説明

クラッド式正極板を用いた鉛蓄電池およびその製造方法

【課題】 鉛活物質利用率の向上を図るべく、活物質中の細孔量を増加させたクラッド式正極板と、そのクラッド式正極板を用いた鉛活物質利用率の高い鉛蓄電池の提供を目的とする。
【解決手段】 活物質材料をクラッド管に充填したクラッド式正極板を用いた鉛蓄電池で、活物質材料は、鉛粉、鉛丹、二酸化鉛粉の一種以上であり、この活物質材料と硫酸鉛粉とからなる混合体をクラッド管に充填し、その混合体に化成処理を施すことにより、混合体中の硫酸鉛が二酸化鉛に変化した正極活物質を生成したことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッド式正極板を用いた鉛蓄電池およびその製造方法に関するもので、より詳しくは、活物質材料のスラリーを充填する湿式充填法、または活物質材料の粉体を充填する乾式充填法を用いてクラッド管に充填して形成されたクラッド式正極板を用いた鉛蓄電池と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主に二酸化鉛(PbO)を正極活物質として用い、鉛(Pb)を負極活物質として利用する鉛蓄電池には、その正極板の構造からペースト式とクラッド式と呼ばれる2つの形式の蓄電池が提供されている。
【0003】
その中でクラッド式正極板は、鉛合金からなる芯金をガラス繊維などからなる円筒状のチューブ(一般にクラッド管と呼ばれる)に挿入し、その芯金とチューブとの隙間に鉛酸化物を主成分とする活物質材料を充填し、この充填されたものを希硫酸に浸漬、乾燥後化成して製造されている(特許文献1〜3など参照)。
このチューブ内への活物質材料の充填は、振動を加えながら鉛粉等を充填する乾式充填法(例えば、特許文献4参照)と、鉛粉等を希硫酸等と混練してスラリーを作製し、このスラリーをノズルによりチューブ内に充填する湿式充填法(例えば、特許文献5参照)とがある。
【0004】
近年、鉛の価格高騰によって鉛活物質の利用率向上が求められてきており、この利用率向上にもっとも有効な方法は活物質中の孔(空隙)の量を増やすことである。しかし、ペースト式正極板では孔(空隙)を増やし過ぎると、利用初期に軟化して活物質が脱落し易くなり、その寿命が短くなる問題が生じるが、活物質をチューブ内に充填するクラッド式正極板では、その軟化による脱落が起こり難いという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭49−73626号公報
【特許文献2】特開昭60−151963号公報
【特許文献3】特開平9−147842号公報
【特許文献4】特開2009−123407号公報
【特許文献5】特開平7−296806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は鉛活物質利用率の向上を図るべく、活物質中の細孔量を増加させたクラッド式正極板と、そのクラッド式正極板を用いた鉛活物質利用率の高い鉛蓄電池の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の発明は、クラッド式正極板を用いた鉛蓄電池で、活物質材料は鉛粉、鉛丹、二酸化鉛粉の一種以上であり、この活物質材料と硫酸鉛粉とからなる混合体を前記クラッド管に充填し、その混合体に化成処理を施すことにより、混合体中の硫酸鉛が二酸化鉛に変化した正極活物質を生成したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第2の発明は、第1の発明における硫酸鉛の含有量が、混合体の質量に対して10mass%以上、70mass%以下であることを特徴とするクラッド式正極板を用いた鉛蓄電池である。
【0009】
本発明の第3の発明は、第1の発明及び第2の発明おける混合体が、さらに導電性物質を含むことを特徴とするクラッド式正極板を用いた鉛蓄電池である。
【0010】
本発明の第4の発明は、第1から第3の発明における導電性物質が、カーボン粒子あるいはカーボン繊維であって、混合体質量に対して0.5mass%以上、5.0mass%以下含むことを特徴とするクラッド式正極板を用いた鉛蓄電池である。
【0011】
本発明の第5の発明は、少なくとも鉛粉、鉛丹、二酸化鉛粉の一種以上である活物質材料と硫酸鉛粉とからなる混合体をクラッド管に充填した後、その混合体に化成処理を施すことによって、混合体中の硫酸鉛が二酸化鉛に変化した正極活物質を生成したことを特徴とするクラッド式正極板を用いた鉛蓄電池の製造方法である。
【0012】
本発明の第6の発明は、第5の発明における硫酸鉛の含有量が、混合体の質量に対して10mass%以上、70mass%以下であることを特徴とするクラッド式正極板を用いた鉛蓄電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来の鉛蓄電池に比べて鉛活物質の利用効率を増大させることが可能となり、鉛活物質の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】活物質材料が二酸化鉛のみで構成されたと仮定した場合の乾式充填されたクラッド式正極板の極板断面の部分拡大模式図で、(a)は化成処理前の状態を表し、(b)は化成処理後の状態を示すものである。
【図2】本発明のクラッド式正極板を説明するための活物質材料が二酸化鉛のみの活物質材料と硫酸鉛粉とで構成されたと仮定した場合の極板断面の部分拡大模式図で、(a)は化成処理前の状態を表し、(b)は化成処理後の状態を示すものである。
【図3】本発明のクラッド式正極板の製造方法の一例を説明する概略図である。
【図4】本発明のクラッド式正極板の製造方法の一例を説明する概略図で、クラッド管への活物質材料と硫酸鉛粉とからなる混合体の充填状態を示すものである。
【図5】本発明のクラッド式正極板の製造方法の一例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ところで、充電状態における鉛蓄電池正極活物質は組成式PbOで示される二酸化鉛で、この正極活物質は放電によって組成式PbSOで示される放電生成物(硫酸鉛)を生成する(下記、化1に正極における反応式を示す)。この硫酸鉛(PbSO)の体積は二酸化鉛(PbO)の約2倍となることが知られている。
【0016】
【化1】

【0017】
また、鉛活物質の利用率向上に対する最も有効な手段は、活物質中の孔の量を増やすことであることも知られているが、この活物質中の孔とは、図1に示すように活物質5(二酸化鉛粉)により外周を形成された正極板中の空隙(孔7)で、この空隙内に電解液(鉛蓄電池では硫酸:HSO)が浸潤し、二酸化鉛表面で電池素反応を行うものである。したがって、このような孔7が多い極板では上記化1の素反応の面積が広くなり、活物質の利用効率が向上することになる。別な角度から見ると、反応に寄与する活物質の表面積を増やすことにもなる。
【0018】
このような状況の中、本発明者は活物質の保持力の高いクラッド式正極板に関して、正極活物質の二酸化鉛(PbO)と放電生成物の硫酸鉛(PbSO)の体積差に注目して、活物質中の孔の量を増やす技術に関して鋭意開発を行った結果、本発明に至ったものである。
【0019】
本発明はクラッド式正極板を構成する活物質材料に、放電生成物である硫酸鉛粉を所定量予め添加して含むことにより、化成工程において体積の大きな硫酸鉛粉が正極活物質である二酸化鉛粉に変化する過程で、その体積が50%近くまで縮むことよって、効率よく活物質中の孔(空隙)を増やすことを可能とするものである。
さらに、予め添加する硫酸鉛粉の大きさ(形状、粒径など)によって、形成する活物質中の孔の大きさの制御も可能である。
【0020】
図1、図2は、実際とは異なるが本発明の概念を説明するための仮想モデルであり、本発明のクラッド式正極板を説明するための極板断面の部分拡大模式図で、(a)は化成処理前の状態を、(b)は化成処理後の状態を示すものである。図2では仮想モデルとして、活物質材料の二酸化鉛粉5および添加剤としての硫酸鉛粉6を、加工して共に同じ粒径であるものと仮定し、その混合体を充填している。その硫酸鉛粉6の量は、混合体質量の約31mass%としている。なお、図1(a)、図2(a)に示す正極板の充填状態は、理想状態で最密に充填されているものを表し、したがってクラッド管への充填時には密に活物質材料または混合体が充填されているものとしている。
活物質中における孔7は、図1以下の図においては白色部で表されている。
【0021】
化成処理前の正極板では、図1(a)、図2(a)に見られるように正極板内部では活物質材料(二酸化鉛5)、あるいは混合体(二酸化鉛5および硫酸鉛6)の粉体に囲まれたわずかの領域が孔7として散在している。
一方、化成処理を行った後の正極板では、活物質材料の二酸化鉛5のみで形成された正極板では図1(b)に見られるように孔7の総体積に大きな変化は見られないのに対して、硫酸鉛粉6を含む正極板では、図2(b)に見られるように、硫酸鉛粉が二酸化鉛粉6A(硫酸鉛由来)へと変わると共に縮径した粉体となっている。そのため、正極板内部にも大きな孔7の領域が存在することが伺える。
【0022】
図2(a)に示す化成処理前の状態と比べて化成処理後(図2(b)参照)では、孔7の総体積が大きく増えている。このような孔7の総体積の増加は、活物質と電解液との接触面積が増えることを意味し、したがって二酸化鉛(活物質)の電解液と反応を行う表面積が大きく増えていることになる。それゆえ活物質の単位質量当たりの有効利用率が向上することになるものである。
【0023】
この混合体に添加された硫酸鉛粉の含有量は、混合体質量に対して、10mass%以上、70mass%以下が望ましい。この硫酸鉛の含有量が10mass%未満では、その効果が弱く、活物質中に孔を有効に増やすことができない。一方、70mass%を超える含有量では、硫酸鉛(PbSO)が多くなると正極板の導電性が低くなり、その電気抵抗が増加して化成処理において不具合を生じる結果となるためである。
【0024】
本発明では、導電性を付与するために混合体に、さらに導電性物質を含有させても良い。その導電性物質としては、導電性無機物材料や金属材料があげられる。特に分解性に優れたカーボン粒子やカーボン繊維が導電性の付与の観点とコスト面を考慮すると望ましい。
その含有量は、混合体に対して0.5mass%以上、5.0mass%以下の含有量が望ましい。
【0025】
本発明のクラッド式正極板は常法の製造方法によって作製することができる。例えば、図3から図5を用いて本発明のクラッド式正極板の製造方法を説明する。
ガラス繊維を筒状にした後、水溶性の熱硬化性樹脂によって固めて筒状体としたクラッド管11を複数本(仕様により本数は変化する)を整列させて、一方の端部に、上部連座13aと集電体12の芯金(図示せず)を挿入して装着する(図3参照)。なお、芯金の材質は、通常用いられている鉛や鉛−アンチモン合金、鉛−錫合金などの鉛合金を用いる。
【0026】
次に、図4に示すように活物質材料と硫酸鉛を含む所定成分組成の混合体20を、クラッド管11と芯金12aとの隙間部分に充填する。クラッド管11の他方の開口部分に、下部連座13bを挿入、固着し混合体が脱落しないようにして未化成のクラッド式正極板1(図5)を作製する。最後に、このクラッド管11と芯金12aとの隙間部分に充填された混合体を化成処理して正極活物質とする。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
先ず、導電性物質を含まずに、硫酸鉛量のみを変えた場合の放電容量、および空孔率の各特性と硫酸鉛量との関係を表1に示す。
図3に示す15本の長さ285mm、直径3mmの芯金と親骨で構成された集電体12の芯金12aの各々にクラッド管(チューブ)11を装着し、芯金12aとクラッド管(チューブ)11との隙間に、活物質材料と混合体質量に対して表1の試料1から6に示す量の硫酸鉛粉を混合した混合体20を充填した(図4参照)。次に、芯金12aの下端に連座13bを強挿してクラッド管(チューブ)11端を閉塞して試料1から試料6に係る未化成のクラッド式正極板(図5参照)を作製した。
次に、この未化成のクラッド式正極板を用いて、公称容量70Ah2Vの単セルを組み、比重1.270の希硫酸に浸漬して、電気量475Ahで40時間の電槽化成を施した供試セルを作製した。
【0028】
この供試セルを化成完了後に、その初期放電容量[Ah]を測定した後、放電電流18Aで1.70Vまで放電する充放電サイクルを3サイクル繰り返し、3サイクル目の放電容量[Ah]を測定した。
その後、その供試セルを解体して水銀圧入法にて正極活物質の空孔率を測定した。
それらの測定結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
硫酸鉛量が75mass%と多すぎる試料4では、化成処理ができず、したがって放電容量が硫酸鉛を含まない試料6と比較しても著しく低下してしまった。また、硫酸鉛量が8mass%と少ない試料5では、空孔率、放電容量とも増加が得られなかった。
【実施例1】
【0031】
図3に示す15本の長さ285mm、直径3mmの芯金と親骨で構成された集電体12の芯金12aの各々にクラッド管(チューブ)11を装着し、芯金12aとクラッド管(チューブ)11との隙間に、活物質材料と混合体質量に対して70mass%の硫酸鉛粉を混合した混合体20を充填した(図4参照)。次に、芯金12aの下端に連座13bを強挿してクラッド管(チューブ)11端を閉塞して実施例1に係る未化成のクラッド式正極板(図5参照)を作製した。
次に、この未化成のクラッド式正極板を用いて、公称容量70Ah2Vの単セルを組み、比重1.270の希硫酸に浸漬して、電気量475Ahで40時間の電槽化成を施した各2個ずつの供試セルを作製した。
【0032】
この供試セルを化成完了後に、その初期放電容量[Ah]を測定した後、放電電流18Aで1.70Vまで放電する充放電サイクルを3サイクル繰り返し、3サイクル目の放電容量[Ah]を測定した。
その後、その供試セルの1個を解体して水銀圧入法にて正極活物質の空孔率を測定した。残りの供試セル1個を、JIS D5303に記載の充放電サイクル寿命試験を、その放電容量が定格の80%を下回るまで実施した。試験結果は、従来品を100とした比率で表した。それらの測定結果を表2に示す。
【実施例2】
【0033】
図3に示す15本の長さ285mm、直径3mmの心金と親骨で構成された集電体12の芯金12aの各々にクラッド管(チューブ)11を装着し、芯金12aとクラッド管(チューブ)11との隙間に、混合体質量に対して70mass%の硫酸鉛粉、および導電性物質として、アセチレンブラックを混合体質量に対して0.5mass%を混合した混合体20を充填した(図4参照)。次に、芯金12aの下端に連座13bを強挿してクラッド管(チューブ)11端を閉塞して実施例1に係る未化成のクラッド式正極板(図5参照)を作製した。
次に、この未化成のクラッド式正極板を用いて、公称容量70Ah2Vの単セルを組み、比重1.270の希硫酸に浸漬して、電気量475Ahで40時間の電槽化成を施して供試セルを作製し、実施例1と同様の充放電サイクルを行い、その放電容量、空孔率を測定した結果を表2に示す。
【実施例3】
【0034】
導電性物質(アセチレンブラック)の含有量を3mass%とした以外は、実施例2と同様の条件で実施例3の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例4】
【0035】
導電性物質(アセチレンブラック)の含有量を5mass%とした以外は、実施例2と同様の条件で実施例4の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例5】
【0036】
導電性物質(アセチレンブラック)の含有量を6mass%とした以外は、実施例2と同様の条件で実施例5の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例6】
【0037】
硫酸鉛粉の含有量を10mass%とした以外は、実施例1と同様の条件で実施例6の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例7】
【0038】
硫酸鉛粉の含有量を10mass%とした以外は、実施例2と同様の条件で実施例7の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例8】
【0039】
硫酸鉛粉の含有量を10mass%とした以外は、実施例3と同様の条件で実施例8の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例9】
【0040】
硫酸鉛粉の含有量を10mass%とした以外は、実施例4と同様の条件で実施例9の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例10】
【0041】
硫酸鉛粉の含有量を10mass%とした以外は、実施例5と同様の条件で実施例10の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例11】
【0042】
硫酸鉛粉の含有量を50mass%とした以外は、実施例1と同様の条件で実施例11の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例12】
【0043】
硫酸鉛粉の含有量を50mass%とした以外は、実施例2と同様の条件で実施例12の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例13】
【0044】
硫酸鉛粉の含有量を50mass%とした以外は、実施例3と同様の条件で実施例13の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例14】
【0045】
硫酸鉛粉の含有量を50mass%とした以外は、実施例4と同様の条件で実施例14の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【実施例15】
【0046】
硫酸鉛粉の含有量を50mass%とした以外は、実施例5と同様の条件で実施例15の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【0047】
(比較例1)
硫酸鉛粉の含有量を75mass%とした以外は、実施例1と同様の条件で比較例1の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【0048】
(比較例2)
硫酸鉛粉の含有量を75mass%とした以外は、実施例2と同様の条件で比較例2の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【0049】
(比較例3)
硫酸鉛粉の含有量を75mass%とした以外は、実施例3と同様の条件で比較例3の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【0050】
(比較例4)
硫酸鉛粉の含有量を75mass%とした以外は、実施例4と同様の条件で比較例4の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【0051】
(比較例5)
硫酸鉛粉の含有量を75mass%とした以外は、実施例5と同様の条件で比較例5の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【0052】
(比較例6)
硫酸鉛粉の含有量を8mass%とした以外は、実施例1と同様の条件で比較例6の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【0053】
(比較例7)
硫酸鉛粉の含有量を8mass%とした以外は、実施例2と同様の条件で比較例7の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【0054】
(比較例8)
硫酸鉛粉の含有量を8mass%とした以外は、実施例3と同様の条件で比較例8の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【0055】
(比較例9)
硫酸鉛粉の含有量を8mass%とした以外は、実施例4と同様の条件で比較例9の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【0056】
(比較例10)
硫酸鉛粉の含有量を8mass%とした以外は、実施例5と同様の条件で比較例10の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表2に示す。
【0057】
(従来例)
実施例1の活物質材料と硫酸鉛粉の混合体から硫酸鉛粉を除いた成分組成の活物質材料を用いて、同様にクラッド式正極板(未化成)を作製した。この未化成のクラッド式正極板を用いて、公称容量70Ah2Vの単セルを組み、比重1.270の希硫酸に浸漬して、電気量475Ahで40時間の電槽化成を施して供試セルを作製して、実施例1と同様の試験を行った。その結果を表2示す。
【0058】
【表2】

【0059】
表2から明らかなように、本発明に係る実施例1から15では、比較例1から10に示すセルに対して、放電容量、空孔率、充放電サイクル寿命、共に優れているのがわかる。
正極板に添加する硫酸鉛の量が多すぎる場合(比較例1から5参照)も、少なすぎる場合(比較例6〜10参照)も本発明の実施例1から15に比べて放電容量、充放電サイクル寿命のいずれか、または全てに劣り、従来例と比較してもあまり特性の向上が見られていないことがわかる。
導電性物質の添加量が5.0mass%より多くなると放電容量は増えるが充放電サイクル寿命が低下するため5.0mass%以下にすることが好ましい。
【実施例16】
【0060】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてカーボン繊維を用い、その含有量を0.5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例16の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表3に示す。
【実施例17】
【0061】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてカーボン繊維を用い、その含有量を3mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例17の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表3に示す。
【実施例18】
【0062】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてカーボン繊維を用い、その含有量を5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例18の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表3に示す。
【実施例19】
【0063】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてカーボン繊維を用い、その含有量を6mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例19の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表3に示す。
【0064】
【表3】

【0065】
表3から、導電性物質をカーボン繊維とした実施例16から19においても、導電性物質がアセチレンブラックの場合(実施例12〜15参照)とほぼ同等の放電容量、空孔率、充放電サイクル寿命が得られることは明らかである。
導電性物質の添加量が5.0mass%より多くなると放電容量は増えるが充放電サイクル寿命が低下するため5.0mass%以下にすることが好ましい。
【実施例20】
【0066】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてグラファイトを用い、その含有量を0.5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例20の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表4に示す。
【実施例21】
【0067】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてグラファイトを用い、その含有量を3mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例21の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表4に示す。
【実施例22】
【0068】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてグラファイトを用い、その含有量を5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例22の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表4に示す。
【実施例23】
【0069】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてグラファイトを用い、その含有量を6mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例23の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表4に示す。
【0070】
【表4】

【0071】
表4から、導電性物質をグラファイトとした実施例20から23においても、導電性物質がアセチレンブラックの場合(実施例12〜15参照)とほぼ同等の放電容量、空孔率、充放電サイクル寿命が得られることが明らかである。
導電性物質の添加量が5.0mass%より多くなると放電容量は増えるが充放電サイクル寿命が低下するため5.0mass%以下にすることが好ましい。
【実施例24】
【0072】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてグラファイトウィスカーを用い、その含有量を0.5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例24の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表5に示す。
【実施例25】
【0073】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてグラファイトウィスカーを用い、その含有量を3mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例25の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表5に示す。
【実施例26】
【0074】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてグラファイトウィスカーを用い、その含有量を5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例26の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表5に示す。
【実施例27】
【0075】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてグラファイトウィスカーを用い、その含有量を6mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例27の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表5に示す。
【0076】
【表5】

【0077】
表5から、導電性物質をグラファイトウィスカーとした実施例24から27においても、導電性物質がアセチレンブラックの場合(実施例12〜15参照)とほぼ同等の放電容量、空孔率、充放電サイクル寿命が得られることは明らかである。
導電性物質の添加量が5.0mass%より多くなると放電容量は増えるが充放電サイクル寿命が低下するため5.0mass%以下にすることが好ましい。
【実施例28】
【0078】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてエキスパンデッドグラファイトを用い、その含有量を0.5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例28の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表6に示す。
【実施例29】
【0079】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてエキスパンデッドグラファイトを用い、その含有量を3mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例29の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表6に示す。
【実施例30】
【0080】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてエキスパンデッドグラファイトを用い、その含有量を5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例30の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表6に示す。
【実施例31】
【0081】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてエキスパンデッドグラファイトを用い、その含有量を6mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例31の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表6に示す。
【0082】
【表6】

【0083】
表6から、導電性物質をエキスパンデッドグラファイトとした実施例28から31においても、導電性物質がアセチレンブラックの場合(実施例12〜15参照)とほぼ同等の放電容量、空孔率、充放電サイクル寿命が得られることは明らかである。
導電性物質の添加量が5.0mass%より多くなると放電容量は増えるが充放電サイクル寿命が低下するため5.0mass%以下にすることが好ましい。
【実施例32】
【0084】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてファーネスブラックを用い、その含有量を0.5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例32の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表7に示す。
【実施例33】
【0085】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてファーネスブラックを用い、その含有量を3mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例33の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表7に示す。
【実施例34】
【0086】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてファーネスブラックを用い、その含有量を5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例34の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表7に示す。
【実施例35】
【0087】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてファーネスブラックを用い、その含有量を6mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例35の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表7に示す。
【0088】
【表7】

【0089】
表7から、導電性物質をファーネスブラックとした実施例32から35においても、導電性物質がアセチレンブラックの場合(実施例12〜15参照)とほぼ同等の放電容量、空孔率、充放電サイクル寿命が得られることは明らかである。
導電性物質の添加量が5.0mass%より多くなると放電容量は増えるが充放電サイクル寿命が低下するため5.0mass%以下にすることが好ましい。
【実施例36】
【0090】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてチャンネルブラックを用い、その含有量を0.5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例36の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表8に示す。
【実施例37】
【0091】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてチャンネルブラックを用い、その含有量を3mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例37の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表8に示す。
【実施例38】
【0092】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてチャンネルブラックを用い、その含有量を5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例38の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表8に示す。
【実施例39】
【0093】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてチャンネルブラックを用い、その含有量を6mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例39の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表8に示す。
【0094】
【表8】

【0095】
表8から、導電性物質をチャンネルブラックとした実施例36から39においても、導電性物質がアセチレンブラックの場合(実施例12〜15参照)とほぼ同等の放電容量、空孔率、充放電サイクル寿命が得られることは明らかである。
導電性物質の添加量が5.0mass%より多くなると放電容量は増えるが充放電サイクル寿命が低下するため5.0mass%以下にすることが好ましい。
【実施例40】
【0096】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてサーマルブラックを用い、その含有量を0.5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例40の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表9に示す。
【実施例41】
【0097】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてサーマルブラックを用い、その含有量を3mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例41の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表9に示す。
【実施例42】
【0098】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてサーマルブラックを用い、その含有量を5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例42の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表9に示す。
【実施例43】
【0099】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてサーマルブラックを用い、その含有量を6mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例43の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表9に示す。
【0100】
【表9】

【0101】
表9から、導電性物質をサーマルブラックとした実施例40から43においても、導電性物質がアセチレンブラックの場合(実施例12〜15参照)とほぼ同等の放電容量、空孔率、充放電サイクル寿命が得られることは明らかである。
導電性物質の添加量が5.0mass%より多くなると放電容量は増えるが充放電サイクル寿命が低下するため5.0mass%以下にすることが好ましい。
【実施例44】
【0102】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてフラーレンを用い、その含有量を0.5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例44の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表10に示す。
【実施例45】
【0103】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてフラーレンを用い、その含有量を3mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例45の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表10に示す。
【実施例46】
【0104】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてフラーレンを用い、その含有量を5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例46の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表10に示す。
【実施例47】
【0105】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてフラーレンを用い、その含有量を6mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例47の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表10に示す。
【0106】
【表10】

【0107】
表10から、導電性物質をフラーレンとした実施例44から47においても、導電性物質がアセチレンブラックの場合(実施例12〜15参照)とほぼ同等の放電容量、空孔率、充放電サイクル寿命が得られることは明らかである。
導電性物質の添加量が5.0mass%より多くなると放電容量は増えるが充放電サイクル寿命が低下するため5.0mass%以下にすることが好ましい。
【実施例48】
【0108】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてカーボンナノチューブを用い、その含有量を0.5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例48の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表11に示す。
【実施例49】
【0109】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてカーボンナノチューブを用い、その含有量を3mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例49の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表11に示す。
【実施例50】
【0110】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてカーボンナノチューブを用い、その含有量を5mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例50の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表11に示す。
【実施例51】
【0111】
硫酸鉛の量を50mass%、導電性物質としてカーボンナノチューブを用い、その含有量を6mass%とした以外は、実施例11と同様の条件で実施例51の供試セルを作製して試験を行った。その結果を表11に示す。
【0112】
【表11】

【0113】
表11から、導電性物質をカーボンナノチューブとした実施例48から51においても、導電性物質がアセチレンブラックの場合(実施例12〜15参照)とほぼ同等の放電容量、空孔率、充放電サイクル寿命が得られることは明らかである。
導電性物質の添加量が5.0mass%より多くなると放電容量は増えるが充放電サイクル寿命が低下するため5.0mass%以下にすることが好ましい。
【符号の説明】
【0114】
1 クラッド式正極板
5 二酸化鉛粉
6 硫酸鉛粉
6A 二酸化鉛粉(硫酸鉛由来)
7 孔(正極板中の空隙)
11 クラッド管(チューブ)
12 集電体
12a 芯金
13a 上部連座
13b 下部連座
20 (活物質材料と硫酸鉛粉とからなる)混合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッド式正極板を用いた鉛蓄電池であって、
活物質材料は、鉛粉、鉛丹、二酸化鉛粉の一種以上であり、この活物質材料と硫酸鉛粉とからなる混合体を前記クラッド管に充填し、前記混合体に化成処理を施すことにより、前記硫酸鉛が二酸化鉛に変化した正極活物質を生成したことを特徴とするクラッド式正極板を用いた鉛蓄電池。
【請求項2】
前記硫酸鉛の含有量が、前記混合体の質量に対して10mass%以上、70mass%以下であることを特徴とする請求項1に記載のクラッド式正極板を用いた鉛蓄電池。
【請求項3】
前記混合体が、さらに導電性物質を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のクラッド式正極板を用いた鉛蓄電池。
【請求項4】
前記導電性物質が、カーボン粒子あるいはカーボン繊維であって、前記混合体の質量に対して0.5mass%以上、5.0mass%以下含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のクラッド式正極板を用いた鉛蓄電池。
【請求項5】
少なくとも鉛粉、鉛丹、二酸化鉛粉の一種以上である活物質材料と硫酸鉛粉とからなる混合体をクラッド管に充填した後、前記混合体に化成処理を施すことによって、前記硫酸鉛が二酸化鉛に変化した正極活物質を生成したことを特徴とするクラッド式正極板を用いた鉛蓄電池の製造方法。
【請求項6】
前記硫酸鉛の含有量が、前記混合体の質量に対して10mass%以上、70mass%以下であることを特徴とする請求項5に記載のクラッド式正極板を用いた鉛蓄電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−74239(P2012−74239A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217868(P2010−217868)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】