説明

キャスト塗被紙

【課題】
裏面塗被層を有するキャスト塗被紙において、裏面塗被層中にサチンホワイトを含有していながら、白色度や色相の経時安定性に優れると共に、キャスト面の表面平滑性(ボコツキ)に優れ、かつドラム表面の汚れもなく高効率で生産し得るキャスト塗被紙を提供するものである。
【解決手段】
原紙の一方の面に顔料と接着剤を主成分とする裏面塗被層を設け、該原紙のもう一方の面に、必要に応じて顔料と接着剤を主成分とする下塗り塗被層を設けてなる原紙上に、顔料と接着剤を主成分とするキャスト用塗被層を形成せしめ、該キャスト用塗被層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して、強光沢仕上げするキャスト塗被紙において、前記裏面塗被層中にpH12.0以下であるトリスルホアルミン酸カルシウムを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面に塗被層を有するキャスト塗被紙に関する。
【背景技術】
【0002】
キャスト塗被紙は表面光沢が非常に高く、また優れた平滑性を有し、印刷適性に優れるため、高級印刷用紙として、一般の書籍等の表紙は勿論、高級ラベル、ファッションバッグ等に亘って広く利用されている。このような高光沢と高平滑性を有するキャスト塗被紙の製造法には代表的なものとして3つの方法がある。即ち、湿潤状態にある塗被層を鏡面仕上げした加熱ドラムの表面に圧接、乾燥、離型させて光沢仕上げするウェットキャスト法、湿潤状態の塗被層を一旦乾燥した後、再湿潤液により、再び湿潤、可塑化させた後、加熱されたキャストドラム面に圧接、離型して仕上げるリウェットキャスト法、さらに湿潤状態の塗被層をゲル化させた後、加熱されたキャストドラム面に圧接、離型して仕上げるゲル化キャスト法である。これらのキャスト仕上げ方法は、いずれの方法も湿潤、可塑化状態にある塗被層を加熱ドラム表面に圧接、乾燥し、加熱ドラムより離型させて、その鏡面を写し取る点で共通している。
【0003】
これらのキャスト仕上げ方法に従って生産される塗被紙には、片面がキャスト仕上げされた強光沢面を有し、裏面は上質紙様の面を持つ所謂片面キャスト塗被紙の他に、裏面にも塗被層を有するキャスト塗被紙もある。これは、近年のビジュアル化、カラー化、高級化に伴い、印刷用塗被紙の光沢や平滑性の改良が高まる中で、キャスト塗被紙が書籍や雑誌等の表紙、あるいは本文用紙として使用される場合、裏面品質も他の本文用紙と同等の白紙品質および印刷品質を有していることが強く要望されるためである。
【0004】
このような裏面に塗被層を有するキャスト塗被紙を得る方法としては、前述のキャスト仕上げの基本的方法自体は変わるものではなく、予め原紙の裏面(非キャスト面)に顔料と接着剤を主成分とする塗被層が設けられている。さらに、必要に応じてカレンダー処理を施して平滑化した原紙とし、この原紙の表面に顔料と接着剤を主成分とするキャスト用水性塗被液を塗被し、該キャスト塗被層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して強光沢仕上げするものである。場合によっては、このようにして得たキャスト塗被紙をカレンダー処理を施すこともある。
【0005】
また、このようなキャスト塗被紙の製造において、表面に設けたキャスト塗被層中の水分は、塗被層が鏡面ドラムに密着されているため鏡面ドラム側には蒸発することができず、通常の塗被紙の乾燥とは異なり全て原紙層中を通貨して裏面へ抜けて蒸発することになる。このため、キャスト塗被紙の製造においては、塗被紙の両面から乾燥される一般のアート紙やコート紙の生産の場合と比較し極めて低速での操業を余儀なくされているのが現状である。特に、裏面塗被層を有するキャスト塗被紙の製造の場合、キャスト塗被層中の水分は原紙層、さらに裏面塗被層を通過して蒸発乾燥されるが、裏面塗被層は水蒸気の透過性を著しく低下させるため、塗被層を有しない片面キャスト塗被紙に比べて、生産速度が大幅に低下する。また、裏面塗被層を有するキャスト塗被紙において、カレンダー処理を施して平滑化した裏面塗被層を有する原紙を使用して、キャスト塗被紙を製造する場合、水蒸気の透過性が更に悪化する問題がある。
なお、急激な水分の蒸発によって裏面塗被層は膨潤、軟化せしめられ、平滑性や光沢が低下し、印刷品質や印刷適性の低下が発生するばかりではなく、裏面塗被層の一部が剥がれてプレスロール表面に付着し、徐々に堆積することもある。プレスロール汚れが発生した場合にはキャスト塗被面の品質も低下する。即ち、プレスロール表面に裏面塗被層の一部が付着、堆積することによってプレスロール表面の平滑性が低下し、表面塗被層の鏡面ドラムへの密着性が不均一となる結果、キャスト塗被面の光沢が部分的に低下したり、乾燥ムラが生じて表面塗被層の一部が鏡面ドラムに付着する所謂ドラムピックが発生する。そのために、操業を一時ストップしてプレスロールを洗浄、あるいは交換しなければならず、結果として、生産性を著しく低下させることになる。
【0006】
また、一旦キャスト仕上げした後、裏面の塗被層を平滑化するために、一般的にカレンダー処理をするが、このカレンダー処理によって、高平滑に仕上げたキャスト面にボコツキが発生し、かえって品質を悪化させる場合があるため、強い条件でカレンダー処理することができないのが現状である。
【0007】
上記の如き問題を解決するため、従来より種々の提案がなされている。例えば、一つの方法として、キャスト仕上げ後のカレンダー処理方法等、設備的な面からのアプローチがある。即ち、カレンダー処理において、金属ロールの表面温度と樹脂ロールのショアD硬度および表面粗さを特定の条件にして仕上げする方法(特許文献1)、最初のニップを通過させる際、キャストコート面を金属ロールと裏面を特定のショアD硬度を有する樹脂ロールと接するようにカレンダー処理する方法(特許文献2)が提案されている。また、キャスト仕上げする際に、裏面より弾性ロールを押圧する方法(特許文献3)も提案されているが、これらの方法では、設備的な対応が必要であることや、裏面に使用する材料によっては、十分満足される品質が得られない場合がある。
【0008】
もう一つの方法として、裏面塗被層の材料面からのアプローチする方法がある。一般的に、裏面の白紙光沢や表面平滑性を向上させるためには、塗被層中の顔料として、板状結晶のカオリンが主顔料として使用される。この場合、顔料として使用されるカオリンは、塗被層表面で配向するだけでなく、塗被層中においても同じように配向する傾向があるため、高光沢は得やすいが、反面、水分の透過性が悪くなる。そこで、カオリンよりも水分透過性の良い水酸化アルミニウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、酸化亜鉛、あるいは粒子形態が米粒状、紡錘状、球状、無定型の軽質炭酸カルシウムや重質炭酸カルシウム等をカオリンと併用または単独で使用することが知られている。
【0009】
しかし、このような顔料を使用したキャスト塗被紙では、カオリン単独の場合に比べて水分の透過性は顕著に改善されるものの、光沢や表面平滑性が著しく低下するといった問題が生じてしまう。
【0010】
上記の如き問題を解決するために、キャストの下塗り塗被層や裏面塗被層に特定の軽質炭酸カルシウムを使用する方法(特許文献4)が提案されている。しかしながら、この方法では、キャスト仕上げする際の水分透過性は改善されるものの、裏面については、満足できる品質を得ることは難しい。また、キャストの下塗り塗被層や裏面塗被層に中空プラスチックピグメントを使用する方法(特許文献5)が提案されている。しかしながら、この方法でも、裏面を満足できる品質にするためには、高価なプラスチックピグメントを多く配合することが必要であり、製造コストにおいて問題となる。
【0011】
また、顔料としてトリスルホアルミン酸カルシウム(以下サチンホワイト)を塗被層に配合すると、塗被層面が高い表面平滑性を発現する特徴があり、一般のアート紙やコート紙の塗被層に使用して高い白紙光沢や高い表面平滑性が得られることが知られており(特許文献6〜9)、裏面にサチンホワイトまたは/およびプラスチックピグメントを配合し、前記と同様にキャスト仕上げ後に特定のカレンダー処理を施す方法(特許文献10)が提案されている。この方法において、プラスチックピグメントを使用した場合、前記と同様、製造コストの問題があり、サチンホワイトを配合した場合には、以下の問題が生じる。
【0012】
即ち、塗被紙は、一般にパルプ繊維を配合し抄紙して得た原紙上に、コーターで塗被組成物を塗被後、ドライヤーで乾燥した後、スーパーカレンダー等による加圧平滑化仕上げが行われるが、強アルカリ性のサチンホワイト(通常pH12.5前後)を含有した塗被組成物を塗被してなる塗被紙は、ドライヤーによる乾燥、あるいは熱スーパーカレンダー等の熱処理により、色戻り現象を助長することが確認されている。また、製造直後のものと比較すると、長期間保存後の白色度の低下が認められ、紙の黄色化、即ち、アルカリ成分による色戻り現象が見られることは良く知られており、印刷物や記録物等の経時褪色変化が大きな問題となっている。また、サチンホワイトを含有した塗被液を塗被した場合、白色度を上げるために添加する蛍光増白染料を、サチンホワイトを含有していない塗被液と同一の白色度にするためには、より多く添加しなければならないといった欠点もある。
【0013】
サチンホワイトを含有したアルカリ性塗被層を設けた塗被紙の白色度や色相の経時褪色を防止する方法として、塗被紙の原紙に特定の銅価を持つ漂白化学パルプを使用し、原紙の動的濡れ値を特定することにより塗被紙の白色度低下を抑制する方法(特許文献11)、パルプ繊維が含有する有機塩素化合物に係る塩素量を400ppm以下とし、且つ原紙の相間強度(TAPPI−RC308)を50×10−3ft/lb/inとすることにより白色度や色相の経時褪色を改良する方法(特許文献12)、サチンホワイトを含有したアルカリ性の塗被層を塗布乾燥した直後とカレンダ仕上げした直後の両方の紙面温度を60℃以下で製造することにより、白色度の経時安定性や長期保存に優れた塗被紙を製造する方法(特許文献13)が紹介されている。
【0014】
しかしながら、前記公報は、原紙や製造方法を改良した方法であり、通常の塗被紙製造とは異なる製造方法であるため、新たなシーケンスや装置の設置、操業の制限などがある。表面平滑性、白紙光沢などの白紙品質が優れるサチンホワイトを含有した塗被液を一般の塗被紙原紙に塗布乾燥、カレンダー仕上げしても、白色度や色相の経時安定性に優れた塗被紙が望まれている。
【0015】
上記より、裏面に塗被層を有するキャスト塗被紙については、キャスト塗被紙表面の光沢や表面平滑性(ボコツキ)が非常に優れ、光沢ムラやピンホールの発生が無く、しかも高生産性を維持することが非常に困難であり、実状はキャスト塗被紙の品質、あるいは生産性のいずれかをある程度犠牲にして製造している。
【0016】
【特許文献1】特開平02−229293号公報
【特許文献2】特開平04−300385号公報
【特許文献3】特開平02−259187号公報
【特許文献4】特開2001−81693号公報
【特許文献5】特開平09−268493号公報
【特許文献6】特開平11−247097号公報
【特許文献7】特開平09−256295号公報
【特許文献8】特開平09−67794号公報
【特許文献9】特開平02−14098号公報
【特許文献10】特開平02−14093号公報
【特許文献11】特許2834782号公報
【特許文献12】特許3027875号公報
【特許文献13】特開平07−279097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、裏面塗被層を有するキャスト塗被紙において、裏面塗被層中にサチンホワイトを含有していながら、白色度や色相の経時安定性に優れると共に、キャスト面の表面平滑性(ボコツキ)に優れ、かつドラム表面の汚れもなく高効率で生産し得るキャスト塗被紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、原紙の一方の面に顔料と接着剤を主成分とする裏面塗被層を設け、該原紙のもう一方の面に、必要に応じて顔料と接着剤を主成分とする下塗り塗被層を設けてなる原紙上に、顔料と接着剤を主成分とするキャスト用塗被層を形成せしめ、該キャスト用塗被層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して、強光沢仕上げするキャスト塗被紙において、前記裏面塗被層中にサチンホワイトが含有されるキャスト塗被紙であって、前記キャスト塗被紙を下記の条件で熱処理をおこなった場合、裏面塗被層面における熱処理前後の白色度(JIS−P8148による)差が2.8未満であることを特徴とするキャスト塗被紙である。
熱処理条件:70℃、90%RHの条件下で、24時間の熱処理
原紙の一方の面に顔料と接着剤を主成分とする裏面塗被層を設け、該原紙のもう一方の面に、必要に応じて顔料と接着剤を主成分とする下塗り塗被層を設けてなる原紙上に、顔料と接着剤を主成分とするキャスト用塗被層を形成せしめ、該キャスト用塗被層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して、強光沢仕上げするキャスト塗被紙において、前記裏面塗被層中にサチンホワイトが含有されるキャスト塗被紙であって、前記キャスト塗被紙を下記の条件で熱処理をおこなった場合、裏面塗被層面における熱処理前後の色相におけるb(JIS−Z8722による)差が1.3未満であることを特徴とするキャスト塗被紙である。
熱処理条件:70℃、90%RHの条件下で、24時間の熱処理
前記サチンホワイトがpH12.0以下である。
原紙の一方の面に顔料と接着剤を主成分とする裏面塗被層を設け、該原紙のもう一方の面に、必要に応じて顔料と接着剤を主成分とする下塗り塗被層を設けてなる原紙上に、顔料と接着剤を主成分とするキャスト用塗被層を形成せしめ、該キャスト用塗被層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して、強光沢仕上げするキャスト塗被紙において、前記裏面塗被層中にpH12.0以下であるサチンホワイトを含有することを特徴とするキャスト塗被紙である。
前記サチンホワイトのpHが8.5以上11.0以下であることが好ましい。
前記サチンホワイトを含有した裏面塗被層用塗被液のpHが11.0以下であることが好ましい。
前記サチンホワイトの平均粒子径が0.1〜1.5μmであることが好ましい。
前記原紙が、紙面pH5.5以上である原紙の場合、白色度や色相等の経時安定性に優れる効果がより発揮される。
前記サチンホワイトが塗被層中の全顔料中、2〜30質量%含有されることが好ましい。
本発明に用いる裏面塗被層のサチンホワイトが、(A)水酸化カルシウム懸濁液と(B)硫酸アルミニウム水溶液とを反応させて製造されたものであって、(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を複数段添加するものであり、(A)水酸化カルシウム懸濁液への(B)硫酸アルミニウム水溶液の複数段の添加のうち少なくともいずれかが、連続的に移送される(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する連続添加によって行なわれるものであることが好ましい。
本発明のサチンホワイトの製造方法について、前記複数段の添加のうち2段目以降の添加である後続添加が、該後続添加の直前の添加から所定時間が経過した後に行なわれることが好ましい。
本発明のサチンホワイトの製造方法について、前記複数段の添加のうち2段目以降の添加である後続添加が、該後続添加において(B)硫酸アルミニウム水溶液が添加される組成物のpHが11.0以上で行なわれることが好ましい。
本発明のサチンホワイトについて、(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数aの、複数段添加された(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数bに対する割合(a/b)が、5.5〜7.0であることが好ましい。
本発明のサチンホワイトの製造方法について、前記複数段の添加のうち1段目の添加である第1回添加において、(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数の1/6のモル数である基準モル数の85%以下のモル数である(B)硫酸アルミニウム水溶液を添加し、前記複数段の添加のうち2段目の添加である第2回添加と該第1回添加との(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数が、該基準モル数の98%以下のモル数であることが好ましい。
本発明のサチンホワイトについて、(A)水酸化カルシウム懸濁液の濃度と、(B)硫酸アルミニウム水溶液の濃度と、の少なくとも一方が、12質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るキャスト塗被紙は、裏面に塗被層を有し、裏面塗被層中にサチンホワイトを含有していながら、裏面の白色度や色相の経時安定性に優れると共に、キャスト面の表面平滑性(ボコツキ)も優れ、かつドラム表面の汚れもなく高効率で製造することができる特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
上記の如き実状より、本発明者等は裏面に顔料塗被層を有するキャスト塗被紙に関し、操業性は勿論、品質面においても優れたキャスト塗被紙を得るべく鋭意研究を行った。その結果、裏面塗被層中に顔料として特定のサチンホワイトを使用することで、目標とする特性をもったキャスト塗被紙が効率よく(高速度で)得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
一般にキャスト塗被紙に使用する原紙は、酸性抄紙法あるいは中性抄紙法の2種類の抄紙方法がある。しかし、1980年代以降、紙の長期保存性に対する要求の高まりから、現在使用されている塗被紙の原紙はほとんどが中性抄紙法による原紙である。また、塗被紙製造時に発生する損紙処理の容易さよりからも中性抄紙法による原紙が用いられている。
【0022】
一般にpHが12.0を超え、12.5〜12.7程度のサチンホワイトを塗被液中に配合させる際には、塗被液の安定性向上のためサチンホワイトを配合する前の塗被液には水酸化ナトリウムが添加され、結果としてサチンホワイトが配合された塗被液のpHは一般的に11.0を超えるものとなる。
【0023】
アルカリ性塗被液を原紙に塗被する際、原紙中の漂白化学パルプに塗被液が浸透し、塗被液中のアルカリ成分によってパルプの色戻りが発生する。これはパルプ中のカルボニル基、カルボキシル基、水酸基が関与すると推測される。酸性抄紙法による原紙の場合は、紙中に存在する硫酸イオンが塗被液のアルカリ成分を中和するのでパルプの色戻りを抑制する作用があって、塗被紙の白色度などの経時変化を明確化させない。しかし、中性抄紙法による原紙は紙中の酸性物質が少ないため、塗被液のアルカリ成分によりパルプの色戻りが発生し、塗被液の白色度の経時変化が大きい。特に塗被液のpHが高い場合は、熱によってパルプの色戻りが著しく促進され、白色度や色相の経時低下が極めて大きくなる。
【0024】
具体的には、塗被液にサチンホワイトを含有した場合は、コーターからスーパーカレンダの間やスーパーカレンダからカッターおよびワインダーの間での塗被紙の白色度や色相の経時変化が大きく製品価値を著しく落としている。
【0025】
本発明の裏面塗被層にサチンホワイトを含有するキャスト塗被紙では、キャスト塗被紙の裏面の白色度や色相の経時変化の原因となる裏面塗被層用塗被液のpHを下げること、つまりは前記塗被液のpHを上げる原因であるサチンホワイトのpHを12.0以下にすることにより、アルカリ成分による色戻りを抑制させるものである。
【0026】
その結果として、本発明の、裏面塗被層中にサチンホワイトを含有するキャスト塗被紙は、70℃、90%RHの条件下で、24時間の熱処理をおこなった場合に、裏面塗被層面における熱処理前後の白色度(JIS−P8148による)差が2.8未満になり、白色度や色相等の経時安定性に優れた塗被紙を得ることが可能となった。
【0027】
また、同様に本発明の、裏面塗被層中にサチンホワイトを含有するキャスト塗被紙は、70℃、90%RHの条件下で、24時間の熱処理をおこなった場合に、裏面塗被層面における熱処理前後の色相におけるb(JIS−Z8722による)差が1.3未満になり、白色度や色相等の経時安定性に優れた塗被紙を得ることが可能となった。
【0028】
上記の品質特性を満足させるためには、裏面塗被層中に含有するサチンホワイトのpHを12.0以下とする必要があり、pHが8.5以上11.0以下であることが好ましく、さらに好ましくはpH9.2以上10.5以下である。
【0029】
サチンホワイトのpHが12.0を超える場合は、アルカリ成分による白色度や色相の経時変化が大きくなる。白色度や色相の経時変化を抑制するために、サチンホワイトのpHをできる限り低くした方がよいが、pH8.5未満である場合には、サチンホワイトの結晶形状が崩壊し、水酸化アルミニウムや硫酸カルシウムの反応副生成物が混在するため、サチンホワイト本来の表面平滑性、白紙光沢などの白紙品質が低下するという理由で好ましくない。また、pH11.0以下のサチンホワイトは塗被液安定性のための水酸化ナトリウムを少量あるいは添加なしに塗被液の調製ができることから一般の顔料と同じ扱いができる利点もある。
【0030】
上記の理由で、本発明のサチンホワイトを含有した裏面塗被層用塗被液のpHは11.0以下であることが好ましく、一般塗被紙並みの塗被液のpHである10.0以下にすることがさらに好ましい。
【0031】
本発明のpH12.0以下のサチンホワイトを含有した裏面塗被層を一層とするか、或いは、多層とするかは特に限定するものではない。また、多層にした場合、全ての塗被層にサチンホワイトを含有してもよいが、原紙と接する塗被層中にサチンホワイトを含有した場合、白色度や色相の経時変化の抑制効果については、従来のサチンホワイト(pH12.5前後)と比較してpH12.0以下サチンホワイトの場合、顕著になる。これは強アルカリの塗被液が直接、原紙と接しないために、パルプの色戻りが比較的短時間のうちに進行することが妨げられるからである。
【0032】
また、本発明に使用するサチンホワイトは、白紙光沢、表面平滑性およびキャストドラムでの離型性の点から、沈降方式による平均粒子径0.1〜1.5μmの範囲であることが好ましく、特に平均粒子径0.3〜0.8μmの範囲がより好ましい。因みに、サチンホワイトの平均粒子径が1.5μmを越える場合には、塗被層に対して白紙光沢および表面平滑発現性の効果が少ない。また、平均粒子径が0.1μmよりも小さい場合には、塗被紙の白紙光沢発現性および表面平滑発現性に対しては有効であるが、印刷用塗被紙として必要とされる強度発現のための接着剤要求量が多くなることや、キャストドラムでの離型性が悪化する場合があり、好ましくない。
【0033】
前記、沈降方式による平均粒子径測定とは、詳細は以下のものである。米国のマイクロメリティックス社製のセディグラフ5100を使用して、生成したサチンホワイトを含有する組成物の粒度分布を測定し、50累積質量%に該当する平均粒子径(d50)を求めた。なお、測定に供したサチンホワイトを含有する組成物は、反応終了後に得られたサチンホワイトを含有する組成物の分散液に対して、燐酸塩系分散剤(ピロリン酸ソーダ)の0.1%水溶液で、顔料固形分濃度が約4%になるよう希釈・分散して得た。また、測定条件としては、サチンホワイトの比重:1.77g/cm、測定温度:35℃で測定した。
【0034】
さらに本発明における裏面塗被層中のサチンホワイトの含有量は特に限定されるものではないが、塗被層中の全顔料中、2〜30質量%を含有させることが好ましく、特に3〜20質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0035】
サチンホワイトを塗被層に含有させることにより、塗被層の平滑、白紙光沢などの白紙品質が向上するが、サチンホワイトの含有量が全顔料のうち、2質量%未満である場合には白紙品質の向上が不充分であり、他方、サチンホワイトの含有量が30質量%を超えると、塗被層の白紙品質の向上に対しては有効であるが、塗被紙としての強度発現のために必要とされる接着剤量が多くなり、不経済であるため好ましくない。
【0036】
本発明の裏面塗被層に使用するサチンホワイトは、特願2005−123689号公報の製造方法による。
【0037】
即ち、(A)水酸化カルシウム懸濁液と(B)硫酸アルミニウム水溶液とを反応させて製造されたものであって、(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を複数段添加するものであり、(A)水酸化カルシウム懸濁液への(B)硫酸アルミニウム水溶液の複数段の添加のうち少なくともいずれかが、連続的に移送される(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する連続添加によって行なわれるものである。
なお、ここに、(B)硫酸アルミニウム水溶液が添加される(A)水酸化カルシウム懸濁液とは、複数段添加のうち第1段目の添加においては(硫酸アルミニウム水溶液の添加が行なわれる前においては)純粋な水酸化カルシウム懸濁液であるが、複数段添加のうち第2段目以降の添加においては(硫酸アルミニウム水溶液の添加が既に行なわれた後においては)水酸化カルシウムと硫酸アルミニウムとの混合物を意味する。
【0038】
即ち、まず本方法においては、水酸化カルシウム懸濁液に対して添加される硫酸アルミニウム水溶液を複数段に分割して添加することを特徴とする。
水酸化カルシウム懸濁液と硫酸アルミニウム水溶液を反応させてサチンホワイトを製造する場合において、サチンホワイトの反応原料である硫酸アルミニウムは水に完全に溶解して水溶液となり、その全量が直ちに反応が行なえる状態であるのに対して、もう一方の反応原料である水酸化カルシウムは水に対する溶解性が0.2%と極めて低く、ほとんど水に溶けない懸濁液の状態であるため、その全量は直ちに反応が行なえる状態にはない。
このため、反応性の鈍い水酸化カルシウム懸濁液に対して、所定量の硫酸アルミニウム水溶液を一度に添加するのではなく、直ちに反応することができる水酸化カルシウム量に見合うだけの硫酸アルミニウム量の範囲内で、所定量の硫酸アルミニウムを複数段に分割して添加することにより、反応系内において硫酸アルミニウムが過剰になる状態を回避し、酸化アルミニウムや硫酸カルシウムの反応副生成物の発生を抑制するものである。
【0039】
さらに本方法では、前記した硫酸アルミニウム水溶液の分割添加に加えて、(A)水酸化カルシウム懸濁液に対して(B)硫酸アルミニウム水溶液の複数段の添加のうち、少なくともいずれかが、連続的に移送される(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する連続添加によって行なうことを特徴とする。
これは、本発明において、複数段に分割して行なわれる硫酸アルミニウム水溶液の添加に対しては、所定量の水酸化カルシウム懸濁液に硫酸アルミニウム水溶液を長時間に渡って徐々に添加する、いわゆる「バッチ」方式を行なっても良いが、生成するサチンホワイトの粒子径を微小、かつ均一に制御することに関しては、「バッチ」方式よりも連続的に移送される水酸化カルシウム懸濁液に対して硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する「連続添加」方式の方が優れていることから、本発明に用いるサチンホワイトでは、複数段に分割して行なわれる硫酸アルミニウム水溶液のいずれかの添加において、前記「連続添加」方式による添加を、少なくとも最低1回は行なうものである。
【0040】
また、本方法では、本発明の「連続添加」方式による硫酸アルミニウム水溶液の添加については、複数段に分割して行なわれる硫酸アルミニウム水溶液の添加のうち、第1段目の添加を「連続添加」方式とすることもでき、さらに、複数段に分割して行なわれる硫酸アルミニウム水溶液の添加のうち、最終の添加を除く全ての添加を「連続添加」方式とすることもできる。なお、最終の添加を含む全ての添加を「連続添加」方式とすることもできる。
【0041】
また、本発明のサチンホワイトの生成においては、水酸化カルシウムの反応性を回復させて適正なサチンホワイト生成反応を維持させるために、該後続添加の直前の添加から所定時間の間隔を空けた後に、後続の硫酸アルミニウム水溶液を添加するものであり、安定化するのに要する所要時間は、混合組成物の状態にもよるが、15秒以上が必要である。
【0042】
また、本方法においては、前記複数段に分割して行なわれる(B)硫酸アルミニウム水溶液の添加のうち、2段目以降の添加である後続添加が、該後続添加において(B)硫酸アルミニウム水溶液が添加される組成物のpHが11.0以上で行なわれてもよい。
ここにいう「後続添加」とは、水酸化カルシウム懸濁液に対して、複数段に分割して硫酸アルミニウム水溶液を添加する場合において、2段目〜最終段に行なわれる、それぞれの硫酸アルミニウム水溶液の添加をいう。
そして、ここにいう「該後続添加において(B)硫酸アルミニウム水溶液が添加される組成物」とは、(A)水酸化カルシウム懸濁液と(B)硫酸アルミニウム水溶液の混合物であって、まだ(B)硫酸アルミニウム水溶液の所定量(全量)が混合されておらず(即ち、最終段の添加がなされていない)、該後続添加によって(B)硫酸アルミニウム水溶液が添加される直前の組成物をいい、具体的には生成したサチンホワイトと未反応の水酸化カルシウムが残留する組成物のことを示す。
【0043】
後続添加において(B)硫酸アルミニウム水溶液が添加される組成物のpHが11.0以上であることの意義は次のように考えられる。
サチンホワイトの製造に関して、硫酸アルミニウム水溶液を添加する際に、原料である水酸化カルシウムの反応性を維持、回復させることが重要であることは前記した通りであるが、水酸化カルシウム懸濁液に対して硫酸アルミニウム水溶液を混合して得られた混合組成物のpHの変動状態を観測することにより、混合組成物における水酸化カルシウムの反応性の回復状況を把握することができることから、該混合組成物においては、硫酸アルミニウムを添加する前に充分に反応性を回復(=pHの上昇回復)しておくことが不可欠である。
したがって、本発明において、硫酸アルミニウムが添加される前の混合組成物のpHについては、11.0以上であることが好ましく、12.0以上とすることがより好ましく、水酸化カルシウムの反応性を完全に安定した状態まで回復させるためには、12.5〜13.0のpH範囲まで調整することが特に好ましい。硫酸アルミニウムを添加する前の混合組成物のpHが、11.0未満であると、混合組成物中の水酸化カルシウムの反応性回復が不十分である可能性が高く、該状態の混合組成物に対して硫酸アルミニウム水溶液を追添加すると、サチンホワイトの生成反応を適性、かつ安定して行なうことが困難となり、酸化アルミニウムや硫酸カルシウムといった反応副生成物が多量に生じるため好ましくない。
【0044】
本方法においては、サチンホワイトを生成させる際の、(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数aの、複数段に分割して添加される(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数bに対する割合(a/b)は、5.5〜7.0が好ましい。
【0045】
(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数aと、複数段に分割して添加される(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数bと、の割合(a/b)は、理論的にはa/b=6.0であり、これは1モルのサチンホワイトの生成には、6モルの水酸化カルシウムと1モルの硫酸アルミニウムが必要であることを示している。したがって本発明におけるサチンホワイトが生成する際の水酸化カルシウムと硫酸アルミニウムの反応モル比(a/b)についてはa/b=6.0として、反応における無駄を最小限とすることが極めて好ましい。
しかしながら、水酸化カルシウムの反応性が非常に鈍いことから、完全な反応終了点で反応を終了させることは極めて困難である。したがって、本発明におけるサチンホワイトが生成する際の水酸化カルシウムと硫酸アルミニウムの反応モル比(a/b)の範囲の下限については、a/b=5.5以上とすることが好ましく、5.8とすることがより好ましく、6.0とすることが特に好ましい。また水酸化カルシウムと硫酸アルミニウムの反応モル比(a/b)の上限については、7.0以下とすることがより好ましく、6.0とすることが特に好ましい(通常、水酸化カルシウムと硫酸アルミニウムの反応モル比(a/b)の範囲としては、a/b=5.5〜7.0が好ましく、a/b=5.8〜7.0の範囲内とすることが特に好ましい。)。サチンホワイトが生成する際の水酸化カルシウムと硫酸アルミニウムの反応モル比(a/b)について、5.5未満とすることは、水酸化カルシウムに対する硫酸アルミニウムの比率が過剰になり、酸化アルミニウムや硫酸カルシウム等の反応副生成物が多量に発生するため好ましくなく、また該反応モル比が7.0を超えることは、pHが12.0以下のサチンホワイトを得ることが難しくなり好ましくない。
【0046】
ここに「(C)サチンホワイトを含有する組成物のpH」の測定方法としては、残留する水酸化カルシウムの状態安定化のために、硫酸アルミニウム水溶液の最終添加が終了した後、少なくとも10分以上、好ましくは5時間以上経過した後にpH測定を行なうことが好ましく、pH測定については、測定を行なう当日に少なくとも1回はpH標準校正溶液を用いて校正されたpH計を用いることが好ましい。例えば、硫酸アルミニウム水溶液の最終段添加が終了してから24時間後経過後の25℃の(C)サチンホワイトを含有する組成物のpHを測定するようにしてもよい。また測定器具としては、ラコムテスターpH計(pHScanWPBN型/アズワン製)を使用し、(C)サチンホワイトを含有する組成物の分散液中に直接pH電極を浸漬させて該組成物のpHを測定する。なお、pH測定に使用したpH計については、NIST基準校正液(pH6.86、およびpH9.18の2種類)を用いてpH校正を行なった後にpH測定を行う。
【0047】
サチンホワイトの製造方法について、従来方法では、硫酸アルミニウムに対して常に水酸化カルシウムが過剰になる状態を堅持することによって、酸化アルミニウムや硫酸カルシウムの反応副生成物の発生を防止するものであったが、反面、水酸化カルシウムが過剰な状態を堅持するために、生成したサチンホワイト中にも、未反応の水酸化カルシウムが残留する状態が生じ、この残留する水酸化カルシウムが生成したサチンホワイト中に溶出するために、従来のサチンホワイト懸濁液のpHは強アルカリ性(pH12.5〜12.7)となることが短所であった。
【0048】
しかしながら本方法においては、反応性の鈍い水酸化カルシウム懸濁液に対して、複数
段に分割して所定量の硫酸アルミニウム水溶液を添加することによって、反応終了点まで
硫酸アルミニウム水溶液を添加して、サチンホワイト懸濁液中の未反応の水酸化カルシウ
ムの残留を抑制できることから、アルカリ性の低い高品質なサチンホワイトを安定して生
成させることができる。
【0049】
したがって、本方法により、硫酸アルミニウム水溶液の添加量を最適化することにより
、生成するサチンホワイトを含有する組成物のpHを12.0以下まで調整することが可
能となり、硫酸アルミニウム水溶液の添加量をより最適化することにより、11.0以下
の好ましい値、10.5以下のより好ましい値にすることができるようになった。また、p
Hの下限としては、pHを8.5以上とすることが好ましく、9.2以上とすることが特
に好ましい。
【0050】
このpHは、硫酸アルミニウム水溶液の添加量によって調節することができ、具体的には、(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数aの、複数段添加された(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数bに対する割合(a/b)を変更することでpHを調節することができる。該割合(a/b)を高めればpHは上昇し、該割合(a/b)を低めればpHは低下するので、所定のpHになるように該割合(a/b)を5.5〜7.0の範囲で調節すればよい。
【0051】
生成するサチンホワイトを含有する組成物のpHが12.0を越える場合には、前記し
たように、未反応の水酸化カルシウムが多く残留しているために好ましくなく、他方サチ
ンホワイトを含有する組成物のpHが8.5未満である場合には、反応終了点を越えて、
過剰に硫酸アルミニウム水溶液が添加され、生成したサチンホワイトの結晶形状が崩壊し
、水酸化アルミニウムや硫酸カルシウムの反応副生成物が発生するため、好ましくない。
【0052】
また、この本方法により製造される(C)サチンホワイトの平均粒子径を大きくするには、(A)水酸化カルシウム懸濁液への(B)硫酸アルミニウム水溶液の添加段数を増加させたり、連続的に移送される(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する連続添加における流量を減少(即ち、連続添加における滞留時間を増加させる)させればよい。逆に、本方法により製造される(C)サチンホワイトの平均粒子径を小さくするには、(A)水酸化カルシウム懸濁液への(B)硫酸アルミニウム水溶液の添加段数を減少させたり、連続的に移送される(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する連続添加における流量を増加(即ち、連続添加における滞留時間を減少させる)させたり、(A)水酸化カルシウム懸濁液への(B)硫酸アルミニウム水溶液の添加のうち第1回添加における(B)硫酸アルミニウム水溶液の添加量を減少させればよい。このためこれらの条件を適宜変更して所望の平均粒子径になるようにすればよい。
【0053】
本方法においては、前記複数段に分割して行なわれる(B)硫酸アルミニウム水溶液の添加のうち、1段目の添加である第1回添加において、(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数の1/6のモル数である基準モル数の85%以下のモル数である(B)硫酸アルミニウム水溶液を添加し、前記複数段の添加のうち、2段目の添加である第2回添加と該第1回添加との(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数が、該基準モル数の98%以下のモル数となるようにしてもよい(添加モル数制限方法)。
【0054】
(A)水酸化カルシウム懸濁液の濃度と、(B)硫酸アルミニウム水溶液の濃度と、の少なくとも一方が、12重量%以下であってもよい。
ここに水酸化カルシウム懸濁液の濃度は、硫酸アルミニウム水溶液が全く添加されていない状態(即ち、硫酸アルミニウム水溶液の第1段目の添加を行なう前)の反応を行なう前の状態における水酸化カルシウム懸濁液の濃度であり、水酸化カルシウム懸濁液において、水に溶解した状態の水酸化カルシウム(f1)と、固体のまま水に分散した状態の水酸化カルシウム(f2)と、の2者を併せた水酸化カルシウムの総含有量(質量F=f1+f2)による質量%をいう。
【0055】
サチンホワイトは塩基である水酸化カルシウム懸濁液と、酸である硫酸アルミニウム水溶液を、瞬時に均一に混合させることが不可欠であるが、この際に各反応原料の濃度が濃すぎる場合には、各反応原料の瞬時、かつ均一な混合を行なうことが困難となり、また反応混合組成物(懸濁液)の粘度が2000mPa・sを越えるような高粘度となって、反応原料の混合を阻害する恐れが生じてしまう。
したがって、本方法においては、(A)水酸化カルシウム懸濁液の濃度と、(B)硫酸アルミニウム水溶液の濃度と、の少なくとも一方が、12質量%以下であることが好ましく、少なくとも一方が、6質量%以下であることがより好ましく、(A)水酸化カルシウム懸濁液の濃度と(B)硫酸アルミニウム水溶液の濃度が、共に6質量%以下であることが最も好ましい。
【0056】
そして、反応原料を瞬時、かつ均一に混合させて、サチンホワイトの生成反応を安定して行なうためには、前記したように各反応原料の濃度はできる限り低い方が好ましいが、反応原料の濃度が極めて低い場合には、取り扱う反応液量が膨大となり、極めて大きな処理能力を有する製造設備の設置が必要となるため、必要以上に原料を低濃度化することは好ましくない。
したがって、(A)水酸化カルシウム懸濁液の濃度と、(B)硫酸アルミニウム水溶液の濃度の少なくとも一方が、0.1質量%以上であることが好ましく、少なくとも一方が、1質量%以上であることが特に好ましい。
【0057】
なお、本発明において、裏面塗被層にサチンホワイトを使用することによって、キャスト塗被紙の表面平滑性が改良される理由については、以下のように推定される。即ち、一般的に裏面塗被層は印刷品質を向上させるためにスーパーカレンダー等による平滑化処理がなされる。この際、原紙の地合の影響により、キャスト面にボコツキが発生し、キャスト面の表面平滑性を悪化させるが、裏面塗被層にサチンホワイトを含有することにより高平滑な塗被層が形成され、平滑化処理を軽減することが可能となるためである。更に、スーパーカレンダー等による平滑化処理を軽減することにより、嵩高なキャスト塗被紙も得ることが可能となる。
【0058】
また、キャスト塗被紙の製造において、裏面塗被層にpHが12.5〜12.7程度の従来のサチンホワイトを使用した場合、長時間の操業においてキャスト塗被液に影響を及ぼし、キャストドラムでの離型性が悪化し、ドラムピックが発生する場合がある。この理由については明らかではないが、長時間の操業において裏面塗被液中に残留している水酸化カルシウムからカルシウムイオンが溶出し、キャスト用水性塗被液中に混入する。その結果、このカルシウムイオンが、キャストドラム表面や塗被液中の離型剤に吸着し、その離型効果が発揮できなくなるためと推定する。
【0059】
本発明において、裏面塗被層に含有する特定のサチンホワイト以外の顔料としては、例えば、カオリン、タルク、クレー、焼成カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、亜硫酸カルシウム、石膏、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ベントナイト、セリサイト等の無機顔料のほか、尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機顔料を例示することができ、これらは併用も可能である。
【0060】
本発明において、裏面塗被層に、接着剤として、カゼイン、大豆蛋白、等の蛋白質類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体等のビニル系重合体ラテックス、或はこれらの各種重合体をカルボキシル基等の官能基含有単量体により、官能基変性したアルカリ溶解性或はアルカリ非溶解性の重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂等の合成樹脂系接着剤、陽性化デンプン、酸化デンプン、エステル化デンプン等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等、一般の塗被紙用として知られる接着剤を単独或は併用で使用することができる。なお、接着剤の使用量は顔料100重量部に対し5〜50質量部、好ましくは10〜30質量部配合される。
【0061】
また、本発明の裏面塗被層用の塗被組成物中には、その塗被層の耐水性や耐ブロッキング性を向上させる目的で、ジグリセロールポリクリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、あるいはアジピン酸ジグリシジルエステル等の多官能性エポキシ化合物、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物、尿素−ホルムアルデヒド系、メラミン−ホルムアルデヒド系、およびポリアミド尿素−ホルムアルデヒド系等の樹脂、グリオキザール、水溶性ポリアミン系樹脂および水溶性ポリアミド系樹脂等の各種耐水化剤や印刷適性向上剤を適宜添加することもできる。そして、その場合の添加割合は顔料100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲で調節される。また、本発明の効果を妨げない範囲において、青系統或いは紫系統の染料や有色顔料、蛍光染料、増粘剤、保水剤、酸化防止剤、老化防止剤、導電処理剤、消泡剤、紫外線吸収剤、分散剤、pH調整剤、離型剤、耐水化剤、撥水剤等の各種助剤を適宜配合することができる。
【0062】
上記材料をもって構成される裏面塗被層は、一般に固形分濃度を45〜65質量%程度に調製した後、米坪35〜400g/m程度の原紙、あるいは多孔性フィルム上へ、乾燥後の重量が、片面あたり3〜50g/m程度、生産性の向上に重点を置く場合には、3〜20g/m程度が塗被される。勿論、裏面塗被層の形成に際しては、2層以上の多層塗工を行うことも可能である。
【0063】
なお、裏面塗被層を原紙等に設けるための塗被装置としては、特に限定されるものではなく、通常の塗工紙製造分野で使用される、例えばブレードコーター、エヤーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、グラビヤコーター等の公知公用の装置が適宜使用される。
【0064】
次に、本発明において、キャスト塗被紙に使用する原紙について述べる。本発明のキャスト塗被紙に使用する原紙は、特に限定されるものではなく、下記の材料が本発明の所望の効果を妨げない範囲において適宜選択して使用される。
【0065】
パルプとしては、例えば、一般に使用されているLBKPやNBKP等の漂白化学パルプ、砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナ砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ、脱墨古紙パルプ(DIP)、損紙などが適宜混合使用される。また、ケナフ等の非木材繊維原料から得られるパルプ繊維、合成パルプ、無機繊維等の1種又は2種以上を原紙に配合することもできる。機械パルプやDIPは、必要に応じて漂白して使用することもでき、漂白の程度も任意に行うことができる。なお、パルプの漂白には、塩素ガスのような分子状塩素や二酸化塩素のような塩素化合物を使用しない漂白工程を採用することが、環境保全の観点から好ましく、このような漂白工程を経たパルプとしては、ECFパルプやTCFパルプを挙げることができる。
【0066】
原紙に内添される填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、カオリン、クレー、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミカオリン、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の無機顔料や尿素ホルマリン樹脂微粒子、微小中空粒子等の有機顔料等が例示でき、古紙や損紙等に含まれる填料も再使用できる。填料は2種以上の混合使用も可能である。填料の配合量は、一般に、紙(原紙)灰分が3〜20質量%の範囲となるように添加される。
【0067】
なお、原紙中にはパルプや填料の他に、内添サイズ剤、アニオン性、ノニオン性、カチオン性あるいは両性の歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等で例示される各種の抄紙用内添助剤を、必要に応じて添加することができる。内添サイズ剤の具体例としては、例えば、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系、スチレン−アクリル系、高級脂肪酸系、石油樹脂系サイズ剤、ロジン系サイズ剤等が挙げられる。また、歩留り向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤の具体例としては、例えば、アルミニウム等の多価金属化合物(具体的には、硫酸バンド、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、塩基性アルミニウム化合物等)、各種澱粉類、ポリアクリルアミド、尿素樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド等が例示できる。
【0068】
本発明のキャスト塗被紙に使用する原紙の坪量は、一般的には、30〜400g/m程度の範囲に適宜調整する。また、原紙の抄造条件は特に限定はない。抄紙機としては、例えば、長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の商業規模の抄紙機が、目的に応じて適宜選択して使用できる。抄紙方式としては、酸性抄紙、中性抄紙、弱アルカリ性抄紙等のいずれの方式でも良いが、中性−アルカリ抄紙法による原紙を使用した場合、前述のとおり、従来のpHが12.5前後のサチンホワイトを含有した塗被層を有する塗被紙との差が顕著である。原紙上に各種サイズプレス機およびロールコーターなどで澱粉等の天然接着剤やポリビニルアルコール等の合成接着剤を用いてサイズ処理を行なうことも可能であり、本発明の原紙とはサイズ処理をおこなう場合は、サイズ処理後の原紙を意味するものである。
【0069】
次に、キャスト塗被層の下塗り塗被層について述べる。本発明においては、下塗り塗被層は必須ではなく、必要に応じて形成させるものである。下塗り塗被層を形成させる場合の塗被組成物としては、下塗り塗被層としては、特に限定されるものではなく、塗被紙分野で一般に公知のものが使用され、その配合組成は、目的とする最終の品質仕様に応じて適宜決められるものである。勿論、本発明で規定する特定のサチンホワイトをキャスト塗被組成物中に含有せしめることも可能であり、その場合の添加割合としては、顔料100質量%に対して1質量%以上で調節される。なお、下塗り塗被組成物は、裏面塗被組成物と同様、一般に固形分濃度が45〜65質量%程度となるように調製され、乾燥後の重量が、片面あたり3〜50g/m程度、生産性の向上に重点を置く場合には、3〜20g/m程度が塗被される。勿論、下塗り塗被層の形成に際しては、2層以上の多層塗工を行うことも可能である。
【0070】
次に、キャスト塗被層に使用されるキャスト用塗被組成物について述べる。キャスト用塗被組成物については特に限定されるものではなく、キャスト塗被紙分野で一般に公知のものが使用され、その配合組成は、目的とする最終の品質仕様に応じて適宜決められるものである。なお、キャスト塗被組成物は、一般に固形分濃度が45〜65質量%程度となるように調製され、上記の下塗り塗被層を設けた原紙上に、乾燥後の重量が片面当たり3〜30g/m程度、より好ましくは10〜20g/mになるように塗被される。
【0071】
キャスト塗被組成物を塗被する塗被装置としては、特に限定するものではなく、キャスト塗被紙分野で一般的に使用されているトレーリング、フレキシブル、ロールアプリケーション、ファウンテンアプリケーション、ショートドゥエル等のベベルタイプやベントタイプのブレードコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、チャンプフレックスコーター、ゲートロールコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、ダイコーター、スプレーコーター等の公知の塗被装置が適宜使用できる。その後、該キャスト用塗被層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して、強光沢仕上げされる。
【実施例】
【0072】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、特に断わらない限り例中の部および%は、それぞれ固形分質量部および固形分質量%を示す。
各実施例及び比較例で得られたキャスト塗被紙を、下記の方法で評価し、その結果を表1に示した。
【0073】
(顔料の平均粒子径)
ピロリン酸ソーダの0.1%液中に顔料を超音波で5分間分散処理し、X線透過式粒度分布測定装置(機種名:セディグラフ5100、マイクロメリティクス社製)を用いて沈降法により測定した。平均粒子径は粗粒子分からの累積質量が50%に相当する点での粒子径で示した。
【0074】
(pH測定方法)
以下に示す実施例や比較例において、サチンホワイトスラリーおよび塗被液のpHは以下の方法により測定した。
ラコムテスターpH計(pHScanWPBN型、アズワン製)を使用し、各種分散液および塗被液中に直接pH電極を浸漬させて顔料分散液、塗被液のpHを測定した。なお、pH測定に使用したpH計については、NIST基準校正液(pH6.86、およびpH9.18の2種類)を用いてpH校正を行なった後にpH測定を行なった。
【0075】
(紙面pH)
テープを使用して塗被紙を分割し原紙面を露出させ、JAPAN TAPPI No.49−2に準じて、(株)共立理化学研究所の紙面測定用pH計、MPC型を用いて測定した。
【0076】
実施例1
・サチンホワイトの調製
(1)水酸化カルシウム懸濁液に対する第1段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加9000rpmで回転させたインラインミキサー(パイプラインホモミクサー、混合手段)に対して、前記の6%水酸化カルシウム懸濁液を300g/分、および6%硫酸アルミニウム水溶液を185g/分(基準モル数の80%。なお、基準モル数等の計算方法は後述する。)で同時、かつ連続的に注入し、該注入を14分間連続して行った。その際に得られた混合組成物(インラインミキサーから吐出される組成物)をpH復元タンク(本発明にいう中間槽)に連続的に受け入れ30分間静置して、pH回復を行った。pH回復後の該混合組成物(以下、「第1組成物」という。)のpHは12.8であった。
【0077】
ここに基準モル数等の計算方法を簡単に説明しておく。水酸化カルシウム、硫酸アルミニウムの分子量は、それぞれ74.1、および342.16であり、6%水酸化カルシウム懸濁液300g/分は、固形分として18g/分で、そのモル数(単位時間に装入されるモル数)は18/74.1=0.243である。従って、水酸化カルシウム懸濁液のモル数の1/6のモル数である基準モル数は、0.243×1/6=0.0405モル/分となる。一方、6%硫酸アルミニウム水溶液185g/分には、185g×6%=11.1g/分の硫酸アルミニウムが含まれており、これをモル数に換算すると11.1g/分×1/342.16=0.0324モル/分となる。従って、第1段目に添加する硫酸アルミニウム水溶液の、基準モル数に対する割合の計算は、(0.0324モル/分)/(0.0405モル/分)=80%と計算される。
【0078】
(2)第2段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加
前記(1)と同様にして、9000rpmで回転させたインラインミキサー(パイプラインホモミクサー、混合手段)に対して、前記混合組成物(第1組成物)を485g/分、および6%硫酸アルミニウム水溶液を35g/分(基準モル数の15%)で同時、かつ連続的に注入し、該注入を12分間連続して行った。その際に得られた混合組成物(インラインミキサーから吐出される組成物)をpH復元タンク(本発明にいう中間槽)に連続的に受け入れ30分間静置して、pH回復を行った。pH回復後の混合組成物(以下、「第2組成物」という。)のpHは12.4であった。
【0079】
(3)第3段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加(反応終了)
前記(2)と同様にして、9000rpmで回転させたインラインミキサー(パイプラインホモミクサー、混合手段)に対して、前記混合組成物(第2組成物)を520g/分、および6%硫酸アルミニウム水溶液を11g/分(基準モル数の5%)で同時、かつ連続的に注入し、該注入を10分間連続して行った(反応終了)。その際に得られた混合組成物(インラインミキサーから吐出される組成物)をクッションタンクに連続的に受け入れ、反応終了後の組成物(以下、「反応終了組成物」という。)を得た。反応終了組成物のpHは10.6であった。
【0080】
水酸化カルシウム懸濁液のモル数aの、複数段添加された(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数bに対する割合(a/b)の計算方法について簡単に説明する。まず、最終的に用いた6%水酸化カルシウムは300g/分×10分間=3000gであり、それに含まれる固形分としては180gであり、Ca(OH)モル数aとしては
2.43モルである。そして、複数段に分割添加した6%硫酸アルミニウムの総量は231g/分×10分間=2310gであり、それに含まれる固形分としては138.6gであり、Al(SOモル数bとしては0.405モルである。従って、モル比(Ca(OH)/Al(SO=a/b)としては6.0となる。また、硫酸アルミニウムの総添加率としては、基準モル数の100%(=80%+15%+5%)であった。
【0081】
反応終了後の組成物(反応終了組成物)をフィルタープレスで脱水することで固形分が約32〜34%の組成物とし、続いて固形分27%となるように該脱水組成物を水に再分散させた。その再分散の際、あらかじめ水にポリアクリル酸系分散剤(商品名:アロンT−50、東亜合成化学社製)を組成物(該脱水組成物)の固形分対比で0.5部の量を添加しておき、さらに該分散剤の添加量を調整して、再分散した該組成物分散液が約10mPa・s程度の低粘度になるように調整した。平均粒子径は0.49μmであった。
【0082】
・裏面塗被層用塗被液の調製
カオリン(商品名:UW−90、エンゲルハード社製)70部、軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−123CS、奥多摩工業社製)23部、上記サチンホワイト7部(固形分換算)、ポリアクリル酸ナトリウム0.5部をコーレス分散機用いて水中に分散し、固形分濃度65%の顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに、顔料100部に対して、接着剤として酸化澱粉4部およびスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス15部(いずれも固形分換算)を添加して、固形分濃度60%の裏面塗被層用塗被液を調製した。
【0083】
・キャスト下塗り用塗被液の調製
カオリン(商品名:UW−90、エンゲルハード社製)70部、軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−123CS、奥多摩工業社製)30部、ポリアクリル酸ナトリウム0.5部をコーレス分散機用いて水中に分散し、固形分濃度65%の顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに、顔料100部に対して、接着剤として酸化澱粉4部およびスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス15部(いずれも固形分換算)を添加して、固形分濃度60%の下塗り用塗被液を調製した。
【0084】
・キャスト用塗被液の調製
カオリン(商品名:UW−90、エンゲルハード社製)85部、軽質炭酸カルシウム(商品名:PX、白石工業社製)15部、ポリアクリル酸ナトリウム0.5部をコーレス分散機を用いて水中に分散し、固形分濃度65%の顔料スラリーを調成した。この顔料スラリーに、顔料100部に対して、離型剤としてステアリン酸アンモニウム1.0部、接着剤としてアンモニアを用いて溶解した15%カゼイン水溶液10部(固形分換算)および、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス15部(固形分換算)を加え、固形分濃度が54%のキャスト用塗被液を調整した。
【0085】
・原紙の調製
酸素−オゾン−水酸化ナトリウム−過酸化水素−二酸化塩素からなる工程で多段漂白されたLBKP(CSF430ml)85%と、酸素−オゾン−水酸化ナトリウム−過酸化水素−二酸化塩素からなる工程で多段漂白されたNBKP(CSF450ml)15%とからなるパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム(タマパールTP−121/奥多摩工業社製)を原紙灰分が10%となるように添加した後、パルプ固形分に対して硫酸アルミニウム0.5%、カチオン澱粉(エースK−100/王子コーンスターチ社製)0.5%、アルキルケテンダイマーサイズ剤(サイズパインK−287/荒川化学社製)0.1%、ポリアクリルアミド(ポリストロン851/荒川化学社製)0.02%を順次添加し、紙料を調製した。得られた紙料をオントップツインワイヤー抄紙機で抄紙し、さらにゲートロールサイズプレス装置で酸化澱粉(エースA/王子コーンスターチ社製)を両面で1.5g/m(固形分)塗布・乾燥し、マシンカレンダーで平滑化処理を施して実量119g/m、緊度0.75g/cm、紙面pH7.6の原紙を得た。
【0086】
・キャスト塗被紙の作製
上記原紙上にブレードコーターを用いて、乾燥重量で13g/mになるように上記キャスト下塗り塗被液を片面に塗被、乾燥し、その反対面に、乾燥重量で14g/mになるように上記裏面用塗被液を塗被、乾燥した。次にこのキャスト下塗り塗被層上に、上記キャスト塗被液をロールコーターで乾燥重量が10g/mとなるように塗被し、直ちにこの紙をプレスロールで表面温度が80℃であるキャストドラムに圧接、乾燥後、キャストドラムから離型してキャスト仕上げした。更に、スーパーカレンダーを用いて、スピード500m/分、線圧200kN/cmの条件でキャスト面が金属ロールと接触するように通紙して平滑化処理をして、キャスト塗被紙を得た。
【0087】
実施例2
・サチンホワイトの調製
実施例1の第1段目の硫酸アルミニウム水溶液添加量を104g/分(基準モル数の45%)で添加し、また第2段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加において、混合組成物(第1組成物)を404g/分、硫酸アルミニウム水溶液を81g/分(基準モル数の35%)で添加し、さらに第3段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加において、混合組成物(第2組成物)を485g/分、硫酸アルミニウム水溶液を34g/分(基準モル数の15%)で添加して反応終了とした以外は、実施例1と同様にして反応終了後の組成物を得た。この時、第2段目、および第3段目の硫酸アルミニウム水溶液を添加する前の各混合組成物(第1組成物、第2組成物)のpH回復後のpHは、12.7、および12.5であった。また、反応終了後の組成物のpHは11.5であった。平均粒子径は0.44μmであった。
【0088】
なお、最終的に用いた6%水酸化カルシウムは300g/分×10分間=3000gであり、それに含まれる固形分としては180gであり、Ca(OH)モル数aとしては2.43モルである。そして、複数段に分割添加した6%硫酸アルミニウムの総量は219g/分×10分間=2190gであり、それに含まれる固形分としては131.4gであり、Al(SOモル数bとしては0.38モルである。従って、モル比(Ca(OH)/Al(SO=a/b)としては6.4となる。また、硫酸アルミニウムの総添加率としては、基準モル数の95%であった。
【0089】
・キャスト塗被紙の製造
実施例1の裏面塗被層用塗被液の調製において、上記サチンホワイトを使用した以外は、実施例1と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0090】
実施例3
・サチンホワイトの調製
実施例1の第1段目の硫酸アルミニウム水溶液添加量を58g/分(基準モル数の25%)で添加し、また第2段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加において、混合組成物(第1組成物)を358g/分、硫酸アルミニウム水溶液を162g/分(基準モル数の70%)で添加し、さらに第3段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加において、混合組成物(第2組成物)を520g/分、硫酸アルミニウム水溶液を11g/分(基準モル数の5%)で添加して反応終了とした以外は、実施例1と同様にして反応終了後の組成物を得た。この時、第2段目、および第3段目の硫酸アルミニウム水溶液を添加する前の各混合組成物(第1組成物、第2組成物)のpH回復後のpHは、12.8、および12.4であった。また、反応終了後の組成物のpHは9.7であった。平均粒子径は0.46μmであった。
【0091】
なお、最終的に用いた6%水酸化カルシウムは300g/分×10分間=3000gであり、それに含まれる固形分としては180gであり、Ca(OH)モル数aとしては2.43モルである。そして、複数段に分割添加した6%硫酸アルミニウムの総量は231g/分×10分間=2310gであり、それに含まれる固形分としては138.6gであり、Al(SOモル数bとしては0.405モルである。従って、モル比(Ca(OH)/Al(SO=a/b)としては6.0となる。また、硫酸アルミニウムの総添加率としては、基準モル数の100%であった。
【0092】
・キャスト塗被紙の製造
実施例1の裏面塗被層用塗被液の調製において、上記サチンホワイトを使用した以外は、実施例1と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0093】
実施例4
実施例1の裏面塗被層用塗被液の調製において、カオリンの配合部数を70部、軽質炭酸カルシウムの配合部数を27部、サチンホワイトの配合部数を3部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャスト塗紙紙を得た。
【0094】
実施例5
実施例1の裏面塗被層用塗被液の調製において、カオリンの配合部数を70部、軽質炭酸カルシウムの配合部数を10部、サチンホワイトの配合部数を20部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0095】
実施例6
・キャスト用塗被液の調製
カオリン(商品名:UW−90、エンゲルハード社製)55部、軽質炭酸カルシウム(商品名:PX、白石工業社製)35部、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、備北粉化工業社製)10部、ポリアクリル酸ナトリウム0.5部をコーレス分散機を用いて水中に分散し、固形分濃度65%の顔料スラリーを調成した。この顔料スラリーに、顔料100部に対して、離型剤としてステアリン酸アンモニウム1.0部、接着剤としてアンモニアを用いて溶解した15%カゼイン水溶液10部(固形分換算)および、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス15部(固形分換算)を加え、固形分濃度が45%のキャスト用塗被液を調整した。
【0096】
・キャスト塗被紙の作製
実施例1と同じ原紙上にブレードコーターを用いて、乾燥重量で14g/mになるように実施例1の裏面塗被層用塗被液を片面に塗被、乾燥し、次にその反対面上にエアナイフコーターを用いて、乾燥重量で20g/mになるように上記キャスト用塗被液を塗被、乾燥した。次にポリエチレンエマルジョン水溶液1%、クエン酸ナトリウム1%からなる再湿潤液によって、キャスト塗被層表面を再湿潤した後、表面温度105℃のキャストドラムに圧接、乾燥した後ドラムから剥離することによってキャスト仕上げした。更に、スーパーカレンダーを用いて、実施例1と同じ条件で平滑化処理をして、キャスト塗被紙を得た。
【0097】
実施例7
・キャスト用塗被液の調製
カオリン(商品名:UW−90、エンゲルハード社製)60部、軽質炭酸カルシウム(商品名:PX、白石工業社製)40部、重質炭酸カルシウム(商品名:ハイドロカーブ90、備北粉化工業社製)10部、ポリアクリル酸ナトリウム0.5部をコーレス分散機を用いて水中に分散し、固形分濃度65%の顔料スラリーを調成した。この顔料スラリーに、顔料100部に対して、離型剤としてステアリン酸アンモニウム1.0部、接着剤としてアンモニアを用いて溶解した15%カゼイン水溶液10部(固形分換算)および、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス15部(固形分換算)を加え、固形分濃度が50%のキャスト用塗被液を調整した。
【0098】
・キャスト塗被紙の作製
実施例1と同じ原紙上にブレードコーターを用いて、乾燥重量で14g/mになるように実施例1の裏面塗被液を片面に塗被、乾燥し、次にその反対面上にロールコーターを用いて、乾燥重量で15g/mになるように上記キャスト用塗被液を塗被、乾燥し、次いで、蟻酸カルシウム0.5%からなる凝固液に接触させてキャスト塗被層をゲル化した。この塗被層を、表面温度98℃のキャストドラムに圧接、乾燥した後ドラムから剥離することによってキャスト仕上げした。更に、スーパーカレンダーを用いて、実施例1と同じ条件で平滑化処理をして、キャスト塗被紙を得た。
【0099】
比較例1
・サチンホワイトの調製
実施例1の第1段目の硫酸アルミニウム水溶液添加量を104g/分(基準モル数の45%)で添加し、また第2段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加において、混合組成物(第1組成物)を404g/分、硫酸アルミニウム水溶液を81g/分(基準モル数の35%)で添加し、さらに第3段目の硫酸アルミニウム水溶液の添加において、混合組成物(第2組成物)を485g/分、硫酸アルミニウム水溶液を11g/分(基準モル数の5%)で添加して反応終了とした以外は、実施例1と同様にして反応終了後の組成物を得た。この時、第2段目、および第3段目の硫酸アルミニウム水溶液を添加する前の各混合組成物(第1組成物、第2組成物)のpH回復後のpHは、12.8、および12.4であった。また、反応終了後の組成物のpHは12.5であった。平均粒子径は0.44μmであった。
【0100】
なお、最終的に用いた6%水酸化カルシウムは300g/分×10分間=3000gであり、それに含まれる固形分としては180gであり、Ca(OH)モル数aとしては2.43モルである。そして、複数段に分割添加した6%硫酸アルミニウムの総量は196g/分×10分間=1960gであり、それに含まれる固形分としては117.6gであり、Al(SOモル数bとしては0.405モルである。従って、モル比(Ca(OH)/Al(SO=a/b)としては7.1となる。また、硫酸アルミニウムの総添加率としては、基準モル数の85%であった。
【0101】
実施例1の裏面塗被層用塗被液の調製において、上記サチンホワイトを使用した以外は、実施例1と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0102】
比較例2
実施例1の裏面塗被層用塗被液の調製において、市販のサチンホワイト(商品名:サチンホワイトBL、白石工業社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてキャスト塗被紙を得た。なお、使用したサチンホワイトのpHは12.5、平均粒子径は0.49μmであった。
【0103】
比較例3
実施例1の裏面塗被層用塗被液の調製において、サチンホワイトを軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−123CS、奥多摩工業社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0104】
比較例4
実施例1の裏面塗被層用塗被液の調製において、サチンホワイトを軽質炭酸カルシウム(商品名:タマパールTP−123CS、奥多摩工業社製)に変更し、スーパーカレンダー処理条件を、250kN/cmに変更した以外は、実施例1と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0105】
比較例5
実施例6の裏面塗被層用塗被液の調製において、市販のサチンホワイト(商品名:サチンホワイトBL、白石工業社製)を使用した以外は、実施例6と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0106】
比較例6
実施例7の裏面塗被層用塗被液の調製において、市販のサチンホワイト(商品名:サチンホワイトBL、白石工業社製)を使用した以外は、実施例7と同様にしてキャスト塗被紙を得た。
【0107】
各実施例及び比較例で得られたキャスト塗被紙を、下記の方法で評価し、その結果を表1に示した。なお、本発明におけるキャスト塗被紙の測定および評価については、特に記載ない限り、23℃、50%RHの環境下で行った。
【0108】
・熱褪色性の評価試験
恒温恒湿器を用いて、70℃、RH90%の条件下で24時間の熱処理をした後、処理前後の裏面の白色度差および色差を下記方法で測定し、熱褪色性を評価した。
【0109】
・白色度差の測定
JIS−P8148に準じて、熱処理前後の裏面の白色度を測定し、その白色度の差(△W)を下記の式によって求めた。数値が小さいほど、熱褪色性は良好である。
△W=(熱処理前の白色度)−(熱処理後の白色度)
【0110】
・(△b差)
JIS−Z8722に準じて、熱処理前後の裏面の色相を測定し、△bを測定した。
【0111】
・色差の測定
JIS−Z8722に準じて、熱処理前後の裏面の色相を測定した。色差(△E)は、JIS−Z8730に準じて、L表色系による色差式から求めた。数値が小さいほど、熱褪色性は良好である。
【0112】
・白紙光沢度
キャスト塗被紙のキャスト面および裏面をTAPPI試験法:T 480 om−92(TAPPI Test Method T 480 om−92)に準じて、光沢度計(型式:GM−26D、村上色彩技術研究所社製)を使用して測定した。
【0113】
・表面平滑性
キャスト塗被紙のキャスト面の表面平滑性を以下の基準に従って、目視で評価した。
◎:表面平滑性が極めて良好である。
○:表面平滑性が良好である。
△:表面平滑性が劣り、実用上問題がある。
【0114】
・キャストドラム表面の汚れ
連続的に5000mキャスト塗被紙を生産した後のキャストドラム表面を目視で観察し、ドラム表面の汚れを評価した。
○:ドラム表面に汚れはなく、さらに連続操業が可能である。
△:ドラム表面に汚れが多く、操業を停止してドラム表面を拭き直す必要がある。
【0115】
・生産速度
キャスト塗被紙を作成するのにあたり、キャストドラムに張り付いたり、ドラムピックが発生せず、安定して操業することができるキャスト速度を評価した。
【0116】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙の一方の面に顔料と接着剤を主成分とする裏面塗被層を設け、該原紙のもう一方の面に、必要に応じて顔料と接着剤を主成分とする下塗り塗被層を設けてなる原紙上に、顔料と接着剤を主成分とするキャスト用塗被層を形成せしめ、該キャスト用塗被層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して、強光沢仕上げするキャスト塗被紙において、前記裏面塗被層中にトリスルホアルミン酸カルシウムが含有されるキャスト塗被紙であって、前記キャスト塗被紙を下記の条件で熱処理をおこなった場合、裏面塗被層面における熱処理前後の白色度(JIS−P8148による)差が2.8未満であることを特徴とするキャスト塗被紙。
熱処理条件:70℃、90%RHの条件下で、24時間の熱処理
【請求項2】
原紙の一方の面に顔料と接着剤を主成分とする裏面塗被層を設け、該原紙のもう一方の面に、必要に応じて顔料と接着剤を主成分とする下塗り塗被層を設けてなる原紙上に、顔料と接着剤を主成分とするキャスト用塗被層を形成せしめ、該キャスト用塗被層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して、強光沢仕上げするキャスト塗被紙において、前記裏面塗被層中にトリスルホアルミン酸カルシウムが含有されるキャスト塗被紙であって、前記キャスト塗被紙を下記の条件で熱処理をおこなった場合、裏面塗被層面における熱処理前後の色相におけるb(JIS−Z8722による)差が1.3未満であることを特徴とするキャスト塗被紙。
熱処理条件:70℃、90%RHの条件下で、24時間の熱処理
【請求項3】
原紙の一方の面に顔料と接着剤を主成分とする裏面塗被層を設け、該原紙のもう一方の面に、必要に応じて顔料と接着剤を主成分とする下塗り塗被層を設けてなる原紙上に、顔料と接着剤を主成分とするキャスト用塗被層を形成せしめ、該キャスト用塗被層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して、強光沢仕上げするキャスト塗被紙において、前記裏面塗被層中にpH12.0以下であるトリスルホアルミン酸カルシウムを含有することを特徴とするキャスト塗被紙。
【請求項4】
前記トリスルホアルミン酸カルシウムがpH12.0以下である、請求項1または2記載のキャスト塗被紙。
【請求項5】
前記トリスルホアルミン酸カルシウムのpHが8.5以上11.0以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のキャスト塗被紙。
【請求項6】
前記トリスルホアルミン酸カルシウムを含有した裏面塗被層用塗被液のpHが11.0以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載のキャスト塗被紙。
【請求項7】
前記トリスルホアルミン酸カルシウムの平均粒子径が0.1〜1.5μmである、請求項1から6のいずれか一項に記載のキャスト塗被紙。
【請求項8】
前記原紙が紙面pH5.5以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載のキャスト塗被紙。
【請求項9】
前記トリスルホアルミン酸カルシウムが前記裏面塗被層中の全顔料中、2〜30質量%含有された請求項1から8のいずれか一項に記載のキャスト塗被紙。
【請求項10】
前記トリスルホアルミン酸カルシウムが、(A)水酸化カルシウム懸濁液と(B)硫酸アルミニウム水溶液とを反応させて製造されたものであって、(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を複数段添加するものであり、(A)水酸化カルシウム懸濁液への(B)硫酸アルミニウム水溶液の複数段の添加のうち少なくともいずれかが、連続的に移送される(A)水酸化カルシウム懸濁液に(B)硫酸アルミニウム水溶液を連続的に添加する連続添加によって行なわれるものである、請求項1から9のいずれか一項に記載のキャスト塗被紙。
【請求項11】
前記複数段の添加のうち2段目以降の添加である後続添加が、該後続添加の直前の添加から所定時間が経過した後に行なわれるものである、請求項10に記載のキャスト塗被紙。
【請求項12】
前記複数段の添加のうち2段目以降の添加である後続添加が、該後続添加において(B)硫酸アルミニウム水溶液が添加される組成物のpHが11.0以上で行なわれるものである、請求項10または11に記載のキャスト塗被紙。
【請求項13】
(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数aの、複数段添加された(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数bに対する割合(a/b)が、5.5〜7.0である、請求項10から12のいずれか一項に記載のキャスト塗被紙。
【請求項14】
前記複数段の添加のうち1段目の添加である第1回添加において、(A)水酸化カルシウム懸濁液のモル数の1/6のモル数である基準モル数の85%以下のモル数である(B)硫酸アルミニウム水溶液を添加し、前記複数段の添加のうち2段目の添加である第2回添加と該第1回添加との(B)硫酸アルミニウム水溶液の合計添加量のモル数が、該基準モル数の98%以下のモル数である、請求項10から13のいずれか一項に記載のキャスト塗被紙。
【請求項15】
(A)水酸化カルシウム懸濁液の濃度と、(B)硫酸アルミニウム水溶液の濃度と、の少なくとも一方が、12質量%以下である、請求項10から14のいずれか一項に記載のキャスト塗被紙。

【公開番号】特開2006−336158(P2006−336158A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163409(P2005−163409)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】