説明

キャンドルプレコート濾過装置による醤油の製造

本発明は、醤油を製造する方法と、醤油の製造中に得られる液体を濾過するためにキャンドルプレコート濾過装置を使用することと、キャンドルプレコート濾過装置を使用して製造される醤油と、に関する。本方法は、例えば、原料を処理して混合するステップと、原料の栄養成分を、特に、発酵もしくは加水分解またはその両方によって処理するステップと、得られた液体をキャンドルプレコート濾過装置を使用して濾過するステップであって、濾過する液体が未濾過液領域に導かれ、液体の一部分がキャンドルフィルタによって濾過されて濾液流として排出され、液体の別の部分がキャンドルフィルタの上端部またはその上方において未濾過液流として未濾過液領域から排出される、ステップと、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、醤油を製造する方法と、醤油の製造中にもろみから得られる液体を濾過するためにキャンドルプレコート濾過装置を使用することと、キャンドルプレコート濾過装置を使用することによって製造される醤油と、に関する。
【背景技術】
【0002】
醤油は、約5000年前に中国で発明された。元々は、八丁味噌(発酵したペースト状の大豆)を製造するときに得られる液体であった。大豆のみから製造される伝統的な醤油である、たまり(中国)と、大豆および炒った穀類(通常は小麦)から製造される醤油(日本)とは、区別される。製造ステップは、実質的に以下のとおりである。図5に示したように、最初のステップにおいて、大豆全体を加熱または煮たものと、炒って割砕した小麦とを、乾燥した状態で混合する。糸状菌(アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・オリゼ)を入れると、麹と呼ばれる乾いたマッシュ状になる。2〜3日のうちに、最初の発酵において穀類は灰色の状態にある。次に、熟成した麹に、最大20%の塩(NaCl)を含んだ塩水を加える。2回目の発酵ステップの間、大きな樽または桶の中でこの麹が熟成してもろみになる。2回目の発酵ステップの期間は、1〜4ヶ月またはそれ以上である。
【0003】
原料の栄養成分を変換する加水分解によって醤油を製造することもできる。
【0004】
変換(例えば2回目の発酵)の後、液体または熟成したもろみをもう一度短時間だけ煮ることができる。煮た後の生成物は、蛋白質が分解される結果として濾過が難しいので、固体成分を分離するため生成物を数日かけて沈殿槽に送る(沈殿の期間は少なくとも3日間)。次に濾過し、必要であれば低温殺菌を行う。
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、もろみから得られる液体を濾過することが難しい。従来、この液体は、例えば、濾過器または分離器(遠心分離器)を用いて濾過される。しかしながら、1日に約2500tもの大量の醤油を生産する場合、公知の方法はスループットが小さいため非効率的である。公知の濾過器は耐用期間が短く、したがって段取り時間が長い。したがって、本発明の目的は、より効率的かつ簡素な方法で醤油を濾過することである。
【0006】
本発明によると、この目的は、請求項1、請求項9、および請求項11の特徴によって達成される。
【0007】
本発明によると、原料の栄養成分を、発酵によって、もしくは酸加水分解によって、またはその両方によって、変換することができる。
【0008】
酸加水分解においては、蛋白質、油、および炭水化物が化学的に分解される。その後、オプションとして、発酵のため乳酸菌および酵母菌を加えることができる。
【0009】
発酵による変換においては、最初の発酵を行って麹を造り、2回目の発酵を行ってもろみを造ることが好ましい。
【0010】
原料の栄養成分を変換した後、蛋白質の形の粕を分離できるように、得られた液体を煮ることが有利である。
【0011】
本発明によると、栄養成分を変換した後、特に、2回目の発酵の後、得られた液体(特に、熟成したもろみから得られる)をキャンドルプレコート濾過装置によって濾過する。濾過する液体(すなわち未濾過液)を未濾過液室に導き、この場合、一部分を未濾過液室から未濾過液流としてもう一度排出する一方で、残りの部分をキャンドルフィルタで濾過して濾液流として排出する。すなわち、未濾過液流の一部分はキャンドルフィルタを通過せず、濾過槽からそのまま出て行く。醤油(例えば、熟成したもろみから得られる液体)を濾過することが極めて難しい場合でも、未濾過液流は濾過装置内で底部の流れを形成することができ、これによって、キャンドルフィルタに濾過促進剤が均一に堆積する。特に重い濾過促進剤は濾過装置の上部領域まで運ばれ、キャンドルフィルタに均一に堆積させることができる。キャンドルフィルタに加わる濾滓も、同様にキャンドルフィルタの全長にわたり均一に分布する。キャンドルフィルタのどの位置でも濾滓の粒子サイズは一様に分布する。すなわち、濾過することが難しい液体(特に、もろみからの液体)も、効率的に濾過することができる。均一な堆積および均一な濾液品質を確保することができる。従来のプレコート濾過装置またはキャンドルプレコート濾過装置による濾過は、醤油の難濾過性のため効率的ではなかった。さらに、濾過促進剤を節約することができる。使用する濾過促進剤および特定の沈殿速度に未濾過液流を正確に合わせることができる。したがって、さまざまな濾過促進剤を採用することができ、これによって醤油の難濾過性が改善される。したがって、請求項1による方法では、より高い濾過性能およびより長い耐用期間が可能となり、段取り時間が明らかに短縮される。排出された未濾過液は、迂回経路を通じて再び未濾過液室に供給することができる。
【0012】
濾過する前に、液体を分離器(遠心分離器)に導いて、特に、粕を分離することができる。このステップの前に、液体を沈殿槽に導くことができる。
【0013】
ステップbの後(すなわち、栄養成分を変換した後、特に、もろみを造るための2回目の発酵を行った後)に得られる液体、特に熟成したもろみを煮ることが有利である。次いで、ステップcの前(すなわち濾過の前)に、液体から、特に、煮たもろみから、粕、特に粗い粕(coarse sludge)を、分離する。これは、渦流装置(whirlpool)によって、もしくは分離器によって、またはその両方によって達成される。渦流装置を使用して粗い粕を分離する場合、煮た直後に分離を行うことができ、したがって、対応する槽において時間をかけて沈殿させる必要がない。渦流装置によって粗い粕をあらかじめ除去した液体を、キャンドルプレコート濾過装置による濾過に直接供給することができ、これにより製造が相当に単純化される。
【0014】
濾過促進剤としては、例えば、珪藻土、パーライト、セルロース、または繊維質材料を使用する。これらの濾過促進剤は、醤油を濾過するうえで特に有利である。
【0015】
さらに、濾過の後、醤油を殺菌または低温殺菌することができる。
【0016】
醤油の生成にキャンドルプレコート濾過装置を使用し、この濾過装置は、未濾過液室を有する濾過槽と、未濾過液の注入口と、未濾過液室の中に配置されているいくつかのキャンドルフィルタと、濾液流を発生させることのできる濾液の排出口と、未濾過液の排出口(未濾過液室の中、キャンドルフィルタの上端部またはその上方に配置されている)とを備えている。キャンドルプレコート濾過装置は、濾液流と未濾過液流の割合を調整できるように、濾液流および未濾過液流を制御する装置を含んでいることが有利である。本発明において、排出口は、実際の使用時に、所望の量を外側に排出することのできる(すなわち、そのための適切な直径を有する)(1つまたはいくつかの)排出口を意味する。
【0017】
これに加えて、またはこれに代えて、キャンドルプレコート濾過装置は、醤油を製造するとき、特にもろみから得られる液体を安定化する(stabilize)目的にも使用することができる。この場合、液体を安定化するとは、例えば、コロイド安定性を高める、濁りをなくす、香りおよび味の面での品質を高める/長持ちさせることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による方法の基本的な一連のステップを概略的に示している。
【図2】本発明による方法において使用されるキャンドルプレコート濾過装置の縦断面図を概略的に示している。
【図3】本発明による方法において使用することのできる渦流装置の縦断面図を概略的に示している。
【図4】円錐状の粕が堆積した渦流装置の一部分の断面を概略的に示している。
【図5】従来技術による醤油の製造方法の一連のステップを概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明について、添付の図面を用いてさらに詳しく説明する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態による方法について、図1を参照しながらさらに詳しく説明する。
【0021】
最初に、原料を用意して処理する。前述したように、醤油は、大豆のみから、または大豆と穀類の混合物から製造することができる。本実施形態においては、例えば、小麦(S1)と大豆(S4)とを重量比1:1で使用する。最初に、小麦を炒り(S2)、次いで割砕する(S3)。大豆は、浸漬して加熱または煮る(S5/S6)。あるいは、蒸すことによって大豆に水分を含ませることも可能である。例えば、大豆を蒸気によって5分間、約130℃に加熱することができ、これによって大豆が柔らかくなる。10トン/時の大豆処理を行うためには、8トン/時の蒸気が必要である。
【0022】
次いで、両方の原料を乾燥状態で互いに混合する。糸状菌(アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・オリゼ)を加えると、麹と呼ばれる乾燥したマッシュが得られる。この乾燥した麹には酵素が形成されており、この酵素が次の発酵に大きく影響する。具体的には、小麦と大豆の成分を加水分解する酵素が形成される。最初の発酵(S7)時、穀類が発酵して灰色の状態になる。麹の発酵は麹室の中で行い、気温、湿度、および空気流量を麹室によって調節する。最初の発酵は、例えば2〜3日間(例:72時間)かけて、例えば常温で行う。
【0023】
熟成した麹に、食塩水、特にNaCl水溶液を加える。食塩水の塩の含有量は最大で20%、特に、16〜18%である。次いで、この混合物を樽または桶の中に層状に配置し、その状態で数日間かけてさらに発酵させる(S8)。
【0024】
桶から液体を回収し(S9)、別の桶または樽の中に移送する。ここで残渣を除去することができる(S17)。2回目の発酵において(S10)もろみが熟成し、このとき、ステップS7で形成された酵素によって大豆の蛋白質が分解されてアミノ酸になり、でんぷんが分解されて糖が形成され、糖は乳酸とアルコールに変化する。この発酵工程を少なくとも4ヶ月かける。発酵期間中は、望ましくない微生物が発生することがないように、もろみに空気を供給する。温度は、例えば常温である。60〜80Brixの糖溶液を加えることが可能である(S19)。しかしながら、糖を加えない製造法も存在する。糖は、最初の発酵(S7)より後、2回目の発酵より前に加えることができる。同様に、より遅く2回目の発酵中に糖を加えることも可能である。製造法によっては、さまざまな工程ステップにおいて塩を加えることもできる(S20)。
【0025】
2回目の発酵の終了後、蛋白質を分離できるように、もろみを煮る(S11)。具体的には、管式熱交換器によって約90℃以上でもろみを煮て、熱い状態、例えば70〜97℃(特に90℃)を約10〜30分(特に20分)維持する。
【0026】
煮た後ただちに、粗い粕を分離するため、熟成したもろみを渦流装置1に導くことが好ましい(S12)。これに代えて、またはこれに加えて、(渦流装置1の前または後に)液体を分離器または沈殿槽に導くこともできる。渦流装置1(例えば図3に示してあり、後から詳しく説明する)の中で、もろみを円筒状容器の壁4に対して実質的に接線方向に注入し、容器の内側で回転的な流れを発生させる。したがって、渦流装置1の底部10に粗い粕が円錐状に沈殿する。この粗い粕を渦流装置から除去することができる(S16)。渦流装置から得られる液体/醤油を回収し(S13)、直接濾過することができる(S14)。渦流装置1からの液体を最初に沈殿槽に供給して、残っている粕粒子を沈殿させることも可能である。いずれの場合も、沈殿時間は、従来の数日間にわたる沈殿時間よりも明らかに短く、なぜなら、渦流装置によって粕の大部分を除去しておくことができるためである。もろみを煮てから濾過するまでの期間(S11からS14までの期間)は、約0〜2日である。渦流装置の前に液体を沈殿槽に供給することも可能である。
【0027】
濾過方法としては、特にプレコート濾過が適している。特に、この目的にはキャンドルプレコート濾過装置を使用することができ、この濾過装置は、図2に示してあり後から詳しく説明する。
【0028】
ステップ14の後、最後に醤油の殺菌/低温殺菌を行うことができ(S15)、特に、醤油を短時間(すなわち少なくとも75℃に)加熱することができる。この場合、醤油を熱交換器(特に、管状熱交換器)に通すことができる。以下では、醤油の製造に使用される渦流装置1について、図面を用いてさらに詳しく説明する。渦流装置1は、底部10を有する静置型の円筒状容器4を備えており、この底部10は、澄んだ液体のための排出口の方に傾いていることが好ましい。渦流装置1は、実質的な接線注入口5(substantially tangential inlet)を備えており、この注入口5は、図1および図2において矢印で示したように、注入される液体が容器4の内壁に当たって流れて容器中で中心軸線Mの周りに回転流が形成されるように、円筒状容器4に対して実質的に接線方向に配置されている。渦流装置は、容器本体の周囲の断熱材8と、換気煙突3を有するヒュームフード2とをさらに備えていることが好ましい。さらに、渦流装置は、CIP(定置洗浄)のための装置7と、粕を洗浄および排出するための洗浄ノズル9とを備えていることが好ましい。
【0029】
容器の直径と渦流装置の内容物の高さの比は、1:1〜5:1とすることができ、2.5:1が有利である。
【0030】
渦流装置は、例えば1〜10mの直径を有する。図1に示した渦流装置に加えて、煮る工程の後に熟成したもろみを渦流装置1の中に送り込むためのポンプが設けられている。もろみの流入速度は、2〜4m/s以下、特に3〜3.5m/s以下とするべきである。
【0031】
特に図2において理解できるように、向心加速度および底部の流れによって、渦流装置の底部の中央に円錐状に粕が堆積し、この円錐状の粕は、残留流れによって運ばれない。渦流装置1の中に最大高さ以下の特定の量のもろみを注入した後、装置中に約5〜600分間そのまま置くことができる。次いで、澄んだ液体を排出口6から排出することができる。渦流装置を洗浄すると、再び使用可能になる。
【0032】
渦流装置の使用に関する上記の説明は、2回目の発酵S10の後に煮る工程S11を行う実施形態に関連している。2回目の発酵の直後に煮る工程を行わない方法においても、渦流装置1を使用することができる。その場合、発酵桶または発酵樽からもろみを渦流装置の中に直接送り込むことができ、その後、濾過および殺菌を行うことができる。
【0033】
図2は、本方法による方法のステップS14において使用されるキャンドルプレコート濾過装置20を示している。キャンドルプレコート濾過装置20は、未濾過液室21を有する濾過槽23を備えている。未濾過液室21には複数の(例:20〜200本の)キャンドルフィルタ22が配置されている。キャンドルフィルタ22は、1本または複数の排出管29に固定されており、したがって、キャンドルフィルタ22から少なくとも1本の排出管29を通じて少なくとも1つの排出口33に濾液を供給して濾液流を発生させることができる。すなわち、キャンドルフィルタ22はまとまって管システム(いわゆるレジスタ)を形成している。濾液(すなわち濾液流)の流出量は、例えば流量調節弁28などの装置によって調節することができる。濾液は、濾過装置20からポンプ(図示していない)によって運ばれる。
【0034】
実質的に中空の円筒状キャンドルフィルタ22は、対応する流体入口を有する中空の円筒状フィルタエレメント(図示していない)を備えている。このフィルタエレメントは、例えば、螺旋状に巻かれたワイヤから形成することができ、流体入口はワイヤの巻きの間に画成されており、キャンドルフィルタは、下端部において閉じており、上端部において排出管29に固定されている。
【0035】
濾過槽23は、もろみから得られる液体の(すなわち未濾過液の)注入口30をさらに備えている。未濾過液の流入量は、例えば、流量調節弁31によって調節することができる。さらに、濾過槽23は、未濾過液のうち未濾過液室21から出る部分のための排出口24を備えている。未濾過液流の量は、対応する装置(この実施形態では流量調節弁27)によって制御することができる。未濾過液の排出口24は、キャンドルフィルタ22の端部またはその上方に位置している。したがって、特定の未濾過液流UFを発生させることができる。制御可能な2つの部分的な流れ(すなわち濾液流Fおよび未濾過液流UF)が形成されることによって、フィルタ面に対する所定の、特に、制御可能な流れを達成することが可能である。
【0036】
未濾過液の排出口24は、迂回経路25に結合することができ、迂回経路25は未濾過液の注入口まで延びており、未濾過液を未濾過液室21に戻す。濾液流および未濾過液流を制御する装置28,27,31は、制御装置(図示していない)によって動作させることができる。
【0037】
したがって、キャンドルプレコート濾過装置20の動作時、液体(ステップS11において煮て、S12において渦流装置1によって粗い粕を除去した液体)が、ポンプ(図示していない)によって注入口30を介して濾過装置20の中に導かれ、この場合、液体に濾過促進剤(具体的には、珪藻土、パーライト、セルロース、または他の繊維質材料)を加える。実際に濾過する前に、水に溶けた濾過促進剤をキャンドルフィルタ上に堆積させてフィルタ層を形成しておくならば、有利であり得る。濾過中には、フィルタ層を維持するため、未濾過液において濾過促進剤を絶え間なく計測してフィルタに供給する。言い換えれば、濾過前および濾過中、キャンドルフィルタ22の表面に均一なプレコート層が形成される。排出口24の作用も手伝って、排出口24の方向への(矢印によって示してある)所定の未濾過液流UFが形成され、これにより均一な堆積を得ることができる。排出口24から排出されない未濾過液は、キャンドルフィルタ22の流体入口を通じてキャンドルフィルタの中に流れ込んで濾過される。キャンドルフィルタ22の内側を上向きに流れて(1本または複数の)排出管29に達し、そこから濾液流として濾液排出口33を通じて流れ出る。
【0038】
この濾過装置は、濾過することが難しい醤油も濾過することができる。したがって、本方法では、高い濾過性能を得ることができる。回収される濾液流は、50〜700hl/時のオーダーである。濾液流と未濾過液流の割合は、1:1〜1:10の範囲内であることが有利である。さらに、使用する濾過促進剤と、濾過して除去する液体中の粒子およびその特定の沈殿速度とに、未濾過液流を正確に合わせることができる。したがって、さまざまな濾過促進剤を使用することができ、これにより、濾過することが難しい醤油の濾過が可能となる。
【0039】
フィルタの耐用期間は、極めて長い。濾過する液体が渦流装置もしくは分離器(遠心分離器)またはその両方によってあらかじめ処理されている場合、濾過を特に効率的に行うことができる。
【0040】
この実施形態においては、栄養成分の変換工程は発酵によって達成される。
【0041】
本発明によると、原料の栄養成分を、発酵によって、もしくは酸加水分解によって、またはその両方によって、変換することができる。
【0042】
酸加水分解においては、蛋白質、油、および炭水化物が化学的に分解される。その後、オプションとして、発酵のための乳酸菌および酵母菌を加えることができる。
【0043】
ここまで、醤油の製造中に得られる液体(特に、もろみから得られる液体)の濾過について、主として説明した。しかしながら、本発明による方法およびキャンドルプレコート濾過装置は、各場合の液体の濾過および安定化の組合せ、または液体の安定化のみに使用することもできる。安定化剤としては、例えばケイ酸調製物やPVPP(ポリビニル・ピロリドン)が挙げられる。安定化は、例えば図1におけるステップ14において、またはステップ14の後に行うことができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
醤油を製造する方法であって、
a)原料を処理して混合するステップ(S1〜S6)と、
b)前記原料の栄養成分を、特に、発酵もしくは加水分解またはその両方によって変換するステップ(S7〜S9)と、
c)得られた液体をキャンドルプレコート濾過装置(20)によって濾過するステップ(S14)であって、濾過される前記液体が未濾過液室(21)に導かれ、一部分がキャンドルフィルタによって濾過されて濾液流として排出され、前記液体の一部分が前記キャンドルフィルタ(22)の上端部またはその上方において未濾過液流として前記未濾過液室(21)から排出される、ステップ(S14)と、
を含んでいる、醤油製造方法。
【請求項2】
ステップb)が、
b)最初の発酵を行って麹を造るステップ(S7)と、
c)2回目の発酵を行ってもろみを造るステップ(S10)と、
を含んでいる、
請求項1に記載の醤油製造方法。
【請求項3】
濾液流と未濾過液流の割合が調整可能であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の醤油製造方法。
【請求項4】
排出された前記未濾過液が迂回経路(25)を通じて前記未濾過液室(21)に再び供給されることを特徴とする、
請求項1から請求項3の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップc)における前記濾過の前に、前記液体が分離器に供給されることを特徴とする、請求項1から請求項3の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)の後に、前記液体、特に、前記もろみが煮られ、ステップc)の前に、煮られた前記液体、特に、煮られた前記もろみから、粕、特に、粗い粕が、特に、渦流装置(1)によって、もしくは分離器によって、またはその両方によって、分離されることを特徴とする、
請求項1から請求項4の少なくとも1項に記載の醤油製造方法。
【請求項7】
珪藻土、パーライト、セルロース、繊維質材料からなる群、からの濾過促進剤が使用されることを特徴とする、請求項1から請求項6の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項8】
ステップc)の後に、前記醤油が、特に、短時間の熱処理によって殺菌または低温殺菌されることを特徴とする、請求項1から請求項7の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項9】
醤油の製造中に、特に、もろみから得られる液体を濾過するもしくは安定化するまたはその両方を行うためにキャンドルプレコート濾過装置を使用することであって、前記キャンドルプレコート濾過装置(20)が
未濾過液室(21)を有する濾過槽(23)と、
未濾過液の注入口(2)と、
前記未濾過液室(21)の中に配置されているいくつかのキャンドルフィルタ(22)と、
濾液流(F)を発生させるための、濾液の排出口(33)と、
未濾過液の排出口(24)であって、未濾過液流(UF)を発生させるため、前記未濾過液室(21)の中、前記キャンドルフィルタ(22)の上端部またはその上方の領域に配置されている、前記排出口(24)と、
を備えている、
キャンドルプレコート濾過装置の使用。
【請求項10】
前記キャンドルプレコート濾過装置(20)が、前記濾液流(F)および前記未濾過液流(UF)の量を制御する装置(27,28)、を含んでいることを特徴とする、請求項9に記載の、キャンドルプレコート濾過装置の使用。
【請求項11】
キャンドルプレコート濾過装置(20)を使用することによって製造される醤油であって、
醤油の製造中に得られる液体が、前記キャンドルプレコート濾過装置(20)の未濾過液室(21)の中に導かれ、一部分がキャンドルフィルタ(22)によって濾過されて濾液流として排出され、別の部分が前記キャンドルフィルタ(22)の上端部またはその上方において未濾過液流として前記未濾過液室(21)から排出される、
醤油。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−522526(P2012−522526A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503908(P2012−503908)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002079
【国際公開番号】WO2010/115575
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(506040652)クロネス アクティェンゲゼルシャフト (55)
【Fターム(参考)】