説明

キラル無機−有機複合多孔性物質及びその製造方法

本発明は、電荷バランス陽イオンを含む多孔性無機物において、陽イオン性キラル有機分子が電荷バランス陽イオンとして存在することを特徴とするキラル無機−有機複合多孔性物質及び、イオン交換方法によるキラル無機−有機複合多孔性物質の製造方法を提供する。本発明のキラル無機−有機複合多孔性物質は、安定性、選択性及び耐久性などに優れており、キラル選択性触媒または異性体混合物の分離物質として使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキラル選択性触媒または異性体混合物の分離物質などとして利用可能なキラル有機−無機複合多孔性物質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬をはじめとして、殺虫剤、農薬、化粧品、食品栄養剤、添加剤、香料及び化合物の中間体に至るまで、前記用途として用いられる物質はしばしばキラルの対としてのみ存在する。しかしながら、キラルの対のうち一方の異性体だけが有用な物質として働く活性を示し、他方の異性体は非活性であるか、さらには、毒性を示すこともある。このため、今日、光学的に純粋な鏡像異性体を得ることを目指しての種々の要求が持続して出てきている。また、学界や産業界の研究者らは、光学的に純粋な化合物を合成するための一層信頼性良く効果的な反応メカニズムを見出したり、あるいは、非活性若しくは毒性を示す混合物から活性があって有用な物質を分離したりする上で多くの努力を注いでいる。
【0003】
一方、広い表面積を有する多孔性物質とは、金属酸化物、金属塩または有機−金属配位高分子化合物や有機物のネットワーク構造を内包する物質を意味するものであって、現在、生物学的な過程及び産業的な過程に要される分子の認識と吸着による搬送及び気体分子の分離などにおいて極めて重要な役割を果たすと知られている[Davis, M. E. Davis Nature 2002, 417, 813; Kesanli B.; Lin W., Coordination Chemistry Reviews, 2003, 246, 305]。
【0004】
前記多孔性物質に代表されるものとして、アルミニウムとシリコーンよりなる多孔性固体酸化物としてのゼオライトがある。ゼオライトは、規則的開孔構造のキャビティとトンネルを有するものであって、耐久性、再現性、熱的安定性に優れていることに加えて、構造的な特性による物理・化学的な性質が調節可能であることから、触媒、分離のための吸着剤、気体などの貯蔵容器として広範で且つ集中的に用いられてきている。また、イオン交換の過程を極めて手軽で且つ安価に行うことができ、しかも、廃棄物及び副産物をほとんど生じさせないというメリットがある。このため、科学者らは、化学的または電気的な感応装置または選択性膜と、高分解能の液体クロマトグラフィーの固定相への応用などをはじめとするゼオライトの新たな用途だけではなく、一層大きなキャビティとトンネルを有する新たなゼオライト物質を開発することを目指して努力している。
【0005】
上述したように、ゼオライトをはじめとする多孔性物質は、多くの構造的な長所を持っているにも拘わらず、極めて少数のキラル多孔性骨格構造の物質が製造されている。
【0006】
例えば、タンパク質分子が有する本来のキラル特性を有し、且つ、高い多孔性を保持するように架橋されたタンパク質結晶が製造されており、これを通じてのラセミ化合物の分離が非常に成功的に行われている[Vilenchik, Lez Z.; Griffith, J. P.; Clair, N. St.; Navia, M. A.; Margolin, A. L. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 4290]。また、キラル有機連結単位に金属イオンが配位することにより得られたMOF(Metal Organic Framework)型の固体が製造されているが、このような固体は、キラルキャビティとトンネル付きの開骨格構造を有するだけではなく、選択的な異性体の合成に際し、触媒や吸着剤としての応用性が十分に高いといわれている[Kepert, C. J.; Prior, T. J.; Rosseinsky, M. J. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 5158; Seo, J. S.; Whang, D.; Lee, H.; Jun, S. I.; Oh, J.; Jeon, Y. J.; Kim, K. Nature 2000, 404, 982]。しかしながら、このような高い多孔性の有機または有機−金属骨格構造物は、製造に高コストがかかるだけではなく、水素結合またはπ−π電子雲の重なりによる非結合相互作用により崩壊しやすい骨格構造を有し、熱的安定性に劣っているという欠点を有する。
【0007】
前記の如き有機または有機−金属骨格構造物とは異なり、ゼオライトは、広い表面積とSi−OとAl−Oの強い共有結合による位相の組み合わせが異性体の選択性と耐久性を決定する要素であると見られる。しかしながら、金属酸化物から直接的にキラルゼオライトを製造することには限界があるため、キラルゼオライトによる異性体の選択的合成または分離についての報告はあまりなされていないのが現状である。
【0008】
例えば、アルミノシリケートゼオライトβとチタノシリケートETS−10による異性体の合成及び分離についての報告がある。これらは極めて高密度な内部結晶成長物質であるため、極めて少ない結晶格子層においてしか、純粋異性体を保持することができない[Treacy, M. M. J.; Newsam, J. M. Nature 1988, 332, 249; Anderson, M. W.; Terasaki, O.; Ohsuna, T.; Philippou A.; Mackay, S. P.; Ferreira, A.; Rocha, J.; Lidin, S. Nature 1994, 367, 347]。
【0009】
これらの理由から、ゼオライトなどの多孔性物質そのものをキラル性のものに製造するよりは、キラル性有機分子を多孔性無機物質に固定または注入してキラル性の無機−有機複合多孔性物質を製造しようとする試みが行われている。無機−有機複合多孔性物質の製造は、温度や溶媒の選択などを考慮するとき、有機高分子に比べて作動条件が多岐に亘っているため、多くの関心を集めていた。ここで、キラル分子を固定及び注入するための無機支持体としては、ゼオライトが用いられてきている。
【0010】
ゼオライトの変形方法としては、ゼオライトの表面に存在するシラン基にキラル分子を共有結合により固定する方法が広く採用されてきており、このような方法は、無機−有機複合キラル物質が合成されるきっかけとなった。前記の如き方法を用いて、非キラルゼオライトやゼオライト類似体をキラル官能基化した幾つかの報告がある。
【0011】
高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)のキラル固定相として使用可能なメソ多孔性のシリカ物質としてのM41Sは、キラル分子を非キラル表面に共有結合することにより変形されたものである。これらは、一見して成功的な解決策を提示するかに思われたが、極めて低い効率を示していた[Thoelen, C.; van der Walle, K.; Vankelecom, I. F. J.; Jacobs, P. A. Chem. Commun. 1999, 1841]。また、ゼオライトやシリカに遷移金属錯体や有機分子を共有結合により固定して得たキラル無機−有機複合触媒についての報告があった。これは、実際に前記触媒の物理的な安定性はやや向上されていたが、鏡像異性体の選択性を持っていないレベルのものであった[Alcn, M. J.; Corma, A.; Iglesias, M.; Snchez, F. J. Mol. Cat. A: Chem. 2003, 194, 137]。また、ラセミ混合物を生成する溶液相の光反応において作用するキラル選択性触媒として、電荷バランス保持金属陽イオンにキラル分子を配位させることにより得られるキラルY−ゼオライトがあり、これは、90%を超えるキラルの選択性を示している[Chong, K. C. W.; Sivaguru, J.; Shichi, T.; Yoshimi, Y.; Ramamurthy, V.; Scheffer, J. R. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 2858]。
【0012】
しかしながら、上記の如き方法、すなわち、キラル分子をゼオライトの表面に共有結合する方法や、電荷バランス金属陽イオンにキラル分子を配位させる方法は、溶媒を選択する上で難点があり、構造的な安定性に劣るという限界を有し、結果的には、キラル分子が溶液中に漏れるという結果を招いてしまう。
【0013】
このため、キラル選択性触媒や異性体混合物の分離物質などとして使用可能なキラル多孔性物質についての開発が求められている。
【非特許文献1】Chong, K. C. W.; Sivaguru, J.; Shichi, T.; Yoshimi, Y.; Ramamurthy, V.; Scheffer, J. R. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 2858.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らは、ゼオライトまたは電荷バランス陽イオンを有するゼオライト類似体などの電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質にイオン交換方式によりキラル有機分子を電荷バランス陽イオンとして導入する方法を用いることにより、従来より用いられてきた方法、すなわち、キラル修飾剤をゼオライトの表面に共有結合させる方法よりも簡潔で、且つ効率よくキラル無機−有機複合多孔性物質を製造することができるということを知見した。
【0015】
そこで、本発明は、キラル無機−有機複合多孔性物質及びその製造方法、前記物質をキラル選択性触媒または異性体混合物の分離物質として用いる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質において、陽イオン性キラル有機分子が電荷バランス陽イオンとして存在することを特徴とするキラル無機−有機複合多孔性物質、及び前記物質をキラル選択性触媒または異性体混合物の分離物質として用いる方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、多孔性物質に含まれている電荷バランス陽イオンを陽イオン性キラル有機分子にイオン交換する段階を含むキラル無機−有機複合多孔性物質の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、イオン交換方式により陽イオン性キラル有機分子を電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質に電荷バランス陽イオンとして導入することにより、キラル無機−有機複合多孔性物質を製造することができる。このように、キラル無機−有機複合多孔性物質は、安定性及び耐久性などに優れているため、キラル選択性触媒または異性体混合物の分離物質などとして有効に使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明に係るキラル無機−有機複合多孔性物質を構成する無機支持体としては、電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質を用いることができる。
【0021】
電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質とは、多孔性構造を有すると共に、物質の電荷バランスを取るために陽イオンを必要とし、この陽イオンが他の陽イオンに交換可能な性質を有する物質であり、この明細書においては、前記陽イオンを「電荷バランス陽イオン」と称する。すなわち、本発明に係るキラル無機−有機複合多孔性物質の製造に用いられる無機支持体には、多孔性構造及び電荷バランス陽イオン交換の性質が求められるため、多孔性構造と電荷バランス陽イオン交換性質を有する物質は、その物質の構成成分とは無関係に本発明の均等範囲に属する。
【0022】
本発明において使用可能な電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質の非制限的な例としては、ゼオライト、電荷バランス陽イオンを有するゼオライト類似体、ASU(In1018{1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド[1,2−α]ピリミジン}(HO)15)、In1018(ジピペリジノメタン)(HO))、HKUST([Cu(ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート)(HO))またはこれらの混合体などがある。
【0023】
前記ゼオライトは、結晶性アルミノケイ酸塩の総称であって、アルミニウム原子とケイ素原子が正四面体構造に配位結合された結晶性複合酸化物を意味する。ゼオライト結晶の基本単位は、ケイ素原子(T)やアルミニウム原子(T)が4個の酸素原子と配位結合してなるTOであり、このような基本単位がどの方法により結合するかによって、ゼオライトの結晶構造が変わり得るので、多様な結晶構造が得られる。このようにケイ素とアルミニウム酸化物よりなるゼオライトが電気的に中性を示すためには、アルミニウムに相当する分の電荷バランス陽イオンが必要になるが、これは、+3の電荷を帯びるアルミニウム原子が周りの酸素原子4個と電気的にバランスを取れないためである。このため、前記ゼオライトが中性になるためには、さらなる陽イオンが必要になり、このような陽イオンを電荷バランス陽イオンと言い、これは、他の陽イオンに交換可能である。
【0024】
本発明において使用可能なゼオライトの好適な例としては、A−ゼオライト、Y−ゼオライト、X−ゼオライト、L−ゼオライトなどが挙げられ、中でも、Y−ゼオライトを用いることが最適である。これは、Y−ゼオライトは、高温または長時間に亘ってのイオン交換、脱水、吸着、高いH濃度の酸性条件などの化学的な取り扱いにも構造的に骨格が安定していると共に、しかも安価であるという効用性があるためである。
【0025】
前記ゼオライト類似体とは、ゼオライトの基本単位のうちT原子がケイ素やアルミニウムではない他の元素、例えば、Ga、P、Ge、Fe、Zr、Ti、Cr、B、Be、V、Zn、Asなどにより置換されている物質を意味する。このような物質は、ゼオライトと構成元素は異なるが、ゼオライトと同じ配列方法により構成される多孔性結晶であるため、ゼオライトに類似した可逆的な吸着−脱離過程及び分子ふるいの効果を示す。また、置換される元素によって、電荷バランス陽イオンが必要となる場合があり、この陽イオンは他の陽イオンに交換可能である。
【0026】
本発明に係るキラル無機−有機複合多孔性物質を構成する有機物質は、上述した無機支持体としての多孔性物質に含まれている電荷バランス陽イオンから陽イオン性キラル有機分子へと交換可能な有機分子、すなわち、キラル性と陽イオン性を有する有機分子であれば、特に制限無しに使用可能である。前記陽イオン性を有する有機分子には、陽イオン性と陰イオン性を併せ持つ分子も含まれる。特に、前記陽イオン性キラル有機分子として、アミノ酸を用いることが好ましい。
【0027】
これは、アミノ酸は、産業的な工程や生理学的な過程において化学反応の触媒の役割を果たすタンパク質やペプチドの構造単位体であるためである。また、アミノ酸は環境的に無害なものであり、酸性の官能基(−NH)と塩基性の官能基(−CO)を有する双性イオンであるためである。本発明においては、キラル性を有するアミノ酸、すなわち、キラルアミノ酸であれば、制限なしに使用可能である。これにより、電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質のキャビティとトンネルに種々のアミノ酸側鎖官能基、例えば、水酸基(セリンとトレオニン)、カルボキシル基(グルタミン酸)、スルホニル基(システインとメチオニン)、アミノ基(アスパラギンとグルタミン)、サイクリック基(ヒスチジンとトリプトファン)、アミン基(リシンとアルギニン)、疎水性基(ロイシン、プロリン、バリン、アラニン及びイソロイシン)及びフェニル基(フェニルアラニン)を導入することができる。
【0028】
本発明においては、上述した電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質の電荷バランス陽イオンを陽イオン性キラル有機分子にイオン交換することにより、キラル無機−有機複合多孔性物質を製造することができる。
【0029】
前記イオン交換方法としては、当技術分野における通常の方法であれば、特に制限はない。例えば、イオン交換は、室温下、過量の陽イオン溶液、好ましくは、完全なイオン交換に必要となる量の2倍以上の陽イオン溶液と陽イオン交換の対象物質とを接触することにより行うことができ、また、前記接触過程を繰り返して行うこともできる。特に、アミノ酸の場合は、上述した如き過程を15ないし100℃の範囲下で行うことができ、特に、約80℃下で行うことが好ましい。15℃未満である場合、陽イオンの交換効率が下がり、100℃を超える場合、ゼオライトなどやアミノ酸の崩壊を招くおそれがある。
【0030】
前記のようなイオン交換により電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質の非キラルのキャビティとトンネルに導入されたキラル有機分子は、陰電荷を帯びる前記多孔性物質の骨格構造との強い電気的な引力により多孔性物質にキラル性質を遷移する。このため、本発明に従い製造された無機−有機複合多孔性物質においては、キラル有機分子のキラル性とゼオライトまたは電荷バランス陽イオンを有するゼオライト類似体などの多孔性物質の構造が持っている物理的な特性、すなわち、熱的安定性、耐久性などの特性が調和可能である。また、キラル有機分子は、従来の方法とは異なり、イオン交換方式により多孔性物質の骨格構造の1構成要素である電荷バランス陽イオンとして存在するため、安定性が著しく向上する。前記のようにイオン交換方式により非キラル多孔性物質にキラル性を遷移する方法は、従来のキラルを共有結合させる方法に代えうる極めて有用な方法である。
【0031】
ところが、アミノ酸などの双性イオンを上述した如きイオン交換方式により電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質の電荷バランス陽イオンとして直接的に導入する場合は、その効率がやや低い。このような問題点を解消するために、本発明は、一実施の形態として、a)電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質の電荷バランス陽イオンを遷移金属陽イオンにイオン交換する段階と、b)前記段階a)において多孔性物質に導入された遷移金属陽イオンをアミノ酸、例えば、L−アミノ酸またはD−アミノ酸などのキラルアミノ酸にイオン交換する段階と、を含む方式を用いることを特徴とする。具体的に、アミノ酸の適用について説明すると、下記の通りである。
【0032】
アミノ酸は、双性イオンである中性の形で存在することが安定的であるが、このようなアミノ酸を前記多孔性物質の電荷バランス陽イオンに直接的にイオン交換する場合は、中性のアミノ酸が単に吸着される可能性があり、効率が下がる。このため、本発明においては、電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質のうち電荷バランス陽イオンをアミノ酸にイオン交換する前に、遷移金属陽イオンに交換することにより、電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質のpHを低減している。遷移金属陽イオンは、水を加水分解しようとする性質を持っており、さらに、前記の如き性質は、ゼオライトなどの多孔性物質の固体電解質の性質により大幅に増大するためである。このため、遷移金属陽イオンは、ゼオライトなどの多孔性物質の内部において加水分解によりOHとHを生成し、生成されたHにより低減されたpHは、アミノ酸のうち陰電荷を帯びるカルボキシル基がプロトンを受けて中性に、陽電荷を帯びるアミノ基にはそのまま陽電荷の形を保持させることにより、中性のアミノ酸が単に吸着されることを防ぎ、アミノ酸が電荷バランス陽イオンにイオン交換されることを助成することができる。
【0033】
本発明において使用可能な遷移金属陽イオンとしては、Mn2+、Co2+、Ni2+、Cu2+などが挙げられ、特に、Cu2+が好ましい。このため、遷移金属陽イオンを提供する化合物としては、上述した遷移金属を含むイオン化可能な塩はいずれも使用可能であり、特に、前記遷移金属を含む塩化物、窒化物、硫酸塩などが好ましい。
【0034】
電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質に対する前記アミノ酸のイオン交換の度合いは、上述した遷移金属陽イオンの化学的な性質、イオン交換温度による遷移金属陽イオンの加水分解の度合い及び多孔性物質の内部の酸度などに依存する。例えば、イオン交換温度が低すぎると、イオン移動性が低下し、その一方、イオン交換温度が高すぎると、物質の構造的な安定性が低下するため、イオン交換温度を適切に調節することが、多孔性物質の内部酸度を調節する上で好適である。
【0035】
また、多孔性物質の物理・化学的な特性である多孔の体積、表面積、空間的な電荷分布、親水性、特に、アミノ酸によるキラル性質は、電荷バランス陽イオンとして導入されたキラルアミノ酸の特性、例えば、アミノ酸の大きさ、極性、疎水性または親水性によって変わる。
【0036】
このため、最終的な目的に応じて、遷移金属陽イオンの種類、アミノ酸の種類、イオン交換温度などによりキラル有機分子のイオン交換度合いを調節することができ、これにより、本発明のキラル無機−有機複合多孔性物質は、独特な応用可能性を持つようになる。アミノ酸により引き起こされる多孔性物質のキャビティとトンネルの非対称環境は、光学異性体混合物の分離や触媒、さらには、キラルセンサーとしての機能を可能にする。
【0037】
本発明に係る方法において、アミノ酸のイオン交換有無は、誘導結合プラズマ(ICP)分光分析結果、赤外線スペクトル分析結果、粉末X線回折パターンなどを通じて確認可能である。
【0038】
本発明に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質は、キラル選択性触媒として用いることができ、これにより、D型とL型の一方のキラル性物質のみが製造可能になる。
【0039】
さらに、本発明に係るキラル無機−有機複合多孔性物質は、異性体混合物を分離する物質として用いることができる。例えば、HPLCカラムに本発明のキラル無機−有機複合多孔性物質を満たし、分離したい物質を流すと、本発明のキラル無機−有機複合多孔性物質が分離したい物質とキラル性によって選択的に作用するため、相異なるキラル性を有する物質はそれぞれ異なる時間帯に流れ出る。このため、このような方法により物質をキラル性によって分離することができる。本発明のキラル無機−有機複合多孔性物質をキラル選択性触媒または異性体混合物の分離物質として用いる方法は特に制限がなく、この技術分野における周知の方法を用いることができる。
【0040】
本発明に係るキラル無機−有機複合多孔性物質及びその使用方法は、適切なキラルライブラリーを提供するための、一層効率よく、高速であり、且つ、正確な方法の模索に寄与することができ、これにより、一層向上した生理活性度と選択性を有する医薬を開発することができる。また、本発明は、殺虫剤と除草剤、芳香剤や香辛料化合物、染料や色素剤、ポリマー、液晶、非線形光学物質などの種々の分野に使用可能である。
【0041】
以下、本発明への理解を容易にするために、本発明の好適な実施例を掲げるが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されることはない。
【0042】
[実施例1〜18]
実施例1.キラル無機−有機複合多孔性物質の製造
1−1.Na−YゼオライトのCu2+イオン交換
Na55Si137Al55384組成式を有する水化されたNa−Yゼオライト精製粉末10gを25℃下、0.08モル濃度のCuCl溶液(アルドリッチ社製、Certified ACS grade)400ml(完全なイオン交換のための量の2倍のCu(II))と混合した。混合溶液(pH=6.13、25℃)を時々攪拌し、溶液は1日につき2回ずつ交換した。このような過程を5日間行った後、懸濁液を吸収管によりろ過し、ろ過物から残存するCuClイオンを除去するためにろ過物を脱イオン水により洗浄し、25℃下で乾燥した。イオン交換後、粉末の色は無色から青色へと変色されていた。得られた粉末を6モル濃度のHClにより溶かし、誘導結合プラズマスペクトル(ICP)により分析した。
【0043】
ICPの測定は、ICPS−1000IV装備を用いて、窒素酸化物/アセチレン火炎中で行った。2回に亘ってのICPの分析結果を下記表1に示す。この表から明らかなように、イオン交換前と比較してみて、単位格子当たりのNaイオンが低減し、且つ、Cu2+イオンが増えていることが分かった。これは、ゼオライトの電荷バランス陽イオンとしてのNaイオンがCu2+イオンにイオン交換されていることを示す。
【0044】
1−2.Cu2+イオン交換されたY−ゼオライトのアミノ酸イオン交換
こうして得られた、水化されたCu−Yゼオライト精製粉末10gを80℃下で1.25倍の過量である0.1モル濃度のL−セリン水溶液(シグマ−アルドリッチ社製、Certified ACS grade)と混合した。混合液をpH=7.6、25℃において攪拌し続け、溶液を3日置きに新たなものに交換した。9日間のイオン交換を終えた後、懸濁液を吸収管によりろ過し、残留しているアミノ酸を除去するために脱イオン水により洗浄し、25℃下で乾燥した。イオン交換後、粉末の色は青色から茶色に変色されていた。これは、Cu2+イオンがほとんど残留していないことを示す。そして、イオン交換後の上澄み液は無色から濃いピンクに変色されていた。これは、最終的に得られた上澄み液にCu2+イオンが存在することを示す。
【0045】
イオン交換後、単位格子当たりの残留Cu2+イオンやNaイオンの量を測定するために、前記実施例1−1の方法と同様にしてICP測定を行い、その結果を下記表1に示す。前記実施例1−1の結果と比較してみて、単位格子当たりのCu2+イオンがほとんど残存していないことが分かり、これは、ゼオライトがアミノ酸にイオン交換されていることを示す(表1参照)。
【0046】
アミノ酸にイオン交換されたY−ゼオライトを密閉されたセル中においてKBr板にし、400cm−1から4000cm−1波長の分光分析機を用いて赤外線分光分析を行い、その結果を図1に示す。IR分析の結果、L−セリンのスペクトル結果と同様であることが分かり、これは、ゼオライトがアミノ酸にイオン交換されていることを示す。
【0047】
アミノ酸にイオン交換されたY−ゼオライトに関するX線回折データは、40kV、CuKα1(λ=1.5406Å)40mA、走査速度2.4°/分、2θの範囲5から50における段階サイズ0.02°にて、ブルカー社製(品番:D5005)の回折分析機により収集した。その結果として測定されたX線回折パターンを図2に示す。これを参照すると、アミノ酸にイオン交換された試料の製造前や製造後共に同じ結果を示している。これは、ゼオライトの結晶性がイオン交換中にも持続的に保持されることを示す。
【0048】
実施例2
L−セリンに代えてL−ヒスチジンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図3及び図4に示す。
【0049】
実施例3
L−セリンに代えてL−システインを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図5及び図6に示す。
【0050】
実施例4
L−セリンに代えてL−アラニンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図7及び図8に示す。
【0051】
実施例5
L−セリンに代えてL−トリプトファンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図9及び図10に示す。
【0052】
実施例6
L−セリンに代えてL−グルタミンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図11及び図12に示す。
【0053】
実施例7
L−セリンに代えてL−アルギニンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図13及び図14に示す。
【0054】
実施例8
L−セリンに代えてL−メチオニンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図15及び図16に示す。
【0055】
実施例9
L−セリンに代えてL−ロイシンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図17及び図18に示す。
【0056】
実施例10
L−セリンに代えてL−リシンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図19及び図20に示す。
【0057】
実施例11
L−セリンに代えてL−グルタミン酸を用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図21及び図22に示す。
【0058】
実施例12
L−セリンに代えてL−フェニルグリシンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図23及び図24に示す。
【0059】
実施例13
L−セリンに代えてL−プロリンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図25及び図26に示す。
【0060】
実施例14
L−セリンに代えてL−バリンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図27及び図28に示す。
【0061】
実施例15
L−セリンに代えてL−フェニルアラニンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図29及び図30に示す。
【0062】
実施例16
L−セリンに代えてL−トレオニンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図31及び図32に示す。
【0063】
実施例17
L−セリンに代えてL−イソロイシンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図33及び図34に示す。
【0064】
実施例18
L−セリンに代えてL−アスパラギンを用いた以外は、前記実施例1の方法と同様にしてイオン交換して物質を製造し分析した。IR及びXRD分析結果はそれぞれ図35及び図36に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
[実施例19〜24]
キラル無機−有機複合多孔性物質を用いた異性体の分離法
実施例19
アルテック社製の品番1666のスタンダード・スラリー・パッカー(standard slurry packer)及びステンレス鋼製のHPLC用の空きカラム(4.6×250mm)を用いてHPLC用のキラル固定相(CSP:Chiral Stationary Phase)を作った。溶媒としてのエタノール(J.Tベーカー社製のHPLCグレード)20mlと実施例1に従い製造されたL−セリン−Yゼオライト5gを混合して懸濁液を調製し、この懸濁液を前記パッカーと空きカラムを用い、8000psiの高圧下で20分間充填した。
【0067】
HPLCは、ヨンリン機器のオンライン・デガッサー(on-line degasser)付きSP930Dポンプ、UV730DUVディテクター、CTS30RIディテクター及びMIDASオートサンプラーにより構成されるシステムと、ジャスコ社製のUV−975UVディテクター及びPU−980ポンプにより構成されたシステムを用い、オートクロ−2000(バージョン1.0)というソフトウェアを用いて分析結果を収集した。
【0068】
溶離液としてのエタノールを流速0.5ml/分下、24時間をかけてカラムを安定化させた。次いで、ヘキサン(J.Tベーカー社製のHPLCグレード)と2−プロパノール(J.Tベーカー社製のHPLCグレード)を95:5(v/v)体積比にて混合した溶離液を用い、流速0.5ml/分下、1時間をかけて安定化させた。
【0069】
分離対象となるラセミ体としてケトプロフェン(2−(3'−ベンゾイルフェニル)プロピオン酸)を用い、溶離液としてヘキサンと2−プロパノールを95:5(v/v)の割合にて混合して用いた。流速0.5ml/分の条件下、254nmに固定されたUV検出波長からクロマトグラムが得られた。注入されたラセミ体の量は20μlであり、その濃度は1,000ppmとして分析した。その結果を図37に示す。
【0070】
実施例20
前記実施例19の方法と同様にして、実施例2に従い製造されたL−ヒスチジン−Yゼオライトにより充填されたHPLCカラムを製作し、ラセミ体として(2−クロロフェニル)−ヒドロキシ−酢酸メチルエステルを用い、溶離液としてヘキサンと2−プロパノールを95:5(v/v)の割合にて混合して用いた。流速0.5ml/分の条件下、260nmに固定されたUV検出波長からクロマトグラムが得られた。注入されたラセミ体の量は20μlであり、その濃度は2,400ppmとして分析した。その結果を図38に示す。
【0071】
実施例21
溶離液として水を用いてラセミ体の濃度を500ppmとして分析した以外は、実施例20の方法と同様にして行った。その結果を図39に示す。
【0072】
実施例22
前記実施例19の方法と同様にして、実施例7において製造されたL−アルギニン−Yゼオライトにより充填されたHPLCカラムを製作し、ラセミ体として(2−クロロフェニル)−ヒドロキシ−酢酸メチルエステルを用い、溶離液としてヘキサンと2−プロパノールを80:20(v/v)の割合にて混合して用いた。流速0.5ml/分の条件下、254nmに固定されたUV検出波長からクロマトグラムが得られた。注入されたラセミ体の量は20μlであり、その濃度は500ppmとして分析した。その結果を図40に示す。
【0073】
実施例23
前記実施例19の方法と同様にして、実施例7に従い製造されたL−アルギニン−Yゼオライトにより充填されたHPLCカラムを製作し、ラセミ体として2−アミノ−1−フェニルエタノールを用い、溶離液としてヘキサンと2−プロパノールを80:20(v/v)の割合にて混合して用いた。流速0.5ml/分の条件下、254nmに固定されたUV検出波長からクロマトグラムが得られた。注入されたラセミ体の量は20μlであり、その濃度は500ppmとして分析した。その結果を図41に示す。
【0074】
実施例24
前記実施例19の方法と同様にして、実施例18に従い製造されたL−アスパラギン−Yゼオライトにより充填されたHPLCカラムを製作し、ラセミ体として2−アミノ−1−フェニルエタノールを用い、溶離液としてヘキサンと2−プロパノールを80:20(v/v)の割合にて混合して用いた。流速0.3ml/分の条件下、254nmに固定されたUV検出波長からクロマトグラムが得られた。注入されたラセミ体の量は20μlであり、その濃度は500ppmとして分析した。その結果を図42に示す。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図2】実施例1に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図3】実施例2に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図4】実施例2に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図5】実施例3に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図6】実施例3に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図7】実施例4に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図8】実施例4に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図9】実施例5に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図10】実施例5に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図11】実施例6に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図12】実施例6に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図13】実施例7に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図14】実施例7に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図15】実施例8に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図16】実施例8に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図17】実施例9に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図18】実施例9に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図19】実施例10に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図20】実施例10に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図21】実施例11に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図22】実施例11に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図23】実施例12に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図24】実施例12に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図25】実施例13に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図26】実施例13に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図27】実施例14に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図28】実施例14に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図29】実施例15に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図30】実施例15に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図31】実施例16に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図32】実施例16に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図33】実施例17に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図34】実施例17に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図35】実施例18に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のIR分析結果である。
【図36】実施例18に従い製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質のXRD分析結果である。
【図37】本発明において製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質を用い、実施例19に従い行ったラセミ体の分離実験の結果を示す図である。
【図38】本発明において製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質を用い、実施例20に従い行ったラセミ体の分離実験の結果を示す図である。
【図39】本発明において製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質を用い、実施例21に従い行ったラセミ体の分離実験の結果を示す図である。
【図40】本発明において製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質を用い、実施例22に従い行ったラセミ体の分離実験の結果を示す図である。
【図41】本発明において製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質を用い、実施例23に従い行ったラセミ体の分離実験の結果を示す図である。
【図42】本発明において製造されたキラル無機−有機複合多孔性物質を用い、実施例24に従い行ったラセミ体の分離実験の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質において、陽イオン性キラル有機分子が電荷バランス陽イオンとして存在することを特徴とする、キラル無機−有機複合多孔性物質。
【請求項2】
前記電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質が、ゼオライト、電荷バランス陽イオンを有するゼオライト類似体、ASU(In1018{1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド[1,2−α]ピリミジン}(HO)15)、In1018(ジピペリジノメタン)(HO))及びHKUST([Cu(ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート)(HO))よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のキラル無機−有機複合多孔性物質。
【請求項3】
前記ゼオライトが、A−ゼオライト、Y−ゼオライト、X−ゼオライト及びL−ゼオライトよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項2に記載のキラル無機−有機複合多孔性物質。
【請求項4】
前記電荷バランス陽イオンを有するゼオライト類似体は、ゼオライトのSiまたはAl原子がGa、P、Ge、Fe、Zr、Ti、Cr、B、Be、V、Zn及びAsよりなる群から選ばれる原子により置換されていることを特徴とする、請求項2に記載のキラル無機−有機複合多孔性物質。
【請求項5】
前記陽イオン性キラル有機分子は、L−アミノ酸及びD−アミノ酸よりなる群から選ばれるキラルアミノ酸であることを特徴とする、請求項1に記載のキラル無機−有機複合多孔性物質。
【請求項6】
電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質のうち、電荷バランス陽イオンを陽イオン性キラル有機分子にイオン交換する段階を含むことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のキラル無機−有機複合多孔性物質の製造方法。
【請求項7】
前記製造方法が、以下の段階:
a)電荷バランス陽イオンを含む多孔性物質の電荷バランス陽イオンを遷移金属陽イオンにイオン交換する段階と、
b)前記a)段階において電荷バランス陽イオンとして導入された遷移金属陽イオンをL−アミノ酸及びD−アミノ酸よりなる群から選ばれるキラルアミノ酸にイオン交換する段階と、
を含むことを特徴とする、請求項6に記載のキラル無機−有機複合多孔性物質の製造方法。
【請求項8】
前記遷移金属陽イオンが、Mn2+、Co2+、Ni2+及びCu2+よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし5のいずれかに一項に記載のキラル無機−有機複合多孔性物質をキラル選択性触媒として用いる方法。
【請求項10】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のキラル無機−有機複合多孔性物質を異性体混合物の分離物質として用いる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公表番号】特表2007−523031(P2007−523031A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549117(P2006−549117)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000039
【国際公開番号】WO2005/066074
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(506234572)
【Fターム(参考)】