説明

キトサンを用いたDNA保存方法、及びその方法による生成物

もし、ヒト、動物、植物若しくはバクテリア、または血液のようなDNAを含むバイオサンプルが、水溶性キトサンとよく混和され、液体状態、または紙のような固形媒体を用いて固体状態で保存されたならば、室温で長期間安定してDNAを保存することが可能であり、この後の遺伝子アッセイにも有益となる。DNA保存方法は、簡易で経済的であり、DNAカード及びPCRキットのような方法に適用することで製造された生成物は、保存、運搬及び多数のDNAサンプルの収集をすることができ、自動アッセイに対してもまた、とても有益である。加えて、DNA IDカードは、個人のDNAを保存するDNAバンクの役割を担うことができ、その上、個人の遺伝子情報を保存することにより、個人識別及び医療に役立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAの保存方法に関するものであり、上述した方法及び前記方法による生成物に保存されたDNAを分析する方法である。より詳しくは、本発明は、長期間にわたり安定した状態でDNAを保存する方法であり、上述した方法により保存されたDNAを分析する方法であり、上述した保存及び分析方法により生成された紙製又はプラスチック製のDNAカードのようなDNA IDカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生物の持つ全ての遺伝子の集合は、ゲノム(全遺伝子情報)といわれる。ヒトゲノムは30億の塩基で構成され、そして約30,000遺伝子を有していることが報告されている。近年、全てのヒトゲノムの塩基配列をエンコード(encode)するヒトゲノムプロジェクトは完了し、それにより診断の画期的な進歩及び遺伝子を用いることで解決困難な病気の治療が可能となった。いわば、オーダーメイド医療や予測医療の時代が始まっている。
【0003】
生命現象は3つの事象(1)ゲノム遺伝子の遺伝情報、(2)遺伝子転写、(3)タンパク質の発現により決定される。生命現象を理解し解析するために、そして病気の診断と治療のための方法の発展のために、上記3つの事象を正確に解析することが重要である。個々の遺伝子の集合は、遺伝子又はゲノムといわれ、それ故に、個々の転写遺伝子(例えば、mDNA)の集合及び発現したタンパク質の集合は、それぞれトランスクリプトーム及びプロテオームといわれる。近年、このような総合的な情報の自動化した分析に関する研究が、活発に進められている。分析の自動化にとって、マイクロアレイやバイオチップは有益であり、そしてこれらの代表的な例に、DNAチップやタンパク質チップが含まれている。
【0004】
ゲノムDNAの遺伝情報の定性的及び定量的な分析のための一般的な方法に関して、ハイブリダイゼーション分析、シークエンシング、DNAマイクロアレイ又はDNAチップ、又はPCR、PCR−RFLP、クローニング及び作製されたライブラリーを活用したその類似方法、サザンブロット法、またはそれに類する方法(例えば、非特許文献1参照)が、言及されてもよい。
【0005】
個人のDNAを検査することにより、その個人の健康状態を理解することができ、そして、その個人が、遺伝病の将来発症する可能性及び子供への遺伝を予測するのと同様に、癌や感染症のような様々な病気にかかるかどうかの診断をすることができる。更に、DNA検査は、身元や実父確定のような親族を探るための最も正確な方法である。家系や系図を探る上でもまた有用である。これらの理由から、DNA検査は、法医学及び骨髄や他の内臓またはその類似物の供与の際における適合性を識別するための手段として、必然的に用いられている。更に、一塩基変異多型(single nucleotide polymorphis:SNP)を分析することにより、病気の将来発症する可能性、医薬品の作用、またはその類似することを予測する助けとなるかもしれない。
【0006】
将来におけるDNAの保存の必要性として、DNA検査が認められており、各国は、にわかにDNAバンクを設立している。そして、前記DNAバンクのサンプルの数は、DNA保存を旅行保険や傷害保険と比較すると、米軍やそれに類するもののDNAを保存することを理由として、大部分は増加の傾向にある。しかしながら、全国的な組織や営利団体で個人のDNAを保存することは、個人の遺伝情報を悪用するような問題を有するかもしれない。加えて、既存技術を用いて長期間安全にDNAを保存するために、冷凍庫と特定の試薬が必要となり、こうして、その結果、DNAの保存のためのコストは、大きいものとなる。
【0007】
実際、細胞から分離、精製されたDNAが、室温で立たせたまま放置されるとき、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)によってDNAが急速に分解または断片化される問題を生じるかもしれない。そのため、遺伝子の研究においてDNAを保存する方法は、重要である。現在、広く用いられている、血液、細胞または組織への方法、冷凍庫で保存する方法、冷凍乾燥保存による方法、2−プロピルアルコール中に保存する方法、及びそれに類する方法である、DNAを保存または運搬する方法として、言及されてもよい。しかしながら、これらの方法は、コストと損失の視点から多くの不利点がある。液体状態で精製DNAを保存する方法は、DNAを直ちに使用するのに容易であるが、DNAは、長期間保存すると容易に損傷してしまうという問題がある。前記冷凍庫による保存方法及びフリーズドライ保存の方法は、サンプルを用いる過程において繰り返し冷凍と解凍をすることによって損傷するかもしれないという問題がある。更に、アルコールのような試薬を用いて保存する方法もまた、他の方法と同様に前処理及び後処理による過程でいくつかの問題がある。その上、上記過程における最も重要な問題は、保存のために血液のような体液から、DNAを先ず精製する必要があることである。
【0008】
上記のDNA保存方法は、超低温冷凍庫、液体窒素またはそれに類するもののような特別高価な設備を必要とする。それゆえに、前記方法は、経済性の視点で負担を与えるかもしれなく、前記方法は分析のために保存していたDNAを再利用するとき前処理及び後処理の過程を必要とし、そして前記方法は冷凍と解凍の過程を繰り返すことによりDNAを損傷するかもしれないという不利点がある。
【0009】
上述した方法に加えて、近年、ワットマン社及びそれに類するものによって、FTAカードまたはカード製品のようないくつかの市販製品が、室温でプラスミドDNA保存のために、導入された。しかしながら、この方法は、その有効性に制限があり、それ自身を室温の代わりに−15℃または−20℃でDNAを保存することが勧められている。それゆえ原法を超える大きな利点はなく、コスト問題の上昇においてむしろ不利となる。
【0010】
そのため、分子遺伝学及び薬学の分野において、DNAとの安定した結合を形成することにより、デオキシリボヌクレアーゼによる分解からDNAを保護するために、室温で安定な状態でDNAを保存し、更に、DNAを用いた研究や分析に直接適用することが可能な方法を発展させることは重要な課題である。保存の典型的な方法は、(1)DNA分解を起こすことなしに室温で安定な方法であり、(2)簡易な方法であるべきであり、(3)費用を効率的にできる方法であるべきであり、(4)DNA保存は、DNA自身を分離、精製するためのみではなく、DNAに損傷を有することのない、血液のような体液や様々なDNAを含むサンプルのためであるべきであり、(5)様々なDNAサンプルは、限られた空間で保存されるべきであり、(6)個人は、その個人のDNAを保存できるべきであり、(7)様々な遺伝子において、これ以降の分析でいかなる問題も有すべきではなく、そして、それらの遺伝子検査は実際の診断または研究に有益であるべきである。しかしながら、これらの状態を満足する方法または製品はこれまでのところ発表されておらず、個人の遺伝情報とともに個人のDNAを保存する製品の報告は見つけることができない。
【0011】
キトサンは、生体への安定性、生分解性及び適合性に優れる、生物学的に生産された高分子であり、薬学の分野において広く用いられている。キトサンを酸で処理すると、水溶性キトサン塩を形成し、強い正電荷に荷電される。それゆえに、近年、前記キトサン塩は薬剤、タンパク質及びDNAの優れた運搬手段として注目されてきている。特に、DNAの保護のために、水溶性キトサンはアニオン性物質であるDNAと強い結合を形成する。そのため、前記水溶性キトサンは、遺伝子運搬のための媒体物質として供給してもよい。
【0012】
キトサンは、グルコサミンとN−アセチルグルコサミンとの共重合体であり、キチンから得られる。キチンは、カニやエビのようなクラスタシィアンに豊富に含まれており、セルロースの次に最も豊富な天然高分子の物質である。キトサンは、カチオン性ポリマーの総称であり、キチンを強塩基で脱アセチル化させることにより得られる(例えば、非特許文献2参照)。
【0013】
キトサンは、中性または塩基性pHでは溶解しないが、グルタミン酸、塩酸、乳酸またはそれに類するもののような酸と反応すると、キトサン塩またはカチオン性キトサンを形成する。前記キトサン塩は、水に溶解し、その溶解性は、脱アセチル化及びpHの程度に比例する。水溶性キトサンの場合、アミン基にプロトンを加えることにより、正に荷電する。更に、水溶性キトサンは、フリーズドライ状態にすることができる。
【0014】
水溶性キトサンは、強い正電荷を有する膜またはゲルを形成する特性を持つ。これに関連して、キトサンは、汚水、重金属または飲用水の精製に用いられており、そして抗カビ物質である。酒類、健康食品及び化粧品の原料としても用いられる。加えて、キトサンは薬学の分野における重要な手段として用いられる。例えば、キトサンは、ワクチンの運搬、DNAの運搬、タンパク質の運搬の円滑化、精製及び制御された薬の放出システムによる生成物を通じたペプチドおよび薬剤、ゲル、膜、湿潤剤、コーティング剤、マイクロスフィア、マイクロカプセル、生体接着及び粘膜、及びそれに類するものに広い範囲で用いられる(例えば、非特許文献3参照)。
【0015】
キトサンは、非常に安全で、免疫性により引き起こされる副作用を示さない。キトサンが生体に吸収されると、リゾチームでN−アセチルグルコサミンに分解され、その後糖タンパク質の合成に用いられ、その後、生じた残余は、二酸化炭素の形態として排出される(例えば、非特許文献4参照)。
【0016】
本発明による水溶性キトサンまたはカチオン性キトサンの最も重要な特性は、アニオン性物質であるDNAと強い結合を形成することであり、DNAの防御及び運搬手段、すなわち、遺伝子運搬物質として用いることができる。プラスミドDNAを用いた実験において、DNase I及びDNase IIのようなDNAヌクレアーゼによって分解されず、DNAを安全に保存することに関するキトサンの機能が報告されており、キトサンとプラスミドDNAの複合体がインビトロ培養細胞に注入されると、運搬遺伝子の発現の引き金となる(例えば、非特許文献5参照)。遺伝子運搬効果は、(1)キトサンの分子量、及び(2)キトサンのDNAに対する割合、特に、アニオン性DNAのリン酸塩分子とカチオン性キトサンの窒素分子に対する割合である窒素/リン酸塩によって決定される(例えば、非特許文献6参照)。
【0017】
プラスミドDNAがDNAとして室温で立たせたまま放置されるとき、前記プラスミドDNAは数時間で分解される。しかしながら、プラスミドDNAが、キトサンとの複合体の形態に維持されているとき、前記プラスミドDNAは、3月以上保存することができる(例えば、非特許文献7参照)。一方、キトサン及びプラスミドDNAの複合体が、フリーズドライ状態で保存されているとき、前記遺伝子運搬効果は4週間後まで持続させることができる(例えば、非特許文献8参照)。
【0018】
しかしながら、室温で長期間のあいだ、キトサンと結合した哺乳類の巨大ゲノムDNAを安定して保存する可能性における研究、及びキトサンと結合しDNAを安定して保存する可能性における研究は、今までに報告されていない。その上、キトサンを用いてDNAを保存するために生成された生成物は、大量生産されていない。また、キトサン結合DNAを用いた遺伝子発現の分析を行うことの可能性、並びにキトサン及び血液のような体液の混合形態でDNAを保存する対象は、(DNA自身以上に)報告されていない。更に、キトサンを用いてヒト又は動物のゲノムDNAを保存、運搬及び分析するための生成物は、本発明の生成物を除いて、公開されていない。
【非特許文献1】Sambrook, J. & Russell, D.W., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, (2001)
【非特許文献2】Errington N., Harding S.E., Varum K.M., Illum L., Int. J. Biol. Macromol., 15, 1123-1127 (1993)
【非特許文献3】Illum L., Pharmaceutical Research, 15, 1326-1331 (1998)
【非特許文献4】Chandy T., Sharma C.P., Biomat. Art. Cells Art. Org., 18, 1-24 (1990)
【非特許文献5】Lee M., Nah J-W., Kwon Y., Koh J.J., Jo K.S., Kim S.W., Pharmaceutical Research, 18(4), 427-531 (2001)
【非特許文献6】Borchard G., Advanced Drug Delivering Reviews, 52, 145-150 (2001)
【非特許文献7】(Leong K.W., Mao H.Q., Turong-Lee V.L., Roy K., Walsh S.M., August J.T., J. controlled Rel., 53, 183-193 (1998)
【非特許文献8】Mao H.Q., Turong-Lee V.L., August J.T., Leong K.W., Proc. Intl. Symp. Control. Rel. Bioact. Mater., 24, 671-772 (1997)
【非特許文献9】Sambrook J & Russell DW, Molecular cloning: a laboratory manual, Cold Spring Harbor Press. 2001:7.1-7.88
【非特許文献10】Sambrook J & Russell DW, Molecular cloning: a laboratory manual, 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明における一つの側面は、水溶性キトサンを用いて、室温で安定状態でありDNAサンプルを保存、運搬する方法を提供することである。
【0020】
本発明における他の側面として、水溶性キトサンと、DNA検査の様々な方法で用いることができる安定化されたDNAとの複合体を提供することである。
【0021】
本発明におけるキトサンを用いてDNAを保存する方法によると、本発明における更なる側面は、室温で長期間DNAを運搬及び保存し、DNAを容易に研究及び分析し、または容易にアプリケーションに掛けることがために、DNAと安定な結合を形成することができるような適切な特性及び濃度を持つキトサン溶液を提供することである。
【0022】
本発明による更なる側面は、キトサンを含む紙製カード(DNAカード)を製造する方法を提供することであり、液体状態として、及び最小限の空間中での多量のDNAサンプルとしてのDNAとキトサンとの結合物を保存することができ、PCR及びPCR−RFLPのような遺伝分析、クローニング、配列分析及びサザンブロット法、マイクロアレイテスト及びそれに類するものを行うための方法であり、キトサンとDNAとを、その結合された状態から分離する方法である。この場合、DNAカードは、タイプ1とタイプ2に大まかに分類することができ、タイプ1は、キトサンを含む紙製カードに、DNA自身を保存し、タイプ2は、キトサンと細胞融解バッファーとを備える紙製カードにDNA以外に血液のようなDNAを含むバイオサンプルを保存するものである。両方の場合において、該対象物は、室温で長期間安定した状態でDNAを保存することができ、そして、もし必要であるならば様々な遺伝分析を行うことができる。
【0023】
本発明のもう一つの側面として、キトサンとの混合物の形態で個々のDNAサンプルが保存されるDNA身分証明書(DNA ID card)を提供することであり、個々の遺伝情報は、身分証明のための遺伝子検査、HLA(ヒト白血球型抗原)遺伝子型決定検査又はそれに類する検査を行うことにより得られ、プラスチックカードの磁気帯又はチップに保存される。前記プラスチックDNA IDカードは、様々なクレジットカード及びキャッシュカードのような個人情報、重要な組織への入場券、バイオパスポート、軍隊若しくはそれに類するもの、または骨髄移植のような臓器移植のための遺伝情報を共有するために用いられることができる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明における、動物及び植物の巨大ゲノムDNAを保存する新しい方法で、結果として、水溶性キトサンは、DNAと混合されているとき、安定な結合は、デオキシリボヌクレアーゼによる分解からDNAを保護するために形成され、室温で安定した状態で長期間保存することができ、こうして本発明は完成する。
【0025】
本発明による方法及び生成物によって達成できる状態は以下の通りである。
【0026】
1)DNAは、分解されることなしに室温で安定した状態で保存されるだろう。
【0027】
2)DNAサンプルは、ここでは、ゲノムDNAと、ヒト、動物、植物及びバクテリアのcDNA(complementary DNA)と、プラスミドDNAとを含むだろう。
【0028】
3)前記方法は、容易であり、特別な装置や手段を用いる必要が無いだろう。
【0029】
4)前記コストは経済的であるだろう。
【0030】
5)DNAの保存は、DNA自身の分離及び精製のためのみではなく、血液のような体液、及びDNA上に損傷を受けていない様々なDNAを含むバイオサンプルのためでもあるだろう。
【0031】
6)DNAサンプルは、紙またはカードのような単純な媒介物を用いて保存されるだろう。
【0032】
7)多くのDNAサンプルは限られた空間で保存されるだろう。
【0033】
8)個人は、本人のDNAを保存することができるだろう。
【0034】
9)前記DNAサンプルに関して、前記DNAサンプルは、上記方法及び生成物によって保存及び運搬され、PCR、PCR−RFLP、ハイブリダイゼーション、配列分析、SNP分析及び、それに類するもののような様々な遺伝分析を長期間経った後でさえ正確且つ簡単に行うことができ、様々な臨床試験と同様に研究においても有益であるだろう。
【0035】
10)前記DNA IDカードは、個人のDNAを保存するためのDNAバンクとして機能し、前記DNA IDカードと一緒に個人の遺伝情報もまた保存できるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を、図面を参照して詳細を説明する。
【0037】
図1は、本発明による、DNAと水溶性キトサンとの結合生成物の製造及び分析工程を示すブロック図である。前記DNAと水溶性キトサンとの結合生成物を製造する工程を調べるとき、まず図1を参照して、前記DNAと水溶性キトサンとの結合の最適条件を確立し、そして、DNAヌクレアーゼに対する防御の効果、及び前記DNAとキトサンとの混合物の移動度シフトを分析する(S101)。その後、液体状態としての前記DNAとキトサンとの混合物に関して、PCRアッセイ及びDNA保存の効果の分析を実施する(S102)。上記結果を用いて、前記タイプ1DNAカードは製造され、PCRアッセイ及びDNA保存の効果の分析を実施する(S103)。同様に、タイプ2DNAカードを製造し、PCRアッセイ及びDNA保存の効果の分析を実施する(S104)。上記製造されたタイプ1及びタイプ2DNAカードで長期間保存されたサンプルに基づく遺伝分析の可能性を分析する(S105)。続いて、キトサンを含む一体型PCRキットを製造する(S106)。その後、プラスチックDNA IDカードを製造する(S107)。
【0038】
本発明において、DNAと安定な複合体を形成し、デオキシリボヌクレアーゼによる分解からDNAを守り、室温で安定した状態でDNAを保存するため、適切な特性及び濃度の水溶性キトサン溶液、紙製カードまたはこのような溶液を含むPCRキット、及びプラスチックDNA IDカード及びそれに類するものが用いられる。
【0039】
本発明によるキトサンは、分子量10〜500kDaであることが望ましい。10kDaより少ない分子量を有するキトサンは、DNAと安定した結合を形成する際に問題を有し、500kDaを超える分子量を有するキトサンは、DNAを用いた遺伝子発現分析で干渉を起こすかもしれない。更に、60%以上の度合いで脱アセチル化しているキトサンが望ましく、脱アセチル化の度合いが60%より少ない場合、キトサンの水溶性に関する問題が生じ、それ故、DNAと安定した結合を形成することが困難となる。調整されたキトサンの水溶液の濃度は、体積に対する重量の割合(w/v)に関して、0.02〜1%であり、望ましくは0.1%である。キトサンの水溶液とDNAの水溶液とを混合する際の混合比は、DNAの水溶液中のDNAに対するキトサンの水溶液中のキトサンの重量比に関して、1:0.5以上であり、望ましくは1:0.5〜1:3(実施例1及び2)である。
【0040】
本発明におけるDNA/キトサン結合生成物は、室温から−70℃の広い範囲内で保存され、そして、湿気の無い暗所で保存される。
【0041】
一方、本発明における水溶性キトサンと結合する形態で保存されるDNAは、デオキシリボヌクレアーゼによる分解が発生していてさえ、安定して保存され、それ故、遺伝分析のために用いられることができる(実施例2に示す)。
【0042】
本発明によると、ヒト、動物または植物、バクテリア、及びプラスミドDNAを含むDNAは、キトサンとの混合物として保存することができ、望ましくは、cDNAを含む。キトサンとの混合物として保存されることができるDNAの大きさは、数10から数10億塩基と様々である。
【0043】
一方、本発明による水溶性キトサンと結合したDNAの液体混合物は、安定して保存される。そして、本発明によるDNA保存のための方法の有効性は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、クローニング、ブロッティング、シークエンシング及びそれに類する方法のような検査を行うことにより、容易に確認することができる。
【0044】
本発明によると、DNA保存のためのカード(タイプ1DNAカード)は、適切なキトサンと尿酸とが混合され(詳しくは、0.1%〜1%(w/v)の前記水溶性キトサン溶液に対する、0.5mM〜20mMの尿酸の、混合物における割合は1:1である。)、ブロッティングのための紙に前記混合物を吸収させ、その後、乾燥させることにより製造することができる。上述したカードを用いることにより、多くのDNAを長期間保存することができ、室温で、最小の空間で運搬することができる。DNA保存のためのカードの製造に用いる紙としての、クロマトグラフィーまたはブロッティングのための様々な紙は、一般に用いられているものを用いてもよく、前記紙の厚さは、約0.3mm〜1.2mmのものが望ましい。前記DNA保存のためのカードの保存温度は、室温に適しているが、−20℃〜−70℃とより低い温度でも可能であり、室温で6ヶ月以上の保存が可能である(実施例5)。
【0045】
本発明によるPCRを行う際、DNAとキトサンとの混合物が液体である場合は、前記混合物自身は鋳型として用いられ、前記混合物がカード形態である場合は、前記カードの断片は切断され、PCR増幅、クローニング及び配列分析の一般的方法を実行する鋳型として用いられる。その結果、本発明の方法により保存されたDNAを用いて遺伝分析を充分に行えるように、DNAが保存されることが確認される(実施例5)。
【0046】
本発明によると、DNA保存のためのカード(タイプ2DNAカード)は、トリス、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)及び尿酸を備える細胞溶解バッファー(詳しくは、トリス(8mM)、EDTA(0.5mM)、SDS(0.1% w/v)及び尿酸(2mM))と、適切なキトサン溶液の混合物を、ブロッティング用の紙に吸収させ、その後乾燥することにより製造することができる。上述したカードを用いることにより、DNAを長期間保存することができ、血液のようなDNAを含むバイオサンプル状態として、室温で運搬することができる(実施例6)。
【0047】
一方、本発明のDNAカードを用いて保存されたDNAは、安定して保たれ、PCR、PCR−RFLP、クローニング、配列分析及びそれに類するもののような検査をこれ以降行うことができる(実施例7〜10)。
【0048】
更に、サザンブロット法を行うために、前記DNAとキトサンの複合体は、DNAをアガロースゲルに移すために分離されるだろう。そのため、DNAは、DNA上に損傷が無く、サザンブロット法の結果に影響を与えない硫酸塩を基礎としたカチオン塩を用いることにより分離される。上述した硫酸を基礎としたカチオン塩の例として、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、オクチル硫酸ナトリウム(SOS)または臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)を含む(実施例11)。
【0049】
また、本発明は、個々のDNAサンプルは、キトサンとの混合物の形態で保存されるDNA IDカードを提供し、個人識別またはHLA遺伝型検査のような遺伝子検査を行うことによって得られた個々の遺伝情報は、前記プラスチックカードの磁気帯に保存される(実施例12及び13)。前記プラスチックDNA IDカードは、個人識別、個人の組織移植、個人の臨床診断またはそれに類するもののための遺伝子情報バンク同様に、個人のDNAバンクとしても用いられることができる。
【0050】
本発明を以下の実施例と共に更に詳細を示す。しかしながら、本発明の目的はそれらにより制限されるものではない。
【0051】
実施例1:アガロースゲル電気泳動による、DNAとキトサンとの複合体の移動シフトアッセイ。
【0052】
適切な特性(DNAと混合する際に安定した複合体を形成するためのキトサンの濃度及び混合条件)を確立するために、様々な濃度の水溶性キトサンを、様々な比率で正常成熟血液の単球から分離した全部のDNAと混合し、その後、キトサンと結合したDNAの移動シフトアッセイを、アガロースゲル電気泳動を介して行った。さらに、キトサンと結合したDNAの移動シフトアッセイは、同様に、マウス肝組織のゲノムDNA及び4.0kbサイズのプラスミドDNA(pCMV−beta−galactosidase)に対して行われた。実験の方法及び結果を以下に示す。
【0053】
A.DNA分離及び準備
正常成熟白血球からの細胞の全DNAは、分離され、その実験は知られている方法(例えば、非特許文献9参照)により、三次蒸留水を用いて行われた。
【0054】
末梢静脈血は、クエン酸ナトリウムを含むチューブ(vacutainer CTAD tube,カタログNo #367946、Betocon & Dickinson社製造、米国)に貯められ、血漿及び単球の軟膜層は、遠心分離機により分けられた。前記単球(そのほとんどはリンパ球である。)DNAは、QIAamp DNA血液ミニキット(Qiagen社製造、ドイツ)を用いて、次の方法により、分離された。
【0055】
20μlのプロテインキナーゼK(QIAGEN プロテアーゼ)は、1.5mlマイクロ遠心チューブに入れ、200μlの軟膜層と200μlのバッファーALは、順次、マイクロ遠心チューブに加えられた。そして、ボルテックスにより15秒混和した。それを、56℃で10分間立たせたまま放置し、チューブのキャップを閉め、溶液を集めるために遠心分離した。前記溶液に200μlのエタノールを加え、ボルテックスにより15秒混和した。そして、前記溶液の全てを、QIAampスピンカラムに加え、8,000rpmでもって1分間遠心分離した。その後、2mlコレクションチューブを前記カラムに設置し、500μlのバッファーAW1をカラムに加え、再度8,000rpmでもって1分間遠心分離した。こうして得られたろ液は、廃棄され、新しいチューブが供給され、さらに最大速度でもって1分間遠心分離した。再び、新しい1.5mlマイクロ遠心チューブを設置し、200μlの蒸留水またはバッファーAEを加え、立たせたまま室温で1分間放置し、その後さらに8,000rpmでもって1分間遠心分離し、DNAを溶出した。こうして分離されたDNAは、分光光度計を用いて濃度を測定され、A260/A280比は、前記分離されたDNAの純度を調べるために比較される。このとき、前記DNAの純度は、分光光度計測定上A260/A280は1.6〜1.8となるだろう。上記方法により、200μlのヒトの血液から、平均6μgの純DNAを得ることができる。
【0056】
B.キトサンの準備
もし水溶性キトサンが、脱アセチル化の程度が60%以上であり、分子量が10kDa〜500kDaの生成物であるならば、本発明の用途として、具体的には、DNAとの安定な複合体を形成するために用いることができる。これらに該当する多くの水溶性キトサン生成物は、市販のものを用いることができる。それらのうち、本発明にあたる、平均脱アセチル化率が90.1%であり、平均分子量が約300kDaである水溶性キトサン生成物は、Jakwang社(韓国 アンソンシ)から購入し、滅菌三次蒸留水で溶解した。このキトサンに加えて、類似した特性を有する他の水溶性キトサンをまた用いてもよい。
【0057】
C.キトサンとDNAとの複合体の準備の方法
前記水溶性キトサンは、滅菌三次蒸留水に溶解し、試験のため、0.02%から0.05%、0.1%、0.25%、0.5%及び1%の重量対体積比率(w/v)となるよう様々な濃度に調整した。ここで、DNAは、滅菌三次蒸留水で希釈し、500nμg/μl及び1μg/μlの濃度にし、その後これを用いた。
【0058】
1.5ml遠心チューブに、DNA溶液及び上述した様々な濃度の前記キトサン溶液を、様々な体積比率で混和し、室温で15分間立たせたまま放置し、複合体構造へ導いた。
【0059】
D.アガロースゲル電気泳動によるDNAとキトサンの複合体の移動度シフトアッセイ
正常成熟単球及びプラスミドDNAから分離したゲノムDNAの1μg/μl濃度と、様々な濃度の前記水溶性キトサン溶液とを様々な比率で混和することにより得られたDNA/キトサン複合体は、上記方法に従って0.8%アガロースゲルに装填され、100Vで電気泳動された。その結果をそれぞれ図2及び図3に示す。その結果は、キトサンと混和されていない唯のDNAが電気泳動されたとき、標準的に移動したDNA及びrDNAのバンドは、18s及び28sに観察され、DNA水溶液(1μg/μl)は、0.02%、0.1%または0.25%キトサン溶液と混和され、それぞれ、1:0.2、1:1または1:2.5以上(この場合、混合物中のキトサンとDNAとの重量比は1:1以上である。)の各体積比率であるため、DNAは前記アガロースゲルにおいて決して移動しないような、キトサンと完全に結合をした。そのため、次の実験において、0.1%キトサン溶液と1μg/μl濃度のDNA溶液と体積比1:1(この場合、混合体中のキトサンとDNAとの重量比は、1:1である。)で混和されたものであるキトサンとDNAとの複合体の構成物はスタンダードとして作られた。しかしながら、これは構成の一つの例に過ぎず、適切な構成であれば、キトサン生成物の特性に従って、多様なものが使用されてもよい。
【0060】
実施例2:キトサンのデオキシリボヌクレアーゼ防御アッセイ
前記水溶性キトサンは、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)からDNAを防御することができるのかを確認するため、そして、その適切な条件を確立するために、キトサン溶液で処理されたDNA及び未処理のDNAは、それぞれデオキシリボヌクレアーゼ処理され、その効果をアガロースゲル電気泳動によって観察した。
【0061】
その方法と結果は次の通りである。同様の実験を、ヒトリンパ球のゲノムDNA及びマウス肝組織のゲノムDNAに、繰り返し行った。
【0062】
8個のチューブを2つの群に分けた。一つの群は、蒸留水に溶解させたキトサン(20g)とDNA(10g)とをマイクロチューブ(1.5ml)中で混和し、複合体を生成した。もう一方の群は、キトサンを用いず、DNA(10g)のみをマイクロチューブに加えた。第一群及び第二群のそれぞれのチューブに、1unit/lの濃度に溶解させたデオキシリボヌクレアーゼ(DNase I)5μlを加え、その後、最終体積が100μlとなるように蒸留水を加えた。その後、反応させるため、それぞれ0分、20分、40分及び60分の間、37℃の恒温槽に保持した。反応終了後直ちに、25μlの停止液を加え、DNase I を不活性化するためよく混和した。反応を不活性化した4個のチューブのそれぞれに、110μlのTEバッファー(10mM トリス、0.1mM
EDTA)を加え、混和し、その後反応させるため60℃で一晩保持した。その後、上澄みを回収し、新しいマイクロ遠心チューブに入れ、抽出した。300μlの無水EtOH(エタノール)及び15μlの3M NHOAc(酢酸アンモニウム)をそこに加え、あらかじめ−70℃にしてあるディープ・フリーザーで20〜30分間立たせたまま放置した。その後、得られたものを、4℃、12,000rpmで20分間遠心分離し、液分を吸引除去した。付着した沈殿物は70%エタノールで再度洗浄、乾燥され、DNaseを含まない蒸留水20μlで溶解された。10μl(約1μgDNA)の結果物が、こうして得られた計8個のチューブそれぞれから得られ、1%アガロースゲルで電気泳動された。その結果を図4に示す。
【0063】
図4から、キトサン処理されていないDNAは、DNase I処理後40分でほぼ開裂された一方、キトサン処理されたDNAは、DNase処理後40分では開裂されず、そのほとんどが、ウェル中に残っていた。これらの結果は、本発明の方法によるキトサンとDNAとの重量比が、1:0.5で混和されているものでさえ、デオキシリボヌクレアーゼによるDNA開裂を効果的に抑制し、そして本発明による方法は、DNAの保存を効果的にすることがわかった。
【0064】
実施例3:DNAとキトサンとの複合体のための遺伝子増幅可能性の試験
実施例1及び2で準備した水溶性キトサンとDNAとの液状複合体を用いて、PCRは標的遺伝子が適切に増幅されているかどうかを確認するために行われ、それにより本発明によるDNA保存が、前記遺伝子アッセイに悪影響を及ぼさないかどうかを確認し、本発明によるDNA保存方法により保存されたDNAを、PCRに用いるための、適切な条件を確立した。ヒト白血球ゲノムDNAに対して、PCRは各?活動遺伝子を標的として行った。その方法と結果は以下の通りである。
【0065】
標的遺伝子のフォワードプライマー及びリバースプライマーをそれぞれ10pmol加えることにより、鋳型として、100ngの対象となるDNAを用いることで、PCR反応を行い、更に、2.5mM デオキシヌクレオチド(dNTP)、1unitのTaqポリメラーゼ及び10xポリメラーゼバッファー(500mM KCl、100mM トリス‐Cl、15mM MgCl、0.1% ゼラチン)を加えた。PCRは、GeneAmp 2700 Thermal cycler(Perkin−Elmer Biosystems社製造、米国)を用い、先ず、95℃で5分の第一条件下の後、95℃で30秒、55℃で30秒、72℃で30秒の条件を40回繰り返し、最後に72℃で7分間行い、PCR生成物を得た。
【0066】
0.1%キトサン及びDNA(1μg/ul)を1:1の体積比で混和することにより準備され、ヒト及びマウスのゲノムDNAサンプルの各鋳型を用いて、β‐アクチン遺伝子に対して、PCRを行った。1.5%アガロースゲルでの電気泳動の結果を、図5に示す。キトサンと混和されたゲノムDNAサンプルの両方は、同程度に、661bpサイズのβ‐アクチン遺伝子の強いDNAバンドを示した。これは、本発明のキトサン混合培地は、PCRに悪影響を有さないことを示し、遺伝子発現の調査に有益に用いることができる。
【0067】
実施例4:長期間室温で保存されたDNAとキトサンとの複合体のPCR増幅実験
上記結果から、前記水溶性キトサンはDNAとほぼ完全に結合し、デオキシリボヌクレアーゼの攻撃から安定してDNAを保存することがわかった。本実施例では、前記水溶性キトサンとDNAとの前記複合体が、長期間室温で、液体状態で保存されたときでも、前記保存されたDNAは、開裂されることなしに維持され、遺伝子増幅及び遺伝子アッセイを行うことが可能である。PCRアッセイは、次の通りに行われた。
【0068】
1μlの0.1%水溶性キトサン溶液(w/v)と、1μlの正常成熟血液(500nμg/μl)の単球のゲノムDNAとを、混和し、複合体を形成し、8μlの蒸留水を更に加え、最終体積が10μlとなるように調整した。こうして、24サンプルを前記遠心チューブに準備し、室温で保存した。1μlの、キトサン処理していない、同様の白血球DNAは、最終体積が10μlになるよう調節され、9サンプル準備され、そのうちの3本は−70℃で保存され、残りの6本は室温で保存された。前記水溶性キトサンと混和され、前記チューブ内に室温で保存されたDNAに対して、実施例3の方法に従い、3本のDNAサンプルに対してPCR反応を行い、それぞれを、1週間、2週間、3週間、4週間、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、及び1年の各時点で、前記標的遺伝子が適切に増幅できるかどうか確認した。キトサンで処理されていない前記DNAサンプルのうち、−70℃で保存されていた3本のサンプルに対して、3ヶ月後及び1年後に、それぞれにPCRを行った。図6は、PCRを行った後の、β‐アクチン遺伝子に対する、0.8%アガロースゲルでの電気泳動の結果を表わす写真である。
【0069】
図6から、室温で、3ヶ月間及び1年間マイクロ遠心チューブで、キトサンに結合していない(裸の)ものとして、DNAが保存された場合、ハウスキーピング遺伝子であるβ‐アクチンは、決して発現しないことがわかった。一方、一週間から1年間室温で、液体としてチューブ内で、キトサンと結合したものとして、DNAサンプルが保存された場合、β‐アクチン遺伝子ははっきりと検出された。従来の方法による、キトサンと結合せずに、−70℃で保存された前記DNAサンプルに対して、本発明の方法による、室温で、キトサンと結合させて保存された前記DNAサンプルの、増幅されたβアクチンの量は、ほぼ同じである。
【0070】
このような結果は、本発明の方法による前記水溶性キトサンに結合されたものとして、液中でDNAを保存する方法は、少なくても一年間安定してDNAを維持することができ、該保存されたDNAは、PCRアッセイに用いる際に問題を有さず、前記方法は、ディープ・フリーザーによる従来の保存方法同様に、安定してDNAを保存することができることを示した。本実施例の保存温度は、室温から−70℃と様々であるが、湿気の無い暗所で保存されるのが望ましい。
【0071】
実施例5:キトサンが紙に吸着されているDNAカード(タイプ1)の準備、及びそれらの遺伝子増幅可能性の調査
室温で、最小限の空間で、多数のサンプルDNAを保存、運搬し、自動アッセイに役立つように、キトサンが適する紙に吸着されたカードが発展してきており、それはDNAカードといわれている。前記DNAカードは、様々な種類があり、その中で、DNA自身を保存するために用いられる紙製カードは、タイプ1DNAカードといわれている。
【0072】
最も効率的な水溶性キトサン溶液の濃度及び適切な紙の厚さを選択するために、次の実験を行った。
【0073】
様々な種類のブロッティング用の紙は、充分な時間、0.02%、0.1%または0.25%(w/v)濃度の前記水溶性キトサン溶液に浸漬され、DNAカード製造に用いるために乾燥させられた。この時、前記紙は、Whatman社(英国)またはSchleicher & Schuell社(独国)のような会社から市販されており、適切な厚みを有するブロッティング用の紙から選ばれた。本発明において、厚さ0.3mm、0.9mmまたは1.2mmのブロッティング用の紙は、Whatman社から購入し、使用した。キトサンを用いたDNA保存用の前記DNAカードの種類及び大きさは、使用に応じて様々に準備することができる。キトサンが吸着された前記ブロッティング用紙は、24ウェルプレート、96ウェルプレート及び384ウェルプレート(マルチウェループレート)(8.1cm×12.3cm)と同じ大きさに切断され、ほとんどのウェルは使用され、そして、前記ウェル及び区分けは、プレート同様に前記紙に印刷及び印をつけられた。前記ウェルのそれぞれに、DNAサンプルはピペットで滴下され、一週間から一年またはそれ以上、室温で保存された。それ故、一つのDNAカードは、24、96または384個のDNAサンプルを保存することができる。
【0074】
前記水溶性キトサン浸漬DNAカード製造の方法は次の通りである。
【0075】
Whatman社の0.3mm厚ブロッティング用紙は、滅菌され、高温のオートクレーブで乾燥された。その後、あらかじめ生成しておいた0.1%(w/v)濃度の水溶性キトサン溶液及び2mM尿酸溶液を、1:1の体積比で混和し、前記紙を充分な時間浸漬し、その後乾燥させてタイプ1DNAカードを製造した。
【0076】
スポットされ、長期間保存されたヒトゲノムDNAは、上記のように用意した前記タイプ1DNAカードに滴下され、一定期間保存された。前記保存されたDNAカードから、直径が約1mmから2mmのカード断片が、パンチ、鉗子またはピンセットを用いて取られ、PCRを行うためにチューブに加えられた。このカード断片の鋳型と共に、β‐アクチン遺伝子に対するPCRは、実施例3の方法に従って行われた。このPCR反応の方法は次の通りである。
【0077】
1.DNAが保存されているキトサン浸漬紙製カードから、直径が約1.2mmの断片をパンチ等を用いて取り、PCRのためチューブに加えた。
【0078】
2.200μlのTEバッファー(10mM トリス‐Cl、0.1mM EDTA、pH=8.0)を加え、混和し、その後、室温に5分間放置した。その後、前記TEバッファーはピペットを用いて完全に取り除かれた。
【0079】
3.第2工程は、2回繰り返した。
【0080】
4.室温に1時間または56℃に10分間で、乾燥させた。
【0081】
5.上記工程によって処理された前記カード断片に、適切な組成物のPCRサンプルを加え、β‐アクチン遺伝子を、実施例3の方法に従ってPCR増幅した。
【0082】
図7は、アガロースゲル電気泳動実験の写真の結果を示し、比較の結果及びPCRによる分析を表わしている。0.1%キトサン溶液に浸漬されることにより作られたDNAカードのすべてにおいて、前記標的遺伝子は強く発現しており、0.9mmまたは1.2mmのような、より厚い紙は、より多くのPCR産物を生成した。加えて、本発明によるDNAカードに吸着されて保存された場合、β‐アクチン遺伝子は、室温で3ヶ月から1年のような長期間の経過後でさえも、−70℃で保存した場合と同様に、PCRにより強く増幅された。このような結果は、本発明によるDNAカードで保存されたとき、多種多様なDNAサンプルは室温で長期間でさえ安定して保存することができ、長期間の経過後でもアッセイを行うことができることを示す。そのため、本発明のDNAカードは、多種多様なDNAサンプルを簡単に室温で長期間保存し、運搬するために有益であり、更に、本実施例及び次からの実施例で示されるような、PCRまたは塩基シークエンシングのような多様な遺伝子アッセイに有益でもある。
【0083】
実施例6:キトサンと細胞溶解バッファーとが前記紙に吸着されているDNAカード(タイプ2)の準備、及びそれらの遺伝子増幅可能性の調査
この、タイプ2DNAカードは、キトサンと細胞溶解バッファーを、ブロッティング及び乾燥させるために、様々な種類の紙に吸着させることにより生成された。このタイプ2DNAカードは、血液のような細胞含有体液としてのサンプルを保存し、その後、遺伝子アッセイのためにPCRにより増幅させるために用いることを目的とされた。このタイプ2DNAカード上に、ヒト血液を滴下し、一定期間後、その性能は比較され、PCRにより分析された。
【0084】
実施例5で準備されたブロッティング用前記紙製カードは、DNAカードを製造するために、水溶性キトサン溶液及び細胞溶解バッファー中に、充分な時間浸漬された。この時、0.3mm厚、0.9mm厚及び1.2mm厚のブロッティング用紙は、Whatman社から購入し、使用した。血液として保存するためのタイプ2DNAカードを製造する方法は、次の通りである。
【0085】
Whatman社のブロッティング用0.3mm厚の紙は、高温で滅菌され、乾燥された。その後、あらかじめ生成された0.1%(w/v)濃度の前記水溶性キトサン溶液及び細胞溶解バッファー(0.5mM EDTA、8mM トリス‐Cl、2mM 尿酸、1%(w/v) SDS)は、体積比1:1で混和され、前記紙を、充分な時間浸漬し、その後、乾燥させ、タイプ2DNAカードを製造した。
【0086】
上述したDNAカードから、直径約1mm〜2mmのカード断片を取り、実施例5にあるようなPCRを行うためのチューブに加えた。このカード断片の鋳型と共に、β‐アクチン遺伝子に対するPCRが行われた。このPCR反応の方法は、次の通りである。
【0087】
1.DNAが保存されているキトサン浸漬紙製カードから、直径約1.2mmの断片は、パンチなどを用いて取られ、PCR用チューブに加えられた。
【0088】
2.200μlの洗浄溶液(GG精製試薬;0.5mM EDTA、8mM トリス‐Cl、2mM 尿酸、1%(w/v)SDS)は、加えられ、混和され、そして、室温で5分間放置された。その後、前記洗浄溶液は、ピペットを用いて完全に取り除かれた。
【0089】
3.第2工程は、3回繰り返した。
【0090】
4.その後、200μlのTEバッファー(10mM トリス‐Cl、0.1mM EDTA、pH=8.0)は加えられ、混和され、室温で5分間放置された。その後、前記TEバッファーは、ピペットを用いて完全に取り除かれた。
【0091】
5.第4工程は、2回または3回繰り返した。
【0092】
6.室温に1時間または56℃に10分間で、乾燥させた。
【0093】
7.上記工程で処理された前記カード断片に、適切な組成物のPCRサンプルを加え、そして、β‐アクチン遺伝子を、実施例2の場合と同様の方法によりPCR増幅した。
【0094】
この実験の結果、タイプ2DNAカードの全てに対して、前記標的遺伝子は強く発現しており、0.9mmや1.2mmのような、より厚い紙は、より多くのPCR生成物を生成した。加えて、本発明のDNAカードに吸着されて保存された場合、β‐アクチン遺伝子は、室温で3ヶ月から1年のような長期間の後でさえも、PCRにより強く増幅された。このような結果は、DNAサンプルを、本発明によるDNAカードで保存する場合、DNAの分離及び精製する必要なしに、血液として室温で長期間安定して保存することができ、長期間経過後でもアッセイが可能であることを示す。そのため、本発明のDNAカードは、血液としてのDNAサンプルを簡単に室温で長期間保存し、運搬するために有益であり、更に、PCRまたはそれに類するもののような多様な遺伝子アッセイに有益でもある。
【0095】
実施例7:長期間保存されたDNAとキトサンとの複合体に対する標的遺伝子のクローニング及び塩基シークエンシング可能性調査
実施例4に従って室温で長期間、液体として保存されたキトサン/DNA複合体に対して、PCRを行い、得られた生成物はクローニングした。その後、自動塩基シークエンシングによって、本発明の方法により保存されたDNAが、安定して維持でき、保存後に使用できるかどうかを確認した。
【0096】
室温で3ヶ月、本発明の方法による0.1%水溶性キトサンと混和されたものとして保存された成熟結腸組織のゲノムDNAサンプルの鋳型と共に、大腸腺腫様ポリポーシス(APC)遺伝子に対して、PCRを行った。その生成物は、ブラスミドベクター中でクローニングされ、その後、再度塩基シークエンシングによって調査された。その方法は、次の通りである。
【0097】
遺伝子のPCR生成物を、前記シークエンシング反応における鋳型として用いるために、最適な濃度に調節することは重要である。本発明では、10ngのAPC遺伝子が用いられた。PCRチューブに、APC遺伝子の各エクソンのPCR生成物(3.2pmolのフォワードプライマーかリバースプライマーのどちらか及び8μlの反応混合物(terminator ready reaction mix;Perkin−Elmer社製造、 米国))を加え、最終体積が20μlとなるように、滅菌蒸留水を加え、よく混和した。サイクルシークエンシング反応は、GeneAmp 2700 thermal cyclerを用いて前記混合物に対して、96℃で10秒間、50℃で5秒間、及び60℃で6分間のサイクルを25回行った。得られた反応生成物は、エタノールで沈殿させ、遠心分離し、蛍光標識ジデオキシヌクレオチド(ddNTP)をプライマーを含まないように取り除き、前記反応混合物(terminator ready reaction mix)を乾燥させた。こうして得られたDNAは、ホルムアミド:25mM EDTA:ブルーデキストラン及び10μlのローディングバッファーの混合物と混和され、5分間沸騰水中で変性させた。その後、前記サンプルは氷上に置かれ、該変性したDNAサンプルは、5.5%のlong ranger gel(BMA、カタログNo.、米国)をあらかじめ流し込まれたプレートの各ウェルに加えられた。電気泳動は、2〜4時間行われ、塩基シークエンシングは、ABI Prism 377 automatic sequencer(Perkin−Elmer Biosystems社製造、米国)のソフトウェアを用いて実施された。
【0098】
APC遺伝子に対する自動塩基シークエンシングの結果を、図10に示す。
【0099】
前記シークエンシングの結果、正常APC遺伝子は、正確に増幅され、そのため、本発明の方法によるDNAとキトサンとの前記液状複合体は、室温で長期間保存した後でさえもとても安定してDNAを保存し、クローニング及び塩基シークエンシングを行うことができる。これは、遺伝子突然変異検査及び癌検査にも、有益であることを意味している。
【0100】
実施例8:長期間前記DNAカードで保存されていたDNAの、遺伝子クローニング及び塩基シークエンシングの調査
室温で長期間DNAカードに吸着されて保存されたDNAサンプルに対して、PCR及び自動塩基シークエンシングによって得られた生成物のクローニングは、適切に行うことができるかどうか、確認された。
【0101】
3ヶ月間、実施例5に従って製造されたDNAカードに滴下して保存されたヒト肺癌組織のゲノムDNAサンプルの鋳型と共に、PCRを、p53腫瘍抑制遺伝子に対して行った。その産物は、プラスミドベクター中でクローニングされ、その後、再度自動塩基シークエンシングで検査された。その方法は、実施例7の方法と同様である。その結果を図11に示す。
【0102】
結果として、変異原性のp53遺伝子は、正確に増幅され(図11)、本発明の方法により製造されたDNAカードを用いて保存されたDNAの場合、DNAは、長期間経過後でさえ、そのクローニング及び自動塩基シークエンシング可能であるように保存され、更に、遺伝子突然変異検査及び癌検査にも有益であることがわかった。
【0103】
実施例9:DNA/キトサン複合体の鋳型によるサザンブロット法
本発明の方法により保存されたDNAとキトサンとの複合体を用いて、サザンブロット法及びそれに類するもののようなハイブリダイゼーションアッセイによる特定遺伝子の存在及び量を検査する際、キトサンと結合したDNAはアガロースゲル電気泳動で動かず、それでブロッティングアッセイを行うことが困難となっている。そのため、ブロッティングアッセイのために、前記DNAサンプルは、キトサンを取り除いて用いなければならない。そのため、本発明では、キトサンと結合したDNAからDNAの損傷なしでキトサンを取り除くための方法を確立させた。
【0104】
上述したように、前記水溶性キトサンは、カチオン塩であり、DNAと結合する。それで、キトサンは、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、SOS(オクチル硫酸ナトリウム)及びCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)のような硫酸塩である強カチオン塩で処理することによってDNAから分離することができる。この場合、前記カチオン塩は、安価で、DNAに損傷なしで前記ブロッティングに影響を及ぼさないものであるべきである。そのため、本発明では、安価でDNAとプローブ間のハイブリダイゼーション反応に影響を及ぼさないSDS(Sigma社製造、米国)を用いた。
【0105】
本発明の方法に従って、キトサン溶液と膵臓癌組織DNAを混和することによって得たDNA/キトサン複合体は、室温で3ヶ月保存された。その後、5〜10μgの前記DNA/キトサン複合体は、5%(w/v)SDSと混和され、サザンブロット法のためアガロースゲル電気泳動にかけられた。サザンブロット法は、公知の方法(例えば、非特許文献10参照)によってK−ras遺伝子に対して行われた。その結果は、それぞれ図12及び図13に示す。
【0106】
図12から、5%SDS電気泳動の場合、前記DNA及びキトサンは分離され、前記DNAは、前記ゲル中を移動することがわかった。
【0107】
加えて、図13は、K−ras遺伝子が、6ヶ月間、キトサンと結合させず−70℃で保存したDNAと、キトサン/DNAの形態で保存されたDNAの両方において、強く発現するという、前記サザンブロット法の結果を示した。そのため、本発明のDNA保存方法によって長期間保存されたDNAを用いてサザンブロット法を行うための方法は確立された。更に、本発明の方法により保存されたDNAは、ハイブリダイゼーションアッセイに有益であることがわかった。
【0108】
実施例10:長期間前記DNAカードで保存されたDNAに対する遺伝子のPCR−RFLPアッセイ可能性の調査
PCRは、本発明のタイプ1DNAカードを用いて保存されたヒトゲノムDNAサンプルに対して行われ、その後、RFLP(制限断片長多型:restriction fagment length polymorphism)アッセイを用いて、遺伝子型決定試験が可能かどうか検査された。前記タイプ1DNAカードのDNAのPCR後、前記RFLPアッセイを用いた遺伝子型決定の結果を、図8に示す。更に、遺伝子型決定が、本発明のタイプ2DNAカード中に、血液として保存されたヒトサンプルに対して、PCR−RFLPを用いて可能かどうか調査された。その結果は、図9に示す。本発明のDNAカードが、実際に、遺伝子診断、心臓血管疾患の発病と関連する遺伝子に用いることができることを証明するために、PCRによって増幅され、特定の制限酵素で、次の通りに処理をされた。その結果は、電気泳動によって解析された。結果として、多重遺伝子型の調査に問題を有さないことが分かった。
【0109】
本実施例は、以下に記述される。
【0110】
本発明によるタイプ1DNAカード、タイプ2DNAカード及びプラスチックDNA IDカードを用いて、それぞれ、以下の表に示すように、反応液を用いてPCRチューブ中に、老人病に関連する次の6つの遺伝子を準備した。
【0111】
【表1】


上記準備した反応液を含む前記PCRチューブを、PE2700 thermal cycler(Perkin Elmer社製造、米国)に加え、次の通り、それぞれの遺伝子の条件に従い増幅した。
【0112】
1.eNOS1/2遺伝子,MTHFR1/2遺伝子,AGT1/2遺伝子,AT1R遺伝子及びACE1遺伝子に対して、
95℃/5分、35サイクル(95℃/30秒、58℃/30秒、72℃/40秒)、72℃/10分とし、
2.ACE2遺伝子及びAPOE1/2E遺伝子に対し、
95℃/5分、35サイクル(95℃/30秒、65℃/30秒、72℃/40秒)、72℃/10分とした。
【0113】
こうして得られた各遺伝子のPCR生成物は、エチジウムブロマイド(EtBr)を含む1.2%アガロースゲル電気泳動を行うことにより確認された。各遺伝子の生成物の大きさは、次の表2に示す。
【0114】
【表2】


こうして得られたPCR生成物にRFLPを行うために、第一に、ACE遺伝子だけを除く他の5つの遺伝子のPCR生成物を、次の通り、DNA Clean & Concentrator kit(Zymo Research Corporation製造、米国カリフォルニア州)を用いて生成した。
【0115】
1.前記PCR生成物(約25l)に、DNA結合溶液を2倍量(例えば50μl)加えた。
【0116】
2.予め用意されたZymoスピンカラム(Zymo spin column)に、上記1の混合物の全てを加え、13,000rpmで30秒間遠心分離した。
【0117】
3.コレクションチューブに集められた溶液は、ピペットで取り除いた。
【0118】
4.200μlの洗浄バッファーを前記カラムに加え、13,000rpmで40秒間遠心分離した(2回繰り返し)。
【0119】
5.残った洗浄バッファーは、13,000rpmで40秒間、空のコレクションチューブ中で遠心分離することにより、完全に取り除いた。
【0120】
6.前記コレクションチューブを取り除き、きれいな1.5mlマイクロ遠心チューブを新しいカラムのために用意し、その後、20μlの滅菌蒸留水をそこに加え、13,000rpmで40秒間、溶出のために遠心分離した。もう一つの方法として、65℃くらいに温めた滅菌蒸留水を用いてもよい。
【0121】
上記方法により精製し、得られたPCR生成物に対して、以下の表で各遺伝子に対応した制限酵素は、各制限酵素に対応した条件化で用意された。その後、4〜6時間37℃の恒温槽に、反応のために固定し、その後、各遺伝子の危険性が、2.5%アガロースゲル電気泳動によって調査された。
【0122】
【表3】


実施例11:キトサンを含むPCRキットの製造
本発明のキトサンを用いたDNA保存方法の適用として、Taqポリメラーゼ、プライマー、dNTP及びバッファー及びそれに類するものが、キトサンと共に一つのチューブに加えられたもの(一体型チューブ:all in one tube)、並びにDNAまたは血清のようなサンプルが、PCRを誘導するためにチューブに加えられたものからなる、PCRキットが製造された。特徴として、このPCRキットは、DNA保存及びPCRアッセイの両方において用いることができる。
【0123】
本実施例において、B型肝炎患者の血液から得たDNAを用いて、B型肝炎ウイルスの存在を、本発明のPCRキットを用いて調査を行った。前記キットは、癌関連遺伝子による癌診断またはB型肝炎ウイルス若しくはヒト乳頭腫ウイルス感染における病原体の診断、性感染症、他の細菌感染、及びそれに類するものにもまた適用することができる。
【0124】
このキットの使用方法は次の通りである。
【0125】
10μlの5GG一段階PCRバッファーTM及びホットスタートタイプTaqポリメラーゼ(AmpliTaq Gold,PerkinElmer社製造、米国)、2.0μlの10mM dNTP混合物、それぞれ1.0μlの標的遺伝子のフォワードプライマー及びリバースプライマー(5pmol)、及び、0.1%濃度のキトサンを含む一体型チューブに、1〜3μgの鋳型DNAを加えた。全容積が50lとなるよう、前記キットに蒸留水を注入し、よく混和し、その後、PCRを行った。始めに、逆転写反応を50℃、30分間行い、95℃15分間で変性を行い、続いて94℃で1分間、53℃で40秒間及び72℃で1分間のサイクルを合計25〜40サイクル行い、その後、72℃で10分間の反応で、PCR増幅を完了させた。結果として、前記B型肝炎ウイルスのDNAの存在は、本発明のPCRキットを用いて検出された(データは添付されていない。)。
【0126】
実施例12:プラスチックDNA IDカードの製造
図14は、本発明のDNAカードを用いたプラスチックDNA IDカードを製造する手順を示したフローチャートである。図14のフローチャートにある手順を行い、プラスチック素材のDNA IDカードを開発した。
【0127】
1.血液または口腔の細胞、DNAカードまたはそれに類するもの、及び個人写真データのような輸送された個人サンプルの領収(S201)。
【0128】
2.前記サンプルからゲノムDNAの分離及び血液型の検査(S202)。
【0129】
3.抽出されたゲノムDNAを用いたHLA遺伝子型のアッセイ、STR(縦列型反復配列:short tamdem repeat)個人識別遺伝子の検査、及び結果に対する分析(S203)。図15は、STR検査の15の組み合わせ、個人遺伝子型分析結果の用意、及びエンコード遺伝子型データを用いた個人遺伝子型識別の手順を示す概略図である。
【0130】
4.前記プラスチックカードに添付するための紙製DNAカードの結合、そして熱及び圧力を加えることによる前記DNA IDカードの枠組みの準備(S205)。図16は、本発明のDNA IDカードを準備するための手順において、PVC(ポリ塩化ビニル)カードに、タイプ1またはタイプ2DNAカードを結合させることを示す概略図である。図16に示すように、PVC軟層は、最下部に配置され、タイプ1DNAカードまたはタイプ2DNAカードは、その上に配置される。その後、PVCコア層はその上に配置され、前記紙製DNAカードとほぼ同じ大きさの穴を有している。(紙製カード及び紙の厚さと、PVCの厚さが、それぞれ異なる材料からつくられており、それで熱による結合で、一緒に結合されないので、カードの大きさの穴を用意する必要がある。具体的には、前記紙製カードが、この穴に挿入されている。)上端部にはPVCコア層が残され、さらに2つの小さな穴(DNAまたは血液を紙製DNAカードに注入するためものであり、熱処理による前記カードの結合により、ほぼ空いた空間が残されていないので、前記紙製カード上に配置されなくてはならない。)を有する。最後に、PVC軟層はその上に配置される。その後、8〜30分間の熱処理が行われ、それらが結合される。このとき、前記紙製DNAカードの位置は、前記磁気帯の位置と対向し、そして、写真転写の位置とも対向する。図17は、本発明のプラスチックDNA IDカードの一実施例の概略図である。
【0131】
5.S204(S205)で製造した、プラスチックDNA IDカード及び保存のためのカード上への個人のDNAまたは血液の滴下。前記プラスチックDNA IDカード上への前記DNA及び血液の滴下は、針を用いることで、前記PVC軟層を貫通する前記PVCコア層の穴を介して、前記紙製DNAカードにDNA及び血液を注入することで行われる。注入後、針による穴は、ホログラム、ステッカー及びそれに類するものによってふさがれる。
【0132】
6.前記磁気帯または前記プラスチックDNA IDカードのチップ(S206)上の分析されたデータのエンコード。前記磁気帯は、通常3つのトラックから構成されている。英語で書かれることのできる前記トラックは、第1トラックで、78ビット使用可能である。第2トラックは、38ビット使用可能で、第3トラックは107ビット使用可能である。そのため、図17で示すように、主な個人情報は第1トラックにエンコードし、患者の特定の疾病コードは、前記第2トラックにエンコードされ(例えば、C61−Prostatic cancer or N40−Benign prostatic hypertrophy)、STR型またはHLA型の結果を入力したものは、第3トラックにエンコードされる。しかしながら、バンク及びそれに類するものと通信する場合、プラスチックDNA IDカードのエンコード方法は、遺伝子情報がメインサーバ内でのみ認められ、前記バンクにより要求された時にエンコードされ、個人遺伝子情報及びそれに類するもののデータは、POSシステムを用いてこのメインサーバから伝達される。この方法は、本発明のプラスチックDNA IDカード(S206)の更なる実用性を、最大限にするためものである。図18は、本発明のDNA IDカード上にエンコードしている情報の一例の概略図である。
【0133】
7.個人写真の複写及び主な個人情報の、前記プラスチックDNA IDカードへのエンボス加工法による刻み込み(S207)。
【0134】
8.(サーバのための)スーパーコンピュータへの個人データの入力、特定個人IDコードの前記プラスチックDNA IDカードへの割り当て、及び個人パスワードの設定(S208)。
【0135】
9.もし必要であれば各個人、病院、各組織またはバンク及びそれに類するものにおいて国内外の両方で、前記プラスチックDNA IDカードに記録されているID及びパスワードを用いて、安全保守状態の場合における情報へのアクセスを許可するPOSシステムの構成と操作(S209)。
図15は、本発明のプラスチックDNA IDカードの一実施例の概略図である。前記カードの前面は、個人写真及び名前、簡単な個人情報(病院で、緊急時に直ちに処置できる程度)及び住所が記録される。前記カードの背面は、個人遺伝子情報がエンコードされた磁気帯があり、書名及びDNA保存場所を保持するように設計されている。
【0136】
実施例13:前記プラスチックDNA IDカードに結合して保存される紙製DNAカードの断片から、遺伝子を増幅する実験。
【0137】
PCRにより、老人病遺伝子の一つであるeNOS遺伝子を増幅することにより、高温、高圧力で処理することにより予め作られていたプラスチックDNA IDカードに結合されるタイプ1またはタイプ2紙製DNAカードに保存されたDNAから、増幅することが可能かどうか確認された。前記方法は、上記実施例10と同様に行われた。
【0138】
タイプ1DNAカード及びタイプ2DNAカードは、高温、高圧力で製造されたプラスチックDNA IDカードにそれぞれ結合され、それらの中で浸漬されて保存されたヒトゲノムDNA及び血液を有する。その後、これらのプラスチックDNA IDカードを用いて、老人病遺伝子の一つであるeNOS遺伝子は、比較のためPCRによって増幅された。その結果は、図19に示す。この実験を通して、血液を吸収するのに、本発明によるタイプ2DNAカードが用いられる場合、血液サンプルは滴下される必要があり、前記プラスチックDNA IDカードのプラスチックカバーは、PCR増幅において最初に取り除かれる必要がある。
【0139】
図20は、老人病の遺伝子の一つであるeNOS遺伝子に対してのPCR増幅の結果を示し、実験室において、人工的に高温で圧力をかけない処理をしたプラスチックDNA IDカード及び実質的に高温、高圧力で準備したプラスチックDNA IDカードを用い、サンプルは前記カードの準備をする前に加えられた場合と、サンプルは前記カードの準備後に加えられた場合とを比較した。この実験を通して、得られた結果は、保存されたサンプルがDNAまたは血液であることに関わらず、予め準備したプラスチックDNA IDカードにサンプルを滴下することがより良いことを示した。
【0140】
DNAを滴下したタイプ1DNAカード及び血液を滴下したタイプ2DNAカードは、DNA IDカードを準備するのに高温、高圧力で準備されたプラスチックカード上にそれぞれ付着していた。これらカードのそれぞれに滴下するサンプルの適切な濃度及び量を見つけるために、ゲノムDNAの場合、上述したように、準備したカード断片を用いて、DNAサンプルを150ng含む濃度となるようにさまざまな体積にして滴下し、eNOS遺伝子はPCRで増幅され、測定された。その結果を図21に示す。この実験を通して、タイプ1DNAカード(DNA用)に血液を滴下することは適切ではなく、少なくても1.5μg程度を、DNA滴下時に滴下することができる。
【0141】
高温、高圧力で準備されたプラスチックDNAカードによって保存されたサンプルのPCR増幅中に、前記カード断片が、前処理手順として洗浄バッファーで処理された場合と処理されなかった場合との間の相違を、PCRにより老人病遺伝子の一つであるeNOS遺伝子を増幅することにより、比較及び分析した。その結果を図22で示す。結果として、プラスチックDNA IDカードを用いたPCR中、洗浄バッファーで前処理をしない場合に、より良くPCR増幅された。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明による水溶性キトサンを用いたDNA保存方法は、DNA保存有効性に優れており、従来方法に反して、室温で長期間安定してDNAを保存することを可能にする。この方法を用いて、小さいプラスミドDNAだけではなく、植物及び動物の大きいゲノムDNA及びcDNA、並びに菌類、バクテリア及びウイルスのDNAを、室温で安定して長期間、保存し、運搬することができる。本方法により保存されたDNAは、PCR及びRFLP、クローニング、塩基シークエンシング、サザンブロット法及びそれに類するもののような遺伝子アッセイの全てに有益である。更に、PCRキット及びそれに類するもので広く用いられることができ、そして、簡易及び経済的である。特に、本発明のタイプ1DNAカードは、多数のDNAサンプルを室温で長期間保存し、運搬するためにとても有益であり、タイプ2DNAカードは、血液のような、DNAを含む多様なバイオサンプルを、DNAを損傷することなしに、長期間室温で保存することができる。加えて、これらのDNAカードで保存されたサンプルに対して、PCR及びPCR−RFLP、ハイブリダイゼーション、塩基シークエンシング、SNPアッセイ及びそれに類するもののような、多様な遺伝子アッセイを、長期間経過後でさえ、正確かつ簡易に行うことができ、基礎研究及び多様な臨床治療にとても役立つ。また、本発明のDNA IDカードは、個人のDNAを保存するDNAバンクとしての役割を担うことができ、その上、個人の遺伝情報を保存することにより、個人識別及び臓器移植及びそれに類するもののような医療にも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明による、DNAと水溶性キトサンとの複合体の生成及び分析の工程を示すブロック図。
【図2】1μg/μlの濃度の正常成熟単球から分離したゲノムDNAとさまざまな濃度の水溶性キトサン溶液を、様々な割合で混和することにより得られたDNA/キトサン複合体に対する0.8%アガロースゲル電気泳動の写真。(レーン1:サイズマーカー(1kb),レーン2:DNA単体,レーン3:0.02%(w/v)の水溶性キトサン溶液:DNA水溶液=1:0.2,レーン4:0.02%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:0.4:レーン5:0.02%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:0.6:レーン6:0.1%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:1:レーン7:0.1%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:2:レーン8:0.1%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:3:レーン9:0.25%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:2.5:レーン10:0.25%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:5:レーン11:0.25%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:7.5)
【図3】1μg/μlの濃度で4.0kbの大きさのプラスミドDNA(pCMV−beta−galactosidase)と様々な濃度の水溶性キトサン溶液を様々な割合で混和することにより得られたDNA/キトサン複合体に対する0.8%アガロースゲル電気泳動の写真。(レーン1:サイズマーカー(1kb):レーン2:DNA単体:レーン3:0.02%(w/v)の水溶性キトサン溶液:DNA水溶液=1:0.2:レーン4:0.02%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:0.4:レーン5:0.02%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:0.6:レーン6:0.1%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:1:レーン7:0.1%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:2:レーン8:0.1%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:3:レーン9:0.25%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:2.5:レーン10:0.25%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:5:レーン11:0.25%(w/v)のキトサン溶液:DNA水溶液=1:7.5)
【図4】キトサンと結合したヒトリンパ球のゲノムDNAと、キトサンと結合してないDNAに対してデオキシリボヌクレアーゼ(DNase I)で処理することによるDNAの開裂の度合いを1%アガロースゲルで比較、分析する写真。(レーン1:サイズマーカー(1kbラダー),レーン2:DNAのみ,レーン3:キトサン/DNA複合体、20分後,レーン4:キトサン/DNA複合体、40分後,レーン5:キトサン/DNA複合体、60分後,レーン6:キトサンと結合していないDNA、20分後,レーン7:キトサンと結合していないDNA、40分後,レーン8:キトサンと結合していないDNA、60分後)
【図5】0.1%(w/v)キトサン溶液と1μg/μl濃度のヒト白血球ゲノムDNA水溶液を、体積比1:1で混和することにより得られたDNA/キトサン複合体及びキトサンと結合していないヒト白血球のゲノムDNAそれぞれの鋳型と、β‐アクチン遺伝子に対して行ったPCRの0.8%アガロースゲル電気泳動の結果を表す写真。(レーン1:サイズマーカー(100kb),レーン2:ネガティブコントロール,レーン3:ポジティブコントロール(白血球ゲノムDNAは、直接分析された。),レーン4:ゲノムDNAをDNAカード(タイプ1)に滴下した後、その後、室温で1年間保存したもの,レーン5:ゲノムDNAをDNAカード(タイプ2)に滴下した後、その後、室温で1年間保存したもの,レーン6:ブロッティング用の紙に血液を吸着させた後、室温で1年間保存したものの分析,レーン7:ブロッティング用の紙に白血球のゲノムDNAを吸着させた後、室温で1年間保存したものの分析)
【図6】様々な温度、及び期間保存された、0.1%(w/v)キトサン溶液と1μg/μl濃度のヒト白血球ゲノムDNA水溶液を体積比1:1で混和することにより得られたDNA/キトサン複合体と、キトサンと結合していないDNA両方の鋳型と、β‐アクチン遺伝子に対して行ったPCRの0.8%アガロースゲル電気泳動の結果を表す写真(レーン1:サイズマーカー(100bp),レーン2:ネガティブコントロール,レーン3:ポジティブコントロール(血液から分離、精製された後、直ちにPCRを行われたDNA),レーン4:−70℃で3ヶ月間保存されたDNA単体,レーン5:室温で1週間保存されたDNA単体,レーン6:室温で1ヶ月間保存されたDNA単体,レーン7:室温で3週間保存されたDNA/キトサン複合体,レーン8:室温で3ヶ月間保存されたDNA/キトサン複合体,レーン9:室温で1年間保存されたDNA/キトサン複合体,レーン10:室温で3週間保存されたタイプ1DNAカードに滴下されたDNA,レーン11:室温で3ヶ月間保存されたタイプ1DNAカードに滴下されたDNA)
【図7】様々な種類のブロッティング用の紙に、キトサンを吸着させ、ピペットで正常な成熟白血球DNAを滴下し、乾燥することで作られ、室温で6ヶ月保存されたタイプ1DNAカードを、PCRによって、それぞれを比較、分析した結果を表したアガロースゲル電気泳動の写真。(レーン1:サイズマーカー(100kb),レーン2:ネガティブコントロール,レーン3:ポジティブコントロール(血液から分離、精製された後、直ちにPCRを行われたDNA),レーン4:0.02%キトサン溶液を0.3mm厚のブロッティング用の紙に処理したDNAカード,レーン5::0.02%キトサン溶液を0.9mm厚のブロッティング用の紙に処理したDNAカード,レーン6:0.1%キトサン溶液を0.3mm厚のブロッティング用の紙に処理したDNAカード,レーン7:0.1%キトサン溶液を0.9mm厚のブロッティング用の紙に処理したDNAカード,レーン8:0.25%キトサン溶液を0.3mm厚のブロッティング用の紙に処理したDNAカード,レーン9:0.25%キトサン溶液を0.9mm厚のブロッティング用の紙に処理したDNAカード,レーン10:0.3mm厚のブロッティング用の紙に処理をしていないDNAカード,レーン11:0.9mm厚のブロッティング用の紙に処理をしていないDNAカード)
【図8】本発明のタイプ1DNAカードと、水溶性キトサンを用いて保存されたヒトゲノムDNAサンプルに対してのPCR後のRFLPアッセイを用いた遺伝子型テストの結果を示す写真。((a):成熟白血球から直接分離・精製したDNAサンプルである、ポジティブコントロール, (b):成熟白血球から直接分離・精製し、本発明のキトサン溶液と混和したDNAサンプルで、室温で3ヶ月保存されたもの, (c),成熟白血球から分離精製されたDNAサンプルで、保存するために、本発明のタイプ1DNAカードに移し、室温で1年間保存したもの。(レーン1及び12:100bpサイズマーカー, レーン11:25bpサイズマーカー, レーン2及び3:アポリポプロテインE(Apo E)遺伝子に対するアッセイ, レーン4及び5:アンジオテンシン(AGT)遺伝子に対するアッセイ, レーン6及び7:アンジオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子に対するアッセイ, レーン8:アンジオテンシン1受容体(AGT1R)遺伝子に対するアッセイ, レーン9及び10:内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)遺伝子に対するアッセイ, レーン13及び14:MTHFR遺伝子に対するアッセイ)
【図9】本発明のタイプ2DNAカードのサンプルに対する、PCR−RFLPアッセイを用いて、遺伝子型検査の結果を示す写真。((a):成熟白血球から直接、分離及び精製したDNAサンプルであるポジティブコントロール, (b)本発明のタイプ2DNAカードに吸着させた成熟した血液を有し、室温で3ヶ月間保存されることにより作られたDNAサンプル, (c):本発明のタイプ2DNAカードに吸着させた成熟した血液を有し、室温で保存されることにより作られたDNAサンプル, レーン1及び8:100bpサイズマーカー, レーン7及び15:25bpサイズマーカー, レーン2及び3:アンジオテンシノーゲン遺伝子, レーン4及び5:アンジオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子, レーン6:アンジオテンシン受容体1(AT1R)遺伝子, レーン9及び10:内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)遺伝子, レーン11及び12:MTHFR遺伝子, レーン13及び14:アポリポプロテインE(Apo E)遺伝子)
【図10】成熟した結腸組織のゲノムDNAの鋳型を用いて、PCRを行うために、本発明の方法による水溶性キトサン溶液と混和され、室温で1ヶ月間保存され、その産物をクローニングしたものの、自動塩基シークエンシングアッセイによるAPC(大腸腺腫様ポリポーシス)遺伝子調査結果を表すグラフ。
【図11】肺癌組織のゲノムDNAの鋳型を用いて、PCRを行うために、本方法に従って本発明のDNAカードに滴下し、室温で3ヶ月間保存され、その産物をクローニングしたものの、自動塩基シークエンシングアッセイによるp53遺伝子調査結果を表すグラフ。
【図12】SDSを用いて、キトサンとDNAとの複合体から、キトサンとDNAに分離する結果を表すアガロースゲル電気泳動の写真。(レーン1:サイズマーカー(100bp), レーン2:DNA単体, レーン3:0.1%(w/v)キトサン溶液/DNA水溶液(1μg/μl), レーン4:0.1%(w/v)SDSで処理をした0.1%(w/v)キトサン溶液/DNA水溶液(1μg/μl)の複合体, レーン5:1%(w/v)SDSで処理をした0.1%(w/v)キトサン溶液/DNA水溶液(1μg/μl)の複合体, レーン6:5%(w/v)SDSで処理をした0.1%(w/v)キトサン溶液/DNA水溶液(1μg/μl)の複合体)
【図13】本発明の方法による膵臓癌組織のゲノムDNA水溶液(1μg/μl)と0.1%(w/v)キトサン溶液を体積比1:1で混和し、室温で3ヶ月間保存することにより得られたDNA/キトサン複合体の鋳型を用いて、K−ras遺伝子に対してサザンブロット法を行った写真。(レーン1:室温で1ヶ月間保存された膵臓癌組織のDNA, レーン2:室温で1ヶ月間保存された膵臓癌組織のDNA/キトサンの複合体, レーン3:−70℃で1ヶ月間保存された、正常なヒトの末梢血中の白血球から得たDNA, レーン4:室温で1ヶ月間保存された、正常なヒトの末梢血中の白血球から得たDNA)
【図14】本発明のDNAカードを用いて作られた、プラスチックDNA IDカードの製造工程を示すフローチャート。
【図15】STR検査の15個の組み合わせを用いて、個人の遺伝子型の識別をし、個人の遺伝子型の分析結果、及び個人の遺伝子型データをエンコードする処理を示す概略図。
【図16】本発明のDNA IDカードの製造の手順において、前記PVCカードの内側にタイプ1またはタイプ2DNAカードを結合されることを示す概略図。
【図17】本発明のプラスチックDNA IDカードの一実施例の概略図。
【図18】本発明のDNA IDカード上に情報をエンコードするものの一実施例の概略図。
【図19】血液及びgDNAが、プラスチックDNA IDカードに保存されたとき、高温及び高圧力で製造されたプラスチックDNA IDカード(血液用)で、老人病遺伝子の一つであるeNOS遺伝子のPCR増幅を比較した結果を示す写真。(レーン1及び7:サイズマーカー(100bp), レーン2:DNA IDカードに血液を滴下したもの(血液用), レーン3:DNA IDカードにgDNAを滴下したもの(血液用), レーン4:DNA IDカード(血液用)に血液を滴下し、プラスチックカバーをしたもの, レーン5:DNA IDカード(血液用)にgDNAを滴下し、プラスチックカバーをしたもの, レーン6:ネガティブコントロール)
【図20】研究室で、人工的に、サンプルを、高温で圧力をかけない処理及び実質的に高温で高圧力を掛ける処理状態に置く時間を変えて製造したプラスチックDNA IDカードを用いて、老人病遺伝子の一つであるeNOS遺伝子のPCR増幅を行った結果を示す写真。(レーン1:DNAのためのDNA IDカードにおいて、DNAは室温で装填されたもの, レーン2:DNA IDカードにおいて、DNAは180℃で30分間燃焼後に装填, レーン3:DNA IDカードにおいて、DNAは180℃で1時間燃焼後に装填, レーン4:室温でDNA装填後180℃で1時間処理したDNA IDカード, レーン5:DNA装填後180℃で30分処理したDNA IDカード, レーン6:DNA装填後180℃で1時間処理したDNA IDカード, レーン7:高圧力(125bar)及び高温(180℃)を作り出され、その後血液を装填された、血液用のDNA IDカード, レーン8:高圧力(125bar)及び高温(180℃)を作り出され、その後DNAを装填された、血液用のDNA IDカード, レーン9:血液を装填され、その後高温(180℃)及び高圧力(125bar)で処理された血液用のDNA IDカード, レーン10:DNAを装填され、その後高温(180℃)及び高圧力(125bar)で処理された血液用のDNA IDカード)
【図21】高温及び高圧力で処理されたプラスチックDNA IDカード、具体的には、150nμg/μlのgDNA及び血液をそれぞれ量を変えて滴下し、その後保存された、DNA用及び血液用のカード断片を用いて、老人病遺伝子の一つであるeNOS遺伝子のPCR増幅を行った結果を示す写真。(レーン1:ネガティブコントロール, レーン2:ポジティブコントロール(血液のgDNA), レーン3:gDNA(5l)は室温で装填されたDNA IDカード(DNA用), レーン4:gDNA(10l)が装填されたDNA IDカード(DNA用), レーン5:gDNA(50l)が装填されたDNA IDカード(DNA用), レーン6:血液(10l)が装填されたDNA IDカード(DNA用), レーン7:血液(50l)が装填されたDNA IDカード(DNA用), レーン8:血液(100l)が装填されたDNA IDカード(DNA用))
【図22】高温及び高圧力で処理されたDNA IDカードにおいて、PCR増幅の前処理手順として洗浄バッファーで処理された、いくつかのカード断片で保存されたサンプルを用いて、老人病遺伝子の一つである内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)遺伝子のPCR増幅を行った結果を示す写真。(レーン1及び10:100bpサイズマーカー, レーン2:ネガティブマーカー, レーン3:DNAが保存されたコレクティングカードを4日後に室温で洗浄バッファーにより処理することで作られたカード断片, レーン4:DNAが保存され、BPB(ブロモフェノールブルー)が含まれるコレクションカードを、4日後に室温で洗浄バッファーで処理することで作られたカード断片, レーン5:DNAが保存されたプラスチックDNA IDカードを4日間室温で放置した後、洗浄バッファーで処理することにより作られたカード断片, レーン6:0.1%キトサン/DNA複合体を3mm厚の紙に滴下することで作られたカード断片を、オートクレーブで滅菌し、室温で4日間放置し、洗浄バッファーで処理したもの, レーン7:コレクションカードに、0.1%キトサン/DNA複合体を滴下することで作られたカード断片を室温で4日間放置し、洗浄バッファーで処理したもの, レーン8:BPBコレクションカードに、0.1%キトサン/DNA複合体を滴下することにより作られたカード断片を室温で4日間放置し、洗浄バッファーで処理したもの, レーン9:プラスチックDNA IDカードに、0.1%キトサン/DNA複合体を滴下することにより作られたカード断片を室温で4日間放置し、洗浄バッファーで処理したもの, レーン11:DNAが室温で4日間、洗浄バッファーで処理することなく、血液状態として保存されたコレクションカードを保存することにより作られたカード断片, レーン12:DNAが室温で4日間、洗浄バッファーで処理することなく、血液状態として保存されたBPBコレクションカードを保存することにより作られたカード断片, レーン13:DNAが室温で4日間、洗浄バッファーで処理することなく、血液状態として保存されたプラスチックDNA IDカードを保存することにより作られたカード断片, レーン14:0.1%キトサン/DNA複合体を3mm厚の紙に滴下することで作られたカード断片を、オートクレーブで滅菌し、室温で4日間放置し、洗浄バッファーで処理しなかったもの, レーン15:コレクションカードに、0.1%キトサン/DNA複合体を滴下することで作られたカード断片を室温で4日間放置し、洗浄バッファーで処理しなかったもの, レーン16:BPBコレクションカードに、0.1%キトサン/DNA複合体を滴下することにより作られたカード断片を室温で4日間放置し、洗浄バッファーで処理しなかったもの, レーン17:プラスチックDNA IDカードに、0.1%キトサン/DNA複合体を滴下することにより作られたカード断片を室温で4日間放置し、洗浄バッファーで処理しなかったもの)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNA溶液及び水溶性キトサン溶液を混和することにより生成されたキトサン/DNAの形態としてDNAを保存する方法において、前記水溶性キトサンは60%以上の度合いで脱アセチル化しており、分子量は10kDa〜500kDaであることを特徴とするDNA保存方法。
【請求項2】
前記DNAは、動物、植物、菌類、バクテリア及びウイルスのゲノムDNA、cDNAまたはプラスミドDNAを含み、前記DNAの大きさは、数10〜数10億塩基対であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記水溶性キトサンの水溶液の濃度は、0.02%(w/v)〜1%(w/v)であり、前記水溶性キトサンの、混合物中のDNAに対する重量比は1:0.5以上であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記水溶性キトサンの水溶液の濃度は、0.02%(w/v)〜0.25%(w/v)であり、前記DNA溶液の濃度は、1μg/μl以下であり、水溶性キトサンの、混合物中のDNA量に対する重量比は、1:0.5〜1:3であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記DNAとキトサンとの複合体は、−70℃から室温で保存されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
キトサンと結合したDNAの前記複合体は、液体状態として保存されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
DNAを保存する紙製DNAカードにおいて、前記DNAカードは水溶性キトサン及び尿酸を備える組成物中に浸漬され、乾燥され、そしてDNAは、DNA溶液を前記水溶性キトサンと結合しているDNAとしてカードに滴下することによって保存されることを特徴とするDNAカード。
【請求項8】
DNAを保存する紙製DNAカードにおいて、前記DNAカードは水溶性キトサン及び尿酸を含む細胞溶解バッファーを備える組成物中に浸漬され、乾燥され、そしてDNAは、前記水溶性キトサンと結合しているDNAとしての前記カードに、DNAを含むバイオサンプルを滴下することにより保存されることを特徴とするDNAカード。
【請求項9】
前記紙は、ブロッティング用またはクロマトグラフィー用であり、該紙の厚さは0.3〜1.2mmであることを特徴とする請求項7または8に記載の紙製DNAカード。
【請求項10】
前記カードは、12.3cm×8.1cm内に、6ウェル、24ウェル、96ウェル、384ウェルとなるよう、各ウェルの大きさに応じた印をつけられており、DNAまたは血液サンプルは各ウェルに滴下され、保存されることを特徴とする請求項7または8に記載の紙製DNAカード。
【請求項11】
前記組成物は、0.1%〜1%(w/v)の水溶性キトサンと0.5mM〜20mMの尿酸とを、体積比1:1で混和することにより生成されることを特徴とする請求項7記載の紙製DNAカード。
【請求項12】
前記細胞溶解バッファーは、トリス(8mM)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)(0.5mM)、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)(0.1% w/v)及び尿酸(2mM)を含むことを特徴とする請求項8記載の紙製DNAカード。
【請求項13】
a)請求項7記載のDNAカードの断片をPCRチューブに加える工程;
b)TEバッファー(10mMのトリス‐Cl、0.1mMのEDTA、pH=8.0)を前記チューブに加え、混和後、前記チューブを室温で5分間立たせたまま放置し、その後、ピペットを用いてTEバッファーを取り除く工程;
c)工程b)を2回繰り返す工程;
d)室温で1時間または56℃で10分間で、前記チューブを乾燥させる工程;及び、
e)PCRサンプルを前記チューブに加え、PCRによる増幅を行う工程;を備えることを特徴とするDNAカードを用いたPCRアッセイ方法。
【請求項14】
a)請求項8記載のDNAカードの断片をPCRチューブに加える工程;
b)洗浄バッファー(GG精製試薬;0.5mMのEDTA、8mMのトリス‐Cl、2mMの尿酸、1%(w/v)のSDS)を前記チューブに加え、混和後、前記チューブを室温で5分間立たせたまま放置し、その後ピペットを用いて洗浄バッファーを取り除く工程;
c)工程b)を3回繰り返す工程;
d)TEバッファー(10mMのトリス‐Cl、0.1mMのEDTA、pH=8.0)を前記チューブに加え、混和後、前記チューブを室温で5分間立たせたまま放置し、その後、ピペットを用いてTEバッファーを取り除く工程;
e)工程d)を2回または3回繰り返す工程;
f)室温で1時間または56℃で10分間で、前記チューブを乾燥させる工程;及び、
g)PCRサンプルを前記チューブに加え、PCRによる増幅を行う工程;を備えることを特徴とするDNAカードを用いたPCRアッセイ方法。
【請求項15】
分析方法において、請求項6記載の保存方法により保存されたDNAまたは請求項7若しくは8によるDNAカードで保存されたDNAは、PCR−RFLP、クローニング、ライブラリー合成、シークエンシング分析またはサザンブロッティングに用いられることを特徴とする分析方法。
【請求項16】
DNA分析方法において、請求項6の保存方法により液体状態で保存されたキトサン/DNA複合体または、請求項7若しくは8によりDNAカードに保存されたキトサン/DNA複合体から、サルフェートを基礎としたカチオン塩を用いて、分離された前記DNAは、遺伝子分析に用いられることを特徴とするDNA分析方法。
【請求項17】
前記サルフェートを基礎としたカチオン塩は、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、SOS(オクチル硫酸ナトリウム)、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)を含むことを特徴とする請求項16記載のDNA分析方法。
【請求項18】
オリゴd(T)、プライマー、TaqDNAポリメラーゼ、反応バッファー溶液、dNTP及び水溶性キトサンを含むチューブを備えるPCRキットにおいて、前記チューブは、更に、DNAまたは血清サンプルを含み、そして前記チューブは、PCRを行うために用いられることを特徴とするPCRキット。
【請求項19】
DNA IDカードにおいて、キトサンと個人のDNAとの混合物は、請求項1のDNA保存方法により、前記混合物の一部が保存され、個人の遺伝子情報は、磁気帯または組み込みチップに保存されることを特徴とするDNA IDカード。
【請求項20】
前記DNA IDカードの基本素材はプラスチックであることを特徴とする請求項19記載の前記DNA IDカード。
【請求項21】
a)PVC軟層に、請求項7または8の紙製DNAカードを積み重ねる工程;
b)前記紙製DNAカードに、前記紙製カードと同じ大きさの穴を有した第一PVCコア層を積み重ねる工程;
c)前記第一PVCコア層の穴の上に、前記第一PVCコア層の穴より小さい二つの穴を有する第二PVCコア層を積み重ねる工程;
d)第二PVCコア層に、PVC軟層を積み重ねる工程;及び、
e)該積み重ねられた層を互いに熱接着するために、熱と圧力を加える工程;を備えることを特徴とするDNA IDカードの生成方法。
【請求項22】
請求項20によるDNA IDカードは、
第一PVC軟層、紙製DNAカード、紙製DNAカードの大きさと等しい大きさの穴を有する第一PVCコア層、DNAまたはDNAを含むバイオサンプルを滴下した時、前記紙製DNAカードに通じる穴を有する第二PVCコア層、及び第二PVC軟層を備え、
前記磁気帯は、前記紙製DNAカード上に前記DNAまたはバイオサンプルが保存されている側面に、対向する側面に位置していることを特徴とするDNA IDカード。
【請求項23】
情報、疾病コード、個人のSTR(縦列型反復配列)型またはHLA(ヒト白血球型抗原)型は、前記磁気帯にエンコードされていることを特徴とする請求項22記載のDNA IDカード。
【請求項24】
前記DNA IDカードに滴下するgDNAの量は、1.5μg以上であることを特徴とする請求項22に記載のDNA IDカード
【請求項25】
分析方法において、請求項19のDNA IDカードの断片は、洗浄バッファーで処理されずにPCR増幅に用いられることを特徴とする分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2008−512090(P2008−512090A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529660(P2007−529660)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000774
【国際公開番号】WO2006/028323
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(507073354)グッジェン インク (4)
【氏名又は名称原語表記】GOODGENE INC.
【Fターム(参考)】