説明

ガンマ線検出器及びガンマ線検出プログラム

【課題】同定された相互作用ロケーションに関する時間補正を行うことで、従来に比して時間分解能が改善されたガンマ線検出器等を提供すること。
【解決手段】ガンマ線の到達に応答して発生するシンチレーションイベントに基づいて、シンチレーション光を放出する少なくとも一つのクリスタルエレメントと、少なくとも一つのクリスタルエレメント上に配置され、シンチレーション光を検出する複数の光検出器と、複数のサンプラーを用いて、検出されたシンチレーション光に基づく複数の波形をサンプリングするサンプル取得手段と、少なくとも一つのクリスタルエレメント内におけるシンチレーションイベントのロケーションを同定する同定手段と、同定されたシンチレーションイベントのロケーションに基づいて、各波形の補正時間を判定する判定手段と、補正時間を用いて、各波形を補正する補正手段と、補正された波形に基づいて、少なくとも一つのクリスタルエレメントにおけるガンマ線の到達時刻を推定する推定手段と、を具備するガンマ線検出器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ガンマ線検出における時間分解能を改善するためのガンマ線検出器及びガンマ線検出方法に関する。より具体的には、本出願は、同定された相互作用ロケーションに関する時間補正を行うことで、例えば、陽電子放出断層システム(Positron Emission Tomography system: PET)といった、ガンマ線検出システムにおいて時間分解能を改善するための装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
市販のガンマ線検出器は、透明な光ガイド(light-guide)と連結するシンチレータークリスタル(結晶)の配列(アレイ)を有している。この透明な光ガイドは、当該光ガイド上に配置された光電子増倍管(PMTs)配列に対してシンチレーション光を分配するものである。シンチレータークリスタル配列内におけるガンマ線相互作用の位置(ガンマ線がシンチレータークリスタルの配列内に入射することで発生するシンチレーションの位置)は、一般的には、近隣でグループ化されたPMTs上のガンマ線に対応する光学的信号を拡散することで符号化される。近隣にある各PMTsからの相対的な信号強度を計測し、統計的手法の適用し或いは重心(centroid)計算を実行することで、クリスタル配列に入射したガンマ線の位置(ロケーション)は、復号化される。
【0003】
近隣に対応するPMTsからの信号は、一般的に、アナログ領域において加算される。タイミングは、加算された信号の主要なエッジに基づいて計測される。近隣にあるPMTsの信号間で発生する相対的な遅延は、複合的な作用によってもたらされる可能性がある。よく研磨された表面を持つシンチレータークリスタルに対し、クリスタルアレイの表面に関して大きな角度で出射するフォトンは、小さな角度で出射するフォトンと比較して、クリスタル内において著しく遠い距離を飛来する。これらの経路長の差は、クリスタルの長さの4倍のオーダーであり、高屈折率のクリスタル(n=2に近い或いはn=2を超えるクリスタル)にとっては、経路長の差は、10mm長のシンチレータクリスタルに対し200ps〜300ps程度の遅延をもたらす可能性がある。20mm長のクリスタルにおいては、このような遅延は、400ps〜600ps程度或いはそれ以上にもなる可能性がある。
【0004】
シンチレーションフォトンがクリスタルの出力表面に一旦届くと、これによって発生し異なるPMTsへ飛来する複数の光学的フォトン間において、著しい経路長の差が発生する可能性がある。例えば、屈折率が1.5の光ガイドにおいては、二以上の異なるPMTsへ飛来する複数のフォトンの間で、当該光ガイド自体の内部において、おおよそ140psの相対的な遅延が生じ、28mm或いはそれ以上の経路長の差異が引き起こる可能性がある。
【0005】
そして、上述の作用が組合われた結果、異なるPMTsへ飛来する各フォトンの個別の幾何学的条件(ジオメトリ)に依存しながら、350psから750ps或いはそれ以上の相対的な遅延が生じることになる。これらの遅延は、市販の陽電子放出断層システム(PET)に対する時間分解能を著しく低下させる。その結果、400ps或いはそれ以上の時間分解能の実現は困難なものとなる。また、これらの相対的な遅延は、ガンマ線と相互作用するクリスタルのロケーションに依存する。このため、ガンマ線が相互作用するクリスタルの位置に応じて、各PMTが近隣にある他のPMTsに先んじて検出したり、或いは遅れて検出したりすることが生じる。
【0006】
典型的な従来のガンマ線検出システムにおいては、タイミング信号は、ディジタルサンプリング或いは多重の閾値サンプリングから導き出されるものではない。その代わりに、混合タイミング信号が、多くのPMTsのアナログ加算によって生成される。そして、パルス立ち上がり弁別器(leading-edge discriminator)或いは定比率弁別器(constant-fraction discriminator)が、混合信号に適用される。信号が加算されるPMTsは、しばしば“トリガゾーン”と呼ばれ、これらは、オーバーラップしてもよいし、それぞれ孤立するものでもよい。トリガゾーンの間のオーバーラップの量に関係なく、市販のガンマ線検出システムは、システムの回路基板上にハードウェアにより実装することでトリガゾーンを固定している。これらの従来のシステムにおける時間分解能は、カウントレートの増加と共に品質を低下させている。なぜなら、トリガゾーンにおけるPMTs部分の以前の信号のテールが、その後に続くガンマ線−クリスタル相互作用の検出タイミングと干渉するからである。この干渉は、相互作用の減少、すなわちカウントレートの増加のために時間的に平均して増加する。
【0007】
ディジタル波形サンプリング或いは多重閾値サンプリングを採用したガンマ線検出システムは、良く知られている。しかし、これらは、タイミング情報を引き出す際に、一般的には一つの光検出器のみを考慮するものである。従来のガンマ線検出システムが採用するタイミング情報を引き出すためのサンプリングに関する議論は、例えば以下の文献において見ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J-D. Leroux, J-P. Martin, D. Rouleau, C. M. Pepin, J. Cadorette, R. Fontaine and R. Lecomte, "Time Determination of BGO-APD Detectors by Digital Signal Processing for Positron Emission Tomography", IEEE Nuclear Science Symposium, Conference Record, 2003, Portland.
【非特許文献2】R. I. Wiener, S. Surti, C. C. M. Kyba, F. M. Newcomer, R. Van Berg, and J. S. Karp, "An Investigation of Waveform Sampling for improved Signal Processing in TOF PET", IEEE Medical Imaging Conference, Conference Record, 2008, Dresden, Germany.
【非特許文献3】H. Kim, C. M. Kao, Q. Xie, C. T. Chen, L. Zhou, F. Tang, H. Frisch, W. W. Moses, W. S. Choong, "A multi-threshold sampling method for TOF-PET signal processing" Nucl. Instr. and Meth. A (2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、同定された相互作用ロケーションに関する時間補正を行うことで、従来に比して時間分解能が改善されたガンマ線検出器及びガンマ線検出プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0011】
請求項1に記載の発明は、ガンマ線の到達に応答して発生するシンチレーションイベントに基づいて、シンチレーション光を放出する少なくとも一つのクリスタルエレメントと、前記少なくとも一つのクリスタルエレメント上に配置され、前記シンチレーション光を検出する複数の光検出器と、複数のサンプラーを用いて、前記検出されたシンチレーション光に基づく複数の波形をサンプリングするサンプル取得手段と、前記少なくとも一つのクリスタルエレメント内における前記シンチレーションイベントのロケーションを同定する同定手段と、前記同定されたシンチレーションイベントのロケーションに基づいて、前記各波形の補正時間を判定する判定手段と、前記補正時間を用いて、前記各波形を補正する補正手段と、前記補正された波形に基づいて、前記少なくとも一つのクリスタルエレメントにおけるガンマ線の到達時刻を推定する推定手段と、を具備することを特徴とするガンマ線検出器である。
【発明の効果】
【0012】
以上本発明によれば、同定された相互作用ロケーションに関する時間補正を行うことで、従来に比して時間分解能が改善されたガンマ線検出器及びガンマ線検出プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本実施形態に係るガンマ線検出器の概略の一例を示す図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るシンチレーションクリスタルの配列の上に配置される光電子増倍管の概略の一例を示す図である。
【図3】図3は、本実施形態に係るガンマ線検出器の概略の一例を示す図である。
【図4】図4は、本実施形態に係るガンマ線検出システムの中央処理ユニットのブロック図の一例である。
【図5A】図5Aは、本実施形態に係る光電子増倍管によって生成される波形の一例を示した図である。
【図5B】図5Bは、本実施形態に係る光電子増倍管によって生成される波形の一例を示した図である。
【図5C】図5Cは、本実施形態に係る光電子増倍管によって生成される波形の一例を示した図である。
【図5D】図5Dは、本実施形態に係る光電子増倍管によって生成される波形の一例を示した図である。
【図5E】図5Eは、本実施形態に係る光電子増倍管によって生成される波形の一例を示した図である。
【図5F】図5Fは、本実施形態に係る光電子増倍管によって生成される波形の一例を示した図である。
【図6】図6は、本実施形態に係るガンマ線検出器のアルゴリズムを示すフローチャートの一例である。
【図7】図7は、本実施形態に係るノイズ閾値処理のグラフの一例である。
【図8】図8は、本実施形態に係る波形におけるノイズ検出のグラフの一例である。
【図9】図9は、本実施形態に係る本実施形態に係る波形におけるノイズ検出のグラフの他の例である。
【図10】図10は、本実施形態に係る光電子増倍管波形選択のアルゴリズムを示すフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照しながら、実施形態について説明する。実施形態においては、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
図1は、本実施形態に係るγ線検出器の概略図の一例である。同図に示すように、γ線検出器は、複数のシンチレーションクリスタル105と、その上に配置された光電子増倍管(PMT)135及び140と、シンチレーションクリスタル105と光電子増倍管(PMT)135、140との間に配置された光ガイド130と、を有している。本実施形態では、PMTが光検出器として使用される場合を考慮する。
【0016】
しかしながら、当業者にとっては、本実施形態に係る装置を考慮すれば、どのような光検出器も、単一チャネルのPMTs、多重アノードPMTs、なだれ型(アバランシェ(avalanche)型)フォトダイオード(APD)、APDsのアレイ、SiPMsのシリコン光電子増倍管、SiPMsのアレイを含むことは、自明な事柄である。
【0017】
さらに、図1は多くのシンチレーションクリスタルを含んでいるが、単一体の(モノリシックの)シンチレーターのような他のγ線検出装置が本実施形態に用いることができることも、当業者にとっては自明である。従って、図1に示したのは単なる一例に過ぎず、本実施形態に係る装置は、当該例に限定されない。
【0018】
図1において、γ線115がシンチレーター100のクリスタルと相互作用する場合、シンチレーション光線(シンチレーションによって発生する光線、或いは当該光線の経路)120及び125は、シンチレーションイベント110の位置(ロケーション)から発生する。光電子増倍管135及び140に到達するために、シンチレーション光線120及び125は、相互作用100(すなわち、シンチレーションが発生した位置100)のクリスタル及び光ガイド130を介して飛来する。しかしながら、シンチレーション光線125は、シンチレーションイベント110から光電子増倍管140まで直接移動する。一方、シンチレーション光線120は相互作用100のクリスタル内で跳ね返り、光電子増倍管135の方へ偏向される。従って、シンチレーション光線120は、シンチレーション光線125と比較して、より長距離を飛来することになる。
【0019】
図1では、説明を簡単にするために、シンチレーション光線の経路のうちの2つを例示している。しかしながら、当業者にとっては、シンチレーションイベント110によって多重のシンチレーション光線が生成され、相互作用100及び光ガイド130のクリスタル全体にわたって散乱し、2以上の光電子増倍管に影響を及ぼすことは、自明であろう。そのため、図1の中のシンチレーション光線120及び125の数は、単なる例示であり、本実施形態において限定されるものではない。
【0020】
図1に戻って、シンチレーション光線120に沿った余分な伝播経路は、光電子増倍管140に対する光電子増倍管135の検出時間の遅れ(時間遅延)の原因になる。言い換えれば、光電子増倍管135がシンチレーション光線120によってシンチレーションイベント110を検出する前に、光電子増倍管140はシンチレーション光線125によってシンチレーションイベント110を検出する。従って、光電子増倍管140によって生成される波形は、光電子増倍管135によって生成される波形に先行することになる。さらに、光電子増倍管140によって検出されるシンチレーション光線125の強度は、光電子増倍管135によって検出されるシンチレーション光120の強度より高くなる。従って、光電子増倍管140によって生成される波形の振幅は、光電子増倍管135によって生成される波形の振幅より大きい。或いは、光電子増倍管135が、より高い強度のシンチレーション光線を検出する場合もあり、光電子増倍管140が、より低い強度のシンチレーション光線を検出する場合もある。さらには、増倍管135及び140の双方は、同じ強度のシンチレーション光を検出する場合もあり得る。すなわち、光電子増倍管135及び140が、変化する強度を有するシンチレーション光を検出したり、その結果として、変化する電圧レベルを有する対応信号を生成したりする場合であっても、本実施形態の範囲を逸脱するものではない。
【0021】
図2は、光電子増倍管135、140及びシンチレーションクリスタルアレイ105を入射面から見た場合の概略図の他の例である。図2では、相互作用100が発生するクリスタルは光電子増倍管140の下に位置し、光電子増倍管135は光電子増倍管140の対角線上に位置する。従って、相互作用100が発生したクリスタルから放出されたシンチレーション光線120及び125による移動距離は、相互作用100が発生したシンチレーションクリスタル105のアレイ内の位置、及びシンチレーションクリスタル105のアレイを覆う光電子増倍管の配置の双方に依存する。当業者であれば、本実施形態に係る装置の範囲を逸脱することなく、多重の光電子増倍管配置パターン及びシンチレーションクリスタルアレイ配置パターンを変更することは可能である。従って、図1及び2の配置は単なる一例であり、本実施形態に係る装置を限定するものではない。
【0022】
光電子増倍管135及び光電子増倍管140からの信号間の相対的な遅れには、種々の付加的な原因がある。同じ設計の、或いは同じ工場で生産された光電子増倍管は、数百ピコセカンド或いはそれ以上のPMT内の電子信号の走行時間において、生来の(natural)違いを有する可能性がある。また、光電子増倍管135及び光電子増倍管140は、著しく異なる設計を有する場合もある。この場合、光電子増倍管135と光電子増倍管140の間の走行時間の違いは、数ナノセカンドのオーダーとなる場合もあり得る。
【0023】
図3は、本実施形態に係るγ線検出システムの概略図の一例である。当業者であれば、図3のγ線検出システムが、陽電子放射断層撮影(PET)システム、或いはタイム・オブ・フライトPETシステムの一部を形成してもよいことは、自明であろう。PET及びタイム・オブ・フライトPETシステムの具体的な説明については、簡単のために、本実施形態においては省略する。タイム・オブ・フライトPETシステムの説明は、“PETにおけるタイム・オブ・フライトPET”、W.W.モーゼズ著、“原子物理学(50巻)上のIEEE会報、No.5、pp.1325−1330”において見ることができる。なお、当該文献の前内容は、リファレンスとして本実施形態に組み込まれるものとする。
【0024】
図3では、光電子増倍管135及び140は光ガイド130上に配列される。また、シンチレーションクリスタル105のアレイは光ガイド130の下に配列される。従って、光電子増倍管140及び135、光ガイド130及びシンチレーションクリスタル105のアレイの配置は、図1において示したものと同様である。第2のアレイとしてのシンチレーションクリスタル305は、当該第2のアレイの上に配置された光ガイド330及び光電子増倍管335,340を備え、シンチレーションクリスタルアレイ105の反対に配置される。
【0025】
図3において、(陽電子−電子対消滅により)γ線が試験下(図示せず)において被検体から放出された場合には、当該ガンマ線は、互いにおよそ180°反対方向に移動する。γ線検出は、相互作用100のクリスタル及び相互作用300のクリスタルにおいてほぼ同時に発生する。また、当該ガンマ線が、所定のタイムリミットの範囲内で相互作用100のクリスタル及び相互作用300のクリスタルにおいて検出されると、同時計測イベント110が決定される。従って、PET検出システムは、相互作用(シンチレーション)100及び300が発生するクリスタルにおいて、ほぼ同時にγ線を検出する。本実施形態においては、説明の簡単のために、相互作用100のクリスタルにおけるガンマ検出のみを説明する。しかしながら、当業者にとっては、相互作用100のクリスタルに関して与えられる説明は、相互作用300のクリスタルにおけるγ線検出についても実質的に適用可能であることは、自明であろう。
【0026】
図3に戻って、光電子増倍管135、140、335及び340は、それぞれサンプラー350、355、360及び365に接続される。サンプラー350、355、360及び365は、シンチレーション光に応答して、光電子増倍管135、140、340及び335によって生成された波形をサンプリング(標本化)することで、ディジタル化された波形を生成する。
【0027】
サンプラー350、355、360、365は、シグマデルタのようなアナログ/ディジタル変換器、或いは1ギガヘルツと5ギガヘルツの間の標本抽出率で作動するフラッシュコンバーターであってもよい。或いは、サンプラー350、355、360、365は、一定の標本抽出率ではなく電圧閾値トリガを使用して、光電子増倍管波形をサンプリングする、多重閾値サンプラーであってもよい。当業者であれば、本実施形態に係る装置を逸脱しない範囲において、他のサンプリング方法を採用できることは、自明であろう。
【0028】
サンプリングの後、波形は、以下に詳細に示す方法に従ってγ線到達時間を決定するための処理を実行するために、中央処理装置370に供給される。生成された波形及び到達時間は、記憶装置375に格納され、ディスプレイ385上に表示することができる。インターフェース380は、中央処理装置370を制御する構成、中央処理装置370に対し、生成された到達時間を解析するためのさらなる指示を供給する構成を用いるようにしてもよい。
【0029】
当業者であれば、ディスプレイ385は、陰極線管ディスプレイ(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)等を採用することができることは、自明であろう。インターフェース380は、キーボード、マウス、トラックボール、マイクロホン、タッチ・スクリーンあるいは中央処理装置と接続するための他の既知の装置を採用することができる。当業者であれば、さらに記憶装置375がハードディスクドライブ、CD−ROM、DVDディスク、FLASHメモリあるいは別の中央処理装置等を採用可能であることは、自明であろう。さらに、記憶装置375は中央処理装置370から取外し可能、分離可能なものであってもよいし、或いは取り付け可能なものであってもよい。記憶装置375もネットワークによって中央処理装置に接続され得る。従って、個別の空間、中央処理装置370に対して別の空間、別のビルディング或いは他のロケーションにおいて位置するようにしてもよい。
【0030】
図4は、本実施形態に係る中央処理装置370のブロック図の一例である。中央処理装置370は、メインメモリ440及び(または)ROM450に格納された指示とデータを処理するプロセッサ480を有している。プロセッサー480は、さらにディスク410あるいはCD−ROM420上に格納された情報を処理してもよい。典型的なプロセッサー480は、アメリカのインテルからのキセノン・プロセッサー、或いはアメリカのAMDからのオプテロン(opteron:登録商標)プロセッサーであろう。当業者であれば、プロセッサー480は、さらにペンティアム(登録商標)プロセッサー、Core Duo(登録商標)プロセッサー等であってもよいことは、自明であろう。従って、γ線検出のための方法に対応する指示は、ディスク410、CD−ROM420、メインメモリ440、ROM450のうちのいずれか一つには格納される。
【0031】
中央処理装置370は、インターネットまたは私設網のようなネットワークと接続するために、アメリカのインテル(登録商標)からのインテル・イーサネットPRO(登録商標)LAN接続カードのようなネットワークインターフェース475を含んでいてもよい。表示制御装置430は、ディスプレイ385と接続するためのアメリカのエヌビディア株式会社からのエヌビディアG-Force GTX(登録商標)グラフィックスアダプターであってもよい。中央処理装置370は、さらに、キーボード295、ポインティングデバイス装置285あるいはマイクロホン、トラックボール、ジョイスティック、タッチスクリーン及びその他同種のもののような他の汎用インタフェース380と接続するためにI/Oインタフェース490を含んでいてもよい。
【0032】
ディスクコントローラー460は、ディスク410(ハードディスクドライブまたはFLASHのメモリ・ドライブ等)及びCD−ROM420、或いは、バス470を備えたDVDドライブを連結する。これらは、ISA、ESIA、VESA、PCI等、或いは、中央処理装置370のコンポーネントをすべて相互に連結させるための同種のものであってもよい。中央処理装置370のコンポーネントの一般特徴及び機能性の記述は、これらの特徴等がよく知られたものであるとして、簡単化のためにその説明を省略する。もちろん、他のプロセッサー、及び技術中で既知のハードウェアベンダー及びタイプ、例えばアメリカのFreescale株式会社からのFreescale Cold Fire, I. MX and ARMプロセッサー(登録商標)のようなものを本実施形態に係る装置に用いるようにしてもよい。
【0033】
典型的な中央処理装置370が行う処理は、FPGA's、ASIC's、マイクロコントローラ、PLD's或いは光ディスクのような他のコンピュータ可読媒体の上で別々に実行されてもよい。さらに、典型的な中央処理装置370は、PCのような計算装置のハードウェアプラットフォームである。また、プロセッサー480は、例えばインテルペンティアム(登録商標)プロセッサー、或いはその他の良く知られたシステムであってもよい。メインメモリ440、ROM450、ディスク410或いはCD−ROM420のうちの任意の1つの上に格納されたコンピューター判読可能な命令は、プロセッサー480、及び当業者にとって良く知られた他のシステムであるマイクロソフトVISTA(登録商標)、UNIX(登録商標)、ソラリス(登録商標)、LINUX(登録商標)、アップルMAC−OS(登録商標)等のオペレーティング・システムと共に実行して、ユーティリィティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、オペレーティングシステムのコンポーネント、或いはこれらの組み合わせとして提供されてもよい。
【0034】
メインメモリ440及び(または)ROM450は、レジストリ等、及び中央処理装置370に似た特徴もサポートする。そのため、メインメモリ440は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、FLASHメモリ、EEPROMメモリまたは同種のものを採用することができる。一方、ROM450はPROMのような読み取り専用メモリである。良く知られていることから、メインメモリ440及びROM450のさらなる説明は、簡略化のため省略する。
【0035】
次に、光電子増倍管波形に対するタイミング補正の適用処理について、図5A−Fを参照しながら説明する。図5の中で示される波形は正波形であるが、当業者であれば、負波形・正波形ともに、本実施形態に係る装置を逸脱しない範囲内で採用できることは、自明であろう。図5Aでは、光電子増倍管(PMT)の信号500、505及び510は、サンプル540a−c、550a−c及び560a−cをそれぞれ生成するための多重の閾値を使用してサンプリングされる。多重閾値法については、サンプルは、所定の閾値を横切ったタイミングでの測定を含む。相互作用100のクリスタルは、以下に示す個別のプロセスを用いてその位置が確認される。相互作用100のクリスタルのロケーションは、ルックアップテーブルに対する指標(インデックス)として使用される。このルックアップテーブルは、近隣(例えば図1の光電子増倍管135及び140)に位置する各光電子増倍管に対しての補正時間を含むものである。或いは、時間補正は、PMT波形500、505及び510の間の相対的なトリガタイミングから決定される場合もある。いずれの場合も、相互作用に関係する特定のクリスタルにより生じるタイミング変化の補正に加えて、当該タイミング補正は、捕獲エレクトロニクスにPMTsを接続するケーブルのような、他の電子部品及びPMTsにおける走行時間変化に対しても実行することが可能である。
【0036】
図5Bは、PMT波形500、505及び510に対するタイミング補正t1、t2及びt3を示したものである。図5Cにおいては、PMT波形500、505,510のサンプルは、タイミング補正t1、t2及びt3に従ってシフトされる。その後、図5Dに示すようにシフトされたサンプルは同期され、図5Eに示すように同期されたサンプルは加算され、最終的には、到達時刻tfinalは、図5Fに示すように推定され決定される。なお、PMT波形500、505及び510に対するタイミング補正は、例えば、各波形のt1、t2及びt3をタイミング補正によって決定された所定時刻t(例えばガンマ線が所定のクリスタルに到達し相互作用100が発生した時刻)に一致させる、或いは、t1にt2及びt3を一致させるように実行される。上記したプロセスは、波形が、閾値レベルの有限数でサンプリングされる代わりに、波形を高いサンプリングレート(例えば1 ―5GHz)で周期的にサンプリングすることを除けば、完全なディジタル標本化を使用するPETシステムに適用可能である。
【0037】
当業者であれば、タイミング補正は、完全なディジタルサンプリングを行うケースに対して、サンプリングレートを整数倍することでサンプルをシフトさせて適用することができる。或いは、サブLSB調節のサブサンプルは、信号を加算する前のリサンプリング及び補間によって実行することが可能である。タイミング補正を適用する他の方法も、本実施形態に係る装置を逸脱しない範囲内において、使用されてもよい。
【0038】
次に、図6を用いて、γ線検出のプロセスの詳細について説明する。図6においては、光電子増倍管135及び140からの波形はステップ600でサンプリングされる。その後、ステップ610で、相互作用100のクリスタルの位置が識別される。多重閾値サンプリングを使用する場合、好ましくは、相互作用のクリスタルの位置は、サンプリング情報を得るための光電子増倍管135及び140によって用いられるチャネルから分離されたチャネルを介して同定される。例えば、分離されたエネルギー・チャネル(それらは各光検出器上のシンチレーション光子のイベントの統合数に比例する信号を提供する)は、重心、又は統計的解析を使用して、相互作用のクリスタルの位置を決定するために設けることも可能である。
【0039】
相互作用100のクリスタルの位置が判明すると、プロセスはステップ620へと移行する。ここでは、相互作用100のクリスタルを用いて、各波形の補正時間が決定される。例えば、記憶装置375中のルックアップテーブルは、クリスタルアレイ中のクリスタルのロケーションによって指標化された光電子増倍管135及び140のそれぞれについて、所定の補正時間を含むようにしてもよい。従って、一旦相互作用100のクリスタルのロケーションが決定されれば、このロケーションを用いて、ルックアップテーブルの探索、PMT波形に適用される補正時間の同定が実行される。
【0040】
ステップ630において、同定された補正時間は、光電子増倍管135及び140からの波形を補正するために使用される。具体的には、各PMT波形は、それぞれ対応する補正時間分だけ時間的にシフトされる。上述したように、時間のシフトは、サンプラー350、355、360及び365によって使用されるサンプリングレートの整数倍であってもよい。ここで、サンプリングレートの整数倍は、補正時間に対応する。或いは、波形は、補正時間に対応する要因によって補間するようにしてもよい。当業者であれば、サンプラー350、355、360、365のサンプリングレートは、各サンプラーと同じレートであってもよいし、異なるレートであってもよい。また、補正時間は、あるサンプラーが他のサンプラーまでのサンプリングレートのあらゆる変化を考慮したものとなっている。
【0041】
時間補正に加えて、ステップ630は、ベースライン補正を含むことも可能である。ベースライン補正とは、例えば、取得システムにおいて、増幅エレクトロニクスに起因するオフセットのような、あらゆる定数信号を排除するものである。この定数信号は、シンチレーション・パルスのリーディングエッジに先立って波形の中に存在する。この様なオフセットは、例えば温度変化により、時間的にゆっくりと変化する可能性がある。オフセットとオフセットドリフトを除去することは、改善された時間評価をもたらすことになる。
【0042】
さらに、ステップ630はゲイン(利得)補正を含むことも可能である。ゲイン補正は、PMTや取得システムでの増幅エレクトロニクスのゲインの変化を補正する倍数因子として適用される。ゲイン補正は、改善されたタイミング評価や、γ線のエネルギー或いは相互作用ロケーションといった、サンプリングされたパルスから導き出すことができる種々の値について、より良い評価をもたらすものである。
【0043】
ステップ640では、波形は、補正時間を用いて補正された後に加算される。典型例としては、波形のそれぞれのサンプルは、補間を介して時間的に同調(同期)される。サンプルが同期されると、波形はステップ640で加算され、その結果補正された波形が生成される。その後、相互作用100が発生したクリスタルへのγ線115の到達推定時間は、ステップ650で補正された波形から生成される。γ線115の到達推定時間は、例えばステップ660の電子記憶375及びステップ670の方法終了において格納される。さらに、光電子増倍管は、γ線相互作用の検出レート或いはロケーションに基づいて、近隣またはトリガゾーンによって動的(ダイナミック)に編成するようにしてもよい。その場合、上述したγ線検出のプロセスは、近隣或いはトリガゾーン内での光検出器からの波形を用いて実行されることになる。
【0044】
この様な近隣或いはトリガゾーンの動的な編成は、システム雑音レベル、周波数検出、検出レートに起因するノイズアーチファクトを低減させ、検出精度を改善するものである。PETにおいては、トリガゾーン或いは近隣の動的な編成は、異なる検出レートによる異なるスキャンプロトコル、例えば、82Rb心臓スキャン、腫瘍学のFDG全身スキャンを許容するものである。加えて、この様な動的な編成は、非常に高い検出レートを実現するために迅速に遂行される。
【0045】
近隣或いはトリガゾーンの選択は、プロスペクティブ(予期的)に行うようにしてもよいし、レトロスペクティブ(回顧的)に行うようにしてもよい。プロスペクティブな選択は、計測或いは特定のイベントからの光学検出器信号の処理前に利用可能な情報で作られる。プロスペクティブな選択において用いられるプロスペクティブな情報の例としては、期待されるカウントレート、検査プロトコル、検査プロトコルにおいて用いられる同位体を含むものである。当業者にとっては、本実施形態に係る装置の範囲を逸脱することなく、プロスペクティブな選択を行う際において、他の基準も用いることも可能である。
【0046】
光検出器の近隣或いはトリガゾーンのレトロスペクティブな選択は、特定のイベントに対応する光検出器信号の測定及び初期の処理の後に実行される。レトロスペクティブな選択を行う際に用いられる情報の例としては、波形位置、振幅、ノイズ、最後のイベントからの時間、各光検出器信号に対するS/N比を含む情報である。これらのレトロスペクティブな情報は、単に例示であり、本実施形態に係る装置の範囲を制限するものではないことは、当業者であれば、容易に理解できるであろう。
【0047】
また、プロスペクティブ及びレトロスペクティブな選択の組み合わせも実現可能である。例えば、各プロトコル(例えば全身18F−FDG及び心臓の82Rb)は、タイミング推定において用いられる異なる最大トリガゾーンサイズに対応する、異なる領域サイズを持つことも可能である。より具体的には、全身18F−FDGの様に相対的に低カウントレート検査、パルスを積み重ねる可能性が低い検査に対しては、7個の光検出器までのトリガゾーンは、使用することが可能である。心臓の82Rbのように高カウントレートの検査、パルスを積み重ねる可能性が高い検査に対しては、4個の光検出器までのトリガゾーンが使用される。従って、近隣或いはトリガゾーンに対する最大7つ或いは4つの光検出器の選択は、検査プロトコルに基づいて、プロスペクティブに実行される。その後、イベントが検出されると、例えば、最終的なタイミング推定を実行する前に高ノイズレベルを持つ光検出器を排除することによって、近隣の光検出器からの信号の各セットが検出され、トリガゾーンがレトロスペクティブに調整される。
【0048】
また、例えば相互作用位置、各光検出器における信号振幅、光電子増倍管によって検出された最新のイベントからの時間、ノイズレベルといった倍数因子を考慮するアルゴリズムは、いずれの光電子増倍管の信号が組み合わされるべきであるかを動的に決定するために用いることもできる。これにより、時間分解能を最大限まで高めることも可能である。
【0049】
例えば、図7に示す例では、各PMTに対して2つの領域が定義されている。第1の領域710においては、PMT信号の振幅は高く、最後のイベントからの時間は長く、PMTノイズは低い。従って、対応するPMT信号がタイミング決定に用いられる。上述した様に、他のPMT信号を、包含(つまり、最初の領域710内にある)のための上記基準に適合する他のPMT信号と加算する前に、相互作用ロケーションに依存する遅延補正(delay compensation)は実行される。
【0050】
一方、PMT信号の振幅が小さい場合、最後のイベントからの時間は短すぎることになり、前周期の雑音が高すぎることとなる。従って、図7に示すように、PMT信号は第2の領域705内にあり、上述した時間推定プロセスから除外されることになる。
【0051】
完全にディジタル的なアプローチでは、PMT信号中の雑音は、パルスの先頭のエッジに先行するPMT信号の分析により評価することができる。例えば、図8には、4つのPMT805、810、815及び820が、上述するタイミング補正及び組み合わせ以前のものとして示されている。PMTのベースライン部分800は、あらゆる場合において、相対的にノイズフリーである。従って、全てのPMT信号805、810、815及び820は、タイミング推定に含めることが可能である。一方、図9に示すように、PMT信号920の先頭のエッジ部分800は雑音を含んでおり、従って、タイミング推定を改善することができない。このため、タイミング推定には、PMT信号920は除外され、PMT905、910及び915が用いられる。
【0052】
次に、タイミング推定に用いる光電子増倍管波形を選ぶ方法を、図10を参照しながら説明する。図10では、ステップ1000において記述されているように、前段のイベント(プレイベント)における波形、或いはPMT波形のベースラインがサンプリングされる。ステップ1005においては、プレイベント波形におけるノイズが、所定の閾値を超えるか否かが決定される。ノイズが所定の閾値を超えた場合には、対応するPMT波形は、ステップ1010におけるタイミング検出から除外される。一方、ステップ1005においてノイズが所定の閾値を超えない場合には、PMT波形は、ステップ1015におけるタイミング検出に含まれるようにマーキングされる。この選択プロセスは、ステップ1020において終了する。
【0053】
当業者であれば、ノイズ閾値処理に種々の方法を採用可能であることは、容易に理解できるであろう。例えば、ノイズ閾値処理は、波形のベースライン部分800において、それぞれ個々のサンプルと閾値の絶対値とを比較することで、達成するようにしてもよい。また、波形のベースライン部分800におけるサンプルの絶対値は、ともに平均されてもよい。
【0054】
また、平均値と雑音しきい値と比較するようにしてもよい。別の実施例では、ベースライン800におけるピーク値及びポストイベントセクション830におけるピーク値の比率は生成され、雑音しきい値と比較される。後のイベント(ポストイベント)選択部分830のサンプル値の絶対値平均に対する、ベースライン部分800におけるサンプル値の絶対値平均の比を、ノイズ閾値と比較するようにしてもよい。当業者にとっては、本実施形態に係る装置の範囲を逸脱することなく、光電子増倍管135、140によって生成される波形の閾値処理について、他の手法を用いることが可能であるのは、自明であろう。
【0055】
また、多重の閾値を用いるアプローチにおいては、PMTにおけるノイズ信号は、低閾値レベル(例えば、ノイズの僅か上の数ミリボルト等)に対して設定される比較器や、回数を計測するカウンタを用いて推定するようにしてもよい。なお、比較器は、所定の時間間隔でトリガを掛けられるものである。カウントが所定の閾値(測定された信号レベルに基づいて変化するものであってもよい)を上回る場合には、対応するPMT信号は、タイミング推定から除外される。上記PMT信号の選択は単なる例示であり、信号選択やノイズフィルタリングについての他の技術を本実施形態に係る装置に組み込むことが可能であるのは、当業者であれば自明であろう。
【0056】
上述したように、タイミング補正は、ルックアップテーブルとして格納されてもよい。ここで、各クリスタルは、多くのPMTsとの関連を有しており、各PMTは、特定のクリスタルについてある遅延値を有することになる。ルックアップテーブルに含まれた遅延値は、キャリブレーション周期の間において決定するようにしてもよい。さらに、既述のように、タイミング補正は、例えばPMTs及びエレクトロニクスにおける移動時間変動といった、タイミング変化の源(ソース)の補正についても有効である。なお、上記移動時間の変動は、光学経路の長さの違いを理由として発生する単なる差異に起因するものではない。
【0057】
他の実施形態においては、時間ピックアップ方法のバリエーションとして、例えばパルス立ち上がり弁別器(leading-edge discriminator)或いは定比率弁別器(constant-fraction discriminator)を用いて、ディジタル的に実行するようにしてもよい。これにより、関連性のあるPMTsよりディジタル的に加算された信号を用いて、最終的な到達時間を推定することができる。各PMTからの相対的な信号は、サンプルから、或いは分離された電子的チャネルから、例えばディジタル的に実行されるエネルギーチャネルとして、或いはアナログ整形フィルタの列(bank)として決定することも可能である。
【0058】
また、各光電子増倍管におけるPMT信号の相対的な到達時間は、相互作用のロケーションに関係する付加的な情報(例えば、相互作用のクリスタル)に提供するものである。この情報は、例えば、相互作用のロケーションを決定するために、集積化されたPMT信号と組み合わせて利用するようにしてもよい。統計的方法(例えば最大尤推定法)を使用して、これらの全ての情報を組み合わせることで、改善された位置推定をもたらすことができる。
【0059】
さらに、相対的なタイミング情報は、高角度及び低角度に対する光学的経路の相対的な変化が相互作用の深さに依存することから、相互作用の深さ情報をも与えるものである。従って、相対的なタイミング情報と関連する相互作用の深さに関する情報は、例えば、特にスキャナーの軸から離れたロケーションにおける視差の低減や除去、空間分解能の改善等に用いることも可能である。
【0060】
シンチレーターパルスの詳細な形状は、完全にディジタル的なPETシステムにおいて決定される。このため、シンチレーターパルスを解析することで、例えば、スキャナーの軸から離れた特定のロケーションにおける相互作用の深さ、視差の低減或いは除去の結果、空間分解能の改善といった付加的な情報を抽出するようにしてもよい。
【0061】
なお、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。実施形態において示したプロセス、フローチャートにおける記述或いはブロック等は、実施形態おいて示した各プロセスにおける特定のロジック、機能、ステップを実行するための体表的な一例に過ぎない。また、実施形態において示した処理の択一的な実行は、本実施形態に係る装置の範疇に含まれるものとする。本実施形態に係る装置における各機能は、当業者にとって各機能を実質的に含むものと理解できるものであれは、上述した内容と異なる順序で実行してもよく、実質的に同時に、或いは逆順序によっても実行することができる。さらに、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
100、300…相互作用、105…シンチレーションクリスタルアレイ、110…シンチレーションイベント、115…γ線、120…シンチレーション光線、130…光ガイド、125…シンチレーション光線、135、140、340、335…光電子増倍管、295…キーボード、285…ポインティングデバイス、350、355、360、365…サンプラー、305…シンチレーションクリスタル305、370…CPU、375…記憶装置、380…インターフェース、385…ディスプレイ、410…ディスク、420…CD−ROM、430…ディスプレイコントローラ、440…メインメモリ、450…ROM、450…ディスクコントローラ、470…バス、475…ネットワークインターフェース、480…プロセッサ、490…I/Oインターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガンマ線の到達に応答して発生するシンチレーションイベントに基づいて、シンチレーション光を放出する少なくとも一つのクリスタルエレメントと、
前記少なくとも一つのクリスタルエレメント上に配置され、前記シンチレーション光を検出する複数の光検出器と、
複数のサンプラーを用いて、前記検出されたシンチレーション光に基づく複数の波形をサンプリングするサンプル取得手段と、
前記少なくとも一つのクリスタルエレメント内における前記シンチレーションイベントのロケーションを同定する同定手段と、
前記同定されたシンチレーションイベントのロケーションに基づいて、前記各波形の補正時間を判定する判定手段と、
前記補正時間を用いて、前記各波形を補正する補正手段と、
前記補正された波形に基づいて、前記少なくとも一つのクリスタルエレメントにおけるガンマ線の到達時刻を推定する推定手段と、
を具備することを特徴とするガンマ線検出器。
【請求項2】
前記サンプル取得手段は、少なくとも1GHzのレートにおいては、周期的に前記サンプリングを実行することを特徴とする請求項1記載のガンマ線検出器。
【請求項3】
ロケーションと補正時間とが対応付けられたルックアップテーブルを記憶する記憶手段をさらに具備し、
前記判定手段は、前ルックアップテーブルを用いて前記補正時間を判定すること、
を特徴とする請求項1又は2記載のガンマ線検出器。
【請求項4】
前記補正後において、前記波形のそれぞれを補間する補間手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のガンマ線検出器。
【請求項5】
前記同定手段は、前記各光検出器における相対的な到達時間に基づいて、前記シンチレーションイベントのロケーションを同定することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載のガンマ線検出器。
【請求項6】
前記補正時間に基づいて、前記波形を補間する補間手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のガンマ線検出器。
【請求項7】
前記補正手段は、前記シンチレーションイベントのロケーションに応じた異なる補正時間を用いて、前記各波形毎に前記補正を実行することを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項記載のガンマ線検出器。
【請求項8】
前記判定手段は、前記複数の波形間の相対的なタイミングの少なくとも一つと前記各波形の形状とに基づいて、前記少なくとも一つのクリスタルエレメント内における相互作用の深さを判定し、
前記判定された相互作用の深さを用いて、対応するPET画像における視差を低減させる低減手段をさらに具備すること、
を特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項記載のガンマ線検出器。
【請求項9】
前記複数の光検出器は、光電子増倍管であることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項記載のガンマ線検出器。
【請求項10】
前記複数の光検出器は、シリコンフォトマルチプライアであることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項記載のガンマ線検出器。
【請求項11】
プロスペクティブ情報に基づいて、前記複数の光検出器のサブセットを動的に選択する選択手段をさらに具備し、
前記推定手段は、前記選択されたサブセットからの前記補正された波形に基づいて、前記少なくとも一つのクリスタルエレメントにおけるガンマ線の到達時間を推定すること、
を特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか一項記載のガンマ線検出器。
【請求項12】
前記プロスペクティブ情報は、投影カウントレート、検査プロトコル及び前記検査プロトコルにおいて用いられる同位体を有することを特徴とする請求項11記載のガンマ線検出器。
【請求項13】
レトロスペクティブ情報に基づいて、光検出器のサブセットを動的に選択する選択手段をさらに具備し、
前記推定手段は、複数の光検出器のうち動的に選択されたサブセットからの前記補正された波形に基づいて、前記少なくとも一つのクリスタルエレメントにおけるガンマ線の到達時間を推定すること、
を特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか一項記載のガンマ線検出器。
【請求項14】
前記レトロスペクティブ情報は、前記複数の光検出器のそれぞれに対応する波形の振幅、前記複数の光検出器のそれぞれにおける最新のガンマ線検出からの時間、前記複数の光検出器のそれぞれについて計測されたノイズレベルを有することを特徴とする請求項13記載のガンマ線検出器。
【請求項15】
少なくとも一つのクリスタルエレメント上に配置された複数の光検出器から複数のサンプル波形であって、ガンマ線の到達に応答して、前記少なくとも一つのクリスタルエレメントにおけるシンチレーションイベントから放出されるシンチレーション光に基づいて前記光検出器によって生成される前記サンプル波形を記憶する記憶手段と、
前記少なくとも一つのクリスタルエレメント内における前記シンチレーションイベントのロケーションを同定するデータ処理手段と、
前記同定されたシンチレーションイベントのロケーションに基づいて、前記各波形に対する補正時間を決定する決定手段と、
前記補正時間を用いて、前各波形を補正する補正手段と、
前記補正された波形に基づいて、前記シンチレーションイベントが発生した前記クリスタルにおけるガンマ線の到達時間を推定する推定手段と、
を具備することを特徴とするガンマ線検出器。
【請求項16】
前記記憶手段は、ロケーションと補正時間とが対応付けられたルックアップテーブルを記憶し、
前記データ処理手段は、前記ルップアップテーブルと前記シンチレーションイベントのロケーションとを用いて、前記各補正時間を決定すること、
を特徴とする請求項15記載のガンマ線検出器。
【請求項17】
前記データ処理手段は、前記複数のサンプル波形のうちの対応する一つを用いて、前記各サンプル波形をサンプリングレートの整数倍分だけ時間方向にシフトさせることを特徴とする請求項15記載のガンマ線検出器。
【請求項18】
前記データ処理手段は、前記対応する補正時間に基づいて各波形を補間することを特徴とする請求項15記載のガンマ線検出器。
【請求項19】
前記データ処理手段は、前記複数の波形間の相対的なタイミング及び前記各波形の形状に基づいて、前記少なくとも一つのクリスタルエレメントにおけるガンマ線の相互作用の深さを決定し、且つ前記相互作用の深さを用いて対応するPET画像の視差を低減させるものであることを特徴とする請求項15記載のガンマ線検出器。
【請求項20】
ガンマ線検出器は、陽電子放出断層撮像装置に含まれるものであることを特徴とする請求項15記載のガンマ線検出器。
【請求項21】
ガンマ線検出器は、タイムオブフライト型の陽電子放出断層撮像装置に含まれるものであることを特徴とする請求項15記載のガンマ線検出器。
【請求項22】
少なくとも一つのクリスタルエレメント上に配置された複数の光検出器によって生成される複数の波形であって、少なくとも一つのクリスタルエレメントにおいてガンマ線の到達に応答して発生するシンチレーションイベントにより放出されるシンチレーション光に基づいて生成される前記複数の波形を記憶する記憶手段と、
少なくとも一つのクリスタルエレメント内におけるシンチレーションイベントのロケーションを同定する同定手段と、
前記同定されたシンチレーションイベントのロケーションに基づいて、前記各波形に対する補正時間を決定する時間決定手段と、
前記補正時間を用いて、前記各波形を補正する補正手段と、
前記補正された波形に基づいて、前記少なくとも一つのシンチレーションクリスタルイベントにおけるガンマ線の到達時間を推定する推定手段と、
を具備することを特徴とするガンマ線検出器。
【請求項23】
前記補正の後、前記波形を補間する補間手段をさらに具備することを特徴とする請求項22記載のガンマ線検出器。
【請求項24】
前記記憶手段は、前記シンチレーションイベントのクリスタルロケーションによって指標化され、前記補正時間を決定するためのルックアップテーブルにおいて、所定の補正時間を記憶することを特徴とする請求項22記載のガンマ線検出器。
【請求項25】
前記波形をサンプリングするために用いられる所定のサンプリングレートの整数倍であって、前記補正時間に対応する整数倍分だけ前記波形を時間方向にシフトするシフト手段をさらに具備することを特徴とする請求項22記載のガンマ線検出器。
【請求項26】
前記補正時間に従って前記波形を補間する補間手段をさらに具備することを特徴とする請求項22記載のガンマ線検出器。
【請求項27】
前記複数の波形間における少なくとも一つの相対的なタイミングと前記各波形の形状とに基づいて、前記少なくとも一つのクリスタルエレメントにおける前記ガンマ線の相互作用の深さを決定する深さ決定手段と、
前記相互作用の深さに基づいて、対応するPET画像における視差を低減させる低減手段と、
をさらに具備することを特徴とする請求項22記載のガンマ線検出器。
【請求項28】
コンピュータに、
少なくとも一つのクリスタルエレメント上に配置された複数の光検出器から複数のサンプル波形であって、ガンマ線の到達に応答して、前記少なくとも一つのクリスタルエレメントにおけるシンチレーションイベントから放出されるシンチレーション光に基づいて前記光検出器によって生成される前記サンプル波形を用いて、前記少なくとも一つのクリスタルエレメント内における前記シンチレーションイベントのロケーションを同定させる同定機能と、
前記同定されたシンチレーションイベントのロケーションに基づいて、前記各波形に対する補正時間を決定させる決定機能と、
前記補正時間を用いて、前各波形を補正させる補正機能と、
前記補正された波形に基づいて、前記シンチレーションイベントが発生した前記クリスタルにおけるガンマ線の到達時間を推定させる推定機能と、
を実現させることを特徴とするガンマ線検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−137821(P2011−137821A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291300(P2010−291300)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】