説明

ガードル及び2wayアップガードル

【課題】ヒップアップと同時に内腿をスリムにできるガードルを提供する。
【解決手段】着用時に周囲よりも強い圧力が得られる帯状の緊張部として、後ろ中心上部から腸骨上部を通り大腿部外側に至る帯状の側面緊張帯と上縁及び外縁が仙骨下部から臀溝の上位置を通り大腿部外側に至り、脚根元から大腿部内側下端に至る範囲を覆う臀部・太腿裏面緊張帯を設け、両緊張部の下端側を大腿部外側にて重複させて強い緊張部である緊張帯クロス部を設けたことを特徴とするガードル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒップアップ用のガードルに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒップアップを目的としたショーツやガードルは多数提案されている。
特許文献1(特開平08−158109号公報)には、比較的緊締力の強いヒップ引き上げ片を腰部からヒップからヒップ頂より内側を通って臀溝下端より下方まで縦方向に延設したものであって、比較的緊締力の強いヒップ引上げ部が後正中線寄りの左右の大殿筋の縁近傍に沿って延在することにより、その部分の衣類縦方向への緊締力が増し伸びが抑えられ、その結果、その近傍のヒップの頂点近傍からその下側に充当されている部分の布の伸びも抑制され、この部分の布が容易に伸びてしまう事によってヒップが下がるのを防止して、ヒップアップ機能を達成している。
【0003】
特許文献2(実用新案登録3118295号公報)には、左右の臀部膨出部の夫々の下側部から腰側部にかけた臀部外周部分に強緊締力とした所要幅の第1サポート部を設けると共に、太もも回りに強緊締力とした所要幅の第2サポート部を設け、前記第1サポート部と第2サポート部とを臀部膨出部の下端縁に沿う臀溝位置で接合させて、第1サポート部では臀部外周部分に強い緊締力をかけることにより臀部外周ライン、所謂ヒップラインを明確化すると共にヒップアップ機能を発生させ、また、第2サポート部は太股回りに強い緊締力をかけることで、ヒップラインから太ももにかける贅肉を確実に押さえこみ、ヒップの下側部分をすっきりとさせることができるガードルが開示されている。
特許文献3(特許3924586号公報)には、大腿部の前側部分であって腸棘点と膝蓋中央点との中間点に対応する部分にクロスする緊締部を設けることにより、大腿四頭筋に刺激を与え、かつ大腿四頭筋の動きを妨げないという点を基本構成としている。これにより、着用者の脚が自然に後まで大きく蹴られるようになるため、大殿筋がよく使われ、歩行するだけで、自然に引き締まったヒップを実現することができるとするカードルが開示されている。
特許文献4(特開2004−300619号公報)には、大腿部の内側から当該大腿部の前側を通り、当該大腿部の脇側までを覆う大内転筋サポート部を設けることにより、大内転筋サポート部は、らせん状に形成されて、これにより、帯状の大内転筋サポート部が大内転筋の動きをしっかりとサポートすることができるので着用者の膝が内側に向きやすくなり、ひいては、脚を美しくみせることができるとするガードルが開示されている。
特許文献5(特開2001−64801号公報)には、運動によって発生する裾や上縁がずり上がりやずり下がりによって生ずる着崩れを防止するために、易伸縮性の部分を大腿前面を縦方向、ヒップ部、鼠径部等に設けたガードルが開示されている。
特許文献6(特開2006−233344号公報)には、ヒップアップ用緊締部をヒップ面では臀溝に沿って横断的に設け端部を腰まで延出したものであって、延出端を口ゴムから離して設けることにより、緊締部が過度にヒップに食い込み段差が現れることを防止するガードルが開示されている。
【0004】
従来講じられているヒップアップ策は、臀溝に沿って下方から支えて垂れ下がりを防止するタイプ(特許文献2)、臀溝下方から上方向けて縦方向にサポート部を設けて垂れ下がりを押さえるタイプ(特許文献1)、大腿部前面部を横断する方向に緊締部を設けて大腿部をスリムに見せるタイプ(特許文献2、特許文献3)などがある。
これら多くの従来技術は、ヒップ落ちを臀溝を中心として支え、持ち上げるものであるが、局所的に対処しているため緊締部が強調され周辺部の盛り上がりが目立ち易い。ヒップアップがなされても、内腿部が引き締まっていないとヒップから大腿部へのきれいな線が実現困難である。
【0005】
【特許文献1】特開平08−158109号公報
【特許文献2】実用新案登録3118295号公報
【特許文献3】特許3924586号公報
【特許文献4】特開2004−300619号公報
【特許文献5】特開2001−64801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、ヒップアップと同時に内腿をスリムにできるガードルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の主要な構成は次のとおりである。
(1)着用時に周囲よりも強い圧力が得られる帯状の緊張部として、
後ろ中心上部から腸骨上部を通り大腿部外側に至る帯状の側面緊張帯と
上縁及び外縁が仙骨下部から臀溝の上位置を通り大腿部外側に至り、脚根元から大腿部内側下端に至る範囲を覆う臀部・太腿裏面緊張帯を設け、
両緊張部の下端側を大腿部外側にて重複させて強い緊張部である緊張帯クロス部を設けたこと
を特徴とするガードル。
(2)腹部片、2つのヒップ−脚部片、クロッチ部片から構成されることを特徴とする(1)記載のガードル。
(3)下縁部は縁始末不用な裾とするガードルであって、
側面緊張帯、腸骨上部において上縁部まで設けられていることを特徴とする(1)又は(2)に記載のガードル。
(4)2つの緊張部は、伸縮性素材にポリウレタン系樹脂を接着あるいは付着、又は、ポリウレタン繊維を含有する素材を積層したことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のガードル。
(5)2つの緊張部は、ヒップ−脚部片に設けられていることを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載のガードル。
(6)腹部片に緊張部を設けたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のガードル。
(7)(1)〜(6)のいずれかにに記載されたガードルが、側面緊張帯と臀部・太腿裏面緊張帯の2つの緊張帯によって、ヒップアップ機能と内腿スリム化機能を有することを特徴とする2wayアップガードル。
【発明の効果】
【0008】
1.本願発明のガードルは、臀部から内腿・太腿裏面にかけて縦方向に設けた緊締部の下端と後ろ中心から太腿側部に沿って縦方向に設けた緊締部の下端を太腿側部においてクロスさせることにより、クロス部が緊張の高い部分となりガードル裾部の不動点となり、一方ガードルの上方は後ろ中心から太腿側部に沿って縦方向に設けた緊締部を通過する腸骨上部が支点となるので、着用者の動きによる着崩れが発生しにくく、ヒップアップ機能及び内腿のスリム機能が維持できる。特に、ヒップラインから内腿にかけて引き締まり、バックスタイルが向上する。
2.臀部から内腿・太腿裏面にかけて縦方向に設けた緊締部によって、ヒップアップ効果及び内腿の肉を前方向に押出す効果を奏する。臀部から内腿・太腿裏面にかけて周囲を輪状に締め付ける緊締部を設けていないので、輪切り状の段部の出現がない。
3.後ろ中心上部から腸骨上部を通り大腿部外側に至る帯状の側面緊張帯は、筋肉繊維の方向に沿う縦方向に配置されているので、大腿四頭筋などを締め付けることが無く、筋肉の運動を阻害することがない。更に、この側面緊張帯は、歩行時に腿を持ち上げる方向に付勢するので、腿・膝が上がり歩幅が広がって、歩行スタイルの改善に寄与する。臀部・太腿裏面緊張帯は、下方から臀部を支えてヒップアップ機能を奏する。また、この臀部・太腿裏面緊張帯は、内腿側を引き締める機能を奏し、歩行を続けることにしたがって、贅肉は前方に押され続け、内腿側の贅肉が見えなくなり、スリム化が促進される。そして、臀部・太腿裏面緊張帯は、太腿裏面から内腿側とヒップ下部に連続して設けられているので、内腿のスリム化機能と臀部を下支えしてヒップアップする機能が一体的に機能して、自然に創出することができる。
4.小股の切れ上がったきれいなバックスタイルを実現し、歩幅も大きく颯爽とした姿勢の実現に寄与する。
5.ガードルを構成する5枚の布片の内、2つの緊張部をヒップ−脚部片に形成することにより、緊締部がとぎれることなく一体に形成できる。一体に連続して形成されているので緊張力がスムーズに伝えることができる。また、緊締部を別部材にして縫製しないので継ぎ目が目立たない。
6.腹部に緊締部を設けることにより、腹下部の膨出を押さえることができ、全体として引き締まった下半身を表現することができる。
7.2つの緊張帯をポリウレタン系樹脂を接着や付着などにより、薄く形成することができるので、着衣の上に痕が現れず、本発明のガードルの着用が目立つことがない。また、脚部の裾も始末不用とすると目立たない。
8.側面緊張帯と臀部・太腿裏面緊張帯により、ヒップと内腿のスリム化を奏することができる2wayアップガードルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、抵抗感や窮屈感を軽減し、必要な部位に緊張力を高めることにより、お尻の丸みを崩すことなくヒップアップ効果を高める機能を有する衣類を提供する。
ガードル本体の素材は、ポリウレタン繊維を含有する素材を使用する。緊張力を高める手段としてウレタン系の樹脂を接着又は、当て布素材としてポリウレタン繊維を含有する素材を縫合する。緊張帯は、太腿裏面から臀溝を覆う箇所まで延出して設けて、内大転筋(内腿)の柔軟性を高めつつ、内大転筋〜仙骨下部に向かい緊張力をプラスすることにより、内腿に意識を向けさせる。他方、太腿の外側から太腿骨に沿い腸骨上を通過し、ベルトの落ち着く後ろ中心へとつなげる緊張帯を設ける。2つの緊張帯は太腿の外側でクロスさせて、緊張力高めた部分であって、且つ、2方向からの緊張力をクロスさせて設けてある。本発明の緊張帯は縦方向に設けているので筋肉組織や血管などの組織を横断することがない。そのため、窮屈感や圧迫感が生じない。一方、縦方向なので裾がずり上がるなどの着崩れの恐れがあるが、裾の太腿外側部で緊張帯をクロスさせて伸縮性を押さえた固定部を創出し、また、緊張力を別々の2方向とすることにより相殺して、引き上げ力を減殺している。また、腸骨上部で緊張帯が支えられ、上側固定部が形成されるので、上部においても、引き下げ力に抵抗することができ、ずり下がり等の着崩れが発生しにくい。
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。本発明の形態としてガードルの例について説明する。
図1はガードルの背面図、図2はガードルの正面図、図3はガードルの片側の構成部品図、図4はガードルの着用状態説明図である。
【0011】
本ガードル1は、左右対称であって、片側にそれぞれ側面緊張帯2と臀部・太腿裏面緊張帯3の2つの緊張帯が設けられている。ガードルの裾側で2つの緊張帯の下端側は太腿外側部でオーバーラップしてクロスしている。
【0012】
側面緊張帯2は、概略的には始端が後中心にあって、ガードルの上縁11からガードル側方を通り太腿外側にかけて縦方向に設けられており、ガードルの裾12に至っている。上方側は後中心から腸骨稜から腸骨(骨盤)上に向けて水平から湾曲して下降部に連続している。太腿裏面にて裾に向かって下降する緊張帯の縁ラインはやや後ろ側に向けて斜めに設ける。側面緊張帯2の太腿部の幅はほぼ一定とすることができる。太腿前面にて裾に向かって下降する緊張帯の縁ラインは、腿上部でやや前面に掛かり裾に向かってやや側縁に傾斜している。下端は伸縮抵抗が高い部分である臀部・太腿裏面緊張帯3に下端側とオーバーラップしたクロス部分となっているので、歩行などの運動や姿勢変化に伴う裾のずり上がり抵抗となり、着崩れが発生しにくい。
【0013】
上方側は体の動きに対しても安定した箇所を通っており、腸骨(骨盤)上付近の湾曲部が形成されているので、上方部は下方に引っ張られても抵抗が大きく、ずり下がり等の着崩れ抵抗が高い。下降部は太腿外側に向けてやや傾斜して配置されているので、大腿四頭筋を横断することなく、ほぼ沿っているので、歩行運動では、大腿四頭筋を収縮する方向に付勢され、腿や膝が上げる方向に補助することとなる。従って、足が良く上がり、歩幅が広がり、颯爽とした歩行を助けることとなる。
【0014】
臀部・太腿裏面緊張帯3は、概略的には始端が臀溝8を覆う箇所から太腿裏面全体を覆い膝裏上方のガードルの裾12に至っている。内側はクロッチ部に接触し、股部からほぼ真っ直ぐに裾に向かって形成する。例えば、ガードルの内腿側の縫合ラインとなる。外側は、臀溝8の終端を越えた部分から湾曲して太腿外側に向けてやや広がりながら裾12に至っている。臀部・太腿裏面緊張帯3の上部固定点は股部となる。例えば、クロッチ部との縫合部となる。
この臀部・太腿裏面緊張帯3では、2つの緊張帯の下端側は太腿外側部でオーバーラップしてクロス部と股部との間に斜めに強い緊張力が発生する。これにより、内腿の柔らかい部分は太腿前面側に押し出され、直線状に設けられた内側ラインによって、戻りが押さえられる。
【0015】
この臀部・太腿裏面緊張帯3は、臀溝上辺から太腿裏面全体を覆う広い幅に構成され、この幅で覆われる人体の部分は、柔らかい部分であり、全面的に緊張部でカバーしてすっきりした補正を創出することができる。上辺部は臀溝部を覆い下方から支えてヒップアップを実現する。
この臀部・太腿裏面緊張帯3は、ヒップアップ作用、腿裏面のスリム化作用に際し、横断的に締め付ける構造ではないので、大腿二頭筋の動きを妨げることなく、窮屈な装着感を軽減している。
【0016】
背面にてヒップ頂部を中心とした範囲から臀溝外側にかけて緊張部が設けられておらず、お尻を圧迫せずお尻の丸みを崩すことなく自然な形状を表現している。この部分を圧迫していないので、自然な装着感が得られる。
前面側は緊張部が設けられていないので大腿四頭筋の動きを制限することがない。また、内腿の前面側にも緊張部が設けられていないので、臀部・太腿裏面緊張帯3によって押し出された柔らかい肉を受け容れることができる。腹部は、緊張領域とすることもでき、緊張領域とした場合には下腹部の膨れを押さえることができる。
【0017】
緊張帯を設ける手段は、ポリウレタン系の樹脂などのゴム弾力性素材を生地に接着する手段、あるいは、ポリウレタン繊維を含有する当て布を生地に裏打ちすることができる。
ウレタン系の樹脂を生地に接着する手段は、生地の厚みがほとんど変わらないので、このガードルを装着した場合にズボンなどの表面に段差が現れることがない。
縁始末不用の布地を使用するとガードルの裾や上縁が表に現れないのですっきりとして、ガードルの着用を目立たなくすることができる。
【0018】
ポリウレタン樹脂は、溶液あるいはエマルジョンの形にしやすい樹脂やフイルム状にして熱プレスなどにより被服と接着剤を用い、または、用いずして接着できる。ポリウレタン樹脂は伸縮力があって、緊張帯を形成する素材として適している。ポリウレタン樹脂を布地に付与する場合には、樹脂の溶液またはエマルジョンなどを生地に含浸、塗布、スプレーしたり必要に応じて適宜、乾燥や熱処理をするなどの手段や、あるいはこれらの樹脂を離型用のフイルム状物などの上に必要なパターン状に薄く塗布しあるいは印刷して熱プレスで転写するなどして、肉眼で見て、表に影響するような段差が出ないような厚さで付与することができる。樹脂の溶液あるいはエマルジョンを付与する場合は、付与後、乾燥あるいは熱処理されるが、樹脂を付与した場合の熱処理については樹脂の組成や濃度などによって異なるので、それぞれに応じて適宜の条件を採用すれば良く、特に限定するものではないが、60〜150℃程度でアニーリングすることができる。また、離型性ポリエステルフイルム等のフイルム上に前記樹脂を所望のパターン状に印刷または塗布したものを熱転写することもできる。樹脂の厚みは、100〜300μmとすると表に影響が小さい。薄さは緊張力などの設計に応じて選択することができる。
【0019】
緊張帯を形成する面はガードルの表面でも裏面でも良い。ポリウレタン樹脂などの肌触りを考慮して表面側とすることも可能である。ポリウレタン樹脂は、緊張帯の幅内にメッシュ状、水玉状などに形成することができ、メッシュの目の大きさや水玉の密度を偏差させることにより部分的に発生させる緊張力を調整することができる。
【0020】
図1は、本実施態様のガードル1の背面図を示し、全体形状は標準的な形状であり、生地は伸縮性の布地が用いられている。クロッチ部は吸湿性等の別素材である。
側面緊張帯2は、左右に設けられている。それぞれは、上部はやや湾曲した水平であって、始端が後中心上部10にあり、ガードルの上縁11からガードル側方を通り太腿外側にかけて縦方向に設けられており、ガードルの裾12に至っている。上方側は後中心から腸骨稜から腸骨(骨盤)上に向けて水平から湾曲して下降部に連続している。背面図的には太腿裏面側にて裾に向かって下降する緊張帯の縁ラインはやや後ろ側に向けて斜めに設ける。側面緊張帯2の太腿部の幅はほぼ一定とすることができる。太腿前面側にて裾に向かって下降する緊張帯の縁ラインは、腿上部でやや前面に掛かり裾に向かってやや側縁に傾斜している。下端は他の緊張帯とクロスして伸縮抵抗が高い部分である緊張帯クロス部4を構成する。他の緊張帯である臀部・太腿裏面緊張帯3に下端側とオーバーラップした緊張帯クロス部4は、伸びにくい部分であり、歩行などの運動や姿勢変化に伴う裾のずり上がり抵抗となり、着崩れ防止機能を発揮する。
【0021】
側面緊張帯2は、上方側は後中心から腸骨稜から腸骨(骨盤)部分にて体の動きに対しても安定した箇所を通っており、下端部は動きの少ない太腿側面で伸びにくい部分である緊張帯クロス部4となっているので、上下端が安定した構成となっている。中間部である下降部は太腿外側に向けてやや傾斜して配置されているので、大腿四頭筋を横断することなく、ほぼ沿っているので、筋肉等の縦方向に走る人体組織を締め付けることが無く、歩行運動では、大腿四頭筋を収縮する方向に付勢され、腿や膝が上げる方向に補助することとなる。従って、着用圧迫感の発生を防止し、足が良く上がり、歩幅が広がり、颯爽とした歩行を助けることとなる。
【0022】
図1背面視にて臀部・太腿裏面緊張帯3は、ヒップ下部から太腿裏面全体を覆うように形成されている。上部は、臀溝8を覆っていて、内側はクロッチ部16に接触し、外側は、臀溝8の終端を越えた部分に至って湾曲している。
内腿側縁はクロッチ部に始端し、股部からほぼ真っ直ぐに裾に向かって形成されている。この内腿側縁は、例えば、ガードルの内腿側の縫合ラインとなる。外側縁は、臀溝8の終端を越えた部分から湾曲して太腿外側に向けてやや広がりながら裾12に至っている。臀部・太腿裏面緊張帯3の上部固定点は股部である、クロッチ部との縫合部となる。
この臀部・太腿裏面緊張帯3の下端側は太腿外側部で側面緊張帯2とオーバーラップして緊張帯クロス部4を形成する。この緊張帯クロス部4は、前記のとおり伸びにくい部分であり、歩行などの運動や姿勢変化に対して移動しにくい安定した場所となる。
【0023】
この臀部・太腿裏面緊張帯3は、内側上端の股部と外側下端の緊張帯クロス部4が上下の安定した安定点となり、この安定点の間に斜めに強い緊張力が発生する。これにより、内腿の柔らかい部分は太腿前面側に押し出され、直線状に設けられた内側ラインによって、戻りが押さえられる機能を発揮できる。
【0024】
この臀部・太腿裏面緊張帯3は、臀溝上辺から太腿裏面全体を覆う広い幅に構成され、この幅で覆われる人体の部分は、柔らかい部分であり、全面的に緊張部でカバーしてすっきりした補正を創出することができる。上辺部は臀溝部を覆い下方から支えてヒップアップ機能を発揮する。
この臀部・太腿裏面緊張帯3は、ヒップアップ作用、腿裏面のスリム化作用に際し、横断的に締め付ける構造ではないので、大腿二頭筋の動きを妨げることなく、窮屈な装着感が軽減される。
【0025】
緊張帯クロス部4は、太腿外側にて、側面緊張帯2の側縁と臀部・太腿裏面緊張帯3の側縁がオーバーラップして三角形状となっている。2つの緊張帯は、V字状に交差して下方のオーバーラップが大きくなっている。オーバーラップ領域の大きい裾側の安定性が高くなる。そして、この2つの緊張帯に働く力はV字状に交差させることによって水平方向の相反する分力を生み水平方向のガードルの裾部のねじれ抵抗となる。2つの緊張帯は歩行運動などにより片方ずつ引っ張りと緩みが発生するので、ガードルの裾を上方へ引き上げる力が、合算されることがない。オーバーラップさせるクロス領域は、緊張帯を構成する素材や着用者の想定に応じて設計することができる。
【0026】
このガードル1は、背面にてヒップ頂部を中心とした範囲から臀溝外側にかけて緊張部が設けられておらず、お尻を圧迫せずお尻の丸みを崩すことなく自然な形状を表現している。この部分を圧迫していないので、自然な装着感が得られる。
【0027】
図2はガードルの正面図を示す。
側面緊張帯2は、図1背面視にて前述したとおり上辺部は背面側から腸骨上部を経て湾曲して下降する形状であって、前面から見ると腰から太腿前面にやや掛かる様に見え、下端部は太腿側面に後退してほぼ見えない状況となっているこの側面緊張帯2は、太腿前面全体を覆うことはなく、横断することもなく、太腿部前側7は緊張帯が設けられない領域となる。前述のとおり大腿四頭筋を横断しないので、筋肉に直接圧迫などの制限を加えることがない。一方、やや太腿前面に掛かって下降して側面緊張帯2が設けられているので、腿を引き上げる方向に助成することとなり、腿を引き上げやすくなり、歩幅が広がり、歩行や階段での運動を助け、歩行姿勢をきれいにする機能を発揮することができる。
【0028】
図2前面視にて臀部・太腿裏面緊張帯3は、クロッチ部から太腿内側にやや掛かって直線的に裾に至っている。このラインは内腿接ぎライン15と一致している。これによって、内腿から太腿前面にかけては緊張帯が設けられていない領域を形成する。この緊張帯が設けられていない内腿前面部分は、臀部・太腿裏面緊張帯3によって内腿裏面側からおし出された肉を受け容れる部分となる。したがって、余分な肉は、側面から絞られるので、正面や背面から視ると股側太腿上部は細く見えることとなる。この身体の内股太腿上部は柔らかい部分であるので、寄せやすい部分ではあるが、細幅で横断的に緊張帯を設けると食い込むだけで、寄せ作用が発揮できず、ガードルの太腿部を周囲全体の緊張する様に強く締め付けると、腿全体が締め付けられて圧迫した着用感となってしまう。本実施例は、内腿接ぎライン15に沿って大腿裏側18から縦方向に全体的に前側に押出サポートをしていると共に、緊張帯クロス部4と股の付け根のクロッチ部の間に斜めに絞り込み状態に強い緊張部を発生させて、歩行運動なども体の運動を利用して柔らかい内腿上部の肉を内側前方に押し出す機能を常時発揮させることができる。なお、図3、図4では、緊張帯クロス部4は、裾12において側面緊張帯2全体が臀部・太腿裏面緊張帯3とオーバーラップするように図示されているが、オーバーラップの程度はこれに限られるものではなく、部分的にオーバーラップさせるなど適宜設計できる。
この結果、本実施例のガードルは、腿周囲に横断的あるいは腿の補正用の緊張部をガードル上辺側に向けて上方に吊り上げるように形成することなく、腿のスリム化機能を発揮できる。
【0029】
腹部は、図2に図示した例では、緊張領域を設けて下腹部の膨れを押さえる機能を設けている。これによって、下半身全体をスリム化することが可能となる。しかし、これはヒップアップ及び腿部の補正には影響を与えないので、本発明では任意事項であって、必ずしも必要な構成ではない。
【0030】
図3に、本実施例の構成布片を示す。
本実施例のガードルを構成する布片は、左右2枚のヒップ−脚部片21、腹部片22、クロッチ部片23の4枚であって、さらに上辺にゴム片を用いることができる。側面緊張帯2と臀部・太腿裏面緊張帯3は、ヒップ−脚部片21に形成され、他の構成布片に形成されていないので、緊張帯は接ぎラインなどで縁切りされることなく一体に連続している。一体連続して形成することによって、各緊張帯はスムーズな力の伝達ができる構成となる。
【0031】
緊張帯の形成は、伸縮性のあるポリウレタン樹脂を転写などの手段により付着形成することができる。
ポリウレタン樹脂を布地に付与する場合には、樹脂の溶液またはエマルジョンなどを生地に含浸、塗布、スプレーするなどの手段や、あるいはこれらの樹脂を離型用のフイルム状物などの上に必要なパターン状に薄く塗布しあるいは印刷して熱プレスで転写するなどの手段を講ずることができる。100〜300μmの厚さにポリウレタン樹脂を設けると肉眼で見て、縫着の場合のような表にひびくような段差の発生を防止することができる。
【0032】
腹部片22は三角形をしており、必要に応じて緊張帯を形成することができる。緊張帯の形成方法はヒップ−脚部片21と同様である。
本実施例に使用する生地は、ガードルに一般に使用されている伸縮性布地を使用することができる。縁始末不用な布地を使用するとガードルの裾や上縁が表に出ずにすっきりしたアウトラインを創出することができるので好ましい。また、本願発明のガードルは、裾には緊張帯のオーバーラップ部分で安定性を向上させているので、着崩れ防止を目的とした縁始末の必要性は小さい。ガードルの上縁は、ベルトやズボンの縁と重なって目立たないので、ゴム部材を併用することも可能である。
【0033】
ヒップ−脚部片21は、股下部のクロッチ部と腹部の三角形を除く部分を覆う布片で、左右に2分されている。太腿を覆う脚部は周回して内腿側で内腿接ぎライン15で縫合され、背側は縦方向中心の位置で後中心接ぎライン13で縫合され、腹側、股下側はそれぞれ腹部接ぎライン14、クロッチ部接ぎラインで縫合されて、本実施例のガードル1が縫製される。必要に応じてゴム部材24を上辺内側に追加することができる。
【0034】
図4は本発明のガードルの斜め後ろの着用状態説明図である。ガードル1を着用すると側面緊張帯2と臀部・太腿裏面緊張帯3の緊張帯クロス部4が太腿外側の裾部に形成され、側面緊張帯2では緊張力F1の示す矢印方向に働き、臀部・太腿裏面緊張帯3では緊張力F2の示す矢印方向に働く様子が例示されている。側面緊張帯2の上部は腸骨上を通り、腸骨稜を経て後ろ中心に連なり、他方の側面緊張帯2の先端と縫合されているので、先端部は左右の側面緊張帯の緊張力によって均衡される。臀部・太腿裏面緊張帯3は緊張帯クロス部4から股部・ヒップ部へと体の表面に沿って捻られて緊張力が働く様になる。2つの緊張帯によって囲まれたヒップ頂部9を中心とする部分には強く圧迫が働かない部分が形成され、自然にヒップアップされた形状を演出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ガードルの背面図である。
【図2】ガードルの正面図である。
【図3】ガードルの片側の構成部品図である。
【図4】ガードルの着用状態説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ガードル
2 側面緊張帯
3 臀部・太腿裏面緊張帯
4 緊張帯クロス部
5 腹部
6 太腿部内側
7 太腿部前側
8 臀溝
9 ヒップ頂
10 後中心上部
11 上縁
12 裾
13 後中心接ぎライン
14 腹部接ぎライン
15 内腿接ぎライン
16 クロッチ部
17 太腿外側
18 大腿裏側
21 ヒップ−脚部片
22 腹部片
23 クロッチ部片
24 ゴム部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用時に周囲よりも強い圧力が得られる帯状の緊張部として、
後ろ中心上部から腸骨上部を通り大腿部外側に至る帯状の側面緊張帯と
上縁及び外縁が仙骨下部から臀溝の上位置を通り大腿部外側に至り、脚根元から大腿部内側下端に至る範囲を覆う臀部・太腿裏面緊張帯を設け、
両緊張部の下端側を大腿部外側にて重複させて強い緊張部である緊張帯クロス部を設けたこと
を特徴とするガードル。
【請求項2】
腹部片、2つのヒップ−脚部片、クロッチ部片から構成されることを特徴とする請求項1記載のガードル。
【請求項3】
下縁部は縁始末不用な裾とするガードルであって、
側面緊張帯、腸骨上部において上縁部まで設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガードル。
【請求項4】
2つの緊張部は、伸縮性素材にポリウレタン系樹脂を接着あるいは付着、又は、ポリウレタン繊維を含有する素材を積層したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガードル。
【請求項5】
2つの緊張部は、ヒップ−脚部片に設けられていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のガードル。
【請求項6】
腹部片に緊張部を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガードル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにに記載されたガードルが、側面緊張帯と臀部・太腿裏面緊張帯の2つの緊張帯によって、ヒップアップ機能と内腿スリム化機能を有することを特徴とする2wayアップガードル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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