4はD−V−D−Rではなく;
[JMDΔC4]のJMDがCD44のJMDである場合、[TMD]はCD44の膜貫通ドメイン配列を含んでなり、X1−X2−X3−X4はQ−I−P−Eではない]
で示すことができる。
【0081】
ある特定の4個のC末端アミノ酸(X1−X4)は、ガンマセクレターゼが特定の開裂部位または特定の基質配列に対して有する選択性または開裂効率の決定において大きな役割を果たしうる。従って、当業者に知られている常套技術を用いて、これら特定の配列について最適なアミノ酸を同定することができる一連の突然変異誘発実験を設計することができる。例えば、X2およびX4はガンマセクレターゼの基質特異性において役割を果たしうる(例えばFigure 2参照)。従って、特定のネイティブなJMDを選択し、これらがX2およびX4に対応する残基を除いてすべての残基がネイティブの配列と一致しているが、残基X2およびX4が20個の天然アミノ酸を用いて変更されている一連のアミノ酸突然変異体を作製することができる。ガンマセクレターゼ活性を測定するアッセイを用い、ガンマセクレターゼ活性における最も大きな変化を示すものについて、得られた突然変異体配列をスクリーニングすることができる。本発明の特定の態様において、X2およびX4は、L、I、H、E、V、A、S、T、D、N、P、K、QおよびRから選択される。
【0082】
同様に、突然変異誘発実験を用いて、X2およびX4では最適なアミノ酸残基のまま含んでなるが、他の残基が天然の20個のアミノ酸を用いて突然変異が導入された、一連のキメラ基質を作成することができる。同じタイプのスクリーニングアッセイを利用すれば、任意の与えられたガンマセクレターゼ阻害剤に対する選択性および/またはガンマセレクターゼ選択性がさらに最適化される突然変異キメラ基質の同定が可能である。
【0083】
式IおよびIIのポリペプチドは、ポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかまたはその両方に共有結合により連結した更なるアミノ酸配列を含みうる。あるポリペプチドはTMD部分のC末端に結合した更なるアミノ酸配列を含んでなり、この更なるアミノ酸配列はガンマセクレターゼ基質に由来する細胞内ドメイン(ICD)配列の少なくとも一部を含んでなる。例えば、ICD配列は、APPのICD(AICD)、Notch1のICD(NICD)、APPLP2の、チロシナーゼの、CD44の、erbB4の、SCNB2の、n−カドヘリンの、p75NTFRのICD等から選択される。
【0084】
いくつかのポリペプチドにおいて、TMDのC末端での配列は、ある特定のレポーター遺伝子をトランス活性化するために用いることができる更なるアミノ酸配列を含み、特異的な結合物質によって認識され得る配列または部分を提供し、および/またはICD配列の増大した安定化をもたらす。一例では、この更なるアミノ酸配列はGVP配列を含む(例えば配列番号2)。更なる配列は、そのような特性がICDの検出に必要とされる場合(例えばICDを認識する抗体の結合)には、ICDのGVP配列が免疫原性に影響を及ぼさない限りにおいて、ICD配列の中、後、前に挿入することができる。別法として、GVP配列はICDを検出するための手段を提供する。例えば、GVPは、Gal4−ルシフェラーゼ制御発現プラスミドからの発現変化を測定することにより、ルシフェラーゼアッセイにおいて検出することができるレポーターシステムのメンバーである。
【0085】
式IおよびIIのポリペプチドは、JMDのN末端に共有結合により連結した更なるアミノ酸配列を含むことができ、この更なるアミノ酸配列は特異的な結合物質により認識され得る配列または部分である。JMD(1)またはJMDΔC4のN末端の配列は、ポリペプチドの細胞内または細胞外の位置への輸送を指示し、(ガンマセクレターゼと接触し得る場所で)ガンマセクレターゼ基質の細胞膜内へのおよび細胞膜越えての挿入を指示することができるシグナルペプチドを含むことができる。例えば、JMD(1)またはJMDΔC4のN末端に共有結合により結合した更なるアミノ酸配列は、APP、Notch1、APLP2、チロシナーゼ、CD44、erbB4、p75 NTFR、n−カドヘリン、SCNB2等から選択されるガンマセクレターゼ基質のN末端配列を含むことができる。シグナル配列は、ペプチダーゼ、プロテイナーゼまたはペプチド結合(例えばL(leu)−E(glu)−配列)を開裂させる他の酵素による部位特異的な開裂を指示するアミノ酸配列等のリンカーを介して、ガンマセクレターゼ基質のN末端配列に結合することができる。
【0086】
更なるペプチドは式IIIおよび式IV:
[Sig]−LE−[AGBP1]−JMD(1)−TMD(2)−[AGBP2] (式III)
[Sig]−LE−[AGBP1]−[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD][AGBP2] (式IV)
で示すことができる。
【0087】
式IIIおよびIVにおいて、JMD(1)、JMD(2)、JMDΔC4、TMDは式IおよびIIについて上記で定義したとおりである。さらに、
[Sig]は任意事項であり、基質を適当な細胞膜内または細胞膜を越えて挿入するためのポリペプチドの輸送を指示するシグナルペプチドを含み;
LEはジペプチドLeu−Gluであって任意事項であり;
[AGBP1]は抗原アミノ酸配列を含み、好ましくはAPP、Notch1、APLP2、チロシナーゼ、CD44、erbB4、p75 NTFR、n−カドヘリンおよびSCNB2に由来するβ様ペプチドの配列に由来するものであり;
[AGBP2]は、ガンマセクレターゼ基質の細胞内ドメイン(ICD)配列を含み、ICD配列は第2の抗原アミノ酸配列を含んでなり、特異的な結合物質に対する少なくとも1つの特異的な結合決定因子を有し、場合によりGVP等の安定化配列またはレポーター配列を含んでいてもよく;
X1はS、G、P、Q、RおよびDから選択され;
X2はL、S、P、T、V、D、A、IおよびRから選択され;
X3はS、N、D、PおよびAから選択され;
X4はK、S、Q、N、T、EおよびRから選択される。
【0088】
式IVにおいて、[JMDΔC4]は、YEVHHQKLVFFAEDV(配列番号3);LEEERESVGPLREDF(APLP2、配列番号4);PYKIEAVQSETVEPP(NOTCH1、配列番号5);HDCIYYPWTGHSTLP(erbB4、配列番号7;(NM_001042599));SDPDSFQDYIKSYLE(チロシナーゼ、配列番号8;(NM_000372));VTTVMGSSPVVTRG(p75 NTFR、配列番号9;(NM_002507.1));HGKIHLQVLMEEPPE(SCNB2、配列番号10;(NM_004588));LRVKVCQCDSNGDCT(n−カドヘリン、配列番号11(NM_001792));およびQEGGANTTSGPIRTP(CD44、配列番号12;(NM_000610))から選択される。
【0089】
さらに、TMD(2)または[TMD]は、例えばAPPのTMDの非限定的な例:GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号13)のように、任意のガンマセクレターゼ基質の膜貫通領域を含むことができる。式IIIおよびIの両方において、配列のJMD部分はTMDを含む天然の基質のJMDと同一ではない。従って、式Iに関連する但書は式IIIにも当てはまる。
【0090】
いくつかのポリペプチドにおいて、式IIIおよびIVの[AGBP]は、APP、Notch1、APLP2、チロシナーゼ、CD44、erbB4、SCNB2、p75 NTFR、n−カドヘリン等から選択されるガンマセクレターゼ基質のN末端配列を含む。[AGBP]を含む配列はしばしば便宜上ガンマセクレターゼ基質のN末端に由来するか一部であり、[AGBP]はさらに特定の結合アッセイ(例えばELISA)等の既知の方法による検出及び定量を可能にする配列を提供することができる。従って、いくつかのポリペプチドでは、[AGBP]は配列DAEFRHDSG(Aβ N末端エピトープ)(配列番号14)を含んでなる。
【0091】
いくつかのポリペプチドにおいて、式IIIおよびIVの[AGBP2]は、APP(AICD)、Notch1(NICD)、APLP2、チロシナーゼ、CD44、erbB4、SCNB2、p75 NTFR、n−カドヘリン等から選択されるガンマセクレターゼ基質に由来する細胞内ドメイン(ICD)配列の少なくとも一部を含む(例えば、[AGBP2]は配列番号38のアミノ酸配列(AICD)を含んでなる)。
【0092】
式IVのLE−[AGBP1]−[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD]の配列のいくつかの非限定的な例としては以下のものが挙げられる:
(a)(C99GVP−APLP2):LEDAEFRHDS GLEEERESVG PLREDFSLSS GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号16);
(b)(C99GVP−NOTCH1):LEDAEFRHDS GPYKIEAVQS ETVEPPPPAQ GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号17);
(c)(C99GVP−SREBP1):LEDAEFRHDS GAKPEQRPSL HSRGMLDRSR GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号18);
(d)(C99APPΔ4−APLP2):LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVSLSS GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号42);
(e)(C99−APP−(G25S):LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVSSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号43)
(f)C99−APP−(S26L):LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVGLNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号44)
(g)C99−APP−(N27S):LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVGSSK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号45)
(h)C99−APP−(K28S):LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVGSNS GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号46)
(i)(C99APPΔ4−NOTCH1):LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVPPAQ GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号100);
(j)(C99APPΔ4−SREBP1):LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVDRSR GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号101);
(k)(C99GVP−APLP2−gsnk):LEDAEFRHDS GLEEERESVG PLREDFGSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号19);
(l)(C99GVP−NOTCH1−gsnk):LEDAEFRHDS GPYKIEAVQS ETVEPPGSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号20);および
(m)(C99GVP−SREBP1−gsnk):LEDAEFRHDS GAKPEQRPSL HSRGMLGSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号21)。
【0093】
いくつかのポリペプチドにおいて、GVPは、配列KLLSSIEQAC DICRLKKLKC SKEKPKCAKC LKNNWECRYS PKTKRSPLTR AHLTEVESRL ERLEQLFLLI FPREDLDMIL KMDSLQDIKA LLTGLFVQDN VNKDAVTDRL ASVETDMPLT LRQHRISATS SSEESSNKGQ RQLTVSGIPG DLAPPTDVSL GDELHLDGED VAMAHADALD DFDLDMLGDG DSPGPGFTPH DSAPYGALDM ADFEFEQMFT DALGIDEYGG(配列番号2)を含む。いくつかのポリペプチドにおいて、GVP配列は、配列の所望の機能、例えばシグナル配列のトランス活性化、認識または結合部分の提供、および/またはガンマセクレターゼ開裂により生じるペプチドフラグメントに対する安定性の増大を保持する限りにおいて、保存的なアミノ酸置換、アミノ酸の挿入及び欠失、C末端および/またはN末端トランケーション等の任意の常套的な分子生物学的技術により修飾することができる。従って、本発明は、上記のGVP配列と機能的に等価なもの(配列番号2と約80%〜約100%同一な配列(即ち配列番号2と約80、85、90、95、96、97、98または99%同一である配列)を含む)を包含する。
【0094】
式I〜IVで示されるガンマセクレターゼ基質は、基質に対するガンマセクレターゼの活性を測定するアッセイにおいて用いることができる。いくつかのアッセイは、工程(a)ガンマセクレターゼ活性を可能にする条件下(例えば、細胞を試験化合物と接触させることにより、細胞がそのようなポリペプチドを発現し、ガンマセクレターゼを組換え的にまたは内因的に発現する)で、式I〜IVのポリペプチド配列をガンマセクレターゼと接触させる。あるいは、外因的なガンマセクレターゼ、例えば可溶性ガンマセクレターゼ、を細胞ベースのアッセイに加えても良い。一連のアッセイにおいて、式I〜IVのJMD部分は本明細書に記載したように交換することができる。例えば、式Iおよび式IIIを用いて、APP由来のTMDを含むキメラ基質においてNotch由来のJMDを用いることができる(またはその逆も可)。次いで、式II及び式IVを用いて、このキメラ基質のJMDの最後の4つの残基を修飾して異なる基質とすることができる。単一のアッセイフォーマットを用いて、種々の基質に対するガンマセクレターゼ活性の量を測定することができる。
【0095】
いくつかの方法は、キメラJMD基質配列が基質アミノ酸配列をコードするcDNAでトランスフェクトされた細胞において発現する細胞ベースのアッセイを含む。例えば、いくつかの方法は、化合物がガンマセクレターゼ活性を、第2のガンマセクレターゼ基質と比較して第1のガンマセクレターゼ基質について選択的に阻害するか否かを測定することを含んでなり:
(a)第1のトランスフェクトされたセルカルチャーをガンマセクレターゼ活性を可能にする条件下で種々の濃度の化合物と接触させること;
(b)第2のトランスフェクトされたセルカルチャーをガンマセクレターゼ活性を可能にする条件下で種々の濃度の化合物と接触させること;
(c)種々の化合物濃度のそれぞれについて第1及び第2のトランスフェクトされたセルカルチャーによりそれぞれ産生したAICDを測定して、第1のトランスフェクトされたセルカルチャーに対する化合物の効果の第1の用量応答曲線と第2のトランスフェクトされたセルカルチャーに対する化合物の効果の第1の用量応答曲線を作成すること;および
(d)第1と第2の用量応答曲線を比較すること
(ここで、第1のトランスフェクトされたセルカルチャーは、式I〜IVのいずれかの膜近傍ドメイン配列(JMD1)と膜貫通ドメイン配列(TMD1)を含んでなる第1のポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドでトランスフェクションし、JMD1は第1のガンマセクレターゼ基質に由来し、第2のトランスフェクトされたセルカルチャーは、膜近傍ドメイン配列(JMD2)と膜貫通ドメイン配列(TMD1)を含んでなる第2のポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチドでトランスフェクションし、JMD2は第2のガンマセクレターゼ基質に由来し、第1および第2のポリペプチドのTMD1は同じである)
ことを含んでなる。第1の用量応答曲線と比較して、第2の用量応答曲線が高濃度側へシフトしている場合(本明細書中の実施例参照)、その化合物が、第2のガンマセクレターゼ基質と比較して、第1のガンマセクレターゼ基質に対して選択的であることを示している。本明細書において一般的に用いられるように、任意の与えられた阻害剤化合物についての「用量応答曲線のシフト」は、試験したガンマセクレターゼ基質に応じて化合物のIC50値が増大または減少したことを意味している。基質1を発現する細胞1および基質2を発現する細胞2(等)についてのIC50値は、様々な容易に利用可能なコンピュータソフトウェアプログラム(例えば、GraphPad PRISM, MS Excel, SigmaPlot等)を使用しまたは使用することなく、当業者が阻害剤の用量応答曲線から計算することができる。
【0096】
いくつかの方法は、APP由来の配列を含んでなる第1のガンマセクレターゼ基質、およびAPLP2、Notch、erbB4、チロシナーゼ、p75 NTFR、SCNB2、n−カドヘリンまたはCD44に由来する配列を含んでなる第2のガンマセクレターゼ基質を含んでなる。他の方法は、APP由来の膜貫通ドメイン配列を含んでなる[TMD1]を含んでなる第1のガンマセクレターゼ基質を含んでなり;[JMD1]と[JMD2]配列は、APLP2、Notch、erbB4、チロシナーゼ、p75 NTFR、SCNB2、n−カドヘリンまたはCD44から選択される膜近傍ドメイン配列を含んでなり、[JMD1]と[JMD2]は同一ではない。
【0097】
ガンマセクレターゼは、当業者に知られている任意の標準的な技術(例えば、ガンマセクレターゼをコードするポリヌクレオチドによる細胞のトランスフェクション、エレクトロポレーション、またはバイラルベクターデリバリー)によってセルカルチャーに添加することができる。他の態様では、本方法は、第1の及び第2のセルカルチャーにより内因的に及び構成的に産生した活性なガンマセクレターゼを含んでなる。
【0098】
化合物が第2のガンマセクレターゼ基質と比較して第1のガンマセクレターゼ基質においてガンマセクレターゼ活性を選択的に阻害するか否かを決定する別の方法は、
(a)第1のトランスフェクトしたセルカルチャーと種々の濃度の化合物を、ガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(b)第2のトランスフェクトしたセルカルチャーと種々の濃度の化合物を、ガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(c)種々の化合物濃度でトランスフェクションした第1および第2のセルカルチャーのそれぞれによって産生したAICDを測定し、第1のトランスフェクションされたセルカルチャーに対する化合物の効果の第1の用量応答曲線と、第2のトランスフェクションされたセルカルチャーに対する化合物の効果の第2の用量応答曲線を作成すること;および
(d)第1と第2の用量応答曲線を比較すること
(ここで、
第1のトランスフェクトしたセルカルチャーは、式[JMD][TMD](式中、JMD及びTMDは第1のガンマセクレターゼ基質に由来する)を含んでなる第1のポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドでトランスフェクションされ、
第2のトランスフェクトしたセルカルチャーは、式II:
[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD]
(式中、[JMDΔC4]および[TMD]は本明細書において定義したとおりであり、X1−X2−X3−X4は第2のガンマセクレターゼ基質に由来する)
を含んでなるポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチドでトランスフェクションされ、第1の用量応答曲線と比較して、第2の用量応答曲線における高濃度側へのシフトは、その化合物が、第2のガンマセクレターゼ基質と比較して、第1のガンマセクレターゼ基質に対して選択的であることを示す)
を含んでなる。
【0099】
いくつかの方法において、第1のガンマセクレターゼ基質はAPP由来であり、第2のガンマセクレターゼ基質はAPLP2、Notch、erbB4、チロシナーゼ、p75 NTFR、SCNB2、n−カドヘリンまたはCD44に由来する。
【0100】
化合物が、第2のガンマセクレターゼ基質と比較して、第1のガンマセクレターゼ基質についてガンマセクレターゼ活性を選択的に阻害するか否かを決定するためのいくつかの方法は、
(a)第1のトランスフェクトしたセルカルチャーと種々の濃度の化合物を、ガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(b)第2のトランスフェクトしたセルカルチャーと種々の濃度の化合物を、ガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(c)種々の化合物濃度でトランスフェクションした第1および第2のセルカルチャーのそれぞれによって産生したAICDを測定し、第1のトランスフェクションされたセルカルチャーに対する化合物の効果の第1の用量応答曲線と、第2のトランスフェクションされたセルカルチャーに対する化合物の効果の第2の用量応答曲線を作成すること;および
(d)第1と第2の用量応答曲線を比較すること
(ここで、
第1のトランスフェクトしたセルカルチャーは、式II:
[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD]
(式中、[JMDΔC4]および[TMD]は式IIについて上記で定義したとおりであり、X1−X2−X3−X4は任意のアミノ酸から独立に選択される)を含んでなる第1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドでトランスフェクションされ、
第2のトランスフェクトしたセルカルチャーは、式II:
[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD]
(式中、[TMD]および[JMDΔC4]は上記で定義したとおりであり、X1−X2−X3−X4は任意のアミノ酸から独立に選択される)を含んでなる第2のポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチドでトランスフェクションされ、
第1の用量応答曲線と比較して、第2の用量応答曲線における高濃度側へのシフトは、その化合物が、第2のガンマセクレターゼ基質と比較して、第1のガンマセクレターゼ基質に対して選択的であることを示す)
を含んでなる。
【0101】
特定の態様において、X1はS、T、G、P、Q、R、V、L、N、P、A、K、E、I、F、H、WおよびDから選択され;X2は任意のアミノ酸であり;X3はS、N、D、P、E、R、T、F、I、K、L、V、G、W、HおよびAから選択され;X4は任意のアミノ酸である。
【0102】
特定の態様では、X1はS、T、G、P、Q、R、V、L、N、P、A、K、E、I、F、H、WおよびDから選択され;X3はS、N、D、P、E、R、T、F、I、K、L、V、G、W、HおよびAから選択され;X2およびX4はL、I、H、E、V、A、S、T、D、N、P、K、QおよびRから選択される。
【0103】
特定の態様では、X1はS、T、G、P、Q、RおよびDから選択され;X2は任意のアミノ酸であり;X3はS、N、D、PおよびAから選択され;X4は任意のアミノ酸である。
【0104】
この態様の一態様では、第1のポリペプチドのX1−X2−X3−X4は第1のガンマセクレターゼ基質に由来し、第2のポリペプチドのX1−X2−X3−X4は第2のガンマセクレターゼ基質に由来する。
【0105】
そのような方法のいくつかにおいて、第1および第2のポリペプチドのX1−X2−X3−X4は、独立してGLNK、SLSS、GSNK、GSNS、PPAQ、SSNK、GSSK、QHAR、QASR、TTDN、RDST、DVDR、QIPEまたはDRSRから選択され、同じ配列ではない。いくつかの方法において、第1および第2のポリペプチドの[TMD]は、配列番号13を含んでなる。いくつかの方法において、第1および第2のポリペプチドの[JMDΔC4]は、配列番号3〜12のいずれかから独立に選択することができる。
【0106】
他のそのような方法において、[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD]は、以下からなる群:
(a)(C99GVP−APLP2):LEDAEFRHDS GLEEERESVG PLREDFSLSS GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号16);
(b)(C99GVP−NOTCH1):LEDAEFRHDS GPYKIEAVQS ETVEPPPPAQ GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号17);
(c)(C99GVP−SREBP1):LEDAEFRHDS GAKPEQRPSL HSRGMLDRSR GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号18);
(d)(C99APPΔ4−APLP2):LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVSLSS GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号42);
(e)(C99−APP−(G25S):LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVSSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号43)
(f)C99−APP−(S26L):LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVGLNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号44)
(g)C99−APP−(N27S):LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVGSSK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号45)
(h)C99−APP−(K28S):LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVGSNS GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号46)
(i)(C99APPΔ4−NOTCH1):LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVPPAQ GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号100);
(j)(C99APPΔ4−SREBP1):LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVDRSR GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号101);
(k)(C99GVP−APLP2−gsnk):LEDAEFRHDS GLEEERESVG PLREDFGSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号19);
(l)(C99GVP−NOTCH1−gsnk):LEDAEFRHDS GPYKIEAVQS ETVEPPGSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号20);および
(m)(C99GVP−SREBP1−gsnk):LEDAEFRHDS GAKPEQRPSL HSRGMLGSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML(配列番号21)
から選択される。
【0107】
同様のアッセイを用いて、ガンマセクレターゼの活性に対する種々の候補ガンマセクレターゼ阻害剤化合物の効果を種々のガンマセクレターゼ基質について決定することができる。これらのアッセイは、(a)式IIIおよびIVのポリペプチド配列をガンマセクレターゼおよびガンマセクレターゼ阻害剤とガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;および(b)ポリペプチドのガンマセクレターゼ基質開裂の阻害に関する化合物の効力を工程(a)で生じたAGBPまたはAGBPを測定することによって決定することを含む。これらのアッセイを用いて、式IIIおよび式IVのガンマまたはイプシロン開裂部位のいずれかでのガンマセクレターゼ活性を阻害するそれらの能力について化合物をスクリーニングすることができる。
【0108】
種々のガンマセクレターゼ阻害剤の効力を測定するために、天然の基質に対するガンマセクレターゼの開裂を阻害する能力を、式I〜IVの一以上の開裂を阻害する化合物の能力と比較することができる。このアッセイは、天然に存在するガンマセクレターゼ基質、天然に存在する基質に由来するその天然に存在するJMDおよびTMDを有するそのフラグメントを、ガンマセクレターゼおよび候補ガンマセクレターゼ阻害剤化合物と、ガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;および次いで接触工程によって生じたICDの料を測定することによってガンマセクレターゼ配列開裂の阻害に関する化合物の効力を決定すること、を含む。天然に存在するガンマセクレターゼ基質またはそのフラグメントは、ガンマセクレターゼ基質がそこで開裂する両方の部位(γおよびε)および場合により他の開裂部位を含んでなる。
【0109】
いくつかの方法は、式I〜IVのポリペプチドのガンマおよびイプシロン開裂の阻害に関する化合物の効力を比較することによって、候補ガンマセクレターゼ阻害剤化合物の選択性を同定および/または決定することを含む。他の方法は、本発明のポリペプチドおよび天然に存在する配列またはそのフラグメントにおけるICDを産生するガンマセクレターゼ開裂の阻害に関する化合物の効力を比較することによって、特定のガンマセクレターゼ基質についての候補ガンマセクレターゼ阻害剤化合物の選択性を同定および/または決定することを含む。上記のとおり、天然に存在する配列またはそのフラグメントは、ガンマセクレターゼが基質配列を開裂するガンマおよびイプシロン部位の両方を含んでなる。
【0110】
本発明の方法およびアッセイは、他のガンマ基質(Notch等)と比較してAPPに選択的なガンマセクレターゼ阻害剤の同定に有用である。本発明の方法及びアッセイは約0.01pM〜100μM、0.01nM〜10μM、0.01nM〜1μM、0.05nM〜100nM、0.07nM〜10nM、0.09nM〜1nM、0.1nM〜0.5nMの範囲のIC50値を有するガンマ阻害剤を同定するために用いることができる。候補化合物は、第1のガンマセクレターゼ基質からのICD産生の候補化合物による阻害効力の差が、第2のガンマセクレターゼ基質に由来するICD産生と比較して少なくとも約10倍の差がある場合に選択的であると言える。ガンマセクレターゼの好ましい阻害剤は、APP由来のガンマセクレターゼ基質を少なくとも約0.05nM以下のIC50で阻害し、APP由来のそのような基質をNotch由来のガンマセクレターゼ基質の阻害についてのIC50と比較して少なくとも10分の1未満のIC50で阻害する化合物を包含する。即ち、好ましい阻害剤は、APPに対する阻害活性が少なくとも約0.05nM以下のIC50であり、NotchのIC50が少なくとも0.5nM以上である化合物を包含する。
【0111】
いくつかの方法は、(a)式I〜IVのポリペプチド、および別途、天然に存在するガンマセクレターゼ基質配列(例えば同じガンマセクレターゼ基質に由来するJMD及びTMDを含むポリペプチド);(b)(a)のポリペプチドとガンマセクレターゼ阻害に対して選択的な候補化合物をガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;(c)工程(b)での接触により生じたICDの量を測定すること;および(d)候補化合物の選択性を決定すること(ここで、候補化合物は、配列番号1のポリペプチドについての工程(c)のICD産生の阻害の効力が、天然に存在するガンマセクレターゼ基質配列から測定されたICDのレベルから増大または減少しているとき選択的であると決定される)を含んでなる。いくつかの方法では、天然に存在するガンマセクレターゼ基質配列はAPP由来のJMDおよびTMDを含んでなる。
【0112】
一般に、測定工程(c)は、ガンマセクレターゼによって産生したICDの量を検出するのに効果的である任意の方法を用いることができる。例えば、レポーター遺伝子をGVP配列により活性化し、ガンマセクレターゼ開裂によって生じたICDの量をモニターすることができる。このアッセイでは、通常ICDとベータペプチドの両方を検出するための特異的な結合物質を用いることができる。この態様では、測定工程(c)は、ICDをICDに対する選択的な結合物質と接触させることを含んでなる。いくつかの方法では、測定工程(c)はICDを、ICDの2つの異なるエピトープに対する特異的な2つの結合物質(例えば、サンドウィッチELISAアッセイに用いられる2つの抗体)と接触させることを含んでなる。測定工程(c)は、レポーター分子および/またはレポーター遺伝子(例えばルシフェラーゼレポーターシステム)を含んでなることができる。
【0113】
ICDフラグメントは、例えば、APP、Notch1、APLP2、erbB4、チロシナーゼ、p75 NTFR、SCNB2、n−カドヘリン、CD44等の任意のγ−セクレターゼ基質、ならびに少なくとも1つのガンマセクレターゼ開裂部位をその膜貫通領域内に有する任意の他の膜貫通タンパク質に由来する。
【0114】
いくつかの方法において、特異的な結合物質は、ICDに対する抗体(例えば、APP−ICD(AICD)またはNotch−ICD(NICD)に特異的に結合するモノクローナル抗体)を含む。ICDまたはそのフラグメントに対して抗体を生じさせ、このアッセイについて用いることができる。抗原性ペプチドに対するいくつかのポリクローナルAICDネオエピトープ抗体(ポリクローナル#66104)が記載されている(Kimberly, W.T., et al., Biochemistry; (2003); 42(1):137-144)。AICDに特異的に結合するモノクローナルまたはポリクローナル抗体を作成するための抗原性ペプチドは、アミノ酸配列VMLKKKC (配列番号39)を有する。この特定の配列は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体(例えば、本明細書に記載のモノクローナル抗体22B11)の両方を生じさせるのに用いることができる。従って、本発明は、アミノ酸配列VMLKKKC (配列番号39)に対して生じ特異的に結合するモノクローナル抗体を含む、抗体(例えば22B11抗体)を提供する。いくつかの方法において、特異的な結合物質は、配列番号39のアミノ酸配列に対して生じ特異的に結合する抗体(例えば22B11抗体)を含んでなる。
【0115】
本方法は、同定または同定されていないガンマセクレターゼ阻害剤化合物の効力、活性、特異性および選択性の測定に有用である。本方法は、基質における構造決定因子が、阻害活性および/または選択性に関与しているか否かを決定するのに有用である。同様に、本方法は、決定するのに有用である。ある特定の阻害剤が、特定のガンマセクレターゼ開裂部位の阻害(例えば、γまたはε、S2またはS3等)を介して主として作用するか否かを決定するのに有用である。本方法はまた、JMDがある特定のガンマセクレターゼ阻害剤についての効力および選択性の付与に関与するか否かを決定するのにも有用である。
【0116】
従って、本発明はさらに、ガンマセクレターゼによるガンマセクレターゼ基質の開裂を阻害するためのガンマセクレターゼ阻害剤の効力を測定するための方法を提供し、該方法は:
(a)式I〜IVのポリペプチドをガンマセクレターゼおよびガンマセクレターゼ阻害剤とガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;および(b)ガンマセクレターゼ活性の量を測定すること、を含んでなる。例えば、本発明は、化合物が、γ−セクレターゼを部位特異的にまたは基質特異的に阻害するか否かを決定するための方法であって:(a)式I〜IVのポリペプチド配列を提供すること;(b)別途、天然に存在するγ−セクレターゼ基質または単一の天然に存在する基質に由来する天然に存在するTMD及びJMDを含むその断片に由来するポリペプチドを提供すること;(c)(a)と(b)のポリペプチドを化合物とガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;(d)それぞれのポリペプチドについて(c)の接触工程で得られたガンマセクレターゼ活性の量を測定すること;及び(e)工程(d)で得られた結果を比較し、その化合物が、天然に存在するガンマセクレターゼ基質と比較して、式I〜IVのポリペプチドのε−部位でのガンマセクレターゼに対する増大または減少した阻害効力を有するとき、その化合物がガンマセクレターゼを部位特異的または基質特異的に阻害していると決定すること、
を含んでなる。
【0117】
いくつかの方法において、式I〜IVのポリペプチドからの2つの部位のいずれかにおいて開裂産物の阻害に関する効力が、その化合物の存在下で同じ基質の他の2つの部位と比較して一桁増大または減少する場合、その化合物はガンマセクレターゼの部位特異的阻害剤である。他の方法において、その化合物の存在下で式I〜IVのポリペプチドに由来する同じ部位(例えば、γ−および/またはε−部位)の阻害の効力が、2つの異なる基質(JMD1が基質1に由来し、JMD2が基質2に由来するような)と比較したときに一桁以上増大または減少している場合、その化合物は、ガンマセクレターゼの基質特異的阻害剤である。
【0118】
本発明は、ガンマセクレターゼ基質に対するガンマセクレターゼの活性を調節するための方法であって、ガンマセクレターゼ基質の膜貫通領域のすぐ隣の4つのアミノ酸残基で、ガンマセクレターゼ基質のアミノ酸配列に修飾を導入することを含んでなる。ガンマセクレターゼ基質配列について上記したように、ある特定の4つのC末端アミノ酸(X1〜X4)は、ガンマセクレターゼが特定の基質配列に対して有する特異性の決定において大きな役割を担いうる。即ち、当分野で既知の常套技術を用いて、これら特定の配列に対して最適のアミノ酸を同定することができる一連の突然変異導入実験を設計することができる(例えば、X2及びX4)。従って、特定のネイティブなJMDを選択し、X2およびX4に対応するものを除きすべての残基がネイティブのままであり、X2及びX4が20個の天然に存在するアミノ酸を用いて変更されている、一連のアミノ酸変異体を作製することができる。ガンマセクレターゼ活性を測定するアッセイは、生じた突然変異配列を、ガンマセクレターゼ活性において最も大きい変化を示すものについてスクリーニングするのに用いることができる。修正は、G、N、T、S、V、H、K、L、I、P、A、Q、D、EおよびRからなる群から選択される4つのアミノ酸による4つのアミノ酸残基の置換を含んでなるものであってよい。修飾は、配列GSNK、SLSS、PPAQ、DRSR、QHAR、QASR、TTDN、RDST、DVDRおよびQIPEから選択される配列による4つのアミノ酸残基の置換を含んでなるものであってよい。
【0119】
さらに、ガンマセクレターゼ基質におけるガンマおよび/またはイプシロン開裂部位でガンマセクレターゼ活性を調節する方法であって、ガンマセクレターゼ基質の膜近傍領域のアミノ酸配列に、
(a)GSNK(ガンマセクレターゼ基質がAPPでないとき);SLSS(ガンマセクレターゼ基質がAPLP2でないとき)、PPAQ(ガンマセクレターゼ基質がNotch1でないとき)、QHAR(ガンマセクレターゼ基質がerbB4でないとき)、QASR(ガンマセクレターゼ基質がチロシナーゼでないとき)、TTDN(ガンマセクレターゼ基質がp75 NTFRでないとき)、RDST(ガンマセクレターゼ基質がSCNB2でないとき)、DVDR(ガンマセクレターゼ基質がn−カドヘリンでないとき)およびQIPE(ガンマセクレターゼ基質がCD44でないとき)を含んでなるアミノ酸配列の挿入;および
(b)膜貫通領域のN末端のすぐ隣の4つのアミノ酸の、GSNK、SLSS、PPAQ、QHAR、QASR、TTDN、RDST、DVDR、QIPEおよびDRSRからなる群から選択される配列による置換(但し、ガンマセクレターゼ基質がAPPであるときGNSKは選択されない、ガンマセクレターゼ基質がAPLP2であるときSLSSは選択されない、ガンマセクレターゼ基質がNotch1であるときPPAQは選択されない、ガンマセクレターゼ基質がerbB4であるときQHARは選択されない、ガンマセクレターゼ基質がチロシナーゼであるときQASRは選択されない、ガンマセクレターゼ基質がp75 NTFRであるときTTDNは選択されない、ガンマセクレターゼ基質がSCNB2であるときRDSTは選択されない、ガンマセクレターゼ基質がn−カドヘリンであるときDVDRは選択されない、およびガンマセクレターゼ基質がCD44であるときQIPEは選択されない)
から選択される修飾を導入することを含んでなる方法が提供される。
【0120】
さらに、ガンマセクレターゼ基質に対する、ガンマセクレターゼ特異性を調節する方法であって、ガンマセクレターゼ基質の膜近傍領域のアミノ酸配列に、
(a)GSNKを含んでなるアミノ酸配列の挿入(ガンマセクレターゼ基質がAPPでないとき);SLSS(ガンマセクレターゼ基質がAPLP2でないとき)、PPAQ(ガンマセクレターゼ基質がNotch1でないとき)を含んでなるアミノ酸配列の挿入;及び
(b)膜貫通領域のN末端のすぐ隣の4つのアミノ酸の、GSNK、SLSS、PPAQ、QHAR、QASR、TTDN、RDST、DVDR、QIPEおよびDRSRからなる群から選択される配列による置換(但し、ガンマセクレターゼ基質がAPPであるときGNSKは選択されない、ガンマセクレターゼ基質がAPLP2であるときSLSSは選択されない、ガンマセクレターゼ基質がNotch1であるときPPAQは選択されない、ガンマセクレターゼ基質がerbB4であるときQHARは選択されない、ガンマセクレターゼ基質がチロシナーゼであるときQASRは選択されない、ガンマセクレターゼ基質がp75 NTFRであるときTTDNは選択されない、ガンマセクレターゼ基質がSCNB2であるときRDSTは選択されない、ガンマセクレターゼ基質がn−カドヘリンであるときDVDRは選択されない、およびガンマセクレターゼ基質がCD44であるときQIPEは選択されない)
から選択される修飾を導入することを含んでなる方法が提供される。
【0121】
基質が式IIまたはIVのいずれかで示される場合、X2およびX4の残基のみを修飾される一方、残基X1およびX3は天然に存在するJMD配列に由来するものである(例えば、これに限定されないが、配列番号44および46に開示されるもの)。
【0122】
さらに、ガンマセクレターゼ基質に対するガンマセクレターゼ阻害剤の選択性を推定する方法であって、ガンマセクレターゼのアミノ酸配列を分析すること;JMD領域におけるガンマセクレターゼ基質のアミノ酸配列を他のガンマセクレターゼ基質のアミノ酸配列と比較すること;およびガンマセクレターゼ基質に対するガンマセクレターゼ阻害剤の選択性が、それが他のガンマセクレターゼ基質と共通する配列相同性または同一性の程度における変化によってどの程度影響を受けるかを決定すること、を含んでなる方法を提供する。
【0123】
さらに、式I〜IVのいずれかのポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチドレオチド配列(例えば、配列番号1〜51および91〜101のいずれかを含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列)を提供する。
【0124】
本発明は、式I〜IVのいずれかのポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列を含んでなる、ベクター、組換え細胞、およびトランスジェニック非ヒト動物、または組換え天然型ガンマセクレターゼ基質またはそのフラグメント(例えば、配列番号1、3〜12、15〜36、42〜51、94〜101のポリペプチド配列を含んでなる、組換え細胞およびトランスジェニック非ヒト動物)を提供する。
【0125】
ポリペプチドのアミノ酸配列が決まっていれば、当業者は、ポリヌクレオチド配列を作製し、周知の遺伝子コードと種々の生物及び発現系にとって最適化されたコドンを用いて、種々のタイプの細胞における発現と発現系について、そのような配列を最適化することが可能である。
【0126】
化合物、組成物及び処置方法
他の態様では、本発明は、基質または部位特異的にガンマセクレターゼを阻害する化合物、そのような化合物を含有する医薬組成物、そのような化合物を用いるアルツハイマー病の処置方法、およびそのような化合物を用いるガンマセクレターゼの阻害方法を提供する。
【0127】
即ち、本発明は、ガンマセクレターゼを部位特異的に阻害する化合物を提供する。本発明のいくつかの化合物は、ガンマセクレターゼ基質のガンマ開裂部位でのガンマセクレターゼ活性を優先的に阻害する。本発明のいくつかの化合物は、ガンマセクレターゼ基質のイプシロン開裂部位でのガンマセクレターゼ活性を優先的に阻害する。
【0128】
ガンマセクレターゼ基質のガンマまたはイプシロン開裂部位のいずれかでのガンマセクレターゼ活性を阻害する化合物は、
(a)式I〜IVのポリペプチド配列を提供すること;(b)別途、天然に存在するガンマセクレターゼ基質に由来するポリペプチド配列を提供すること;(c)(a)と(b)のポリペプチドをガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で化合物と接触させること;(d)それぞれのポリペプチドについて(c)の接触工程で得られたガンマおよびイプシロン開裂部位でのガンマセクレターゼ活性の量を測定すること;(e)(b)の接触工程で得られたガンマおよびイプシロン開裂部位でのガンマセクレターゼ活性の量を測定すること;および(f)工程(d)および(b)で得られた結果を比較し、その化合物が、ガンマセクレターゼを部位特異的または基質特異的に阻害していることを決定すること、
による本発明のアッセイ方法によって同定される。
【0129】
ガンマ開裂部位の化合物阻害活性について計算されたEC50値が、同じ基質内の、または他の数多く鋸となるガンマセクレターゼ基質の、イプシロン開裂部位での化合物阻害活性について計算されたEC50よりも小さいとき、化合物はガンマセクレターゼ基質のガンマ開裂部位でガンマセクレターゼ活性を選択的に阻害する。与えられた部位(例えば、その基質(またはその基質のJMDを含んでなる配列)のイプシロン開裂部位)での化合物阻害活性について計算されたEC50値が、数多くの異なるガンマセクレターゼ基質(同じJMD配列を含まない)の同等の部位(例えばイプシロン開裂部位)での化合物阻害活性について計算されたEC50値よりも小さい場合、化合物はガンマセクレターゼの基質特異的な阻害剤である。いくつかの化合物はスルホンアミド官能基を含んでなる。
【0130】
さらに、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、Notch、アミロイド前駆体タンパク質様タンパク質(APLP2)、チロシナーゼ、CD44、erbB4、p75 NTFR、n−カドヘリンおよびSCNB2から選択される第1のガンマセクレターゼ基質の開裂を、APP、Notch、APLP2、SREBP1、チロシナーゼ、CD44、erbB4、p75 NTFR、n−カドヘリンおよびSCNB2から選択される少なくとも1つの異なるガンマセクレターゼ基質と比較して、選択的に阻害する、本明細書に記載の方法によって同定することができる化合物を提供する。いくつかの化合物は、Notch、APLP2、チロシナーゼ、CD44、erbB4、p75 NTFR、n−カドヘリンおよびSCNB2から選択される少なくとも1つのガンマセクレターゼ基質と比較してAPPの開裂を選択的に阻害する。いくつかの化合物は、NotchおよびAPLP2から選択される少なくとも1つのガンマセクレターゼ基質と比較してAPPの開裂を選択的に阻害する。
【0131】
本発明は、製薬的に許容し得る塩、ビークル、担体、希釈剤および/またはアジュバントと共に、上記の化合物を含んでなる組成物を提供する。
【0132】
化合物は、経口、非経口(IV、IM、デポ−IM、SQおよびデポSQ)、舌下、鼻内(吸入)、髄腔内、局所または直腸投与することができる。当業者に知られている投与形態は本発明の化合物のデリバリーに適している。
【0133】
治療上有効量の本発明化合物を含有する組成物を提供する。本化合物は、好ましくは、経口投与のための錠剤、カプセル、またはエリキシル、または非経口投与のための滅菌溶液または懸濁液等の適当な医薬調製物に製剤化する。典型的には、上記の化合物を当業者に周知の技術および手順を利用して医薬組成物に製剤化する。
【0134】
約1〜500mgの本発明の化合物または化合物の混合物をまたは生理学的に許容し得る塩またはエステルを、生理学的に許容し得るビークル、担体、賦形剤、結合剤、保存剤、安定化剤、香料等と調合して、薬務上許容されている単位投与形態とすることができる。これら組成物または調製物における活性成分の量は、表示した範囲の適切な用量が得られるような量である。組成物は単位投与形態に好ましく製剤化され、各用量に約2〜約100mg、より好ましくは10〜30mgの活性成分を含有する。「単位投与形態」は、ヒトの患者または他の動物のための統一された用量として適当な物理的に分離した単位を意味し、各単位は所望の治療効果をもたらすよう計算された、予め決められた量の活性成分を、適当な製薬的な賦形剤とともに含有する。
【0135】
組成物を調製するために、1以上の本発明化合物を適当な製薬的に許容し得る担体と混合する。化合物を混合または添加した後に得られる混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョン等であってよい。リポソーム懸濁液もまた、製薬的に許容し得る担体として適している。これらは、当業者に知られている方法にしたがって製造することができる。得られた混合物の形態は、意図する投与の形式、化合物の選択した担体またはビークルにおける溶解性を含む、数多くのファクターに依存する。有効な濃度は、その疾患、障害または処置される状態の少なくとも1つの症状を緩和または改善するのに十分な濃度であり、経験的に決定してもよい。
【0136】
本明細書に記載の化合物の投与に適した製薬的な担体またはビークルとしては、具体的な投与形式に適する当業者に知られている任意の担体が含まれる。さらに、活性物質は、所望の作用に害を及ぼさないまたは別の作用を有する他の活性物質と混合することができる。本化合物は単独の製薬的活性成分として組成物に製剤化してもよいし、あるいは他の活性成分と組み合わせても良い。
【0137】
化合物が有効な製剤にするに溶解性が不十分であるとき、可溶化の方法を用いることができる。そのような方法は知られており、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の共溶媒の使用やTween(登録商標)等の界面活性剤の使用、および炭酸水素ナトリウム水溶液中での溶解挙げられるがこれに限定されない。塩またはプロドラッグ等の化合物の誘導体もまた、有効な医薬組成物の製剤化に使用できる。
【0138】
化合物の濃度は、投与の際に、その化合物が投与される障害の少なくとも1つの症状を緩和または改善する量のデリバリーに有効である。典型的には、組成物は単一用量での投与用に製剤化する。
【0139】
本発明の化合物は、例えば持続放出型の製剤またはコーティングのように、身体からの急速な排出から保護する担体を用いて調製することができる。そのような担体としては、放出制御製剤が挙げられる(例えば、マイクロカプセル化デリバリーシステムが挙げられるがこれに限定されない)。活性化合物は、処置する患者に対する望ましくない副作用なしに治療上有用な効果を発揮するのに十分な量で、製薬的に許容し得る担体内に入れられる。治療上有効な濃度は、処置する障害に関する、公知のin vitroおよびin vivoモデル系で化合物を試験することにより実験的に決定してよい。
【0140】
本発明の化合物及び組成物は、複数または単一用量の容器内に包装することができる。包装された化合物及び組成物は、例えば使用時に組合せ可能なコンポーネントを含む、キットとして提供することができる。例えば凍結乾燥状態の阻害剤化合物と適当な希釈液を、使用前に混合するための別々のコンポーネントとして提供することができる。キットには、阻害剤化合物と同時投与のための第2の治療剤を含むことができる。本阻害剤および第2の治療剤は、別々のコンポーネントパーツとして提供してもよい。キットは、それぞれ1以上の単一用量の本発明化合物を入れている複数の容器を含んでいてもよい。この容器は、好ましくは所望の投与形式に適合させ、例えば、経口投与のための錠剤、ゲル、カプセル、徐放カプセル等、非経口投与用のデポー、充填済注射器、アンプル、バイアル等;及び局所投与用のパッチ、メディパッド(medipad)、クリーム等が挙げられるがこれに限定されない。
【0141】
医薬組成物中の活性化合物の濃度は、活性化合物の吸収、不活性化および排泄率、投与スケジュール、および投与量、ならびに当業者に知られている他の因子に依存する。
【0142】
活性成分は1回で投与してもよく、または少ない用量でいくつかに分割し間隔をおいて投与することもできる。正確な用量および処置の期間は、処置する疾患に応じて変化するものであり、試験プロトコルを用いてまたはin vivoまたはin vitroの試験データから推定することにより、実験的に決定することができると当業者は理解している。濃度および投与量の値は、軽減される状態の重篤度によっても変化し得る。また、具体的な患者についての投与レジメは、その人における必要性と、その組成物を投与するまたはその投与を監督する人の専門的判断にしたがって時間をかけて調整すべきであること、そして、本明細書に記載した濃度の範囲は、単に経験的なものであり本発明の組成物の範囲または実施の限定を意図するものではないと理解される。
【0143】
経口投与を所望する場合は、胃の酸性の環境から化合物を保護する組成物として提供すべきである。例えば、組成物を、胃で統合性を維持し腸内で活性化合物を放出する腸溶コーティングを用いて製剤化することができる。組成物はさらに、制酸剤または他のそのような成分と組み合わせて製剤化することもできる。
【0144】
経口組成物は一般に不活性な希釈剤または食用の担体を含有し、錠剤に圧種するかゼラチンカプセル内に入れることができる。経口での治療的投与を目的として、活性化合物を添加剤で取り込ませて錠剤、カプセルまたはトローチの形態で用いることができる。製薬的に適した結合剤及びアジュバント材料を組成物の一部として入れることができる。
【0145】
錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ等は、類似した性質の以下の成分が挙げられるがこれに限定されない任意のものを含有することができる:トラガカントガム、アカシア、コーススターチ、またはゼラチン等の結合剤;微晶性セルロース、デンプンまたはラクトース等の賦形剤;アルギン酸及びコーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;二酸化ケイ素コロイド等の滑剤(gildant);スクロースまたはサッカリン等の甘味料;およびペパーミント、サリチル酸メチルまたはフルーツフレイバー等の香料。
【0146】
単位投与形態がカプセルである場合、上記のタイプの材料に加えて、油脂等の液体の担体を含むことができる。さらに、単位投与形態は、単位投与形態の物理的な形態を修飾する、他の種々の材料を含むことができる(例えば、糖や他の腸溶剤のコーティング)。化合物はまた、エリキシル、懸濁剤、シロップ、ウェハー、チューイングガム等の一成分として投与することもできる。シロップには、活性成分に加え、甘味料としてスクロース、特定の保存料、染料および着色料、および香料を含有することができる。
【0147】
活性物質はさらに、所望の作用に害を及ぼさないまたは所望の作用を補う他の活性物質と混合することができる。
【0148】
非経口、経皮、舌下または局所適用に用いる液体または懸濁液は、以下の成分の任意のものを含有することができる:滅菌希釈剤(注射用水、生理食塩水、固定油、天然の植物油(ゴマ油、ココナツ油、ピーナッツ油等)、または合成脂質ビークル(オレイン酸エチル等)、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒等);抗微生物剤(ベンジルアルコールおよびメチルパラベン等);抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム等);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等);緩衝剤(酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩等);および浸透圧調節剤(塩化ナトリウムおよびデキストリン等)。非経口用調製物は、ガラス、プラスチックまたは他の適当な材料できた、アンプル、使い捨て注射器または複数用量のバイアルに入れることができる。緩衝剤、保存料、抗酸化剤等は必要に応じて入れることができる。
【0149】
静脈内注射の場合、適当な担体としては、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)およびグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびその混合物等の増粘剤や可溶化剤を含有する溶液が挙げられる。組織標的化したリポソームを含むリポソーム懸濁液もまた、製薬的に許容し得る担体として適している。これらは、例えば、米国特許第4,522,811に記載されているように、当分野で公知の方法にしたがって製造することができる。
【0150】
活性化合物は、例えば持続放出型の製剤またはコーティングのように、身体からの急速な排出から保護する担体を用いて調製することができる。そのような担体としては、放出制御製剤(例えば、インプラント、マイクロカプセル化デリバリーシステム、生分解性、生体適合性ポリマー(コラーゲン、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸等)が挙げられるがこれに限定されない)が挙げられる。そのような製剤の調製方法は当業者に知られている。
【0151】
本発明の化合物は経腸的にまたは非経口的に投与することができる。経口投与の場合、本発明の化合物を、当業者に知られている経口投与の通常の投与形態で投与することができる。これらの投与形態としては、錠剤及びカプセルの通常の固形単位投与形態ならびに液体の投与形態(溶液、懸濁液、およびエリキシル等)が挙げられる。固形の投与形態を用いる場合、投与が必要な本発明の化合物の投与が1日1回または2回ですむよう徐放性のタイプの形態になっているのが好ましい。
【0152】
経口投与形態を患者に1日に1、2、3または4回投与する。本発明の化合物を1日に3回以下、より好ましくは1日1回または2回投与するのが好ましい。従って、本発明の化合物は、経口投与形態で投与することが好ましい。どのような経口投与形態を用いるにしても、本発明の化合物を胃の酸性環境から保護するように設計することが好ましい。腸溶コーティングされた錠剤は当業者にはよく知られている。さらに、各々コーティングにより井酸から保護された小さな球を封入したカプセルもまた当業者にはよく知られている。
【0153】
上記のとおり、不斉炭素原子が存在するか否かによって、本発明の化合物は異性体の混合物、ラセミ体または純粋な異性体として存在し得る。
【0154】
化合物の塩は好ましくは製薬的に許容し得るものであるかまたは非毒性である。合成及び精製の目的上、製薬的には許容されない塩を使用することも可能である。
【0155】
本組成物は、当分野で知られているアルツハイマー病の処置に有効な更なる薬剤を含有し得る。
【0156】
また、本発明のアッセイ法により同定された化合物またはその塩の有効量を患者に投与することを含んでなる、そのような処置を必要とする患者における、アミロイドベータペプチドの蓄積に関連する疾患(例えば、アルツハイマー病または軽度認識障害)の処置および/または予防の方法を提供する。いくつかの方法は、アルツハイマー病の発症または進行の予防、遅延または遅らせるのに役立ち得る。いくつかの方法において、患者はアルツハイマー病と診断されている。好ましいそのような方法において、患者はヒトである。
【0157】
同様に、本発明は、本発明のアッセイ法により同定された化合物またはその塩の有効量を患者に投与することを含んでなる、そのような処置を必要とする患者におけるNotchシグナル伝達の活性化に関連する疾患(例えば、癌および自己免疫疾患等)の処置および/または予防の方法を提供する。いくつかの方法は、癌または自己免疫疾患の発症または進行の予防、遅延または遅らせるのに役立ち得る。いくつかの方法において、患者は癌または自己免疫疾患と診断されている。好ましいそのような方法において、患者はヒトである。
【0158】
本処置方法は、治療上有効量:経口投与では約0.1mg/日〜約1000mg/日;非経口投与、舌下、鼻内、鞘内投与では約0.5mg/日〜約100mg/日;デポー投与およびインプラントでは約0.5mg/日〜約50mg/日;局所投与では約0.5mg/日〜約200mg/日;直腸投与では約0.5mg/日〜約500mg/日を用いる。
【0159】
経口投与の治療上有効な量は、約1mg/日〜約100mg/日、好ましくはmg/日〜約50mg/日;であり非経口投与では約5mg/日〜約50mg/日であろう。
【0160】
本発明はさらに、特定の基質に対するガンマセクレターゼ活性または細胞内の基質の特定の開裂部位に対するガンマセクレターゼ活性を選択的に阻害する方法であって、細胞を、ガンマセクレターゼを選択的に阻害するのに有効な本発明のアッセイにより同定された化合物と接触させることを含んでなる、方法を提供する。いくつかの方法は、阻害するガンマセクレターゼ活性を、通常の活性と比較して約3〜5倍阻害する。さらに好ましくは、本方法は、通常の活性と比較して、ガンマセクレターゼ活性を約5倍〜10倍、さらに好ましくは約10倍〜約15倍、さらに好ましくは約15倍〜約20倍阻害する。さらにより好ましくは、本方法は、ガンマセクレターゼ活性を約20倍超阻害する。細胞は例えば、ヒト細胞等の哺乳類細胞であり得る。いくつかの方法では、細胞は単離された哺乳類細胞、好ましくは単離されたヒト細胞である。
【0161】
与えられたガンマセクレターゼ基質のガンマまたはイプシロン開裂部位のいずれかでガンマセクレターゼを選択的に阻害する方法は、この基質に対するガンマまたはイプシロン開裂部位のいずれかでのガンマセクレターゼの活性に関連する疾患または障害を有する患者を処置するのに用いることができる。いくつかの方法において、患者は、与えられたガンマセクレターゼ基質のガンマまたはイプシロン開裂部位のいずれか一方または他方でのガンマセクレターゼ活性に関連する疾患または障害の臨床的徴候を示している。いくつかの疾患または障害は、イプシロン開裂部位でのガンマセクレターゼ活性ではなく、ガンマ開裂部位でのガンマセクレターゼ活性に関連する。本方法において有用な化合物は本発明のアッセイにより、ガンマセクレターゼ基質のまたはガンマセクレターゼ基質のガンマセクレターゼ開裂部位の選択的な阻害剤として同定されるので、ガンマセクレターゼに関連する障害または疾患を処置する方法は、他のガンマセクレターゼ基質または他の開裂部位でのガンマセクレターゼ活性に有害な作用を及ぼすことなく処置することができる(例えば、Notchシグナル伝達、またはガンマセクレターゼ基質のイプシロン開裂部位での開裂)。
【0162】
本発明の方法及びアッセイは、細胞内のベータペプチド及びICDの量を決定することができる当分野で知られている任意のタイプのアッセイを用いることができる。一態様では、アッセイは任意のタイプの結合アッセイ、好ましくは免疫学的結合アッセイである。そのような免疫学的結合アッセイは当分野で周知である(Asai, ed., Methods in Cell Biology, Vol. 37, Antibodies in Cell Biology, Academic Press, Inc., New York (1993)参照)。免疫学的結合アッセイは、典型的に補足剤を用いて分析物標的抗原に特異的に結合させしばしば固定化させる。補足剤は分析物に特異的に結合する部分であってよい。補足剤は、Aβに特異的に結合する抗体またはそのフラグメント(例えば、Aβの40個のアミノ酸残基に存在するエピトープに特異的に結合する抗体またはそのフラグメント)であってよい。そのような抗体またはそのフラグメントのいくつかは、Aβの最初の23アミノ酸残基(即ちAβ1−23)に存在するエピトープに特異的に結合する。いくつかの抗体またはそのフラグメント(例えば、ガンマセクレターゼ基質から生じるICDペプチドのエピトープに特異的に結合する抗体またはそのフラグメント)はガンマセクレターゼ基質でガンマセクレターゼによる開裂により生じるフラグメントのエピトープに特異的に結合する。これら剤のいくつかは商業的に入手可能であり(APP C末端抗体 Sigma Aldrich Cat. #A8717)、そのような剤のいくつかは標準的な免疫原技術を用いて作製することができる(例えば、ハイブリドーマ、抗血清、ポリクローナル抗体産生)。
【0163】
免疫学的結合アッセイでは、補足剤と抗原によって形成された結合複合体の存在を示す標識剤がよく用いられる。標識剤は結合福男交代を含んでなる分子の1つであってよい;即ち複合体は特異的な結合剤または標識された抗特異的結合剤抗体で標識することができる。あるいは、標識剤は、複合体に結合する第3の分子、一般には別の抗体、であってよい。標識剤は、例えば、標識を有する抗特異的結合剤抗体であってよい。結合複合体に特異的な第2の抗体は標識を欠いていても良いが、その第2の抗体がそのメンバーである抗体の種に特異的な第4の分子によって結合させることができる。例えば、第2の抗体はビオチン等の検出可能な部分で修飾した後、酵素標識ストレプトアビジン等の第4の分子で結合することができる。プロテインAまたはプロテインG等の、免疫グロブリン定常領域に特異的に結合することが可能な他のタンパク質もまた標識剤として使用することができる。これらの結合タンパク質は、連鎖球菌の細胞壁の通常の抗生物質であり、様々な種に由来する免疫グロブリン定常領域と強力な非免疫原性の反応性を示す(一般に、Akerstrom, J Immunol, 135:2589-2542 (1985); and Chaubert, Mod Pathol, 10:585-591 (1997)を参照)。標識剤は、Aβの最初の23アミノ酸残基(Aβ1−23)に特異的に結合する抗体またはその断片を含んでなることができる。いくつかのそのような抗体またはその断片はAβの最初の7アミノ酸残基(即ちAβ1−7)に存在するエピトープに特異的に結合し、そのような抗体またはその断片のいくつかはAβの最初の5アミノ酸(即ちAβ1−5)に存在するエピトープに特異的に結合する。
【0164】
アッセイにおいて、インキュベーションおよび/または洗浄工程は、試薬の混合後にそれぞれ必要であるかもしれない。インキュベーション工程は約5秒〜数時間であり、好ましくは約5分〜約24時間である。しかしながら、インキュベーション時間はアッセイの形式、分析物、溶液の体積、濃度等に依存する。アッセイは、ある温度範囲で行うことができるが、通常は室温でアッセイを行う。
【0165】
部位特異的または基質特異的なガンマセクレターゼ介在の開裂の阻害を示すアッセイは、ガンマセクレターゼ基質の任意の既知の形態(数多くのAPP形態を含む)を用いることができ、非限定的例として、695アミノ酸の「ノーマルな」アイソタイプ(Kang et al., 1987, Nature 325:733-6に記載)、770アミノ酸のアイソタイプ(Kitaguchi et. al., 1981, Nature 331:530-532に記載)、および種々の変異体(スウェーデン変異(KM670-1NL) (APPswe)、ロンドン変異(V7176F)等)が挙げられる。既知の変異体としては、例えば、米国特許第5766846、さらにHardy, 1992, Nature Genet. 1:233-234を参照。さらなる有用な基質は、2塩基アミノ酸変異、例えばWO00/17369に開示のAPP−KK、APP−KKのフラグメントおよびガンマセクレターゼ開裂部位を含有する合成ペプチド、野生型(WT)または変異体(例えばAPPswe)(米国特許第5,441,870号、同第5,605,811号、同第 5,721,130号、同第6,018,024号、同第5,604,102号、同第5,612,486号、同第5,850,003号および、同第6,245,964号に記載)が挙げられる。
【0166】
免疫学的結合アッセイは、非競合的タイプのアッセイであってよい。これらのアッセイは、補足した分析物の量を直接測定する。例えば、1つの好ましい「サンドウィッチ」アッセイでは、それが固定化される固体の基質に補足剤(抗体)を直接結合させることができる。これらの固定化された抗体は、次いで、試験サンプル中に存在する抗体を捕捉(に結合)する。このように捕捉されたタンパク質を次いで標識剤(標識を有する第2の抗体等)に結合させる。別の企図する「サンドウィッチ」アッセイでは、第2の抗体は標識を欠いているが、その第2の抗体が由来する種の抗体に特異的な標識抗体によって結合することができる。第2の抗体はまた、ストレプトアビジン等の第3の標識された分子が特異的に結合することができる、ビオチン等の検出可能な部分で修飾されていてもよい(本明細書の一部を構成する、Harlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Ch 14, Cold Spring Harbor Laboratory, NY (1988)参照)。
【0167】
免疫学的な結合アッセイは競合的タイプのアッセイであってよい。サンプルに存在する分析物の量を、サンプルに存在する分析物によって捕捉剤から置換または競合により離れた添加分析物の量を測定することにより直接測定する。1つの好ましい競合結合アッセイにおいて、既知量の分析物(通常、標識された)をサンプルに加えた後、サンプルを抗体(捕捉剤)と接触させる。抗体に結合した標識された分析物の量は、サンプルに存在する分析物の濃度に反比例する(前掲のHarlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Ch 14, pp. 579-583参照)。
【0168】
別の企図する競合結合アッセイでは、抗体を固体の基質に固定化する。抗体に結合させるタンパク質の量は、タンパク質/抗体複合体に存在するタンパク質の量を測定するか、または残存する複合体を形成しなかったタンパク質の量を測定することにより決定することができる。タンパク質の量は、標識したタンパク質を提供することにより検出することができる(前掲のHarlow and Lane, Antibodies, A Laboratory Manual, Ch 14参照)。
【0169】
さらなる企図する競合結合アッセイでは、ハプテン阻害を用いる。ここで、既知の分析物は固体の基質に固定化する。既知量の抗体をサンプルに加え、サンプルを固定化された抗体と接触させる。固定化された分析物に結合した抗体の量はサンプルに存在する分析物の量に反比例する。固定化された抗体の量は、抗体の固定化されたフラクションまたは溶液中に残っているフラクションのいずれかを検出することによって検出することができる。検出は、その抗体が標識される場所に対するものか、上記の抗体に特異的に結合する標識部分を次いで添加することによる間接的なものである。
【0170】
本競合結合アッセイは、本発明の特異的な結合剤によって認識されるタンパク質または酵素複合体が所望のタンパク質であり交差反応する分子でないこと、または抗体が抗原に特異的であって関連しない抗原に結合しないものであるかどうかを、当業者が決定できる交差反応性の決定に用いることができる。このタイプのアッセイでは、抗原を固体の支持体に固定化し、未知のタンパク質混合物を、特異的な結合剤が固定化されたタンパク質と競合するアッセイに添加する。競合する分子はまた、その抗原と無関係な1以上の抗原に結合する。固定化された抗原に対する特異的な結合剤抗体の結合と競合するタンパク質の能力は、固体の支持体に固定化された同じタンパク質による結合と比較し、タンパク質混合物の交差反応性を決定する。
【0171】
ベータおよびICDペプチドを検出するための、ベータ−およびICD−特異的抗体の使用を必要としない他の非免疫学的技術も利用することができる。例えば、2次元のゲル電気泳動を用いて、サンプル流体中に存在する密接に関連した可溶性タンパク質を分離することができる。ベータおよび/またはICDポリペプチド(例えばAβ)の多くのフラグメントと交差反応する抗体を用い、ゲルでの正確な位置に基づいて同定される特定のペプチドの存在についてゲルをプローブすることができる。培養細胞の場合、細胞のタンパク質を代謝的に標識し、場合により最初の分離工程として免疫沈降を用い、SDS−ポリアミドゲル電気泳動により分離することができる。
【0172】
本発明はさらに、サンプル中のAβおよび/またはICDの存在を検出または定量するためのウェスタンブロット法を提供する。この方法は、通常、サンプルタンパク質を分子量および、ニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルター、または誘導体化したナイロンフィルター等の適当な固体の支持体へのタンパク質の輸送に基づいてゲル電気泳動により分離することを含んでなる。サンプルを、Aβおよび/またはICDと特異的に結合する抗体またはそのフラグメントとインキュベーションし、生じた複合体を検出する。これらの抗体は直接標識化するか、あるいはその抗体と特異的に結合する標識抗体を用いて検出することができる。
【0173】
結合試薬
本発明の方法は、ベータペプチドに対する特異的な結合剤(例えばAベータに対する抗体等)を含んでなる。本方法がAβに対する少なくとも2つの抗体を含んでなる場合、好ましくは、一方の抗体は「捕捉」分子として、他方の抗体は検出または「標識」分子として作用する。ある特定の態様では、捕捉抗体はAβのエピトープを認識することができ、例えば補足抗体は、好ましくは、アミノ酸1−28内のエピトープを認識する。
【0174】
APP開裂の生成物の特性は、例えば、Pirttila et al., 1999, Neuro. Lett. 249:21-4, and in U.S. Patent No. 5,612,486に記載されるような種々の抗体を用いるイムノアッセイにより測定することができる。Aβを検出するのに有用な抗体としては、例えば、Aβペプチドのアミノ酸1−16のエピトープを特異的に認識するモノクローナル抗体6E10、それぞれヒトAβ1−40及び1−42に特異的である抗体162および164(New York State Institute for Basic Research, Staten Island, NY);および米国特許第5593846号に記載されているような、ベータアミロイドペプチドの連結領域、残基16と17の間の部位を認識する抗体が挙げられる。APPの残基591〜596の合成ペプチドに対する抗体およびスウェーデン変異の残基590〜596に対して生じたSW192抗体もまた、APPおよびその開裂産物のイムノアッセイにおいて有用である(米国特許第5604102号および同第5721130号に記載されているように)。
従って、Aβ、ICD、TMDおよびC末端領域等のガンマセクレターゼ基質の領域に特異的な抗体は、(APPに関して)アミノ酸4〜7(Aβ)、アミノ酸残基13〜28からなる連結領域、アミノ酸33〜40(Aβ40に特異的)、アミノ酸30〜42(Aβ42に特異的)、アミノ酸50〜55(AICD N末端)およびAPPのC末端部分等の所望の標的エピトープを含んでなる適当な抗原またはハプテンに対して製造することができる。便宜上、合成ペプチドは、適当な免疫原と組み合わせた慣用の固相法により製造することができ、慣用の方法により抗血清またはモノクローナル抗体の製造に用いることができる。適当なペプチドハプテンは、通常、Aβ内に少なくとも5つの連結した残基を含んでなり、6以上の残基を含んでいてもよい。
【0175】
合成ポリペプチドハプテンは、アミノ酸が伸張鎖に順次付加される、周知のMerrifield固相合成法により製造することができる(Merrifield, J. Am. Chem. Soc., (1963); 85:2149-2156)。アミノ酸配列は、当分野で知られているおよび/または本明細書で具体的に記載されているICDの配列または既知のガンマセクレターゼ基質のN末端フラグメントに基づきうる。
【0176】
ポリペプチドハプテンの十分量が得られたら、本明細書の一部を構成するHudson and Hay, Practical Immunology, Blackwell Scientific Publications, Oxford, Chapter 1.3, 1980に一般的に記載されるような、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、または他の適当なタンパク質担体等の、適当な免疫原担体に連結することができる。有用である免疫原担体の例は、αCD3κ抗体である(Boehringer-Mannheim, Clone No. 145-2C11)。
【0177】
十分量の免疫原が得られたら、所望のエピトープにと杭的な抗体をin vitroまたはin vivoの方法によって製造することができる。in vitroの方法ではリンパ球を免疫原に暴露するが、in vivoの方法は免疫原を適当な脊椎動物宿主へ注入することが必要である。適当な脊椎動物宿主は、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、山羊等を含む非ヒト動物である。予め決められた計画にしたがって動物に免疫原を注射し、改善された力価と選択性を有する連続的出血でその動物を周期的に出血させる。注射は筋肉内、腹腔内、皮下等により行うことができ、不完全フロイントアジュバント等のアジュバントを用いることができる。
【0178】
所望であれば、所望の特異性を有する抗体を産生することが可能な不死化細胞系を調製することによりモノクローナル抗体を得ることができる。そのような不死化細胞系は様々な方法で製造することができる。便宜上、マウス等の小さな脊椎動物を、記載した方法により所望の免疫原で超免疫する。次いで、この脊椎動物を屠殺し(通常最後の免疫後数日後)、脾細胞を取り出し、その脾細胞を不死化する。不死化のやりかたは重要ではない。本発明において有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975) 記載のハイブリドーマ法;ヒトB細胞ハイブリドーマ法 (Kosbor et al., Immunol Today 4:72 (1983); Cote et al., Proc Natl Acad Sci (USA) 80: 2026-2030 (1983); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987))およびEBV−ハイブリドーマ法 (Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R Liss Inc, New York N.Y., pp 77-96, (1985)によって作製することができる。
【0179】
ハイブリドーマ法を用いる場合、ミエローマ細胞系を用いることができる。ハイブリドーマ産生融合法のいて用いるのに適したそのような細胞系は、好ましくは非抗体産生であり、高い融合効率と、所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖をサポートする特定の選択培地で増殖可能な酵素欠損を有する。例えば、マウス融合において用いられる細胞系は、Sp-20, P3-X63/Ag8, P3-X63-Ag8.653, NS1/1.Ag 4 1, Sp210-Ag14, FO, NSO/U, MPC-11, MPC11-X45-GTG 1.7およびS194/5XX0 Bul; ラット融合に用いられる細胞系はR210.RCY3, Y3-Ag 1.2.3, IR983Fおよび4B210である。細胞融合に有用な他の細胞系はU-266, GM1500-GRG2, LICR-LON-HMy2およびUC729-6である。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマおよび他の細胞系は、本発明の新規の組成物であると考えられる。
【0180】
ファージディスプレイ法もまた、任意の種のモノクローナル抗体の産生に用いることができる。好ましくは、この方法は、完全なヒトのモノクローナル抗体の作製に用いられ、単一のFabまたはFv抗体フラグメントをコードするポリヌクレオチドがファージ粒子の表面に発現する(Hoogenboom et al., J Mol Biol 227: 381 (1991); Marks et al., J Mol Biol 222: 581 (1991); さらに 米国特許第5,885,793号も参照)。各ファージは本明細書に記載の結合アッセイを用いて「スクリーニング」してAβおよび/またはICDに対して親和性を有する抗体フラグメントを同定することができる。従って、これらのプロセスは、抗体フラグメントレパートリーの線状バクテリオファージの表面でのディスプレイおよびAβおよび/またはICDに対するそれらの結合によるファージの選択を介する免疫選択を模擬するものである。1つのそのような手順は、そのような方法論を用いて、MPL−およびmsk−受容体に対する高い親和性と機能的なアゴニスト抗体フラグメントの単離を記載するPCT出願PCT/US98/17364(出願人Adamsら)に記載されている。このアプローチでは、既に記載されているように(Mullinax et al., Proc Natl Acad Sci (USA) 87: 8095-8099 (1990))、末梢血リンパ球由来の天然の再配列したヒトV遺伝子をクローニングすることによって、ヒト抗体遺伝子の完全なレパートリーを作成することができる。モノクローナル抗体作製の具体的方法は、本明細書の一部を構成するAntibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane, eds., Cold Spring Harbor Laboratory, 1988に記載されている。
【0181】
モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体(抗血清)に加え、本発明の検出法は、F(ab)、Fv、V、Vおよび他のフラグメント等の抗体フラグメントを使用することができる。但し、ポリクローナル抗体の使用において、モノ特異的な抗体産生をもたらすために、標的エピトープに対する抗血清を吸着させる必要があり得る。また、現在特許文献および科学文献において十分に記載されているように、組換え的に産生した抗体(免疫グロブリン)およびその変異体を用いることも可能である。例えば、本明細書の一部を構成する、EPO 8430268.0; EPO 85102665.8; EPO 85305604.2; PCT/GB 85/00392; EPO 85115311.4; PCT/US86/002269および特願85239543を参照。さらに、記載したように調製した抗体の結合特異性を模擬する他の組換えタンパク質を調製することも可能である。
【0182】
本発明について用いることができる細胞のタイプとしては、天然に存在するものか人工的に構築されたものに関わらず、配列番号1を含んでなるガンマセクレターゼ基質を発現し、ガンマセクレターゼ活性を可能にする、任意のタイプの細胞が挙げられる。非限定的な例としては、実施例に記載されてものを含む、本明細書に記載された細胞のタイプが挙げられる。既知のまたは本明細書に記載の方法を用いて、当業者は、配列番号1を含んでなるポリペプチドを含んでなるガンマセクレターゼ基質および野生型ガンマセクレターゼ基質をコードするcDNAで、逐次にまたは同時に形質転換/トランスフェクトすることができる。組換え核酸法、遺伝子操作(即ちノックアウト株の作成)、および細胞形質転換/トランスフェクションの任意の知られている方法、ならびに本明細書において詳細に記載した方法を用いることができる。
【0183】
組換えDNA分子、タンパク質および抗体産生、ならびに組織カルチャーおよび細胞形質転換、に関して標準的な方法を用いることができる。例えば、Sambrook, et al.(以下)またはCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., Green Publishers Inc. and Wiley and Sons 1994)を参照。酵素反応および増殖方法は、典型的には、製造元の取扱説明書にしたがって、またはSambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1989))に記載されているような当業者が共通して認識しているような慣用の手順を用いて、あるいは本明細書に記載されているように行う。特に記載しない限り、実験方法、および分析化学の方法、合成有機化学、ならびに医化学および製薬化学に関連して用いる本明細書に記載の用語は、当分野において周知で一般に用いられているものである。標準的な技術を、化学合成、化学分析、医薬調製物、製剤および送達および患者の処置に用いることができる。
【0184】
見出しのセクションは単に構成上の目的で本明細書で用いられているのであって、記載した発明を何ら限定するものではないと解釈される。すべての文献は本明細書の一部を構成するものと解釈される。
【0185】
以下の実施例は、本発明の特定の態様の単なる説明であって、特許請求の範囲で定義される本発明を限定するものであると解釈されない。
【実施例】
【0186】
一般的技術
JMDキメラ基質のプラスミド構築
既に記載されているSPA4CT-LE構築物(Dyrks, et al., FEBS Lett., 1992; 309: 20-24)に類似するpcDNA3.1-C99プラスミドを標準的なPCR法により作製した。APPシグナルペプチドを、ジペプチドロイシン−グルタミン酸(LE)リンカーを介して、C99フラグメントのN末端に融合した。pcDNA3.1-C99GVP構築物の作製に用いた方法論は既に記載されている方法と同様のものである(Karlstrom, H., et al., J. Biol. Chem., 2002; 277: 6763-6766)(Figure 3参照)。簡潔には、AscI部位を、C99のトリプルリジン(K)膜アンカーをコードするヌクレオチドの3’の隣に導入し、そこでGVPコード配列が次いでインフレーム(C99のリジン膜アンカー配列のC末端側へ)で挿入される。膜近傍ガンマセクレターゼ基質キメラのシリーズを作製するために、C99GVPにおける19残基の内腔膜近傍ドメイン(APP695のアミノ酸残基606〜625に対応)をコードするヌクレオチドを、それぞれC99GVP-APLP2, C99GVP-Notch1およびC99GVP-SREBP1の構築物を生じる、ヒトAPLP−2(アミノ酸674〜693)、Notch1(アミノ酸1716〜1734)、SREBP1(アミノ酸6469〜6487)の対応する領域をコードするヌクレオチド配列で置換する。3つのキメラすべてを、2対の重複プライマーを用いる2ステージのPCR法を用いて構築した(プライマーに一覧はTable Iを参照)。これらのキメラ基質のキャラクタリゼーションを行い、ガンマセクレターゼ基質としての活性、次いでAβおよびAICDの産生と分泌を調べた(Figure 6〜7)。APPのプレTMD GSNKモチーフを保持するキメラ(C99GVP−APLP2またはC99GVP−APLP2−GSNK、C99GVP−Notch1またはC99GVP−Notch−GSNK、およびC99GVP−SREBP1またはC99GVP−SREBP1−GSNKと表示する)を同様にして、異なる組のプライマーについて作製した。
さらに、C99GVP-SLSS四重(quadruple)JMDキメラを同じPCR法で構築した。内腔の膜近傍ドメイン内の点変異(即ちC99GVP-G25S, S26L, N27SおよびK28S;Figure 2および9A〜D)を、QuikChange (Stratagene)部位特異的突然変異導入キットを用い、製造元の説明書にしたがって作製した。cDNAはすべて配列決定により確認した。C99GVPから作製したAβおよびAβ様ペプチドおよび種々のキメラ基質を、AβペプチドのN末端残基(Asp−1)を参照して番号付けした。
【0187】
抗体:
APPのC末端の最後の20アミノ酸に対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗Flagを販売元から購入し(Sigma Cat. #A8717およびF1804)、ウェスタンブロットにそれぞれ1:20000および1:2000の希釈率で使用した。VP16に対するモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology Cat. #sc-1728, Santa Cruz, CA)をウェスタンブロットに1:500の希釈率で用いた。モノクローナル抗体、2H3(Aβ4−7に特異的)、2G3(Aβ33−40に特異的)、および21F12(Aβ30−42に特異的)を、既に記載されているように(Johnson-Wood, K., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1997; 94: 1550-1555)に実験室内で作製した。ポリクローナルおよびモノクローナル[22B11]AICD neo−エピトープ抗体をVMLKKKC(配列番号39)に対して惹起した。ELISAによるモノクローナル[22B11]抗体のキャラクタリゼーションは、抗体が抗原ペプチドに用量応答的に結合することを示した。[22B11]抗体は、インタクトなAPPε−開裂部位(TVIVITLVML KKKQTYTS、配列番号91)とともに抗原ペプチドを含むペプチドと交差反応しない。インタクトなε−開裂部位(即ち、開裂部位にまたがり、開裂によってneo−エピトープを欠く)は、[22B11]抗体と抗原ペプチドとの間の結合に干渉しない(Figure 15およびFigure 16)。
【0188】
セルカルチャーおよび一時的トランスフェクション
ヒト293(HEK293)細胞(ATCC)を、10%ウシ胎児血清(Hyclone, SV 30014.03)およびペニシリン50ユニット/mLおよびストレプトマイシンを添加した
、高グルコースのダルベッコ修飾Eagle培地(DMEM, Gibco/Invitrogenより入手, Cat # 11960)中で培養した(37℃、5%、CO)。細胞は継代数30未満のものを用いた。シード時点の細胞の生存率は、Vi−Cellアナライザー(Beckman-Coulter)を用いて測定したところ95%を超えていた。プレート上の細胞は、標準的な組織カルチャー倒立顕微鏡で判断したところ、実験のすべてのフェーズで終止細胞密度が95%を超えていた。トランスフェクションはすべて、6ウェルの組織カルチャープレート(Costar)に細胞数5×10にて実施した。以下の3つのプラスミド:pG5E1B-luc, 200 ng (R. Maurer, OHSUより寄贈); pCMV-β-gal, 100 ng (R. Maurer, OHSUより寄贈); C99GVPまたは種々のキメラ構築物, 200〜400ngを各ウェルに共に加えた。FuGENE6試薬(Roche Cat.# 11-814443001)を、接着細胞の一時的トランスフェクションについて製造元のプロトコルにしたがって用いた。トランスフェクションから16時間後に、トランスフェクトされた細胞を、12ウェル(2×10細胞)および/または96ウェルのプレート(5×10細胞)(Coster)に再度シードし、新鮮な培地を、ガンマセクレターゼ基質の有りまたは無しで添加した。分析のため、細胞および馴化培地をトランスフェクションから48時間後に回収した。
【0189】
トランスフェクトしたHEK細胞の阻害剤処理
遷移状態アナログガンマセクレターゼ阻害剤L685458(Sigma)およびペプチド模擬阻害剤DAPT(Dovey, H.F., et al., J Neurochem., 2001; 76:173-181)をDMSOに溶解し、20mMストックとした。同様に、スルホンアミド阻害剤の数多くのElanシリーズを本明細書に記載したように作製し使用した(Figure 11〜14参照)。阻害剤をセルカルチャー(例えばHEK)に示した終濃度で添加し、処理した細胞をトランスフェクションから48時間後に回収した。メタロプロテイナーゼ阻害剤TAPI−I(Calbiochem)を終濃度40μMで用いた。Aβ分解酵素阻害剤、バシトラシンおよびホスホラミドンをそれぞれ終濃度1mg/mLおよび40μMで用いた。阻害実験はすべて3重で少なくとも3回行った。
【0190】
基質およびAICDのウェスタンブロット検出
一時的トランスフェクションから48時間後に、12または6ウェルの組織カルチャープレートにて培養したHEK細胞を、冷却したTBSで洗浄し、プロテアーゼ阻害剤カクテル(SigmaAldrich Cat.# P8340)を添加した1mLの溶解バッファー(TBS中、0.1% SDS、0.5%デオキシコール酸および1% NP−40)中でホモジナイズした。サンプルはすべて4℃にて1時間可溶化させ、14000×gで30分間遠心して清澄化した。上清のアリコートをLaemmliサンプルバッファー中で5分間煮沸し、10〜20%Tris-トリシンSDS-PAGE (Invitrogen)で分離した。ゲルを適当な抗体を用いてウェスタンブロットに付し、Supersignal West Pico化学発光基質(Pierce Cat.# 34080)で可視化した。実験はすべて少なくとも3回行った。
【0191】
免疫染色
野生型または一時的にトランスフェクトしたCOS−7細胞をPBS中2%パラホルムアルデヒドにより室温で20分間固定化し、次いでPBS中0.2%のTriton X-100で10分間透過処理した。C99GVPおよび変異体基質ならびにAICD-GVPを、サンプルを、ポリクローナル抗VP16で2時間およびローダミン結合ロバ抗ヤギ2次抗体(Jackson Laboratory Cat.# 705-165-003)で1時間、順次インキュベーションすることにより検出した。染料はすべてBio-Rad MRC 1024ES共焦点顕微鏡(Bio-Rad)で可視化し、付属のCCDカメラで撮影した。
【0192】
ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイ
ルシフェラーゼレポーターアッセイをトランスフェクションから48時間後に行った。96ウェルプレート(BD Biosciences)にシードした細胞をPBSで1回洗浄し、1ウェルあたりレポーター溶解バッファー(Promega)20μL中に回収した。100μLの発光基質(Promega)を添加した後、ルシフェラーゼ活性をMicroLumatPlusマイクロプレート照度計(Berthold Technologies)で測定した。β−ガラクトシダーゼ発光基質(BD Biosciences)を用い、同様にしてβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した。トランスフェクション効率およびトランスフェクションの一般的な効果の対照として、2つ一組のプレートにてβ−ガラクトシダーゼ活性を測定することによりルシフェラーゼ活性を標準化した。実験はすべて3重行い、少なくとも3回繰り返した。
【0193】
Aβの免疫沈降(IP)およびウェスタンブロット検出
馴化培地または細胞リゼート中の総Aβペプチドを、2H3抗体4μgを用い、4℃にて一晩免疫沈降した後、50%プロテインG−セファロース(GE Healthcare)スラリー50μLと1時間インキュベーションし、同じ溶解バッファーで3回洗浄した(ウェスタンブロットの項で記載したように)。タンパク質を、70℃にて5分間加熱することにより、Laemmliサンプルバッファーに固相免疫沈降から溶出させ、10〜20%Tris-トリシンSDS-PAGEまたは修飾Tris-トリシン/8M尿素ゲル(Qi-Takahara, Y., et al., J Neurosci. (2005; 25, 436-445))で分離した。ミクロセルロースメンブレン(Invitrogen)上に移した後、メンブレンをPBS中98℃に5分間加熱し、2H3抗体で免疫染色し、Super-signal West Pico化学発光基質で可視化した(Pierce)。各実験は少なくとも3回反復した。
【0194】
22B11モノクローナル抗体の作製手順:ペプチドのコンジュゲーション
ヒツジ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch)とカップリングさせた22B11に対する免疫原は(NH2)−VMLKKK−C*((NH2)-VMLKKKが、APP TMDのイプシロン開裂により生じるneo−エピトープであり、Cys(C*)が癌に対するペプチドのカップリグを促進に関する人工的に追加したアミノ酸である)とした(Anaspec, San Jose, CAの受注による合成により入手)。ペプチドを以下の方法によりカップリングした。ヒツジ抗マウスIgG 10mgを、10mMホウ酸バッファー(pH8.5)に対し一晩透析した。次いで、透析した抗体を2mLに濃縮した。10mgのスルホEMCS(Molecular Sciences)を1mLの脱イオン水に溶解した。40モル濃度の過剰量のスルホEMCSを、ヒツジ抗マウスIgGに滴加した後10分間攪拌した。活性化したヒツジ抗マウスを、0.1MのPO 5mM EDTA(pH6.5)で平衡化したPierce10mLprestoカラムで脱塩した。抗体を含むフラクションをプールし、A280および減衰係数として1.4を用いて約1mg/mLに希釈した。40モル濃度過剰のペプチドを10mMのPO(pH8.0)20mLに希釈した。希釈したペプチドをそれぞれ10mgのヒツジ抗マウス抗体に加え、室温にて4時間振盪した。次いで、このコンジュゲーションを10mL未満に濃縮し、バッファーの交換および過剰のペプチドの除去を数回行いながらPBSに対して透析した。次いで、サンプルを0.22μフィルターにより滅菌し、1mgずつのアリコートとし、−20℃で凍結した。PierceのBCAタンパク質アッセイを用い、コンジュゲートの濃度を、ウマIgG標準曲線を用いて濃度を測定した。コンジュゲートを、カップリングしたペプチドの、活性化したヒツジ抗マウスの上での分子量シフトにより測定した。
【0195】
免疫化およびスクリーニングプロトコル
抗体22B11をA/Jマウス(Jackson Laboratories)を、C末端のネイティブな配列に付加した人工のシステイン(C)を介してヒツジ抗マウス(Jackson ImmunoResearch)とカップリングさせた (NH2)-VMLKKKC(配列番号39)および連結剤スルホEMCS(Molecular Sciences)で免疫化することにより作製した。0、14、28日目に動物に注射し、35日目に力価を測定した。最も高い力価のマウスを、KohlerおよびMilsteinの修飾を用いて融合し、得られた陽性のものをペプチドVMLKKKC (配列番号39)に対する反応性、および領域、特に、TVIVITLVMLKKKQYTS (配列番号91) またはMBP-C125(マルトース結合タンパク質に融合したAPP C125(ここで、APP C125はADRGLTTRPG SGLTNIKTEE ISEVKMDAEF RHDSGYEVHH QKLVFFAEDV GSNKGAIIGL MVGGVVIATV IVITLVMLKK KQYTSIHHGV VEVDAAVTPE ERHLSKMQQN GYENPTYKFF EQMQN (配列番号92)である))にまたがるペプヂドに対する反応性の欠如に関してスクリーングした。
【0196】
ハイブリドーマ融合および増殖に用いた物質は以下のとおり:ポリエチレングリコール 4000 (PEG4000) 50% w/v(75 mM HEPES中)(Roche Cat #783 641より入手); 高グルコースDulbecco修飾 Eagle培地(グルタミンなし)(DME, Gibco/Invitrogen, Cat #11960より入手); ウシ胎児血清 (FBS, Hyclone, SV 30014.03より入手); 1M HEPES (Gibco, Cat # 15630より入手); Elan Media Facilityにて調製した10 mM ヒポキサンチン(Sigma); Elan Media Facilityにて調製した0.17 M NH4Cl (Sigma Tissue Culture Grade Reagents); SP2/0 AG14細胞(American Type Cell Collection)およびElan Hybidoma Facilityにて再クローンした; アザセリン(Sigma Tissue Culture Grade Reagents, Cat #A1164-5MG);コンフルエント SP2/0 (自家回収)より得た50 mL 培地; 組換えIL6 (Roche, Cat # 1 444 581より入手); 96ウェル組織カルチャープレート(Corningより入手)。
【0197】
融合プロトコル
マウスをCOによる昏睡により屠殺した後、頸椎脱臼して70%エタノールで数分間浸漬した。脾臓を無菌で取り出し、5mLの増殖培地(DME高グルコース(グルタミンなし)20%FBS、10-4Mヒポキサンチン、15mM HEPESおよび2mMグルタミン)に置いた。
【0198】
単細胞懸濁液を得られるまで、2つのすりガラススライドの間で脾臓細胞を解離させた。次いで、脾臓細胞懸濁液を15mLの試験管に移し、4の設定(500×g)でIEC臨床遠心にて5〜10分間遠心することによりペレット化した。
【0199】
細胞ペレットを、4℃の0.17 M NH4Cl7mLで再懸濁し、破片の大きな凝集物を3〜5分間静置させた。融合物から破片を分離させ、赤血球細胞を溶解した。単細胞懸濁液をピペットにより破片ペレットからピペットでとり、50mLの試験管に移し、増殖培地を加えて50mLとし、細胞数を計測した後ペレット化した。
【0200】
SP2/0 Ag14は中期〜後期対数期に存在する。SP2/0細胞数を血球計で計測し、十分量のSP2/0を取り出し、上記のとおり遠降させて1 SP2/0〜4脾細胞を得た。sp2/0からの培地を選択培地のため保存する。SP2/0細胞はDMEに再懸濁し、脾細胞を加える。DMEを加えて容量50mLとし、細胞混合物を4の設定で10分間遠心する。
【0201】
振り混ぜて細胞ペレットを軟らかくした。振盪しながら、1mL のPEG 4000を細胞ペレットに加えた。細胞を攪拌し、1、2分間PEG 4000を細胞に接触させた。25mLのDMEを細胞/PEG混合物に加え、室温で1分間インキュベーションする。25mLの増殖培地を加え、室温で1分間インキュベーションする。次いで細胞を4の設定で10分間遠心し、選択培地に懸濁する(45 mL SP2/0 馴化培地、0.45 mL 2 mM グルタミン, 0.45 mL 10-2 M ヒポキサンチン, 200 ug アザセリン, 2 mL FBS, 100 U/mL IL6, 100mLの増殖培地)。融合物を15の96ウェル組織カルチャー処理プレートに50μL/ウェルでプレーティングする。
【0202】
融合の翌日、50μLの増殖培地を各ウェルに加える。融合から3〜5日後に培地の半量を吸引し、新鮮な増殖培地100μLと交換する。融合から7日後、ウェルの50%以上にハイブリドーマが観察される。融合から6〜8日後、100μLの培地を添加する。融合から10〜12日後、スクリーニングを行う。
【0203】
実施例1:APP細胞内ドメイン(AICD)に対する抗体の産生
AICDポリクローナル抗体:2種類のAICDポリクローナル抗体を商業的な供給元からカスタム合成により得た(Anaspec, San Jose, CA)。ポリクローナル抗体はいずれも免疫化ペプチドVMLKKKC (配列番号39)に対して陽性の力価を示した。抗体は、固定化した免疫化ペプチドに対してアフィニティー精製した。抗体の特異性をウェスタンブロットおよびELISAベースの解析により確認した。アフィニティー精製したAICD駆血清はAICDを認識したが、キメラα−およびβ−C末端フラグメントまたはホロタンパク質は認識せず、このAICD抗血清は開裂したAICDフラグメントに特異的であることを示した。
【0204】
AICDモノクローナル抗体:モノクローナル抗体を、AICDアミノ酸配列のN末端部分に対して合成した。この技術は免疫原ペプチドVMLKKKC (SEQ ID NO:39)に対するように行った。Kimberly, et al., Biochemistry 42(1):137-144 (2003)参照。得られたモノクローナル抗体[22B11]は、ガンマセクレターゼ開裂により生じたAICDフラグメントのN末端領域に対し特異的な結合を示す(上記;Figure 15およびFigure 16)。
【0205】
実施例2:AβELISA
異なるAβを定量するのに用いたELISAは、上記のおよび本明細書の一部を構成するJohnson-Wood, K., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. ., 1997; 94: 1550-1555に記載の標準的な技術を用いて行った。サンプル中のAβ40およびAβ42ペプチドを、それぞれ、2G3または21F12抗体でコーティングしたプレートにて捕捉し、ビオチン化2H3抗体で検出した。ストレプタビジンアルカリホスファターゼコンジュゲート(Roche)から生じた蛍光シグナルを、CytoFlourマイクロプレートリーダー(Applied Biosystems)で測定した。合成Aβ40またはAβ42ペプチド(Anaspec)を用いて標準曲線(Figure 10)を作成した。すべての実験は3回行った。
【0206】
実施例3:APPのICD(AICD)の定量検出
上記のAICDポリクローナルまたはモノクローナル抗体のいずれかによる細胞リゼートの捕捉およびAPPのC末端に対する抗体による表示(例えば、13G8、自家調製)に基づくAICDサンドウィッチELISAを確立した。あるいは、ルシフェラーゼベースのレポーターアッセイを用いてAICDの存在を検出し、定量し、それらの数を既知または可能性のあるガンマセクレターゼ阻害剤化合物の阻害効力を関連付けることができる。
【0207】
合成AICD ELISA標準
AICDペプチドとAPP C末端ペプチド(APP681-693;C-GYENP TYKFF EQM, SEQ ID NO:93)を、1,11−ビス−マレイミドテトラエチレングリコール(Pierce)で架橋することにより、AICD標準を合成した。合成AICD標準を逆相HPLCにより、LC質量分析により純度>80%まで精製した(データ示さず)。標準の全量および濃度を、重量、純度および計算された分子量に基づき決定した。標準をさらに質量分析および逆相HPLCならびにサンドウィッチELISAにおけるバックグラウンドに対する陽性シグナルによる化学的キャラクタリゼーションに基づいて確認した。(Figure 10)。あるいは、完全長、ネイティブ配列AICDペプチド、(配列番号41):VMLKKKQYTS IHHGVVEVDA AVTPEERHLS KMQQNGYENP TYKFFEQMQN, (Calbiochem Cat. # 171545#)を標準として用いた。
【0208】
AICDに対するmAbを用いるAICD ELISA:標準曲線
上記のとおり作製し精製したモノクローナル抗体[22B11]を、4℃にて48時間、コーティングバッファー(一リン酸ナトリウム・2HO 0.23g/L、リン酸二ナトリウム・7HO 26.2g/L, アジ化ナトリウム 1g/L、1L q.s. 滅菌精製水), pH 8.0)中10μg/mLを100μLでThermolon 4HBX 96ウェルプレートにコーティングした。インキュベーションの後、バッファー溶液をウェルから除去し破棄した。各ウェルに0.25%のブロッキングバッファー(25g/L結晶性スクロース、10.8g/Lリン酸二ナトリウム・7H2O、1g/Lリン酸一ナトリウム・1H2O、8.33mL/Lヒト血清アルブミン30%溶液、アジ化ナトリウム0.5g/L、1Lq.s.滅菌精製水、pH7.4)200μLを4℃にて一晩添加した。このインキュベーションの後、ブロッキングバッファーをウェルから除去し、排気した。減圧下で、一晩プレートをチャンバー内に傾けて置き、ウェルを完全に乾燥させた。APPのC末端領域に特異的な抗APPウサギポリクローナル抗体(「抗APPcter」)をSigmaAldrich (Cat. #A8717)より購入し、標準的方法を用いてビオチン化した。この修飾抗体を検出抗体として用いた。ストレプトアビジンコンジュゲートアルカリホスファターゼ(GE Healthcare (旧Amersham) Cat. # RPN-1234)を自家調製した蛍光基質A(31.2g/L 2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、30〜33mL/L 6NHCl、0.03g/L 4−メチルウンベリフェリルホスフェート、q.s.1L 上質水)とともにレポーティングシステムとして用いた。蛍光プレートリーダー(Cytofluor 4000 またはMolecular Devices SpectraMax GeminiEM)を用いて96ウェルプレートにおけるシグナルを測定した。APP由来ペプチドCTF50(HPLCによる純度95%)をCalbiochem (Cat. #171545)から購入した。(VMLKKKQYTS IHHGVVEVDA AVTPEERHLS KMQQNGYENP TYKFFEQMQN, (SEQ ID NO.41)を有する)。このペプチドは免疫沈降し、ELISAプレート上でmAb[22B11]により捕捉し、それぞれ、ウェスタンブロットで抗APPcterウサギポリクローナル抗体およびELISAアッセイにより検出した。HEK293細胞リゼートおよび精製したAICDペプチドでスパイクした対照の「スパイクおよびリカバリー」実験は標準曲線におけるシフトは示さず、アッセイおいて検出し得るバックグラウンドも生じなかった。サンプルと標準をカゼイン希釈液(8g/L NaCl、0.144g/L リン酸二ナトリウム、0.2g/L リン酸一カリウム、0.2g/L KCl、カゼイン2.5g/L、q.s. 1L 上質水、NaOH (必要量を加えてpH8.6に調整)に希釈し、プレートに結合させた。
【0209】
ポリクローナル抗体AICD ELISA
HEK293細胞を標準的に条件下、約90%コンフルエントまで増殖した。細胞を回収し、計数し、次いで、PDL−コーティング60mmディッシュに培地5mL中2×10細胞/でディッシュにプレーティングした。細胞を約4時間ディシュに定着させた。種々の構築物の細胞へのトランスフェクションは、Lipofectamine 2000TM (LF2K)(Invitrogen)を用い標準的な技術を用いて行った。簡潔には、2μgのプラスミドDNAおよび4μLのLF2KをOpti-MEM (Gibco)の別々の150μLアリコートに希釈し、10〜15分間静止させた。次いで2つのアリコートを混合し、約20分でDNA:脂質複合体を形成させた。次いで、300μL DNA:脂質複合体を、3mLの新鮮な培地中、細胞に加え、一晩インキュベーションした。可能性のあるまたは既知のガンマセクレターゼ阻害剤化合物を細胞に投与するために、トランスフェクトした細胞を回収し、200,000細胞/ウェルにてPDL-コート24ウェルプレートに再プレーティングし、プレートに約4時間定着させた。細胞を洗浄し、500μLの新鮮な培地を加えた。阻害剤化合物を、DMSO中10×濃度のストック溶液からの細胞に加え、細胞と一晩インキュベーションさせた(約18時間)。インキュベーションの後、馴化培地(CM)を細胞から回収し、手短に遠心し、Aβ ELISAを用いた分析のために保存した。細胞をPBSで1回洗浄した後、150μLの溶解バッファー(PBS+0.5% NP40 + CompleteTM阻害剤 (Roche))を各ウェル添加した。プレートを4℃で15分間インキュベーションし、回収したリゼートを15000×gにて10分間遠心することにより回収した。タンパク質測定とAICD ELISAのために上清を保存した。典型的なタンパク質収量は約0.45mg/mLである。
【0210】
ルシフェラーゼアッセイ
HEK細胞におけるAICD−GVP産生を確認後、上流活性化配列(UAS)Gal4応答エレメントを含むルシフェラーゼレポーター遺伝子をトランス活性化する能力を試験した。レポーター遺伝子単独でトランスフェクトした細胞からはシグナルは検出されなかったが、GVPの活性な形態を同時発現している場合は強いトランス活性化を生じ、このレポーターアッセイの選択性を確認した。GVP対照のシグナルと比較可能な強いシグナルがC99GVPで同時トランスフェクトした細胞についても観察された(Figure 5C)。ガンマセクレターゼ阻害剤処理は、C99GVPトランスフェクト体のみにおいてルシフェラーゼ活性の用量依存的減少を生じ(Figure 5C)、C99GVP誘導レポータートランス活性化がガンマセクレターゼ依存であることを示した。ウェスタンブロットにより測定したところ同じ処理でAICD産生は完全に消失したが、残存するルシフェラーゼ活性は、過剰のガンマセクレター阻害剤の存在下で維持された(Figure 5B)。この矛盾は、顕著な感受性および非線形シグナルアウトプットから生じ得る(Karlstrom, H., et al., J. Biol. Chem., 1997; 277:6763-6766; Cao, X., and Sudhof, T.C., J. Biol. Chem., 2004; 279: 24601-611)が、他のプロテアーゼによるC99GVP細胞質尾部の非特異的な開裂に起因するものではないようである。
【0211】
次に、C99GVPからAβ産生を特徴付けた。野生型のHEK細胞およびmock−トランスフェクションコントロールは小さなAβを馴化培地に分泌した(Figure 5D、レーン1)。対照的に、IP/ウェスタンブロット(Figure 5D)およびAβ40およびAβ42種をそれぞれ検出するELISA(Figure 1D、上段)で測定されるように、C99GVPの一時的発現は強いAβ産生につながった。これまでの報告と一致して、Aβ40(210.8±19.2pM)は主要な分泌種であるが、Aβ42(39.1±6.4pM)は全Aβの小さいフラクション(15.7±2.5%)にすぎない(Figure 5D)。γ−セクレターゼ阻害剤処理によりAβ分泌は完全に消失した(Figure 5D)。最後に、我々は、C99GVPまたは野生型APPのいずれかを基質として用い、2つの阻害剤のAβ低減効力を比較した。ELISAにより測定されるように、2つの基質についての各IC50値は、本質的に同じである(Figure 5E)。
【0212】
実施例4:ガンマセクレターゼ基質特異性を決定するアッセイ
ガンマセクレターゼ基質の膜近傍ドメイン(JMD)がガンマセクレターゼ阻害剤化合物のある特定のタイプの選択性の介在または調節に関与しているか否かを試験する実験をいくつか行った。1つの実験では、APP−C99GVPのJMDを非APP基質由来のものに置換した場合、ネイティブのJMDを有するAPP−C99−GVPに対して、これらキメラ基質からのAICD産生の阻害についての用量応答曲線が右にシフトするかどうかを試験した。キメラ基質を上記に一般的に記載したとおりに調製し、ガンマセクレターゼ活性のアッセイを上記のプロトコル(即ち、細胞(HEK)をトランスフェクトし上記のとおりに培養した)を用いて行った。阻害剤の存在下で、C99GVP−Notch、C99GVP−APLP2およびC99GVP−APPを発現する細胞中のガンマセクレターゼ活性を、ELISAおよびモノクローナル抗体22B11を用いて測定した。Figure 14Aおよび14Bにおける結果から、選択的なスルホンアミドガンマ阻害剤475516および477899は、ネイティブの(APP)JMDを有するC99GVPに対して、C99GVP−NotchおよびC99GVP−APLP2でトランスフェクトした細胞におけるAICD阻害効力の減少を示すことが認められた。非選択的化合物44989および318611はC99GVP−NotchおよびC99GVP−APLP2での効力およびシフトは示さなかった。従って、基質の開裂に関する化合物475516および477899の選択性は、非APP JMDの存在によって影響を受けた。
【0213】
上記の発見を反復および展開するためにさらなる実験を行った。簡潔には、細胞(293)を、示されたC99GVP構築物(ネイティブおよびキメラ)で一時的にトランスフェクトした後、AICD産生の阻害の濃度依存性をELN−44989およびELN−475516で解析した。AICDの阻害の濃度依存性のこの実験から得られた結果をFigure 13にまとめる。Figure 13Aは、種々の構築物に対する化合物475516、44989、477899、318611によるAICD阻害についてのEC50値(2回の濃度応答実験から得られた平均のEC50値)を示す。WT APP JMDを有するC99GVPについてのIC50に対して標準化した(エラーバーはIC50の反復測定に基づくCV)。データは、非APP JMD領域を含むキメラC99GVPNotchおよびAPLP2構築物を発現する細胞における選択的な阻害剤475516および477899の力価における明かな右シフトを示している。
【0214】
これらの結果は、APP JMDと比較して、選択的な阻害剤では、APLP2およびNotch JMDを有するC99GVPキメラからのAICD産生は右にシフトした阻害を示している(Figure 13A〜B)が、非選択的阻害剤ではそうでないことを示している。
別の実験では、AICD阻害の右へのシフトは、APP‘GSNK’モチーフを保持するNotch JMD構築物を有するC99GVP構築物(C99GVP−NotchΔ4−GSNK)を用いて部分的に逆転すると思われる(Figure 14D)。同様の実験において、C99GVPのAPP JMDへSLSS残基(APLP2のJMD由来)だけの置換(C99GVP−APPΔ4−SLSS)は、選択的な化合物475516の阻害の効力を、完全なAPLP2 JMDキメラのIC50と同程度のIC50に減少させる(Figure 14Aおよび14Cの「SLSS」)。
【0215】
他のC99GVP−JMDキメラ基質
上記の一般的なプロトコルを用いて、C99GVP-P75-NTR、C99GVP-N-カドヘリン、C99GVP-ErbB4、C99GVP-SCNB2およびC99GVP-チロシナーゼを含む、更なるシリーズのC99GVP JMDキメラを作製した。これらのキメラ、ならびにC99GVP-NotchおよびC99GVP-APLP2構築物をコードする構築物を、HEK293細胞にトランスフェクトした。簡潔には、細胞を、3.75×106細胞/ディシュで10cmディシュに撒いた。1日おいた後、4:1Fugene:cDNAの割合(μL/μg)でFugene−6試薬を用いて、細胞を12.5μg/10cmディシュのC99−GVPプラスミドcDNAでトランスフェクトした。翌日、細胞を31700細胞/ウェルにてポリ−D−リジンコートした96ウェルプレートに撒いた。次の日、0.4%DMSO(C)、100μL/96ウェルプレートを含む培地中、細胞を化合物で処理した。細胞を一晩処理し、プレートを遠心した。細胞を、Mg2+およびCa2+を含有するPBSで1回洗浄し、ロッカープラットフォームにて4℃にて1時間溶解バッファー(1% TritonX100, 50 mM Tris, pH 7.5, 150 mM NaCl, 2 mM EDTA + 完全なプロテアーゼ阻害剤カクテル)25mL中で溶解した。卓上遠心機で2100rpmにてプレートを遠心した(約1000×g、10分間、室温)。上清(20μL)をポリプロピレン保存プレートに移し、ドライアイスで乾燥後−80℃で保存した。上清を保存プレート上で希釈し、ELISAの時点でカゼイン希釈液(1:6〜1:15)で希釈した。混合後、12ウェルピペットを用い、各ウェルから100μLを22B11コートしたELISAプレートに移した。32〜2000pg/mL AICDの標準曲線を各プレートについて作成した。プレートを4℃にて一晩インキュベーションしてAICDを結合させた。翌日、プレートをカゼイン希釈液中0.25μg/mLの終濃度のビオチニル化Sigma抗APPC末端抗体中で1時間インキュベーションしたTTBS(0.05%Tween−20を添加したTBS)で4回洗浄した。プレートを洗浄(上記のとおり)し、ストレプタビジン−アルカリホスファターゼ(Roche)(カゼイン希釈液中1:1000希釈)中、室温で1時間インキュベーションした。プレートを再度洗浄し、蛍光基質A中、室温で30分間インキュベーションした。プレートをSpectraMax GeminiEMプレートリーダーを用いて読み取り、データをSoftMax Proソフトウェアを用いて解析した。6ウェルプレートにて行う実験については、細胞を0.625×10細胞/ウェルで撒き、2.1μgのcDNA/ウェルを用いて同じ方法でトランスフェクトした。各6ウェルプレートの細胞を溶解バッファー1.25mL中で溶解した。
【0216】
上記のAICD ELISAアッセイを用いて、細胞リゼートを解析し、トランスフェクトされた細胞におけるこれらのJMDキメラがガンマセクレターゼ開裂産物に対して有する基底レベル効果を測定した。Figure 17参照。Figure 17に示したデータをC99GVP−GVP構築物での生成物量に対して標準化した(数値はすべてC99GVP−GVP開裂産物の百分率として示している)。
【0217】
選択的ガンマセクレターゼ阻害剤に対するC99GVP−JMDキメラ基質の効果
さらに、アッセイを上記の種々のキメラC99GVPーJMD構築物(異なる基質に由来するJMDドメインを有する)を用いて行い、ある特定のスルホンアミドベースの選択的ガンマセクレターゼ阻害剤化合物が基質JMDの同一性に基づくかを調べた。非選択的ジベンゾカプロラクタムコントロール化合物、ELN−44989および2つの選択的なスルホンアミド阻害剤化合物ELN−475516およびELN−481090を用いて、種々のJMD構築物がガンマセクレターゼ基質選択性に対して有する効果を調べた。各化合物についての結果をFigure 18にまとめる。結果は、EC50値が、C99−APP−GVP構築物でのEC50値の「〜倍」で示す。非選択的化合物ELN−44989は、基質における変化がガンマセクレターゼに対する化合物の阻害効力に対して殆ど影響がないことを示している。しかしながら、選択的スルホンアミド化合物ELN−475516およびELN−481090についての結果は、異なるJMD C99−GVP基質構築物が、ガンマセクレターゼに対するそれら化合物のEC50値に対して有意の影響を有することを示しており、チロシナーゼJMD構築物が最も影響が大きい。従って、スルホンアミド化合物ELN−475516およびELN−481090は、異なる基質JMD構築物の間で基質特異性を示し、チロシナーゼJMD構築物についてED50選択性の最も大きな増大が観察された。
【0218】
実施例5:ガンマ開裂およびAβ産生におけるGSNKモチーフの役割
一つには膜内の開裂部位に物理的に近いことから、我々はTMDの直ぐ前のある特定の残基を評価した。C99GVPならびに完全長のAPPにおいて、TMDのN末端側の4つのアミノ酸は、グリシン−セリン−アスパラギン−リジン(GSNK)である。Aβ産生におけるJMDのこの4つのアミノ酸領域の役割を、新しいキメラの組(即ち、それぞれC99GVP-APLP2-gsnk, C99GVP-Notch1-gsnkおよびC99GVP-SREBP1-gsnkと称する、あるいはアスタリスクで示される(例えばC99GVP-Notch1))においてこの4ペプチドモチーフを保持することによって調べた(例えば、Figure 8A上段参照)。これら新しいキメラの発現プロファイルは、C99GVPコントロールと同等であった(Figure 8A、下段参照)。さらに、AICD産生(Figure 8A、最下段)、ならびにAICD−GVP介在のレポータートランス活性化(Figure 8B)について変化はほとんど観察されなかった。しかしながら、それらの「ネイティブJMDスワップ前分子(predecessor)」に対する顕著な対比において、GSNK含有C99GVP−APLP2*およびC99GVP−Notch1キメラはC99GVPコントロールと区別できない強いAβ産生を示した(Figure 8Cおよび8D)。示したように、C99GVP−SREBP1キメラはまた、正常なAβ分泌を保っていた(Figure 8Cおよび8D)。これらの結果は、明らかにガンマ開裂およびAβ産生におけるGSNKモチーフの役割を示している。この発見をされに確認するため、別の変異体C99GVP−SLSS(GSNKモチーフが、APLP2に由来する対応するセリン−ロイシン−セリン−セリン(SLSS)配列で置換された)を作製した(Figure 9A、上段)。この変異体は、Aβの分泌における顕著な(約97%)減少をもたらした(Figure 9Bおよび9C)がAICD産生(Figure 9A、最下段)およびレポータートランス活性化(Figure 9D)における変化はほとんどみられなかった。これらの知見は、元の膜近傍キメラから得られたデータからも示されるように、APP内腔膜近傍ドメインにおけるかすかな変更でも、ガンマ開裂における大きな変化につながることを示している。
【0219】
実施例6:ガンマ開裂およびAβ産生に対するGSNKモチーフ内残基の突然変異の影響
さらに、GSNKモチーフ内の個々のアミノ酸の寄与を、4つのアミノ酸残基のそれぞれを対応するAPLP2の残基で変異を導入することにより調べた(Figure 9A、上段)。点変異、即ちC99GVP-G25S, S26L, N27SおよびK28Sは、HEK細胞において同等に発現する(Figure 9A下段)。また、それらのそれぞれのAICD産生(Figure 9A下段)およびシグナル伝達活性(Figure 9D)における変化はほとんどみとめられず、ここでも同等のε−開裂を示した。しかしながら、分泌されたAβにおける実質的な減少は、C99GVP-S26LおよびC99GVP-K28S変異体の両方について観察された。S26L変異は、総Aβで65.7±8.5%の減少およびAβ40で52.7±2.3%の減少をもたらした(Figure 9BおよびFigure 9C)が、K28Sの置換は、いずれの測定においても、さらにより大きな実質的な減少(約90%)をもたらした(Figure 9BおよびFigure 9C)。対照的に他の2つの変異体、G25SおよびN27Sには、分泌Aβに対する明かな影響は認められなかった(Figure 9BおよびFigure 9C)。その上、これらのデータはLys−28およびSer−26が、APP内腔膜近傍ドメインにおける2つの好ましい残基であり、γ−開裂を選択的に阻害し、ε−開裂を阻害しない置換であることを示している。
【0220】
さらに別の実験において、HEK−293細胞への一時的トランスフェクション(Figure 19参照)して、APPのGSNKモチーフ(上記)に導入した同じ4つの「APLP2」変異は、スルホンアミドガンマセクレターゼ阻害剤化合物の効力に対する効果を示した。非選択的コントロール化合物、ELN−44989および2つの選択的阻害剤化合物、ELN−475516およびELN−481090を用いて、阻害剤化合物の基質特異性に対する各点変異の効果を調べた。典型的な細胞ベースのガンマセクレターゼアッセイ反応条件を用いて(例えば、本明細書に記載したような)、APPのJMDへのAPLP2由来のSLSSモチーフの置換の導入は、選択的な化合物の阻害効力に対する大きな効果を、APLP2単独のJMDで観察されるよりももたらした。非選択的化合物44989の効力は、APPのJMDへのSLSSの置換によっては影響を受けなかった(<2×)。上記した先の観察結果と一致して、2つのそれぞれの点変異構築物は、選択的阻害剤の効力を、APLP2 JMDで観察される程度まで低減した(即ち、APPーAPLP2 JMD構築物全体として小さい効果)。S26LおよびK28S変異体は、C99−GVP−APPと比較してEC50値を、4つのアミノ酸配列を置換した構築物(APPのGSNK配列についてAPLP2由来のSLSS)での約半分程度を増大した(Figure 19)。
【0221】
実施例7:イプシロンに対するガンマでの開裂の選択性
「非選択的」ガンマセクレターゼ阻害剤によるFas-APPsw-DD細胞(Fas-APPsw-DDはスウェーデンFAD由来のAPPのC末端の125アミノ酸とFAS由来の202−319の死ドメイン残基に融合したFas細胞外ドメインを発現するキメラタンパク質である;Genbank M67454)の処理は、AβおよびAICD産生両方の同時の阻害をもたらした(Figure 5およびFigure 6およびTable1Iに示したデータ;いくつかのデータは表示せず)。この場合の「非選択的」なる語は、Notchシグナル伝達に対して細胞Aβ(またはGammaNotchに対してGammaAPP)についての選択性の欠如を意味する。既に公開された、非選択的なガンマセクレターゼ阻害剤およびElanスルホンアミドガンマセクレターゼ阻害剤のいくつか細胞のAβおよびAICD阻害曲線をFigure 11およびFigure 12にそれぞれ示す。Figure 11は、DAPT, 44989, 46719およびMerck阻害剤化合物L-685,458についてのAβおよびAICD IC50を示し、式γ/ε選択性=IC50AICD/IC50Aβを用いて計算したγ/ε選択性の解析を示す。Aβ産生は、Fas-APPsw-DDトランスフェクトされた293細胞において阻害され、効力は一般に過去のデータとよく一致していた。特に、Aβ産生IC50は、これらの実験(Figure 11〜12)では、過去のデータと比較して0.83倍〜4.9倍、平均して3.0倍高かった(過去のデータに対してIC50が100倍低かった44989を除く)。この実験系の強みは、この分析の2つの「評価項目」(γおよびε開裂についてのIC50値)は1つの細胞(および基質)から得られるため、化合物の絶対的な効力と絶対的な濃度は重要でないということである。計算された非選択的化合物のγ/ε選択性(Figure 11およびTable I)は、DAPT, 44989, 46719およびMerck化合物についてそれぞれ、0.7、1.1、1.8および1.9である。これらの値は、実際には正常値から意味がある差異があってはならない。特定のスルホンアミドについて、計算されたγ/ε選択性は2.2〜5.8の範囲(Figure 14)であったが、これらの化合物について細胞の選択性(EC50 NotchSig/EC50 Aβ)はおよそ15〜65の範囲であった(Figure 14)。5つのスルホンアミドのうちの4つが2.2〜2.7のAPPγ/ε選択性を示したが、ELN-343673のγ/ε選択性は5.8である。これらのスルホンアミドは平均してELN-46719および他の非選択的阻害剤よりも1.5〜3.8倍高い選択性を示している。即ち、このデータはこれらのスルホンアミドが、(ε開裂に対して)APPγ開裂についてそれほど選択的ではないようであることを示している。
【0222】
実施例8:APPγおよびε開裂に対する阻害剤の効果の同時測定
上記の基質およびアッセイを用いて、ガンマセクレターゼ基質の異なる開裂部位(例えば、APPγおよびε開裂)に対する同時のガンマセクレターゼ阻害効果を測定した。このようなアッセイは通常2つのパートからなる:1)同じ培養細胞から同時に産生されるγおよびε開裂産物の測定に適当な本発明の基質(例えば、AβおよびAICD)を発現する培養細胞の阻害剤処理;および2)両方の開裂産物のレベルを定量的に測定する方法。本発明のガンマセクレターゼ基質は、基質の開裂の異なる部位から生じた2つの検出可能なガンマセクレターゼ開裂産物を生じることが可能である(「Aβ様」ペプチドおよびICDペプチド)。ICDの検出に、上記のサンドウィッチELISAを用いる。常套的なELISAを用いて馴化培地中のAβを定量する。この方法の有用性は、選択性の値が、ある1つの実験から得られた2つの値の比から得られるということである(例えば、2つのアッセイについて同時の細胞および化合物処理)。結果として、選択性の値は、化合物希釈の実験間の変動および誤差には感受性がより低くなると予想される。
【0223】
APPγ/εを用いるアッセイ法
細胞:HEK293細胞を約90%コンフルエントまで標準状態で培養した。細胞を回収し、細胞数を計数した後、PDL−コートした60mmディシュに、培地5mL中2×10細胞/ディシュで播種し、ディシュを約4時間放置した。上記に記載のとおりLipofectamine 2000TM (LF2K)(Invitrogen)で標準的な方法を用いて細胞をトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を処理し、阻害剤化合物を加え、ELISAアッセイのために上記のとおり細胞をすべて回収した。
【0224】
上記の開示は本発明の特定の具体的態様を強調するものであって、添付の請求の範囲に記載したとおり、それと等価な修飾または変更のすべてが本発明の精神および範囲内にあることを理解すべきものである。
【0225】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物が基質特異的にガンマセクレターゼを阻害するか否かを決定するための方法であって、
(a)ガンマ開裂部位を含んでなる第1のガンマセクレターゼ基質と、化合物およびガンマセクレターゼとを、ガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(b)別途、ガンマ開裂部位を含んでなる第2のガンマセクレターゼ基質と、化合物およびガンマセクレターゼとを、ガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(c)第1の基質および第2の基質のガンマ開裂部位でのガンマセクレターゼ活性の量を測定すること;
(d)工程(a)でのガンマ開裂部位でのガンマセクレターゼ活性の量と、工程(b)でのガンマ開裂部位でのガンマセクレターゼ活性の量とを比較し、工程(a)でのガンマ開裂部位でのガンマセクレターゼ活性の量が、工程(b)での量と相違する場合、その化合物がガンマセクレターゼを基質特異的に阻害していると決定すること
を含む、方法。
【請求項2】
第1のガンマセクレターゼ基質が天然に存在する基質である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1のガンマセクレターゼ基質が、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、Notch、アミロイド前駆体様タンパク質(APLP2)、チロシナーゼ、CD44、erbB4、n−カドヘリン、p75NTFRおよびSCNB2からなる群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
第1のガンマセクレターゼ基質がAPPであり、第2のガンマセクレターゼ基質がAPLP2、Notch,erbB4、チロシナーゼ、p75NTFR、SCNB2、n−カドヘリンまたはCD44である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
第1のガンマセクレターゼ基質が、第1の膜近傍のドメイン配列[JMD1]と膜貫通ドメイン配列[TMD1]とを有する第1のポリペプチドであり、第2のガンマセクレターゼ基質が、第2の膜近傍のドメイン配列[JMD2]と第1のガンマセクレターゼ基質の膜貫通ドメイン配列[TMD1]とを有する第2のポリペプチドである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
[TMD1]は、APPの膜貫通ドメインであり、[JMD1]および[JMD2]は、APLP2、Notch,erbB4、チロシナーゼ、p75NTFR、SCNB2、n−カドヘリンおよびCD44から独立に選択される膜近傍ドメインであり、[JMD1]と[JMD2]は同一でない、請求項5記載の方法。
【請求項7】
第2のガンマセクレターゼ基質が、式:
[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD](式II)
[式中、
JMDΔC4は、ガンマセクレターゼ基質の膜近傍ドメイン(JMD)配列のアミノ酸配列を含んでなり、ここでJMDは4つのC末端ペプチドを欠いており;
[TMD]は、ガンマセクレターゼ基質の膜貫通ドメイン配列を含んでなり;
X1、X2、X3およびX4は、独立して任意のアミノ酸から選択される]
を含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
X1はS、T、G、P、Q、R、V、L、N、P、A、K、E、I、F、H、WおよびDから選択され;
X2は任意のアミノ酸であり;
X3はS、N、D、P、E、R、T、F、I、K、L、V、G、W、HおよびAから選択され;
X4は任意のアミノ酸である、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
X1はS、T、G、P、Q、R、V、L、N、P、A、K、E、I、F、H、WおよびDから選択され;
X3はS、N、D、P、E、R、T、F、I、K、L、V、G、W、HおよびAから選択され;
X2およびX4はL、I、H、E、V、A、S、T、D、N、P、K、QおよびRから選択される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
X1はS、T、G、P、Q、RおよびDから選択され;
X2は任意のアミノ酸であり;
X3はS、N、D、PおよびAから選択され;
X4は任意のアミノ酸である、請求項7記載の方法。
【請求項11】
第1のガンマセクレターゼ基質がAPPである、請求項7記載の方法。
【請求項12】
(JMD)は、APLP2、Notch,erbB4、チロシナーゼ、p75NTFR、SCNB2、n−カドヘリンおよびCD44から選択されるガンマセクレターゼ基質の膜近傍ドメイン含んでなる、請求項7記載の方法。
【請求項13】
TMDは、APLP2、Notch,erbB4、チロシナーゼ、p75NTFR、SCNB2、n−カドヘリンおよびCD44から選択されるガンマセクレターゼ基質の膜貫通ドメイン含んでなる、請求項7記載の方法。
【請求項14】
化合物が、第2のガンマセクレターゼ基質と比較して第1のガンマセクレターゼ基質において、ガンマセクレターゼ活性を選択的に阻害するか否かを決定するための方法であって、
(a)第1のトランスフェクションされたセルカルチャーと種々の濃度の化合物とをガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(b)第2のトランスフェクションセルカルチャーと種々の濃度の化合物とをガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(c)第1および第2の種々の化合物濃度でトランスフェクションされたセルカルチャーのそれぞれによって産生したICDを測定し、第1のトランスフェクションされたセルカルチャーに対する化合物の効果の第1の用量応答曲線と、第2のトランスフェクションされたセルカルチャーに対する化合物の効果の第2の用量応答曲線とを作成すること;および
(d)第1と第2の用量応答曲線を比較すること
を含んでなり、ここで、
第1のトランスフェクションされたセルカルチャーは、式[JMD1][TMD1](ここで、[JMD1]は第1のガンマセクレターゼ基質に由来する)で示される膜近傍ドメイン配列(JMD1)と膜貫通ドメイン配列(TMD1)を含んでなるポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドでトランスフェクションされ、
第2のトランスフェクションされたセルカルチャーは、式[JMD2][TMD1](ここで、[JMD2]は第2のガンマセクレターゼ基質に由来し、第1と第2のポリペプチドのTMD1は同一である)で示される膜近傍ドメイン配列(JMD2)と膜貫通ドメイン配列(TMD1)を含んでなる第2のポリペプチドをコードする、第2のポリヌクレオチドでトランスフェクションされる、
方法。
【請求項15】
第1の用量応答曲線と比較して第2の用量応答曲線における高濃度側へのシフトが、その化合物が第2のガンマセクレターゼ基質と比較して第1のガンマセクレターゼ基質に対して選択的であることを示している、請求項14記載の方法。
【請求項16】
第1のガンマセクレターゼ基質が、APP、APLP2、Notch,erbB4、チロシナーゼ、p75NTFR、SCNB2、n−カドヘリンまたはCD44からなる群から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項17】
式[JMD1][TMD1]および[JMD2][TMD1]の[TMD1]がAPPの膜貫通ドメインであり、[JMD1]および[JMD2]がそれぞれAPLP2、Notch,erbB4、チロシナーゼ、p75NTFR、SCNB2、n−カドヘリンまたはCD44から独立に選択される(ここで[JMD1]と[JMD2]は同一でない)膜近傍配列ドメインである、請求項14記載の方法。
【請求項18】
活性なガンマセクレターゼが、第1および第2のセルカルチャーによって内因的におよび構造的に産生される、請求項14記載の方法。
【請求項19】
第1および第2のセルカルチャーの少なくとも1つがHEK293細胞を含んでなる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
VMLKKKC(配列番号39)に特異的に結合するモノクローナル抗体を用いてICDを測定する、請求項14記載の方法。
【請求項21】
化合物が、第2のガンマセクレターゼ基質と比較して、第1のガンマセクレターゼ基質のガンマセクレターゼ活性を選択的に阻害するか否かを決定するための方法であって、
(a)第1のトランスフェクションされたセルカルチャーと種々の濃度の化合物とをガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(b)第2のトランスフェクションセルカルチャーと種々の濃度の化合物とをガンマセクレターゼ活性が可能な条件下で接触させること;
(c)種々の化合物濃度でトランスフェクションされた第1および第2のセルカルチャーのそれぞれによって産生したICDを測定し、第1のトランスフェクションされたセルカルチャーに対する化合物の効果の第1の用量応答曲線と、第2のトランスフェクションされたセルカルチャーに対する化合物の効果の第2の用量応答曲線とを作成すること;および
(d)第1と第2の用量応答曲線を比較すること
を含んでなり、ここで、
第1のトランスフェクションされたセルカルチャーは、式II:
[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD]
[式中、
JMDΔC4は、ガンマセクレターゼ基質の膜近傍ドメイン(JMD)配列のアミノ酸配列を含み、ここでJMDは4つのC末端ペプチドを欠いており;
[TMD]は、ガンマセクレターゼ基質の膜貫通ドメイン配列を含んでなり;
X1−X2−X3−X4は、独立して任意のアミノ酸から選択される]
を含んでなる第1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドでトランスフェクションされ、
第2のトランスフェクションされたセルカルチャーは、式II:
[JMDΔC4]−X1−X2−X3−X4−[TMD]
[式中、X1−X2−X3−X4は、独立して任意のアミノ酸から選択される]
を含んでなる第2のポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチドでトランスフェクションされる、
方法。
【請求項22】
X1はS、T、G、P、Q、R、V、L、N、P、A、K、E、I、F、H、WおよびDから選択され;
X2は任意のアミノ酸であり;
X3はS、N、D、P、E、R、T、F、I、K、L、V、G、W、HおよびAから選択され;
X4は任意のアミノ酸である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
X1はS、T、G、P、Q、R、V、L、N、P、A、K、E、I、F、H、WおよびDから選択され;
X3はS、N、D、P、E、R、T、F、I、K、L、V、G、W、HおよびAから選択され;
X2およびX4はL、I、H、E、V、A、S、T、D、N、P、K、QおよびRから選択される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
X1はS、T、G、P、Q、RおよびDから選択され;
X2は任意のアミノ酸であり;
X3はS、N、D、PおよびAから選択され;
X4は任意のアミノ酸である、請求項21記載の方法。
【請求項25】
第1のポリペプチドのX1−X2−X3−X4が第1のガンマセクレターゼ基質に由来し、第2のポリペプチドのX1−X2−X3−X4が第2のガンマセクレターゼ基質に由来する、請求項21記載の方法。
【請求項26】
第1の用量応答曲線と比較して、第2の用量応答曲線における高濃度側へのシフトは、その化合物が、第2のガンマセクレターゼ基質と比較して、第1のガンマセクレターゼ基質に対して選択的であることを示している、請求項21記載の方法。
【請求項27】
第1および第2のポリペプチドのX1−X2−X3−X4は、GLNK、SLSS、GSNK、GSNS、PPAQ、SSNK、GSSK、QHAR、QASR、TTDN、RDST、DVDRまたはQIPEから独立に選択される、請求項21記載の方法。
【請求項28】
第1および第2のポリペプチドの[TMD]が配列番号13を含んでなる、請求項21記載の方法。
【請求項29】
第1および第2のポリペプチドの[JMDΔC4]が配列番号3〜5および7〜12から独立に選択される、請求項21記載の方法。
【請求項30】
式IIで示されるポリペプチドが、以下からなる群から選択される配列を含んでなる請求項21記載の方法:
(a) (C99GVP-APLP2): LEDAEFRHDS GLEEERESVG PLREDFSLSS GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号16);
(b) (C99GVP-NOTCH1): LEDAEFRHDS GPYKIEAVQS ETVEPPPPAQ GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号17);
(c) (C99GVP-SREBP1): LEDAEFRHDS GAKPEQRPSL HSRGMLDRSR GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号18);
(d) (C99APPD4-APLP2): LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVSLSS GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号42);
(e) (C99-APP-(G25S): LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVSSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号43)
(f) C99-APP-(S26L): LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVGLNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号44)
(g) C99-APP-(N27S): LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVGSSK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号45)
(h) C99-APP-(K28S): LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVGSNS GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号46)
(i) (C99APPΔ4-NOTCH1): LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVPPAQ GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号100);
(j) (C99APPΔ4-SREBP1): LEDAEFRHDS GYEVHHQKLV FFAEDVDRSR GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号101);
(k) (C99GVP-APLP2-gsnk): LEDAEFRHDS GLEEERESVG PLREDFGSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号19);
(l) (C99GVP-NOTCH1-gsnk): LEDAEFRHDS GPYKIEAVQS ETVEPPGSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号20);および
(m) (C99GVP-SREBP1-gsnk): LEDAEFRHDS GAKPEQRPSL HSRGMLGSNK GAIIGLMVGG VVIATVIVIT LVML (配列番号21)。
【請求項31】
X2がセリンであり、X4がリジンである、請求項21記載の方法。
【請求項32】
X2がロイシンであり、X4がセリンである、請求項21記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図5−5】
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【図5−6】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図6−6】
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【図6−7】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図12】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図14−1】
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【図14−2】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−533478(P2010−533478A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516305(P2010−516305)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/070012
【国際公開番号】WO2009/012237
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(399013971)エラン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (75)
【Fターム(参考)】