説明

キラル化合物分離剤および分離カラム

【課題】さまざまな光学異性体の分離に適用でき、製品管理の簡略化や、実験の効率化や、生産性の向上に繋がるキラル分離材およびカラムの提供。
【解決手段】前記課題を解決するために、本発明は、
(1)メソ細孔を持つシリカ基材をベースとしたキラル分離剤、
(2)メソ細孔を持つシリカ基材をベースとしたキラル分離剤を充填した分離カラム、
(3)側鎖を有するアミノ酸系の界面活性剤と該界面活性剤の前記側鎖と相互作用する側鎖を有する有機シラン剤と混合、熟成、ろ別、焼成工程を経て作成されるシリカ基材の製造方法であって、前記界面活性剤としてフェニルを有する界面活性剤を用いるシリカ基材の製造方法、
の採用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラル化合物の分離に関し、特に、そのキラル化合物分離剤および分離カラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーの領域では、従前からマイクロスケールのビーズをステンレス製、ガラス製のカラムに充填して物質(タンパク、核酸、中低分子化合物)の分析が行われてきた。そのなかで、アミノ酸、糖、医薬低分子化合物どの光学異性体を分離するキラル充填剤も幅広くさかんに使用されてきた。
【0003】
【非特許文献1】株式会社ワイエムシイHP
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のキラル分離ビーズは、主として、シリカなどの無機基材をさまざまなリガンドで修飾して、光学活性体との選択的な相互作用を強めることにより、分離を実現しようとするものが主であった。したがって、ある化合物のために設計された分離材を他の化合物の分離に適用しようとした場合、巧くいかないことが多く、改めて分離材を設計しなおすといったことが頻繁に行われていた。そのため、キラル分離ビーズは、通常の、逆相分離材などと比べて、その数が多いことで知られていた。
そこで、本発明は、さまざまな光学異性体の分離に適用が可能な新規なキラル化合物分離剤および分離カラムを提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、 前記課題を解決するために
(1)メソ細孔を持つシリカ基材をベースとしたキラル分離剤、
(2)メソ細孔を持つシリカ基材をベースとしたキラル分離剤を充填した分離カラム、
(3)側鎖を有するアミノ酸系の界面活性剤と該界面活性剤の前記側鎖と相互作用する側鎖を有する有機シラン剤と混合、熟成、ろ別、焼成工程を経て作成されるシリカ基材の製造方法であって、前記界面活性剤としてフェニルを有する界面活性剤を用いるシリカ基材の製造方法、
(4)側鎖を有するアミノ酸系の界面活性剤と該界面活性剤の前記側鎖と相互作用する側鎖を有する有機シラン剤とを混合、熟成、ろ別、焼成工程を経て作成され、かつ前記界面活性剤としてフェニルを有する界面活性剤を用いたことを特徴とするシリカ基材、
を提供することにある。
【発明の効果】
【0006】
上記キラル分離材およびカラムを利用することにより、さまざまな光学異性体の分離に適用でき、製品管理の簡略化や、実験の効率化や、生産性の向上に繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の一実施形態を説明するが、本発明は、下記に限定されるものではない。
【実施例1】
【0008】
アラニンなどのアミノ酸を原料にしたキラルなアニオン性界面活性剤、ケイ素モノマー(テトラエトキシシランおよび第四級アンモニウム塩官能基を有するシラン)を混合し、攪拌速度を制御しつつ塩酸でpHを調節しながらケイ素モノマーを重合させることにより、シリカを合成した。室温で生成した沈殿物を熟成し、ろ過により分離回収した後、高温で焼成することによって有機物(アニオン性界面活性剤など)を除去して、メソ細孔を持つシリカを得た。この物質を電子顕微鏡を用いて観察したところ、粒子径が100−500ナノメートルのねじれた球状物質であることが分かった。この物質の内部には非常に多くの(千個程度)のらせん状の細孔が規則正しく配列しており、どの細孔も直径は1−10ナノメートル、ねじれのピッチは1−5ミクロンであった。
【0009】
アラニンを原料にしたアニオン性界面活性剤は自己組織化して集合し、キラルなネマチック相を形成することが知られている。このような自己組織体が鋳型になって、そのまわりでケイ素モノマーが重合してシリカが生成することによって、そのキラルな構造がシリカに転写し、らせん状細孔からなるメソポーラスシリかが得られたものと考えられる。この球状シリカにいわゆるC18、C8,C4、C1,CN,Ph(以上逆相系)、アミド(順相系)、イオン交換、OH(サイズ排除)など周知のリガントを修飾して、分離する化合物の特性に応じて疎水性、親水性、イオン性などを適宜最適化して適用することができる。無論、シリカ単独での使用も可能である。
【0010】
上記のようにして得た分離材(シリカをC1で表面処理し、疎水性を若干付与)を予め基板上に形成した10ミクロン−1000ミクロンのマイクロチャネルに充填をしてマイクロ分離カラムを作製し、ナノ、マイクロレベルでの分離に供した。例えば、このカラムによると、生体吸収性材料として知られるD,L乳酸の分離を良好に行うことができた。
上記実施例1の充填材では、界面活性剤と結合するシラン剤にアンモニウム塩を用いたため、焼成後にこれが残存してしまい、イオン排除モードが存在する。このモードの並存が、分離に影響する場合には溶離液条件など調整することや、その後の表面処理によってその影響を少なくすることは可能である。
【実施例2】
【0011】
界面活性剤として、フェニルアラニンなどフェニルを有するアミノ酸系の界面活性剤を使用し、シラン剤として、フェニル側鎖を備えたものを用いて上記同様にしてキラル配向したメソ細孔を有するシリカを合成することができる。この実施例では、アンモニウムイオンが存在しない変わりに、フェニルによるπ−π相互作用が分離に寄与することになる。
本発明にかかるキラル分離ビーズは、バイオ領域、臨床領域、創薬領域など、さまざまな領域で使用される液体クロマトグラフィーの分離カラムとして適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソ細孔を持つシリカ基材をベースとしたキラル分離剤。
【請求項2】
メソ細孔を持つシリカ基材をベースとしたキラル分離剤を充填した分離カラム。
【請求項3】
側鎖を有するアミノ酸系の界面活性剤と該界面活性剤の前記側鎖と相互作用する側鎖を有する有機シラン剤とを混合、熟成、ろ別、焼成工程を経て作成されるシリ力基材の製造方法であって、前記界面活性剤としてフェニルを有する界面活性剤を用いるシリカ基材の製造方法。
【請求項4】
側鎖を有するアミノ酸系の界面活性剤と該界面活性剤の前記側鎖と相互作用する側鎖を有する有機シラン剤とを混合、熟成、ろ別、焼成工程を経て作成され、かつ前記界面活性剤としてフェニルを有する界面活性剤を用いたことを特徴とするシリカ基材。

【公開番号】特開2006−192374(P2006−192374A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6899(P2005−6899)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(390024442)株式会社ワイエムシィ (22)
【Fターム(参考)】