説明

キャリア、静電荷像現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】濃度ムラが抑制されるキャリアを提供すること。
【解決手段】キャリア本体と、
前記キャリア本体の表面を被覆した最表面層であって、厚み100nm以上500nm以下で、フッ素樹脂を含んで構成される最表面層と、を有し、光電子分光分析(XPS)によりキャリアの表面における炭素原子、酸素原子及びフッ素原子の量を測定したとき、前記フッ素原子の量が50原子%以上90原子%以下である、キャリア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア、静電荷像現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電潜像を経て画像情報を可視化する電子写真法は、現在さまざまな分野で利用されている(例えば、特許文献1、2等)
【0003】
例えば、特許文献3には、フッ素樹脂を含有する樹脂被覆層を有するキャリアと、トナー粒子とを混合し、トナー粒子表面のフッ素濃度が4〜8%になるように、転移させた2成分現像剤が提案されている。
また、特許文献4には、キャリア表面とトナー表面との両方のフッ素化合物被服率を制御することにより、トナーとキャリアの非静電的な付着力を低下させ、長期間に渡って画質濃度を安定化させた2成分現像剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第2297691号明細書
【特許文献2】米国特許第2357809号明細書
【特許文献3】特許平8−328295号公報
【特許文献4】特開2009−25487公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、光電子分光分析(XPS)によるフッ素原子量が下記範囲で、且つ下記範囲の厚みを持ち、フッ素樹脂を含んで構成される最表面層を有さない場合に比べ、濃度ムラが抑制されるキャリアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
キャリア本体と、
前記キャリア本体の表面を被覆した最表面層であって、厚み100nm以上500nm以下で、フッ素樹脂を含んで構成される最表面層と、
を有し、
光電子分光分析(XPS)によりキャリアの表面における炭素原子、酸素原子及びフッ素原子の量を測定したとき、前記フッ素原子の量が50原子%以上90原子%以下である、キャリア。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記最表面層の厚みが100nm以上400nm以下で、且つ前記フッ素原子の量が60原子%以上90原子%以下である請求項1に記載のキャリア。
【0008】
請求項3に係る発明は、
前記キャリア本体が、表面粗さRaが0.1以上1.0以下の芯材と、前記芯材の表面を被覆し、樹脂の引っかき強度試験における引っ掻き線幅が20μm以上120μm以下の樹脂被覆層と、を有する請求項1又は2に記載のキャリア。
【0009】
請求項4に係る発明は、
静電荷像現像用トナーと、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキャリアと、を含む静電荷像現像剤。
【0010】
請求項5に係る発明は、
前記静電荷像現像用トナーが、トナー粒子と、体積平均粒径100nm以上300nm以下の外添剤と、を含む請求項4に記載の静電荷像現像剤。
【0011】
請求項6に係る発明は、
請求項4又は5に記載の静電荷像現像剤を収納し、
画像形成装置に着脱される現像剤カートリッジ。
【0012】
請求項7に係る発明は、
請求項4又は5に記載の静電荷像現像剤を収納し、潜像保持体の表面に形成された静電潜像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱に装着されるプロセスカートリッジ。
【0013】
請求項8に係る発明は、
潜像保持体と、
潜像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記帯電された潜像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
請求項4又は5に記載の静電荷像現像剤を収納し、前記潜像保持体の表面に形成された静電潜像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記潜像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体上に転写する転写手段と、
前記被転写体上に転写されたトナー像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、光電子分光分析(XPS)によるフッ素原子量が下記範囲で、且つ下記範囲の厚みを持ち、フッ素樹脂を含んで構成される最表面層を有さない場合に比べ、濃度ムラが抑制される。
請求項2に係る発明によれば、光電子分光分析(XPS)によるフッ素原子量が下記範囲で、且つ下記範囲の厚みを持ち、フッ素樹脂を含んで構成される最表面層を有さない場合に比べ、濃度ムラが抑制される。
請求項3に係る発明によれば、表面粗さRaが上記範囲の芯材と引っ掻き線幅が上記範囲の樹脂被覆層とで構成されたキャリア本体を適用しない場合に比べ、濃度ムラが抑制される。
請求項4に係る発明は、光電子分光分析(XPS)によるフッ素原子量が下記範囲で、且つ下記範囲の厚みを持ち、フッ素樹脂を含んで構成される最表面層を有するキャリアを適用しない場合に比べ、濃度ムラが抑制される。
請求項5に係る発明によれば、体積平均粒径が上記範囲の外添剤を適用しない場合に比べ、かぶりが抑制される。
請求項6、7、8に係る発明によれば、光電子分光分析(XPS)によるフッ素原子量が下記範囲で、且つ下記範囲の厚みを持ち、フッ素樹脂を含んで構成される最表面層を有するキャリアを適用しない場合に比べ、濃度ムラが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のキャリア、静電荷像現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ及び画像形成装置の一例である実施形態について詳細に説明する。
【0017】
<キャリア>
本実施形態に係るキャリアは、キャリア本体と、キャリア本体の表面を被覆した最表面層であって、厚み100nm以上500nm以下で、フッ素樹脂を含んで構成される最表面層と、を有し、光電子分光分析(XPS)によりキャリアの表面における炭素原子、酸素原子及びフッ素原子の量を測定したとき、フッ素原子の量が50原子%以上90原子%以下である。
【0018】
従来、トナーとキャリアの非静電的な付着を低減させる目的で、芯材を被覆する樹脂被覆層にフッ素樹脂を含有させる等してキャリアの表面にフッ素樹脂を存在させた現像剤(上記特許文献3、4参照)では、フッ素樹脂は表面エネルギーが低く、付着した外添剤が遊離するため、キャリアへの外添剤の付着が抑制される。しかし、被転写体1枚当たりの画像エリアカバレッジが例えば20%を超えるような、トナー消費量が多い画質パターンのプリントが長期に渡って続くと、キャリアへの外添剤の付着量が増大し、キャリア表面に存在するフッ素樹脂が他の樹脂に比べ柔らかいために、付着した外添剤が遊離する前に、現像装置の攪拌等の力により、キャリア(その芯材を被覆する樹脂被覆層)に埋没し易くなる。そして、この現象が繰り返されると、キャリアのフッ素樹脂で部分的に被覆された領域に外添剤が選択的に埋没することになり、部分的にキャリアの抵抗が変化してしまい、画像の濃度ムラが生じ易くなる。
【0019】
これに対して、本実施形態に係るキャリアでは、キャリアの最表面層として、フッ素樹脂が含まれる層を、厚み100nm以上500nm以下で、且つ上記光電子分光分析(XPS)によるフッ素原子の量50原子%以上90原子%以下となるように形成することで、画像の濃度ムラが抑制され、特に画像エリアカバレッジ高く、トナー消費量が多くなるベタ画像(ソリッド画像)の濃度ムラが抑制される。
【0020】
ここで、上記範囲の厚みで、且つ上記範囲の光電子分光分析(XPS)によるフッ素原子の量となるように、フッ素樹脂を含む最表面層が形成されているとは、当該最表面層が薄膜でキャリア本体の表面に満遍なく被覆されていることを意味する。この状態のフッ素樹脂を含む最表面層を持つキャリアでは、上記如くトナースループット量(トナー消費量)が多くなり、キャリア表面へ付着する外添剤が増大しても、他の樹脂に比べ柔らかいフッ素樹脂を含む最表面層が上記範囲の厚みを持つ層であることから、その下層の樹脂被覆層の硬さの影響を受けやすくなるため、外添剤が埋没する量自体が低減されると共に、当該最表面層がキャリア本体表面を満遍なく覆っていることから選択的に埋没し難くなると考えられる。このため、キャリアの抵抗が局所的に変化するほど、外添剤が埋没することが抑制されることから、本実施形態では、画像の濃度ムラが抑制されると考えられる。
【0021】
また、本実施形態に係るキャリアでは、最表面層は薄膜で且つフッ素樹脂で構成されることから、変形し易く、当該変形により最表面層に埋没した外添剤がキャリア表面に露出し易くなると考えられる。キャリア表面に埋没した外添剤が露出すると、外添剤が遊離・離脱したことで生じるトナー粒子露出部へ移行し易くなると考えられる。これは、最表面がフッ素樹脂で構成されているためトナー粒子露出部が外添剤に対してキャリアよりも付着力が強いためであると考えられる。そして、外添剤の移行(再付着)により、トナー母粒子露出によるトナー帯電量(CSG)のブロード化(平坦化)を抑制される結果、逆帯電するトナー粒子も発生し難くなると考えられることから、本実施形態では、かぶりの発生も抑制される。
【0022】
以下、本実施形態に係るキャリアの構成について詳細に説明する。
【0023】
まず、最表面層について説明する。
最表面層は、フッ素樹脂を含んで構成されている。
フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリエチレン・テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、又はフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。これらの中でも、フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好適に挙げられる。
フッ素樹脂の重量分子量は、例えば、3,000以上250,000以下であることがよく、望ましくは6,000以上200,000以下である。
【0024】
最表面層の厚みは、100nm以上500nm以下であるが、望ましくは100nm以上400nm以下であり、より望ましくは150nm以上350nm以下である。この厚みを上記範囲とすることで、最表面層への外添剤の埋没量の低減が図れる。
ここで、この厚みの測定は、次のように行う。キャリア粒子をダイヤモンドナイフで切削し、透過型電子顕微鏡などで切断画像を取り込み、画像解析により測定する。
【0025】
最表面層は、光電子分光分析(XPS)によりキャリアの表面における炭素原子、酸素原子及びフッ素原子の量を測定したとき、フッ素原子の量が50原子%以上90原子%以下となるように形成されている。このフッ素原子の量は、望ましくは60原子%以上90原子%以下であり、より望ましくは70原子%以上90原子%以下である。このフッ素原子の量を上記範囲とすることで、最表面層、即ちフッ素樹脂がキャリア本体表面を満遍なく覆っていることから、外添剤が選択的に埋没し難くなる。
ここで、光電子分光分析(XPS)によるフッ素原子の量は、次のように測定される。X線光電子分光分析装置(日本電子(株)社製のJPS9000MX)を用い、加速電圧20kv、電流値10mAで測定する。
【0026】
ここで、上記範囲の厚みで、且つ上記範囲の光電子分光分析(XPS)によるフッ素原子の量となるように、フッ素樹脂を含む最表面層をキャリア本体の表面に形成する方法としては、例えば、キャリア本体を作製した後、キャリア本体の表面にフッ素樹脂をせん断力を利用して被覆する手法を採用することがよい。この手法に採用する装置としては、例えば、ノビルター(例えば、ノビルタNOB130:ホソカワミクロン製など)が挙げられる。ノビルターは、材料を入れる自由空間(クリアランス)を狭くすることで、他の方式に比べ材料に高い圧力をかけながら攪拌する攪拌装置である。
【0027】
ここで、上記手法を採用する場合における、ノビルターの設定条件は、クリアランスの大きさが例えば0.1mm以上3cm以下(望ましくは0.3mm以上1cm以下)であり、攪拌回転数が例えば500rpm以上6000rpm以下(望ましくは1000rpm以上3500rpm以下)とすることがよい。
【0028】
次に、キャリア本体について説明する。
キャリア本体としては、芯材と芯材の表面を被覆する樹脂被覆層とを有する樹脂被覆キャリア、マトリクス樹脂に導電材料等が分散された樹脂分散型キャリア等が挙げられるが、樹脂被覆キャリアがよい。
【0029】
特に、キャリア本体としては、表面粗さRaが0.1μm以上1.0μm以下(望ましくは0.1μm以上0.8μm以下、より望ましくは0.1μm以上0.6μm以下)の芯材と、前記芯材の表面を被覆し、樹脂の引っかき強度試験における引っ掻き線幅が20μm以上120μm以下(望ましくは20μm以上100μm以下、より望ましくは20μm以上80μm以下)の樹脂被覆層と、を有する樹脂被覆キャリアであることがよい。
表面粗さRaがこの範囲であると被覆樹脂との密着性が向上し、剥がれにくくなるため帯電量の低下が抑制され、かぶりの発生が抑制される。また、樹脂の引っかき強度試験における引っ掻き線幅が上記範囲であると被覆樹脂の硬度が適当で、キャリアに対する衝撃等のストレスに耐えられるため、剥がれにくくなり、そのためかぶりの発生が抑制される。
なお、表面粗さRaの制御はキャリアの芯材の焼結時の温度、時間により制御され、温度が高く、時間が長いほど表面粗さRaは小さくなる。
また、樹脂の引っかき強度試験における引っ掻き線幅の制御は、樹脂の種類により制御でき、フッ素樹脂との密着性が高いほど線幅は小さくなる。より具体的には極性の低い官能基を有する樹脂が好ましく、より好ましくはシクロアルキル基を有する樹脂を含むものがよい。
【0030】
ここで、芯材の表面粗さRaは次のように測定される。JIS B0601に準拠して超深度カラー3D形状測定顕微鏡(VK−9500、キーエンス社製)により測定した。
【0031】
また、樹脂被覆層の樹脂の引っかき強度試験における引っ掻き線幅は、次のように測定される。まず、測定対象の樹脂を溶剤に溶解させた後、艶消しステンレス基材にキャストし、これを乾燥した後、フッ素樹脂をさらに拭きつけ加熱し、膜厚300〜800μmの評価用試料を作製した。これを引っかき強度試験機(トライボギア、新東科学社製)にセットし、使用針No7、荷重100gとして針移動速度1500mm/分、移動幅50mmの条件で引っかき試験を行い、引っかき傷の線幅を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡(VK−9500、キーエンス社製)により測定した。
【0032】
以下、キャリア本体の構成材料について説明する。
芯材としては、例えば磁性金属(例えば鉄、ニッケル、コバルト等)、磁性酸化物(例えばフェライト、マグネタイト等)、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に適用する場合、磁性材料であることがよい。芯材の体積平均粒径としては、10μm以上500μm以下の範囲がよい。
コア粒子としてフェライト芯材を用いる場合、フェライト芯材の製造方法の例としては、まず各酸化物を適量配合し、湿式ボールミルなどで粉砕、混合し、スプレードライヤなどで造粒、乾燥させた後、ロータリーキルンなどを用いて仮焼成する。仮焼成品を水に分散させ湿式ボールミルなどで粉砕を行う。スラリをスプレードライヤなどを用いて造粒乾燥し、酸素濃度をコントロールしながら本焼成する。コア粒子の仮焼成、本焼成前の湿式粉砕時間および本焼成条件を調整すればよい。
【0033】
被覆樹脂・マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等、ウレア樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0034】
導電材料としては、金属(例えば金、銀、銅)、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ等が挙げられる。
【0035】
ここで、キャリアの芯材の表面に樹脂被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。具体的な樹脂被覆方法としては、キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中で芯材と被覆層形成溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法が挙げられる。
【0036】
<本実施形態に係る静電荷像現像剤(以下、「現像剤」と略す場合がある)は、静電荷像現像用トナー(以下、「トナー」と称する)と、上記本実施形態に係るキャリアと、を含む。なお、トナーとキャリアとの混合比(質量比)としては、例えば、トナー:キャリア=1:100から30:100までの範囲がよく、望ましくは3:100から20:100までの範囲である。
【0037】
以下、トナーについて説明する。
トナーとしては、例えば、トナー粒子と外添剤とを含んで構成されている。
【0038】
トナー粒子としては、特に制限はなく、結着樹脂と、着色剤と、離型剤と、必要に応じてその他成分とを含有してなる。
【0039】
結着樹脂としては、特に制限はないが、ポリスチレン、スチレンーアクリル酸アルキル共重合体、スチレンーメタクリル酸アルキル共重合体、スチレンーアクリロニトリル共重合体、スチレンーブタジエン共重合体、スチレンー無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックスなど公知の材料が挙げられる。これらの中でもスチレン−アクリル共重合体、ポリエステルがよい。
【0040】
結着樹脂の数平均分子量(Mn)は、例えば、2500以上20000以下がよく、望ましくは4000以上15000以下である。
結着樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、9000以上90000以下がよく、望ましくは12000以上60000以下である。
結着樹脂の軟化温度(Tm)は、例えば、60℃以上120℃以下がよく、望ましくは80℃以上100℃以下である。
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、45℃以上70℃以下がよく、望ましくは50℃以上60℃以下である。
【0041】
ここで、結着樹脂の分子量(Mn、Mw)は、東ソー製GPC:HLC8120GPCを用いて測定した。また、軟化温度(Tm)は、島津製作所製フローテスター:CFT500Cを用いて測定した。ガラス転移温度(Tg)は、島津製作所製DSC:DSC60を用いて測定した。
【0042】
着色剤としては、公知の有機又は無機の顔料や染料、又は油溶性染料が挙げられる。
例えば黒顔料としてはカーボンブラック、磁性粉等が挙げられる。
黄色顔料としては、例えば、ハンザイエロー、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントイエローNCG等が挙げられる。
赤色顔料としては、ベンガラ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ等が挙げられる。
青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレートなどが挙げられる。
また、これら着色剤は、混合し、更には固溶体の状態で使用してもよい。
着色剤の含有量は、トナー粒子を構成する成分のうち、例えば、2質量%以上15質量%以下の範囲がよく、望ましくは3質量%以上10質量%以下の範囲である。
【0043】
離型剤としては、特に制限はないが、例えば、石油ワックス、鉱物ワックス;動植物ワックス;ポリオレフィンワックス、酸化ポリオレフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;等が挙げられる。離型剤の融点は、例えば40℃以上150℃以下がよく、望ましくは50℃以上120℃以下である。
離型剤の含有量は、トナー粒子を構成する成分のうち、例えば、1質量%以上10質量%以下の範囲がよく、望ましくは2質量%以上8質量%以下の範囲である。
【0044】
その他成分としては、例えば、内添剤、帯電制御剤、無機粉体(無機粒子)等の種々の成分が挙げられる。
内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、又はこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。
帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩からなる群より選ばれる化合物:極性基を含有したレジンタイプの帯電制御剤:等が挙げられる。
無機粒子としては、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、あるいはこれらの表面を疎水化処理した粒子等、公知の無機粒子が挙げられる。これら無機粒子は、種々の表面処理を施されてもよく、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものがよい。
【0045】
トナー粒子の体積平均粒径は、例えば4μm以上15μm以下であり、望ましくは5μm以上10μm以下である。
なお、上記体積平均粒子径の測定は、マルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で行う。この際、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行う。
【0046】
次に、外添剤について説明する。
外添剤としては、無機粒子等、周知の外添剤が挙げられる。これらの中でも、特に、体積平均粒径が50nm以上300nm以下(望ましくは50nm以上250nm以下であり、さらに望ましくは80nm以上200nm以下)である無機粒子を採用することがよい。
上記範囲の体積平均粒径を持つ無機粒子は、トナー粒子に埋まり込み難いものの、トナー粒子から離脱し、キャリアへ移行し易い粒子であるが、キャリアとして上記本実施形態に係るキャリアを適用すると、キャリアへ移行しても当該キャリアに埋没し難く離脱し易いことから、再び、トナー粒子露出部へ再付着し易くなると考えられる。このため、上述のように、外添剤の移行(再付着)により、トナー粒子露出によるトナー帯電量(CSG)のブロード化(平坦化)を抑制される結果、逆帯電するトナー粒子も発生し難くなると考えられることから、本実施形態では、かぶりの発生も抑制される。
なお、外添剤としては、上記範囲の体積平均粒径を持つ無機粒子と、それ以外の範囲の体積平均粒径を持つ無機粒子と、を併用してもよい。
【0047】
ここで、体積平均粒径の測定は、レーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700:堀場製作所製)を用いて測定を行う。測定法としては、分散液となっている状態の試料を固形分で2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、40mlにする。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、2分待って、セル内の濃度が安定になったところで測定する。得られたチャンネルごとの体積平均粒径を小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均粒径とする。
【0048】
無機粒子としては、例えば、無機酸化物粒子が代表的なものとして挙げられる。無機酸化物粒子としては、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO)n、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が挙げられる。これらのうち、特にシリカ粒子、チタニア粒子がよい。
【0049】
無機粒子は、表面が疎水化処理が施されていてもよい。
疎水化処理は、疎水化処理剤に無機粒子を浸漬等することにより行われる。
疎水化処理剤としては特に制限はないが、例えば、シランカップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シランカップリング剤が好適に挙げられる。
疎水化処理剤の量としては、通常無機酸化物粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部程度である。
【0050】
ここで、無機粒子としてシリカ粒子を採用する場合、、シリカ粒子として単分散球状シリカ粒子を採用すことがよい。その理由は、一般的なフュームドシリカは真比重2.2であり、粒径的にも最大50nmが製造上から限界だからである。また、凝集体として粒径を上げることはできるが、均一分散、安定したスペーサー効果が得られない。単分散球形シリカは、単分散かつ球形であるためトナー粒子表面に均一に分散し、安定したスペーサー効果を得ることができる。
なお、上記単分散の定義としては、凝集体を含め平均粒径に対する標準偏差で議論することができ、標準偏差として個数平均粒径×0.22以下であることが好ましい。また、本発明における球形の定義としては、Wadellの球形化度で議論され、球形化度が0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。
【0051】
単分散球状シリカ粒子は、湿式法であるゾルゲル法により得ることができる。単分散球状シリカ粒子の粒径は、ゾルゲル法の加水分解、縮重合工程のアルコキシシラン、アンモニア、アルコール、水の重量比、反応温度、撹拌速度、供給速度により自由に制御することができる。単分散、球状形状も本手法にて作製することにより達成することができる。
具体的には、テトラメトキシシランを水、アルコールの存在下、アンモニア水を触媒として温度をかけながら滴下、撹拌を行う。次に、反応により得られたシリカゾル懸濁液の遠心分離を行い、湿潤シリカゲルとアルコールとアンモニア水とに分離する。湿潤シリカゲルに溶剤を加え再度シリカゾルの状態にし、疎水化処理剤を加え、シリカ表面の疎水化を行う。疎水化処理剤としては、一般的なシラン化合物を用いることができる。次に、この疎水化処理シリカゾルから溶媒を除去、乾燥、篩分することにより、目的の単分散球状シリカを得ることができる。また、このようにして得られたシリカに再度処理を行っても構わない。なお、単分散球状シリカの製造方法は、前記製造方法に限定されるものではない。
【0052】
次に、トナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、凝集・合一法、懸濁重合法、溶解懸濁造粒法、溶解懸濁法、溶解乳化凝集合一法などの、酸性やアルカリ性の水系媒体中でトナー粒子を生成する湿式製法で製造されることが好適であるが、特に凝集合一法がよい。
【0053】
具体的には、トナー粒子に着色剤及び離型剤を含有する場合、例えば、第1の樹脂を分散した樹脂分散液と、着色剤を分散した着色剤分散液と、離型剤を分散した離型剤散液とを混合し第1の樹脂と着色剤粒子とを含むコア凝集粒子を形成する第1の凝集工程と、コア凝集粒子の表面に第2の樹脂を含むシェル層を形成しコア/シェル凝集粒子を得る第2の凝集工程と、コア/シェル凝集粒子を第1の樹脂又は第2の樹脂のガラス転移温度以上に加熱し融合・合一する融合・合一工程を含む方法によりトナー粒子が製造される。
【0054】
第1の凝集工程においては、まず、樹脂分散液と、着色剤分散液と、離型剤分散液とを準備する。樹脂分散液は、乳化重合などによって作製した第1の樹脂を、イオン性界面活性剤を用いて溶媒中に分散させることにより調製する。着色剤分散液は、樹脂分散液の作製に用いたイオン性界面活性剤と反対極性イオン性界面活性剤を用いて、黒色、青色、赤色、黄色等の所望の色の着色剤を溶媒中に分散させることにより調製する。また、離型剤粒子分散液は、離型剤を、水中にイオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに強い剪断をかけられるホモジナイザーや圧力吐出型分散機により粒子化することにより調製する。
【0055】
次に、樹脂分散液と着色剤分散液と離型剤分散液とを混合し、第1の樹脂と着色剤と離型剤とをヘテロ凝集させ所望のトナー径に近い径を持つ、第1の樹脂と着色剤と離型剤とを含む凝集粒子(コア凝集粒子)を形成する。
【0056】
第2の凝集工程は、第1の凝集工程で得られたコア凝集粒子の表面に、第2の樹脂を含む樹脂分散液を用いて、第2の樹脂を付着させ、所望の厚みの被覆層(シェル層)を形成することによりコア凝集粒子表面にシェル層が形成されたコア/シェル構造も持つ凝集粒子(コア/シェル凝集粒子)を得る。なお、この際用いる第2の樹脂は、第1の樹脂と同じであってもよく、異なったものであってもよい。
【0057】
また第1及び第2の凝集工程において用いられる、第1の樹脂、第2の樹脂、着色剤、離型剤の粒子径は、トナー径及び粒度分布を所望の値に調整するのを容易とするために、1μm以下であることが好ましく、100nm以上300nm以下の範囲内であることがより好ましい。
【0058】
第1の凝集工程においては、樹脂分散液や着色剤分散液に含まれる2つの極性のイオン性界面活性剤(分散剤)の量のバランスを予めずらしておいてもよい。例えば、硝酸カルシウム等の無機金属塩、もしくは硫酸バリウム等の無機金属塩の重合体を用いてこれをイオン的に中和し、第1の樹脂のガラス転移温度以下で加熱してコア凝集粒子が作製される。
【0059】
上記の場合、第2の凝集工程においては、上記した2つの極性の分散剤のバランスのずれを補填する極性及び量の分散剤で処理された樹脂分散液を、コア凝集粒子を含む溶液中に添加し、さらに必要に応じてコア凝集粒子又は第2の凝集工程において用いられる第2の樹脂のガラス転移温度以下でわずかに加熱してコア/シェル凝集粒子が作製される。なお、第1及び第2の凝集工程は、段階的に複数回に分けて繰り返し実施したものであってもよい。
【0060】
次に、融合・合一工程において、第2の凝集工程を経て得られたコア/シェル凝集粒子を、溶液中にて、このコア/シェル凝集粒子中に含まれる第1又は第2の樹脂のガラス転移温度(樹脂の種類が2種類以上の場合は最も高いガラス点移温度を有する樹脂のガラス転移温度)以上に加熱し、融合・合一することによりトナー粒子を得る。
融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
【0061】
なお、洗浄工程は、帯電性の点からイオン交換水による置換洗浄を施すことが好ましい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好ましく用いられる。更に乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。
【0062】
次に、得られたトナー粒子に外添剤を添加することで、トナーが得られる。
外添剤の添加方法としては、トナー粒子の乾燥後、Vブレンダー、ヘンシエルミキサー等の混合機を用いて乾式でトナー粒子表面に付着させてもよいし、外添剤を水又は水/アルコールのごとき水系の液体に分散させた後、スラリー状態のトナー粒子に添加し乾燥させトナー粒子表面に外添剤を付着させてもよい。また、乾燥粉体にスラリーをスプレーしながら乾燥してもよい。
【0063】
<画像形成装置>
次に、本実施形態に係る画像形成装置について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、潜像保持体と、潜像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電された潜像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、静電荷像現像剤を収納し、前記潜像保持体の表面に形成された静電潜像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、潜像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体上に転写する転写手段と、被転写体上に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有する。そして、静電荷像現像剤として、上記本実施形態に係る静電荷像現像剤を適用する。
【0064】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば前記現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着するカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよく、該プロセスカートリッジとしては、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収納した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。また、この画像形成装置において、例えば、補充用の静電荷像現像剤を収納する部分が、画像形成装置に対して脱着するカートリッジ構造(現像剤カートリッジ)であってもよく、該現像剤カートリッジとしては、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収納した現像剤カートリッジが好適に適用される。
【0065】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0066】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の一例である4連タンデム方式の画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定めた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0067】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻回されて設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に予め定めた張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、現像剤カートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを供給する。
【0068】
上述した第1乃至第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0069】
第1ユニット10Yは、潜像保持体として機能する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定めた電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電潜像を形成する露光装置3、静電潜像に帯電したトナーを供給して静電潜像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、及び1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配設されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0070】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電潜像が感光体1Yの表面に形成される。
【0071】
静電潜像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電潜像は、感光体1Yの走行に従って予め定めた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電潜像が、現像装置4Yによって可視像(トナー像)化される。
【0072】
現像装置4Y内には、本実施形態に係るイエロートナーが収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き予め定めた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が予め定めた1次転写位置へ搬送される。
【0073】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに予め定めた1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0074】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0075】
第1乃至第4ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被転写体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に予め定めたタイミングで給紙され、予め定めた2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0076】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段)28へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0077】
<プロセスカートリッジ、現像剤カートリッジ>
図2は、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107とともに、帯電ローラ108、現像装置111、感光体クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。なお、図2において符号300は被転写体を表す。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0078】
図2で示すプロセスカートリッジでは、帯電ローラ108、現像装置111、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせてもよい。本実施形態に係るプロセルカートリッジでは、感光体107のほかには、帯電ローラ108、現像装置111、感光体クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備えるものであってもよい。
【0079】
次に、本実施形態に係る現像剤カートリッジについて説明する。本実施形態に係る現像剤カートリッジは、画像形成装置に着脱され、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収納する現像剤カートリッジにおいて、前記トナーを既述した本実施形態に係るトナーとしたものである。なお、本実施形態に係る現像剤カートリッジには少なくともトナーが収容されていればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば現像剤が収容されてもよい。
【0080】
従って、現像剤カートリッジの着脱する構成を有する画像形成装置においては、本実施形態に係るトナーを収納した現像剤カートリッジを利用することにより、本実施形態に係るトナーを容易に現像装置に供給する。
【0081】
なお、図1に示す画像形成装置は、現像剤カートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱する構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応した現像剤カートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、現像剤カートリッジ内に収納されているトナーが少なくなった場合には、この現像剤カートリッジを交換する。
【実施例】
【0082】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0083】
[トナー]
<ポリエステル樹脂分散液の調製>
−重合性単量体−
・テレフタル酸 30mol%
・フマル酸 70mol%
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 20mol%
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 80mol%
【0084】
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記モノマーを仕込み、1時間を要して190℃まで上げ、反応系内が攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイド1.2質量部を投入した。
さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに3時間脱水縮合反応を継続し、酸価が12.0mg/KOH、重量平均分子量9700である非晶質ポリエステル樹脂を得た。
【0085】
次いで、これを溶融状態のまま、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に毎分100gの速度で移送した。
【0086】
別途準備した水性媒体タンクには試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37質量%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で、上記非晶質ポリエステル樹脂1溶融体と同時にキャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に移送した。
回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cmの条件でキャビトロンを運転し、平均粒径0.16μm、固形分量30質量部のポリエステル樹脂からなる樹脂分散液を得た。
【0087】
<着色剤分散液の調製>
−着色剤分散液成分−
・シアン顔料(銅フタロシアニンB15:3:大日精化社製) 45質量部
・イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬社製) 5質量部
・イオン交換水 200質量部
【0088】
以上の着色剤分散液成分を混合溶解し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒径168nm、固形分量22.0質量部の着色剤分散液を得た。
【0089】
<離型剤分散液の調製>
−離型剤分散液成分−
・パラフィンワックス HNP9(融点75℃:日本精鑞社製) 45質量部
・カチオン性界面活性剤 ネオゲンRK(第一工業製薬社製) 5質量部
・イオン交換水 200質量部
【0090】
以上の離型剤分散液成分を95℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、中心径200nm、固形分量20.0質量部の離型剤分散液を得た。
【0091】
<トナー粒子Aの作製>
−トナー粒子A成分−
・ポリエステル樹脂分散液 278.9質量部
・着色剤分散液 27.3質量部
・離型剤分散液 35質量部
【0092】
以上のトナー粒子A成分を丸型ステンレス製フラスコ中においてウルトラタラックスT50で混合・分散した。次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.20質量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で60分保持した後、ここに樹脂分散液を70.0質量部追加した。
【0093】
その後、0.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを9.0にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら96℃まで加熱し、5時間保持した。
反応終了後、冷却し、濾過、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水1Lに再分散し、15分300rpmで攪拌・洗浄した。
【0094】
これを更に5回繰り返し、濾液のpHが7.5、電気伝導度7.0μS/cmtとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続した。
【0095】
このときの粒子径をコールターマルチサイザーにて測定したところ体積平均粒径D50は5.9μm、粒度分布係数GSDは1.24であった。また、ルーゼックスによる形状観察より求めた粒子の形状係数は130であることが観察された。
【0096】
<外添剤の作製>
−シリカ粒子1の作製−
ゾルゲル法により、ジメチルシリコーンオイルによる表面処理量が5質量%、平均一次粒径が100nmであるシリカ粒子1を作製した。
【0097】
<トナーの作製>
トナー粒子A100質量部に、上記シリカ粒子1:3質量部及びシリカ粒子(R972(日本アエロジル社製)):1質量部を加え、5リットルヘンシェルミキサーを用い、周速30m/sで15分間ブレンドを行った後、45μmの目開きの篩を用いて粗大粒子を除去し、トナーを作製した。
【0098】
[キャリア]
<コア粒子1の作製>
FeCO:70質量部、MnO:25質量部、Mg(OH):5質量部、ZnO:1質量部を混合し、湿式ボールミルで25時間混合、粉砕してスプレードライにより造粒、乾燥した後、ロータリーキルンを用いて800℃、7時間の仮焼成1を行った。これを湿式ボールミルで2時間粉砕し、更にスプレードライヤにより造粒、乾燥した後、ロータリーキルンを用いて900℃、6時間の仮焼成2を行った。こうして得られた仮焼成物を湿式ボールミルで5時間粉砕し、更に再度スプレードライヤにより造粒、乾燥した後、電気炉を用いて温度900℃において12時間の本焼成を行った。解砕工程、分級工程を経て体積平均粒径37μmのコア粒子1を作製した。表面粗さRaを測定したところ、Ra=0.55μmであった。
【0099】
<コア粒子2の作製>
温度900℃において10時間の本焼成とした以外は、コア粒子1と同様にして体積平均粒径39μmのコア粒子2を作製した。表面粗さRaを測定したところ、Ra=0.62μmであった。
【0100】
<コア粒子3の作製>
温度900℃において8時間の本焼成とした以外は、コア粒子1と同様にして体積平均粒径39μmのコア粒子3を作製した。表面粗さRaを測定したところ、Ra=0.77μmであった。
【0101】
<コア粒子4の作製>
温度900℃において6時間の本焼成とした以外は、コア粒子1と同様にして体積平均粒径39μmのコア粒子4を作製した。表面粗さRaを測定したところ、Ra=0.96μmであった。
【0102】
<コア粒子5の作製>
温度900℃において5時間の本焼成とした以外は、コア粒子1と同様にして体積平均粒径39μmのコア粒子5を作製した。表面粗さRaを測定したところ、Ra=1.1μmであった。
【0103】
<コア粒子6の作製>
温度1000℃において15時間の本焼成とした以外は、コア粒子1と同様にして体積平均粒径40μmのコア粒子6を作製した。表面粗さRaを測定したところ、Ra=0.12μmであった。
【0104】
<コア粒子7の作製>
温度1100℃において13時間の本焼成とした以外は、コア粒子1と同様にして体積平均粒径45μmのコア粒子7を作製した。表面粗さRaを測定したところ、Ra=0.08μmであった。
【0105】
<樹脂被覆層形成用溶液1の作製>
・トルエン:10質量部
・ポリメチルメタクリレート樹脂:2.5質量部
・カーボンブラック(VXC−72、キャボット社製):0.5質量部
上記材料のうち樹脂をトルエンに希釈したのち、カーボンブラックを加えて、ホモジナイザーで5分間攪拌し、樹脂被覆層形成用溶液1を作製した。
【0106】
<樹脂被覆層形成用溶液2の作製>
被覆樹脂としてポリメチルメタクリレート樹脂のかわりに、シクロヘキシルメタクリレート/ビニルピロリドン共重合樹脂とした以外は、樹脂被覆層形成溶液1と同様にして、樹脂被覆層形成溶液2を得た。
【0107】
<樹脂被覆層形成用溶液3の作製>
被覆樹脂としてポリメチルメタクリレート樹脂のかわりに、スチレン/シクロヘキシルメタアクリレート共重合樹脂とした以外は、樹脂被覆層形成溶液1と同様にして、樹脂被覆層形成溶液3を得た。
【0108】
<樹脂被覆層形成用溶液4の作製>
被覆樹脂としてポリメチルメタクリレート樹脂:2.0質量部、シクロヘキシルメタクリレート/ビニルピロリドン共重合樹脂:0.5質量部とした以外は、樹脂被覆層形成溶液1と同様にして、樹脂被覆層形成溶液4を得た。
【0109】
<樹脂被覆層形成用溶液5の作製>
被覆樹脂としてスチレン/シクロヘキシルメタアクリレート共重合樹脂:2.2質量部、シクロヘキシルメタクリレート/ビニルピロリドン共重合樹脂0.3質量部とした以外は、樹脂被覆層形成溶液1と同様にして、樹脂被覆層形成溶液5を得た。
【0110】
<キャリア1の作製>
【0111】
・コア粒子1:100質量部
・樹脂被覆層形成用溶液2:12質量部
上記材料を真空脱気ニーダーに入れ、90℃で20分攪拌した後、減圧してトルエンを除去した。品温が60℃になるまで冷却攪拌を行った後、75μmの篩分網で篩分した。被覆コア粒子100質量部と、フッ素樹脂PTFE(ルブロン−L2、ダイキン工業社製)を1.2質量部をノビルター(ホソカワミクロン社製)に添加し、1500rpmで10分間攪拌し、樹脂被覆キャリア1を得た。得られたキャリアの最表面層は、231nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、73原子%であった。
【0112】
<キャリア2の作製>
フッ素樹脂PTFEの添加量を2.7質量部にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア2を得た。得られたキャリアの最表面層は、486nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、88原子%であった。
【0113】
<キャリア3の作製>
フッ素樹脂PTFEの添加量を2.2質量部にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア3を得た。得られたキャリアの最表面層は、407nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、84原子%であった。
【0114】
<キャリア4の作製>
フッ素樹脂PTFEの添加量を2.1質量部にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア4を得た。得られたキャリアの最表面層は、391nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、83原子%であった。
【0115】
<キャリア5の作製>
フッ素樹脂PTFEの添加量を1.9質量部にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア5を得た。得られたキャリアの最表面層は、357nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、82原子%であった。
【0116】
<キャリア6の作製>
フッ素樹脂PTFEの添加量を1.8質量部にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア6を得た。得られたキャリアの最表面層は、340nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、81原子%であった。
【0117】
<キャリア7の作製>
フッ素樹脂PTFEの添加量を0.8質量部にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア7を得た。得られたキャリアの最表面層は、152nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、65原子%であった。
【0118】
<キャリア8の作製>
フッ素樹脂PTFEの添加量を0.7質量部にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア8を得た。得られたキャリアの最表面層は、132nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、62原子%であった。
【0119】
<キャリア9の作製>
フッ素樹脂PTFEの添加量を0.6質量部にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア9を得た。得られたキャリアの最表面層は、111nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、58原子%であった。
【0120】
<キャリア10の作製>
フッ素樹脂PTFEの添加量を0.5質量部にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア10を得た。得られたキャリアの最表面層は、91nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、54原子%であった。
【0121】
<キャリア11の作製>
フッ素樹脂PTFEの添加量を2.9質量部にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア11を得た。得られたキャリアの最表面層は、514nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、91原子%であった。
【0122】
<キャリア12の作製>
樹脂被覆層形成用溶液2に変わって、樹脂被覆層形成用溶液1にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア10を得た。得られたキャリアの最表面層は、230nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、66原子%であった。
【0123】
<キャリア13の作製>
樹脂被覆層形成用溶液2に変わって、樹脂被覆層形成用溶液3にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア11を得た。得られたキャリアの最表面層は、241nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、68原子%であった。
【0124】
<キャリア14の作製>
コア粒子1に変えて、コア粒子2にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア14を得た。得られたキャリアの最表面層は、231nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、73原子%であった。
【0125】
<キャリア15の作製>
コア粒子1に変えて、コア粒子3にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア15を得た。得られたキャリアの最表面層は、231nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、73原子%であった。
【0126】
<キャリア16の作製>
コア粒子1に変えて、コア粒子4にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア16を得た。得られたキャリアの最表面層は、231nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、73原子%であった。
【0127】
<キャリア17の作製>
コア粒子1に変えて、コア粒子5にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア17を得た。得られたキャリアの最表面層は、231nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、73原子%であった。
【0128】
<キャリア18の作製>
コア粒子1に変えて、コア粒子6にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア18を得た。得られたキャリアの最表面層は、231nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、73原子%であった。
【0129】
<キャリア19の作製>
コア粒子1に変えて、コア粒子7にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア19を得た。得られたキャリアの最表面層は、231nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、73原子%であった。
【0130】
<キャリア20の作製>
樹脂被覆層形成用溶液2に変わって、樹脂被覆層形成用溶液4にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア20を得た。得られたキャリアの最表面層は、231nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、73原子%であった。
【0131】
<キャリア21の作製>
樹脂被覆層形成用溶液2に変わって、樹脂被覆層形成用溶液5にした以外は、キャリア1と同様にして、キャリア21を得た。得られたキャリアの最表面層は、231nmで、フッ素元素、炭素元素、酸素元素、についてXPSを用いて測定したフッ素原子量は、73原子%であった。
【0132】
以下、キャリアの詳細について表1に一覧して示す。
【0133】
【表1】

【0134】
[実施例1〜19、比較例1〜2]
表2に従った組み合わせで、トナー4質量部とキャリア96質量部とを、V型ブレンダーで5分間攪拌して、現像剤を作製した。
【0135】
[評価]
得られた各現像剤を、DocuCentreColor400CP(富士ゼロックス社製)の現像機に収納して、100000枚の画像形成を行い、初期(100枚目)、10000枚目の画像について、ベタ画像の濃度むら、かぶりの評価を行った。
用紙として富士ゼロックス社製P紙A4を用い、画像形成条件として1)画像エリアカバレッジ(A.C)が1%)、2)画像エリアカバレッジ(A.C)が20%のそれぞれについて評価を行った。結果を表2に示す。
【0136】
−ベタ画像の濃度ムラ−
出力した10cm×5cmのべた画像(トナーのり量0.6mg/cm)に対して、画像濃度計X−Rite938(X−Rite社製)によりランダムに10点測定し、最大値と最小値の差を求めて評価した。評価基準は0.15未満を許容範囲とし、小さければ良いことは言うまでもない。
【0137】
−カブリ−
背景部について画像濃度計X−Rite938(X−Rite社製)により濃度測定を行い、以下の基準とした。
◎:カブリ濃度が0.2未満で目視でも部分的なカブリが見られない。
○:カブリ濃度が0.2未満だが目視で僅かなカブリが見られる。
△:カブリ濃度が0.2未満だが目視で部分的なカブリが見られる。
×:カブリ濃度が0.2以上。
【0138】
【表2】

【0139】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、いずれの画像形成条件についても、画像濃度、濃度むら、かぶりについて良好な結果が得られたことがわかる。
【符号の説明】
【0140】
1Y、1M、1C、1K、107 感光体
2Y、2M、2C、2K、108 帯電ローラ
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3 露光装置
4Y、4M、4C、4K、111 現像装置
5Y、5M、5C、5K 1次転写ローラ
6Y、6M、6C、6K、113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段)
8Y、8M、8C、8K 現像剤カートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ
28、115 定着装置
30 中間転写体クリーニング装置
112 転写装置
116 取り付けレール
117 除電露光のための開口部
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
P、300 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア本体と、
前記キャリア本体の表面を被覆した最表面層であって、厚み100nm以上500nm以下で、フッ素樹脂を含んで構成される最表面層と、
を有し、
光電子分光分析(XPS)によりキャリアの表面における炭素原子、酸素原子及びフッ素原子の量を測定したとき、前記フッ素原子の量が50原子%以上90原子%以下である、キャリア。
【請求項2】
前記最表面層の厚みが100nm以上400nm以下で、且つ前記フッ素原子の量が60原子%以上90原子%以下である請求項1に記載のキャリア。
【請求項3】
前記キャリア本体が、表面粗さRaが0.1以上1.0以下の芯材と、前記芯材の表面を被覆し、樹脂の引っかき強度試験における引っ掻き線幅が20μm以上120μm以下の樹脂被覆層と、を有する請求項1又は2に記載のキャリア。
【請求項4】
静電荷像現像用トナーと、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキャリアと、を含む静電荷像現像剤。
【請求項5】
前記静電荷像現像用トナーが、トナー粒子と、体積平均粒径100nm以上300nm以下の外添剤と、を含む請求項4に記載の静電荷像現像剤。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の静電荷像現像剤を収納し、
画像形成装置に着脱される現像剤カートリッジ。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の静電荷像現像剤を収納し、潜像保持体の表面に形成された静電潜像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱に装着されるプロセスカートリッジ。
【請求項8】
潜像保持体と、
潜像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記帯電された潜像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
請求項4又は5に記載の静電荷像現像剤を収納し、前記潜像保持体の表面に形成された静電潜像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記潜像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体上に転写する転写手段と、
前記被転写体上に転写されたトナー像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−59519(P2011−59519A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210799(P2009−210799)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】