説明

ギヤポンプ装置及びギヤポンプ装置を用いたゴム成形体の製造装置、及び同製造方法

【課題】ゴム押出用のギヤポンプの駆動軸に曲げ応力が作用しない構造としつつ、コンパクトにしたギヤポンプ装置を得る。
【解決手段】ギヤポンプ2と、ギヤポンプ2の駆動装置と、ギヤポンプ2の駆動軸と前記駆動装置の出力軸のそれぞれに止着されたスプロケットと、スプロケット間に掛け渡されたチェーン26とを備えたギヤポンプ装置であって、両端近傍にそれぞれ軸受31,32を備えた軸支持部材30を有し、前記軸支持部材30の前記軸受31,32で前記ギヤポンプ2の駆動軸25と減速機21の出力軸22を支承する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばゴムを定量ずつ押し出すギヤポンプ装置と、このギヤポンプ装置を用いたゴム成形体の製造装置及び同製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム材料を口金から押し出して所望の形状のゴム製品にするためのギヤポンプ及びこのギヤポンプを駆動するためのモータ、減速機からなるギヤポンプ装置が知られている。このギヤポンプ装置の適用例として、ホッパーに投入されたゴム材料を混練しながらギヤポンプ装置に送り、ギヤポンプ装置ではゴム材料を口金に圧送して、口金から成形されたゴム材料を押し出し、このゴム成形材料から所望のゴム成形体を製造することが行われている。
一例として、図4に示すゴム成形体の製造装置は、ゴム材料を給送するスクリュー1と、ゴム材料を定量ずつ圧送するギアポンプ2と、ゴム材料を成形する口金3と、口金3から押し出されたゴムストリップを一対の逆向きに旋回するローラ4,5とから成っており、上記製造装置は、ゴムストリップを旋回支持体8に貼り付ける際に、旋回支持体8の軸に並行な方向と、これに直角な方向及び図4の軸線cを中心に旋回して、ローラ4,5間に導入されたゴムストリップを旋回支持体8に巻き付けて、例えば未加硫タイヤを製造するものである(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、このゴム成形体の製造装置のギヤポンプは粘性の高いゴムを押し出すため、その駆動軸は大きな回転トルクを持つことが必要である。この回転トルクはモータから供給されるが、駆動軸がモータの回転トルクを受け取るときに、同時にギヤポンプの駆動軸に曲げ応力が作用するとギヤポンプの耐久性に悪影響を及ぼすため、上記駆動軸には回転トルクを伝達する際に曲げ応力を作用させないようにすることが望ましい。
そこで特許文献に記載されたものではないが、例えば図5Aに示すように、ギヤポンプ2の駆動軸25にモータ20に直結した減速機21の出力軸をカップリングにより直結し、或いは5Bに示すようにモータ20の出力軸とギヤポンプ2の駆動軸25とを同様に直結した構造にすることが行われている。
【0004】
このように、ギヤポンプ2の駆動軸25に対してモータの回転トルクを直接伝達するようにすれば、上記駆動軸25に曲げ応力が作用することはない。
しかしながら、その場合、ギヤポンプ2及びモータ20或いはモータ20と減速機21とから成るギヤポンプ装置では、図示のように、モータ20或いはモータ20と減速機21とギヤポンプ2を直列に配置せざるを得ずコンパクトにすることができない。そのようなギヤポンプ装置を上記のゴム成形体の製造装置に適用すると、その旋回に要するスペースが大きくなるという問題が生じる。
【0005】
そこで、ゴム成形体の製造装置の旋回スペースを小さくするためには、ギヤポンプ2とモータ20或いはモータ20と減速機21とが直列配置を採らない構造、例えば図6に示すように、ギヤポンプ2の駆動軸25とモータ20に接続された減速機21の出力軸22にスプロケット23,24を取り付け、これらスプロケット23,24間にチェーン26を掛け渡した構造を採用することが考えられる。
この構造では、ギヤポンプ2、モータ20及び減速機21とを、例えば図示のように上下に並置することができるため、このギヤポンプ装置を、上記ゴム成形体の製造装置に適用したときは、モータ20やモータ付き減速機21の出力軸22をギヤポンプ2の駆動軸に直結した上記の構造に比較してコンパクト化でき、製造装置の旋回時にスペースを要しない利点がある。
【0006】
しかし、この構造では、モータの回転トルクの伝達時に、図6に示すようにチェーン26にモータ20の駆動力Fが作用するため、ギヤポンプの駆動軸25には駆動力Fによる曲げ応力が作用する。ギヤポンプ2の駆動軸25に曲げ応力が作用すると、ギヤポンプの耐久性を低下させる等の問題が生じる。
このように、従来のギヤポンプ装置には曲げ応力を回避することと、装置の小型化を行うこととは両立しない。
したがって、これらの問題を同時に解決することが望まれている。
【特許文献1】特開2003−33960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ゴム押出用ギヤポンプ装置の駆動軸に曲げ応力が作用しない構造を採りつつ、ギヤポンプ装置を小型化することであり、また、このギヤポンプ装置を用いたゴム成形体の製造装置でゴム成形体(未加硫タイヤ)を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明はギヤポンプ装置であって、ギヤポンプと、ギヤポンプと並置されたギヤポンプの駆動装置と、前記駆動装置の出力軸から前記ギヤポンプの駆動軸に対して回転トルクを伝達するためのトルク伝達手段と、を備えたギヤポンプ装置であって、前記駆動軸と前記出力軸に対応させて設けた軸受を備えた軸支持部材を有し、前記軸支持部材の前記軸受で前記ギヤポンプの駆動軸と駆動装置の出力軸を支承することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載されたギヤポンプ装置において、前記トルク伝達手段は前記駆動軸及び出力軸に設けたスプロケット及び前記スプロケットに掛け渡したチェーンであることを特徴とする。
請求項3の発明はゴム成形体の製造装置であって、ゴム材料を投入するホッパーと、投入されたゴム材料を請求項1又は2に記載されたギヤポンプ装置のギヤポンプに給送するスクリュー手段と、ギヤポンプで圧送されたゴム材料を押出成形する口金と、を備え、口金で押出成形されたゴムストリップを給送すると共に、前記一方のローラで前記旋回支持体に貼り付けることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3に記載されたゴム成形体の製造装置において、前記ゴム成形体は未加硫ゴムタイヤであることを特徴とする。
請求項5の発明はゴム成形体の製造方法であって、ゴム材料をホッパーに投入する工程と、投入されたゴム材料を請求項1又は2に記載されたギヤポンプ装置のギヤポンプに給送する工程と、ギヤポンプで圧送されたゴムストリップを口金から押し出す工程と、口金から押し出されたゴムストリップを旋回支持体に貼り付ける工程と、を有することを特徴とする。
請求項6の発明はゴム成形体の製造方法であって、請求項5のゴム成形体の製造方法において、前記ゴム成形体は未加硫タイヤであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成の支持体を付加することによりギヤポンプ装置の構造としてコンパクトな構造を採りつつ、そのギヤポンプの駆動軸に作動時に曲げ応力が作用しないようにすることができる。
また、上記ギヤポンプ装置を用いてゴム成形体の製造装置を構成することによりその旋回スペースを小さくすることができ、設置の省スペース化ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。
本願発明の実施形態に係るゴム成形体の製造装置は、そのギヤポンプ装置以外は従来の装置、例えば前掲の図4に示したものと同様である。したがって、まずギヤポンプ装置以外の構成について図4を参照して説明する。
本実施形態に係るゴム成形体の製造装置は、ホッパー7から投入されたゴム材料を混練しながら給送するスクリュー1と、給送されたゴム材料を定量ずつ押し出すためのギアポンプ2と、押し出されるゴム材料の形状を定める口金3と、押し出されたゴム材料を圧延してゴムストリップに成形するとともにそのゴムストリップを旋回支持体8に貼付ける一対のローラ4,5とから成っている。
【0011】
一対のローラ4,5はそれぞれ、支持部材4a,5aを介して口金3に連結されており、またローラ4,5間を通ったゴムストリップは、ローラ5により弛みなく、旋回支持体8に貼り付けられる。
スクリュー1、ギアポンプ2、一対のローラ4,5、及び旋回支持体8を駆動制御するそれぞれの駆動手段は図示していないが、任意の駆動手段が使用できる。
【0012】
本実施形態に係るゴム成形体の製造装置において、スクリュー1と、ギヤポンプ2と、口金3と、一対のローラ4,5は、旋回支持体8の表面に沿ってゴムストリップを貼り付けることができるように、一体として移動手段9により回動可能に構成されている。
【0013】
移動手段9は、上記ゴム押出手段を旋回支持体8の軸方向aに移動可能な軸方向移動手段10と、ゴム押出手段をゴム材料の流路方向bに移動可能な流路方向移動手段11と、軸方向aと流路方向bとの双方に垂直で、一対のローラ4,5の一方のローラ5と旋回支持体8との接触部分を通る軸線cの回りで、上記ゴム押出手段を旋回させる旋回移動手段12とから成っている。
ここで、旋回移動手段12は、2本の支持部材12a,12dの一端がスクリュー1に連結されており、支持部材12a,12dの他端にそれぞれ取付けられた車輪12b,12eが、軸方向移動手段10にそれぞれ配設されたレール12c,12f上を転動するように構成されている。
【0014】
以上の構成において、ホッパー7から投入されたゴム材料は、スクリュー1で混練されながらギヤポンプ2に給送され、ギヤポンプ2により口金3でゴムストリップに成形されて押し出され、さらに、一対のローラ4,5間で所望の厚みに調整される。
上記ゴム成形体の製造装置は、既に述べたように旋回支持体8の軸方向及びそれに直角の方向に移動自在に構成されており、さらに、軸線cの回りで旋回しながら旋回支持体8の周りにゴムストリップを貼り付けてゴム成形体、ここでは未加硫タイヤを成形する。
なお、上記ゴム成形体の製造装置では、スクリュー1からギヤポンプ2及び口金3を介して隙間6までの、ゴムストリップの流路を直線状に形成されているが、本発明のギヤポンプを搭載するゴム成形体の製造装置は、これに限ることはなく、他の任意のゴム成形体の製造装置にも適用可能である。
【0015】
次に、以上で説明したゴム成形体の製造装置のギヤポンプ装置について説明する。
図1は、ギヤポンプとギヤポンプの駆動系とから成るギヤポンプ装置の実施形態の斜視図である。
ギヤポンプ装置は、ギヤポンプ2と、ギヤポンプ2の駆動軸25と駆動軸に軸止めされたスプロケット24と、ギヤポンプ2を駆動するモータ20と、モータ20の出力軸に直結した減速機21と、減速機21の出力軸22に軸止めされたスプロケット23と、スプロケット23と24に掛け止められたチェーン26とから成り、ここまでの構成は、図6に示す従来のチェーン伝動によるギヤポンプ装置と同じである。
本実施形態は、ギヤポンプ2の駆動軸25と減速機21の出力軸22間に、両端部近傍にそれぞれ例えばボール軸受等の軸受31,32を備えた構造物である軸支持部材30が、それぞれの軸受31,32で上記出力軸22及び駆動軸25を各スプロケット23,24の外側で支承するようにして取り付けられている。
【0016】
図2は、図1に示すギヤポンプ装置の側面図であり、図3は、同様に図1に示すギヤポンプ装置の分解斜視図である。
図示のように、ギヤポンプ2と駆動系を構成するモータ20とモータ20に直結した減速機21は、ギヤポンプ2の下方に配置されているため、ギヤポンプ装置を上記軸線cの回りで旋回させるときに要するスペースは、ギヤポンプ2の駆動軸25にモータ20などを直結した場合に比して格段に小さくなる。
【0017】
図3は、ギヤポンプ装置をギヤポンプ装置と軸支持部材30とに分解して示した分解斜視図である。
軸支持部材30は、例えば図示のように、所定の厚みを備えた例えば矩形の金属板で構成されており、その金属板の両端近傍には、ギヤポンプ2の駆動軸25と減速機21の出力軸22の軸間距離に相当する距離だけ隔ててそれぞれの軸受31,32が設けられている。
図3の矢印で示すように、一対のスプロケット23,24とチェーンとから成る駆動系を備えたギヤポンプ装置に対して、その外側から軸支持部材30を取り付ける。即ち、軸支持板30の一対の軸受31,32を、ギヤポンプ2の駆動軸25と減速機21の出力軸22とに嵌合させて取り付ける。
【0018】
このギヤポンプ装置においては、減速機21の出力軸22とギヤポンプ2の駆動軸25間に、金属製の軸支持部材30が介在されているので、減速機21の出力軸22の回転トルクがスプロケット23、チェーン26およびスプロケット24を介してギヤポンプ2の駆動軸25に伝達されるとき、チェーンの駆動力Fによる駆動軸25の曲げモーメントは、軸受を介して軸支持部材30で受け、軸支持部材30において駆動軸25に作用する曲げ応力と出力軸22に作用する曲げ応力とが相殺され、結果としてギヤポンプ2の駆動軸25には曲げ応力が作用することはない。
【0019】
このように、本実施形態によれば、従来の、例えばチェーン駆動形式のギヤポンプ装置の駆動側及び従動側の各軸に軸受31,32付きの軸支持部材30を取り付けるだけで、上記駆動軸25に作用する曲げ応力の問題を解消することができる。
これにより、ギヤポンプ装置において、従来困難であった省スペース性能と、ギヤポンプ2の駆動軸25に作用する曲げ応力を無くすることとを同時に達成することができる。
なお、ギヤポンプ2の駆動形式としてチェーン駆動のものについて説明したが、本発明は、これに限らず例えばベルト伝動によるものでもよく、要は、駆動側の軸と従動側の軸との間で回転トルクを伝達する機構であれば全て適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ギヤポンプとギヤポンプの駆動系とから成るギヤポンプ装置の実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示すギヤポンプ装置の側面図である。
【図3】図1に示すギヤポンプ装置の分解斜視図である。
【図4】未加硫タイヤの製造装置一例を示す斜視図である。
【図5】図5Aはギヤポンプの駆動軸にモータに直結した減速機の出力軸を直結したギヤポンプ装置の斜視図であり、5Bはモータの出力軸とギヤポンプの駆動軸を直結したギヤポンプの斜視図である。
【図6】従来のギヤポンプ装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1・・・スクリュー、2・・・ギヤポンプ、3・・・口金、4,5・・・ローラ、8・・・旋回支持体、10・・・軸方向移動手段、11・・・流路方向移動手段、12・・・旋回移動手段、12a、12d・・・支持部材、12b、12e・・・車輪、20・・・モータ、21・・・減速機、23,24・・・スプロケット、25・・・駆動軸、30・・・軸支持部材、31,32・・・軸受。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤポンプと、ギヤポンプと並置されたギヤポンプの駆動装置と、前記駆動装置の出力軸から前記ギヤポンプの駆動軸に対して回転トルクを伝達するためのトルク伝達手段と、を備えたギヤポンプ装置であって、
前記駆動軸と前記出力軸に対応させて設けた軸受を備えた軸支持部材を有し、
前記軸支持部材の前記軸受で前記ギヤポンプの駆動軸と駆動装置の出力軸を支承することを特徴とするギヤポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたギヤポンプ装置において、
前記トルク伝達手段は前記駆動軸及び出力軸に設けたスプロケット及び前記スプロケットに掛け渡したチェーンであることを特徴とするギヤポンプ装置。
【請求項3】
ゴム材料を投入するホッパーと、投入されたゴム材料を請求項1又は2に記載されたギヤポンプ装置のギヤポンプに給送するスクリュー手段と、ギヤポンプで圧送されたゴム材料を押出成形する口金と、を備え、
口金で押出成形されたゴムストリップを給送すると共に、前記一方のローラで前記旋回支持体に貼り付けることを特徴とするゴム成形体の製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたゴム成形体の製造装置において、
前記ゴム成形体は未加硫ゴムタイヤであることを特徴とするゴム成形体の製造装置。
【請求項5】
ゴム材料をホッパーに投入する工程と、
投入されたゴム材料を請求項1又は2に記載されたギヤポンプ装置のギヤポンプに給送する工程と、ギヤポンプで圧送されたゴムストリップを口金から押し出す工程と、口金から押し出されたゴムストリップを旋回支持体に貼り付ける工程と、を有することを特徴とするゴム成形体の製造方法。
【請求項6】
請求項5のゴム成形体の製造方法において、
前記ゴム成形体は未加硫タイヤであることを特徴とするゴム成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−106673(P2010−106673A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276703(P2008−276703)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】