説明

キレートモノアミドの親油性誘導体

磁気共鳴画像を得るための、ナノ粒子または微粒子乳剤と結合するのに有用な化合物は、シグナルの緩和度の制御を可能にし、粒子成分と容易に結合する。この化合物はキレート化部分のアキラル誘導体から都合よく調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は診断用組成物、それらの使用法、およびそれらの調製法に関する。なお、本出願は2004年6月9日出願の米国特許仮出願第60/578,474号、および2004年8月27日出願の第60/605,180号からの優先権の恩典を主張し、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景技術
磁気共鳴撮像法(magnetic resonance imaging)において有用な金属イオンを捕捉するための様々なタイプのキレート化剤の使用は周知である。一般に、キレート化剤は多数の非共有電子対または負に荷電している、もしくは負に荷電している可能性がある種を含む。おそらく、その中で最も単純なのは、硬水軟化剤としてよく用いられるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。他のキレート化剤はジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン四酢酸(DOTA)、およびそれらの誘導体である。他の物質がそれらと会合しうるよう、これらのキレート化剤を別の部分に結合するために、基礎となるキレート核が誘導体化されている。例えば、米国特許第6,221,334号は葉酸受容体結合リガンドのDOTA型キレートへのカップリングを記載している。
【0003】
そのような誘導体化への一つのアプローチが米国特許第5,652,361号、第5,756,065号、および第5,435,990号に例示されており、ここではDOTAのカルボキシル基の一つに隣接するメチレン基が結合点である。これによりキラル中心が作られ、さらなる反応があればその複雑性を増強する。いくつかの場合において、このメチレンは、フェニル環がイソチオシアネートなどの反応性基で置換されたベンジルまたはフェニル部分に結合される。イソチオシアネートは様々な別の化合物への結合の手段を提供する。これらの特許中に記載されているとおり、イソチオシアネート基はキレートを抗体またはその断片などのターゲティング物質に結合するために用いることができる。
【0004】
誘導体化DOTA分子が、例えば、米国特許第5,358,704号;第4,885,363号;第5,474,756号;第5,674,470号;第5,846,519号;および第6,143,274号に記載されており、ここでは結合点はDOTA環窒素の一つである。これらの場合に、これらの誘導体化DOTA分子は溶液中で中性であるという利点を有することが述べられている。DOTAの環Nへの結合を開示している別の特許は米国特許第5,310,535号である。他のDOTA誘導体が米国特許第5,573,752号に記載されており、ここでは一つのカルボキシルがアミドで置き換えられており、これはさらに芳香族系に結合されている。キレート化剤の自己構築型が米国特許第6,056,939号に記載されている。(Auffer, et al., Chem. Rev. (1999) 99:2293-2352;Gali, et al., Anticancer Res. (2001) 21:2785-2792;Sherry, et al., Inorg. Chem. (1989) 28:620-622;およびAime, et al., Inorg. Chem. (1992) 31:2422-2428も参照されたい)。
【0005】
MRIのためのキレート化金属を投与するために用いられてきた送達媒体組成物に関しては広範な文献がある。これらの組成物の中にはターゲティング物質を含まないものもあり、そのような物質を含むものもある。例えば、米国特許第5,690,907号;第5,780,010号;第5,989,520号;第5,958,371号;およびPCT国際公開公報第02/060524号は、様々なターゲティング物質、ならびにMRI造影剤、放射性核種、および/または生物学的活性物質などの所望の成分に結合されている過フッ化炭化水素ナノ粒子の乳剤を記載しており、前述の文献の内容は参照により本明細書に組み入れられる。標的化撮像のために用いられてきた他の組成物には、PCT国際公開公報第99/58162号;国際公開公報第00/35488号;国際公開公報第00/35887号;および国際公開公報第00/35492号が含まれ、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0006】
磁気共鳴撮像法(MRI)は診断および研究のための有用なツールとなってきた。現行の技術は、組織および体液中に含まれる水中の水素核が高周波による励起後、基底状態に戻る際に放出するエネルギーの検出に頼っている。この現象の観察は、水素核スピンの分布が磁場とのアラインメントで統計的に整列するよう、観察する領域に磁場をかけ、適当な高周波をかけることによる。その結果、この統計的アラインメントが破壊された励起状態が起こる。そこで分布の基底状態への減衰をエネルギーの放出として測定することができ、そのパターンを画像として検出することができる。
【0007】
しかし、前述の方法において関連する水素核の緩和速度は遅すぎるため、実用的には検出可能なエネルギー量を生成することはできない。検出可能なシグナルを作るために、撮像する領域に造影剤、一般には常磁性の強い金属を供給し、これは減衰を加速するための触媒として有効にはたらき、したがって十分なエネルギーが得られる。したがって、造影剤は緩和時間を短縮し、緩和時間の逆数、すなわち周囲の水素核の「緩和度(relaxivity)」を増大させる。
【0008】
二つのタイプの緩和時間を測定することができる。T1は磁場に対して縦方向に磁気分布がその元の分布の63%まで戻る時間であり、緩和度τ1はその逆数である。T2は磁場に対して横向きに分布の63%が基底状態に戻る時間を測定する。その逆数は緩和度指数τ2である。一般に、緩和時間および緩和度は磁場の強さに応じて変動する。これは縦成分の場合に最も顕著である。
【0009】
キレート化常磁性金属に基づく造影剤が記載されている。例えば、米国特許第5,512,294号および第6,132,764号は、MRI造影剤として表面に金属キレートを有するリポソーム粒子を記載している。米国特許第5,064,636号および第5,120,527号は胃腸管内でのMRI用に常磁性油乳剤を記載している。米国特許第第5,614,170号および第5,571,498号は血液プール造影剤として親油性ガドリニウムキレート、例えば、ガドリニウム-ジエチレントリアミン五酢酸-ビスオレエート(Gd-DTPA-BOA)を取り込んだ乳剤を記載している。米国特許第5,804,164号は、特に設計されたキレート化剤および常磁性金属を含む水溶性、親油性物質を記載している。米国特許第6,010,682号および同じ特許ファミリーの他のメンバーは、リポソーム、ミセルまたは脂質乳剤の形で投与可能と言われている常磁性金属を含む脂溶性キレート造影剤を記載している。このように、一般には、造影剤は、常磁性金属の相当な濃度が所望の撮像領域に送達されうるような形で動員された、希土類金属または鉄などの常磁性金属の形を取り得る。
【発明の開示】
【0010】
発明の開示
本発明は、診断用組成物、それらの使用法、およびそれらの調製法を提供する。
【0011】
一つの局面において、本発明は、例えば、磁気共鳴撮像法(MRI)において用いる金属イオンを支持するために有用なキレート化剤を提供し、ここでキレートは親油性粒子または小滴を含む担体中で供給される。特に、本発明は、それらのモノアミド誘導体を通してホスホグリセリドに結合するキレート化剤を目的とする。本発明は、ρ1およびρ2両方に対して高い緩和度を有する造影剤も提供する。
【0012】
本発明は、シグナルの緩和度の制御を提供し、かつ望まれる場合には、共鳴画像を増強する潜在毒性常磁性イオンの排出が促進されるメカニズムを提供する送達媒体、例えばリポソーム、過フッ化炭化水素ナノ粒子、油滴などの様々な親油性送達媒体の担体に、それらの送達媒体に相対的な位置で容易に結合することができる化合物も提供する。
【0013】
被検者の体内に保持されると毒性となりうる、常磁性イオンの排出を促進することも有利である。したがって、キレート化金属イオンを粒子から、または細胞もしくは肝臓に取り込まれることになりうる脂質成分から切断するための部位を提供することも有利であると思われる。常磁性イオンのキレート化の代替物として、放射性核種が含まれる可能性があるが、この核種の排出促進が望ましいことも明白である。
【0014】
一つの態様において、本発明は、キレート化部分に常磁性または放射性核種を含みうる式(1)を有する化合物であって、生理的条件下で水に溶解した場合、負に荷電する化合物を提供する:

式中、Ch'は少なくとも4つの窒素原子および(n-1)のカルボキシル基を含むキレート化剤の残基であり、ここでnはキレート化部分の窒素原子の数であり;
WはOまたはSであり;
XはNR1、S、またはOであり;
M+は対イオンであり;
R1はそれぞれHまたはアルキル(1-4C)であり;
R2はそれぞれ、少なくとも10Cを含む置換されていてもよい飽和または不飽和ヒドロカルビル基であり;
スペーサー1は、ヘテロ原子、アリール、ペプチド、またはポリアルキレングリコールを任意で含むC1-10アルキルを含み;
スペーサー2は、ヘテロ原子を任意で含むC1-10アルキルを含む。
【0015】
もう一つの態様において、本発明は式(1A)の化合物を提供する:

式中、W、X、スペーサー1、スペーサー2、およびR2は式1で定義したとおりである。
【0016】
さらにもう一つの態様において、本発明は式(1B)を有する化合物を提供する。

【0017】
前述の式それぞれにおいて、Ch'はDOTA残基から誘導されてもよく、カルボキシル基が1個少なく、アミドとして誘導体化されていてもよい。一例において、CH'はGd(3+)キレートを含む。特定の例において、Ch'は、1,4,7,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7-三酢酸から誘導されるようなDOTA残基のGd(3+)キレートであってもよい。
【0018】
前述の式それぞれにおいて、R1はそれぞれHであってもよい。
【0019】
前述の式それぞれにおいて、スペーサー1およびスペーサー2は、スペーサー1を含むジアミンとキレート化部分のカルボキシル基との反応、および得られたアミンとスペーサー2に結合しているアミノ基との、ホスゲンもしくはホスゲン等価物、またはCO2などのカルボニル挿入試薬存在下での反応の妨害を除外するのに十分不活性な置換基を含んでいてもよい。
【0020】
前述の式それぞれにおいて、スペーサー1はエチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、またはフェニレンであってもよい。一例において、スペーサー1はp-フェニレンである。もう一つの例において、スペーサー1はヘキサメチレンである。
【0021】
前述の式それぞれにおいて、スペーサー2はエチレンまたは下記であってもよい:

式中、nは1〜6であり、mは1〜6である。
【0022】
前述の式それぞれにおいて、M+はアルカリおよびアルカリ土類金属イオン、ならびにアンモニウムなどの無機塩を含むが、それらに限定されるわけではない、対イオン、および当技術分野において公知の他の対イオンである。適当な対イオンには、Na+、K+、1/2Ca2+、R3NH+、R4N+、およびNR4+(R4はそれぞれHまたはアルキルである)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0023】
前述の式それぞれにおいて、R2COOは天然脂肪酸の残基または該残基の混合物であってもよい。
【0024】
本発明の化合物は、新しい追加のキラル中心を有することにより導かれる複雑性を避ける少数の反応により、例えば、最終生成物中のジアステレオマーの分離を避けることにより、都合よく調製される。特に、キレーター部分はアキラルで、これはキラルなリン脂質と結合した場合に、追加のキラル中心を持たない不斉化合物が得られる。
【0025】
本発明の化合物は、常磁性金属イオンまたは放射性核種を含んでいてもよく、これはキレート化部分(Ch')とキレート形成する。一つの態様において、常磁性金属イオンは非放射性である。
【0026】
別の局面において、本発明は、前述の式のいずれか一つを有する化合物と結合している親油性送達媒体を含む組成物、およびこれらの組成物を用いて磁気共鳴または放射性核種画像を得る方法を目的とする。例えば、前述の式のいずれかの化合物は親油性ナノ粒子または微粒子と共有または非共有結合していてもよい。特定の例において、ナノ粒子または微粒子は化合物の少なくとも2,000コピーを含む。
【0027】
一つの態様において、本発明は、ターゲティング物質および/または生物学的活性物質を任意で含むナノ粒子または微粒子と、前述の式のいずれか一つを有する化合物とを含む組成物を提供する。ターゲティング物質は受容体リガンドまたは抗体もしくはその断片であってもよい。ナノ粒子または微粒子はリポソーム、油滴、過フッ化炭化水素ナノ粒子、脂質コーティングタンパク質粒子、または脂質コーティング多糖であってもよい。
【0028】
もう一つの局面において、本発明は、前述の式のいずれか一つを有する化合物の調製法、および本発明の送達媒体組成物の調製法を目的とする。
【0029】
一つの態様において、本発明は、下記式の化合物
CH'(CH2)CONR1(スペーサー1)NR1H (2)
を、CO2、ホスゲン、もしくはホスゲン等価物、またはCS2、チオホスゲン、もしくはチオホスゲン等価物、および下記式の化合物

に接触させる段階を含む、式(1)の化合物の調製法を提供する:

式中、Ch'、X、R1、R2、スペーサー1、およびスペーサー2は請求項1で定義したとおりである。
【0030】
一例において、ホスゲン等価物はトリホスゲン、ジホスゲン、カルボニルジイミダゾール、またはクロロギ酸p-ニトロフェニルである。
【0031】
もう一つの例において、式(2)のCh'は、1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-四酢酸(DOTA)よりも1個少ないカルボキシル基を有するDOTAの残基である。Ch'は常磁性イオン、特に非放射性常磁性イオンをさらに含んでいてもよい。例えば、常磁性イオンはGd(3+)であってもよい。
【0032】
さらにもう一つの例において、前述の式(1)の調製法は、式(1)を有する化合物を常磁性イオン、特に非放射性常磁性イオンに接触させる段階をさらに含む。例えば、Ch'が、1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-四酢酸(DOTA)よりも1個少ないカルボキシル基を有するDOTAの残基である、式(1)を有する化合物を、GdCl3またはGd2O3に接触させてもよい。
【0033】
本発明は、本発明の化合物および組成物を用いた磁気共鳴撮像を得る方法も提供する。一つの態様において、本発明は、試料を前述の式のいずれか一つを有する化合物に接触させる段階と、該試料を撮像する段階とを含む、試料の撮像方法を提供する。本発明は、前述の式のいずれか一つを有する化合物と、ターゲティング物質および/または生物学的活性物質を任意で含む親油性ナノ粒子または微粒子とを含む組成物に、試料を接触させる段階、ならびに該試料を撮像する段階を含む、試料の撮像方法も提供する。一つの態様において、試料は組織試料である。
【0034】
本発明のこれらの化合物は、側鎖ホスホジエステルによって負に荷電している。他の環境において、分子の全体の正味の負電荷を増す、負に荷電した基を含む他のリンカーが有利である場合もある。例えば、特定の乳剤において、分子の全体の正味の負電荷を増す、負に荷電した基は、キレート化分子を水相に維持することができる。
【0035】
造影剤の有用な濃度を提供する一つの方法が米国特許第5,780,010号および第5,909,520号に記載されている。ナノ粒子を脂質/界面活性剤コーティングで囲まれた不活性コアから形成する。常磁性金属イオンおよびターゲティングリガンドを含むキレート化剤を親油性尾部に結合するよう修飾することができ、この尾部は過フッ化炭化水素ナノ粒子を囲む脂質/界面活性剤コーティングに結合することができる。同時係属中の2004年1月26日出願の米国特許出願第10/765,299号も、キレートを粒子層の表面から遠ざける親油性部分を有するキレート化剤を提供する方法を記載している。
【0036】
本発明は、キレートを粒子層の表面から遠ざける親油性部分を有するキレート化剤を提供するための、同時係属中の米国特許出願第10/765,299号からの代替法である。本発明は一つの態様において、磁気共鳴撮像法において有用な造影剤の改善に焦点を合わせている。一つの局面において、本発明は、それによってシグナルの緩和度を制御することができ、排出を促進することができる、造影剤の設計における改善を提供する。しかし、本発明の化合物は、放射能放出に基づく撮像法のために放射性核種を所望の部位に送達するなどの、他の文脈においても有用である。
【0037】
発明を実施するための形態
一般に、本発明は、常磁性金属イオンまたは放射性核種を含むこれらの化合物を含む、式(1)、(1A)、および(1B)の化合物を目的とする。
【0038】
本明細書に記載の化合物は、適当な常磁性イオンを含む場合、少なくとも二つの有用な特徴を有する、都合よく調製されたMRI造影剤を提供する。第一に、リン脂質に結合していることにより、これはリポソーム、過フッ化炭化水素ナノ粒子などの親油性送達媒体と容易に結合する。第二に、これはスペーサーを含みうるため、シグナルの緩和度をスペーサーにより与えられた支持送達媒体からの距離によって制御することができる。自由選択の第三の利点は、画像が得られた後に造影剤が粒子から解離され、排出されることを可能にする切断部位を、スペーサーが提供しうることである。または、用いられる切断部位は、キレート化剤のカルボキシル基とジアミンとの間で形成されるアミドのものであってもよい。
【0039】
本発明の化合物は、希釈および化学量論を通して反応するカルボキシル基の数を制御しての、ジアミンとDOTAなどのキレート化剤との反応により、都合よく調製される。続いて、得られた中間体アミドを、ホスファチジルエタノールアミンまたはリン酸とアミノ基との間に異なる(CH2CH2以外)スペーサー(スペーサー2)を含む、その類縁体と反応させる。したがって、都合の良さは劣るが、ホスファチジルメタノールアミンまたはホスファチジルプロパノールアミンは満足できる生成物を生じると思われる。スペーサー1およびスペーサー2は、少なくとも一つのメチレン基を含むように選択されるが、合成段階を妨害しないかぎり、追加の連結原子または置換基を含んでいてもよい。したがって、例えば、エーテル結合を含むジアミンをスペーサー1-ジアミンとして合成に用いてもよい。カップリングを様々なスペーサーおよびリン脂質に対して行うことができる。
【0040】
キレート化剤は、その非誘導体化型よりも1個少ないカルボキシル基を有する、いかなるキレート化部分であってもよい。特定の例において、キレート化剤は、アルキレン基によって間隔があけられた、少なくとも四つ、または多数の窒素を含み、これに、式1に示す誘導体化カルボキシル基を除く、カルボン酸含有部分が結合する。キレート化剤は、多数の非共有電子対または所望の金属イオンを封鎖するはたらきをする潜在的負電荷を含むことによって特徴づけられる。よく用いられるキレート化剤には、ポルフィリン;エチレンジアミン四酢酸(EDTA);ジエチレントリアミン-N,N,N',N'',N''-ペンタアセテート(DTPA);1,4,10,13-テトラオキサ-7,16-ジアザシクロ-オクタデカン-7(ODDA);16-ジアセテート-N-2-(アゾル-1(2)-イル)エチルイミノ二酢酸;1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-四酢酸(DOTA);1,7,13-トリアザ-4,10,16-トリオキサシクロオクタデカン-N,N',N''-トリアセテート(TTTA);テトラエチレングリコール;1,5,9-トリアザシクロドデカン-N,N',N'',-トリス(メチレンホスホン酸(DOTRP);塩化N,N',N''-トリメチルアンモニウム(DOTMA)およびその類縁体が含まれる。本発明の化合物における特定のキレート化剤はDOTAである。
【0041】
キレート化剤の目的は、所望の常磁性金属または放射性核種を封鎖することである。例示的常磁性金属には、原子番号58〜70のランタニド元素または原子番号21〜29、42もしくは44の遷移金属、すなわち、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、およびイッテルビウム、特にGd(III)、鉄、ユーロピウムおよび/またはジスプロシウムが含まれるが、それらに限定されるわけではない。適当な放射性核種には、例えば、Sm、Ho、Y、Pm、Gd、La、Lu、Yb、Sc、Pr、Tc、Re、Ru、Rh、Pd、Pt、Cu、Au、Ga、In、Sn、およびPbの放射性型が含まれる。本発明は、当技術分野において公知の他の例示的放射性核種および常磁性イオンを含む組成物も含む。
【0042】
前述の式のそれぞれに含まれるホスホグリセリドは天然のレシチン由来であってもよく、ここでR2COOで表される基はオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの脂肪酸である。しかし、本発明の方法において同等に有用であるのは、R2がそれぞれ飽和または不飽和でありうる置換されていてもよいヒドロカルビル部分である、ホスホグリセリドである。ヒドロカルビル部分は、十分な親油性を与えるために、少なくとも10Cを含んでいてもよいが、炭素はO、N、またはSから選択される一つまたは二つのヘテロ原子で間隔があけられることがある。適当な置換基には、ヘテロ原子含有芳香族部分を含む芳香族部分を含む置換基が含まれ、かつ/または置換基はハロ、=O、OR、SR、およびNR2(Rはそれぞれ独立に置換されていてもよいアルキル(1〜6C)である)であってもよい。R2で表されるヒドロカルビル部分は分枝であっても直鎖であってもよく、一つまたは複数の環状部分を含んでいてもよい。
【0043】
一つの態様において、R2は少なくとも一つの10Cを含む、置換されていてもよい飽和または不飽和ヒドロカルビル基である。他の態様において、R2は10個未満の炭素を有していてもよい。一般に、R2はそれぞれ単純に、担体を含む親油性微粒子または液滴との結合手段を提供するために十分親油性であると思われる。当業者であれば、この条件を満たすR2のための態様を容易に選択することができる。
【0044】
スペーサー1はペプチド、擬ペプチド(pseudopeptide)、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールなどから誘導された部分を含んでいてもよい。(擬ペプチドは、ペプチド結合が等配電子の結合で置き換えられている−すなわち、CONH結合が、例えば、CH2NH、CH=CHなどで置き換えられた、ペプチドに類似のポリマーである。)スペーサーの長さは以下に記載のとおりシグナルの緩和度を制御するために選択してもよく、担体粒子からキレートの放出を可能にする切断部位をさらに含んでいてもよい。スペーサー1の特定の態様には、エチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、またはp-フェニレンが含まれる。
【0045】
スペーサー2はその起源をホスファチジルグリセリド自体に有する部分を含んでいてもよく−例えば、一つの態様において、スペーサーはホスファチジルエタノールアミンに含まれる部分CH2CH2であってもよく、またはそのような部分を含んでいてもよく、ここでスペーサー2に隣接して示されるNR1はホスファチジルエタノールアミン由来である。
【0046】
一つの態様において、スペーサー2はエチレンまたは下記である:

式中、nは1〜6であり、mは1〜6である。
【0047】
他の態様において、式(4)のmおよびnは6より大きくてもよい。
【0048】
R1の特定の態様には、メチル、エチルおよびHが含まれる。一つの態様において、R1はそれぞれHである。
【0049】
一般に、式(1)および(1A)の化合物は下記式の化合物
CH'(CH2)CONR1(スペーサー1)NR1H (2)
から、CO2、ホスゲンもしくはホスゲン等価物、またはCS2、チオホスゲンもしくはチオホスゲン等価物、および下記式の化合物と共に合成する:

式中、Ch'、X、スペーサー1、スペーサー2、R1、およびR2は前述の定義のとおりである。
【0050】
スペーサー1およびスペーサー2はそれぞれ前述の反応を妨害しない置換基をさらに含んでいてもよい。
【0051】
ホスゲン等価物の例には、トリホスゲン、ジホスゲン、カルボニルジイミダゾール、クロロギ酸p-ニトロフェニル、および当業者には公知の他のものが含まれるが、それらに限定されるわけではない。チオホスゲン等価物の例には、チオカルボニルジイミダゾールおよび当業者には公知の他のものが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0052】
式(2)の化合物を調製する一つの方法は、式Ch'(CH2)COOHの化合物またはその活性化もしくはエステル型を式HNR1(スペーサー1)NR1Hの化合物に接触させる段階を含み、ここでR1およびCh'は前述の定義のとおりである。この反応のために、スペーサー1の組成はこの反応または式(1)の最終生成物を生成するためのその後の反応を妨害しないものである。
【0053】
一つの態様において、式(2)の化合物は、i)カルボキシル基で誘導体化していない前駆体Ch'化合物を式Y(CH2)CONR1(スペーサー1)NR1(P)の化合物と反応させて中間体を得ること;ii)中間体をYCH2CO2Aと反応させること;およびiii)保護基を脱保護することにより調製することができ;
ここでCh'およびR1は前述の定義のとおりであり;
Yはそれぞれ適当な脱離基であり;
Pは適当な窒素保護基であり;かつ
Aは適当なアルキルまたはアラルキル基である。
【0054】
適当な脱離基の例には、Cl、Br、I、Oトシルなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0055】
適当な窒素保護基の例には、Boc、cbz、fmocなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0056】
適当なR2基の例には、CH3、CH3CH2、CH2Phなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0057】
本明細書に記載の化合物は金属に結合していてもよく、親油性送達媒体を含む組成物中に含まれていてもよい。「送達媒体」は、少なくともそれらの表面では親油性で、親水性または水性媒質中に懸濁している粒状担体である。これらの媒体は微粒子またはナノ粒子で、10nm〜100μM、好ましくは50nm〜50μmの範囲の平均粒径を有していてもよい。しかし、インビボでは、50〜500nm、好ましくは50〜300nmの範囲の粒径を有する粒子が用いられる。粒子は、リポソームなどの周知の媒体を含む様々な組成のものであってもよく、これらは、以下にさらに記載するとおり、様々なサイズのものであってもよく、かつユニラメラもしくはマルチラメラ、ミセル、油滴、HDL、LDL、IDL(中間密度リポタンパク質)、VLDL(超低密度リポタンパク質)などのリポタンパク質、キロミクロン、過フッ化炭化水素ナノ粒子、マイクロバブルもしくはナノバブル、または少なくとも表面には親油性のある、前述の粒径範囲内の様々な粒子のいかなるものであってもよい。したがって、これらのナノ粒子の表面は脂質もしくは界面活性剤または両方を含むことになる。
【0058】
本明細書に記載の化合物は、常磁性イオンおよび担体系に含まれる親油性粒子と結合している場合、磁気共鳴画像を得る際に有用である。送達系における媒体は、造影剤を所望の組織または臓器に運ぶためのターゲティング物質などの他の有用な成分をさらに含んでいてもよく、治療用または他の生物学的活性物質を任意で含んでいてもよい。いくつかの態様において、これらの媒体は、放射性核種などの他の造影剤を含んでいてもよく、またはより一般には、キレート中の代替物に放射性核種が含まれる。
【0059】
ターゲティング物質は典型的には、抗体またはその免疫特異的断片、所望の標的組織上にある受容体のリガンド、インテグリンを標的とするよう設計された環状RGDペプチドに基づいて設計されたものなどの細胞成分を標的とするよう特に設計された分子などを含んでいてもよい。親油性粒子自体はターゲティング物質に結合することができる反応性基を含んでいてもよい。
【0060】
送達媒体の脂質/界面活性剤成分は、脂質/界面活性剤成分に含まれる官能基を通じてこれらの反応性基に結合することができる。例えば、ホスファチジルエタノールアミンはそのアミノ基を通じて所望の部分に直接結合してもよく、または以下に記載のとおりカルボキシル、アミノ、もしくはスルフヒドリル基を提供しうる短鎖ペプチドなどのリンカーに結合してもよい。または、マレイミドなどの標準的連結物質を用いてもよい。ターゲティングリガンドおよび補助物をナノ粒子に結合するために様々な方法を用いることができ、これらの戦略は、例えば、ポリエチレングリコールまたはペプチドなどのスペーサー基の使用を含みうる。
【0061】
ターゲティングリガンドまたは他の有機部分を外層の成分に共有結合することによる結合のために、様々なタイプの結合および連結物質を用いてもよい。そのような結合を形成するための典型的方法は、カルボジアミドを用いたアミドの形成、またはマレイミドなどの不飽和成分を用いたスルフィド結合の形成を含む。他のカップリング剤には、例えば、グルタルアルデヒド;プロパンジアールまたはブタンジアール;2-イミノチオラン塩酸塩;スベリン酸ジスクシンイミジル、酒石酸ジスクシンイミジル、ビス[2-(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホンなどの二官能性N-ヒドロキシスクシンイミドエステル;N-(5-アジド-2-ニトロベンゾイルオキシ)スクシンイミド、4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸スクシンイミジル、および4-(p-マレイミドフェニル)酪酸スクシンイミジルなどのヘテロ二官能性試薬;1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、4,4'-ジフルオロ-3,3'-ジニトロジフェニルスルホン、4,4'-ジイソチオシアノ-2,2'-二スルホン酸スチルベン、p-フェニレンジイソチオシアネート、カルボニルビス(L-メチオニンp-ニトロフェニルエステル)、4,4'-ジチオビスフェニルアジド、ビスカルボン酸エリスリトールなどのホモ二官能性試薬;ならびにジメチルアジポイミデート塩酸塩、ジメチルスベルイミデート、ジメチル3,3'-ジチオビスプロピオンイミデート塩酸塩などの二官能性イミドエステルなどが含まれる。結合はアシル化、スルホン化、還元的アミノ化などによって達成することができる。所望のリガンドを外層の一つまたは複数の成分に共有結合するための多数の方法が当技術分野において周知である。リガンド自体は、その特性が適当である場合には、界面活性剤層に含まれてもよい。例えば、リガンドが親油性の高い部分を含む場合、それ自体が脂質/界面活性剤コーティング中に埋め込まれていてもよい。さらに、リガンドがコーティングに直接吸着可能である場合、これもその結合を行うことになる。例えば、核酸は、それらの負電荷により、カチオン性界面活性剤に直接吸着する。
【0062】
ターゲティングリガンドまたは抗体はナノ粒子に直接結合してもよく、すなわち、リガンドまたは抗体は前述のとおりナノ粒子自体に結合する。または、ビオチン/アビジンを通じて行われるものなどの間接的結合を用いてもよい。典型的には、ビオチン/アビジン仲介性ターゲティングにおいて、リガンドまたは抗体は乳剤にではなく、ビオチン化型で標的組織に結合する。
【0063】
コーティング層への捕捉を通じてナノ粒子に結合しうる補助物質には、常磁性イオンの代わり、または常磁性イオンに加えて、放射性核種が含まれる。放射性核種は治療用または診断用のいずれかであり;そのような核種を用いた診断撮像法は周知で、放射性核種を望ましくない組織にターゲティングさせることにより、治療上の利益も実現することができる。典型的な診断用放射性核種には、99mTc、95Tc、111In、62Cu、64Cu、67Ga、および65Gaが含まれ、治療用放射性核種には、186Re、188Re、、153Sm、166Ho、177Lu、149Pm、90Y、212Bi、103Pd、109Pd、159Gd、140La、198Au、199Au、169Yb、175Yb、165Dy、166Dy、67Cu、105Rh、111Ag、および192Irが含まれる。核種はあらかじめ生成した乳剤に様々な方法で提供することができる。例えば、99Tc-パーテクネートを過剰の塩化第一スズと混合し、あらかじめ生成したナノ粒子の乳剤に取り込んでもよい。スズオキシネートを塩化第一スズの代わりに用いることもできる。加えて、Nycomed AmershamからCeretek(登録商標)として販売されているHM-PAO(エキサメタジン)キットなどの市販のキットを用いることもできる。様々な放射性リガンドを本発明のナノ粒子に結合する手段は当技術分野において理解されている。前述のとおり、組成物を単に放射性核種に基づく診断または治療目的に用いる場合、放射性核種は補助材料でないこともあるが、代わりに、常磁性イオンに代えてキレート化剤を占めていてもよい。
【0064】
他の補助物質には、フルオレセイン、ダンシルなどの蛍光体が含まれる。
【0065】
本発明のいくつかの態様において、補助物質としての親油性担体媒体に含まれるものは生物学的活性物質である。これらの生物学的活性物質は、タンパク質、核酸、薬剤などを含む様々なものでありうる。したがって、適当な薬剤に含まれるものは、抗新生物薬、ホルモン、鎮痛薬、麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌剤または駆虫薬、抗ウイルス薬、インターフェロン、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳剤、抗凝血薬などである。
【0066】
前述のすべての場合において、結合した部分が組織もしくは臓器を標的とするリガンドであるか、または補助物質であるかにかかわらず、規定の部分は親油性媒体と非共有結合していてもよく、媒体の成分に直接結合していてもよく、またはその成分にスペーサー部分を通じて結合していてもよい。
【0067】
本発明の組成物において複数の媒体、例えばリポソーム粒子を用いてもよい。様々なタイプのリポソームを記載している文献は膨大で、当業者には周知である。リポソーム自体は脂質部分で構成されているため、前述の脂質および界面活性剤はリポソーム自体に含まれる部分の記載に当てはまる。これらの親油性成分を用いて、不活性コアを有するナノ粒子上のコーティングに関して前述したものと類似の様式で、キレート化剤に結合することができる。ミセルは類似の材料からなり、所望の材料、特にキレート化剤を結合するためのこのアプローチはミセルにも同様に適用される。脂質の固体形も用いることができる。
【0068】
もう一つの例において、タンパク質または他のポリマーを用いて、特定の担体を形成することができる。これらの材料は、親油性コーティングが適用される不活性コアを形成することができ、またはキレート化剤を、例えば、粒状固形支持体に親和性試薬を結合する際に用いる技術を通して、ポリマー材料に直接結合することもできる。したがって、例えば、タンパク質から生成した粒子を、例えば、カルボジイミドによって仲介される脱水反応を通じて、カルボン酸および/またはアミノ基を含む連結分子に結合することができる。硫黄含有タンパク質を、マレイミド結合を通じて、キレート化剤が結合する連結鎖を含む他の有機分子に結合することができる。粒状担体の性質に応じて、キレート化剤の歯状部分と粒子の表面との間でオフセットが得られるような結合法は当業者には明らかであると思われる。
【0069】
さらにもう一つの例において、PCT国際公開公報第95/03829号は、薬物が油滴中に分散または可溶化され、リガンドによって油滴が特定の部位を標的とする、油乳剤を記載している。米国特許第5,542,935号は、ガス充填過フッ化炭化水素ミクロスフェアを用いた部位特異的薬物送達を記載している。薬物送達は、ミクロスフェアを標的に向かわせ、次いでそれらを破裂させることにより達成される。気泡が生じうるように、低沸点過フッ化化合物を用いて粒子を生成する。
【0070】
一つの態様は、ナノ粒子が上で引用した米国特許第5,958,371号に記載のものなどの高沸点過フッ化炭化水素に基づく乳剤を含む。乳剤は、脂質および/または界面活性剤からなるコーティングで囲まれた、比較的高沸点の過フッ化炭化水素で構成されるナノ粒子を含む。周囲のコーティングは標的部分に直接結合するか、もしくは標的部分に、任意でリンカーを通じて、共有結合する中間成分を捕捉することもでき、またはビオチンなどの非特異的結合物質を含んでいてもよい。または、コーティングは、一般には核酸、または特にアプタマーなどの負に荷電したターゲティング物質が表面に吸着しうるように、カチオン性であってもよい。
【0071】
一つの有用な乳剤は、コアとして高沸点過フッ化炭化水素と、一つまたは複数の所望の成分の多くのコピーをナノ粒子に結合するための媒体を提供する脂質/界面活性剤混合物である外側コーティングとを含むナノ粒子系である。基本粒子の構築およびそれらを含む乳剤の生成は、外表面に結合している成分に関係なく、上で引用した特許、ならびに米国特許第5,690,907号、第5,780,010号、第5,989,520号および第5,958,371号に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0072】
高沸点過フッ化炭化水素は沸点が体温−すなわち37℃よりも高いものである。したがって、少なくとも30℃の沸点を有する過フッ化化合物液が好ましく、より好ましくは37℃、より好ましくは50℃よりも高く、最も好ましくは約90℃よりも高い。本発明において有用な「過フッ化化合物液」には、他の官能基を有する過フッ化化合物を含む、直鎖および分枝鎖ならびに環状過フッ化炭化水素が含まれる。「過フッ化化合物」は、純粋な過フッ化炭化水素ではなく、むしろ他のハロ基が存在する可能性のある化合物を含む。これらには、例えば、臭化パーフルオロオクチルおよび過フッ化ジクロロオクタンが含まれる。
【0073】
有用な過フッ化炭化水素乳剤が米国特許第4,927,623号、第5,077,036号、第5,114,703号、第5,171,755号、第5,304,325号、第5,350,571号、第5,393,524号、および第5,403,575号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み入れられ、過フッ化炭化水素化合物が過フッ化デカリン、過フッ化オクタン、過フッ化ジクロロオクタン、臭化パーフルオロ-n-オクチル、過フッ化ヘプタン、過フッ化デカン、過フッ化シクロヘキサン、過フッ化モルホリン、過フッ化トリプロピルアミン、過フッ化トリブチルアミン、過フッ化ジメチルシクロヘキサン、過フッ化トリメチルシクロヘキサン、過フッ化ジシクロヘキシルエーテル、過フッ化-n-ブチルテトラヒドロフラン、およびこれらの化合物に構造的に類似で、部分的もしくは完全にハロゲン化された(少なくともいくつかのフッ素置換基を含む)、または過フッ化アルキル化エーテル、ポリエーテル、もしくはクラウンエーテルを含む部分的もしくは完全にフッ化された化合物であるものが含まれる。
【0074】
高沸点ハロ炭化水素に加えて、本発明の組成物において有用な粒子はマイクロバブルまたはナノバブルを含みうることに注目されると思われる。したがって、インビボの温度で気化が起こるような、粒子の低沸点成分を用いてもよい。
【0075】
加えて、リポタンパク質およびキロミクロンも用いることができる。様々なタイプのリポタンパク質が周知で、例えば、LDL、HDL、およびVLDLが含まれる。
【0076】
一つの態様において、脂質/界面活性剤コーティングされたナノ粒子は、コアを形成する過フッ化炭化水素脂質と、外層を形成する脂質/界面活性剤混合物との混合物を、水性媒質中の懸濁液中でマイクロ流体化して、乳剤を生成することにより生成してもよい。この方法において、脂質/界面活性剤はナノ粒子上にコーティングするときに追加のリガンドにすでに結合していてもよく、または単に後の結合のために反応性基を含んでいてもよい。または、脂質/界面活性剤層に含まれる成分は単に補助材料の溶解特性によって層中に可溶化してもよい。水性媒質中の脂質/界面活性剤の懸濁液を得るために、超音波処理または他の技術が必要となることもある。典型的には、脂質/界面活性剤外層中の材料の少なくとも一つは、追加の所望の成分を結合するために有用なリンカーもしくは官能基を含むか、または成分は乳剤を調製するときに材料にすでに結合していてもよい。
【0077】
送達媒体上の外側コーティング(結合したリガンドを含むか、または所望の成分を表面に結合するために試薬を捕捉することになる)を生成するために用いる脂質/界面活性剤には、脂質結合ポリエチレングリコールを含む天然または合成リン脂質、脂肪酸、コレステロール、リゾ脂質、スフィンゴミエリンなどが含まれる。トゥイーン、スパン、トリトンなどを含む様々な市販のアニオン、カチオン、および非イオン界面活性剤も用いることができる。過フッ化ヘキサン酸および過フッ化オクタン酸などの過フッ化アルカン酸、過フッ化アルキルスルホンアミド、アルキレン4級アンモニウム塩などの、いくつかの界面活性剤はそれ自体フッ素化されている。加えて、過フッ化アルコールリン酸エステルを用いることもできる。外層に含まれるカチオン脂質は、核酸、特にアプタマーなどのリガンドを捕捉する際に有利でありうる。典型的カチオン脂質には、DOTMA、塩化N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム;DOTAP、1,2-ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン;DOTB、1,2-ジオレオイル-3-(4'-トリメチル-アンモニオ)ブタノイル-sn-グリセロール、1,2-ジアシル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン;1,2-ジアシル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン;1,2-ジアシル-sn-グリセロール-3-エチルホスホコリン;および3β-[N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモル]コレステロール-HClが含まれうる。
【0078】
いくつかの態様において、脂質/界面活性剤に表面で含まれるものは、ターゲティングリガンドもしくは抗体および/または撮像もしくは治療のために有用な補助物を結合するために用いることができる反応性基を有する成分である。
【0079】
磁気共鳴撮像法における組成物の使用
磁気共鳴撮像法において用いる場合、本発明の組成物は典型的にキレート化構造内に常磁性イオンを含む。そのような適用において、スペーサーを含むことは特に有利である。
【0080】
前述のとおり、スペーサーの機能は二重である:第一に、粒子からのキレート化剤の距離を制御し、それにより常磁性イオンの距離を制御することにより、粒子の水性環境における水素への常磁性イオンの曝露が制御され、それによりシグナルの緩和度を調節することができる。第二に、スペーサー1への結合は切断可能な基であり、それによりキレート化金属イオンの撮像機能が提供された時点で、その排出を促進する。
【0081】
まず緩和度への効果について、得られる緩和度を最大とするために、スペーサーの寸法は常磁性イオンが粒子の表面から少なくとも5または10Åの距離で離されるようになると思われる。表面からの常磁性イオンの平均距離は約5〜100Åであってもよく、好ましくは約10〜50Å、より好ましくは約10〜20Åである。
【0082】
本明細書において用いられる、媒体の「表面」とは、粒子を構成する材料のキレーターが結合する部位での外側境界を意味する。全般に、粒子自体の平均径は常磁性イオンがある中心からの平均距離と比較される。これは少なくとも5Åの差、好ましくは少なくとも10Åの差であるべきである。
【0083】
オフセットの程度は、オフセットによって付与された緩和度に対する影響に関して定義することもできる。付与緩和度は磁場の強度に依存し、粒子ごとの緩和度は、当然のことながら、部分的には粒子自体に結合している常磁性イオンの数によって決まる。任意に選択した磁場強度0.47Tでは、オフセットはイオンごとの緩和度をτ1について少なくとも1.2倍、好ましくは1.5倍、より好ましくは2.5倍または10倍、τ2について同様の量、増強するのに十分である。任意に選択した磁場1.5Tでは、オフセットはこれらの緩和度を同様の率で増強する。4.7Tでは、ここでもイオンごとで、好ましくはτ1の増強は少なくとも1.5倍、好ましくは2倍で、τ2の増強は少なくとも2倍、好ましくは3倍である。緩和度自体の単位について、オフセットは0.47Tでの(s*mM)-1におけるτ1の値が少なくとも20、好ましくは25、より好ましくは30となり;1.5Tでは、これらの値が少なくとも20、好ましくは30であり、4.7Tでは、少なくとも10、好ましくは14であると思われる。τ2について、0.47Tでの対応の値は少なくとも20、好ましくは30、より好ましくは35となり;1.5Tでは、少なくとも20、好ましくは30となり;4.7Tでは、少なくとも20、より好ましくは40、最も好ましくは60となると思われる。
【0084】
キレート化剤を適当に結合することにより、かなりの数のキレーターおよび常磁性イオンを粒子に結合することができる。常磁性イオンを含むキレーターについて、典型的には粒子は少なくとも2,000コピー、典型的には少なくとも5,000、より典型的には少なくとも10,000または100,000または500,000コピーを含む。ターゲティング物質については、わずかに一つもしくは二つ、または数個以上のコピーを含んでいてもよい。様々な数の薬物分子を含んでいてもよい。
【0085】
常磁性イオンを含む多くのキレーターが組成物の媒体に適用されるため、粒子ごとでは非常に高い緩和度を得ることができる。粒子ごとのτ1およびτ2の倍率は、当然のことながら、イオンごとの倍率とほぼ同等である。本発明は、0.47Tでの粒子ごとの(s*mM)-1の単位におけるτ1の値、少なくとも1.8×106、好ましくは2.0×106、より好ましくは2.5×106を提供する。1.5Tでは、これらの値はほぼ同等で、4.7Tでは、τ1の緩和度の値は少なくとも8×105、好ましくは1×106、より好ましくは1.1×106である。
【0086】
0.47Tでのτ2について、緩和度はこれらの単位では好ましくは少なくとも2×106、より好ましくは2.5×106、より好ましくは3×106である。1.5Tでは、τ2の値は少なくとも1.6×106、好ましくは2.5×106、より好ましくは3×106である。4.7Tでは、τ2は少なくとも3×106、より好ましくは4×106、より好ましくは5×106である。
【0087】
オフセット設定は、ホスホグリセリドが表面で親油性材料と結合するため、キレートの歯状部分をスペーサーを通じて媒体表面から離すことによって達成される。
【0088】
切断可能スペーサー
特定の態様において、本発明の化合物は、常磁性イオンまたは放射性核種イオンキレートが粒子または媒体の一部を構成する脂質から解離することができるような、切断可能スペーサー1を含んでいてもよい。キレートを排出を促進するための親水性状態で放出することにより、排出を強化することが望ましいと考えられる。加えて、スペーサー1は、例えば、光活性化によって外部から活性化されるか、または細胞もしくは血流中にある酵素が持続的に接近する、一つまたは複数の切断部位を含んでいてもよい。前者の例には、当技術分野において知られているとおり、光活性化される、または超音波によって切断される特定の結合が含まれる。撮像または治療が完了した後、ナノ粒子に切断を行うのに適した電磁エネルギーまたは超音波をかける。第二の場合、スペーサーは、循環しているプロテアーゼによる切断に感受性のアミノ酸配列を含むペプチドであるか、もしくはそのようなペプチドを含んでいてもよく、またはそれ自体がそのような切断に感受性の多糖を含んでいてもよい。そのような切断部位のいかなる組み合わせを含んでいてもよい。スペーサーまたは連結鎖の切断に対する感受性が、排出を強化し、常磁性イオンの潜在毒性を低減する。
【0089】
持続的分解を用いる場合、利用可能な酵素活性に応じてスペーサーを選択し、望まれる数の切断部位を供給することによって、速度を調節してもよい。しかし、血流中を循環しているいかなるペプチドも、循環しているプロテアーゼによって最終的には分解されることは周知であり、同様に多糖は内因性酵素により切断される。
【0090】
調製法
本発明の組成物の正確な調製法は変動的で、粒状媒体の性質に依存する。しかし、一般に、親油性粒子表面は式(1)、(1A)および(1B)を有する化合物の親油性R2基と結合する。一つの特定の態様において、方法はナノ粒子のコアを形成する液体過フッ化炭化水素化合物およびその粒子の脂質/界面活性剤コーティングの成分を水性懸濁液中で混合する段階と、マイクロ流体化する段階と、望まれる場合には、粒子を回収し、分粒する段階とを含む。結合する成分は、脂質/界面活性剤コーティングの成分との結合により元の混合物中に含まれていてもよく、または粒子形成後に追加の部分への結合を行うこともできる。
【0091】
キット
本発明の乳剤を調製し、本発明の方法において直接用いてもよく、または乳剤の成分をキットの形で供給してもよい。キットは所望の補助材料すべてを緩衝液中または凍結乾燥した形で含む、あらかじめ調製した標的化組成物を含んでいてもよい。または、キットは式(1)、(1A)および(1B)のいずれかの化合物ならびに/またはターゲティング物質を含まない乳剤の形を含んでいてもよく、これらはそれぞれ別々に供給される。ターゲティング物質が直接結合される場合、乳剤はマレイミドなどの反応性基を含むことになり、この基は乳剤をターゲティング物質と混合したときにターゲティング物質の乳剤自体への結合を行う。結合を行う際に有用な追加の試薬を別の容器から提供してもよい。または、乳剤は、別に供給される所望の成分(これ自体が反応性基を含む)に結合したリンカーに結合する反応性基を含んでいてもよい。適当なキットを構成する様々なアプローチを構想することができる。したがって、最終の乳剤を作り上げる個々の成分を別々の容器で供給してもよく、またはキットは単にキット自体とは別に提供される他の材料と組み合わせるための試薬を含んでいてもよい。
【0092】
組み合わせの非網羅的リストには下記が含まれると考えられる:脂質-界面活性剤層に蛍光体またはキレート化剤などの補助成分と、ターゲティング物質への結合のための反応性部分とを含む乳剤;反対に乳剤がターゲティング物質に結合していて、補助材料に結合するための反応性基を含むもの;ターゲティング物質およびキレート化剤の両方を含むが、キレート化される金属がキット中で供給されるか、または使用者により独立に提供される乳剤;脂質層の材料が異なる反応性基、すなわちターゲティング物質のための反応性基群と、補助物質のための別の反応性基群とを含む、界面活性剤/脂質層を含むナノ粒子の製剤;反応性基が連結物質によって供給される、前述の組み合わせのいずれかを含む乳剤。
【0093】
適用
乳剤およびそれらの調製用キットは、組織の撮像および治療薬の提供を含む本発明の方法において有用である。
【0094】
本発明の磁気共鳴撮像法の造影剤は、米国特許第5,155,215号;米国特許第5,087,440号;Margerstadt, et al., Magn. Reson. Med. (1986) 3:808;Runge, et al., Radiology (1988) 166:835;およびBousquet, et al., Radiology (1988) 166:693に記載の他のMRI造影剤と同様の様式で用いることができる。用いてもよい他の物質は、米国特許公報第2002/0127182号に記載のもので、これらはpH感受性で、パルスに応じてコントラスト特性を変えることができる。一般に、造影剤の滅菌水溶液を患者に体重1kgあたり0.01から1.0mmolの範囲の用量で静脈内投与する。
【0095】
本発明の組成物が標的化送達媒体を含む場合、適当な標的には、腫瘍組織、アテローム斑、血餅などを含むいかなる興味対象組織も含まれる。ターゲティング物質の選択は、当然のことながら、標的自体の性質に依存することになる。例えば、アテローム斑または血餅を標的とするためには、αvβ3インテグリンと相互作用するペプチド模擬物と同様、抗フィブリン抗体が適当である。腫瘍に対する適当なターゲティング物質には、腫瘍関連抗原に対して調製された、または腫瘍を有する臓器に対して調製された抗体が含まれる。特定の臓器の撮像は、標的自体に関連する受容体または他の特徴的部分と相互作用するターゲティング物質を用いることになる。
【0096】
以下の実施例は本発明を例示することを意図しており、本発明を限定するものではない。
【0097】
調製A
ナノ粒子調製
常磁性ナノ粒子を、Lanza, G, et al., Circulation (1996) 94:3334-3340によって記載された方法の変法において調製した。簡単に言うと、乳剤は40%(v/v)臭化パーフルオロオクチル(PFOB;MMM, St. Paul, MN)、2%(w/v)ベニバナ油、2%(w/v)界面活性剤共混合物(co-mixture)、1.7%(w/v)グリセリンおよび残分としての水を含んでいた。界面活性剤共混合物は63モル%レシチン(Avanti Polar Lipids, Inc., Alabaster, AL)、15モル%コレステロール(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、2モル%ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(Avanti Polar Lipids, Inc., Alabaster, AL)、および20モル%常磁性親油性キレート(例えば、DOTAおよびDOTA誘導体)を含んでいた。界面活性剤成分をクロロホルムに溶解し、減圧下で蒸発させ、50℃の減圧乾燥器内で終夜乾燥し、水中に超音波処理により分散させた。懸濁液を混合機中でPFOB、ベニバナ油および蒸留脱イオン水と共に30から60秒間予備乳化し、次いでM110S Microfluidics乳化機(Microfluidics, Newton, MA)中、20,000PSIで4分間乳化した。完了した調合物を圧着密封したバイアルに入れ、ブランケットとして窒素を充填した。粒径を37℃でレーザー光散乱サブミクロン粒径測定器(Malvern Instruments, Malvern, Worcestershire, UK)を用いて測定した。
【0098】
実施例1
アミドGdリガンドの合成
スキーム1はガドリニウムのリガンドを含むアミドを調製するための合成スキームを例示している。スキーム1に示すとおり、適当な一保護ジアミン1(すなわち、1-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-6-アミノヘキサン)をα-ハロアセチルハライド2と、塩基(すなわち、i-Pr2NEt)存在下で反応させて、α-ハロアミド3を得る。α-ハロアミドを塩基(すなわち、i-Pr2NEt)存在下、大環状テトラミン4(すなわち、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)により求核置換して、一官能性大環状化合物5を得る。大環状化合物に残っている窒素を適当な塩基(すなわち、i-Pr2NEt)存在下、α-ハロ-ベンジルアセテート6でさらにアルキル化して、四官能性誘導体7を得る。t-ブトキシカルボニル基を適当な酸(すなわち、トリフルオロ酢酸)で除去し、中和後にアミン8を得る。
【0099】
アミン8のその対応するイソシアネートへの変換は、まず適当な溶媒(すなわち、CH2Cl2)中、二酸化炭素および塩基(すなわち、Et3N)を周囲よりも低い温度(すなわち、-10℃)で加えることによりアミンカーバメート塩を生成して達成される。次いで、このカーバメート塩を、メタンスルホン酸無水物を加えることによりイソシアネートに変換する(メタンスルホン酸無水物の代わりに他の物質を用いてもよく、ベンゼンスルホン酸無水物、トルエンスルホン酸無水物、o-スルホ安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、P2O5、POCl3、SOCl2が含まれるが、それらに限定されるわけではない)。得られた塩からのイソシアネートの単離は、有機反応溶媒を水で抽出して9を得、これを当業者には公知の技術によりさらに精製して達成される。
【0100】
アミノ脂質10(すなわち、ホスファチジルコリン)を加えて尿素生成し、11を得る。11のベンジルエステルの水素化分解により、ガドリニウムのリガンドに適した材料として所望の最終生成物12を得る。
【0101】

【0102】
実施例2
ガドリニウムイオンの導入
式(1)の化合物の調製前もしくは調製中にDOTAを初めにメタル化するか、または合成後にメタル化することにより、ガドリニウムイオンをキレートに導入することができる。
【0103】
例えば、DOTAまたはDOTA'-CONR1(スペーサー1)NR1Hのプレメタル化を、水溶液中で化学量論量のGdCl3を用いて行う。反応混合物を凍結乾燥により乾固し、PEまたはトリグリシル-PEとの結合前にそれ以上精製せずに用いる。最終の結合に塩を持ち込むとカップリング化学に負の影響をおよぼすため、乾燥した反応混合物の水洗により塩を除去する。
【0104】
GdCl3の代わりにGd2O3を用い、Gd2O3を含む溶液をMeOH/クロロホルム中で長時間煮沸することにより、「無塩」金属錯体を生成することもできる。
【0105】
式(1)の化合物のポストメタル化を、GdCl3によりクロロホルムメタノール中煮沸しながら、または無水DMF中で実施する。
【0106】
実施例3
乳剤の調製
式(1)の複合体を調製Aで調製したナノ粒子に結合する。各粒子はおよそ33,000のGd3+キレートを含むことになる。
【0107】
実施例4
(DOTA-アミド)リガンドのもう一つの態様の調製
下記のスキーム2は本発明のもう一つの態様の合成を例示している。



【0108】
実験
段階1

【0109】
窒素雰囲気下で、無水メチルtert-ブチルエーテル(100mL)中の1-(tert-ブトキシカルボニル)-1,6-ヘキサンジアミン、2(10.85g;50.2mmol)およびトリエチルアミン(7.3mL;52.4mmol)の混合物を機械的に撹拌し、氷浴中で3℃まで冷却した。無水メチルtert-ブチルエーテル(50mL)中の塩化ブロモアセチル、1(4.35mL;52.2mmol)の溶液を3〜9℃で77分間かけて滴加した。黄褐色スラリーを窒素雰囲気下、周囲温度で終夜撹拌した。
【0110】
15時間後、黄褐色スラリーを酢酸エチル(150mL)と水(100mL)との間で分配した。分離した有機層を氷冷2.5%HCl水溶液(100mL)、飽和NaHCO3(100mL)および飽和食塩水(100mL)で逐次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過して、褐色ろ液を得た。ろ液を45℃のロータリーエバポレーターで濃縮して褐色油状物を得た。この油状物をヘキサン(10mL)中でスラリーとし、ロータリーエバポレーターで再構成して、褐色粘稠固体を得た;13.25g。固体を35℃の減圧乾燥器(10:15am)で145分間乾燥した;12.9g。固体は熱エーテル、熱トルエン、およびCH2Cl2に可溶で、CH2Cl2から再結晶して、底部に橙色油状物を含む白色クラスターを得た。
【0111】
固体を熱酢酸エチル(30mL)に溶解し、ヘキサン(30mL)で希釈した。溶液を、ろ紙片を上にのせた、あらかじめ湿らせたMerck grade 9385シリカゲル(50g)のパッドを通して吸引濾過した。シリカゲルを酢酸エチル:ヘキサン(1:1、1,000mL)で洗浄した。各250mLの4画分を集め、TLCで分析した。所望の生成物を含む画分を合わせ、45℃のロータリーエバポレーターで濃縮して、淡桃色の固体を得た;11.6g。この固体をジクロロメタン(50mL)に溶解し、ヘキサン(200mL)で希釈し、激しく旋回させて、固体を結晶化した。
【0112】
高粘度のスラリーを吸引濾過し、ヘキサンで洗浄して、ベージュ色の固体を得た;11.8g。固体を35℃の減圧乾燥器で105分間乾燥し、所望の生成物3を得た(8.65g、51%)。
【0113】
段階2

a. Wilmington Pharma Tech Co.
【0114】
窒素雰囲気下で、ペンテン安定化クロロホルム(100mL)中のサイクレン、4(7.0g;40.6mmol)の溶液を磁気撹拌し、これにクロロホルム(100mL)中のN-ブロモアセチル-N'-(tert-ブトキシカルボニル-1,6-ヘキサンジアミン(6.65g;19.7mmol)の溶液を室温で6.5時間かけて滴加処理した。濁った混合物を室温で終夜撹拌した。
【0115】
窒素雰囲気下、室温で17時間後、黄褐色スラリーの一定量(0.1mL)を0.05%のギ酸を含む50%アセトニトリル水溶液(20mL)中で希釈した。LC/MSにより所望の生成物および過剰のサイクレンが示され、出発原料の臭化物は検出不可能であった。反応スラリーを1N Na2CO3水溶液(100mL)および水(165mL×4)で洗浄した。LC/MSにより基準線のサイクレンのレベルは無視できるものであった。しかし、もう一回水(165mL)洗浄を行った。Na2SO4で乾燥した後、淡い琥珀色のクロロホルムろ液を40℃のロータリーエバポレーターで濃縮し、琥珀色の油状物を得た;12.8g。この油状物を50℃、0.1〜0.4torrのクーゲルロールで100分間蒸発させ、粘稠琥珀色油状物を得;9.3g、次いで周囲環境下で終夜置いた。9.2gの5(108.9%)。
【0116】
段階3

【0117】
窒素雰囲気下で、無水N,N-ジメチルホルムアミド(225mL)中の粉末炭酸カリウム(14.5g;104.9mmol)および粗製[6-(2-1,4,7,10-テトラアザ-シクロドデカ-1-イル-アセチル

を、ニートのブロモ酢酸ベンジル(16.6mL;104.8mmol)を一度に加えて処理した。わずかに発熱して、ただちに温度が32℃まで上がった。得られたスラリーを窒素雰囲気下、周囲温度で撹拌した。3時間後、一定量(2滴)を0.05%のギ酸を含む50%アセトニトリル水溶液(10mL)中で希釈した。LC/MSにより主要成分としての所望の生成物プラスDMF、未反応のブロモ酢酸ベンジル、および不明のものが示された。出発原料のモノアルキル化サイクレンまたはいかなる関連中間体の形跡もなかった。周囲温度で3.5時間後、スラリーを5%NaCl水溶液(600mL)と混合し、酢酸エチル(600mL×2)で抽出した。合わせた酢酸エチル層を5%食塩水(600mL×3)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、25〜40℃のロータリーエバポレーターで濃縮して、琥珀色の油状物を得た;29.4g。琥珀色油状物を50℃、0.2〜0.4torrのクーゲルロールで30分間蒸発させ、わずかに重量が減少した;26.85g。
【0118】
油状物をクロロホルム(30mL)に溶解し、あらかじめ湿らせたBiotage 75Lシリカゲルカラムに加えた。追加のクロロホルム(30mL×3)を用いて試料をカラムに加えた。次いで、カラムを下記のクロロホルム中メタノールの段階勾配により溶出した(メタノールの体積%、体積):(0%を5,000mL、1%を5,000mL、2%を5,000mL、3%を5,000mL、4%を5,000mL)。クロロホルムが不足したため、代わりにジクロロメタンを用い、ジクロロメタン中メタノールの段階勾配を下記のとおりに続けた:5%を5,000mLおよび6%を5,000mL。
【0119】
合わせた画分を35℃のロータリーエバポレーターと、次いで50℃、0.2torrのクーゲルロールで濃縮し、ベージュ色の泡状ガラスで得た;9.15gの7(46.4%)。
【0120】
段階4

【0121】
ジクロロメタン(52mL)中の4,7-ビス-ベンジルオキシカルボニルメチル-10-[(6-tert-ブトキシカルボニルアミノ-ヘキシルカルバモイル)-メチル]-1,4,7,10-テトラアザ-シクロドデカ-1-イル}-酢酸ベンジルエステル7(4.65g;5.33mmol)の溶液を磁気撹拌しながら、ニートのトリフルオロ酢酸(52mL;675mmol)で処理した。混合物をCaSO4乾燥試験管中、室温で撹拌した。60分後、淡黄色溶液を室温のロータリーエバポレーターで濃縮し、粘稠淡黄色油状物を得た;13.75g。この油状物をクロロホルム(200mL)に溶解し、1N Na2CO3水溶液(150mL)で洗浄して、混濁水層のpHは8〜9となった。次いで、クロロホルム層を水(100mL)で洗浄した。乳状クロロホルム層をNa2SO4で乾燥し、濾過し、室温のロータリーエバポレーターでビュッヒポンプを用いて濃縮し、淡い琥珀色の泡状ガムを得た;4.9g。この材料を室温、0.05torrのクーゲルロールで65分間蒸発させ、ベージュ色の泡状ガラスを得た;4.15g、8(100.7%)。
【0122】
段階5

【0123】
250mLの丸底フラスコ(RB flask)に活性エステル、9(4.0g、12.18mmol、FW=328.36、Fluka)、DPPE、10(8.0g、11.56mmol、FW=691.96、Lipoid)およびCHCl3:DMF(1:1(v:v)110mL)を加えた。次いで、このスラリーにEt3N(4.6g、45.5mmol、FW=101、Fluka)を加え、反応混合物をアルゴン雰囲気下、50℃で3時間加熱した(反応混合物は約90分後に均質となった)。反応混合物を周囲温度まで戻して終夜放置した。粗製反応混合物を40℃で減圧濃縮した。次いで、半固体残渣をCH2Cl2(200mL)に溶解し、Milli-Q水(2×100mL)で抽出した(この抽出により乳剤が生成し、これは放置しても十分に分離せず、水層は混濁したままであった)。水層をCH2Cl2(100mL)で逆抽出した。CH2Cl2層を合わせ、Na2SO4で乾燥し、濾過し、次いで25℃で減圧濃縮して、白色粘稠固体、11を得た(100%、10.5g、11.6mmol FW=905.23)。
【0124】
段階6

【0125】
250mLの丸底フラスコにBoc-Cap-DPPE、11(10.5g、11.6mmol、FW=905.23)およびニートCF3CO2H(25mL、TFA添加により激しいガス発生)を加えた。溶液を周囲温度で3時間撹拌した。溶液にCH2Cl2(50mL)を加え、反応混合物を減圧濃縮した。さらにCH2Cl2(50mL)を加え、これを減圧濃縮して、澄明油状物を得た。
【0126】
上からの油状物をCH2Cl2(200mL)に溶解し、次いで0.5M Na2CO3水溶液(2×125mL)で抽出した(最初の125mLで激しいガス発生)。二度目の水層のpHは塩基性のままであった。水層をCH2Cl2(100mL)で逆抽出した(水層は乳状白色のままであった)。CH2Cl2層を合わせ、Na2SO4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮して、薄片状の白色固体、12を得た(7.47g、9.27mmol、80%)。
【0127】
段階7

【0128】
段階8

【0129】
100mLの丸底フラスコにクロロギ酸p-ニトロフェニル、13(86mg、0.427mmol)およびCHCl3(無水、10mL)を加えた。この澄明溶液を氷/塩浴を用いて-10℃に冷却した。アルゴン雰囲気下、-10℃で、アミン、8(0.328g、0.424mmol)およびCHCl3(10mL)中のi-Pr2NEt(100μL)を13に25分かけて加えた。約-5から-10℃でさらに75分後、固体12(340mg)を加えた。この後、二回目のi-Pr2NEt(100μL)を加えた。反応混合物は二回目のi-Pr2NEt添加後に明るい黄色に変化した。この溶液をアルゴン雰囲気下、50℃で20時間加熱した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、次いでH2O(100mL)およびCHCl3(50mL)中に注いだ。層を分離し、水層をCHCl3(50mL)で逆抽出した。合わせたCHCl3層を0.5M Na2CO3水溶液(2×50mL)で抽出した。各抽出の後、水層をCHCl3(50mL)で逆抽出した。次いで、合わせたCHCl3層をH2O(50mL)と、最後に食塩水(50mL)で抽出した(再度、各水層をCHCl3(50mL)で逆抽出した)。合わせたCHCl3層をMgSO4で乾燥し、濾過し、35℃で減圧濃縮して、淡黄色固体を得た。この固体をアセトン中でスラリーとし、冷蔵庫で冷却し、0.45ミクロンシリンジフィルターを通して濾過し、ろ液を35℃で減圧濃縮して、淡黄色固体、15を得た(430mg、63%)。
【0130】
段階9

【0131】
100mLの三頚丸底フラスコに15(0.43g)およびEtOH(10mL)を加えた。この澄明溶液に10%Pd炭素(0.236g)を加えた。フラスコに水素タンクに接続したガス導入管、ヘビーラバーバルーンおよびガラス栓を取り付けた。フラスコを水素で三回パージし、次いで十分な水素を加えてバルーンをふくらませた。反応混合物を周囲温度で合計4日間撹拌した(陽圧を維持するために定期的に水素を加えることが必要であった)。圧を解放し、粗製反応混合物を0.45ミクロンフィルターメンブレンを通して濾過し、澄明ろ液を得た。固体をCHCl3:MeOH(3:1、25mL)で洗浄した。ろ液を濃縮して、淡黄色固体、16を得た(303mg、85%)。
【0132】
段階10

【0133】
ガドリニウムイオンを、実施例2に記載の方法に従い、化合物17に導入することができる。
【0134】
実施例5
ターゲティング
A. ターゲティングリガンドを有するDSPE-PEG(2000)-マレイミド付加物


【0135】
DSPE-PEG(2000)-マレイミドをαvβ3ターゲティングリガンドに、分析により出発材料の完全な消費が示されるまで撹拌しながら加え、αvβ3ターゲティングリガンドのチオールがDSPE-PEG(2000)-マレイミドのマレイミドに付加した、下記の組成物を得る。

【0136】
B. ナノ粒子の調製
常磁性ナノ粒子をFlacke, S., et al., Circulation (2001) 104:1280-1285に記載のとおりに調製する。簡単に言えば、ナノ粒子乳剤は40%(v/v)臭化パーフルオロオクチル(PFOB)、2%(w/v)界面活性剤共混合物、1.7%(w/v)グリセリンおよび残分としての水からなる。
【0137】
対照の界面活性剤、すなわち非標的化常磁性乳剤は60モル%レシチン(Avanti Polar Lipids, Inc., Alabaster, AL)、8モル%コレステロール(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)、2モル%ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)(Avanti Polar Lipids, Inc., Alabaster, AL)、および30モル%ガドリニウムジエチレントリアミン五酢酸-ビスオレエート(Gd-DTPA-BOA、Gateway Chemical Technologies, St. Louis, MO)を含む。
【0138】
腫瘍標的化常磁性ナノ粒子を、下記を含む界面活性剤共混合物を用い、前述のとおりに調製する:60モル%レシチン、0.05モル%のパラグラフBの複合体、8モル%コレステロール、Gd3+を含む30モル%の実施例1のキレート、および1.95モル%DPPE。
【0139】
腫瘍標的化非常磁性ナノ粒子を、親油性Gd3+キレートの添加を除き、代わりにレシチン(70モル%)およびコレステロール(28モル%)が増加した界面活性剤共混合物を用いて、標的化製剤と同じ様式で調製する。
【0140】
各ナノ粒子製剤の成分をM110Sマイクロフルイディクス乳化機(Microfluidics, Newton, MA)中、20,000PSIで4分間乳化する。完了した乳剤を圧着密封したバイアルに入れ、ブランケットとして窒素を充填する。
【0141】
本発明の化合物は、下記のとおり当技術分野において公知の腫瘍モデル、磁気共鳴撮像法および組織検査を試験するために用いることができる。
【0142】
C. 腫瘍モデル
雄のニュージーランドホワイトウサギ(〜2.0kg)を筋肉内ケタミンおよびキシラジン(それぞれ65および13mg/kg)で麻酔する。各動物の左後肢を剃毛し、滅菌調製し、Marcaine(商標)で局所浸潤した後、膝窩上に小さい切開を行う。供与動物から新しく得た、2×2×2mm3のVx-2癌腫断片を、約0.5cmの深さに移植する。解剖学的面を再度接合し、一本の吸収性縫合糸で固定する。最後に、皮膚の切開部をDermabond皮膚接着剤で閉鎖する。腫瘍移植術の後、キシラジンの効果をヨヒンビンで戻し、動物を回復させる。
【0143】
Vx-2移植の12日後、ウサギを1%から2%Isoflurane(商標)で麻酔し、挿管し、人工呼吸し、試験用のMRIスキャナのボア内に置く。各ウサギの反対側の耳に設置した静脈内および動脈内カテーテルを用いて、下記のとおりナノ粒子の全身注入および動脈血採取を行う。動物をAnimal Studies Committee at Washington University Medical Schoolによって承認されたプロトコルおよび方法に従い、試験の期間中、生理学的にモニターする。
【0144】
移植後12日の時点で、動物のVx-2腫瘍体積は腫瘍標的化ナノ粒子投与群(130±39mm3)または非標的化ナノ粒子投与群(148±36mm3)で差がなかった(p>0.05)。
【0145】
前述のとおり、Vx-2腫瘍を移植した12羽のニュージーランドウサギを3つの処置法に無作為化し、下記のいずれかを投与する:
1)腫瘍標的化常磁性ナノ粒子(腫瘍標的化、n=4)、
2)非標的化常磁性ナノ粒子(すなわち、対照群、n=4)、または
3)腫瘍標的化非常磁性ナノ粒子と、続いて腫瘍標的化常磁性ナノ粒子(すなわち、競合群、n=4)。
【0146】
処置群1および2において、基準時MR画像の収集後、ウサギに0.5ml/kgの腫瘍標的化または対照常磁性ナノ粒子を投与する。処置群3では、すべてのウサギにMR撮像の2時間前に0.5ml/kgの腫瘍標的化非常磁性ナノ粒子と、続いて0.5ml/kgの腫瘍標的化常磁性ナノ粒子を投与する。各動物で注入時および30分ごとに2時間、ダイナミックMRI画像を収集し、腫瘍および筋肉領域におけるシグナル増強の初期変化をモニターする。MR分子撮像結果を実証するための組織検査用に、すべての腫瘍を摘出し、凍結する。
【0147】
D. 磁気共鳴撮像法および組織検査法
腫瘍移植の12日後、動物に1.5テスラの臨床スキャナ(NT Intera with Master Gradients, Philips Medical Systems, Best, Netherlands)でMRIスキャンを行う。各動物をクワドラチャ頭頸部鳥かご型コイル内に置き、直径11cmの円形表面コイルを腫瘍近傍の後肢に対するように設置する。すべての高周波伝送にはクワドラチャ体幹部コイルを用い;スカウト撮像中の検出には鳥かご型コイルを用い;高分解能撮像中の検出には表面コイルを用いる。ガドリニウムジエチレントリアミン五酢酸(Gd-DTPA)を添加した水を充填した10mlシリンジを高分解能視野(FOV)内に置き、シグナル強度標準とする。
【0148】
T2強調高速スピンエコースキャン(TR:2000ms、TE:100ms、FOV:150mm、スライス厚:3mm、マトリクス:128×256、シグナル平均:2、ターボファクター:3、スキャン時間:3分)では、腫瘍は当初、移植部位に局在する。腫瘍の高分解能、T1強調、脂肪抑制、三次元、グラジエントエコースキャン(TR:40ms、TE:5.6ms、FOV:64mm、スライス厚:0.5mm、隣接スライス:30、平面内分解能:250μm、シグナル平均:2、フリップアングル:65°、スキャン時間:15分)を基準時に収集した後ただちに繰り返し、また、常磁性ナノ粒子注入後30、60、90および120分の時点で収集する。
【0149】
腫瘍体積を、オフライン画像処理ワークステーション(Easy Vision v5.1, Philips Medical Systems, Best, Netherlands)で計算する。T1強調基準時スキャンの各スライスで関心領域(ROI)を腫瘍周囲に手動で適用し、三次元対象中に結合し、体積を計算する。
【0150】
経時的画像増強を定量化するために、不偏画像解析プログラムを用いる。静脈内ナノ粒子注入の前、直後、ならびに30、60、90および120分後に収集したT1強調画像(各腫瘍の中心を通る3つの隣接スライス)をMATLAB(The Math Works, Inc., Natick, MA)で解析する。各時点の画像強度を基準ガドリニウム標準により基準時画像に正規化する。連続画像を空間的に同時登録し、コントラスト増強を注射後の各時点で各ピクセルについて求める。基準時画像において後肢筋肉の一部の周りにROIを手動で引き、ROI内のピクセルごとのシグナル増強の平均を各時点で計算する。各動物の基準時画像で第二のROIを腫瘍の周りに引き、腫瘍シグナルの標準偏差を計算する。基準時腫瘍シグナルの標準偏差の3倍を超えてシグナル強度が高まった場合に、ピクセルが増強されたと考える(すなわち、基準時に見られる変動の99%を超える増強)。周囲の平面内ピクセルがいずれも増強していない、単独増強ピクセルは、ノイズとして計算から除外する。残りの増強ピクセル群を直後、30、60および90分画像にマッピングし、それぞれの間隔におけるシグナル増大の平均を求める。ANOVA(SAS, SAS Institute, Cary, NC)を用いて、各時点の腫瘍および筋肉について統計比較を行う。処置平均をLSD法を用いて分離する(p<0.05)。
【0151】
撮像後、腫瘍病理を確認し、関連する血管分布および血管形成を評価するための組織検査および免疫組織検査用に腫瘍を摘出する。腫瘍をOCT媒質中、元の解剖学的位置およびMRI画像平面に対して公知の向きで凍結(-78℃)する。アセトン中、-20℃で15分間固定し、終夜風乾(4℃)した、4ミクロンの凍結切片(Leica Microsystems, Inc., Bannockburn, IL)をヘマトキシリン-エオシン、マウス抗ヒト/ウサギ内皮抗体(QBEND/40、1:10希釈、Research Diagnostics, Inc., Flanders, NJ)、またはマウス抗ヒトαvβ3-インテグリン(LM-609、1:200希釈、Chemicon International, Temecula, CA)で染色する。免疫組織化学をVectastain(登録商標)Elite ABCキット(Vector Laboratories, Burlingame, CA 94010)を用いて行い、Vector(登録商標)VIPキットで展開し、Vector(登録商標)メチルグリーン核対比染色剤で対比染色する。スライドをNikonデジタルカメラ(Model DXM 1200)を備えたNikon Eclipse E800研究用顕微鏡(Nikon USA, Melville, NY)で観察し、Nikon ACT-1ソフトウェアで捕捉する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理的条件下で水に溶解した場合、負に荷電する、下記式の化合物:

式中、Ch'は少なくとも4つの窒素原子および(n-1)のカルボキシル基を含むキレート化剤の残基であり、ここでnはキレート化部分の窒素原子の数であり;
WはOまたはSであり;
XはNR1、S、またはOであり;
M+は対イオンであり;
R1はそれぞれHまたはアルキル(1-4C)であり;
R2はそれぞれ独立に、少なくとも10Cを含む置換されていてもよい飽和または不飽和ヒドロカルビル基であり;
スペーサー1は、ヘテロ原子、アリール、ペプチド、またはポリアルキレングリコールを任意で含むC1-10アルキルを含み;
スペーサー2は、ヘテロ原子を任意で含むC1-10アルキルを含む。
【請求項2】
スペーサー2がCH2CH2または下記である、請求項1記載の化合物:

式中、nは1〜6であり、mは1〜6である。
【請求項3】
スペーサー1がエチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、またはp-フェニレンである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
スペーサー1がヘキサメチレンである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
Ch'が、1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-四酢酸(DOTA)よりも1個少ないカルボキシル基を有するDOTAの残基である、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
Ch'がGd(3+)キレートである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
Ch'がGd(3+)キレートである、請求項5記載の化合物。
【請求項8】
R1がそれぞれHである、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
R2COOがそれぞれ天然脂肪酸の残基または該残基の混合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
Ch'とキレート形成した常磁性金属をさらに含む、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
常磁性金属イオンが非放射性である、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
ターゲティング物質および/または生物学的活性物質を任意で含む親油性ナノ粒子または微粒子と、請求項1記載の化合物とを含む組成物。
【請求項13】
ナノ粒子または微粒子が請求項1記載の化合物の少なくとも2,000コピーを含む、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
ターゲティング物質が受容体リガンドまたは抗体もしくはその断片である、請求項12記載の組成物。
【請求項15】
ナノ粒子または微粒子がリポソーム、油滴、過フッ化炭化水素ナノ粒子、脂質コーティングタンパク質粒子、または脂質コーティング多糖である、請求項12記載の組成物。
【請求項16】
試料を請求項12記載の組成物に接触させる段階と、該試料を撮像する段階とを含む、試料の撮像方法。
【請求項17】
試料が組織である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
式(1A)を有する、請求項1記載の化合物:

式中、W、X、スペーサー1、スペーサー2、M+、およびR2は式1で定義したとおりである。
【請求項19】
式(1B)を有する、請求項18記載の化合物:

式中、M+は式1で定義したとおりである。
【請求項20】
下記式の化合物
CH'(CH2)CONR1(スペーサー1)NR1H (2)
を、CO2、ホスゲン、もしくはホスゲン等価物、またはCS2、チオホスゲン、もしくはチオホスゲン等価物、および下記式の化合物

に接触させる段階を含む、下記式の化合物の調製法:

式中、Ch'、X、R1、R2、スペーサー1、およびスペーサー2は請求項1で定義したとおりである。
【請求項21】
ホスゲン等価物がトリホスゲン、ジホスゲン、カルボニルジイミダゾール、またはクロロギ酸p-ニトロフェニルである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
Ch'が、1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-四酢酸(DOTA)よりも1個少ないカルボキシル基を有するDOTAの残基である、請求項20記載の方法。
【請求項23】
Ch'が常磁性イオンを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
常磁性イオンが非放射性である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
常磁性イオンがGd(3+)である、請求項23記載の方法。
【請求項26】
式(1)を有する化合物を常磁性イオンに接触させる段階をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項27】
式(1)を有する化合物のCh'が、1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-N,N',N'',N'''-四酢酸(DOTA)よりも1個少ないカルボキシル基を有するDOTAの残基である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
常磁性イオンが非放射性である、請求項26記載の方法。
【請求項29】
式(1)を有する化合物をGdCl3またはGd2O3に接触させる段階を含む、請求項26記載の方法。

【公表番号】特表2008−502726(P2008−502726A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527646(P2007−527646)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/019966
【国際公開番号】WO2005/122891
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506410316)ケレオス インコーポレーティッド (2)
【Fターム(参考)】