説明

キースイッチ構造

【課題】 第1リンク部材2および第2リンク部材3を用いて、キートップ1への押下動作を回転運動と水平方向のスライド運動に変換するキースイッチ構造とし、第2リンク部材3内に第1リンク部材2が納まるように、両者が垂直方向に重なることがないように構成したキースイッチにおいて、カップゴム4を大きくすることなく、長ストローク化を実現する。
【解決手段】 バネ部8を固定部8a、8b、バネ8cから構成し、固定部8aにより第1リンク部材2の一端を回転可能に支持する回転支持部1a、1b間に固定し、固定部8bにより第2リンク部材3の一端を水平方向にスライド動作可能に支持するスライド支持部1c、1d間に固定して、キートップ1とカップゴム4の間に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルコンピュータ等のキーボードに用いられるキースイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
(構成)
近年、ノート型パーソナルコンピュータの普及に伴い、キーボードに薄型化が求められている。図8は、この薄型化の要求に応えるために採用された、従来のキースイッチの構造図である。
【0003】
従来のキースイッチは、キートップ1、第1リンク部材2、第2リンク部材3、カップゴム4、ハウジング5、接点シート6およびベースプレート7から構成されている。キートップ1には、第1リンク部材2の一端を回転可能に支持する1対の回転支持部1rと、第2リンク部材3の一端を同図における水平方向にスライド動作可能に支持する一対のスライド支持部1sを設けてある。
【0004】
第1リンク部材2は、一対の脚部を有し、当該脚部の一端には、キートップ1の回転支持部1rに挿入される第1連結棒が2つの脚部を連結するように配設され、同様に脚部の他端には第2連結棒が2つの脚部を連結するように配設されハウジング5のスライドガイド5s位置に配置されている。
【0005】
第2リンク部材3は、一対の脚部を有し、当該脚部の一端には、キートップ1のスライド支持部1sにスライド動作可能に支持される第1支持突起が、他端には第1リンク部材2の両連結棒間と等しい距離に第2支持突起がハウジング5の回転ガイド5rに挿入されている。そして、前記第1のリンク2および第2のリンク3は、後述のカップゴム4に干渉しないように、中央がくり抜かれた構造となっている。
【0006】
カップゴム4は、弾性部材であり、その上部がキートップ1の裏面に接するように、接点シート6上に配置されている。接点シート6は、可動接点6aと固定接点6bが、所定の間隙をあけて対向するように配設されている。ベースプレート7は、以上の部品の下部に配置され、ハウジング5とねじ等により固定されている。
【0007】
(動作)
以上のように構成された従来のキースイッチは、キートップ1が押下されると、キートップ1の裏面がカップゴム4の上部を押圧することにより、カップゴム4が圧縮変形されるとともにカップゴム4の下方に突出するように設けられた接点押下部が接点シート6に当接し、これを押圧する。
【0008】
その結果、接点シート6が撓んで、その下部に配設された可動接点6aが、対向する固定接点6bに接触し、これにより電気的接続がなされてスイッチは閉状態となる。その後、キートップ1の押下を解除すると、各構成部品は、カップゴム4の復元力により元の状態に戻り、撓んでいた接点シート6も復旧するため、可動接点6aと固定接点6bの接触が絶たれ、スイッチは開放状態となる。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−339587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のようにすることにより、キーボードの薄型化は実現しているが、近年では、薄型化の要求とともに、キー押下時のストロークを長くする長ストローク化といった、さらに良好な押下感触への要求が高まってきている。
【0010】
しかしながら、従来のキースイッチの構成では、ストロークを長くするために、カップゴム4を大きくする必要があり、カップゴム4を大きくすると、リンク2及び3とカップゴム4が干渉してしまうので、長ストローク化を実現することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前述の課題を解決するため次の構成を採用する。すなわち、本発明は、キートップと、当該キートップに一端を係合するとともに、相互に係合した第1および第2のリンク部材と、前記第1および第2のリンク部材の内側に配置され、キートップの押下により変位する第1の弾性部材と、前記第1の弾性部材により押圧されることにより閉状態となる接点シートと、前記キートップと前記接点シート間に前記第1の弾性部材と重ねて配置した第2の弾性部材とから構成した。
【発明の効果】
【0012】
本発明のキースイッチ構造によれば、キートップと接点シートの間に第1の弾性部材と第2の弾性部材を重ねて配置したので、第1の弾性部材を大きくすることなく、ストローク長を任意に長くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態例を、図面を用いて説明する。なお図面に共通する要素には同一の符号を付す。
【実施例】
【0014】
(構成)
図1は実施例のキースイッチを示す構造図であり、図2は実施例のキースイッチを示す分解斜視図である。
【0015】
実施例のキースイッチは、キートップ1、第1リンク部材2、第2リンク部材3、カップゴム4、ハウジング5、接点シート6、ベースプレート7およびバネ部8から構成されている。
【0016】
キートップ1には、第1リンク部材2の一端を回転可能に支持する回転支持部1a、1bと、第2リンク部材3の一端を図1における水平方向にスライド動作可能に支持するスライド支持部1c、1dを設けてある。
【0017】
バネ部8は、同図に示したように、例えばアルミ板を打ち抜き、曲げ加工して固定部8a、8b及びバネ8cを設けたものである。そして、固定部8aにより第1リンク部材2の後述の第1連結棒2c上に配置し、他方の固定部8bにより第2リンク部材3の後述の連結部3i上に配置してキートップ1とカップゴム4の間に配設する。なお、バネ部8は、アルミ材である必要はなく、鋼板等であっても、プラスティック樹脂等で成形したものであっても勿論よい。或いはコイル状のバネ、渦巻状のバネとしてもよい。
【0018】
前記固定部8bは、連結部3iがキー押下とともに水平方向にスライドするので、そのスライド分スペースをもって曲げ加工されているが、特にスペースを設けず、固定部8a、8bのいずれか或いは両方をフレキシブルな材質とし、連結部3iのスライドに応じて伸縮するような構成としてもよい。
【0019】
ここで、バネ部8は、図3に示したようにキートップ1側から加重を加えた場合、図4に示したように変位する。すなわち、バネ部は加重に対し線形的可逆的に変位するので図4(a)のように変化しバネ8cがバネ部の上部位置まで変位し、図中a点位置に達する(本例では1mm)と、それ以上は変位しない。
【0020】
一方、カップゴム4は、キー押下の感触を出すために図4(b)のような逆S字の特性となるような形状としているが、この場合もほぼカップゴム4の内側の高さまでは変位し図中b点位置(本例では3mm)に達するとそれ以上はほとんど変位しない。なお、弾性材料としているため、押下時の変位と開放時の変位に若干ヒステリシスがあり、図のような押下特性となる。
【0021】
これらのバネ部8とカップゴム4を重ね合わせた構成とすると、変位特性はこれらが合成され、図4(c)のようになり、図中b点(本例では1mm+3mm=4mm)まで変位することになり、キー押下の感触は維持されたままで、ストローク長を3mmから4mmまで長くすることができる。なお、上記長さは、単に例を示したのであって、この長さに限定されないことはいうまでもない。
【0022】
また、図4の例は、カップゴム4の変位特性があまり変化しないように、バネ部8の変位限界位置a点と、カップゴム4の変位限界位置b点が、ほぼ一致するようにしているが、図5(a)のようにバネ部のバネ定数(すなわち、変位/加重をいうが、便宜上、以下「弾性率」という)を低くし、カップゴム4の変位限界位置b点に達する前にバネ部の変位限界位置a点に達するようにしてもよいし、図5(b)のようにバネ部の弾性率を高くし、カップゴム4の変位限界位置b点に達した後、バネ部の変位限界位置a点に達するようにしてもよい。
【0023】
図5(a)の場合では、カップゴム4の変位特性を維持したままキーストロークを長くすることができ、一方、図5(b)の場合では、カップゴム4の変位特性に影響はあるが、弾性力(変位/加重)を維持することができる。
【0024】
そして、再び図1、図2に戻り、第1リンク部材2は、一対の脚部2a、2bを有し、脚部2a、2bの一端には、キートップ1の回転支持部1a、1bに挿入される第1連結棒2cが、2つの脚部2a、2bを連結するように配設され、同様に脚部2a、2bの他端には、第2連結棒2dが2つの脚部2a、2bを連結するように配設されている。
【0025】
さらに、2つの脚部2a、2bの各々には、第1連結棒2cと第2連結棒2dとをつなぐ線上であって、かつ、それぞれの連結棒2c、2dに対して等距離となる位置に、回転軸2e、2fが設けられている。
【0026】
第2リンク部材3は、一対の脚部3a、3bを有し、脚部3a、3bの一端には、キートップ1のスライド支持部1c、1dにスライド動作可能に支持される第1支持突起3c、3dが、他端には第1リンク部材2の両連結棒2c、2d間と等しい距離に第2支持突起3e、3fが配設されている。
【0027】
また、第1支持突起3c、3dと第2支持突起3e、3fをつなぐ線上であって、かつ各々の支持突起3c、3d;3e、3fに対して等距離となる位置に、回転孔3g、3hが設けられている。さらに、2つの脚部3a、3bは、各々の第1支持突起3c、3dよりさらに先端側において、連結部3iにより連結されている。
【0028】
第1リンク部材2と第2リンク部材3は、第1リンク部材2の回転軸2e、2fを、第2リンク部材3の回転孔3g、3hに嵌合することにより、回転自在に係合されている。ハウジング5には、第1リンク部材2の第2連結棒2dを図1における水平方向にスライド動作可能に支持するためのスライドガイド5a、5bが配設され、第2リンク部材3の第2支持突起3e、3fを回転自在に支持するための回転ガイド5c、5dが配設されている。さらに、ハウジング5には、カップゴム4を固定するガイド壁5eが、カップゴム4の外周部を囲む形に配設されている。
【0029】
カップゴム4は、弾性部材であり、その上部がバネ部8のバネ8cの下面に接するように、接点シート6上に配置されている。接点シート6は、可動接点6aと固定接点6bが、所定の間隙をあけて対向するように配設されている。ベースプレート7は、以上の部品の下部に配置され、ハウジング5とねじ等により固定されている。
【0030】
(動作)
図6は実施例キースイッチの押下状態を示す説明図であり、この図を併せて参照し、以下に本実施の形態の動作について説明する。キートップ1が押下されて下方に移動するのに伴い、第1リンク部材2は、キートップ1の回転支持部1a、1bに回転自在に支持された第1連結棒2cを回転の中心として、図1(図6)において時計方向に回転運動し、この第1リンク部材2の他端側の第2連結棒2dが、ハウジング5のスライドガイド5a、5bに沿って図1(図6)において水平左方向にスライド動作する。
【0031】
第2リンク部材3は、第1リンク部材2の回転軸2e、2fがその第2リンク部材3の回転孔3g、3hに回転自在に嵌合されているため、第1リンク部材2の動作に伴い、第2リンク部材3の第1支持突起3c、3dがキートップ1のスライド支持部1c、1dに沿って図1(図6)において水平左方向にスライド動作し、ハウジング5の回転ガイド5c、5dに回転自在に支持された第2支持突起3e、3fを回転の中心として図1(図6)において反時計方向に回転運動する。
【0032】
この結果、キートップ1は、ハウジング5に対して平行を保ちながら図1(図6)において下方へ移動する。キートップ1の下方への移動に伴い、キートップ1の裏面がバネ部8上部を押圧しさらにバネ部8がカップゴム4の上部を押圧するので、前述図4(c)の変位特性に従い、圧縮変形するとともにカップゴム4の内側に形成されて下方に突出している接点押下部4aが接点シート6に当接してこれを押圧することにより、可動接点6aと固定接点6bが接触して電気的接続がなされ、スイッチは閉状態となる。
【0033】
そして、図6のように、第1リンク部材2と第2リンク部材3とは重なることなく、ハウジング5に対して略水平となる位置まで回転する。このとき、バネ部8もキートップ1の押下により徐々に水平となり、図6のように略水平な位置まで変位する。
【0034】
キートップ1の押下を解除すると、各構成部品は、バネ部8およびカップゴム4の復元力により、図1に示すような元の状態に戻り、接点シート6の可動接点6aと固定接点6bも離れ、電気的接触が絶たれるためスイッチは開放状態となる。
【0035】
以上述べたように、バネ部8とカップゴム4を重ね合わせた構成としたので、カップゴム4を大きくすることなく、ストローク長を任意に長くすることができる。
【0036】
そして、第1リンク部材2および第2リンク部材3を用いて、キートップ1への押下動作を回転運動と水平方向のスライド運動に変換するキースイッチ構造とし、バネ部8とカップゴム4を重ね合わせた構成としたので、キートップ1は常にハウジング5に対して平行に位置することが可能となり、キートップ1のどの部分を押した場合にも良好な押下感触も得ることができるという効果も維持することができる。
【0037】
そして、第2リンク部材3内に第1リンク部材2が納まるように、両者が垂直方向(高さ方向)に重なることがないように構成し、バネ部8とカップゴム4を重ね合わせた構成としたので、キースイッチのストロークを充分確保しながらスムーズな動作を実現するだけでなく、このキースイッチを低く構成することができるという効果も維持することができる。
【0038】
《その他の変形例》
なお、以上の説明では、第1リンク部材2および第2リンク部材3を用いたキースイッチにおいて、バネ部8とカップゴム4を重ね合わせる構成として説明したが、例えば、前記第1リンク部材2および第2リンク部材3を用いず、キートップ1の下側にカップゴム4を配置するような簡易な構成のキースイッチにおいて、キートップ下面にバネ部8とカップゴム4を重ね合わせる構成としてもよい。
【0039】
また、以上の説明では、キートップ1とカップゴム4間に配置する第2の弾性部材をバネ部8のようなバネ状の部材として説明したが、多少非線形な変位となるが、当該第2の弾性部材をゴム材などの弾性部材で構成するようにしてもよい。
【0040】
また、以上の説明では、カップゴム4の上にバネ部8を配置する構成として説明したが、図7に示したようにカップゴム4とバネ部8の上下関係を逆にし、カップゴム4の接点押下部4aが可動接点6aを押下できるように中央部に孔8dを設けたバネ部8'の上にカップゴム4を配置するような構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例のキースイッチの構造図である。
【図2】実施例のキースイッチの分解斜視図である。
【図3】実施例のキースイッチの押下特性の説明図である。
【図4】実施例のキースイッチの押下特性である。
【図5】別の実施例のキースイッチの押下特性である。
【図6】実施例のキースイッチの押下状態である。
【図7】別の実施例のキースイッチの構造図である。
【図8】従来のキースイッチの構造図である。
【符号の説明】
【0042】
1 キートップ
1a、1b、1r 回転支持部
1c、1d、1s スライド支持部
2 第1リンク部材
2a、2b 脚部
2c 第1連結棒
2d 第2連結棒
2e、2f 回転軸
3 第2リンク部材
3a、3b 脚部
3c、3d 第1支持突起
3e、3f 第2支持突起
3g、3h 回転孔
3i 連結部
4 弾性部材
4a 接点押下部
5 ハウジング
5a、5b、5s スライドガイド
5c、5d、5r 回転ガイド
5e ガイド壁
6 接点シート
7 ベースプレート
8 バネ部
8a、8b 固定部
8c バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キートップと、
当該キートップに一端を係合するとともに、相互に係合した第1および第2のリンク部材と、
前記第1および第2のリンク部材の内側に配置され、キートップの押下により変位する第1の弾性部材と、
前記第1の弾性部材により押圧されることにより閉状態となる接点シートと、
前記キートップと前記接点シート間に前記第1の弾性部材と重ねて配置した第2の弾性部材とからなることを特徴とするキースイッチ構造。
【請求項2】
前記第2の弾性部材を、バネ状の弾性部材としたことを特徴とする請求項1記載のキースイッチ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−79925(P2006−79925A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262396(P2004−262396)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】