説明

キャップ

【課題】 従来のキャップに代わる新しいキャップを遠心管やTフラスコに装着することにより、キャップ自体の着脱をしなくとも開閉可能であり、開いた状態で開口部からノズルを差し込み、内溶液の分取分注作業を行なうことが可能なキャップを提供する。
【解決手段】 遠心管2やTフラスコの投入口に装着するキャップ1であって、投入口に気密状態で螺着又は嵌着することが可能な開口部7を備えたキャップ本体5と、キャップ本体の開口部を開閉する蓋6とを備え、更に蓋でキャップ本体の開口部を閉止した状態で蓋を開口部に一定の力で押し付ける弾性付勢手段9と、蓋と開口部を密着させるシールと、蓋を開閉するために該蓋と連係させて設けた操作部11とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心管やTフラスコに用いるキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療・バイオ関連の操作において、遠心管やTフラスコは、遠心分離操作をしたり、細胞の培養をするために多用されている。遠心管やTフラスコには、取り扱い中のコンタミネーションを避けるために、投入口にキャップを装着している。そして、自動化装置において遠心管やTフラスコを使用する場合、キャップを自動で着脱する装置を用いてキャップを外して、投入口からノズルを差し込み、内溶液の分取分注作業を自動で行なうのである。
【0003】
図4は通常の遠心管100の投入口にキャップ101が装着されている様子を示す全体図であり、図5は通常のTフラスコ102の投入口にキャップ104が装着されている様子を示す全体図である。また、図6は遠心管100にキャップ101が装着された部分の拡大断面図である。これら従来のキャップ101の構造は、遠心管100の投入口105の周囲に形成された雄ネジ部106にキャップ101の円筒部内周に形成された雌ネジ部107が噛合し、キャップ101を締付けることにより、投入口105の端面にキャップ101の蓋面108が圧接して液漏れやコンタミネーションを防ぐようになっている。
【0004】
一般的に、遠心管やTフラスコのキャップは、旋回式(図4及び特許文献1を参照)や差込方式(特許文献2を参照)であり、キャップの締まり具合が一定でない場合、自動化装置においてキャップの着脱を安定して、確実に行なうことが困難である。例えば、キャップの自動着脱装置としては、ゴム等を滑り止めとしたチャックを有するキャップホルダーを用いてキャップを保持し、キャップホルダーの回転によりキャップを着脱するようにした装置が一般的である。また、遠心管キャップの着脱を目的としてエアチャックを利用した自動着脱装置もある。
【特許文献1】 特開2004−192号公報
【特許文献2】 特開2004−313500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ゴムチャックを有するキャップホルダーでキャップを旋回させるキャップ着脱装置では、キャップの着脱を確実に行なうためにチャック保持力を強くしてキャップホルダーのチャックとキャップとの摩擦力を大きくする必要があり、そのためにゴムチャックが破損したり、キャップや遠心管本体が変形したりして、キャップの着脱を確実に行なえなくなる。
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、従来のキャップに代わる新しいキャップを遠心管やTフラスコに装着することにより、キャップ自体の着脱をしなくとも開閉可能であり、開いた状態で開口部からノズルを差し込み、内溶液の分取分注作業を行なうことが可能なキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題解決のために、遠心管やTフラスコの投入口に装着するキャップであって、前記投入口に気密状態で螺着又は嵌着することが可能な開口部を備えたキャップ本体と、該キャップ本体の開口部を開閉する蓋とを備え、更に前記蓋でキャップ本体の開口部を閉止した状態で該蓋を開口部に一定の力で押し付ける弾性付勢手段と、前記蓋と開口部を密着させるシールと、前記蓋を開閉するために該蓋と連係させて設けた操作部とからなることを特徴とするキャップを構成した。
【0008】
そして、前記キャップ本体の開口部の一側端部に、該開口部の端面に平行な支軸にて前記蓋を回動開閉可能に設けるとともに、前記弾性付勢手段として前記支軸にトーションばねを設け、又は前記支軸をトーションバーで構成してなることが好ましい。
【0009】
ここで、前記操作部が前記支軸を越えて前記蓋に連続した押圧部であり、該押圧部を押し込むことにより、前記蓋を開放する機構であることがより好ましい。
【0010】
また、前記操作部が前記蓋に連続した係止部であり、該係止部を引っ張ることにより、前記蓋を開放する機構であることも好ましい。
【0011】
更に、前記操作部が前記支軸の軸周りに前記蓋を回転させるつまみであり、該つまみを回転させることにより、前記蓋を開放する機構であることも好ましい。
【0012】
また、前記キャップ本体の開口部の端面両側に、該開口部の端面と平行に一対のガイドを設けるとともに、両ガイドに前記蓋をスライド開閉可能に設け、前記蓋の一部に前記操作部として該蓋をガイドに沿って移動するための係合部を設けてなることも可能である。
【発明の効果】
【0013】
上述したように本発明のキャップは、従来のような複雑なキャップ着脱装置が不要で、キャップを遠心管やTフラスコの投入口に着脱しなくとも、キャップ本体に対して蓋を開閉するだけで、内溶液の分取分注等の作業を確実に実施することができ、しかも常に一定の条件で蓋を開閉できるので自動開閉装置による自動化に適応したものとなる。
【0014】
また、市販の遠心管やTフラスコの投入口に、本発明のキャップを螺着又は嵌着するだけで使用することができる。つまり、本発明のキャップ本体を遠心管やTフラスコの投入口に装着する構造として、従来の旋回式による螺着構造や、嵌合して密着させる嵌着構造を採用し、該キャップ本体の開口部を蓋で開閉するようにしたので、最小限の部品交換によって自動化に適応させることができ、経済的である。
【0015】
また、手作業の場合でも、従来はキャップ着脱作業を両手で行なっていたが、片手で瞬時に行なえ、作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態を添付図面に基づき更に詳細に説明する。図1は本発明のキャップ1を装着した遠心管2の外観図であり、図2は押しローラ3によってキャップ1を開いてノズル4を差し込まれた状態の外観図であり、図3は本発明のキャップ1の断面図である。図中符号5はキャップ本体、6は蓋、7は開口部、8は支軸、9は弾性付勢手段、10はシール、11は操作部をそれぞれ示している。尚、本実施形態では、主に遠心管2に適用した例で説明するが、Tフラスコに適用する場合も同様である。
【0017】
本発明のキャップ1は、図1〜図3に示すように、遠心管1やTフラスコの投入口12に装着して使用するものであり、前記投入口12に気密状態で螺着又は嵌着することが可能な開口部7を備えたキャップ本体5と、該キャップ本体5の開口部7を開閉する蓋6とを備え、更に前記蓋6でキャップ本体5の開口部7を閉止した状態で該蓋6を開口部7に一定の力で押し付ける弾性付勢手段9と、前記蓋6と開口部7を密着させるシール10と、前記蓋6を開閉するために該蓋6と連係させて設けた操作部11とからなっている。
【0018】
本実施形態では、前記遠心管2の投入口12の外周面に雄ネジ部13を形成するとともに、前記キャップ本体5の円筒部の内周面に前記雄ネジ部13に螺合する雌ネジ部14を形成している。前記キャップ本体5を前記遠心管2の投入口12に螺着して、該投入口12に対してキャップ本体5を気密状態に連結する構造は従来と同様とする。そして、前記キャップ本体5には、前記投入口12に連通する開口部7を形成し、該開口部7の端面は前記投入口12と直角な平面となっている。
【0019】
また、前記キャップ本体5の開口部7の一側端部に、該開口部7の端面に平行な支軸8にて前記蓋6を回動開閉可能に設けるとともに、前記弾性付勢手段9として前記支軸8にトーションばねを設け、該蓋6を開口部7に一定の力で押し付けるようにしている。ここで、前記弾性付勢手段9として支軸8をトーションバーで構成して、該蓋6を開口部7に一定の力で押し付けるようにしても良い。そして、前記開口部7の端面にはシール10として、環状溝内に保持されたOリングを設け、前記蓋6を閉止した際に該Oリングを圧接して密閉できるようになっている。
【0020】
また、図1及び図3に示すように、前記操作部11が前記支軸8を越えて前記蓋6に連続した押圧部であり、図2に示すように、前記押圧部11を押しローラ3で押し込むことにより、前記トーションばね9の弾性付勢力に抗して前記蓋6を開放する機構である。ここで、前記押しローラ3は、自動開閉装置の一部を構成し、前記ノズル4の操作装置と連動して自動制御され、立起状態に保持した前記遠心管2に装着した前記キャップ1の押圧部11を押しローラ3で下方へ押して、前記蓋6を上方へ回転させて開放し、開放した開口部7から前記ノズル4を差し込んで、内容物を分取分注するのである。前記遠心管2からノズル4を抜いて一連の作業が終わり、前記押しローラ3を上方へ移動させれば、前記トーションばね9の弾性付勢力によって前記蓋6は開口部7のOリング10に密着して閉止する。
【0021】
尚、本発明に係るキャップ1は、自動開閉装置と組合せて用いる以外にも、手作業で内容物を分取分注する場合にも有効である。つまり、前記片手で遠心管2を握り、その親指で押圧部11を下方に押して前記蓋6を開放することができるので、もう一方の手でピペットやスポイドを持って内容物を分取分注することができる。
【0022】
また、前記キャップ本体5を前記遠心管2の投入口12に装着する構造として、差込方式の嵌合構造を利用するものでも良い。また、本発明は、遠心管2自体の構造は変更せず、キャップのみを代えることにより、開閉を容易にして自動化に適応させることを意図しているが、勿論、前記遠心管2の投入口12の構造を変更し、前記キャップ本体5の機能を持たせても同様なものを実現することができる。
【0023】
次に、図示しないが、他の実施形態を簡単に説明する。先ず、前記操作部11が前記蓋6に連続した係止部であり、該係止部を引っ張ることにより、前記蓋6を開放する機構としても良い。その場合には、前記自動開閉装置は、押しローラ3の代わりに前記係止部に係止可能なフック部を備え、前記蓋6を引いて開放するようにする。
【0024】
また、更に他の実施形態としては、前記操作部11が前記支軸8の軸周りに前記蓋6を回転させるつまみであり、該つまみを回転させることにより、前記蓋6を開放する機構としても良い。
【0025】
そして、前述の実施形態では、蓋6を回動開閉する構造としたが、蓋6をキャップ本体5に対してスライド開閉する機構を採用することも可能である。つまり、前記キャップ本体5の開口部7の端面両側に、該開口部7の端面と平行に一対のガイドを設けるとともに、両ガイドに前記蓋6をスライド開閉可能に設け、前記蓋6の一部に前記操作部11として該蓋6をガイドに沿って移動するための係合部を設けるのである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】 遠心管に本発明のキャップを装着した実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】 遠心管に装着した本発明のキャップの蓋を、押しローラで操作部を押して開放し、ノズルを差し込んだ状態の説明用正面図である。
【図3】 遠心管に本発明のキャップを装着した状態の部分拡大断面図である。
【図4】 従来の遠心管にキャップを装着した状態を示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図5】 従来のTフラスコにキャップを装着した状態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図6】 従来の遠心管にキャップを装着した状態の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 キャップ
2 遠心管
3 押しローラ
4 ノズル
5 キャップ本体
6 蓋
7 開口部
8 支軸
9 弾性付勢手段(トーションばね)
10 シール(Oリング)
11 操作部(押圧部)
12 投入口
13 雄ネジ部
14 雌ネジ部
100 遠心管
101 キャップ
102 Tフラスコ
104 キャップ
105 投入口
106 雄ネジ部
107 雌ネジ部
108 蓋面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心管やTフラスコの投入口に装着するキャップであって、前記投入口に気密状態で螺着又は嵌着することが可能な開口部を備えたキャップ本体と、該キャップ本体の開口部を開閉する蓋とを備え、更に前記蓋でキャップ本体の開口部を閉止した状態で該蓋を開口部に一定の力で押し付ける弾性付勢手段と、前記蓋と開口部を密着させるシールと、前記蓋を開閉するために該蓋と連係させて設けた操作部とからなることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記キャップ本体の開口部の一側端部に、該開口部の端面に平行な支軸にて前記蓋を回動開閉可能に設けるとともに、前記弾性付勢手段として前記支軸にトーションばねを設け、又は前記支軸をトーションバーで構成してなる請求項1記載のキャップ。
【請求項3】
前記操作部が前記支軸を越えて前記蓋に連続した押圧部であり、該押圧部を押し込むことにより、前記蓋を開放する機構である請求項2記載のキャップ。
【請求項4】
前記操作部が前記蓋に連続した係止部であり、該係止部を引っ張ることにより、前記蓋を開放する機構である請求項2記載のキャップ。
【請求項5】
前記操作部が前記支軸の軸周りに前記蓋を回転させるつまみであり、該つまみを回転させることにより、前記蓋を開放する機構である請求項2記載のキャップ。
【請求項6】
前記キャップ本体の開口部の端面両側に、該開口部の端面と平行に一対のガイドを設けるとともに、両ガイドに前記蓋をスライド開閉可能に設け、前記蓋の一部に前記操作部として該蓋をガイドに沿って移動するための係合部を設けてなる請求項1記載のキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−239247(P2008−239247A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114822(P2007−114822)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(396007188)株式会社ジェイテック (15)
【Fターム(参考)】