説明

キャリアカット装置

【課題】端子圧着装置に於ける圧着作業に支障を与えることなく、適切にキャリアを切断できるようにして、圧着不良の発生を低減させる。
【解決手段】端子圧着装置1のアンビル6から排出されたキャリアCを切断すべく、一対の切断刃21、22を有して前記端子圧着装置1の側方に配されるキャリアカット装置であって、前記一対の切断刃21、22は相互に接近してキャリアCを切断するように構成されると共に、該キャリアCの切断位置が、前記アンビル6上に配されたキャリアCの略延長線上に配置されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線のストリップ部に端子を圧着する端子圧着装置に於いて、圧着後の使用済キャリアを切断処理するためのキャリアカット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のキャリアカット装置としては、例えば次のようなものが存在する。即ち、この従来のものは、対向配置される一対の可動刃及び固定刃を有しており、電線のストリップ部に端子を圧着する端子圧着装置の側方に配置されている。
【0003】
これによると、端子圧着装置のクリンパとアンビルによる圧着作業が完了した使用済キャリアは、案内部材を介して下方に搬送されてキャリアカット装置に供給される。その後、可動刃が固定刃側へと移動して、キャリアはこれらの両刃により所定長さに切断される(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平6−80291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、この種のキャリアカット装置にあっては、キャリアと各刃との接触を回避して、切断作業に支障が生じないように、両刃の間隔は十分に確保される。
【0005】
しかしながら、上記従来のキャリアカット装置に於いては、可動刃のみを固定刃側へ移動させてキャリアを切断するものであるために、かかる切断時に於いてキャリアが可動刃により押圧されて撓みが生じる。これにより、圧着処理前の連鎖端子がアンビル上で浮き上がって、ゆがみやズレが発生してしまう。これが、端子の圧着作業に支障を与えるために、不良品を多数発生させる等、十分な品質を確保できないという問題点を有していたのである。
【0006】
それ故に、本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、端子圧着装置に於ける圧着作業に支障を与えることなく、適切にキャリアを切断できるようにして、圧着不良の発生を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るキャリアカット装置は、端子圧着装置のアンビルから排出されたキャリアを切断すべく、一対の切断刃を有して前記端子圧着装置の側方に配されるキャリアカット装置であって、前記一対の切断刃は相互に接近してキャリアを切断するように構成されると共に、該キャリアの切断位置が、前記アンビル上に配されたキャリアの略延長線上に配置されてなるものである。
【0008】
これによると、端子圧着装置のアンビルから排出された使用済キャリアは、キャリアカット装置に搬送されて一対の切断刃により切断される。
【0009】
この場合、一対の切断刃を接近させてキャリアを切断すると共に、キャリアの切断位置を、アンビル上に配されたキャリアの略延長線上に配置しているので、切断刃によってキャリアが切断されても、アンビル上に配された連鎖端子が浮き上がるようなことはなく、歪みやズレが生じることもない。よって、端子の圧着作業に支障を与えることなく、端子を電線のストリップ部に良好に圧着させることが可能となる。
【0010】
また、切断刃の間隔を十分に確保することが可能となるために、キャリアと各切断刃との不用意な接触を適切に回避することができる。よって、一連の圧着及び切断作業が良好に行えることとなる。
【0011】
更に、前記切断刃によるキャリアの切断位置を、アンビルの側方近傍位置に配することも可能である。
【0012】
これによると、アンビルから排出された不要なキャリアを引き回すことなく、該アンビルの側方近傍位置で早期に短く切断することができる。よって、キャリアカット装置もコンパクトに製作することが可能となる。
【0013】
また、前記切断刃によるキャリアの切断位置を調整可能に構成することもできる。
【0014】
これによると、切断刃によるキャリアの切断位置を適宜調整することにより、該切断位置をアンビル上に配されたキャリアの延長線上に配置することが可能となる。よって、種々の端子圧着装置に対して幅広く対応することができる。
【0015】
更に、本発明に係るキャリアカット装置は全体の構成が非常に簡易であるために、その製作も容易に且つ安価に行える。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、端子圧着装置に於ける圧着作業に支障を与えることなく、適切にキャリアを切断できる結果、圧着不良の発生を低減させて、品質の向上を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面に従って説明する。図1及び図2は本実施形態に係る端子圧着装置及びキャリアカット装置を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。先ず、端子圧着装置1について説明すると、かかる端子圧着装置1は電線のストリップ部に端子tを圧着するアップリケータ2と、該アップリケータ2に圧着処理前の連鎖端子Tを搬送供給すると共に、使用済キャリアCを外部に排出する搬送部3とを備えている。
【0018】
アップリケータ2は、油圧シリンダ等によりラム(図示せず)を介して上下方向に昇降するクリンパ4と、該クリンパ4に対向させて基台5上に設けられたアンビル6とを有している。
【0019】
搬送部3は、連鎖端子Tの端子tに係脱可能な送り爪7を先端に有して、油圧シリンダ等により揺動されるリンク8と、連鎖端子Tの搬送路に沿って搬送台9上に設けられた端子ガイド10とを備えている。前記ラムの上昇動作に連動してリンク8が揺動し、その送り爪7により連鎖端子Tが端子ガイド10に沿って1ピッチ分だけアップリケータ2側へ搬送されるように構成されている。
【0020】
一方、キャリアカット装置20は端子圧着装置1と別体であり、前記アップリケータ2の側方に配置されている。尚、別体とは、例えば、別々にユニット化されていること、駆動源が別々であること、それぞれ独立して動作可能であること、等をいう。かかるキャリアカット装置20は、使用済キャリアCを切断するための一対の切断刃21、22と、該切断刃21、22を駆動するための駆動部23とを有している。切断刃21、22は側面略Lの字状のアーム24、25の先端部に、相互に刃先が対向するように設けられている。該切断刃21、22によるキャリアCの切断位置は、図3に示すように前記アンビル6の側方近傍位置で、且つ該アンビル6上に配されるキャリアCの略延長線上に配置されるように設定されている。本実施形態では、切断刃21、22とキャリアC間の間隔を夫々1.5mmに、アンビル6と切断刃21、22による切断位置の間隔を15mmに設定している。また、キャリアCの肉厚は0.5mmであり、1〜10個程度の端子tが圧着された時点でキャリアCを切断するようにしている。但し、本発明にいう「近傍位置」とは、決してこれに限定されるものではない。例えば、キャリアCの切断位置とアンビル6の間隔は、端子tの大きさや形状等に応じて適宜変更されるものである。また、その他の設定寸法もこれに限定されない。
【0021】
駆動部23は、駆動源としてのエアシリンダ26と、そのロッド27の先端に回動自在に連結された連結杆28とからなっている。連結杆28は支軸29を中心として上下に揺動する。前記各アーム24、25の下端部は支軸28を中心として前後に等間隔離れた連結杆28の各部位に回動自在に取着されている。尚、キャリアカット装置20は切断後のキャリアCの飛散を防止するためのカバー29を有している。また、本実施形態に係るキャリアカット装置20は、圧着されることなく端子tが残存したキャリアCも切断可能である。
【0022】
本実施形態は以上のように構成されている。次に、かかるキャリアカット装置20を使用して端子圧着装置1から排出された使用済キャリアCを切断する場合について説明する。
【0023】
先ず、端子圧着装置1の搬送部3に連鎖端子Tが供給されると、ラムの上昇動作に連動してリンク8が揺動し、送り爪7が連鎖端子Tの端子tに係合する。そして、この状態で送り爪7により連鎖端子Tが端子ガイド10に沿って1ピッチ分だけ前方に搬送される。これにより、連鎖端子Tの端子tがアップリケータ2のアンビル6上に配される。
【0024】
次に、ラムが下降してクリンパ4によりアンビル6上に配された端子tが電線のストリップ部に圧着される。その後、ラムの上昇に伴い、上述したと同様にして連鎖端子Tがまた前方に1ピッチ分搬送されて、圧着作業が連続して行われることになる。
【0025】
一方、圧着後の使用済キャリアCは前記アンビル6から前方に送られて、キャリアカット装置20に排出される。使用済キャリアCが所定の長さになると、エアシリンダ26が駆動されて、図2に示すようにそのロッド27は下降する。これにより、連結杆28が支軸28を中心にして回動し、図3(a)及び(b)に示すように各アーム24、25を介して切断刃21、22が相互に接近し、同図(c)のようにキャリアCが所定長さで切断される。尚、切断後のキャリアCはカバー29内を下方に落下する。
【0026】
この場合、切断刃21、22による切断位置をアンビル6の側方近傍位置とし、且つ該切断位置がアンビル6上に配されるキャリアCの延長線上に配置されるように、両切断刃21、22を相互に接近移動させている。従って、切断刃21、22によりキャリアCを切断しても、アンビル6上にセットされた連鎖端子Tが浮き上がるようなことはなく、歪みやズレが生じることもない。よって、端子tの圧着作業に支障を与えることなく、端子tを電線のストリップ部に良好に圧着させることができる。その結果、圧着不良という事態を回避できて、良好な品質を維持することが可能となる。
【0027】
また、本実施形態に係るキャリアカット装置20は全体の構成が非常に簡易であるために、その製作も容易に且つ安価に行えるという利点がある。
【0028】
尚、上記実施形態に於いては、エアシリンダ26により一対の切断刃21、22を同時に接近させてキャリアCを切断するようにしたが、例えば別の駆動源で切断刃21、22を個々に駆動することもできる。このようにすると、時間差を設けて各切断刃21、22を動作させることが可能となるのである。
【0029】
また、切断刃21、22によるキャリアCの切断位置を調整できるように構成してもよい。このように構成すれば、切断位置を常時アンビル6上に配されたキャリアCの延長線上に配置することが可能となる。これにより、種々の端子圧着装置1に対して幅広く対応することができる。尚、切断位置の調整手段としては、例えば上述したように各切断刃21、22に時間差を設けて動作させたり、連結杆28に対する各アーム24、25の取付位置を変更させる等の手段が挙げられる。また、キャリアカット装置20を端子圧着装置1の側部に一体的に取付けるように構成し、その取付位置を調整することにより前記切断位置を調整することも可能である。
【0030】
その他、キャリアカット装置20の形状等の各部の具体的な構成も、本発明の意図する範囲内に於いて任意に設計変更自在である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したように、本発明は、使用済キャリアを切断処理するキャリアカット装置に於いて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係る端子圧着装置及びキャリアカット装置を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】同端子圧着装置及びキャリアカット装置を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】同キャリアカット装置の切断刃によるキャリアの切断状態を示し、(a)乃至(c)は正面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 端子圧着装置
6 アンビル
20 キャリアカット装置
21 切断刃
22 切断刃
C キャリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子圧着装置のアンビルから排出されたキャリアを切断すべく、一対の切断刃を有して前記端子圧着装置の側方に配されるキャリアカット装置であって、
前記一対の切断刃は相互に接近してキャリアを切断するように構成されると共に、該キャリアの切断位置が、前記アンビル上に配されたキャリアの略延長線上に配置されてなることを特徴とするキャリアカット装置。
【請求項2】
前記切断刃によるキャリアの切断位置がアンビルの側方近傍位置に配されてなる請求項1記載のキャリアカット装置。
【請求項3】
前記切断刃によるキャリアの切断位置が調整可能に構成されてなる請求項1又は2記載のキャリアカット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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