説明

クッション材

【課題】 体圧分散性に優れ、かつ、せん断力に対して良好な特性を有するクッション材を提供する。
【解決手段】 クッション材は、活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と、有機ポリイソシアネート(B)と、発泡剤(C)とを必須成分として成り、かつ、密度が80kg/m以上、700kg/m以下であり、ずれ力が25N以上、65N以下である。この活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)は、平均官能基数が2〜8であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量が40〜90モル%であり、かつ、水酸基価が5mgKOH/g〜110mgKOH/gであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具、自動車シート、椅子、座布団等のクッション材に関し、特に、体圧分散性が要求されるクッション材、例えば、褥瘡予防に適したクッション材等に関する。
【背景技術】
【0002】
寝具、自動車シート、座布団等に使用されるクッション材は、一般的に、エアークッション(例えば、特許文献1参照)、ウレタン発泡体クッション、ゲルクッションに大別される。エアークッションは、体圧分散性には優れているが形態変動の自由度が大きくて体位保持性に乏しく、ゲルクッションは、感触が冷たくて重たいという欠点がある。これに対し、ウレタン発泡体クッションはバランスがとれており、これまでのところ主流であった。
【0003】
しかしながら、老齢化社会を迎え、歩行が困難な車椅子生活の人の数が増加しつつある。また、長時間の座位姿勢、仰臥姿勢等が強いられることがあり、この場合には褥瘡が発症しやすい状況となっている。従って、クッション材に対しては、褥瘡等が発症しにくいなどの優れたクッション性能が要求されるようになってきた。
【0004】
褥瘡の外的要因の1つは体圧(圧縮力)であるが、これ以外にも「ずれ力」が重要な要因のひとつになっている。ここで「ずれ力」とは、体圧などのようにクッション材に垂直にかかる力に対して、水平方向に働く力である。例えば、姿勢が悪くて正常な座位姿勢を保持できない人や、自分自身で体位の変換ができない人等の中には、長時間の座位姿勢等を保持する間にせん断力が働くようになる。このせん断力は「ずれ力」の一種である。
【0005】
従来のウレタン発泡体クッション材は、せん断力に対して望ましくないものであるという欠点があった。一方、ゲルクッション材は、上述したように、感触が冷たく、重たい、取り扱いにくい等の問題はあるが、ずれ力に対しては優れたものであることが分かっている。そこで、ウレタン発泡体にゲルクッション材の長所を加味したクッション材の実現について研究が行われてきた。
【0006】
【特許文献1】特開2003−275065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題は、せん断力に対して良好な特性を有するクッション材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意、実験、検討を重ねたところ、圧縮反発力、体圧分散に加え、臀部とマット間のズレによってせん断方向にマットに加わる力を計測し、せん断力に対して良好な特性を有するクッション材の実現を図ることができた。
【0009】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明のクッション材は、活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と、有機ポリイソシアネート(B)と、発泡剤(C)とを必須成分として成り、かつ、密度が80kg/m以上、700kg/m以下であり、ずれ力が25N以上、65N以下であることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)は、平均官能基数が2以上、8以下であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量が40モル%以上、90モル%以下であり、かつ、水酸基価が5mgKOH/g以上、110mgKOH/g以下であることができる。
【0011】
本発明において、前記有機ポリイソシアネート(B)は、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、及び、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートからなる群のうち少なくとも1つであるか、あるいは、ポリイソシアネートプレポリマーであることができる。
【0012】
ここで、前記ポリイソシアネートプレポリマーは、ポリイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート及び/又はメチレンジフェニルジイソシアネートを主成分とし、ポリオールとして、ポリエーテルポリオールの平均官能基数が2以上、8以下であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量が40モル%以上、90モル%以下、かつ、水酸基価が5mgKOH/g以上、110mgKOH/g以下であるポリオールを重合させてなることができる。
【0013】
本発明においては、前記ポリイソシアネートプレポリマーと、前記活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)とを、予め加熱処理した後、水を加えて発泡させることが好ましい。
また、本発明においては、さらに可塑剤を配合することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、体圧分散性に優れ、かつ、せん断力に対して良好な特性を有するクッション材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のクッション材は、活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と、有機ポリイソシアネート(B)と、発泡剤(C)とを用いて成る。ただしクッション材の密度は80kg/m以上、700kg/m以下であり、ずれ力は25N以上、65N以下であることが必要である。クッション材のずれ力が25N未満であると、フワフワしすぎて安全な姿勢の保持が困難となり、65Nより大きいと、体移動の際に大きな力が働き、褥瘡等の炎症を発症しやすくなる。
【0016】
クッション材のずれ力は、例えば、図1に示す装置を用いて、変位と応力を読み取り、変位−応力図を作成して求めることができる。図1は、ずれ力を測定するために用いられる装置の一例を示す説明図である。図1において、ずれ力を測定するための試験用サンプル1は、平行移動台8の上に載置される。この試験用サンプル1の上には、臀部モデル2が置かれて、そのネジ止め面4の上に、荷重付加用台3がセットされる。ただし、臀部モデルのネジ止め面4が水平になるように、角度が調整される。荷重付加用台3の上には、必要に応じて適当な荷重がかかるように重り5が置かれる。この状態で、平行移動台8に取付けられた引張り用ワイヤ6を万能試験機7を用いて引っ張れば、試験用サンプルの下固定面を移動させてせん断力を与えることができる。この時の変位と応力を測定し、横軸を変位、縦軸を応力として測定値をプロットすれば、変位−応力図を作成することができる。このようにして作成される変位−応力図の一例を図3に示す。
例えば、ずれ力(25%)を求めるためには、変位5mm以下はバラツキがあり、30mmより大きいとスリップする可能性があるため、5mm〜30mmの間のデータからずれ力を求めることが好ましい。なお、変位が30mmでスケールオーバーする場合には、5mm以上、30mm未満の間の直線部分(例えば、5mm近傍での直線部分)から傾きを求めて、この値を用いてずれ力を求める。
ずれ力(25%)を求めるために用いられる数式におけるサンプル厚み(t)は、せん断力を与える前のサンプルの厚みであり、試験用サンプルに荷重をかけた後、厚みがほぼ一定になった時の試験用サンプルの厚みである。例えば図2に示すように、臀部モデル2の底面と試験用サンプル1の下面との間の距離(t)で示される。
【0017】
本発明に用いられる活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)とは、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類を開始剤とし、これにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのアルキレンオキサイドを付加重合反応により共重合させて得られたものである。このようにして得られた共重合体の構成は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても良い。また、このポリオール中に、他のポリオキシアルキレンを共重合させたものでも良く、例えば、ポリオキシテトラメチレン骨格を有するものを共重合させたものでも良い。但し、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基の割合は、全分子量の80〜90%を占めることが好ましい。
【0018】
上記した活性水素成分ポリエーテルポリオールは、1種類のみを使用しても良いが、2種類以上を併用しても良い。活性水素成分ポリエーテルポリオールは、分子量が500〜3,000のものが好適に用いられる。
【0019】
本発明においては、上記した活性水素成分ポリエーテルポリオールの他に、さらに、他のポリオール、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール等のポリオールを、その一部として使用することができる。
【0020】
本発明に用いられる活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)は、平均官能基数が2以上、8以下であることが好ましい。平均官能基数が2未満では、非常に柔らかくなりすぎる傾向にあり、8より大きいと非常に脆く、硬くなる傾向にある。
また、活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量が40〜90モル%であり、かつ、水酸基価が5〜110mgKOH/gであることが好ましい。エチレン単位の含有量が40〜90モル%であれば、発泡剤としての水とのなじみが良くなり、整泡された柔軟な発泡体となる傾向にあり、水酸基価が5〜110mgKOH/gであれば、有機ポリイソシアネート(B)との相溶性がよく、ソフトセグメント部の比率が高まるので、柔軟な発泡体となる傾向にある。なお、活性水素成分ポリエーテルポリオールのエチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)の割合が、EO側に偏っていれば、発泡がスムーズに行われやすく、安定した発泡につながり、結果として、ずれ力に対する特性はゲルに近いものとなると考えられる。
【0021】
活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と反応させる有機ポリイソシアネート(B)としては、従来からポリウレタンフォームの形成において慣用的に使用されているポリイソシアネート等を用いることができる。例えば、芳香族ポリイソシアネート、及び、これらのイソシアネートの粗製品、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。芳香族ポリイソシアネート等の具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等が挙げられ、脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられ、脂環式ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。これらのポリイソシアネートは、単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0022】
これらのポリイソシアネートの中では、特に、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートを用いることが好ましい。
【0023】
本発明においては、有機ポリイソシアネート(B)として、ポリイソシアネートプレポリマーを使用することもできる。
ポリイソシアネートプレポリマーは、ポリイソシアネートとしてTDI及び/又はMDIを主成分として使用し、ポリオールとして、ポリエーテルポリオールの平均官能基数が2〜8であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量が40〜90モル%、かつ、水酸基価が5〜110mgKOH/gであるポリオールを主成分として使用し、重合させてなるプレポリマーである。
有機ポリイソシアネートとしては、環境衛生上の観点からイソシアネート蒸気圧の低いポリイソシアネートプレポリマーを使用することが好ましい。ポリイソシアネートプレポリマーを作製する場合のポリオールとポリイソシアネートとの配合割合は、イソシアネートインデックスR(R=ポリオール/ポリイソシアネート)が2〜10の範囲で行うことが好ましい。
【0024】
ポリイソシアネートプレポリマーの合成には、さらに鎖延長剤を配合することができる。使用される鎖延長剤としては、従来公知の材料を用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオール類、エチレンジアミン、トリレンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン類などを挙げることができる。
【0025】
本発明に用いられる発泡剤としては、水、トリクロロモノフルオロメタン、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、ペンタンやヘキサンなどの低級炭化水素、液化炭酸ガスなどが挙げられる。これらのうち、環境問題や安全面から、水を用いることが好ましい。
【0026】
本発明においては、活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)、有機ポリイソシアネート(B)、及び、発泡剤(C)がクッション材の必須成分である。
本発明において、活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と、有機ポリイソシアネート(B)との配合割合は、イソシアネートインデックスRが0.4〜1.2程度であることが好ましい。イソシアネートインデックスが0.4未満では、ポリオールがブルーミングを起こし、柔らかくなりすぎたり、さらには固まらない等の問題が発生することがある。また、イソシアネートインデックスが1.2より大きいと、後硬化によって水分と反応し、硬くなりすぎることがある。
【0027】
発泡剤として水を用いることが好ましいが、この際の水の使用量は、活性水素成分ポリエーテルポリオール100質量部に対して2〜8質量部であることが好ましく、3〜6質量部であることがさらに好ましい。水の使用量が2質量部未満では、満足のいく発泡状態を実現することが困難であり、一方、8質量部を超えると、発泡しすぎて均一な空孔が形成されなかったり、あるいは、形成された成形体に収縮が生じる等の問題が発生することがある。
【0028】
クッション材の製造方法としては、まず、ポリエーテルポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、発泡剤として水(C)とを混合し、所定の型に入れる。次いで、これを加温するか、あるいは、室温下で放置することにより目的物であるウレタン発泡クッション材を得ることができる。加温すれば硬化時間は短縮できるが、その反面、硬化収縮を起こすおそれがあるので注意が必要である。好ましい発泡状態を実現するためには、適度な粘度で発泡させることが好ましい。そのためには、予めポリエーテルポリオール(A)と有機ポリイソシアネート(B)とを混合し加熱して、ある程度まで反応させて粘度調節をしておき、その後で水(C)を加えることを推奨する。
【0029】
発泡した後のクッション材の密度は、80kg/m〜700kg/mであることが必要であり、80kg/m〜600kg/mであることが好ましい。クッション材の密度は、イソシアネートの量、水の量、温度、配合液の粘度等によって調節される。クッション材の密度が80kg/m未満では、荷重がかかった際に底着き現象が生じ、一方、700kg/mを超えると、感触が冷たかったり、重たいという印象を与える。
【0030】
本発明においては、必要により、上記必須成分の他に、さらに可塑剤を配合することができる。用いられる可塑剤としては、グリコールジエーテル類、炭酸プロピレン、その他芳香族系炭化水素類などが挙げられる。
本発明に用いられるグリコールジエーテル類としては、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等を挙げることができる。可塑剤の含有量は、クッション材を形成する材料の合計質量中(ゲル組成中)、5〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることが更に好ましい。可塑剤の含有量が5質量%未満では可塑化効果に乏しくなることがあり、一方、30質量%を超える場合には発泡体が柔らかくなりすぎて形状を保持することができないことがある。
【0031】
本発明においては、上記以外にも、さらに、触媒、整泡剤、難燃剤、老化防止剤等を、適宜、配合することができる。
活性水素成分ポリエーテルポリオールと有機ポリイソシアネートとを反応させるウレタン化触媒としては、ウレタン化反応を促進することができる触媒であれば特に限定されることなく使用することができる。例えば、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N',N'−テトラメチルヘキサメチレンジアミン等の3級アミン類;酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等のカルボン酸金属塩;スタナスオクトエート、ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0032】
本発明に用いられる整泡剤としては、ジメチルシロキサン系整泡剤、ポリエーテル変性ジメチルシロキサン系整泡剤等のシリコーン整泡剤が挙げられる。
難燃剤としては、リン酸エステル類、ハロゲン化リン酸エステル類等が挙げられる。
【0033】
本発明のクッション材は、衛生面を考慮すると、表面を柔軟なフィルム等によって被覆することが好ましい。本発明に好ましく用いられる柔軟なフィルムとしては、ポリウレタンフィルム等が挙げられ、厚みが20〜70μmのポリウレタンフィルムが適当なものとして挙げられる。なお、被覆方法としては、従来公知の方法を、適宜、採用することができる。
【0034】
本発明のクッション材は、寝具、自動車シート、椅子、座布団等のクッション材として好適に用いることができる。特に、車椅子の座部に取付けて使用されるクッション材、車椅子用の座布団、医療用ベッド等のクッション材として好適に使用される。本発明のクッション材を用いれば、体圧分散が良く、ずれ応力に対して緩和効果があるので、座位保持性に優れ、車椅子等により長時間座位姿勢が強いられる状況でも、褥瘡予防に効果がある。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、以下の実施例において、「%」とあるのは「重量%」を意味するものとする。また、実施例において使用された測定方法及び評価方法を下記に示す。
【0036】
<測定方法及び評価方法>
(1)密度(単位:kg/m
クッション材を切り出し、その重量は電子天秤を用いて測定し、寸法はノギスを用いて測定し、これから密度を算出した。
【0037】
(2)圧縮モジュラス(単位:N/314cm
万能試験機「Autograph AGS-100」を用い、200mmφの円盤を10mm/minの速度で圧縮させた。初期厚の25%まで圧縮した時の荷重値(N/314cm)を圧縮モジュラス値とした。ただし、試験用サンプルとしては、クッション材を約40cm×約40cmの大きさに切断したものを使用した。
【0038】
(3)Max圧力(単位:mmHg)
クッション材サンプル上にニッタ(株)製の「BIGMATセンサ」を敷き、さらにその上に臀部モデル(日本工業規格 JIS−D−4607の準拠品)を置いた。臀部モデルはネジ止め面が水平になるように角度を調節し、かつ、サンプルに与える荷重が臀部モデル自体の重量も含めて50kgとなるように、臀部モデルの上に重りを載せて調節した。その時の体圧分散図を作成し、この体圧分散図からMax圧力を読み取る。
【0039】
(4)ずれ力(単位:N)
クッション材から約40cm×約40cmの大きさに切り出し、試験用のサンプルとした。サンプルの上に、臀部モデル(日本工業規格 JIS−D−4607の準拠品)を載置した。この時、臀部モデルのネジ止め面が水平となるように角度を保ち、また、水平方向に力をかけた際には臀部モデル自体が水平方向に移動しないようにし、かつ、サンプルに与える荷重が臀部モデル自体の重量を合わせて50kgとなるように、臀部モデルの上に重りを載せて調節する。荷重をかけた状態で30分間放置した後、臀部モデル底面とサンプル下面間距離を測定し、サンプルの下固定面を100mm/minの速度で水平方向(せん断力がかかる方向)に万能試験機「Autograph AGS-100」を用いて引っ張る。この時の変位と応力を読み取り、変位−応力図を作成し、せん断力を与える前のサンプル厚みの25%に相当する量がずれた時のずれ力(25%)を下記式により求めた。

ずれ力(25%)={(変位30mmの応力−変位5mmの応力)/(30mm−5mm)}×0.25×サンプル厚み

なお、上記式において、変位5mm以下はバラツキがあり、変位30mm以上はスリップする可能性があるため、データの取扱いは変位が5mm〜30mmの間で求めた。変位30mmでスケールオーバーする場合は、変位が5mm以上の部分で直線の傾きを求め、その値にサンプル厚みの25%を乗じて値を算出した。
【0040】
(5)座り心地性の評価
ボランティア10名による官能試験評価を行った。すなわち、座り心地性を、体圧分散性、座位保持性を含めて、5段階(1、2、3、4、5)で評価してもらった。数字が大きいほど座り心地性に優れており、「5」が一番優れていることを示す。
【0041】
実施例において使用されるポリイソシアネートプレポリマーは以下のようにして合成した。

・ポリイソシアネートプレポリマーAの合成:
MDIを50部、及び、ポリオール(EO/PO=75/25、OH価=56、分子量=3,000)を50部配合し、80℃で攪拌しながら加熱してポリイソシアネートプレポリマーAを作製した。

・ポリイソシアネートプレポリマーBの合成:
TDIを5部、及び、ポリオール(EO/PO=70/30、OH価=7.5、分子量=15,000)を95部配合し、80℃で攪拌しながら加熱してポリイソシアネートプレポリマーBを作製した。
【0042】
(実施例1)
ポリイソシアネートプレポリマーAを21部、ポリイソシアネートプレポリマーBを14部、及び、ポリエーテルポリオールとしてポリオキシエチルポリオキシプロピル化グリセリン(EO/PO=50/50)を65部混合し、80℃で約2時間加温した後、室温に戻し、水を3部加えて攪拌、混合し、次いで型に流し入れた。その後、室温下で1日放置して硬化させてクッション材(約40cm×約40cm×約3cm)を作製した。得られたクッション材について、密度、圧縮モジュラス、Max圧力、ずれ力の測定を行った。また、得られたクッション材の表面を、30μm厚のウレタンフィルムで覆い、カバー付きクッション材を作製した。得られたカバー付きクッション材について、座り心地性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0043】
(実施例2)
ポリイソシアネートプレポリマーAを13部、ポリイソシアネートプレポリマーBを42部、及び、ポリエーテルポリオールとしてポリオキシエチルポリオキシプロピル化グリセリン(EO/PO=50/50)を45部混合し、80℃で約2時間加温した後、室温に戻し、水を3部加えて攪拌、混合し、次いで型に流し入れた。その後、室温下で1日放置して硬化させて、クッション材(約40cm×約40cm×約3cm)を作製した。また、このクッション材の表面を、30μm厚のウレタンフィルムで覆い、カバー付きクッション材を作製した。得られたクッション材及びカバー付きクッション材について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0044】
(比較例1、比較例2)
市販品である低反発ウレタン発泡体を2種類、すなわち、波形形状のクッション材(約40cm×約40cm×約3cm)と、直方体のクッション材(約40cm×約40cm×約5cm)とを用意した。これらについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0045】
(比較例3、比較例4)
市販品であるゲルクッション材を2種類、すなわち、ポリウレタンゲル製クッション材(約40cm×約40cm×約2.5cm)と、イソプレンゴムを主成分とするゲル製クッション材(約40cm×約40cm×約4cm)とを用意した。これらのゲルクッション材について、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】




【0047】
表1から明らかなように、スポンジ状の実施例1のクッション材、及び、餅状の実施例2のクッション材は、ずれ応力が市販のゲルクッション材のずれ応力に近いものであり、優れたものであった。また、実施例1及び実施例2のクッション材は、圧縮モジュラス及びMax圧力がともに小さく、座り心地性の評価において優れた結果を示すものであることが分かった。
一方、低反発ウレタン発泡体のクッション材である比較例1及び比較例2は、圧縮モジュラスが大きく、また、ずれ応力も大きくて劣っているものであることが分かった。また、ゲルクッション材である比較例3及び比較例4は、圧縮モジュラスが大きいものであることが分かった。比較例1〜4のクッション材は、座り心地性の評価において5段階評価の「3」以下であり、実施例1〜2と比べて、劣ったものであることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明のクッション材は、寝具、自動車シート、椅子、座布団等のクッション材として、また、その他の一般的なクッション材としても使用することができる。また、医療用等に用いられるクッション材としても使用することができ、特に、褥瘡防止のために用いられるクッション材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】ずれ力を測定するために用いられる装置の一例を示す図である。
【図2】せん断力をかける前のサンプル厚みを説明するための図である。
【図3】変位−応力図の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1 試験用サンプル
2 臀部モデル
3 荷重付加用台
4 ネジ止め面
5 重り
6 引張り用ワイヤ
7 万能試験機
8 平行移動台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)と、有機ポリイソシアネート(B)と、発泡剤(C)とを必須成分として成り、かつ、密度が80kg/m以上、700kg/m以下であり、ずれ力が25N以上、65N以下であることを特徴とするクッション材。
【請求項2】
前記活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)は、平均官能基数が2以上、8以下であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量が40モル%以上、90モル%以下であり、かつ、水酸基価が5mgKOH/g以上、110mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1記載のクッション材。
【請求項3】
前記有機ポリイソシアネート(B)が、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、及び、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートからなる群のうち少なくとも1つであるか、あるいは、ポリイソシアネートプレポリマーであることを特徴とする請求項1又は2記載のクッション材。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートプレポリマーが、ポリイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート及び/又はメチレンジフェニルジイソシアネートを主成分とし、ポリオールとして、ポリエーテルポリオールの平均官能基数が2以上、8以下であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン単位の含有量が40モル%以上、90モル%以下、かつ、水酸基価が5mgKOH/g以上、110mgKOH/g以下であるポリオールを重合させてなることを特徴とする請求項3記載のクッション材。
【請求項5】
前記ポリイソシアネートプレポリマーと、前記活性水素成分ポリエーテルポリオール(A)とを、予め加熱処理した後、水を加えて発泡させたことを特徴とする請求項3又は4記載のクッション材。
【請求項6】
さらに可塑剤を配合することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のクッション材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−51067(P2006−51067A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232997(P2004−232997)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】