説明

キッチン収納庫

【課題】内部にスライドする収納部をさらに有する、多重構造の引出式キッチン収納庫において、内引出に収納される被収納物と、外引出前板の内側に収納される被収納物とが干渉せず、効率的に収納スペースを活用する。
【解決手段】キッチンに配置される多段収納庫200は、引き出される方向の端縁の一部が後退している後退部500を有する内引出230と、内引出230の下に位置する底板240、および、少なくとも内引出230を超える高さまで延伸する前板250を有する外引出300とを含み、内引出230および外引出300はそれぞれスライドし、内引出230および外引出300の位置に拘らず、それらが重なっている限り、内引出230の後退部500から、後退部500の下方に位置する外引出300の底板まで、連続する吹抜空間540が存在することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンに配置される引出式の収納庫であって、外引出の内部に内引出が設けられた多重構造のキッチン収納庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キッチンで使用される調理器具には、ボールやざる、長手の形状を有する杓子類(レードル)、長箸、ラップ、調味料などの小物類、包丁など、様々なものがある。
【0003】
これらの調理器具を収納するために、従来から、キッチンの下に開き戸や引出などの収納部を設けたり、吊戸棚などの収納部を設けたりしていた。また、上述のように様々な形状、大きさの調理器具や調味料を効率的に収納するため、従来から様々な工夫がなされている。例えば特許文献1のように、食品、調味料等の瓶詰め又は缶詰容器や、小型食器、小型調理具等を、キッチンの引出の前板の内側に収納する技術が開示されている。
【0004】
また、例えば特許文献2のように、キッチンキャビネットの外引出の内部に内引出が設けられ、それらが互いに自在にスライド可能な多重構造であるとともに、外引出は、外引出と内引出との間に、縦置きした状態で菜箸やレードル類を収納可能な高さを有している。
【特許文献1】特開2006−204462号公報
【特許文献2】特開2006−230676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年増加している全開放型の対面式オープンキッチンの場合、調理器具を吊るしたり収納棚を設けたりする壁がキッチン使用者の前方になく、収納スペースがより限定的になっている。そのため、とりわけ効率的に調理器具等を収納することが必要とされている。例えば天井に固定して設置された収納戸棚を活用することも考えられるが、天井に収納戸棚を吊り下げるための躯体(梁)が必要となって、施工費用がかさむ。さりとて、使用後の調理器具をキッチン上に載置したままでは見栄えが悪い。
【0006】
そこでシンクの下の引出式の収納庫に調理器具等を収納することが考えられる。しかし、特許文献1のような技術では、ある程度変化に富んだ形状の調理器具や調味料を収納できると思われるが、引出前板の内側に設けられた収納構造と、引出のさらに内側に設けられる収納構造との関係は明らかになっていない。
【0007】
一方、特許文献2のような多重構造の引出を利用する技術であれば、収納スペースは広く確保できるものの、様々な調理器具の形状や大きさに応じた適切な収納場所を確保して効率的な収納を行うには十分なものとは言いがたい。また、レードル類の収納と、引出への収納とをいかにして両立させるかという点についても何ら考慮されていない。
【0008】
通常、多重構造のキッチン収納庫の外引出の内側に収納構造を設けた場合、この収納構造によって、内引出は後方へ追いやられ、内引出が占有できる収納スペースが侵食されてしまう。本願発明者らは、常々、このことを問題視していた。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑み、キッチンに配置され、外引出の内部に内引出をさらに有する、多重構造の引出式のキッチン収納庫において、外引出の前板の内側に収納構造を設け、その収納構造によって侵食される内引出の収納スペースを最小限にしつつ、外引出および内引出にそれぞれ収納される被収納物が干渉しない、効率的な収納を実現するキッチン収納庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明の代表的な構成によれば、キッチンに配置されるキッチン収納庫において、引き出される方向の端縁の一部が後退している後退部を有する内引出と、内引出の下に位置する底板、および、少なくとも内引出の上端に達する高さまで延伸する前板を有する外引出とを含み、内引出および外引出はそれぞれスライドし、内引出の後退部から、後退部の下方に位置する外引出の底板まで、連続する吹抜空間が形成されることを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、後退部以外の端縁は、侵食されず、内引出としての収納機能を損なっていないため、侵食される内引出の収納スペースは最小限に低減されている。しかも、内引出の後退部は、内引出としての収納ができなくなるだけであり、後述のように、吹抜空間を通した収納スペースとして利用されるため、全く無駄にならない。
【0012】
上記の構成において、内引出および外引出の位置に拘らず、それらが重なっている限り、吹抜空間が形成される。
【0013】
そして、外引出と内引出とが最も近接したときにも、内引出の後退部から、後退部の下方に位置する外引出の底板まで、連続する吹抜空間が形成される。
【0014】
このときに形成される吹抜空間は、内引出がいかなる位置にあっても、干渉されない。したがって、この吹抜空間を通して、被収納物を収納可能である。
【0015】
外引出は、長尺状の被収納物を、吹抜空間を連通させて収納可能なホルダを有するとよい。菜箸や杓子など、いわゆる長尺者の被収納物を立てた状態で収納可能であるから、目的の被収納物を探しやすく、また取り出しやすいからである。
【0016】
上記のホルダは、外引出の前板の内側であって、内引出の後退部と対面する位置に配置されているとよい。
【0017】
あるいは、上記のホルダは、外引出と内引出とが最も近接したときに後退部の下方に位置する、外引出の底板に配置されていてもよい。
【0018】
いずれのホルダも、外引出と内引出とが最も近接したときに形成される吹抜空間に被収納物を収納可能である。
【0019】
ホルダは、かかる位置にあれば、吹抜空間を鉛直に投影した空間に配置されていることになるため、ホルダによって保持される被収納物だけでなく、ホルダ自体も、確実に内引出と干渉せずに済む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、キッチンに配置され、外引出の内部に内引出をさらに有する、多重構造の引出式のキッチン収納庫において、外引出の前板の内側に収納構造を設け、その収納構造によって侵食される内引出の収納スペースを最小限に低減しつつ、外引出および内引出にそれぞれ収納される被収納物が干渉しない、効率的な収納が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に添付図面を参照して本発明によるキッチン収納庫の実施形態を詳細に説明する。図中、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また、同様の要素は同一の参照符号によって表示する。
【0022】
図1は、本発明によるキッチン収納庫の実施形態である多段収納庫が格納されるキッチンの外観図であり、図2は図1のキッチンの斜視図である。キッチン100はいわゆる対面式のオープンシステムキッチンであり、調理器具を吊るしたり収納棚を設けたりする壁がキッチン使用者の前方になく、とりわけ効率的に調理器具等を収納することが必要とされている。
【0023】
キッチン100はコンロ110が設置されているコンロキャビネット120と、水栓130およびシンク140が設置されているシンクキャビネット150と、調理スペース160が設けられていて食器洗い機等を収容可能なベースキャビネット170との3つのキャビネットで構成されている。
【0024】
図2に示すとおり、キッチン100はコンロ110、シンク140および調理スペース160が隣接していて無駄なスペースを極力排した構成となっている。
【0025】
本発明によるキッチン収納庫の実施形態である多段収納庫200は、取っ手180が取り付けられた引き出し式の収納庫である。なお多段収納庫200の下には床面にほぼ接する足下収納庫210が配置されている。
【0026】
図2に示すように、多段収納庫200は、キッチン100のシンク140の下に配置されている。これはシンク140にて用いられる調理器具や調味料を取り出しやすいからである。しかし、多段収納庫200は他の位置に設けてもよく、例えば調理スペース160を設けたベースキャビネット170内に設けてもよい。
【0027】
図3は図2の多段収納庫を引き出した状態を示す図である。多段収納庫200は、平板状の載置スペースを有する網棚220と、網棚220の下に位置し、引き出される方向に端縁の一部が後退している後退部500が形成されたトレイ状の内引出230と、内引出230の下に位置する底板240、および、内引出230を超える高さまで延伸する前板250を有する外引出300とを含む3重の構成を有する。
【0028】
本実施形態の特徴は、内引出230および外引出300の位置に拘らず、内引出230の後退部500から、後退部500の下方に位置する外引出300の底板まで、連続する吹抜空間540(図3の斜線部)が形成されることである。これについては、後に詳述する。
【0029】
平板状の載置スペースを有する網棚220(上段)は、典型的にはまな板310や、その他、盆、バット、ケーキクーラなどの平板状の被収納物の収納を行う。上述の後退部500が形成された略H型の形状を有する、トレイ状の内引出230(中段)は、中央の小物トレイ340にフォーク350やスプーン360や調味料(図示しない)などの小物を収納し、それらの両側に配置されているもののうち、包丁差し320には包丁330を収納し、ラップトレイ370にはラップ類380を収納する。このように、各収納部がそれぞれ計画性のある効率的な収納を実現している。
【0030】
図4は図2の多段収納庫を引き出した状態を別の角度から見た図である。シンク140およびシンク140との境界をなす天板は、理解を容易にするため、図示を省略して内部構造を明示したものである。
【0031】
また、内引出230は、収納された状態では外引出300に設けられたカバー800の上に載置されていて、外引出300と内引出230とが一体的に引き出される。さらに、多段収納庫200には、内引出230が、引き出された外引出300から独立して多段収納庫200に引き戻される際に載置されるレールを備えていて、内引出は、多段収納庫200に備えたレールならびに外引出に備えたカバーの上を走行して多段収納庫200内に引き戻される。
【0032】
このように、内引出230は、外引出300と一体的に引き出されて使用頻度の高い被収納物をすぐに取り出せ、使い勝手がよい。また、外引出300の収納部から物を取り出すときには、内引出230だけを多段収納庫200の中に引き戻すことができる。
【0033】
このようなオールインワンの3重構成により、1箇所の外引出300(下段)を開けさえすれば、網棚220(上段)および内引出230(中段)も出現し、ほとんどすべての被収納物が一目瞭然になり、目的の被収納物を発見しやすい。
【0034】
また、多段収納庫200は、図4に示すように、網棚220を独立してスライドさせる1組のレール400に加えて、内引出230および外引出300をそれぞれ独立してスライドさせる2組のレール410、420を含むことを特徴とする。なお図4では見えていないため図示していないが、他方の側にもレール400、410、420が設けられていることはいうまでもない。
【0035】
このように、網棚220、内引出230、外引出300から成る3重の収納部は、レール400、410、420によって、それぞれ独立にスライド可能であるため、網棚220や内引出230を自由にスライドさせることによって、容易に被収納物の取り出しを行うことができ、使い勝手がよい。
【0036】
図4にも示すように、多段収納庫200のうち、上述の内引出230には、内引出230が引き出される方向に、略H型の内引出230の一部をなす後退部500が形成され、さらに、外引出300の前板250の内側に杓子類(レードル)510を立てた状態で固定可能な杓子類固定具、すなわち調理小物ホルダ520をさらに含む。すなわち、この調理小物ホルダ520は、吹抜空間540を通して内引出230の上下にわたって収納される被収納物を保持可能である。
【0037】
菜箸や杓子類など、いわゆる長尺者の被収納物は、いずれかの引出の内部に、寝かせた状態で収納することもできる。しかし、仮に引出の奥行きや幅が足りない場合、収納は不能であるし、収納可能な寸法を確保できたとしても、寝かせた状態で収納した長尺者は、同種の長尺者を複数収納している場合はとくに、目的の長尺者を取り出すのが容易でない。例えば箸という同種の被収納物を同一の引出に寝かせた状態で収納していた場合、目的の箸を取り出すのは煩雑である。
【0038】
その点、本実施形態では、上記の調理小物ホルダ520により、長尺者の被収納物を立てた状態で収納可能であるから、目的の被収納物を探しやすく、また取り出しやすい。
【0039】
このように、少なくとも内引出の上端に達する高さまで延伸し、本実施形態では多段収納庫200の上端(図9(c)に示す高さH)まで延伸する前板250を有する外引出300(下段)の前板250には、杓子類510の収納が計画されていて、他の段と同様に計画性のある収納を実現している。
【0040】
なお本願で言う「杓子類」とは、お玉杓子等のほか、しゃもじ、トング、菜箸など、長手の形状を有するあらゆる調理器具を含めてよい。
【0041】
図4に示すように、杓子類固定具520の下方の、外引出300の前板250の裏面には、外引出と多段収納庫200との衝撃を緩和する緩衝板700が設けられている。これにより、外引出300の収納時に多段収納庫200と接触する部分の衝撃が緩和されるからである。
【0042】
図5は図3および図4に示した調理小物ホルダの斜視図である。調理小物ホルダ520は、前板250に水平方向に配列された複数の弾性部材から成るホルダ部522を含み、隣接するホルダ部522の間には、杓子類510の軸部524を挟持することにより杓子類510を固定する溝526が形成されている。
【0043】
図6は図5の調理小物ホルダの三面図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。調理小物ホルダ520を構成する各ホルダ部522は、樹脂などの長尺状の弾性体、例えばポリエステルエラストマーを屈曲させた略U字形である。ホルダ部522は、その両端部を外引出300の前板250に向け、上方から見て略U字形となる姿勢で互いに隣接配置される。これによって、隣接するホルダ部522間に溝526が形成されている。
【0044】
本実施形態では、ホルダ部522の両端部は、鉄線材であるガイド528に嵌合させている。ガイド528は、図6(a)に示すように、水平方向に平行に走っている2本の鉄線(図6(a)では1本しか見えていない)と、それら鉄線を、図6(c)に示すように、両端部にて、外引出300が引き戻される方向に突出させたうえで鉛直方向の鉄線で結合した形状を有している。
【0045】
図6(a)に示すように、ガイド528のうち、2本の平行に走っている鉄線部分に、各ホルダ部522は嵌合している。図6(c)に示すように、側面から見ると、ホルダ部522は、略長方形の側面の途中に湾曲して切り欠かれた部分を有し、ここにガイド528の2本の平行な鉄線材を通してガイド528に固定されている。
【0046】
そして、図6(b)に示すように、ガイド528の2本の平行鉄線部分には、両端と中央の計3箇所にポリエチレン製のガイド止め530が設けられている。調理小物ホルダ520は、ガイド止め530のネジ孔532を通して前板250の内側にネジ固定されている。
【0047】
このようにU字形ホルダ部522を隣接配置することにより、U字形ホルダ部522の両端を、外引出300の前板250に対する固定部として用いる一方、隣接しているU字形に湾曲した部分の間には、上述の溝526が形成されている。
【0048】
図6(a)に示すように、隣接するホルダ部522間に形成される溝526は楔形となっている。かかる楔形の溝526の幅広の部分からは杓子類510を容易に進入させることができ、押し込むにしたがって、溝526の先細りの部分によって杓子類510に加えられる圧力が増加し、杓子類510が溝526の間で固定維持される。
【0049】
図7は図5の調理小物ホルダに杓子類を固定した状態を示す図である。図7に示すように、調理小物ホルダ520によれば、杓子類510の軸部524を上記の溝526に押し込むことで、簡易に杓子類510を固定可能である。
【0050】
図8は図4に示した多段収納庫をキッチン内に収納した収納状態を示す図である。外引出300を閉めれば、網棚220および内引出230も前板250に押されてシンク140の下方のスペース内に収納される。
【0051】
このように多段収納庫200がキッチン100内に収納されることにより、内引出230が最も外引出300に接近しても、杓子類510は、内引出230と干渉することなく、自由に収納・取り出しが可能である。その構成について、以下、詳細に説明する。
【0052】
図9は図2のキッチンの図であり、(a)は平面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図および(d)はC−C断面図を示す。図9(c)に示すように、前板250は、多段収納庫200の上端(高さH)まで延伸しているため、外引出300は、必然的に、網棚220および内引出230のストッパの役目を果たし、網棚220および内引出230は、外引出300の内側でしかスライドしない。
【0053】
上記のように、内引出230のスライド範囲が外引出300の内側に制限される一方、図9(b)に示すように、調理小物ホルダ520は、外引出300の前板250の内側であって、内引出230の後退部500と対面する位置に配置されている。
【0054】
あるいは、図示しないが、調理小物ホルダ520は、外引出300と内引出230とが最も近接したときに500の下方に位置する、外引出300の底板240に配置されていてもよい。
【0055】
いずれの調理小物ホルダ520も、外引出300と内引出230とが最も近接したときに形成される吹抜空間540に被収納物を収納可能である。
【0056】
ホルダ520は、かかる位置にあるため、吹抜空間540を鉛直方向に投影した空間に配置され、ホルダ520によって保持される被収納物だけでなく、ホルダ520自体も、確実に内引出230と干渉せずに済む。
【0057】
ただし、ホルダ520は、内引出230との干渉を回避できる位置であれば、いかなる位置にあってもよい。
【0058】
上述の構成によれば、既に図3にも示したように、内引出230および外引出300の位置に拘らず、それらが重なっている限り、内引出230の後退部500から、後退部500の下方に位置する外引出300の底板まで、連続する吹抜空間540(図9(b)の斜線部)が存在する。
【0059】
そして、外引出300と内引出230とが最も近接したときにも、内引出230の500から、500の下方に位置する外引出300の底板240まで、連続する吹抜空間540が形成される。
【0060】
このときに形成される吹抜空間540は、内引出230がいかなる位置にあっても、干渉されない。したがって、この吹抜空間540を通して、被収納物を収納可能である。
【0061】
既に述べたように、内引出230は、それより高い位置まで延伸する外引出300の前板250に阻まれるため、前板250を越えてさらに外側に向かってスライドすることはできない。すなわち、内引出230のスライド範囲は、外引出300の内側に限定されている。
【0062】
かかる構造の収納庫の場合、通常、内引出が限界まで引き出され、内外の引出が最も近接しているときは、内引出は、外引出の収納スペースを上下に分割遮断してしまう。しかし本実施形態によれば、外引出300と内引出230とが最も近接するとき(図9(b)に示す状態)であっても、外引出300の前板250と内引出230の後退部500とで区画される領域には、吹抜空間540が存在する。吹抜空間540だけは、いついかなる場合も、内引出230の上下の空間を繋いでいる。
【0063】
したがって、吹抜空間540を通して被収納物を収納すれば、被収納物は、内引出230がいかなる位置にあっても、内引出230に干渉されない。このように、内引出230を吹抜式に貫通して、外引出300の前板250の高さまでの被収納物を収納可能である。
【0064】
なお、本実施形態では内引出230は1個であるが、複数の内引出を上下に重ねて設け、それら複数の内引出をすべて貫通する吹抜空間を構成してもよい。
【0065】
外引出の前板250の内側に収納された杓子類510は、内引出230の後退部500を通過する位置関係にあるため、外引出300とは独立にスライド可能な内引出230が外引出300に最も接近しても、内引出230と干渉することなく収納・取り出しが可能である。すなわち、内引出230および外引出300のスライドに拘らず、内引出に杓子類510は接触しない。
【0066】
上記のように、内引出230が外引出300に最も接近するとき、内引出230の後退部500以外の端縁は、外引出300の前板250にほぼ到達する位置まで、スライドしている。
【0067】
外引出300は、長尺状の被収納物を、吹抜空間540を連通させて収納可能な調理小物ホルダ520を有する。菜箸や杓子など、いわゆる長尺者の被収納物を立てた状態で収納可能であるから、目的の被収納物を探しやすく、また取り出しやすいからである。
【0068】
本実施形態における調理小物ホルダ520のように、多重構造の収納庫の外引出の前板の内側に収納構造を設けた場合、何ら工夫がなければ、この収納構造によって、通常、内引出は後方へ追いやられ、前板にほぼ到達するような位置までスライドすることはできない。言い換えれば、内引出が占有できる収納スペースは、侵食されてしまっている。
【0069】
しかし本実施形態によれば、調理小物ホルダ520は、内引出230の後退部500によって形成される吹抜空間540を通して、調理小物(被収納物)を収納している。したがって、内引出230のうち、侵食されているのは後退部500のみであり、その他の部分は、前方に突出していて、包丁差し320やラップトレイ370として、有効に利用されている。
【0070】
このように、内引出230の後退部500以外の端縁は、後方へ追いやられることなく、外引出300の前板250ぎりぎりの位置までスライド可能である。言い換えれば、内引出230の収納スペースの侵食は最低限まで低減されている。しかも、侵食された内引出230の後退部500も、内引出230としての収納ができなくなるだけであり、吹抜空間540を通した収納スペースとして利用されるため、全く無駄にならない。
【0071】
なお、内引出230はそれが引き出される方向に後退部500を設けていればよいため、本実施形態のように略H型でなくてもよく、例えば引き戻される側を平坦にした略コの字型としてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、内引出230が略H型であることから分かるように、引き出される方向の端縁の中央に、後退部500が設けられている。しかし、後退部500が設けられる位置は端縁の中央に限られない。
【0073】
図10は図9(b)に示す後退部のバリエーションを示す模式図である。図10(a)は本実施形態の後退部500に相当するものを示す。一方、図10(b)は、幅方向に偏った後退部504を有する内引出234を示す。かかる偏りの方向は左右いずれの方向もあり得ることは言うまでもない。図10(b)の場合、吹抜空間544は、外引出300の前板250と、内引出234の後退部504と、外引出300の側板550とで区画される領域に存在することとなる。
【0074】
また、図10(c)は、さらに他の後退部のバリエーションを示す模式図であり、この場合、内引出236は、外引出300の幅の一部しか占めていない。後退部506は内引出236の中央に設けられているが、図10(b)のように偏った位置に設けてもよいことは言うまでもない。このような小型の内引出236は、外引出300の内部に幅方向に並列に設け、各々が独立してスライドする構成としてもよい。
【0075】
さらに、後退部500等の形状は、本実施形態では矩形であるが、被収納物やその他、いかなる形状にしてもよいことは言うまでもない。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、キッチンに配置され、外引出式であり、内部にスライドする収納部をさらに有する、多重構造のキッチン収納庫に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明によるキッチン収納庫の実施形態である多段収納庫が格納されるキッチンの外観図である。
【図2】図1のキッチンの斜視図である。
【図3】図2の多段収納庫を開いた状態を示す図である。
【図4】図2の多段収納庫を引き出した状態を別の角度から見た図である。
【図5】図3および図4に示した調理小物ホルダの斜視図である。
【図6】図5の調理小物ホルダの三面図である。
【図7】図5の調理小物ホルダに杓子類を固定した状態を示す図である。
【図8】図4の多段収納庫をキッチン内に収納した収納状態を示す図である。
【図9】図2のキッチンの平面図、平断面図、正断面図および側断面図を示す図である。
【図10】図9(b)に示す後退部のバリエーションを示す模式図である。
【符号の説明】
【0079】
100 キッチン
140 シンク
200 多段収納庫
220 網棚
230、234、236 内引出
300 外引出
400、410、420 レール
310 まな板
500、504、506 後退部
510 杓子類
520 調理小物ホルダ
700 緩衝板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キッチンに配置されるキッチン収納庫において、
引き出される方向の端縁の一部が後退している後退部を有する内引出と、
前記内引出の下に位置する底板、および、少なくとも内引出の上端に達する高さまで延伸する前板を有する外引出とを含み、
前記内引出および外引出はそれぞれスライドし、
前記内引出の後退部から、該後退部の下方に位置する外引出の底板まで、連続する吹抜空間が形成されることを特徴とするキッチン収納庫。
【請求項2】
前記外引出と内引出とが最も近接したときにも、該内引出の後退部から、該後退部の下方に位置する外引出の底板まで、連続する吹抜空間が形成されることを特徴とする請求項1に記載のキッチン収納庫。
【請求項3】
前記外引出は、長尺状の被収納物を、前記吹抜空間を連通させて収納可能なホルダを有することを特徴とする請求項1または2に記載のキッチン収納庫。
【請求項4】
前記ホルダは、前記外引出の前板の内側であって、前記内引出の後退部と対面する位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のキッチン収納庫。
【請求項5】
前記ホルダは、前記外引出と内引出とが最も近接したときに前記後退部の下方に位置する、外引出の底板に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のキッチン収納庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−11396(P2009−11396A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173578(P2007−173578)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】