説明

キーシート

【課題】薄型でソフトタッチ感があり、しかも耐久性に優れるキーシートの提供。さらに、バックライト光による照光時と非照光時とで表示要素を変更できる斬新なデザインのキーシートの提供。
【解決手段】操作面を柔らかな触感を有する表皮層4とし、表皮層4の裏面側に圧縮弾性率が小さい多孔層7を積層するため、層構成による薄型でソフトタッチ感を有するキーシート1を実現できる。そして、非照光時には多孔層7の表面側に設けた第1加飾部5を視認でき、照光時には第1加飾部5とともに多孔層7の裏面に設けた第2加飾部9が浮かび上がって視認できるため、非照光時と照光時とで、加飾デザインを変更することができる。よって斬新なデザインのキーシート1を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯情報端末機器や、PDA、AV機器、各種リモコン、各種キーボードなどの各種電子機器の操作部に用いられ、入力操作の際に操作者の指が触れると柔らかな手触り感(以下「ソフトタッチ感」ともいう)を有するキーシートに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯情報端末やPDAなどの電子機器は、小型化、薄型化されてきており、電子機器に用いられるキーシートについても、小型化、薄型化が要請されている。こうした要請に応えるキーシートとして、例えば金属製や硬質樹脂製の操作板を備える薄型のキーシートが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、キーシートには、デザイン価値を高めて差別化するため、操作時にソフトタッチ感を有するような加飾を施すことが検討されているが、樹脂成形品の表面に合成皮革を積層した加飾シートが知られている(特許文献2)ので、この加飾シートをキーシートに転用すれば、押圧操作時にソフトタッチ感がある薄型のキーシートを実現することができる。
【特許文献1】特開2006−156333号公報
【特許文献2】特開2003−71956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キーシートは、暗所でも押圧操作し易いように、電子機器の内部に設けた光源の光(バックライト光)によって照光する構成になっている。上記の特許文献2においても、加飾シートに文字や記号などの表示要素を示す切り抜き部を形成して、その切り抜き部を照光部分としている。しかしながら、この加飾シートでは切り抜き部の切断面がそのまま露出しているため、押圧操作が繰り返されると、切り抜き部の切断面から摩耗したり捲れたりするおそれがある。
【0005】
以上のような従来技術を背景としてなされたのが本発明である。すなわち、本発明の目的は、薄型でソフトタッチ感があり、しかも耐久性に優れるキーシートを提供することにある。さらに本発明の目的は、バックライト光による照光時と非照光時とで表示要素を変更できる斬新なデザインのキーシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく本発明は、透光性の基材シートと、該基材シートの表面側に積層され柔らかな手触り感を有するソフトフィール層と、を備えており、基材シートの裏面側からの光によって照光可能なキーシートについて、ソフトフィール層が、柔らかな触感を有する透光性の表皮層と、該表皮層の裏面側に積層される厚さが250μm〜700μmまたは250μm〜450μmの多孔層と、表皮層と多孔層の間に設けられ、表皮層を通して視認可能な第1加飾部と、多孔層の裏面側に設けられ、裏面側からの光により表皮層と多孔層を通して視認可能な第2加飾部と、を備えることを特徴とするキーシートを提供する。
【0007】
本発明では、基材シートの表面側にソフトフィール層を備え、操作面をソフトフィール層の表皮層で構成するため、押圧操作の際に柔らかな手触り感を与えることができ、ソフトタッチ感を有するキーシートを実現することができる。
そして、ソフトフィール層では、表皮層の裏面側に第1加飾部を設けるため、押圧操作の際に第1加飾部の摩耗を防止することができる。この第1加飾部は透光性の表皮層を通して視認可能なため視認性の高い加飾部とすることができ、第1加飾部を文字、記号などの表示要素を示す表示部とすれば、表示要素を明確に視認することができる。さらに従来技術は切り抜き部で表示要素を形成したため、押圧操作部分に切り抜き孔が在り、押圧操作の際に加飾シートが捲れるおそれがある。しかし本発明では押圧操作部分にそのような孔が無く耐久性に優れるキーシートを実現することができる。
【0008】
ソフトフィール層において表皮層の裏面側に、厚さ250μm〜700μmの多孔層が積層されている。この多孔層はスポンジのように無数の小さい孔で構成されて曇って見えるため、操作者の背後から照らされる光で多孔層の反対側に設けた第2加飾部を見透かすことが難しい。つまり、操作者はバックライト光源が発光していない非照光時に、多孔層の裏面側に設けた第2加飾部を操作面側から多孔層を通して視認することが難しい。よって非照光時に操作者は、多孔層の表面側に設けられた第1加飾部のみを視認することができる。そうした一方で、バックライト光源が発光している照光時は、多孔層の裏面側から第2加飾部を照光する光がその多孔層を透過して第1加飾部も照光する。このため照光時に操作者は、第1加飾部とともに浮かび上がる第2加飾部を視認することができる。即ち、非照光時と照光時とで、加飾デザインを変更することができ、斬新なデザインのキーシートを実現することができる。
多孔層の厚さが250μmより薄いと非照光時でも第2加飾部を視認できてしまい、700μmより厚いと照光時でも第2加飾部を視認し難くなり、非照光時と照光時とで加飾デザインを変更することができない。
なお、多孔層を軟質なものとすれば、多孔層の柔軟性によってソフトフィール層の操作面を窪み易くすることができ、ソフトタッチ感をさらに高めることができる。
【0009】
本発明の前記キーシートについては、多孔層を、厚み方向に繋がる連続気泡の発泡層とすることができる。「厚み方向に繋がる連続気泡の発泡層」とは、例えば図10の電子顕微鏡(SEM)写真に示すように、気泡が連続して厚み方向に繋がって、縦孔となって見える構造の発泡層をいう。
例えば図11の電子顕微鏡写真で示すような独立気泡の発泡層は、略球状の気泡がランダムに並ぶため透過光は拡散し易く、照光時に第2加飾部が不鮮明になることがある。これに対し連続気泡の発泡層では、連続して繋がる気泡部分を透過光が通り易くなる。したがって、多孔層を厚み方向に繋がる連続気泡の発泡層とすれば、照光時に第2加飾部の透過光を表面側へ通り易くすることができ、第2加飾部を鮮明に視認することができる。そして、第2加飾部で表示要素を表す場合は、多孔層を厚み方向に繋がる連続気泡の発泡層とすることが好ましい。さらに多孔層の厚さも250μm〜450μmとすれば、小さい表示要素も明確に視認することができる。厚さが250μmより薄いと非照光時でも第2加飾部を視認できてしまい、450μmより厚いと照光時に第2加飾部が見え難くなるからである。
【0010】
本発明の前記キーシートについては、表皮層の表面を凹凸面とすることができる。このようにすれば、表皮層における表面の摩擦係数を小さくすることができ、表面を滑らかにすることができる。よってソフトタッチ感を高めることができる。
【0011】
本発明の前記キーシートについては、表皮層の裏面が凹凸面である場合、該凹凸面に、その起伏の高低差を小さくする透明で軟質なメジウム層を設けることができる。このように表皮層の裏面が凹凸面であってもその起伏の高低差が小さければ、表皮層の裏面側に第1加飾部を正確に設けることができ、この第1加飾部を表示部とすれば明瞭な表示部を有するキーシートを実現することができる。そしてメジウム層を設けても、メジウム層が透明であるため第1加飾部が見え難くなることがなく、またメジウム層が軟質であるためソフトタッチ感が損なわれることもない。
【0012】
本発明の前記キーシートについては、第1加飾部が、文字、数字、記号などの表示要素を示す表示部であり、ソフトフィール層が、該表示部を区切る仕切線としての貫通孔を有するものとすることができる。このようにすれば、バックライト光は、透光性の基材シートを透過しこの貫通孔を通じて外部に発光する。そのため、表示部からの照光明度と仕切線からの照光明度に差違を設けることができ、照光性に特徴のあるキーシートを実現することができる。また、仕切線から照光することで少なくとも表示部ごとの区別を行うことができる。なお、ここで表示部を区切る「仕切線」には、隣接する表示部を区切る仕切線のように一の表示部と他の表示部とを区切るものの他、表示部と背景部とでなる押圧操作部分を、他の押圧操作部分や押圧操作部分以外の部分と区切るものも含んでいる。
【0013】
このように仕切線を設ければ、押圧操作部分を視認し易くでき、誤入力を生じ難くすることができる。なお、表示部と表示部以外の部分は、両方を透光性にしたり、何れか一方を遮光性にしたりすることが可能である。即ち、表示部と表示部以外の部分の光透過率が異なれば表示部を視認することができる。また光透過率がほぼ同じであっても両者の色調を異なるようにすれば、表示部を視認することができる。仕切線の形状は押圧操作部分を略区画できる形状であり、例えば、押圧操作部分の外周を枠状に囲む形状、押圧操作部分の外周の一部を示す形状などとすることができる。そして、貫通孔を押圧操作部分を区画する仕切線としたため、仕切線を明るく照光させることができる。また仕切線によって押圧操作部分を触感でも確認することができる。さらに、押圧操作時にキーシートが撓み易くなるため押圧荷重を低く抑えることができ、押圧操作性を高めることができる。
【0014】
本発明の前記キーシートについては、多孔層における縁部の側面に、該側面を被覆する保護部を設けることができる。このようにすれば、多孔層が外部に露出せず、多孔層の耐久性を高めることができる。
また、ソフトフィール層に設けられた仕切線としての貫通孔にも保護部を設ければ、その貫通孔から多孔層の側面が露出せず、多孔層の耐久性を高めることができる。
【0015】
本発明の前記キーシートについては、基材シートの裏面に、さらにEL部材を備えることができる。このようにすれば、第2加飾部を面発光によって均一に照光することができ、第2加飾部における縁部の視認性を高めることができる。
また、基材シートの裏面に、さらに導光板を備えることができる。このようにすれば、LED、ELなどの光源によるバックライト光を効率よくキーシートに伝えることができ、照光輝度を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のキーシートによれば、基材シートの表面側にソフトフィール層を備えるため、押圧操作の際に柔らかな手触り感を与えることができ、薄型でソフトタッチ感を有するキーシートを実現することができる。また第1加飾部は押圧操作の際に摩耗せず、ソフトフィール層の押圧操作部分に孔が無いため、耐久性に優れるキーシートを実現することができる。さらに、非照光時と照光時とで異なる外観を与えるデザインに変更することができ、斬新なデザインのキーシートを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。また、「電子機器」としての携帯電話機に本発明のキーシートを適用する例について説明する。なお、各実施形態で共通する部材、材質、構成、製造方法、作用効果については重複説明を省略する。
【0018】
第1実施形態〔図1,図2〕
第1実施形態のキーシート1を図1〜図3に示す。図1はキーシート1の平面図、図2はキーシート1の断面図、図3はキーシート1における照光時の平面図を示す。第1実施形態のキーシート1は、基材シート2とソフトフィール層3とを備えており、ソフトフィール層3には、表皮層4、第1加飾部5、固着層6、多孔層7、固着層8、第2加飾部9を操作面(表面)側からこの順に備えている。
【0019】
表皮層4は最表面で柔らかな手触り感を与える層であり、透光性の高分子材料で平坦なシート状に形成されている。表皮層4の材質は、耐摩耗性、耐水性、耐薬品性に優れる樹脂あるいはエラストマーを用いることができる。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。なかでもポリウレタン系樹脂を用いると選りすぐれたソフトタッチ感が得られる。
【0020】
そして表皮層4を形成するこれらの樹脂やエラストマーに、発泡性ビーズ、中空状ビーズ、弾性ビーズ、無機材料などを含有させた樹脂組成物を用いることができる。こうしたビーズや無機材料を加えることで表皮層4に小さな凹凸を付与し多様な触感をもたらすことができる。発泡性ビーズとは、加熱したとき中空のビーズとなるものであり、その材質としては例えば、ポリウレタン、アクリル−ウレタン共重合体、ポリスチレン、スチレン−イソプレン共重合体などが挙げられる。中空状ビーズとは、中空の球体であり、その材質としては、例えば、塩化ビニリデンとアクリロニトリルなどの共重合体、架橋アクリルなどが挙げられる。弾性ビーズとは、その形状が変化するまで加圧した後に開放した際、弾性回復する性質を有する樹脂粒子であり、例えば、ポリウレタン樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−イソプレン共重合体などが挙げられる。無機材料としては、例えば、二酸化ケイ素(SiO;シリカや無水ケイ酸とも称される。)や含水ケイ酸(SiO・xHO)、含水ケイ酸アルミニウム(Al9SiO・xHO)などが挙げられる。
また、上記樹脂やエラストマーには、顔料、染料などの着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの種々の添加剤を配合することができる。
【0021】
こうした表皮層4の厚さは5μm〜200μmが好ましい。5μm未満では耐久性が低く破損し易くなり、200μmを超えると剛性が高まって操作者に対する触感が悪くなりソフトタッチ感を発現し難くなるからである。
【0022】
第1加飾部5は表皮層4の裏面に印刷形成された塗布層でなり、文字、数字などの表示要素を表す表示部5aと表示部5aを区切って押圧操作部10を囲む矩形状の仕切線5bとで構成されている。この表示部5aは、主に通話で用いる表示要素を表している。第1加飾部5の材質は、表皮層4に対し塗工できるインキや塗料を使用することができる。
【0023】
固着層6は表皮層4と多孔層7を固着する層であり、透光性の接着剤や粘着剤で形成されている。この固着層6には接着フィルム、粘着フィルム、ホットメルト接着剤などを用いることができる。
【0024】
多孔層7は表皮層4の裏面側に積層された窪み易い層であり、圧縮弾性率が小さい発泡体で形成されている。そしてこの多孔層7は、透光性であり、後述するように第2加飾部9が小さい表示要素を表す表示部9aであるため、その構成は厚み方向に繋がる連続気泡の発泡層でなり、その厚さは250μm〜450μmである。厚さが250μmより薄いと非照光時でも第2加飾部9を視認できてしまい、450μmより厚いと照光時に第2加飾部9が見え難くなる。多孔層7の材質は、発泡成形できる樹脂やエラストマーであり、表皮層4の材質と同様に、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
なお、本実施形態と異なり第2加飾部9が模様やキャラクターを表す場合には、照光時に浮かび上がる第2加飾部9がやや不鮮明であってもデザイン上の効果を発揮することができるため、多孔層の構成は独立気泡の発泡層とすることができ、多孔層の厚さは250μm〜700μmとすることができる。
【0025】
固着層8は基材シート2と多孔層7を固着する層であり、透光性の接着剤や粘着剤で形成されている。この固着層8には固着層6と同様に、接着フィルム、粘着フィルム、ホットメルト接着剤などを用いることができる。
【0026】
第2加飾部9は基材シート2の表面に印刷形成された塗布層でなり、文字、数字などの表示要素を表す表示部9aとしてある。この表示部9aは、主にメールで用いる表示要素を表している。第2加飾部9の材質は、基材シート2に対し塗工できるインキや塗料を使用することができる。
【0027】
基材シート2はキーシート1の定形性を付与する機能を有する部材であり、透光性の樹脂で形成されている。なお、基材シート2の裏面に押し子を設けると、押圧操作性を高めることができる。基材シート2には透光性の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いる。例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。基材シート2の厚さは100μm〜500μmが好ましい。100μm未満では強度が小さく、後加工にて破損するおそれがあり、さらに剛性も小さくキーシート1の形状を保持することが難しい。500μmを超えると剛性が大きく撓み難くなるため、押圧操作を行うキーシートの場合、押圧荷重が高くなり操作性が悪くなる。
【0028】
キーシート1の製造方法の一例を説明する。先ず、表皮層4の裏面に第1加飾部5を印刷形成した後、表皮層4の全裏面に固着層6を印刷形成する。そしてこの固着層6を多孔層7の表面に積層させ、熱圧着機などで表皮層4側から加熱、押圧し、固着層6をホットメルト接着層として表皮層4と多孔層7とを固着する。他方、基材シート2の表面に第2加飾部9を印刷形成した後、基材シート2の全表面に固着層8を印刷形成する。最後に、固着層8を多孔層7の裏面に積層させ、熱圧着機などで基材シート2側から加熱、押圧し、固着層8をホットメルト接着層として基材シート2と多孔層7とを固着する。こうしてキーシート1を製造する。
【0029】
キーシート1によれば、操作面をソフトフィール層3の表皮層4で構成するため、押圧操作の際に柔らかな手触り感を与えることができる。さらに多孔層7を圧縮弾性率が小さい発泡体で形成するため、多孔層7の柔軟性によってソフトフィール層3の操作面を窪み易くすることができ、ソフトタッチ感を有するキーシート1を実現することができる。
【0030】
そして表皮層4の裏面側に第1加飾部5の表示部5aや仕切線5bを設けるため、押圧操作の際に第1加飾部5の摩耗を防止することができる。さらにこの第1加飾部5は透光性の表皮層4を通して視認可能なため、視認性の高い表示部5aや仕切線5bとすることができ、表示要素や押圧操作部10を明確に視認することができる。
【0031】
多孔層は厚み方向に繋がる連続気泡の発泡層でなり、その厚さが250μm〜450μmであるため、非照光時には、多孔層7の表面側に設けられた第1加飾部5の表示部5aや仕切線5bを視認することができ、押圧操作部10には主に通話で使用する表示要素を表すことができる(図1)。そして照光時には、第1加飾部5とともに浮かび上がる第2加飾部9を視認することができ、押圧操作部10には主にメールで使用する小さな表示要素も明確に表すことができる(図3)。即ち、非照光時と照光時とで、加飾デザインを変更することができ、斬新なデザインのキーシート1を実現することができる。
【0032】
第1実施形態の変形例
第1実施形態のキーシート1では、第1加飾部5で主に通話で使用する表示要素の表示部5aや仕切線5bを表し、第2加飾部9で主にメールで使用する表示要素の表示部9aを表す例を示したが、変形例として第1加飾部で全ての表示要素を表し、第2加飾部で仕切線を表すことができる。このようにすれば、全ての表示要素を表皮層4の裏面に設けるため、細かい表示要素も明瞭に視認することができ、照光時にのみ仕切線を浮かび上がらせることができる。また別な変形例として、第1加飾部で全ての表示要素や仕切線を表し、第2加飾部で模様、キャラクター、ロゴマークなどの図柄などを表すこともできる。さらに本変形例の場合は、多孔層の構成を独立気泡の発泡層とすることができ、多孔層の厚さを250μm〜700μmとすることができる。
【0033】
第2実施形態〔図4〜図6〕
第2実施形態のキーシート11を図4〜図6に示す。図4はキーシート11の平面図、図5はキーシート11の断面図、図6はキーシート11における照光時の平面図を示す。第2実施形態のキーシート11が第1実施形態のキーシート1と異なるのは、ソフトフィール層12の構成である。即ち、ソフトフィール層12では、表皮層13、第1加飾部14、固着層6、多孔層7、固着層8、第2加飾部15を備え、さらに表皮層13の裏面にメジウム層16が施されている。残余の構成はキーシート1と同じである。
【0034】
表皮層13は表面と裏面が傾斜面で構成される凹凸形状に形成され、その凹凸形状のパターンは平面視で縞柄を表している。そしてこの凹凸形状における凹部の深さは、5μm〜500μmである。5μmより浅いと視覚的に凹凸形状のパターンが見え難く、さらに第1加飾層はほぼ平坦な層に形成されて第1加飾層の色合いが漸次的に変化するように見え難い。500μmより深いと凹凸形状の凹部に対する第1加飾層の形成が難しくなる。
【0035】
第1加飾部14は表示要素の表示部14aを表し、第2加飾部15が矩形状の仕切線15aを表している。
【0036】
メジウム層16は表皮層13の裏面に印刷形成され、表皮層13の裏面に形成されている凹凸形状の起伏の高低差を小さくする層である。このメジウム層16は透明で軟質な高分子材料によって、不均一な層厚に形成されている。つまりメジウム層16の膜厚は、表皮層13の凹部の底付近が厚く、凹部から凸部に向かって次第に薄くなり、そして凸部を覆う膜厚が最も薄く形成されている。このようにメジウム層16の裏面は凹凸形状に形成されているが、前述のような層厚構成であるため、メジウム層16の裏面における起伏の高低差は表皮層13の裏面における起伏の高低差より小さい。メジウム層16の材質は、表皮層13に対し塗工できるインキや塗料を使用することができる。
【0037】
キーシート11の製造は、先ず、離型シートや金型を用いて表皮層13の表裏面に凹凸形状を転写成形する。この表皮層13の裏面にメジウム層16を印刷形成した後、第1加飾部14、固着層6を印刷形成する。そしてこの固着層6をホットメルト接着層として表皮層13と多孔層7とを固着する。他方、基材シート2の表面に第2加飾部15、固着層8を印刷形成する。最後に、固着層8をホットメルト接着層として基材シート2と多孔層7とを固着する。こうしてキーシート11を得る。
【0038】
キーシート11によれば、表皮層13の裏面が凹凸面であってもその起伏の高低差をメジウム層16が小くするため、第1加飾部14を正確に設けることができ、この第1加飾部14を明瞭な表示部14aを実現することができる。そしてメジウム層16を設けても、メジウム層16が透明であるため第1加飾部14が見え難くなることがなく、またメジウム層16が軟質であるためソフトタッチ感が損なわれることもない。
【0039】
第1加飾部14で表示要素の表示部14aを表し、第2加飾部15で仕切線15aを表しているため、非照光時には細かい表示部14aも明瞭に視認することができ(図4)、照光時には表示部14aを囲む仕切線15aを浮かび上がらせることができる(図6)。よって照光時には押圧操作部10を視認し易くでき、誤入力を生じ難くすることができる。
【0040】
表皮層13の表面を凹凸面であるため、表皮層13における表面の摩擦係数を小さくすることができ、表面を滑らかにすることができる。よってソフトタッチ感を高めることができる。
【0041】
第3実施形態〔図7〕
第3実施形態のキーシート17を図7に示す。図7はキーシート17の断面図を示す。第3実施形態のキーシート17が第1実施形態のキーシート1と異なるのは、ソフトフィール層18の構成である。即ち、本実施形態では仕切線を第1加飾部で表すのではなく、ソフトフィール層18の肉厚を貫通する貫通孔19としている点である。このようなソフトフィール層18は、表面側から表皮層20、第1加飾部21、固着層22、多孔層23、固着層24、第2加飾部9を順に備えている。残余の構成はキーシート1と同じである。
【0042】
キーシート17の製造は、第1実施形態のキーシート1と同様に、貫通孔19の無いソフトフィール層18と基材シート2を積層する。その後、表皮層20の上から刃を当てて、表皮層20、固着層22、多孔層23、固着層24を貫く貫通孔19を形成する。こうしてキーシート17を得る。
【0043】
キーシート17によれば、仕切線としての貫通孔19を有するため、貫通孔19によって押圧操作部10を触感でも確認することができる。さらに、押圧操作時にキーシート17が撓み易くなるため押圧荷重を低く抑えることができ、押圧操作性を高めることができる。
【0044】
照光時にバックライト光は、透光性の基材シート2を透過しこの貫通孔19を通じて外部に発光する。そのため、押圧操作部10からの照光明度と貫通孔19からの照光明度に差違を設けることができ、照光性に特徴のあるキーシート17を実現することができる。
【0045】
第4実施形態〔図8〕
第4実施形態のキーシート25を図8に示す。図8はキーシート25の断面図を示す。第4実施形態のキーシート25が第3実施形態のキーシート17と異なるのは、ソフトフィール層26の構成である。即ち、本実施形態では表皮層27の縁部分が延伸し、固着層22、多孔層23、固着層24の各縁部の側面を被覆する保護部26aが設けられている。残余の構成はキーシート17と同じである。
【0046】
キーシート25の製造は、第3実施形態のキーシート17と同様に、貫通孔19の無いソフトフィール層26と基材シート2を積層する。その後、表皮層27側から熱圧着法又は超音波融着法を用いてソフトフィール層26を押圧し、固着層22、多孔層23、固着層24の貫通孔19を形成しつつ、これらの層の縁部を表皮層27の保護部27aで覆わせる。こうしてキーシート25を得る。
【0047】
キーシート25によれば、多孔層23における縁部の側面を被覆する保護部27aを設けるため、多孔層23が外部に露出せず、多孔層23の耐久性を高めることができる。
【0048】
第5実施形態〔図9〕
第5実施形態のキーシート28を図9に示す。図9はキーシート28の断面図を示す。第5実施形態のキーシート28が第3実施形態のキーシート17と異なるのは、基材シート2の裏面にEL部材29を備える構成である。残余の構成はキーシート17と同じである。
【0049】
キーシート28の製造は、第3実施形態のキーシート17と同様に、基材シート2とソフトフィール層18とを備えるキーシートを形成した後、基材シート2の裏面にEL部材29を図外の透光性接着剤で固着する。こうしてキーシート28を得る。なお、本実施形態では接着剤でEL部材29を基材シート2の裏面に固着しているが、基材シート2の裏面に直接EL部材29を印刷形成することもできる。
【0050】
キーシート28によれば、基材シート2の裏面にEL部材29を備えるため、第2加飾部9を面発光によって照光することができ、第2加飾部9における縁の視認性を高めることができる。
【0051】
第5実施形態の変形例
第5実施形態のキーシート28では第3実施形態のキーシート17における基材シート2の裏面にEL部材29を備える例を示したが、変形例として他の実施形態におけるキーシート1,11,25の裏面にEL部材29を備えることができる。
【実施例】
【0052】
次により具体的なキーシートの製造例を示して本発明をさらに詳細に説明する。
【0053】
1.キーシートの製造
【0054】
試料1
厚さ50μmの透光性ウレタン系樹脂でなる表皮層(4)の裏面に、酢酸ビニル系インキで表示部(5a)と仕切線(5b)を表す第1加飾部(5)を印刷形成した。その後、表皮層(4)の全裏面にホットメルト接着剤であなる固着層(6)を印刷形成し、この固着層(6)を厚さ250μmで厚み方向に繋がる連続気泡の多孔層(7)の表面に積層させ、熱圧着機などで表皮層(4)側から加熱、押圧し、表皮層(4)と多孔層(7)とを固着した。他方、厚さ188μmの透光性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムでなる基材シート(2)の表面に、酢酸ビニル系インキで表示部(9a)を表す第2加飾部(9)を印刷形成した。その後、基材シート(2)の全表面にホットメルト接着剤であなる固着層(8)を印刷形成し、この固着層(8)を多孔層(7)の裏面に積層させ、熱圧着機などで基材シート(2)側から加熱、押圧し、基材シート(2)と多孔層(7)とを固着してキーシート(1)を製造した。これを試料1とした。
【0055】
試料2
厚さ450μmで厚み方向に繋がる連続気泡の多孔層(7)を用いて試料1と同様にキーシート(1)を製造し、試料2とした。
【0056】
試料3
試料1と同様の表皮層(4)の裏面に、表示部(5a)と仕切線(5b)を表す第1加飾部(5)を印刷形成し、表皮層(4)の全裏面に印刷形成した固着層(6)で、厚さ500μmで厚み方向に繋がる連続気泡の多孔層(7)の表面と固着した。また、試料1と同様の基材シート(2)の表面に、格子模様を表す第2加飾部(9)を印刷形成し、基材シート(2)の全表面に印刷形成した固着層(8)で、多孔層(7)の裏面と固着してキーシート(1)を製造した。これを試料3とした。
【0057】
試料4
厚さ700μmで厚み方向に繋がる連続気泡の多孔層(7)を用いて試料3と同様にキーシート(1)を製造し、試料4とした。
【0058】
試料5
厚さ900μmで厚み方向に繋がる連続気泡の多孔層を用いて試料3と同様にキーシートを製造し、試料5とした。
【0059】
試料6
厚さ285μmで独立気泡の多孔層(7)を用いて試料3と同様にキーシート(1)を製造し、試料6とした。
【0060】
試料7
厚さ390μmで独立気泡の多孔層(7)を用いて試料3と同様にキーシート(1)を製造し、試料7とした。
【0061】
試料8
厚さ550μmで独立気泡の多孔層(7)を用いて試料3と同様にキーシート(1)を製造し、試料8とした。
【0062】
試料9
厚さ190μmで独立気泡の多孔層を用いて試料3と同様にキーシートを製造し、試料9とした。
【0063】
2.キーシートの評価
【0064】
上記の試料1〜試料9について、非照光時、照光時における第1加飾部(5)と第2加飾部(9)の視認性を評価した。
【0065】
「視認性評価」; 標準光源D65(JIS Z 8720)を内蔵したライトテーブルの上面中央に試料を置き、この試料以外の上面を遮光性のマスキングシートで被覆する。そして光源の非発光時(非照光時)と発光時(照光時)について、第2加飾部(9)の視認性を確認した。その結果を表1,2に示す。表中で示す「確認不可能」とは、評価者10人中8人以上が第2加飾部(9)を確認できなかったことを意味し、「確認可能」とは、評価者10人中8人以上が第2加飾部(9)を確認できたことを意味する。そして「×」は本願発明の効果を発揮していないものであり、非照光時に第2加飾部(9)を確認できたことや照光時に第2加飾部(9)を確認できなかったことを意味する。「○」、「◎」は本願発明の効果を発揮しているものであり、特に「◎」は照光時に第2加飾部(9)を鮮明に確認できたことを意味する。
【0066】
表1で示すように、試料1と試料2は、非照光時に表示部(5a)と仕切線(5b)の第1加飾部(5)のみが確認でき、照光時にはバックライト光で表示部(9a)が浮かび上がり第1加飾部(5)と第2加飾部(9)の両者を明確に確認することができた。また、試料3と試料4では、非照光時に表示部(5a)と仕切線(5b)の第1加飾部(5)のみが確認でき、照光時にはバックライト光で格子模様の第2加飾部(9)が浮かび上がり、表示部(5a)と仕切線(5b)の後方に格子模様を確認することができた。
試料5は、多孔層が照光し易い厚み方向に繋がる連続気泡の構成であっても、照光時に表示部(9a)である第2加飾部(9)が確認できなかった。
【0067】
表2で示すように、試料6〜試料8では、非照光時に表示部(5a)と仕切線(5b)の第1加飾部(5)のみが確認でき、照光時にはバックライト光で格子模様の第2加飾部(9)が浮かび上がり、表示部(5a)と仕切線(5b)の後方に格子模様を確認することができた。バックライト光で浮かび上がった格子模様は、やや不鮮明であった。
試料9は、多孔層が光を拡散し易い独立気泡の構成であっても、非照光時に格子模様が確認できてしまった。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1実施形態のキーシートを示す平面図。
【図2】図1のSA−SA線断面図。
【図3】第1実施形態のキーシートにおける照光時を示す平面図。
【図4】第2実施形態のキーシートを示す平面図。
【図5】図4のSB−SB線断面図。
【図6】第2実施形態のキーシートにおける照光時を示す平面図。
【図7】第3実施形態のキーシートを示す図2相当断面図。
【図8】第4実施形態のキーシートを示す図2相当断面図。
【図9】第5実施形態のキーシートを示す図2相当断面図。
【図10】連続気泡の発泡層でなる多孔層を示す顕微鏡写真図。
【図11】独立気泡の発泡層でなる多孔層を示す顕微鏡写真図。
【符号の説明】
【0071】
1 キーシート(第1実施形態)
2 基材シート
3 ソフトフィール層
4 表皮層
5 第1加飾部
5a 表示部
5b 仕切線
6 固着層
7 多孔層
8 固着層
9 第2加飾部
9a 表示部
10 押圧操作部
11 キーシート(第2実施形態)
12 ソフトフィール層
13 表皮層
14 第1加飾部
14a 表示部
15 第2加飾部
15a 仕切線
16 メジウム層
17 キーシート(第3実施形態)
18 ソフトフィール層
19 貫通孔
20 表皮層
21 第1加飾部
22 固着層
23 多孔層
24 固着層
25 キーシート(第4実施形態)
26 ソフトフィール層
27 表皮層
27a 保護部
28 キーシート(第5実施形態)
29 EL部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の基材シートと、該基材シートの表面側に積層され柔らかな手触り感を有するソフトフィール層と、を備えており、
基材シートの裏面側からの光によって照光可能なキーシートにおいて、
ソフトフィール層が、
柔らかな触感を有する透光性の表皮層と、
該表皮層の裏面側に積層される厚さが250μm〜700μmの多孔層と、
表皮層と多孔層の間に設けられ、表皮層を通して視認可能な第1加飾部と、
多孔層の裏面側に設けられ、裏面側からの光により表皮層と多孔層を通して視認可能な第2加飾部と、を備えることを特徴とするキーシート。
【請求項2】
多孔層の厚さが250μm〜450μmである請求項1記載のキーシート。
【請求項3】
多孔層が、厚み方向に繋がる連続気泡の発泡層でなる請求項1または請求項2記載のキーシート。
【請求項4】
表皮層の裏面が凹凸面であり、
該凹凸面に、その起伏の高低差を小さくする透明で軟質なメジウム層を設ける請求項1〜請求項3何れか1項記載のキーシート。
【請求項5】
第1加飾部が、文字、数字、記号などの表示要素を示す表示部であり、
ソフトフィール層が、該表示部を区切る仕切線としての貫通孔を有する請求項1〜請求項4何れか1項記載のキーシート。
【請求項6】
多孔層における縁部の側面に、該側面を被覆する保護部を設ける請求項1〜請求項5何れか1項記載のキーシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−15809(P2010−15809A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174431(P2008−174431)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】