説明

キャビネット

【課題】キャビネット本体内における洗面ボウル周辺のスペースに背の高い物品を収納することが可能なキャビネットを提供する。
【解決手段】本発明のキャビネット2は、キャビネット本体6と、このキャビネット本体6の上面に設けられた洗面ボウル9とを備え、キャビネット本体6が、洗面ボウル9の前方を覆う幕板14を備えている。キャビネット2は、幕板14の下部側を支点として当該幕板14を前後方向に揺動可能に支持する支持部40,42と、幕板14の後面に取り付けられた収納容器16とを備えている。収納容器16は、幕板14の下端よりも下方に位置する底壁部30と、幕板14の前方揺動によって洗面ボウル9の前方に露出する上端開口部33A,33Bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面所やキッチンに設置され、洗面ボウルやシンク等の水槽を備えたキャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗面所に設置されるキャビネットとして、内部に収納空間を有するキャビネット本体と、このキャビネット本体の上部に設けられた天板と、この天板に取り付けられた洗面ボウル(水槽)とを備えたものが知られている。このキャビネット本体の前面上部には、洗面ボウルを前方から覆う幕板が設けられ、この幕板の下側にはキャビネット本体内の収納空間を開閉する扉が設けられている。
【0003】
キャビネット本体は、主として洗面ボウルよりも下方のスペースが収納空間として利用されるが、キャビネット本体の内部には、洗面ボウルの周囲(前後左右)にもスペースが存在している。そのため、下記特許文献1には、洗面ボウルの周囲のスペースをも有効に利用するべく、当該スペースに引出を設ける技術が提案されている。この技術は、キャビネット本体内における洗面ボウルの左右両側方に前後方向に長い引出を前後移動自在に設け、幕板の一部を引出の前板として使用したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4168912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
洗面所で使用される化粧用品には、化粧水等のボトルやヘアスプレー等の缶のように背の高いものがあり、これらは収まりの良さや取り出しやすさ等の観点から立てた状態で収納しておくことが望まれる。
しかし、特許文献1に記載の引出は、前後方向に長く形成することはできても、幕板の上下方向の高さ以上に深く形成することはできず、ボトル等の背の高い容器を立てた状態で収納することができなかった。そのため、この引出に収納することができる化粧用品は、比較的小さいものや、倒した状態で収納しても差し支えのないものに限られていた。
【0006】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、洗面ボウル等の水槽の周囲に形成されたスペースに背の高い用品を収納することができるキャビネットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内部に収納空間を有するキャビネット本体と、このキャビネット本体の上面に設けられた水槽とを備え、キャビネット本体が、水槽の前方を覆う幕板を備えているキャビネットであって、幕板の下部側を支点として当該幕板を前後方向に揺動可能に支持する支持部と、幕板の後面に設けられた収納容器とを備え、収納容器が、幕板の下端よりも下方に位置する底壁部と、幕板の前方揺動によって水槽の前方に露出する上端開口部とを有していることを特徴とする。
【0008】
本発明のキャビネットは、幕板が下部側を支点として前後方向に揺動可能とされ、この幕板の前方揺動によって収納容器の上端開口部が水槽の前方に露出するように構成されているので、収納容器の深さを幕板の上下幅に限定されることなく設定することができる。そして、本発明の収納容器は、幕板の下端よりも下方に位置する底壁部を有しているので、化粧水等のボトルやスプレー缶等の背の高い用品を立てた状態でも収納することが可能となる。
【0009】
収納容器は、キャビネット本体内における水槽の左右方向一側部又は両側部の周辺スペースに配置されていることが好ましい。水槽の左右方向側部の周辺には比較的広いスペースが設けられるため、このスペースに収納容器を設けることによって当該収納容器の容量を増大することができる。
また、収納容器は、キャビネット本体内における水槽の左右一方の側部の周辺スペースのみに配置されていてもよいが、水槽の左右方向両側部の周辺スペースにそれぞれ配置されていてもよい。水槽の左右両側部の周辺スペースに収納容器を設けることでキャビネットの収納量を増大することができる。
【0010】
キャビネットは、幕板の後面に設けられた第2の収納容器をさらに備えていてもよく、この第2の収納容器は、前記収納容器よりも奥行き寸法が小さく、前記キャビネット本体内における水槽の前方スペースに配置されるとともに、幕板の前方揺動によって水槽の前方に露出する上端開口部を有していることが好ましい。この構成によって、水槽の左右方向側部の周辺よりも比較的奥行き方向のスペースが狭い水槽の前方スペースをも有効利用して物品を収納することが可能となる。
【0011】
また、前記収納容器は、前記キャビネット本体内の左右方向の幅全体、又は前記水槽の左右方向の幅全体に亘って設けられていてもよい。このようにすれば、キャビネット内のスペースをより広く有効に利用することができる。
【0012】
収納容器は、幕板に着脱可能に取り付けられていてもよい。このような構成によって、収納容器が汚れたときには取り外して洗浄することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のキャビネットによれば、洗面ボウル等の水槽の周囲のスペースに背の高い用品を収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るキャビネットの概略的な斜視図である。
【図2】同キャビネットの概略的な斜視図である。
【図3】キャビネットの内部を示す正面図である。
【図4】キャビネットの側面図(一部断面図)である。
【図5】(a)は、第1収納容器の正面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図6】(a)は、第2収納容器の正面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【図7】幕板及び第1,第2収納容器を拡大して示す断面図である。
【図8】幕板及び第1,第2収納容器を拡大して示す断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るキャビネットの概略的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係るキャビネットの概略的な斜視図である。キャビネット2は、内部に収納空間が形成され、前面に収納空間を開閉する開き扉4が設けられたキャビネット本体6と、このキャビネット本体6の上部に設けられた天板8と、この天板8に設けられた洗面ボウル(水槽)9とを備えている。
【0016】
開き扉4は、左右2枚設けられ、各開き扉4は、左右外側の一側部がキャビネット本体6の左右側壁10の前端部にヒンジ(図示略)を介して回動可能に支持されている。各開き扉4の前面上部には取っ手12が取り付けられている。
【0017】
キャビネット本体6の前面であって開き扉4の上側には幕板14が設けられており、この幕板14は、キャビネット本体6内において洗面ボウル9が前方に露出しないように、当該洗面ボウル9を前方から覆っている。幕板14は、キャビネット本体6の全幅に亘る左右方向の幅と、洗面ボウル9を前方から覆うことが可能な上下方向の幅とを有している。したがって、幕板14は、左右方向に細長い長方形の帯板状に形成されている。
また、図2に示すように、幕板14は、上部側を前方に倒すように揺動させることによって開くことが可能となっている。幕板14の後面には、幕板14を開いたときに、洗面ボウル9の前側に露出する第1収納容器16および第2収納容器18が設けられている。
【0018】
以下、洗面ボウル9および収納容器16,18についてより詳細に説明する。
図3は、キャビネット2の内部を示す正面図である。同図において、開き扉4や幕板14は2点鎖線で示してある。また、図4は、キャビネット2の側面図(一部断面図)である。図3に示すように、洗面ボウル9は、左右方向外端部から左右方向中央へ向けて漸次深くなるように形成されている。また、図4に示すように、洗面ボウル9は、前端部から後側へ向けて漸次深くなるように形成され、後部側が最も深く形成されている。なお、キャビネット本体6の前部には、幕板14と開き扉4との境界部分に沿うように左右側壁10に亘って横桟20が架設されている。
【0019】
図3に示すように、第1収納容器16は、洗面ボウル9の左右両側部の周辺スペース、具体的には、洗面ボウル9の左右両側の浅く形成された部分の下方、およびそれよりも左右外方に位置するように2つ設けられている。各第1収納容器16は、それぞれ正面視で横桟20を上下に跨ぐように配置されている。また、各第1収納容器16は、図4の側面視において、洗面ボウル9の前部側の浅く形成された部分の下方に位置するように設けられている。
【0020】
図5(a)は、第1収納容器16の正面図であり、図5(b)は(a)のA−A断面図である。第1収納容器16は、前部側の小容器22と、後部側の大容器24とから構成されている。小容器22は、底壁部26及び周壁部27を備え、上端に開口部33Aを備えた箱型に形成されている。また、大容器24は、底壁部30及び周壁部31を備え、上端に開口部33Bを備えた箱型に形成されている。小容器22は、横桟20の上側に配置され、幕板14の上下幅内に収まる深さに形成されている。大容器24は、小容器22および横桟20の後側に配置されている。大容器24は、小容器22よりも深く形成され、その底壁部30が幕板14の下端よりも下方に位置している。また、大容器24は、小容器22よりも前後方向の幅が大きく形成されている。第1収納容器16の上端開口部33A,33Bの周縁は、幕板14の開放時に洗面ボウル9との干渉を避けるため、後下がり状に傾斜している。
【0021】
図3に示すように、第2収納容器18は、洗面ボウル9の左右中央部の前方スペースであって、横桟20の上側に配置されている。また、第2収納容器18は、左右の第1収納容器16の間に配置され、左右の第1収納容器16の間隔を埋め尽くす程度の左右方向の長さを有している。第1収納容器16と第2収納容器18との上端位置はほぼ同位置とされている。但し、第1収納容器16と第2収納容器18の上端位置は、互いに異なっていてもよく、洗面ボウル9との位置関係等に応じて適宜設定することができる。例えば、本実施形態の場合、第1収納容器16の後方において洗面ボウル9が浅くなっているので、この第1収納容器16の上端位置を第2収納容器18よりも高くすることができる。
【0022】
図6(a)は、第2収納容器18の正面図であり、図6(b)は(a)のB−B断面図である。第2収納容器18は、底壁部34及び周壁部35を備え、上端に開口部36を備えた箱型に形成されている。また、第2収納容器18は、幕板14の上下幅内に収まる深さに形成されている。第2収納容器18の前後方向の幅は、第1収納容器16の小容器22の前後方向の幅よりも若干大きく形成されている。
【0023】
図7および図8は、幕板14及び第1,第2収納容器16,18を拡大して示す断面図であり、特に図7は幕板14を閉じた状態、図8は幕板14を開いた状態を示している。第1収納容器16及び第2収納容器18の前面には、下向きのフック形状に形成された係合部37が突設されている(図5及び図6も参照)。また、幕板14の後面には、係合部37を挿入可能な凹溝状の被係合部38が設けられている。この係合部37と被係合部38との係合によって、第1,第2収納容器16,18が幕板14に対して着脱可能に取り付けられている。
【0024】
幕板14の左右方向両側の下部側は、キャビネット本体6の横桟20にヒンジ40を介して取り付けられている。また、幕板14の左右方向両側の上部側は、キャビネット本体6の左右側壁10に支持リンク42を介して支持されている。幕板14は、ヒンジ40によって下部側を支点として前後に揺動(回動)可能であり、図8に示すように、幕板14を前方に揺動することによって、第1,第2収納容器16,18の上端開口部33A,33B,36が洗面ボウル9の前方に露出し、前斜め上方に向けて開放されるようになっている。支持リンク42は、幕板14の前後揺動に追従して屈伸し、幕板14の前方への揺動量を所定に規制している。ここに、ヒンジ40および支持リンク42は、幕板14を揺動可能に支持する支持部を構成している。
【0025】
以上説明したように、本実施形態のキャビネット2は、幕板14が下部側を支点として前後に揺動可能であり、幕板14を前方に揺動することによって第1,第2収納容器16,18の上端開口部33,36が洗面ボウル9の前方に露出されるので、従来(特許文献1参照)の引出のように、幕板14の上下幅に限定されることなく第1収納容器16の深さを設定することができる。そして、第1収納容器16の大容器24は、底壁部30が幕板14の下端よりも下方に位置するように深く形成されているので、化粧水等のボトルやヘアスプレー等の缶のように背の高い化粧用品50を収納することができる。
また、第1収納容器16の小容器22は、大容器24よりも浅く前後幅も小さく形成されているので背の低い容器に入った化粧品51や、ヘアピン等の小物を収納するのに適している。
第2収納容器18は、第1収納容器16の大容器24よりも浅く前後幅も小さく形成されているので、小容器22と同様に、背の低い容器に入った化粧用品やヘアピン等の小物を収納するのに適している。また、第2収納容器18は、小容器22よりも左右方向の幅が長く形成されているので、ヘアブラシ等の細長い化粧用品の収容にも適している。
【0026】
幕板14の後側には横桟20が設けられているため、少なくとも横桟20の厚さの分だけ幕板14から後方に離れた位置にしか深い収納容器(大容器24)を配置することができないが、本実施形態の第1収納容器16は、幕板14と大容器24との間に浅い小容器22を備えているので、幕板14と大容器24との間の狭いスペースを小物用の収納部として有効に活用することができる。
【0027】
キャビネット本体6内において、洗面ボウル9の左右両側部の周辺には、左右中央の周辺よりも広いスペースが形成されているため、この広いスペースに第1収納容器16を配置することで当該第1収納容器16の容量を大きくすることができる。また、第1収納容器16の小容器22及び第2収納容器18は、キャビネット本体6の左右方向の広範囲に亘って小物用の収納部分を形成しているので、洗面ボウル9の前方のスペースを無駄なく利用することができる。
【0028】
第1,第2収納容器16,18は、幕板14に対して着脱可能とされているので、第1,第2収納容器16,18が汚れたときには幕板14から取り外すことによって容易に洗浄することができる。
【0029】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく適宜設計変更可能である。
第1収納容器16は、洗面ボウル9の形状や、洗面ボウル9とキャビネット本体6の左右側壁10との間隔に応じて形状や配置を適宜変更することができる。例えば、洗面ボウル9が、左右一側部において浅く、左右他側部に向けて漸次深くなるように形成されている場合には、当該一側部側のみに第1収納容器16を設けてもよい。また、洗面ボウルの左右一側部近傍に第1収納容器16を設け、左右他側部には従来技術のような引出タイプの収納容器を設けてもよい。
【0030】
幕板14は、図9に示すように、第1,第2収納容器16,18が取り付けられた部分を個別に開閉できるように左右方向に分割されていてもよい。
本発明は、洗面ボウルを備えたキャビネットに限定されず、例えば、キッチンに設置されるシンクを備えたキャビネットにも適用することができる。
また、上記実施形態では、第1収納容器16と第2収納容器18との2種類の別体の収納容器を備えているが、キャビネット本体6内の左右方向の幅全体、又は、洗面ボウル9の左右方向の幅全体に亘る長さの1つの収納容器を備えた構成とすることも可能である。この場合、収納容器は、洗面ボウル9の前方スペースにおいては、奥行き寸法を小さくしなければならないが、深さを深くすることができるので、細長い用品や薄い用品(例えば、キッチンで使用するまな板や包丁など)を収納するのに適している。
【符号の説明】
【0031】
2 キャビネット
6 キャビネット本体
14 幕板
16 第1収納容器
18 第2収納容器
30 底壁部
33A 第1収納容器の上端開口部
33B 第1収納容器の上端開口部
36 第2収納容器の上端開口部
40 ヒンジ(支持部)
42 支持リンク(支持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収納空間を有するキャビネット本体と、このキャビネット本体の上面に設けられた水槽とを備え、前記キャビネット本体が、前記水槽の前方を覆う幕板を備えているキャビネットであって、
前記幕板の下部側を支点として当該幕板を前後方向に揺動可能に支持する支持部と、
前記幕板の後面に設けられた収納容器とを備え、
前記収納容器が、前記幕板の下端よりも下方に位置する底壁部と、前記幕板の前方揺動によって前記水槽の前方に露出する上端開口部とを有していることを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記収納容器が、前記キャビネット本体内における前記水槽の左右方向一側部又は両側部の周辺スペースに配置されている請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記幕板の後面に設けられた第2の収納容器をさらに備え、この第2の収納容器は、前記収納容器よりも奥行き寸法が小さく、前記キャビネット本体内における前記水槽の前方スペースに配置されるとともに、前記幕板の前方揺動によって前記水槽の前方に露出する上端開口部を有している請求項2に記載のキャビネット。
【請求項4】
前記収納容器が、前記キャビネット本体内の左右方向の幅全体、又は前記水槽の左右方向の幅全体に亘って設けられていることを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。
【請求項5】
前記収納容器が前記幕板に着脱可能に取り付けられている請求項1〜4のいずれかに記載のキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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