説明

キャリブレーションチャート、画像処理装置及び画像処理方法

【課題】良好なグレーバランス調整を行うことができるキャリブレーションチャートを提供する。
【解決手段】画像データをガンマ補正するためのガンマ変換テーブルを生成するのに用いられるキャリブレーションチャートであって、記録媒体と、記録媒体に配置され、互いに異なる色相に対応する複数のパッチ列と、を備え、複数のパッチ列の各々には、彩度を含み且つ明度が段階的に変化するように配色された複数のパッチが含まれ、複数のパッチ列は、色平面上で原点に対して対称となる位置に配色されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データをガンマ補正する際に用いられるキャリブレーションチャートに関する。また、本発明は、原稿を読み取って得られる画像データを処理する画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばスキャナ装置、コピー機及び複合機(MFP:Multi Function Peripherals)等の画像処理装置には、カラースキャナ機能が搭載されている。このようなカラースキャナ機能が搭載された画像処理装置では、ガンマ補正が行われる。このガンマ補正では、例えばメモリに記憶されたガンマ変換テーブルに基づいて、原稿を読み取って得られる画像データに対してグレーバランス調整等が行われる。なお、グレーバランス調整とは、読み取った原稿の無彩色(例えば白色)が正確に無彩色として出力されるように階調を調整することである。
【0003】
上述したガンマ変換テーブルの生成は、モノクロパッチ列が配置されたキャリブレーションチャートを用いて行われる(例えば、特許文献1及び2参照)。モノクロパッチ列には、無彩色のパッチが複数含まれている。複数のパッチは、それらの明度が白から黒まで段階的に変化するように配色されている。ガンマ変換テーブルを生成する際には、まず、キャリブレーションチャートを読み取って複数のパッチの各々に対応する読取値を取得し、この読取値と複数のパッチの各々に対応する目標値とに基づいて補正関数パラメータを取得する。その後、補正関数パラメータに基づいて所定の演算を行うことにより、ガンマ変換テーブルが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−123938号公報
【特許文献2】特開2006−238408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のキャリブレーションチャート、画像処理装置及び画像処理方法では、次のような問題がある。補正関数パラメータを取得する際に用いられる目標値は、キャリブレーションチャートに配置された各パッチを測色器により測色することにより得られる。各パッチの無彩色は、例えばシアン、マゼンタ及びイエロー等の色材を混色することにより、或いは、グレーの色材により再現される。しかしながら、目標値は、実際には完全な無彩色の値ではなく、僅かに彩度を含む値となる場合がある。例えば、モノクロパッチ列が、色平面上で原点から一方向にずれて配色され、このような目標値を用いて補正関数パラメータを取得した場合には、ガンマ補正後の画像データは、Lab色空間の色平面で無彩点(原点)から外側に大きく広がってしまう。そのため、良好なグレーバランス調整を行うことが難しくなり、例えば、読み取った原稿をプリント出力した際に、原稿の白色部分が、色味がかった状態でプリント出力されてしまう。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、良好なグレーバランス調整を行うことができるキャリブレーションチャート、画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るキャリブレーションチャートは、画像データをガンマ補正する際に用いられるキャリブレーションチャートであって、記録媒体と、前記記録媒体に配置され、互いに異なる色相に対応する複数のパッチ列と、を備え、前記複数のパッチ列の各々には、彩度を含み且つ明度が段階的に変化するように配色された複数のパッチが含まれ、前記複数のパッチ列は、色平面上で原点に対して対称となる位置に配色されている。
【0008】
この構成によれば、キャリブレーションチャートに配置された複数のパッチ列は、色平面上で原点に対して対称となる位置に配色されている。即ち、複数のパッチ列は、色平面上で原点から複数方向にずれた状態で配色されるので、補正関数パラメータの取得時には、複数のパッチ列の各色(例えば、R,G,B,C,M及びYの6色)で無彩点(色平面の原点)が平均化される。このようにして取得された補正関数パラメータに基づいてガンマ変換が行われることにより、ガンマ補正後の画像データが色空間の色平面で無彩点(原点)から外側に大きく広がるのを抑制することができる。これにより、無彩色の色再現性を高めることができ、良好なグレーバランス調整を行うことができる。なお、「対称」の文言は、本願発明の趣旨を逸脱しない程度の誤差(広がり)を許容する意味で使用され、このことは以下においても同様である。
【0009】
また、前記複数のパッチ列は、それらの重心が色平面の原点又はその近傍に位置することにより、色平面上で原点に対して対称となる位置に配色されることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、複数のパッチ列の重心が色平面の原点又はその近傍に位置することにより、複数のパッチ列は、色平面上で原点に対して対称となる位置に配色される。これにより、上述したように、複数のパッチ列は、色平面上で原点から複数方向にずれた状態で配色され、補正関数パラメータの取得時には、複数のパッチ列の各色で無彩点(色平面の原点)が平均化される。
【0011】
また、前記複数のパッチ列は、色平面上で色相を均等に分割するように配色されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、複数のパッチ列の各色で無彩点(色平面の原点)をより効果的に平均化することができる。なお、「均等」の文言は、本願発明の趣旨を逸脱しない程度の誤差(広がり)を許容する意味で使用され、このことは以下においても同様である。
【0013】
また、前記複数のパッチ列の各々において、前記複数のパッチの彩度及び色相は同一であることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、複数のパッチ列の各色で無彩点(色平面の原点)をより効果的に平均化することができる。
【0015】
また、前記複数のパッチの各々の彩度は、0よりも大きく且つ20以下であることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、パッチを低彩度に構成することより、複数のパッチ列の各色相の相互作用を小さくすることができ、無彩色の色再現を効果的に行うことができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る画像処理装置は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキャリブレーションチャートを読み取ることにより、前記キャリブレーションチャートに配置された複数のパッチの各々に対応する読取値を取得する読取部と、前記読取部より出力される画像データをガンマ補正するガンマ補正部と、前記複数のパッチの各々に対応する目標値が記憶された目標値記憶部と、前記読取値及び前記目標値より補正関数パラメータを取得する補正関数パラメータ取得部と、を備え、前記読取部により取得される前記読取値は、彩度を含み且つ明度が段階的に変化するように配色された前記複数のパッチの各々に対応し、前記読取値に対応する前記複数のパッチは、互いに異なる色相に対応し且つ色平面上で原点に対して対称となる位置に配色された複数のパッチ列に含まれており、前記補正関数パラメータ取得部は、前記複数のパッチ列に含まれる前記複数のパッチについて、前記読取値と前記目標値とを対応付けることにより前記補正関数パラメータを取得し、前記ガンマ補正部は、取得された前記補正関数パラメータに基づいてガンマ補正を行う。
【0018】
この構成によれば、キャリブレーションチャートに配置された複数のパッチ列は、色平面上で原点に対して対称となる位置に配色されている。即ち、複数のパッチ列は、色平面上で原点から複数方向にずれた状態で配色されるので、補正関数パラメータは、複数のパッチ列の各色(例えば、R,G,B,C,M及びYの6色)で無彩点(色平面の原点)を平均化して取得される。このようにして取得された補正関数パラメータに基づいてガンマ補正部によりガンマ変換が行われることにより、ガンマ補正後の画像データが色空間の色平面で無彩点(原点)から外側に大きく広がるのを抑制することができる。これにより、無彩色の色再現性を高めることができ、良好なグレーバランス調整を行うことができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る画像処理方法は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキャリブレーションチャートを読み取る読取ステップと、前記キャリブレーションチャートに配置された複数のパッチの各々に対応する読取値を取得する読取値取得ステップと、前記読取値及び前記複数のパッチの各々に対応する目標値より、画像データをガンマ変換する際に用いられる補正関数パラメータを取得する補正関数パラメータ取得ステップと、を含み、前記読取値取得ステップで取得される前記読取値は、彩度を含み且つ明度が段階的に変化するように配色された前記複数のパッチの各々に対応し、前記読取値に対応する前記複数のパッチは、互いに異なる色相に対応し且つ色平面上で原点に対して対称となる位置に配色された複数のパッチ列に含まれており、前記補正関数パラメータ取得ステップでは、前記複数のパッチ列に含まれる前記複数のパッチについて、前記読取値と前記目標値とを対応付けることにより前記補正関数パラメータを取得する。
【0020】
この構成によれば、キャリブレーションチャートに配置された複数のパッチ列は、色平面上で原点に対して対称となる位置に配色されている。即ち、複数のパッチ列は、色平面上で原点から複数方向にずれた状態で配色されるので、補正関数パラメータ取得ステップでは、複数のパッチ列の各色(例えば、R,G,B,C,M及びYの6色)で無彩点(色平面の原点)を平均化して補正関数パラメータが取得される。このようにして取得された補正関数パラメータを用いてガンマ変換が行われることにより、ガンマ補正後の画像データが色空間の色平面で無彩点(原点)から外側に大きく広がるのを抑制することができる。これにより、無彩色の色再現性を高めることができ、良好なグレーバランス調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、キャリブレーションチャートに配置された複数のパッチ列は、色平面上で原点に対して対称となる位置に配色されている。即ち、複数のパッチ列は、色平面上で原点から複数方向にずれた状態で配色されるので、複数のパッチ列の各色で無彩点(色平面の原点)を平均化することにより、補正関数パラメータが取得される。従って、従来のように、色平面上で原点から一方向にずれたモノクロパッチ列を用いて補正関数パラメータを取得する場合と比べて、無彩色の色再現性を高めることができ、良好なグレーバランス調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1に係る画像処理装置を示す斜視図である。
【図2】図1の画像処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【図3】図1の画像処理装置の特徴的な機能構成を示すブロック図である。
【図4】ガンマ変換テーブルの一例を示す図である。
【図5】実施の形態1におけるキャリブレーションチャートを示す図である。
【図6】Lab色空間の色平面上におけるパッチ列の分布を示す図である。
【図7】図3のガンマ変換テーブル生成部によるガンマ変換テーブルの生成の流れを示すフローチャートである。
【図8】RGBの色成分ごとに、読取値と目標値とを対応付けた対応関係を示す図である。
【図9】R成分についての補正関数のグラフを示す図である。
【図10】実施の形態2におけるキャリブレーションチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るキャリブレーションチャート、画像処理装置及び画像処理方法の各種実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態の画像処理装置1を示す斜視図である。画像処理装置1は例えば複合機であり、画像データを処理する装置である。
【0025】
図2は、画像処理装置1のハードウェア構成を示す図である。画像処理装置1は、ハードウェア構成として、CPU(Central Processing Unit)2、ROM(Read Only Memory)3、RAM(Random Access Memory)4、モデム5、NCU(Network Control Unit)6、操作パネル7、ディスプレイ8、スキャナ9、プリンタ10及びLANI/F(Local Area Network InterFace)11を備えている。
【0026】
CPU2は、ROM3に格納された制御プログラム12を実行するプロセッサである。
【0027】
ROM3は、制御プログラム12等を保持する読み出し専用メモリである。
【0028】
RAM4は、CPU2が制御プログラム12を実行するときに使用するワークエリアであり、スキャナ9により読み込まれた画像データ等を一時的に保持する揮発性の記憶領域等を有する読み書き可能なメモリである。
【0029】
モデム5は、ファクシミリ送信される画像データを変調する、或いは、外部からファクシミリ送信されてきた画像データを復調するファックスモデムである。
【0030】
NCU6は、PSTN(Public Switched Telephone Networks:公衆電話交換回線網)13と接続される回線終端装置である。
【0031】
操作パネル7は、ユーザによる操作、例えば、原稿等の読み取りを開始する旨の指示等を受け付けるパネルである。
【0032】
ディスプレイ8は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)等から構成される。このディスプレイ8には、画像処理装置1の動作状態等が表示される。
【0033】
スキャナ9は、原稿等の内容をCCD(Charge Coupled Device)等で光学的に読み取ることにより、画像データを生成する。例えば、スキャナ9により読み取られた原稿等はファクシミリ送信され、或いは、プリンタ10にてプリント出力される。
【0034】
プリンタ10は、例えばスキャナ9で読み取られた原稿等、或いは、相手ファクシミリ装置等(図示せず)からPSTN13、NCU6及びモデム5を介して送信されてきた画像データをプリント出力する。
【0035】
LANI/F11は、画像処理装置1とLAN14とを接続する通信アダプタである。
【0036】
図3は、本発明に係る画像処理装置1の特徴的な機能構成を示すブロック図である。即ち、図3は、図2に示されるハードウェア構成によって発揮される画像処理装置1の機能構成のうち、本発明に関連する機能構成を示すブロック図である。
【0037】
画像処理装置1は、機能的には、読取部16、ガンマ補正部17、イメージメモリ18、符号変換部19、ガンマ変換テーブル生成部20、目標値記憶部21及びガンマ変換テーブル記憶部22を備えている。
【0038】
読取部16は、イメージセンサ23、AFEP(Analog Front−End Processor)24、ADC(Analog Digital Converter)25及び読取値取得部28を備えている。この読取部16は、例えば図2におけるスキャナ9によって実現される。イメージセンサ23は、CCD及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等から構成され、原稿等を光学的に読み取る。AFEP24は、ノイズ抑制処理、増幅処理及びCDS(Correlated Double Sampling)処理等を行うことにより、アナログ信号を整形する。ADC25は、AFEP24にて各種の処理が行われた後に、アナログ信号をデジタル信号に変換することにより、原稿等に形成されている画像をRGB形式の画像データとして出力する。読取値取得部28は、ADC25より出力された画像データに基づき、キャリブレーションチャート15(後述する)に配置された各パッチ26の読取値をRGBの色成分ごとに計算により取得する。具体的には、読取値取得部28は、各パッチ26の領域内において複数の画素を抽出し、この抽出した画素の階調値の平均値をRGBの色成分ごとに計算し、得られた平均値をパッチ26の読取値として取得する。
【0039】
ガンマ補正部17は、ガンマ変換テーブルに基づいて、読取部16より出力された画像データをガンマ補正する。このガンマ補正部17は、例えば図2におけるCPU2、ROM3及びRAM4によって実現される。ガンマ補正では、読取部16より出力された画像データを構成する各要素の濃淡レベルを補正等することにより、読み取った原稿の無彩色を忠実に再現するグレーバランス調整が行われる。
【0040】
イメージメモリ18には、ガンマ補正部17によりガンマ補正された画像データ等が記憶される。このイメージメモリ18は、例えば図2におけるRAM4によって実現される。
【0041】
符号変換部19は、イメージメモリ18に記憶された画像データに対して、例えばJPEG(Joint Photographic Experts Group)等の圧縮処理を行って符号化する。この符号変換部19は、例えば図2におけるCPU2及びROM3によって実現される。符号化された画像データは、出力データとして、例えばプリンタ10にてプリント出力される。
【0042】
ガンマ変換テーブル生成部20は、後述するようにしてガンマ変換テーブルを生成する。ガンマ変換テーブルは、ガンマ補正部17においてガンマ補正が行われる際に用いられる。このガンマ変換テーブル生成部20は、例えば図2におけるCPU2、ROM3及びRAM4によって実現される。ガンマ変換テーブル生成部20の機能構成については後述する。
【0043】
ここで、ガンマ変換テーブルの構成について説明する。図4は、ガンマ変換テーブルの一例を示す図である。ガンマ変換テーブルは、RGBの色成分ごとに、入力レベルと出力レベルとが対応付けられた参照表である。ガンマ補正の際には、画像データを構成する各要素の濃淡レベルを入力レベルとし、ガンマ変換テーブルを参照することによって、入力レベルに対応した出力レベルが取得される。ガンマ変換テーブルは、R(レッド)用ガンマ変換テーブル、G(グリーン)用ガンマ変換テーブル及びB(ブルー)用ガンマ変換テーブルの3つのテーブルから構成される。
【0044】
例えば、画像データのR成分の入力レベルが「84」である場合には、ガンマ補正部17は、R用ガンマ変換テーブルを参照することによって、入力レベル「84」に対応する出力レベル「173」を抽出する。これにより、ガンマ補正部17は、画像データのR成分の入力レベルを「84」から「173」に補正する。ガンマ補正部17は、G成分及びB成分についても同様に、G用ガンマ変換テーブル及びB用ガンマ変換テーブルを参照することにより、画像データのG成分及びB成分の入力レベルを補正する。なお、本実施の形態では、入力レベル及び出力レベルがいずれも8ビット(256階調)である場合について説明する。
【0045】
目標値記憶部21には、ガンマ変換テーブルを生成する際に用いられる複数の目標値が記憶されている。目標値記憶部21は、例えば図2におけるROM3によって実現される。この目標値は、キャリブレーションチャート15に配置された各パッチ26に対応し、且つ、RGBの色成分ごとに定められている。なお、この目標値は、キャリブレーションチャート15の各パッチ26を測色した測色値に基づいて定められている。
【0046】
ガンマ変換テーブル記憶部22には、ガンマ変換テーブル生成部20にて生成されたガンマ変換テーブルが記憶される。このガンマ変換テーブル記憶部22は、例えば図2におけるRAM4によって実現される。
【0047】
上述したガンマ変換テーブルの生成には、キャリブレーションチャート15が用いられる。ここで、キャリブレーションチャート15の構成について説明する。図5は、本実施の形態のキャリブレーションチャート15を示す図である。キャリブレーションチャート15は、記録紙等の記録媒体27と、記録媒体27に配置された色相の異なる6個のパッチ列K1〜K6と、を備えている。なお、記録媒体27は、記録紙に限られず、例えばシート状又はプレート状のプラスチック及び金属等から形成することができる。
【0048】
各パッチ列K1〜K6には、低彩度を有するパッチ26が8個含まれている。複数のパッチ26は、記録媒体27にマトリクス状に配置されている。各パッチ列K1〜K6に含まれる8個のパッチ26は、それらの明度がLab色空間のL軸(明度軸)に沿って白から黒まで段階的に変化するように配色されている。また、各パッチ列K1〜K6に含まれる8個のパッチ26は、彩度及び色相が同一になるように配色されている。
【0049】
パッチ列K1は、レッド(R)の色相のパッチ26を含み、パッチ列K2は、グリーン(G)の色相のパッチ26を含み、パッチ列K3は、ブルー(B)の色相のパッチ26を含む。また、パッチ列K4は、シアン(C)の色相のパッチ26を含み、パッチ列K5は、マゼンタ(M)の色相のパッチ26を含み、パッチ列K6は、イエロー(Y)の色相のパッチ26を含む。
【0050】
図6は、Lab色空間の色平面上におけるパッチ列の分布を示す図である。図6に示すように、6個のパッチ列K1〜K6は、Lab色空間の色平面(ab平面)上で原点Oに対して略対称(完全な対称を含む。以下同じ。)に配色されている。換言すると、6個のパッチ列K1〜K6の色相分布は、Lab色空間の色平面上で原点Oに対して略対称である。さらに換言すると、6個のパッチ列K1〜K6は、それらの重心が色平面の原点O又はその近傍に位置するように配色されている。なお、「各パッチ列K1〜K6の重心が色平面の原点O又はその近傍に位置する」とは、各パッチ列K1〜K6の重心と色平面(CbCr平面)の原点Oとの距離(彩度)が「0」〜「8」、好ましくは「0」〜「5」であることを意味する。また、6個のパッチ列K1〜K6は、色平面上で色相を略均等(完全な均等を含む。以下同じ。)に分割するように配色されている。
【0051】
各パッチ列K1〜K6に含まれるパッチ26は、低彩度であるのが好ましい。本実施の形態では、各パッチ26の彩度は、「0」〜「20」(但し、「0」は除く)である。より好ましくは、各パッチ26の彩度は、「5」〜「15」である。各パッチ26の彩度が「20」よりも大きいと、各パッチ列K1〜K6の色相の相互作用が大きくなるため、無彩色の色再現を効果的に行うのが難しくなる。なお、彩度とは、色平面(CbCr平面)上での原点とパッチ列との距離である。
【0052】
次に、図3を参照して、ガンマ変換テーブル生成部20の機能構成について説明する。ガンマ変換テーブル生成部20は、補正関数パラメータ取得部29、補正関数パラメータ記憶部30及び生成部31を備えている。
【0053】
補正関数パラメータ取得部29は、読取値取得部28により取得された読取値と、目標値記憶部21に記憶された目標値との関係を近似する補正関数のパラメータ(補正関数パラメータ)を計算により取得する。
【0054】
補正関数パラメータ記憶部30には、補正関数パラメータ取得部29によって取得された補正関数パラメータが記憶される。
【0055】
生成部31は、補正関数パラメータ記憶部30に記憶された補正関数パラメータに基づいて、ガンマ変換テーブルを生成する。
【0056】
次に、ガンマ変換テーブル生成部20によるガンマ変換テーブルの生成について説明する。図7は、ガンマ変換テーブル生成部20によるガンマ変換テーブルの生成の流れを示すフローチャートである。
【0057】
まず、ユーザは、キャリブレーションチャート15をスキャナ9にセットし、操作パネル7のガンマ変換テーブル生成実行キー(図示せず)を押す。これにより、ユーザによってガンマ変換テーブルの生成が指示され(S10でYES)、キャリブレーションチャート15が読取部16により読み取られる(読取ステップ)(S11)。
【0058】
読取値取得部28は、画像データを解析することにより、キャリブレーションチャート15に配置された各パッチ26の読取値をRGBの色成分ごとに取得する(読取値取得ステップ)(S12)。具体的には、読取値取得部28は、パッチ列K1〜K6に含まれる合計48個のパッチ26の各々の画像データに基づき、R成分の読取値Xr1,・・・,Xr48、G成分の読取値Xg1,・・・,Xg48及びB成分の読取値Xb1,・・・,Xb48を取得する。
【0059】
その後、補正関数パラメータ取得部29は、RGBの色成分ごとに、読取値取得部28により取得された読取値と目標値記憶部21に記憶された目標値とを対応付けた対応関係を作成する(S13)。図8は、RGBの色成分ごとに、読取値と目標値とを対応付けた対応関係を示す図である。例えば、補正関数パラメータ取得部29は、R成分について、パッチ列K1〜K6に含まれる合計48個のパッチ26の読取値Xr1,・・・,Xr48と、これらのパッチ26に対応する目標値Yr1,・・・,Yr48とを対応付ける。また、補正関数パラメータ取得部29は、G成分について、パッチ列K1〜K6に含まれる合計48個のパッチ26の読取値Xg1,・・・,Xg48と、これらのパッチ26に対応する目標値Yg1,・・・,Yg48とを対応付ける。さらに、補正関数パラメータ取得部29は、B成分について、パッチ列K1〜K6に含まれる合計48個のパッチ26の読取値Xb1,・・・,Xb48と、これらのパッチ26に対応する目標値Yb1,・・・,Yb48とを対応付ける。
【0060】
補正関数パラメータ取得部29は、上述のように読取値Xと目標値Yとを対応付けることにより、読取値Xと目標値Yとの関係を近似する補正関数を取得する。図9は、R成分についての補正関数のグラフを示す図である。具体的には、補正関数パラメータ取得部29は、図9において黒丸で示すように、R成分について、読取値X及び目標値Yの組に関する合計48個のデータ(X,Y)をX−Y平面上にプロットする。そして、補正関数パラメータ取得部29は、このプロットした48個のデータ(X,Y)を近似する補正関数を、最小二乗法により取得する。G成分及びB成分についても同様に、補正関数パラメータ取得部29は、最小二乗法により補正関数を取得する。この補正関数は、(式1)により表される。
【0061】
【数1】

【0062】
補正関数パラメータ取得部29は、(式1)で表される補正関数より、RGBの色成分ごとに補正関数パラメータa,b,c,d,e,f及びgを取得する(S14)(補正関数パラメータ取得ステップ)。そして、補正関数パラメータ取得部29は、これらの補正関数パラメータを補正関数パラメータ記憶部30に記憶させる(S15)。その後、生成部31は、補正関数パラメータに基づいて、ガンマ変換テーブルをRGBの色成分ごとに生成する(S16)。即ち、生成部31は、補間処理等を行うことにより、パッチ26の数よりも多い階調数、即ち、「0」〜「255」の入力レベルに対応した出力レベルを、上述した補正関数パラメータより算出する。生成部31は、生成したガンマ変換テーブルをガンマ変換テーブル記憶部22に記憶させる(S17)。
【0063】
上述のようにして生成されたガンマ変換テーブルを用いて、ガンマ補正部17によるガンマ補正が次のようにして行われる。まず、ユーザは、例えばプリント出力すべき原稿をスキャナ9にセットし、操作パネル7の読取開始キー(図示せず)を押す。これにより、読取部16により原稿が読み取られ、原稿の画像データがガンマ補正部17に出力される。ガンマ補正部17は、画像データを構成する各要素の入力レベルをガンマ変換テーブルに基づいてガンマ補正する。
【0064】
ガンマ補正部17によりガンマ補正された画像データは、イメージメモリ18に記憶される。イメージメモリ18に記憶された画像データは、符号変換部19により符号化された後に、出力データとして例えばプリンタ10にてプリント出力される。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態では、キャリブレーションチャート15に配置されたパッチ列K1〜K6は、Lab色空間の色平面上で原点Oに対して略対称に配色されている。即ち、パッチ列K1〜K6は、色平面上で原点Oから複数方向にずれた状態で配色されるので、補正関数パラメータ取得部29は、パッチ列K1〜K6の各色(R,G,B,C,M及びY)で無彩点(原点O)を平均化することにより補正関数パラメータを取得する。従って、従来のように、色平面上で原点から一方向にずれたモノクロパッチ列を用いて補正関数パラメータを取得する場合と比べて、本実施の形態では、無彩色の色再現性を高めることができ、良好なグレーバランス調整を行うことができる。
【0066】
また、本実施の形態では、ガンマ変換テーブル生成部20は、複数の色相のパッチ列K1〜K6を用いてガンマ変換テーブルを生成する。これにより、補正関数パラメータ取得部29により補正関数パラメータが取得される際に、図9に示すX−Y平面にプロットされるデータ(X,Y)の数が多くなるので、無彩色の色再現性をより高めることができる。
【0067】
[実施の形態2]
図10は、本実施の形態のキャリブレーションチャートを示す図である。本実施の形態では、キャリブレーションチャート40には、4個のパッチ列L1〜L4が配置されている。各パッチ列L1〜L4には、8個のパッチ26が含まれている。パッチ列L1は、レッドの色相のパッチ26を含み、パッチ列L2は、グリーンの色相のパッチ26を含み、パッチ列L3は、ブルーの色相のパッチ26を含む。また、パッチ列L4は、無彩色のパッチ26を含む。即ち、パッチ列L1〜L3にはそれぞれ、低彩度(例えば、彩度が「0」〜「20」)を有する8個のパッチ26が含まれ、パッチ列L4には、無彩色の8個のパッチ26が含まれている。
【0068】
各パッチ列L1〜L4に含まれる8個のパッチ26は、それらの明度がLab色空間のL軸(明度軸)に沿って白から黒まで段階的に変化するように配色されている。また、各パッチ列L1〜L4に含まれる8個のパッチ26は、彩度及び色相が同一になるように配色されている。
【0069】
パッチ列L1〜L4は、Lab色空間の色平面上で原点に対して略対称に配色されている。また、パッチ列L1〜L4は、Lab色空間の色平面上で色相を略均等に分割するように配色されている。
【0070】
本実施の形態においても、ガンマ変換テーブル生成部20(図3参照)は、各パッチ列L1〜L4に含まれるパッチ26の読取値と、このパッチ26に対応する目標値とに基づいて、ガンマ変換テーブルを生成する。これにより、第1の実施形態と同様の作用効果が達成される。
【0071】
以上、本発明のキャリブレーションチャート、画像処理装置及び画像処理方法について、実施の形態1及び2に基づいて説明したが、本発明は、これら実施の形態1及び2に限定されるものではない。これらの実施の形態に対して当業者が思い付く変形を施して得られる形態、及び、これらの実施の形態における構成要素を任意に組み合わせて実現される別の形態も本発明に含まれる。
【0072】
例えば、上記実施の形態1及び2では、複数のパッチ列は、Lab色空間の色平面上(ab平面)で色相を略均等に分割するように配色されている。このような構成に代えて、YCbCr色空間の色平面(CbCr平面)上で色相を略均等に分割するように、複数のパッチ列を配色することもできる。
【0073】
また、上記実施の形態1及び2では、各パッチ列に含まれる複数のパッチは、彩度及び色相が同一になるように配色されている。このような構成に代えて、複数のパッチの彩度及び色相のいずれか一方が同一になるように配色することもできる。
【0074】
また、上記実施の形態2では、パッチ列L1〜L3はそれぞれ、レッド、グリーン及びブルーの色相のパッチを含むように構成されている。このような構成に代えて、パッチ列L1〜L3はそれぞれ、シアン、マゼンタ及びイエローの色相のパッチを含むように構成することもできる。
【0075】
また、上記実施の形態1及び2では、ガンマ補正部は、ガンマ変換テーブル生成部により生成されたガンマ変換テーブルに基づいて画像データをガンマ補正する。このような構成に代えて、ガンマ補正部は、補正関数パラメータ取得部により取得された補正関数パラメータに基づいて、所定の関数によるソフト演算処理を行うことにより、画像データをガンマ補正することもできる。
【0076】
本発明に係るキャリブレーションチャート、画像処理装置及び画像処理方法は、例えばスキャンキャリブレーション処理又はスキャンtoプリントキャリブレーション処理に適用することができる。スキャンキャリブレーション処理とは、キャリブレーションチャートをスキャンし、そのスキャンデータからパラメータをキャリブレーションする処理である。スキャンtoプリントキャリブレーション処理とは、スキャンした画像データをプリンタにて出力するコピー処理において、プリンタにて出力したキャリブレーションチャートを用いて、そのスキャンデータからプリントされるまでのパラメータをキャリブレーションする処理である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、良好なグレーバランス調整を行うことができるキャリブレーションチャート、画像処理装置及び画像処理方法として利用することができ、例えば複合機等に適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 画像処理装置
2 CPU
3 ROM
4 RAM
7 操作パネル
9 スキャナ
10 プリンタ
15,40 キャリブレーションチャート
16 読取部
17 ガンマ補正部
20 ガンマ変換テーブル生成部
21 目標値記憶部
22 ガンマ変換テーブル記憶部
26 パッチ
28 読取値取得部
29 補正関数パラメータ取得部
30 補正関数パラメータ記憶部
31 生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データをガンマ補正する際に用いられるキャリブレーションチャートであって、
記録媒体と、
前記記録媒体に配置され、互いに異なる色相に対応する複数のパッチ列と、を備え、
前記複数のパッチ列の各々には、彩度を含み且つ明度が段階的に変化するように配色された複数のパッチが含まれ、前記複数のパッチ列は、色平面上で原点に対して対称となる位置に配色されている
キャリブレーションチャート。
【請求項2】
前記複数のパッチ列は、それらの重心が色平面の原点又はその近傍に位置することにより、色平面上で原点に対して対称となる位置に配色される
請求項1に記載のキャリブレーションチャート。
【請求項3】
前記複数のパッチ列は、色平面上で色相を均等に分割するように配色されている
請求項1又は2に記載のキャリブレーションチャート。
【請求項4】
前記複数のパッチ列の各々において、前記複数のパッチの彩度及び色相は同一である
請求項1〜3のいずれか1項に記載のキャリブレーションチャート。
【請求項5】
前記複数のパッチの各々の彩度は、0よりも大きく且つ20以下である
請求項1〜4のいずれか1項に記載のキャリブレーションチャート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のキャリブレーションチャートを読み取ることにより、前記キャリブレーションチャートに配置された複数のパッチの各々に対応する読取値を取得する読取部と、
前記読取部より出力される画像データをガンマ補正するガンマ補正部と、
前記複数のパッチの各々に対応する目標値が記憶された目標値記憶部と、
前記読取値及び前記目標値より補正関数パラメータを取得する補正関数パラメータ取得部と、を備え、
前記読取部により取得される前記読取値は、彩度を含み且つ明度が段階的に変化するように配色された前記複数のパッチの各々に対応し、前記読取値に対応する前記複数のパッチは、互いに異なる色相に対応し且つ色平面上で原点に対して対称となる位置に配色された複数のパッチ列に含まれており、
前記補正関数パラメータ取得部は、前記複数のパッチ列に含まれる前記複数のパッチについて、前記読取値と前記目標値とを対応付けることにより前記補正関数パラメータを取得し、前記ガンマ補正部は、取得された前記補正関数パラメータに基づいてガンマ補正を行う
画像処理装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のキャリブレーションチャートを読み取る読取ステップと、
前記キャリブレーションチャートに配置された複数のパッチの各々に対応する読取値を取得する読取値取得ステップと、
前記読取値及び前記複数のパッチの各々に対応する目標値より、画像データをガンマ変換する際に用いられる補正関数パラメータを取得する補正関数パラメータ取得ステップと、を含み、
前記読取値取得ステップで取得される前記読取値は、彩度を含み且つ明度が段階的に変化するように配色された前記複数のパッチの各々に対応し、前記読取値に対応する前記複数のパッチは、互いに異なる色相に対応し且つ色平面上で原点に対して対称となる位置に配色された複数のパッチ列に含まれており、
前記補正関数パラメータ取得ステップでは、前記複数のパッチ列に含まれる前記複数のパッチについて、前記読取値と前記目標値とを対応付けることにより前記補正関数パラメータを取得する
画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−61494(P2013−61494A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200004(P2011−200004)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】