説明

クッションクリップ

【課題】クッションクリップの大型化によらず、ストロークが長く、かつ、途中で折れ曲がることなく必要な反発力が得られるクッションクリップを提供する。
【解決手段】クッションクリップ10は衝撃を吸収するクッション部20と固定部材の取付孔に係止させるための係止部40とが一体化された構成とされている。そして、クッション部20は底部24と側壁部22とを備えた中空形状とされ、クッション部20の先端には中央に開口孔25が設けられており、クッション部20の外側壁26は高さ方向に直線状または滑らかな凸形状とされており、クッション部20の側壁部22の内側には、高さ方向の中間位置に、側壁部22がリング状にクッション部の内側に突き出したリブ30が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はクッションクリップに関する。具体的には固定部材と可動部材のいずれかに形成された取付孔に対して係止され、固定部材と可動部材の間に位置して、固定部材に可動部材が接近する際の衝撃を吸収するクッションクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクッションクリップには、衝撃を吸収するクッション部と固定部材または可動部材に形成された取付孔に係止させるための係止部とが一体化された構成とされているものがある。そして、この構成のクッションクリップでは、クッション部が軟質樹脂材により中空の略円筒形状に形成されており、固定部材に可動部材が接近すると、固定部材と可動部材の間でクッションクリップのクッション部が弾性変形により押し縮められて、衝撃を吸収する。
【0003】
先行技術として、特開2006−153083号公報(特許文献1)には、クッション部が中空とされクッション部の底部に凸部が形成されたクッションクリップが記載されている。また、特開2007−225093号公報(特許文献2)には、クッション部の側壁が蛇腹状とされクッション部の底部に突起が形成されたクッションクリップが記載されている。
【0004】
図9に特許文献1に記載されたクッションクリップとほぼ同一の構成のクッションクリップ101の一部断面による正面図を示す。クッションクリップ101は、衝撃を吸収するクッション部110と、クッション部110を固定部材に取付けるための係止部120とを備えており、クッション部110は弾性を有する軟質材で形成され、係止部120は所定の剛性を有する硬質材で形成されている。そして、クッション部110の側壁部112の外形は略円錐状とされており、クッション部110の内部には空洞部140が形成されており、空洞部140の側壁180はほぼ垂直とされている。そして、空洞部140には先端側に向けて開口する略円形の開口部160が設けられており、空洞部140の基底部には、先端側に向けて突出する凸部190が設けられている。
【0005】
ところで、特許文献1に記載されたクッションクリップ101は、自動車部品であるグラブボックスの蓋を閉じる時の衝撃を吸収するためのものである。そして、グラブボックスに用いられるクッションクリップは次の役割を担っている。
(1)走行時の車の揺れによりグラブドアが振動することを防ぐ。
(2)手や肘などでグラブドアを強く押した場合にもドアとボックスが直接当たることを防ぎ、異音の発生やグラブドアおよびグラブボックスの傷つきを防止する。
(3)グラブドアの建付けのばらつきやロック機構によるガタツキを吸収して、グラブドアの開閉ができる。
(4)グラブドアを開いた時にクッションクリップが見えても大きさ、形が不快でない。
【0006】
そこで、上述の各役割を果たすために、グラブボックスに用いられるクッションクリップは次の特性を有することが必要となる。
(1)グラブドアを閉じた状態では振動に耐えうる十分な反力がある。
(2)大荷重の入力時には大きな反力を出す。
(3)どの建付けでも必要な反力が得られるよう、圧縮量の変化による反力の変化が少ない。
(4)小型であり、かつ、いびつでない。
そして、この特性を満たせない場合は、グラブドアが振動して異音が発生する、あるいはグラブドアが閉まらない等の問題が発生する。
【0007】
そこで、この種のクッションクリップには、反力荷重と圧縮量の関係について、次の特性を有することが求められる。
(1)圧縮初期は、早期に必要な反力が得られるよう、圧縮量当たりの反力の増加が大きいこと。
(2)必要な反力が得られた後の圧縮中期は、圧縮量当たりの反力の増加量を抑えられること。
(3)大きな圧縮幅がとれた後の圧縮後期は、圧縮量当たりの反力増加量を大きくすること。
図10に、上述した反力荷重と圧縮量の関係を、理想荷重線として示す。図10のb点における反力荷重は最低反力荷重を示しており、車両の揺れによりグラブドアが振動して異音が発生するのを押さえることができる大きさを有する。そして、図10のe点における反力荷重は最高反力荷重を示しており、グラブドアのロックが解除できなくなり、開かなくなる大きさを有する。最高反力荷重を越えてクッションクリップの反力が大きくなると、グラブドアを開かないようにロックしているピンの摩擦が増えて、大きな力でグラブドアのドアノブを引っ張らないとグラブドアが開かなくなる。
このb点の最低反力荷重とe点の最高反力荷重の間が使用したい荷重の範囲であり、この間の圧縮量が大きいほど、ドアの建て付けのばらつきに対する対応幅が広くなる。なお、以下の説明では、最低反力荷重と最高反力荷重の間の圧縮量をクッションクリップのストロークと呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−153083号公報
【特許文献2】特開2007−225093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載のクッションクリップ101は、側壁部112および凸部190の圧縮により反力を得る仕組みであるため、反力は圧縮量の増加に伴いその積分値として増加する。そのため、圧縮量当たりの反力の増加が多く、圧縮中期の圧縮幅は理想荷重線の半分程度であって、ドアの建て付けのばらつきに対する対応幅が狭いという問題がある。そして、圧縮中期を越えてさらに圧縮しようとすると、クッション部の側壁が底部の凸部に干渉して圧縮荷重が高くなり、圧縮が困難となる。また、特許文献2に記載のクッションクリップも荷重曲線の圧縮中期の圧縮幅が理想荷重曲線の半分程度であり、圧縮中期における圧縮でクッション部の側壁の蛇腹同士が当たって粘着音が発生し、さらに圧縮量を大きくすると側壁が底部の支柱に干渉して圧縮荷重が高くなり、圧縮が困難となる。
【0010】
そこで、ストロークを確保するために、従来技術のクッションクリップの円筒状の側壁の長さを伸ばしてクッション部を縦長形状とすると、圧縮の途中でクッション部のバランスが崩れて、クッション部が途中でへの字に折れ曲がってしまう。そのため、最後まで縦方向に圧縮できず必要な反発力が得られないため、衝撃を吸収することができない。
そして、クッション部のバランスが崩れないようにするためには、クッション部の長さと共にクッション部の底部の直径も大きくしてクッションクリップ全体を大型化しなければならず、クッションクリップの搭載スペースを広く取ることが必要となる。しかし、クッションクリップの搭載スペースを広く取ることは設計の制約で困難な場合もある。また、クッションクリップを大型化すると見栄えも良くない。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、クッションクリップの大型化によらず、ストロークが長く、かつ、途中で折れ曲がることなく必要な反発力が得られるクッションクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明にかかるクッションクリップは次の手段をとる。
まず、本発明の第1の発明は、固定部材と可動部材のいずれかに形成された取付孔に対して係止され、固定部材と可動部材の間に位置して、固定部材に接近してくる可動部材の動きを受け止めて衝撃を吸収するクッションクリップであって、
衝撃を吸収するクッション部と前記取付孔に係止させるための係止部とが一体化された構成とされており、
前記クッション部は底部と側壁部とを備えた中空形状とされ、該クッション部の先端には中央に開口孔が設けられており、該クッション部の側壁部の外側壁は高さ方向に直線状または滑らかな凸形状とされており、
前記クッション部の側壁部の内側には、高さ方向の中間位置の一箇所以上に、高さ方向に一定の幅を有する厚肉部が形成されているクッションクリップである。
【0013】
この第1の発明によれば、クッションクリップのクッション部の側壁部の内側には、高さ方向の中間位置の一箇所以上に、高さ方向に一定の幅を有する厚肉部が形成されているので、側壁部の折れに対する強度が高められている。そのため、クッション部の底部の直径を拡大せずにクッション部を縦長の形状としてストロークを長くしても、側壁部の内側に形成された厚肉部のために、クッション部は安定して撓むことができる。そして、クッション部が圧縮の途中でバランスを崩して折れ曲がってしまうことがなく、必要な反発力が得られる。
よって、クッションクリップの大型化によらず、ストロークが長く、かつ、途中で折れ曲がることなく必要な反発力が得られるクッションクリップを提供することができる。また、クッション部の側壁部の外側壁は高さ方向に直線状または滑らかな凸形状(直線もしくは凸状の円弧が滑らかに接続した形状)とされているので、クッション部の見栄えがよい。
【0014】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るクッションクリップであって、
前記厚肉部は側壁部の内側に高さを一定にして形成された、周方向に並ぶ突起、又は、リング状のリブ、又は、側壁部の内側の空間を上下に隔てる隔壁であることを特徴とする。
この第2の発明によれば、側壁部の内側に高さを一定にして形成された、周方向に並ぶ突起、又は、リング状のリブ、又は、側壁部の内側の空間を上下に隔てる隔壁により、側壁部の折れに対する強度が高められている。そして、厚肉部が高さ一定に形成されているため、クッション部は安定して鏡餅のように2段または数段に撓むことができる。
【0015】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明に係るクッションクリップであって、
前記厚肉部は側壁部の内側にらせん状に並べて形成された突起、又はらせん状に形成されたリブであることを特徴とする。
この第3の発明によれば、側壁部の内側にらせん状に並べて形成された突起、又はらせん状に形成されたリブにより、側壁部の折れに対する強度が高められている。そして、厚肉部がらせん状に形成されているため、クッション部はらせん状の厚肉部の上下の相対的に薄肉となる部分が外側に張り出して、提灯を畳むように安定して撓むことができる。
【0016】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明〜第3の発明のいずれかの発明に係るクッションクリップであって、
前記クッション部は軟質の樹脂材で形成され、前記係止部は硬質の樹脂材で形成され、該クッション部と該係止部が一体化されていることを特徴とする。
この第4の発明によれば、クッション部は軟質の樹脂材で形成されているため、衝撃を吸収して弾性変形するのに適しており、係止部は硬質の樹脂材で形成されているため、取付孔への係止が安定する。
【発明の効果】
【0017】
上述の本発明の各発明によれば、次の効果が得られる。
まず、上述の第1の発明によれば、クッション部の側壁部の内側に形成された厚肉部により、側壁部の折れに対する強度が高められている。そのため、クッション部の底部の直径を拡大せずにクッション部を縦長の形状としてストロークを長くしても、クッション部は安定して撓むことができる。よって、クッションクリップの大型化によらず、ストロークが長く、かつ、途中で折れ曲がることなく必要な反発力が得られるクッションクリップを提供することができる。また、クッション部の外側壁は高さ方向に直線状または滑らかな凸形状とされているで、クッション部の見栄えがよい。
次に、上述の第2に発明によれば、側壁部の内側に高さを一定にして形成された、周方向に並ぶ突起、又は、リング状のリブ、又は、側壁部の内側の空間を上下に隔てる隔壁により、側壁部の折れに対する強度が高められている。そして、厚肉部が高さ一定に形成されているため、クッション部は安定して鏡餅のように2段または数段に撓むことができる。
次に、上述の第3に発明によれば、側壁部の内側にらせん状に並べて形成された突起、又はらせん状に形成されたリブにより、側壁部の折れに対する強度が高められている。そして、厚肉部がらせん状に形成されているため、クッション部はらせん状の厚肉部の上下の相対的に薄肉となる部分が外側に張り出して、提灯を畳むような状態で安定して撓むことができる。
次に、上述の第4の発明によれば、クッション部は軟質の樹脂材で形成されているため、衝撃を吸収して弾性変形するのに適しており、係止部は硬質の樹脂材で形成されているため、取付孔への係止が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1におけるクッションクリップの外観斜視図である。
【図2】実施例1におけるクッションクリップの縦断面図である。
【図3】実施例1においてクッション部が変形した状態を表した縦断面図である。
【図4】実施例2におけるクッションクリップの縦断面図である。
【図5】実施例3におけるクッションクリップの縦断面図である。
【図6】実施例3の変形例におけるクッションクリップの縦断面図である。
【図7】実施例4におけるクッションクリップの縦断面図である。
【図8】実施例5におけるクッションクリップの縦断面図である。
【図9】従来技術によるクッションクリップの一部断面による正面図である。
【図10】ストローク量の大きいクッションクリップの理想荷重線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0020】
図1に本発明の実施例1におけるクッションクリップ10の外観斜視図を示す。クッションクリップ10は、自動車のグラブボックスのボックス本体50(図3参照)に形成された取付孔52(図3参照)に係止されて、グラブボックスのボックス本体50とドア54(図3参照)の間に位置して、ドア54を閉めた時の衝撃を吸収するクッションクリップである。そして、衝撃を吸収するクッション部20と取付孔52に係止させる係止部40が一体化された構成とされている。ボックス本体50が本発明の固定部材に相当し、ドア54が本発明の可動部材に相当する。
【0021】
図2にクッションクリップ10の縦断面図を示す。クッションクリップ10のクッション部20は、図2に示すとおり、底部24と側壁部22とを備えた中空形状とされ、側壁部22の内側は中空部34とされている。そして、側壁部22は上方に向かって縮径する円錐形状とされ、クッション部20の先端の中央には円形の開口孔25が設けられており、クッション部20の側壁部22の外側壁26は高さ方向に直線状とされている。
そして、図1及び図2に示すとおり、側壁部22には、底部24に近い箇所において内外に通じるエア抜き孔23が形成されている。なお、エア抜き孔23は、クッション部20の変形特性に影響を与えない構成とされている。
そして、側壁部22の内側には、クッション部20の高さ方向の中間位置において側壁部22がリング状に内側に突き出した態様のリブ30が形成されている。このリブ30が本発明の厚肉部に相当する。そして、リブ30の高さ及び高さ方向の幅は一定とされており、リブ30により側壁部22の内側の中空部34がくびれた状態となっている。
そして、クッションクリップ10の係止部40は、図2に示すように、クッション部20の底部24に埋め込まれた円板形状の基部42と、下方に突出しボックス本体50(図3参照)に形成された取付孔52(図3参照)に挿入される係止脚44とを備えている。
そして、クッション部20はエラストマで形成され、係止部40はポリプロピレンで形成されて、クッション部20と係止部40が2色成形により一体化された構成とされている。
【0022】
図3に、グラブボックスのドア54が閉められる途中で、ボックス本体50に取付けられたクッションクリップ10のクッション部20が変形した状態の縦断面図を示す。クッションクリップ10は、クッション部20の側壁部22の内側に高さを一定にして形成されたリブ30により、側壁部22の折れに対する強度が高められている。そこで、クッション部20の底部24の直径を拡大せずクッション部20を縦長の形状としてストロークを長くしても、リブ30が高さ一定に形成されているので、図3に示すとおり、クッション部20は安定して鏡餅のように2段に撓むことができる。そのため、クッション部20が圧縮の途中でバランスを崩して折れ曲がってしまうことがなく、必要な反発力を得ることができる。
【0023】
よって、実施例1のクッションクリップ10によれば、クッションクリップの大型化によらず、ストロークが長く、かつ、途中で折れ曲がることの無いクッションクリップを提供することができる。そして、クッション部20の側壁部22の外側壁26は高さ方向に直線状とされているため、ドア54を開けた状態でクッション部20の見栄えがよい。
【0024】
そして、実施例1によれば、クッション部20はエラストマにより形成されているため軟質で、衝撃を吸収して弾性変形するのに適しており、係止部40はポリプロピレンで形成されているため剛性が高く、ボックス本体50の取付孔52への係止が安定する。そして、クッション部20は先端の開口孔25から底部24まで中空形状が連続しているので成形が容易である。そして、クッション部20と係止部40は2色成形により一体化されているので、クッション部20と係止部40の結合が強固であって一体化の構造が安定しており、取り扱いが容易である。
【0025】
そして、実施例1によれば、クッション部20の高さと底部の直径の比が約1.2とされている。ここで、従来技術では、クッション部の高さと底部の直径の比が1.0以上になると、クッション部が圧縮の途中でバランスを崩して折れ曲がってしまうことがあった。しかし、実施例1ではクッション部20の側壁部22の折れに対する強度が高められているので、クッション部20の高さと底部24の直径の比が1.0以上となるように縦長の形状とすることができる。そして、縦長の形状としてもクッション部20が圧縮の途中でバランスを崩して折れ曲がってしまうことがなく、必要な反発力を得ることができ、ストロークを確保できる。
【実施例2】
【0026】
図4に本発明の実施例2におけるクッションクリップ10Aの縦断面図を示す。クッションクリップ10Aと実施例1のクッションクリップ10との差異は、クッション部の形状の違いにある。
クッションクリップ10Aのクッション部20Aは、底部24Aと側壁部22Aとを備えた中空形状とされ、側壁部22Aの内側は中空部34Aとされている。そして、側壁部22Aの直径が高さ方向にほぼ一定で側壁部22Aの外側壁26Aは円筒状とされており、クッション部20Aの先端には中央に円形の開口孔25Aが設けられた頂部31Aが形成されている。そして、底部24Aには中央に成形時の型抜き用の円形の底孔36Aが形成されている。そして、側壁部22Aの高さ方向の中間位置に、側壁部22Aの内側の中空部34Aを上下に隔てる隔壁32Aが形成されている。この隔壁32Aが本発明の厚肉部に相当する。そして、隔壁32Aの高さ及び厚さは一定とされている。そして、隔壁32Aにより分断された中空部34A、34Aにそれぞれに対応して、側壁部22Aにエア抜き孔23A、23Aが形成されている。なお、エア抜き孔23Aは、クッション部20Aの変形特性に影響を与えない構成とされている。
そして、クッション部20Aはエラストマで、係止部40はポリプロピレンでそれぞれ別体として成形され、係止部40の基部42をクッション部20Aの底部24Aに埋め込むことにより、クッション部20Aと係止部40が一体化されている。
【0027】
実施例2によれば、高さを一定にして形成された隔壁32Aにより側壁部22Aの折れに対する強度が高められている。そのため、クッション部20Aの底部24Aの直径を拡大せずにクッション部20を縦長の形状としてストロークを長くしても、クッション部20Aは安定して鏡餅のように2段に撓むことができる。そのため、クッション部20Aが圧縮の途中でバランスを崩して折れ曲がってしまうことがなく、必要な反発力を得ることができる。
【実施例3】
【0028】
図5により本発明の実施例3におけるクッションクリップ10Bの縦断面図を示す。クッションクリップ10Bのクッション部20Bは、底部24Bと側壁部22Bとを備えた中空形状とされ、側壁部22Bの内側は中空部34Bとされている。そして、クッション部20Bの側壁部22Bの高さ方向の中間位置に、側壁部22Bの内側に突き出した態様で側壁部22Bの周方向に高さを一定にして矩形の突起35Bが並んで形成されている。この突起35Bが本発明の厚肉部に相当する。そして、側壁部22Bの外側壁26Bは、下部が円筒状とされ上部がドーム状とされ、下部と上部が滑らかに接続されている。そして、クッション部20Bの先端には中央に開口孔25Bを有する頂部31Bが形成されている。
そして、側壁部22Bには、底部24Bに近い箇所において内外に通じるエア抜き孔23Bが形成されている。なお、エア抜き孔23Bは、クッション部20Bの変形特性に影響を与えない構成とされている。
そして、クッション部20Bはエラストマで、係止部40はポリプロピレンでそれぞれ別体として成形され、クッション部20Bと係止部40が2色成形により一体化された構成とされている。
そして、クッションクリップ10Bのクッション部20Bは、高さを一定にして形成された突起35Bにより、側壁部22Bの折れに対する強度が高められているので、側壁部22Bが2段に撓んで圧縮される。そのため、クッション部20Bが圧縮の途中でバランスを崩して折れ曲がってしまうことがなく、必要な反発力を得ることができる。そして、側壁部22Bの外側壁26Bが高さ方向に直線から凸状の円弧に滑らかに接続する構成とされているので、クッション部20Bの見栄えがよい。
【0029】
図6に、実施例3の変形例におけるクッションクリップ10Cの縦断面図を示す。クッションクリップ10Cのクッションクリップ10Bとの差異は、クッション部20Cの側壁部22Cの高さ方向の中間位置に形成される厚肉部が側壁部22Cの周方向に並んだイボ状の突起35Cとされている点にある。クッションクリップ10Cの他の構成はクッションクリップ10Bと同様であるので詳細な説明は省略する。
このクッションクリップ10Cによれば、クッションクリップ10Bと同様の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0030】
上述の実施例1〜実施例3及び実施例3の変形例では側壁部の中間位置の一箇所に厚肉部を形成しているが、厚肉部は側壁部の高さ方向の中間位置の2箇所以上に形成しても良い。
図7に本発明の実施例4におけるクッションクリップ10Dの縦断面図を示す。クッションクリップ10Dのクッション部20Dは、底部24Dと側壁部22Dとを備えた中空形状とされ、側壁部22Dの内側は中空部34Dとされている。そして、クッション部20Dの側壁部22Dの高さ方向の中間位置に高さを一定にしてリブ30Dと隔壁32Dが形成されている。そして、側壁部22Dの外側壁26Dは、下部が円筒状とされ上部がドーム状とされている。そして、クッション部20Dの先端には中央に開口孔25Dを有する頂部31Dが形成されている。そして、隔壁32Dにより分断された中空部34D、34Dにそれぞれに対応して、側壁部22Dにエア抜き孔23D、23Dが形成されている。なお、エア抜き孔23Dは、クッション部20Dの変形特性に影響を与えない構成とされている。そして、底部24Dには中央に成形時の型抜き用の円形の底孔36Dが形成されている。
そして、クッション部20Dはエラストマで、係止部40はポリプロピレンでそれぞれ別体として成形され、係止部40の基部42をクッション部20Dの底部24Dに埋め込むことにより、クッション部20Dと係止部40が一体化されている。
そして、クッションクリップ10Dのクッション部20Dは、高さを一定にして形成されたリブ30Dと隔壁32Dにより、高さ方向の2箇所で側壁部22Dの折れに対する強度が高められているので、側壁部22Dが3段に撓んで圧縮される。そのため、クッション部20Dが圧縮の途中でバランスを崩して折れ曲がってしまうことがなく、必要な反発力を得ることができる。そして、側壁部22Dの外側壁26Dが高さ方向に直線と凸状の円弧が滑らかに接続した形状とされているので、クッション部20Dの見栄えがよい。
【実施例5】
【0031】
図8に本発明の実施例5におけるクッションクリップ10Eの縦断面図を示す。クッションクリップ10Eのクッション部20Eは、底部24Eと側壁部22Eとを備えた中空形状とされ、側壁部22Eの内側は中空部34Eとされている。そして、クッション部20Eの側壁部22Eの高さ方向の中間位置に、側壁部22Eの内側に突き出した態様でらせん状のリブ30Eが形成されている。このリブ30Eが本発明の厚肉部に相当する。なお、図8には、図示した部分の紙面の手前側に形成されているリブ30Eを想像線で示している。そして、側壁部22Eの外側壁26Eは、下部が円筒状とされ上部がドーム状とされ、下部と上部が滑らかに接続されている。そして、クッション部20Eの先端には中央に開口孔25Eを有する頂部31Eが形成されている。
側壁部22Eには、底部24Eに近い箇所において内外に通じるエア抜き孔23Eが形成されている。なお、エア抜き孔23Eは、クッション部20Eの変形特性に影響を与えない構成とされている。
そして、クッション部20Eはエラストマで、係止部40はポリプロピレンで成形されて、クッション部20Eと係止部40が2色成形により一体化された構成とされている。
そして、クッションクリップ10Eのクッション部20Eは、リブ30Eにより、側壁部22Eの折れに対する強度が高められている。そして、リブ30Eがらせん状に形成されているため、クッション部20Eはらせん状のリブ30Eの上下の相対的に薄肉となる部分が外側に張り出して、提灯を畳むように安定して撓むことができる。そのため、クッション部20Eが圧縮の途中でバランスを崩して折れ曲がってしまうことがなく、必要な反発力を得ることができる。そして、側壁部22Eの外側壁26Eが高さ方向に直線から凸状の円弧に滑らかに接続する構成とされているので、クッション部20Eの見栄えがよい。なお、実施例5では、厚肉部をらせん状のリブ30Eとする構成としたが、厚肉部をらせん状に並んだ突起としても、実施例5と同様の効果を得ることができる。
【0032】
上述の各実施例では、クッション部をエラストマで形成し、係止部をポリプロピレンで形成し、2色成形によりクッション部と係止部を一体化し、又は、別体で形成したクッション部に係止部を埋め込んで一体化した。しかし、本発明に係るクッションクリップの材質及びクッション部と係止部の一体化方法はこれに限定されない。
クッション部をゴムや軟質の樹脂材で形成し、係止部を硬質の樹脂材、例えばポリアセタールで形成して、多色成形あるいはインサート成形によりクッション部と係止部を一体化しても良い。
そして、クッション部と係止部をゴムまたはエラストマにより一色成形によって形成しても良い。一色成形とすれば、製造工程が単純化され、金型等のコストの低減を図ることができる。
【0033】
その他、本発明に係るクッションクリップはその発明の思想の範囲で、各種の形態で実施できるものである。
【符号の説明】
【0034】
10、10A、10B、10C、10D、10E クッションクリップ
20、20A、20B、20C、20D、20E クッション部
22、22A、22B、22C、22D、22E 側壁部
23、23A、23B、23C、23D、23E エア抜き孔
24、24A、24B、24C、24D、24E 底部
25、25A、25B、25C、25D、25E 開口孔
26、26A、26B、26C、26D、26E 外側壁
30、30D、30E リブ(厚肉部)
31A、31B、31C、31D、31E 頂部
32A、32D 隔壁(厚肉部)
34、34A、34B、34C、34D、34E 中空部
35B、35C 突起(厚肉部)
36A、36D 底孔
40 係止部
42 基部
44 係止脚
50 ボックス本体(固定部材)
52 取付孔
54 ドア(可動部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と可動部材のいずれかに形成された取付孔に対して係止され、固定部材と可動部材の間に位置して、固定部材に接近してくる可動部材の動きを受け止めて衝撃を吸収するクッションクリップであって、
衝撃を吸収するクッション部と前記取付孔に係止させるための係止部が一体化された構成とされており、
前記クッション部は底部と側壁部とを備えた中空形状とされ、該クッション部の先端には中央に開口孔が設けられており、該クッション部の側壁部の外側壁は高さ方向に直線状または滑らかな凸形状とされており、
前記クッション部の側壁部の内側には、高さ方向の中間位置の一箇所以上に、高さ方向に一定の幅を有する厚肉部が形成されているクッションクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のクッションクリップであって、
前記厚肉部は側壁部の内側に高さを一定にして形成された、周方向に並ぶ突起、又は、リング状のリブ、又は、側壁部の内側の空間を上下に隔てる隔壁であることを特徴とするクッションクリップ。
【請求項3】
請求項1に記載のクッションクリップであって、
前記厚肉部は側壁部の内側にらせん状に並べて形成された突起、又はらせん状に形成されたリブであることを特徴とするクッションクリップ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のクッションクリップであって、
前記クッション部は軟質の樹脂材で形成され、前記係止部は硬質の樹脂材で形成され、該クッション部と該係止部が一体化されていることを特徴とするクッションクリップ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate