説明

キンク化剛直棒状ポリアリーレンの新規な使用、および前記キンク化剛直棒状ポリアリーレンから製造される物品

その耐火性能のための、特定のタイプの少なくとも1種のキンク化剛直棒状ポリアリーレンの使用。それと同一のキンク化剛直棒状ポリアリーレンを含む材料からなる、フィルムおよびコーティング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、以下の出願の利益を主張するものである:(i)PCT出願番号第PCT/EP2006/060535号(出願日:2006年3月7日)、(ii)米国特許出願第60/836,946号(出願日:2006年8月11日)、(iii)米国特許出願第60/842,369号(出願日:2006年9月6日)、(iv)米国特許出願第60/842,367号(出願日:2006年9月6日)、(v)米国特許出願第60/842,368号(出願日:2006年9月6日)、(vi)米国特許出願第60/842,366号(出願日:2006年9月6日)、および(vii)米国特許出願第60/842,365号(出願日:2006年9月6日)。これらの出願の内容のすべてを、参考として引用し本明細書に組み入れる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、特殊なタイプのキンク化剛直棒状ポリアリーレン(kinked rigid−rod polyarylene)の新規な使用、および前記キンク化剛直棒状ポリアリーレンから製造されるある種の特殊な物品に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリアリーレンは、いくつもの傑出した性能特性、たとえば例外的に高い強度、剛性、硬度、耐引掻性、および寸法安定性を示す。キンク化剛直棒状ポリアリーレンは、非キンク化剛直棒状ポリアリーレンからの実質的進歩として、良好な加工性および可融性をさらに示す。
一般的に言って、ポリアリーレンの長所は以前から知られていた。この点に関しては、SOLVAY ADVANCED POLYMERSの最近のインターネットウェブサイトは前掲書中において次のように記載している:「煙なしで火をおこす。研究の結果、Primospire(商標)SRP[=一般的に言えば、ポリフェニレン]は、防摩材(ablative insulation)として優れた性能を与えることが判った。毒性の放出物ゼロで(CO2およびH2Oが副生物である)、優れた機械的性質、事前および事後炭化物生成を有するので、Primospire SRPは、セラミックおよび金属断熱材料の、軽量な代替え物である。」
【0004】
一般的に言ってさらにContinuous foam extrusion of rigid−rod polyphenylenes、Journal of Cellular Plastics、41(1)、p29〜39、と題された科学論文の前書き部分に、Parmax(登録商標)SRP材料(現在は、Primospire SRPとして販売されている)の有望な用途として、耐火性構造物、ポリマーの性能向上のための添加剤、高性能フィルム、および耐摩耗性コーティングが挙げられている。次いでその公刊物にはフォームを製造するための新規な方法が記載されており、そのために、Mississipi Polymer Technologies製の実験用の特殊キンク化剛直棒状ポリフェニレン、すなわちParmax(登録商標)1500(現在においてもまだ開発段階にあり、SOLVAY ADVANCED POLYMERSからPRIMOSPIRE(商標)PR−250ポリフェニレンとして入手可能)を使用した実験を行った。その公刊物には、特に耐火安定剤(fire−stabilizer)としてまたはフィルムまたはコーティング製造するために、PRIMOSPIRE(商標)PR−250およびそのタイプを使用することについては何の記載もなく、またこの特定のタイプのポリアリーレンを前述したような特定の末端用途で使用することを可能とするような、何のメリットも示唆されていない。
【0005】
同様にして、米国特許第5,886,130号明細書には、大量のキンク形成性繰り返し単位を特徴とする、PRIMOSPIRE(商標)PR−250と同じタイプのある種のキンク化剛直棒状ポリアリーレンについての記載と例示(特に実施例5)がある。その同一の特許には、小量のキンク形成性繰り返し単位を特徴とする、ある種の他のキンク化剛直棒状ポリアリーレンについての記載と例示(特に実施例11)があるが、そのタイプの唯一広く市販されている代表的なものは、PRIMOSPIRE(商標)PR−120ポリマー(従来のPARMAX(登録商標)1200)である。米国特許第’130号明細書に記載されているキンク化剛直棒状ポリアリーレンの他の可能な用途は、繊維コーティング、繊維、フィルムおよびシートである。この公刊物には、特に耐火安定剤としてまたはフィルムもしくはコーティングを製造するために、キンク形成性単位に富んだ特定のタイプのキンク化剛直棒状ポリアリーレンを使用することについては何の記述もなく、またこの特定のタイプのポリアリーレンを前述したような特定の末端用途で使用することを可能とするような、何のメリットも示唆されていない。
【0006】
具体的に、PRIMOSPIRE(商標)PR−120ポリアリーレンに話を戻す。PRIMOSPIRE(商標)PR−120ポリマーが、本来的に耐火性の材料として使用でき、さらには、他のポリマーの耐火性を顕著に改良することが可能であることは公知である。耐火性が一般的にキーとなる性質であると当業者によって考えられているような、ある種の超薄成形物品たとえばフィルムおよびコーティングを製造するための、ベースポリマーとして、または他のポリマーをベースとする組成物に対する添加剤として、そのようなPrimospire(商標)PR−120ポリアリーレンを使用することは公知であるが、その理由は、前記フィルムおよびコーティングが薄いにもかかわらず、一般的には外部の強力な攻撃的環境に対する一次的に有効な障壁を与えるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PRIMOSPIRE(商標)PR−120ポリアリーレンはある種の用途においては期待されているレベルの耐火性をよく与えはするものの、PRIMOSPIRE(商標)PR−120ポリアリーレンは、航空機や公共輸送機関において見出されるような、ある種のその他のより要求レベルの高い用度で必要とされているほどの高さの耐火性のレベルを与えるものではない。そのような直接的な結果として、ならびに、PRIMOSPIRE(商標)PR−120ポリアリーレンから製造されたフィルムおよびコーティングが各種の表面欠陥を起こしやすいために、防火用途において、従来技術のポリアリーレン、特にPRIMOSPIRE(商標)PR−120ポリアリーレンと比較したときに、向上した耐火性を与え、さらには向上した耐火性と望ましくはさらに改良された表面状態を示す防火性フィルムおよびコーティングを製造することを可能とする材料に対する強い要望が依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
意外にも、Primospire(商標)PR−120ポリアリーレンよりも実質的に高い量のキンク形成性アリーレン単位を含む、特定のタイプのキンク化剛直棒状ポリアリーレンが、改良された耐火性を本来的に示すかまたは添加剤として付与し、その結果として、特に燃焼時間の減少および/またはピーク熱発生速度の低下および/または発煙の抑制をもたらすことが見出された。
【0009】
意外にもさらに、Primospire(商標)PR−120ポリアリーレンよりも実質的に高い量のキンク形成性アリーレン単位を含む、同一のキンク化剛直棒状ポリアリーレンが、向上した耐火性を示すフィルムおよびコーティングを製造するのに特に適していることが見出された。
意外にもさらに、それらのキンク化剛直棒状ポリアリーレンから製造されたフィルムおよびコーティングが、表面欠陥をはるかに起こしにくく、通常は、表面欠陥が実質的にない、滑らかなフィルムおよびコーティングを与えることも見出された。
【0010】
本発明の使用
したがって、本発明の一つの態様は、その繰り返し単位の50質量%超が、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる一つまたは複数の式の繰り返し単位(R)である、少なくとも1種のキンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)の使用であって、ただし、前記場合により置換されていてもよいアリーレン基は、その2つの末端のそれぞれによって、直接的なC−C結合を介して2つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に結合されており、前記繰り返し単位(R)はその耐火性能のために、
繰り返し単位(R)の合計モル数を基準にして、0〜75モル%の間の剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)であって、場合により少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもよい剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)と、
繰り返し単位(R)の合計モル数を基準にして、25〜100モル%の間のキンク形成性アリーレン単位(Rb)であって、場合により少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもよいキンク形成性アリーレン単位(Rb)と、
からなる混合物(M)である。
【0011】
本発明のある種の実施態様(Emb−1)においては、キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)が、ベースポリマーとしてキンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)以外の少なくとも1種の熱可塑性ポリマー(T)を含む熱可塑性ポリマー材料(TM)の耐火安定剤添加物として使用される。
キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)が熱可塑性ポリマー材料(TM)の添加剤として使用されるということは、そのキンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)の質量が、熱可塑性ポリマー材料(TM)の全質量を基準にして50%未満であることを意味している。
熱可塑性ポリマー(T)が熱可塑性ポリマー材料(TM)のベースポリマーとして使用されるということは、その熱可塑性ポリマー(T)の質量が、熱可塑性ポリマー材料(TM)の全質量を基準にして50%を超えるということを意味している。
【0012】
本明細書で使用するとき、熱可塑性ポリマー材料(TM)の全質量とは、熱可塑性ポリマー(T)、キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)および(もし存在するならば)その他の任意の構成成分の質量を合計したものである。したがって、それは、キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)の質量を顕著に含んでいる。
【0013】
(Emb−1)においては、熱可塑性ポリマー材料(TM)の全質量を基準にして、キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)の質量は、好ましくは多くとも40%、より好ましくは多くとも30%、さらにより好ましくは多くとも25%、最も好ましくは多くとも20%である。さらに、(Emb−1)においては、熱可塑性ポリマー材料(TM)の全質量を基準にして、キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)の質量は、有利には少なくとも1%、好ましくは少なくとも2.5%、より好ましくは少なくとも5%、さらにより好ましくは少なくとも10%である。
【0014】
(Emb−1)においては、熱可塑性ポリマー材料(TM)の全質量を基準にして、熱可塑性ポリマー(T)の質量は、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%である。さらに、(Emb−1)においては、熱可塑性ポリマー材料(TM)の全質量を基準にして、熱可塑性ポリマー(T)の質量は、有利には多くとも99%、好ましくは多くとも97.5%、より好ましくは多くとも95%、さらにより好ましくは多くとも90%である。
【0015】
キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)以外の各種の熱可塑性ポリマー(T)が、本発明で使用するのに好適である。
その熱可塑性ポリマー(T)がエンジニアリングポリマーであるのが好ましい。エンジニアリングポリマーとは、80℃を超えたり0℃未満であったりしても、寸法安定性とほとんどの機械的性質を保持しているような熱可塑性プラスチックであり、エンジニアリングポリマーは、従来からのエンジニアリング材料たとえば木材、金属、ガラスおよびセラミックスが一般的に暴露されるような温度環境において、荷重を支え、酷使に耐えられる機能部分に形成することが可能である。特に、芳香族重縮合ポリマーは、高温での使用、高強度、および耐薬品性を与えるエンジニアリングポリマーである。芳香族重縮合ポリマーは、少なくとも2種のモノマーを縮合反応させることによって形成されるポリマーであって、モノマーの全質量を基準にして、モノマーの50質量%超が少なくとも1個の芳香族環を含んでいる。
【0016】
熱可塑性ポリマー(T)は耐熱性重縮合ポリマーから選択するのがより好ましい。耐熱性重縮合ポリマーとは、ASTM D−648に従って測定したときに、1.82MPaの荷重で、80℃を超える加熱撓み温度(HDT)を有する重縮合ポリマーと定義される。ある種の重縮合ポリマーの典型的な加熱撓み温度を次の表に列記する。
【0017】

【0018】
ポリマーおよびポリマー組成物の加熱撓み温度は、ASTM D648、方法Aに従い、4インチのスパンを用いて求める。ポリマーを射出成形して、長さ5インチ、幅1/2インチ、厚み1/8インチのプラックとする。HDT試験に際しては、適切な液状伝熱媒体たとえばオイルの中にそのプラックを浸漬させる。たとえば、Dow Corning 710シリコーンオイルを使用するのがよい。HDT試験は、アニーリングしていない試験片で実施してもよい。
【0019】
熱可塑性ポリマー(T)のHDTは、100℃を超えるのが好ましく、120℃を超えればより好ましい。
優れた結果が得られた熱可塑性ポリマー(T)のタイプは、芳香族ポリエーテルイミドである。
【0020】
本発明の目的においては、芳香族ポリエーテルイミドとは、その繰り返し単位の50質量%超が、少なくとも1個の芳香族環、少なくとも1個のエーテル基および少なくとも1個のイミド基
【化1】

そのまま、および/またはそのアミド酸の形態
【化2】

を含む繰り返し単位(R−PEI)であるような各種のポリマーを指すことが意図されている。
【0021】
熱可塑性ポリマー(T)として好適な芳香族ポリエーテルイミドは、その繰り返し単位(R−PEI)が繰り返し単位:
【化3】

そのまま、および/またはそれらのアミド酸の形態のものである。
【化4】

および/または
【化5】

[式中、
矢印は、異性を表していて、各種の繰り返し単位において、その矢印が指している基は、図示されたままで存在していても、入れ替えた位置に存在していてもよく;
Eは以下のものから選択され:
【化6】

(R’は、互いに独立して、1〜6個の炭素原子を含むアルキルラジカル、アリールまたはハロゲンである);
【化7】

(nは、1〜6の整数である);
【化8】

(R’は、互いに独立して、1〜6個の炭素原子を含むアルキルラジカル、アリールまたはハロゲンである);
【化9】

(R’は、互いに独立して、1〜6個の炭素原子を含むアルキルラジカル、アリールまたはハロゲンである);
そして、Yは以下のものから選択され:
(Y−i)1〜6個の炭素原子のアルキレン、
特に
【化10】

(nは、1〜6の整数である);
(Y−ii)1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキレン、
特に
【化11】

(nは、1〜6の整数である);
(Y−iii)4〜8個の炭素原子のシクロアルキレン;
(Y−iv)1〜6個の炭素原子のアルキリデン;
(Y−v)4〜8個の炭素原子のシクロアルキリデン;
【化12】

Ar’’は、以下のものから選択され:
(Ar’’−i)6〜20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素ラジカルおよびそのハロゲン化置換物、またはそのアルキル置換誘導体であるが、ここで、そのアルキル置換基は1〜6個の炭素原子を含む、たとえば:
【化13】

およびそのハロゲン化置換物、またはそのアルキル置換誘導体であるが、ここでそのアルキル置換基は1〜6個の炭素原子を含み;
(Ar’’−ii)
【化14】

ここでYは、上述の(Y−i)、(Y−ii)、(Y−iii)、(Y−iv)、(Y−v)、(Y−vi)、(Y−vii)、(Y−viii)、(Y−ix)および(Y−x)から選択され、
(Ar’’−iii)2〜20個の炭素原子を有するアルキレンおよびシクロアルキレンラジカル、そして
(Ar’’−iv)末端処理ポリジオルガノシロキサンである。]
【0022】
より好ましくは、熱可塑性ポリマー(T)として好適な芳香族ポリエーテルイミドは、その繰り返し単位(R−PEI)が繰り返し単位:
【化15】

そのまま、および/またはそれらのアミド酸の形態のものであるが、
【化16】

および/または
【化17】

ここで矢印は、異性を表していて、各種の繰り返し単位において、その矢印が指している基は、図示されたままで存在していても、入れ替えた位置に存在していてもよい。
【0023】
芳香族ポリエーテルイミドの繰り返し単位の、好ましくは75質量%超、より好ましくは90質量%超が繰り返し単位(R−PEI)である。芳香族ポリイミドの繰り返し単位の全部ではないとしても、実質的に全部が繰り返し単位(R−PEI)であれば、さらにより好ましい。
【0024】
特に、熱可塑性ポリマー(T)として、General Electricから市販されているULTEM(登録商標)芳香族ポリエーテルイミドを使用すると、優れた結果が得られた。
優れた結果が得られた熱可塑性ポリマー(T)のまた別なタイプは、芳香族ポリカーボネートである。
【0025】
本発明の目的においては、芳香族ポリカーボネートとは、その繰り返し単位の50質量%超が、少なくとも1個の場合により置換されていてもよいアリーレン基(以後、ポリアリーレン(P2)と定義する)および少なくとも1個のカーボネート基(−O−C(=O)−O)を含む繰り返し単位(R−PC)であるような、各種のポリマーである。
繰り返し単位(R−PC)は、ホスゲンと少なくとも1種の芳香族ジオール(D−PC)との重縮合反応によって得られるものから選択するのが好ましい。
【化18】

[ρは、C6〜C50の2価のラジカルである。]
【0026】
それとホスゲンとの重縮合によって繰り返し単位(R−PC)を得ることが可能な、芳香族ジオール(D−PC)は、以下に示す構造式(I−PC)および(II−PC)に合致する芳香族ジオールから選択するのが好ましい:
【化19】

[式中、
Aは、C1〜C8アルキレン、C2〜C8アルキリデン、C5−C15シクロアルキレン、C5−C15シクロアルキリデン、カルボニル原子、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO2−、次式に合致するラジカルから選択され:
【化20】

Zは、F、Cl、Br、I、C1〜C4アルキルから選択されるが、複数のZラジカルが置換基である場合には、それらは互いに同一であっても異なっていてもよく;
eは、0〜1の整数を表し;
gは、0〜1の整数を表し;
dは、0〜4の整数を表し;そして
fは、0〜3の整数を表す。]
【0027】
それから繰り返し単位(R−PC)を得ることが可能な最も好ましい芳香族ジオール(D−PC)は、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)である。
【0028】
芳香族ポリカーボネートの繰り返し単位の、好ましくは75質量%超、より好ましくは90質量%超が繰り返し単位(R−PC)である。芳香族ポリカーボネートの繰り返し単位の全部ではないとしても、実質的に全部が繰り返し単位(R−PC)であれば、さらにより好ましい。
特に、熱可塑性ポリマー(T)として、General Electricから市販されているLEXAN(登録商標)104芳香族ポリカーボネートを使用すると、優れた結果が得られた。
【0029】
熱可塑性材料(T)に従来から使用されている任意の構成成分としては、特に、繊維質強化材、微粒子充填剤および成核剤たとえばタルクおよびシリカ、接着促進剤、相溶化剤、硬化剤、潤滑剤、金属粒子、離型剤、有機および/または無機顔料たとえばTiO2およびカーボンブラック、染料、難燃剤、発煙抑制剤、熱安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、強靱化剤たとえばゴム、可塑剤、静電防止剤、溶融粘度低下剤たとえば液晶性ポリマー、などを挙げることができる。
一般的に、前記任意の構成成分の質量は、熱可塑性材料(TM)の全質量を基準にして、有利には75%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満、さらにより好ましくは10%未満である。熱可塑性材料(TM)が、前記任意構成成分を実質的に含まないか、あるいは完全に含まない場合に、優れた結果が得られた。
【0030】
本発明のまた別な実施態様(Emb−2)においては、キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)を、自己耐火性材料(SM=P)として使用するか、または自己耐火性材料(SM)のベースポリマーとして使用する。
キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)を自己耐火性材料(SM=P)として使用するということは、その他の構成成分を一切存在させずに、それをそのまま使用するということを意味する。
【0031】
キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)を自己耐火性材料(SM)のベースポリマーとして使用するということは、その自己耐火性材料(SM)の全質量を基準にして、キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)の質量が50%を超えるが、100%未満であるということを意味している。したがって、上記のような熱可塑性ポリマー(T)の少なくとも1種のようなその他の構成成分、および/または慣用されている熱可塑性組成物の構成成分が、その自己耐火性材料(SM)の中に存在している。
本明細書で使用するとき、自己耐火性材料(SM)の全質量とは、キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)の質量と、自己耐火性材料(SM)の中に含まれるその他の構成成分の質量とを合計したものである。
物自己耐火性材料(SM)の全質量を基準にして、キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)の質量が少なくとも60%であるのが好ましい。それは、極めて多くの場合は少なくとも70%、多くの場合少なくとも80%、場合によっては少なくとも90%である。
【0032】
特定な実施態様においては、自己耐火性材料(SM)または熱可塑性ポリマー材料(TM)にはさらに、(SM)または(TM)を火炎に接触させたときにチャー層の形成を促進させることが可能な添加剤[以後、「チャー促進剤」と呼ぶ]が含まれる。いかなる理論にも束縛されるものではないが、そのチャー層が、ポリマー組成物のコアを保護し、その分解を遅らせるのであろう。チャー促進剤は、有機化合物たとえばフェノキシ誘導体であってもよく、あるいは、無機物、たとえば酸化物、塩、またはそれらの組合せであってもよい。チャー促進剤は、1種または複数の酸化物と1種または複数の塩との組合せであるのが好ましい。さらに、チャー促進剤が、1種または複数の酸化物、塩もしくはそれらの組合せからなるか、あるいは元素周期律表の第3〜12族の1種または複数の元素からなるのが好ましく、第6、7および11族の1種または複数の元素からなればより好ましく、Cr、Mo、W、Mn、Cu、およびAgの群から選択される1種または複数の元素からなればさらにより好ましい。耐火性に関しては、チャー促進剤としてCuCr24・MnOを使用したときに、優れた結果が得られた。CuCr24・MnOは特に、Engelhard Meteor Plus 9875 Blackブランドの顔料として市販されている。この具体的な実施態様においては、(SM)または(TM)には一般的に、ポリマー組成物の全質量を基準にして、0.01〜10質量%の間のチャー促進剤が含まれる。チャー促進剤の量は、好ましくは少なくとも0.1質量%、極めて好ましくは少なくとも0.2質量%であり、さらに好ましくは多くとも5質量%、極めて好ましくは多くとも2質量%である。
【0033】
耐火性能は各種従来からの手段により評価し、各種従来からの用語で表すことができる。
耐火性能は、燃焼時間の減少、ピーク熱発生速度の低下および/または発煙の抑制の形で表すのが好ましい。
たとえば、燃焼時間は、厚みがすべて3.2mmの10個の試験片を使用したUL94の垂直燃焼法によって求めることができ、その一方で、ピーク熱発生速度は、ASTM E−1354に従ったコーン熱量計法によって求めることができる。
【0034】
本発明のまた別な態様は、特定のタイプの少なくとも1種のキンク化剛直棒状ポリアリーレン、すなわち上記のようなキンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)を含む材料からなるフィルムまたはコーティングである。
そのフィルムまたはコーティングは以下のもののいずれかからなっているのがよい:
上記のようなキンク化剛直棒状ポリアリーレン(P);または
上記のような自己耐火性材料(SM)、すなわち、ベースポリマーとして、上記のようなキンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)と、たとえば上記のような少なくとも1種の他の構成成分を含む材料;または
上記のような熱可塑性ポリマー材料(TM)、すなわち、上記のようなキンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)と、ベースポリマーとして、キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)以外の上記のような熱可塑性ポリマー(T)とを含む材料。
【0035】
そのフィルムの厚み(t)またはコーティングの厚みは、次式のように定義するのが好都合である:
t=∫Vτ(x、y、z)dx dy dz/V
[式中、x、yおよびzは、総合的なプレーン容積(plain volume)Vのフィルムまたはコーティングの要素容積dV(dV=dx×dy×dzである)の三次元空間における座標であり、τは測定点厚み(local thickness)である。]
座標(x,y,z)の質点に関連する測定点厚みτは、問題としている質点を含む最短の直線Dの長さと定義されるが、それはそのフィルムまたはコーティングの中を直進している(すなわち、Dがフィルムまたはコーティングに入る質点から、Dがフィルムまたはコーティングを出る質点まで直進している)。
【0036】
フィルムまたはコーティングの厚みは、通常少なくとも1μm、好ましくは少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも10μm、さらにより好ましくは少なくとも20μmである。さらに、フィルムまたはコーティングの厚みは、通常多くとも1000μm、好ましくは多くとも500μm、より好ましくは多くとも400μm、さらにより好ましくは多くとも300μmである。ある種の実施態様においては、フィルムまたはコーティングの厚みは、200μm以下、さらには100μm以下であってもよい。
本発明によりフィルムは、基材の上にコーティングされないことも理解されるであろう。
それとは対照的に、本発明によるフィルムが基材の上にコーティングされる。「基材の上へのコーティング」という表現は、その常識的な意味合い、すなわちそのコーティングが基材の表面上に被覆を形成すると理解されるべきであり、したがって、コーティングを達成するために使用されるプロセスに関しては何の限定も含まれない。基材の表面は、そのコーティングによって部分的に被覆されていても、全面的に被覆されていてもよい。
【0037】
本発明の一つの態様は、その上に上述のコーティングが塗布された、基材を含む物品である。
特に高い技術的関心をひく本発明の具体的な態様は、防摩のために上述のコーティングを使用することを目的としている。それによれば、そのコーティングを基材たとえば金属の上に塗布し、コーティングを部分的または全面的に破壊するような攻撃的因子(aggresive agent)にそのコーティングを暴露させると、そのコーティングが「犠牲」層として使われて、その基材をその攻撃的因子から防御する。攻撃的因子の第一のタイプは、そのコーティングに対して相対的な運動をして、コーティングをこするような物体であり、その物体は通常、コーティングそのものよりも研削力が強い。また別なタイプの攻撃的因子は炎の中にあり、炎の調節の有無にかかわらないが、特に燃料の緩燃焼(deliberate combustion)で発生する。さらにまた別なタイプの攻撃的因子は、化学物質から選択される。これら異種のタイプの攻撃的因子を組み合わせたものもまた包含される。
【0038】
本発明によるフィルムまたはコーティングは、各種公知の方法により調製してもよい。コーティングは、特に、溶液加工法またはスプレー加工法によって調製してもよい。フィルムは、溶液加工法によるかまたは溶融加工によって調製してもよい。
溶液加工法では一般に、溶媒として有機液体を使用するが、前記溶媒はキンク化剛直棒状ポリフェニレンを溶解させるものが有利である。
フィルムは、スリットを通して溶融物を押出し加工してもよい。フィルムは、インフレーション法によって形成させてもよい。延伸法および/またはアニーリング法によってフィルムをさらに加工することもできる。二層フィルム、積層フィルム、多孔質フィルム、型押しフィルムなどのような特殊なフィルムも、当業者に公知の方法によって製造することができる。
フィルムは延伸させることにより配向させてもよい。一次元での延伸では、一軸配向が得られるであろう。二次元での延伸では、二軸配向が得られるであろう。ガラス転移温度近くにまで加熱することによって、延伸を促進させてもよい。可塑剤によって延伸を促進させることもできる。本発明のブレンド物に、延伸とアニーリングを交互サイクルで適用するような、もっと複雑なプロセスを使用してもよい。
【0039】
本発明の最後の態様は、ベースポリマーとして、少なくとも1種の熱可塑性ポリマー(T)を含む熱可塑性ポリマー材料(TM)を調製するための方法であるが、前記熱可塑性ポリマー材料(TM)は向上した耐火性を示し、
ここで、熱可塑性ポリマー(T)は、その必要に応じて、熱可塑性ポリマー(T)以外のキンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)から選択される少なくとも1種の耐火安定剤添加物とブレンドされ、
そのキンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)の繰り返し単位の50質量%超が、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる1つまたは複数の式の繰り返し単位(R)であるが、ただし、前記場合により置換されていてもよいアリーレン基が、その二つの末端のそれぞれによって、直接的なC−C結合を介して二つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に結合されており、
前記繰り返し単位(R)が:
繰り返し単位(R)の合計モル数を基準にして、0〜75モル%の間の剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)であって、場合により少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもよい剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)と、
25〜100モル%の間のキンク形成性アリーレン単位(Rb)であって、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されていても、置換されていなくてもよいキンク形成性アリーレン単位と、
からなる混合物(M)である。
【0040】
本発明の使用に好適なキンク化剛直棒状ポリアリーレン
本発明の目的においては、アリーレン基は、1個のベンゼン系の環からなるか、または2個以上の隣接する環炭素原子を共有することにより縮合された複数のベンゼン系の環から構成される一つのコアからなり、2個の末端を有する炭化水素の2価の基である。
アリーレン基の例を非限定的に挙げれば、フェニレン、ナフチレン、アントリレン、フェナントリレン、テトラセニレン、トリフェニリレン、ピレニレン、およびペリレニレンなどである。アリーレン基(特に環炭素原子の付番)は、CRC Handbook of Chemistry and Physics、第64版、p.C1〜C44、特にC11〜C12の推奨に従って名付けた。
【0041】
アリーレン基は通常、ある程度のレベルの芳香族性を示し、そのため、芳香族基と呼ばれることも多い。アリーレン基の芳香族性のレベルは、そのアリーレン基の性質に依存する。Chem.Rev.、2003、103、p.3449〜3605、Aromaticity of Polycyclic Conjugated Hydrocarbonsに詳しく説明されているとおり、多環芳香族炭化水素の芳香族性のレベルは、「ベンゼン特性指数(index of benzene character)」Bによってうまく定量化することが可能である(上述文献のp.3531に定義されている)、大きい多環芳香族炭化水素のセットについてのBの値が、同じページの表40に示されている。
【0042】
アリーレン基の末端は、アリーレン基の(その)ベンゼン系の環の中に含まれる炭素原子の遊離電子であるが、ここで、前記炭素原子に結合されている水素原子は除去されている。アリーレン基のそれぞれの末端は、他の化学基との結合を形成することができる。アリーレン基の末端、あるいはより詳しくは、前記末端により形成され得る結合は、方向およびセンス(sense)によって特徴づけることができる。本発明の目的では、アリーレン基の末端のセンスとは、アリーレン基のコアの内側から前記コアの外側へ向かうことと定義される。より正確には、その末端が同じ方向を有するアリーレン基に関しては、そのような末端は同一のセンスまたは逆向きのセンスのいずれであってもよく、さらには、それらの末端が互いに直線的に先行していてもよい(their ends can be in the straight foregoing of each other)し、あるいはそうでなくても(言い方を変えれば、それらが離別していて(disjoint)もよい。
【0043】
ポリアリーレンは、その繰り返し単位の50質量%超が、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる1つまたは複数の式の繰り返し単位(R1)であるが、ただし、前記場合により置換されていてもよいアリーレン基は、その二つの末端のそれぞれによって、他の二つの場合により置換されていてもよいアリーレン基に、直接的なC−C結合を介して結合されているポリマーを表すものと意図される。場合により置換されていてもよいアリーレン基が、その二つの末端のそれぞれによって、二つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に直接的なC−C結合を介して結合されていることにより結合されているということは、繰り返し単位(R)の本質的な特徴である。したがって、その二つの末端の内の少なくとも一つによって、下記のフェニレン繰り返し単位φ1、φ2およびφ2'のようなアリーレン基以外の基に結合されているアリーレン繰り返し単位:
−O−φ1−S(=O)2−、
−O−φ2−φ2'−O−
は本発明の意味合いにおいては繰り返し単位(R)ではない。
【0044】
繰り返し単位(R)からなるアリーレン基は、非置換であってもよい。別な方法で、少なくとも1個の1価の置換基によってそれらが置換されていてもよい。
その1価の置換基は通常、本質的には高分子量ではなく、その分子量は、好ましく500未満、より好ましくは300未満、さらにより好ましくは200未満、最も好ましくは150未満である。
【0045】
その1価の置換基が可溶化基であるのが有利である。可溶化基とは、少なくとも1種の有機溶媒の中、特に、溶液重合プロセスによってポリアリーレンを合成する際の溶媒として使用することが可能なジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ベンゼン、テトラヒドロフランおよびジメトキシエタンの内の少なくとも1種の中への、ポリアリーレンの溶解性を向上させるものである。
その1価の置換基はさらに、ポリアリーレンの可融性(fusibility)を増大させる、すなわちそれが、そのガラス転移温度およびその溶融粘度を低下させて、望ましくは加熱加工するのに好適なポリアリーレン(P1)を生成させるような基であるのが有利である。
【0046】
好ましくは、1価の置換基は以下のものから選択する:
ヒドロカルビル、たとえばアルキル、アリール、アルキルアリール、およびアラルキル;
ハロゲン、たとえば−Cl、−Br、−F、および−I;
少なくとも1種のハロゲン原子によって部分的または全面的に置換されたヒドロカルビル基、たとえばハロゲノアルキル、ハロゲノアリール、ハロゲノアルキルアリール、およびハロゲノアラルキル;
ヒドロキシル;
少なくとも1個のヒドロキシル基によって置換されたヒドロカルビル基、たとえばヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシアルキルアリール、およびヒドロキシアラルキル;
ヒドロカルビルオキシ[−O−R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルコキシ、アリールオキシ、アルキルアリールオキシ、およびアラルキルオキシ;
【0047】
アミノ(−NH2);
少なくとも1個のアミノ基によって置換されたヒドロカルビル基、たとえばアミノアルキル、およびアミノアリール;
ヒドロカルビルアミン[−NHRまたは−NR2、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルアミンおよびアリールアミン;
カルボン酸およびその金属塩またはアンモニウム塩、カルボン酸ハライド、カルボン酸無水物;
カルボン酸、その金属塩もしくはアンモニウム塩、カルボン酸ハライドおよびカルボン酸無水物の少なくとも1種によって置換されたヒドロカルビル基、たとえば−R−C(=O)OH(ここでRは、アルキルまたはアリール基である);
ヒドロカルビルエステル[−C(=O)ORまたは−O−C(=O)R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルエステル、アリールエステル、アルキルアリールエステル、およびアラルキルエステル;
【0048】
アミド[−C(=O)NH2];
少なくとも1個のアミド基によって置換されたヒドロカルビル基;
ヒドロカルビルアミドモノエステル[−C(=O)NHRまたは−NH−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルアミド、アリールアミド、アルキルアリールアミド、およびアラルキルアミド、ならびに、ヒドロカルビルアミドジエステル[−C(=O)NR2または−N−C(=O)R2、ここでRはヒドロカルビル基である]たとえば、ジアルキルアミド、およびジアリールアミド;
スルフィン酸(−SO2H)、スルホン酸(−SO3H)、それらの金属塩またはアンモニウム塩;
ヒドロカルビルスルホン[−S(=O)2−R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルスルホン、アリールスルホン、アルキルアリールスルホン、アラルキルスルホン;
アルデヒド[−C(=O)H]およびハロホルミル[−C(=O)X、ここでXはハロゲン原子である];
ヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]、たとえばアルキルケトン、アリールケトン、アルキルアリールケトン、およびアラルキルケトン;
【0049】
ヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R1−O−R2、ここでR1は、2価の炭化水素基、たとえばアルキレン、アリーレン、アルキルアリーレンもしくはアラルキレン、好ましくはC1〜C18アルキレン、フェニレン、少なくとも1個のアルキル基によって置換されたフェニレン基、または少なくとも1個のフェニル基によって置換されたアルキレン基であり、そしてR2は、ヒドロカルビル基、たとえばアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアラルキル基である]、たとえばアルキルオキシアルキルケトン、アルキルオキシアリールケトン、アルキルオキシアルキルアリールケトン、アルキルオキシアラルキルケトン、アリールオキシアルキルケトン、アリールオキシアリールケトン、アリールオキシアルキルアリールケトン、およびアリールオキシアラルキルケトン;
【0050】
少なくとも1個のヒドロカルビル基もしくは2価の炭化水素基R1を含む上述の基のいずれかであって、ここで前記ヒドロカルビル基または前記R1がそれ自体、上述の1価の置換基の少なくとも1個によって置換されている、たとえばアリールケトン−C(=O)−R(ここでRは、1個のヒドロキシル基によって置換されたアリール基である)であるが;
ここで:
そのヒドロカルビル基には、好ましくは1〜30個の炭素原子、より好ましくは1〜12個の炭素原子、さらにより好ましくは1〜6個の炭素原子が含まれ;
そのアルキル基には、好ましくは1〜18個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子が含まれるが、極めて好ましくは、それらはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、およびtert−ブチルから選択され;
そのアリール基は、一つの末端と、1個のベンゼン系の環(たとえばフェニル基)からなるか、または、炭素−炭素結合を介してそれぞれが直接結合されるか(たとえばビフェニル基)もしくは2個以上の隣接する環炭素原子を共有することにより互いに縮合された(たとえばナフチル基)、複数のベンゼン系の環からなる一つコアとからなる1価の基として定義されるが、ここで、その環炭素原子が少なくとも1個の窒素、酸素または硫黄原子によって置換されていてもよいが、アリール基において、環炭素原子が置換されていないのが好ましく;
そのアリール基には、好ましくは6〜30個の炭素原子を含み、より好ましくは、それらがフェニル基であり;
そのアルキルアリール基の中に含まれるアルキル基は、先に挙げたアルキル基の好ましい条件に適合し;
そのアラルキル基の中に含まれるアリール基は、先に挙げたアリール基の好ましい条件に適合する。
【0051】
より好ましくは、その1価の置換基は、ヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]およびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R1−O−R2、ここでR1は2価の炭化水素基であり、R2はヒドロカルビル基である]から選択されるが、前記ヒドロカルビルケトンおよびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトンは、非置換であっても、あるいは少なくとも1個の上述の1価の置換基によって置換されていてもよい。
さらにより好ましくは、その1価の置換基は、アリールケトンおよびアリールオキシアリールケトンから選択され、前記アリールケトンおよびアリールオキシアリールケトンは、非置換であっても、あるいは少なくとも1個の上述の1価の置換基によって置換されていてもよい。
最も好ましくは、その1価の置換基は、(非置換の)アリールケトンであり、特にフェニルケトン[−C(=O)−フェニル]である。
【0052】
その繰り返し単位(R)の場合により置換されていてもよいアリーレン基のコアは、好ましくは多くとも3、より好ましくは多くとも2、さらにより好ましくは多くとも1個のベンゼン系の環からなる。さらに、その繰り返し単位(R)の場合により置換されていてもよいアリーレン基のコアが1個のベンゼン系の環からなる場合には、その繰り返し単位(R)は、場合により置換されていてもよいフェニレン基からなる1個または複数の式のものであるが、ただし、前記の場合により置換されていてもよいフェニレン基は、その二つの末端のそれぞれによって、直接的なC−C結合を介して、二つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に結合されている。
【0053】
先に説明したように、繰り返し単位(R)の場合により置換されていてもよいアリーレン基は、その二つの末端のそれぞれによって、直接的なC−C結合を介して、二つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に結合されている。それが、その二つの末端のそれぞれによって、直接的なC−C結合を介して、二つの他の場合により置換されていてもよいフェニレン基と結合されているのが好ましい。
これもまた先に説明したように、繰り返し単位(R)の場合により置換されていてもよいアリーレン基の両方の末端を、方向およびセンスによって明確に特徴づけることができる。
【0054】
繰り返し単位(R)として適切な繰り返し単位の第一のセットは、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなるが、その末端が、
同じ方向を有し、
逆向きのセンスであり、そして
互いに、直線的に先行している
[以後、剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)と呼ぶ]。
【0055】
そのような、場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例としては以下のものが挙げられる:
【0056】



上記のような少なくとも1個の1価の置換基、特にフェニルケトン基によって置換された、各種のこれらの基。
場合により置換されていてもよいp−フェニレンが剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)であれば好ましい。
【0057】
剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)がポリアリーレン中に含まれていると、直鎖ポリマー鎖が得られ、傑出した剛性を示す。この理由から、そのようなポリアリーレン(P1)は一般に、「剛直棒状ポリマー(rigid−rod polymer)」と呼ばれる。
【0058】
繰り返し単位(R)として適切な繰り返し単位の第二のセットは、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなるが、その末端が、
いずれもが異なった方向を有していて、そのために互いに0〜180度を形成するが、前記角度は鋭角であっても鈍角であってもよいか、または
同一の方向および同一のセンスを有するか、または
同一の方向を有し、逆向きのセンスであって、離別している(すなわち、互いに直線的に先行していない)
[以後全体的に、キンク形成性アリーレン単位(Rb)と呼ぶ]。
【0059】
次いで、キンク形成性アリーレン単位(Rb)の第一のサブセットは、その末端が異なった方向を有していて互いに鋭角を形成している、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる[キンク形成性アリーレン単位(Rb−1)]。その末端が互いに異なった方向を有している、場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例としては以下のものが挙げられる:
【0060】

上記のような少なくとも1個の1価の置換基、特にフェニルケトン基によって置換された、各種のこれらの基。
【0061】
キンク形成性アリーレン単位(Rb)の第二のサブセットは、その末端が異なった方向を有していて互いに鈍角を形成している、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる[キンク形成性単位(Rb−2)]。その末端が互いに異なった方向を有している、場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例としては以下のものが挙げられる:
【0062】

上記のような少なくとも1個の1価の置換基、特にフェニルケトン基によって置換された、各種のこれらの基。
【0063】
キンク形成性アリーレン単位(Rb)の第三のサブセットは、その末端が同一の方向と同一のセンス(sense)を有する、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる[キンク形成性アリーレン単位(Rb−3)]。その末端が同一の方向と同一のセンスを有する、場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例としては以下のものが挙げられる:
【0064】

上記のような少なくとも1個の1価の置換基、特にフェニルケトン基によって置換された、各種のこれらの基。
【0065】
キンク形成性アリーレン単位(Rb)の第四のサブセットは、その末端が同一の方向を有し、センスが逆方向で、離別している(disjoint)、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる[キンク形成性アリーレン単位(Rb−4)]。そのような、場合により置換されていてもよいアリーレン基の非限定的な例としては以下のものが挙げられる:
【0066】

上記のような少なくとも1個の1価の置換基、特にフェニルケトン基によって置換された、各種のこれらの基。キンク形成性アリーレン単位(Rb)は、キンク形成性アリーレン単位(Rb−1)、キンク形成性アリーレン単位(Rb−2)、およびキンク形成性アリーレン単位(Rb−4)から選択するのが好ましい。キンク形成性アリーレン単位(Rb)は、キンク形成性アリーレン単位(Rb−1)およびキンク形成性アリーレン単位(Rb−2)から選択するのがより好ましい。キンク形成性アリーレン単位(Rb)をキンク形成性アリーレン単位(Rb−1)から選択すればさらにより好ましい。キンク形成性アリーレン単位(Rb)が、場合によっては置換されたm−フェニレンであれば、さらに一層より好ましい。
【0067】
キンク形成性アリーレン単位(Rb)が、ポリアリーレンの中に含まれていると、多少なりともキンク化された(kinked)ポリマー鎖となり、直鎖ポリマー鎖よりも高い溶解性および可融性を示すようになる。この理由から、そのようなポリアリーレンは一般に、「キンク化ポリマー(kinked polymer)」と呼ばれる。
【0068】
本発明の使用および物品に好適なキンク化剛直棒状ポリアリーレンの繰り返し単位(R)は、極めて特殊なタイプでなければならず、それらは以下の:
繰り返し単位(R)の合計モル数を基準にして、0〜75モル%の間の剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)であって、場合により少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもよい剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)と、
繰り返し単位(R)の合計モル数を基準にして、25〜100モル%の間のキンク形成性アリーレン単位(Rb)であって、場合により少なくとも1個の1価の置換基によって置換されているかまたは置換されていないキンク形成性アリーレン単位と、
からなる混合物(M)でなければならず、
この繰り返し単位(R)が:
繰り返し単位(R)の合計モル数を基準にして、0〜75モル%の間の、場合により置換されていてもよいp−フェニレンから選択される剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)と、
繰り返し単位(R)の合計モル数を基準にして、25〜100モル%の間の、(i)場合により置換されていてもよいm−フェニレンおよび(ii)場合により置換されていてもよいm−フェニレンと場合により置換されていてもよいo−フェニレンとの混合物から選択されるキンク形成性アリーレン単位(Rb)と、
からなる混合物(M)であるのが好ましい。
【0069】
混合物(M)の剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)は、全部ではないとしても実質的に全部が、少なくとも1個の置換基によって置換されたp−フェニレン単位であるのが好ましい。混合物(M)の剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)が、全部ではないとしても実質的に全部、ヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]およびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R1−O−R2、ここでR1は2価の炭化水素基であり、R2はヒドロカルビル基である]から選択される少なくとも1個の1価の置換基によって置換されたp−フェニレンであればより好ましいが、前記ヒドロカルビルケトンおよびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトンは、それら自体、非置換であるか、あるいは先に挙げたような少なくとも1個の1価の置換基によって置換されている。混合物(M)の剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)が、全部ではないとしても実質的に全部、アリールケトンおよびアリールオキシアリールケトンから選択される少なくとも1個の1価の置換基によって置換されたp−フェニレンであれば、さらにより好ましいが、前記アリールケトンおよびアリールオキシアリールケトンは、非置換であるか、あるいは先に挙げたような少なくとも1個の1価の置換基によって置換されている。混合物(M)の剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)が、全部ではないとしても実質的に全部、アリールケトン基、特にフェニルケトン基によって置換されたp−フェニレンであれば、最も好ましい。
【0070】
混合物(M)のキンク形成性アリーレン単位(Rb)の全部ではないとしても、実質的に全部が、場合により少なくとも1個の置換基によって置換されていてもよいm−フェニレン単位である。混合物(M)のキンク形成性アリーレン単位(Rb)の全部ではないとしても、実質的に全部がm−フェニレンであるのがより好ましいが、それは場合により、ヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R、ここでRはヒドロカルビル基である]およびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトン[−C(=O)−R1−O−R2、ここでR1は2価の炭化水素基であり、R2はヒドロカルビル基である]から選択される少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもよく、前記ヒドロカルビルケトンおよびヒドロカルビルオキシヒドロカルビルケトンは、それら自体、非置換であるか、あるいは先に挙げたような少なくとも1個の1価の置換基によって置換されている。混合物(M)のキンク形成性アリーレン単位(Rb)の全部ではないとしても、実質的に全部が、非置換のm−フェニレン単位であれば、さらにより好ましい。
【0071】
混合物(M)において、繰り返し単位(R)の合計モル数を基準にしたキンク形成性アリーレン単位(Rb)のモル数は、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも35%、さらにより好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも45%である。その一方で、混合物(M)において、繰り返し単位(R)の合計モル数を基準にしたキンク形成性アリーレン単位(Rb)のモル数は、好ましくは多くとも90%、より好ましくは多くとも75%、さらにより好ましくは多くとも65%、最も好ましくは多くとも55%である。
繰り返し単位(R)が、モル比約50:50のフェニルケトン基によって置換されたp−フェニレン単位と非置換のm−フェニレン単位とからなる混合物であるときに、良好な結果が得られた。
【0072】
本発明の使用および物品に好適なキンク化剛直棒状ポリアリーレンには、繰り返し単位(R)とは異なる、繰り返し単位(R*)がさらに含まれていてもよい。
繰り返し単位(R*)には、アリーレン基の両端それぞれに結合された、少なくとも1個の強い2価の電子吸引性基が含まれていても、含まれていなくてもよい。そのような強い2価の電子吸引性基を含まない、繰り返し単位(R*)の非限定的な例は以下のものである:
【化21】

および
【化22】

【0073】
繰り返し単位(R*)には、アリーレン基、特にp−フェニレン基に対してその両端のそれぞれに結合された好ましくは少なくとも1個の強い2価の電子吸引性基が含まれる。その2価の電子吸引性基は、スルホン基[−S(=O)2−]、カルボニル基[−C(=O)−]、ビニレン基[−CH=CH−]、スルホキシド基[−S(=O)−]、アゾ基[−N=N−]、飽和フルオロカーボン基たとえば−C(CF32−、有機ホスフィンオキシド基[−P(=O)(=Rh)−、ここでRhはヒドロカルビル基である]、およびエチリデン基[−C(=CA2)−、ここでAは水素またはハロゲンであってよい]から選択するのが好ましい。2価の電子吸引性基がスルホン基およびカルボニル基から選択されるのがより好ましい。繰り返し単位(R*)が以下のものから選択されれば、さらにより好ましい:
(i)次式の繰り返し単位
【化23】

(ii)次式の繰り返し単位
【化24】

(ここで、Qは以下のものから選択される基である)、
【化25】

ここでRは以下のものである
【化26】

(nは、1〜6の整数であり、n’は2〜6の整数である)、
Qは、以下のものから選択するのが好ましく、
【化27】

(iii)次式の繰り返し単位
【化28】

(iv)次式の繰り返し単位
【化29】

【0074】
ポリアリーレンの繰り返し単位が、75質量%を超えれば好ましく、90質量%を超えればより好ましい。ポリアリーレンの繰り返し単位の全部ではないとしても、実質的に全部が繰り返し単位(R)であるのがさらにより好ましい。
【0075】
そのポリアリーレンが、その繰り返し単位の全部ではないとしても、実質的に全部が、フェニルケトン基によって置換されたp−フェニレンと非置換のm−フェニレンとの混合物であって、p−フェニレン:m−フェニレンのモル比が、(10:90)〜(70:30)、好ましくは(25:75)〜(65:35)、より好ましくは(35:65)〜(60:40)、さらにより好ましくは(45:55)〜(55:45)、最も好ましくは約50:50である混合物からなるキンク化剛直棒状ポリフェニレンであるときに、優れた結果が得られた。そのようなキンク化剛直棒状ポリフェニレンは、Solvay Advanced Polymers,L.L.C.からPRIMOSPIRE(商標)PR−250ポリフェニレンとして市販されている。
【0076】
本発明の使用および物品に好適なキンク化剛直棒状ポリアリーレンは、通常1000より高い、好ましくは5000より高い、より好ましくは約10000より高い、さらにより好ましくは15000より高い数平均分子量を有している。その一方で、キンク化剛直棒状ポリアリーレンの数平均分子量は通常100000未満、好ましくは70000未満である。ある種の実施態様においては、キンク化剛直棒状ポリアリーレンの数平均分子量が35000よりも高い。また別な実施態様においては、それが多くとも35000であり、この実施態様においては、多くの場合多くとも25000、場合によっては多くとも20000である。ポリアリーレンの数平均分子量は一般的に、そして特に本発明の使用および物品に好適なキンク化剛直棒状ポリアリーレンのそれは、(1)ポリスチレン較正標準を使用し、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってそのポリアリーレンの「相対的な」数平均分子量を測定してから、(2)そのようにして求めた「相対的な」数平均分子量を係数2で割り算することによって求めるのが好都合である。そのようにして実施する理由は、ポリアリーレンの専門家である当業者ならば、GPCで測定した場合、その「相対的な」数平均分子量は通常、約2倍にずれていることを知っているからであり、上述の分子量の下限および上限はすべてこの補正係数ですでに処理したものである。
【0077】
それは非晶質(すなわち、融点を有さない)であっても、半晶質(すなわち、融点を有する)であってもよい。非晶質であるのが好ましい。
それは、有利には50℃を超える、好ましくは120℃を超える、より好ましくは150℃を超えるガラス転移温度を有する。
【0078】
本発明で使用するのに好適なキンク化剛直棒状ポリアリーレンは各種の方法で調製することができる。そのようなキンク化剛直棒状ポリアリーレンを調製するための当業者に周知の方法には、(i)その二つの末端のそれぞれでハロゲン原子たとえば塩素、臭素およびヨウ素の一つに結合されている、場合により置換されていてもよい剛直棒形成性アリーレン基からなる少なくとも1種のジハロアリーレン分子化合物を、(ii)その二つの末端のそれぞれでハロゲン原子たとえば塩素、臭素、ヨウ素およびフッ素の一つに結合されている、場合により置換されていてもよいキンク形成性アリーレン基からなる少なくとも1種のジハロアリーレン分子化合物と、好ましくは還元カップリング法によって重合させることが含まれる。それらのジハロアリーレン分子化合物からハロゲン原子を除去すると、それぞれ場合により置換されていてもよい剛直棒状物形成性、および場合により置換されていてもよいキンク形成性のアリーレン基が生成される。
【0079】
したがって、たとえば:
p−ジクロロベンゼン、p−ジクロロビフェニルまたはそれらの同族化合物の一般式Cl−(φ)N−Cl(ここで、Nは3〜10の整数)の分子から両方の塩素原子を除去すると、それぞれ1、2またはNの隣接したp−フェニレン単位が形成され、そのために、p−ジクロロベンゼン、p−ジクロロビフェニルおよびそれらの同族化合物の一般式Cl−(φ)N−Cl(ここで、Nは上で定義されたもの)は、重合させてp−フェニレン単位を形成させることができる;
2,5−ジクロロベンゾフェノン(p−ジクロロベンゾフェノン)を重合させて、1,4−(ベンゾイルフェニレン)単位(すなわち、剛直棒状物形成性アリーレン単位)を形成させることができ;
m−ジクロロベンゼンを重合させて、m−フェニレン単位(キンク形成性のアリーレン単位)を形成させることができる。
【0080】
本発明においては、1種、2種、3種、さらには4種以上の異なったポリアリーレンを使用することができる。
【0081】
実施態様(E*
具体的な実施態様(E*)においては、キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)が、ベースポリマーとして、ポリ(アリールエーテルスルホン)、すなわちその繰り返し単位の少なくとも5質量%が、少なくとも1個のアリーレン基、少なくとも1個のエーテル基(−O−)、および少なくとも1個のスルホン基[−S(=O)2−]を含む一つまたは複数の式の繰り返し単位であるポリマーを含む熱可塑性ポリマー材料(TM)の耐火安定剤添加物として使用される。
【0082】
キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)およびポリ(アリールエーテルスルホン)を含む材料からなるフィルムまたはコーティングもまた、この具体的な実施態様(E*)に従ったものである。
【0083】
ポリ(アリールエーテルスルホン)は、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)、特にポリフェニルスルホンであってよい。本発明の目的のためには、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)は、その繰り返し単位の50質量%超が、少なくとも1個のp−ビフェニレン基:
【化30】

少なくとも1個のエーテル基(−O−)および少なくとも1個のスルホン基[−S(=O)2−]を含む1つまたは複数の式の繰り返し単位であるような各種のポリマーを指しているものとする。本発明の目的のためには、ポリフェニルスルホンは、その繰り返し単位の50質量%超が、次式の繰り返し単位である各種のポリマーを指しているものとする。
【化31】

【0084】
キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)は、ポリ(アリールエーテルスルホン)とのブレンド物における難燃剤、チャー形成向上添加剤、および/または発煙抑制剤として使用することができる。キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)はさらに、航空機の内装用途において使用されるポリ(アリールエーテルスルホン)とのブレンド物において、熱および発煙安定剤としても使用することができる。具体的な用途の例としては、航空機の窓枠、通風ダクト、座席およびフライトデッキ部品、調理室、積込容器(stow bin)およびサイドウォールなどの成形部品が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)およびポリ(アリールエーテルスルホン)を含むブレンド物は、フィルムに成形してもよい。フィルムを形成させるには、多くの各種方法が使用できる。連続プロセス、バッチプロセスのいずれを使用してもよい。フィルムは、溶融物や溶液から調製してもよい。混合気体、液体および固体を分離するために有用な膜をそのフィルムから作ることもできる。
【0085】
実施態様(E*)においては、キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)は、本明細書に記載のキンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)の特性と矛盾しない限りにおいて、PCT/EP2006/060535号に記載されているポリフェニレンの特性のすべてに適合しているのがよい。
【0086】
当業者の良く理解するところであろうが、本発明はこの特定の実施態様(E*)に限定されるものではなく、本明細書に記載される(E*)以外の各種の実施態様もまた包含される。さらに、本明細書に記載の実施態様に対する各種の修正も当業者には容易に自明であり、本明細書において定義された包括的な原理は、本発明の精神および範囲から外れることなく、他の実施態様にも適用できるであろう。したがって、本発明はまた、全ての示された実施態様に限定されるものではなく、本明細書において開示された原理と特徴と矛盾しない最も広い範囲が当てられるものとする。
【実施例】
【0087】
使用したポリマーは下記のものである:
ポリフェニレンコポリマーが、その全部ではないとしても、実質的に全部の繰り返し単位が、フェニルケトン基によって置換されたp−フェニレンと非置換のm−フェニレンとの混合物であって、p−フェニレン:m−フェニレンのモル比が約50:50の混合物からなり、Solvay Advanced Polymers,L.L.C.から、PRIMOSPIRE(商標)PR−250ポリフェニレンとして市販されているもの、
ポリフェニレンコポリマーが、その全部ではないとしても、実質的に全部の繰り返し単位が、フェニルケトン基によって置換されたp−フェニレンと非置換のm−フェニレンとの混合物であって、p−フェニレン:m−フェニレンのモル比が約85:15の混合物からなり、Solvay Advanced Polymers,L.L.C.から、PRIMOSPIRE(商標)PR−120ポリフェニレンとして市販されているもの、
ビスフェノールAポリカーボネートホモポリマー、であって、General ElectricからLEXAN(登録商標)104ポリカーボネートとして市販されているもの;
ポリエーテルイミドホモポリマーのULTEM(登録商標)1000で、General Electricから市販されているもの。
【0088】
第一の実験セット
【表1】

【0089】
合計燃焼時間ならびに最長燃焼時間T1(1回目の10秒火炎暴露後の時間)およびT2(2回目の10秒火炎暴露後の時間)が短いほど、良好である。
【0090】
(第二の実験)
【表2】


ピークHRR=ピーク熱発生速度
SA=火炎燃焼の前および途中でサンプルから発生した全煙量
HRR平均[300秒]=サンプル燃焼の最初の5分間(300秒間)の平均熱発生速度
【0091】
ピークHRR、SA、およびHRR平均[300秒]が低いほど、良好である。
【0092】
第三の実験セット
Lindyタイプ燃焼試験を使用したが、厚み1/4インチのポリマープラックから4インチの距離に保持した4000゜Fの酸素アセチレントーチを用いた。
Lindyタイプ試験の第一の変法(V1)においては、サンドブラスティングは使用しなかった。
Lindyタイプ試験の別な変法(V2)においては、市販されているクリーニングサンドブラスターを用いて、サンドブラスティングを行った。変法(V2)の方が(V1)よりははるかに過酷である。
【0093】
【表3】

【0094】
第四の実験セット
Primospire(商標)PR−250ポリフェニレン(本願実施例)またはPrimospire(商標)PR−120ポリフェニレン(比較例)のいずれかからなるフィルムを調製した。
いずれの実験も、長さ対直径比が30、圧縮比が2:1のKillion 1インチ単軸スクリュー押出機を用いて実施した。
その押出機には、フィードゾーンからダイまで順に、以下の温度で設定した五つの温度ゾーンを設けた:
130℃(フィードゾーン)
280℃(Z1)
290℃(Z2)
300℃(Z3)
310℃(Z4)
320℃(ダイ温度)。
【0095】
使用したダイは、幅4インチ×高さ1/8インチの開口を有するテーパー付きフィルムダイであった。
圧力が4000〜5000psiの間となるように、押出し速度を調節した。
【0096】
Primospire(商標)PR−120ポリフェニレンを押出し加工すると、それぞれの端からフィルムの中央方向に1インチの長さの波模様になった端部を有するフィルム(CE7)が得られた。さらに、そのフィルム(CE7)は延伸することができなかった。
それとは対照的に、Primospire(商標)PR−250ポリフェニレンを押出し加工すると、意外にも、滑らかで波模様のないフィルム(E5)が得られた。さらに、フィルム(E5)は延伸することが可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位の50質量%超が、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる1つまたは複数の式の繰り返し単位(R)である、少なくとも1種のキンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)の使用であって、ただし、前記場合により置換されていてもよいアリーレン基は、その2つの末端のそれぞれによって、直接的なC−C結合を介して2つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に結合されており、前記繰り返し単位(R)が、その耐火性能のために、
繰り返し単位(R)の合計モル数を基準にして、0〜75モル%の間の剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)であって、場合により少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもよい剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)と、
繰り返し単位(R)の合計モル数を基準にして、25〜100モル%の間のキンク形成性アリーレン単位(Rb)であって、場合により少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもよいキンク形成性アリーレン単位(Rb)と、
からなる混合物(M)である、使用。
【請求項2】
前記キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)が、キンク化剛直棒状ポリフェニレンであり、その繰り返し単位の実質的にすべてが、フェニルケトン基によって置換されたp−フェニレンと非置換のm−フェニレンとの混合物からなり、p−フェニレン:m−フェニレンのモル比が(45:55)から(55:45)までであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)が、ベースポリマーとして前記キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)以外の熱可塑性ポリマー(T)を含む熱可塑性ポリマー材料(TM)の耐火安定剤添加物として使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)が、自己耐火性材料(SM=P)として、または自己耐火性材料(SM)のベースポリマーとして使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
前記耐火性能が、燃焼時間の減少の形で表されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記耐火性能が、ピーク熱発生速度の低下の形で表されるか、またはさらに表されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記耐火性能が、発煙の抑制の形で表されるか、またはさらに表されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
フィルムおよびコーティングから選択される物品であって、前記物品が、繰り返し単位の50質量%超が、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる1つまたは複数の式の繰り返し単位(R)である、少なくとも1種のキンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)を含む材料からなるが、ただし、前記場合により置換されていてもよいアリーレン基は、その2つの末端のそれぞれによって、直接的なC−C結合を介して2つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に結合されており、前記繰り返し単位(R)が、
繰り返し単位(R)の合計モル数を基準にして、0〜75モル%の間の剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)であって、場合により少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもよい剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)と、
繰り返し単位(R)の合計モル数を基準にして、25〜100モル%の間のキンク形成性アリーレン単位(Rb)であって、場合により少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもよいキンク形成性アリーレン単位(Rb)と、
からなる混合物(M)である、物品。
【請求項9】
フィルムであることを特徴とする、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
コーティングであることを特徴とする、請求項8に記載の物品。
【請求項11】
前記コーティングが防摩のために使用されることを特徴とする、請求項9に記載の物品。
【請求項12】
キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)からなることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の物品。
【請求項13】
ベースポリマーとして前記キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)、および少なくとも1種の他の構成成分を含む自己耐火性材料(SM)からなることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の物品。
【請求項14】
キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)ならびに、ベースポリマーとして前記キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)以外の少なくとも1種の熱可塑性ポリマー(T)を含む熱可塑性ポリマー材料(TM)からなることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の物品。
【請求項15】
前記キンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)が、キンク化剛直棒状ポリフェニレンであり、その繰り返し単位の実質的にすべてが、フェニルケトン基によって置換されたp−フェニレンと非置換のm−フェニレンとの混合物からなり、p−フェニレン:m−フェニレンのモル比が(45:55)から(55:45)までであることを特徴とする、請求項8〜14のいずれか1項に記載の物品。
【請求項16】
ベースポリマーとして少なくとも1種の熱可塑性ポリマー(T)を含む熱可塑性ポリマー材料(TM)を調製するための方法であって、前記熱可塑性ポリマー材料(TM)が向上した耐火性を示し、
ここで、前記熱可塑性ポリマー(T)は、その必要に応じて、前記熱可塑性ポリマー(T)以外のキンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)から選択される少なくとも1種の耐火安定剤添加物とブレンドされ、
そのキンク化剛直棒状ポリアリーレン(P)の繰り返し単位の50質量%超が、場合により置換されていてもよいアリーレン基からなる1つまたは複数の式の繰り返し単位(R)であるが、ただし、前記場合により置換されていてもよいアリーレン基が、その2つの末端のそれぞれによって、直接的なC−C結合を介して2つの他の場合により置換されていてもよいアリーレン基に結合されており、
前記繰り返し単位(R)が:
繰り返し単位(R)の合計モル数を基準にして、0〜75モル%の間の剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)であって、場合により少なくとも1個の1価の置換基によって置換されていてもよい剛直棒状物形成性アリーレン単位(Ra)と、
25〜100モル%の間のキンク形成性アリーレン単位(Rb)であって、少なくとも1個の1価の置換基によって場合により置換されていても、置換されていなくてもよいキンク形成性アリーレン単位と、
からなる混合物(M)である、方法。

【公表番号】特表2009−529077(P2009−529077A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557743(P2008−557743)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052073
【国際公開番号】WO2007/101845
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(502030880)ソルヴェイ アドバンスド ポリマーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (39)
【Fターム(参考)】