説明

クラブラン酸カリウムの製造方法

【課題】中間体アミン塩を形成することによって前精製されていないクラブラン酸をカリウム塩として直接沈殿させることによる、そして、溶液中のクラブラン酸と溶液中のカリウムイオンとの反応による、医薬上許容される品質のクラブラン酸カリウムの製造方法の提供。
【解決手段】発酵プロセスから生じるクラブラン酸の遊離酸が有機溶媒中に抽出されることにより有機溶媒中でクラブラン酸の溶液を形成させ、カリウム塩を有機溶媒中で溶液中のクラブラン酸に添加し、次いで、かかる形成されたクラブラン酸カリウムを、有機溶媒から水性媒体に逆抽出することにより有機溶媒に対する分離相としての水性媒体中にクラブラン酸カリウムの溶液を形成させ、次いで、クラブラン酸カリウムの水溶液への有機沈殿溶媒の添加によりクラブラン酸カリウムの生成物を水溶液から沈殿させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラブラン酸塩の新規製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(I)のクラブラン酸:
【化1】

は、β−ラクタマーゼ阻害剤であり、医薬処方の成分として商業的に用いられており、通常はその塩の形態である。クラブラン酸は、例えば、GB1508977に記載のごとく、微生物Streptomyces clavuligerusの培養により商業的に製造されている。
【0003】
クラブラン酸またはその塩を、培地から種々の方法により抽出できるが、かかる抽出手順を解しする前に、まず、濾過または遠心分離によりS.clavuligerus細胞を培地から除去することが画一的に行われている。
【0004】
種々の方法によりクラブラン酸またはその塩を清澄化培地から抽出できる。酸性pH値に調節された冷却清澄化培地からの溶媒抽出、および中性pHにおけるクラブラン酸のアニオン的性質を用いる方法、例えば、アニオン交換樹脂を用いることが特に有用であることがわかっている。さらに特に有用な方法は、クラブラン酸エステルを得て、エステルを精製し、それより酸またはその塩を再生することである。
【0005】
クラブラン酸またはその塩を得るための抽出プロセスは、概念的には、一次単離、ついで、さらなる精製プロセスに分けられる。
【0006】
適当な一次単離プロセスは、遊離クラブラン酸の溶媒抽出を包含する。溶媒抽出プロセスにおいて、酸性pHに調節された全ブロスであってもよい冷却清澄化培地から有機溶媒中にクラブラン酸を抽出する。
【0007】
クラブラン酸の遊離酸についての1の溶媒抽出法において、清澄化培地を冷却し、実質的に水と混和しない有機溶媒と混合しながら酸添加によりpHを低下させてpH1ないし2の領域とする。pH低下に用いるのに適した酸には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、または同様な無機酸がある。適当な有機溶媒としては、n−ブタノール、酢酸エチル、酢酸n−ブチルおよびメチルイソブチルケトン、ならびに他の同様な溶媒が挙げられる。メチルイソブチルケトンは、酸性化培地濾過物の抽出に特に好ましい溶媒である。相分離後、クラブラン酸は有機相中に見出される。
【0008】
例えば、クラブラン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が有機溶媒に対してよりも水に対して高い溶解度を有していることを利用して、クラブラン酸を有機溶媒から新たな水相中へと逆抽出してもよい。かくして、pHをほぼ中性、例えばpH7に維持しながら、クラブラン酸を有機溶媒から、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウムバッファーまたは炭酸カルシウムのごときアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩基の水溶液または懸濁液または水中へと逆抽出してもよい。相分離後、この水性抽出物を減圧濃縮してもよい。凍結乾燥を用いてクラブラン酸塩の固体粗標品を得てもよい。かかる固体標品は、−20℃において乾燥固体として保存した場合、安定である。同様のプロセスがGB15631032に記載されている。このプロセスを既知方法で修飾してもよく、例えば、さらなる精製工程を有機溶媒相に適用して高分子不純物を不純なクラブラン酸から除去してもよい。
【0009】
クラブラン酸のさらなる二次的精製プロセスは、例えば、EP0026044に記載されているものであり、該方法において、不純なクラブラン酸溶液をt−ブチルアミンと接触させてクラブラン酸のt−ブチルアミン塩を得て、ついで、これを単離し、有機溶媒中の残存不純物からクラブラン酸を分離し、ついで、塩をクラブラン酸に戻すか、あるいはアルカリ金属塩またはエステルのごときクラブラン酸誘導体に変換する。他の知られたクラブラン酸の二次的精製プロセスは、ジエチルアミン、トリ−(低級アルキル)アミン、ジメチルアニリンおよびN,N'−ジイソプロピルエチレンジアミンのごとき他の有機アミンを用いてクラブラン酸の塩および/または他の誘導体を得ることを包含する。これらの精製プロセスは、最終製品中に痕跡量のアミンを残し、あるいは痕跡量のアミンとクラブラン酸との塩を残すという本質的欠点を有する。
【0010】
かかる逆抽出プロセスは、クラブラン酸カリウムを製造する場合に、クラブラン酸カリウムが特に水に感受性があるために、問題を生じる。慣用的な逆抽出プロセスにおいては、長時間、典型的には約1時間、クラブラン酸カリウムは水と接触したままである可能性があり、通常用いられる比較的穏やかな混合および分離条件下ではクラブラン酸溶液濃度が上昇し、このことにより加水分解による分解が大いに進む可能性がある。さらにそのうえ、クラブラン酸がある種のアミン塩を経由する上記のようなプロセスは比較的経費のかかるプロセスとなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、分解およびコストが減じられたクラブラン酸塩の改良製造方法を見出した。
【0012】
したがって、本発明は、中間体アミン塩を形成することによって前精製されていないクラブラン酸をカリウム塩として直接沈殿させることによる、医薬上許容される品質のクラブラン酸カリウムの製造方法を提供するが、PCT/GB95/00191の主題は除く。
【0013】
医薬上許容される品質のクラブラン酸カリウムは、遊離酸として少なくとも純度80%、より好ましくは遊離酸として少なくとも純度82%、もっとも好ましくは遊離酸として少なくとも純度83%の物質を包含する。
【0014】
上記文献記載のごとく、発酵プロセスから得られたクラブラン酸の遊離酸を有機溶媒中に抽出することにより上記プロセスを行ってもよく、上記文献記載の手順により前処理してもよく、あるいは好ましくは後で説明する方法を用いて前処理してもよい。上記文書に記載のごとき適当な有機溶媒を用いてもよい。
【0015】
ついで、抽出されたクラブラン酸を当該分野において慣用的な方法を用いて、あるいは本明細書で引用する文書に記載された方法、あるいは好ましくは後で説明する方法を用いて、抽出されたクラブラン酸を濃縮してもよい。
【0016】
ついで、適当には、有機酸のごとき酸の適当なカリウム塩を添加することによりクラブラン酸のカリウム塩を得る。
【0017】
ついで、かくして得られたカリウム塩を慣用的に単離し乾燥してもよく、あるいは本明細書記載の方法を用いて単離し乾燥してもよい。
【0018】
別法として、クラブラン酸の遊離酸(上記のごとく調製)を、上記のごとく溶媒中に抽出し、水性媒体中に逆抽出する前に慣用的方法を用いて濃縮してもよい。ついで、慣用的方法あるいは本明細書記載の方法を用いて水性媒体を濃縮してもよい。適当には、有機酸のごとき酸のカリウム塩のような適当な形態のカリウムイオンを添加してもよい。例えば、アセトンまたはイソプロパノールのごとき適当な沈殿溶媒を添加することにより、得られたクラブラン酸カリウムを沈殿させ、単離し、ついで、乾燥させてもよい。
【0019】
実施例に記載した方法を、参照により本明細書に記載されたものとみなす。
【0020】
特に高力価、例えば、水溶液中のクラブラン酸力価が1ミリリットルあたり100000ないし200000マイクログラム、より好ましくは1ミリリットルあたり約145000マイクログラムであるクラブラン酸の有機抽出物またはクラブラン酸の水性抽出物を用いることが特に望ましい。
【0021】
好ましくは限外濾過により濾過され、好ましくは逆浸透により前濃縮されていてもよい全ブロス発酵物からクラブラン酸を得る。水性の逆抽出物は、好ましくは10ないし30%、より好ましくは15ないし25%、最も好ましくは約20% w/vの濃度である。
【0022】
好ましくは、イソプロパノールのごとき共溶媒を水性濃縮物に添加してもよく、セライトのベッドでの濾過のごとき慣用的手段により、生じた油状物質を除去する。このことは、得られるクラブラン酸を必要な純度とすることにおいて特に有利である。
【0023】
ついで、適当には、イソプロパノールのごときさらなる水混和性溶媒(酢酸エチルのごとき水不混和性溶媒と混合されていてもよい)を添加することにより、あるいは別法として、水混和性溶媒添加し、ついで、水不混和姓溶媒をステップワイズ的に添加することにより、生成物を沈殿させる。
【0024】
有機溶媒溶液から直接得られたカリウム塩を単離する場合には、好ましくは共沸蒸留を用いて有機溶媒を乾燥させる。
【0025】
適当な有機溶媒としては上記のもの、例えば、n−ブタノール、酢酸エチル、酢酸n−ブチルおよび一般式RCO.R(式中、RおよびRは独立してC1−10アルキル基)で示されるケトン、詳細にはメチルイソブチルケトンが挙げられる。溶液が最初の単離プロセスにより得られる場合には、クラブラン酸の溶液には不純物、例えば高分子不純物が存在していてもよいが、好ましくは、予備精製プロセスに供して少なくともいくぶんかの不純物を除去しておく。適当な予備精製プロセスとしては、濾過、および吸着性炭素での処理が挙げられる。溶液は少量の溶解または懸濁された水を含んでいてもよいが、好ましくは、溶液が最初の単離プロセスにより得られる場合には、溶液を脱水プロセスに供してもよく、例えば、遠心分離して懸濁水の液滴を除去してもよい。
【0026】
クラブラン酸の溶液の適当な濃度は、クラブラン酸含量で表せば約500ないし20000μg/ml(0.0025Mないし0.1M)、例えば約1000ないし5000μg/ml(すなわち、0.005Mないし0.025M)、典型的には約3000±1000μg/ml(すなわち、0.015M±0.005M)である。本明細書の用語「クラブラン酸」は、以後、遊離クラブラン酸をいうのに用いられる。
【0027】
適当な塩形成カチオンは、アルカリ金属カチオンおよびアルカリ土類金属カチオンであり、詳細にはカリウムである。適当な対アニオンとしては塩基性アニオンが挙げられ、例えば、炭酸水素、炭酸またはリン酸水素であり、詳細には、弱有機カルボン酸のアニオン、例えばR−COH(式中、RはC1−20アルキル、例えばC1−18アルキル)で示されるものがある。適当なカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、および2−エチルヘキサン酸のごときエチルヘキサン酸が挙げられる。
【0028】
それらのイオンを含む適当な塩前駆体化合物としては、炭酸水素ナトリウムまたはカリウム、リン酸水素カリウムまたは炭酸カルシウムが挙げられ、詳細には、クラブラン酸カリウムの製造の場合には、2−エチルヘキサン酸カリウムである。他の適当な塩前駆体化合物としては、イオン交換樹脂が挙げられ、固体であっても液体であってもよく、クラブラン酸とともに塩を形成しうるカリウムのごとき塩形成カチオンを含むものである。
【0029】
前駆体化合物を溶媒に溶解または懸濁し、2つの溶液あるいは溶液および懸濁液を混合することにより、クラブラン酸を溶液中で塩前駆体化合物と接触させてもよい。同じ有機溶媒をクラブラン酸ならびに前駆体に用いてもよい。2−エチルヘキサン酸カリウムがメチルイソブチルケトンのごとき有機溶媒中の溶液となっている塩前駆体化合物である場合、適当には、その濃度は0.5ないし5.0M、例えば1.0ないし3.0M、適当には2.0±0.5Mである。
【0030】
後で述べる多くの方法で水を接触領域に提供してもよく、これらの方法の1つまたはそれ以上のものを別法として用いて、あるいは組み合わせて用いてもよい。例えば、水あるいは溶解された有機溶媒を含有する水に塩前駆体化合物を溶解または懸濁してもよく、そのようなものとしてクラブラン酸溶液と接触させてもよい。例えば、クラブラン酸溶液を上記のごとく水に溶解または懸濁してもよい。例えば、塩前駆体化合物を、有機溶媒、例えば、クラブラン酸を溶解するのと同じ溶媒に溶解または懸濁してもよく、これらの溶媒はそれ自体、溶解または懸濁された水を含んでいてもよい。例えば、クラブラン酸ならびに前駆体用の有機溶媒としてメチルイソブチルケトンを用いてもよく、メチルイソブチルケトンは0.1ないし7.5体積%、典型的には1ないし3%、例えば2.0±0.5%の溶解された水を含んでいてもよい。例えば、接触領域において接触する場合には、水あるいは溶解した有機溶媒を含有する水のごとき水性媒体を添加することにより、水をクラブラン酸溶液および有機溶媒中の塩前駆体の溶液または懸濁液に提供してもよい。
【0031】
例えば上記のごとき本発明プロセスに使用する有機溶媒中に溶解された水が存在する場合には、その後、溶解したクラブラン酸塩が蓄積されるので、「塩析」効果により水を水相として分離してもよい。
【0032】
とりわけ、できるかぎり多くのクラブラン酸が有機溶媒中の溶液から水相へとその塩溶液として抽出され、水相中にクラブラン酸塩の濃縮溶液が形成されるように、プロセスの操作条件、例えば、反応物濃度、使用溶液の割合、流速、接触時間等を選択する。好ましい具体例におけるクラブラン酸カリウムの場合、水相中のクラブラン酸カリウム濃度が約10ないし40重量%(約0.4ないし1.7M)、例えば20ないし30重量%(約0.8ないし1.2M)となるように操作条件を選択する。この濃度のクラブラン酸カリウムの溶液濃度では、最適な収率および改善された純度が得られ、さらなる処理工程が促進されることがわかっている。
【0033】
プロセスにおいて、分離された水相中のクラブラン酸カリウムのごときクラブラン酸塩濃度を例えば比重によりまたは光学的にモニターすることは、他の操作条件を決定または制御する適当な方法である。
【0034】
クラブラン酸または塩前駆体化合物を導入して、まず化学量論的にクラブラン酸よりも過剰な塩前駆体化合物が存在するようにすべきである。例えば、前駆体を、クラブラン酸:前駆体化合物のモル比が1:1ないし1:2、典型的には1:1ないし1:1.5となるようにして、理論的に十分な塩前駆体化合物がすべてのクラブラン酸に確実に結合するようにしてもよい。
【0035】
クラブラン酸と塩前駆体化合物とが接触する領域に存在する水の量は、適当には、水相中の塩、例えば上記クラブラン酸カリウムの所望濃度が実際に得られるのに最小必要量とすべきである。
【0036】
本発明方法は、既知精製プロセスによれば混入される、上記精製プロセスにおいて使用されるアミンのごとき痕跡量の不純物を含まないクラブラン酸塩、例えばクラブラン酸カリウムを提供する。かかる不純物を含まないクラブラン酸塩は研究室スケールでは知られているが、医薬処方の製造に使用されるかかる塩、詳細にはクラブラン酸カリウムの大量生産は新規である。
【0037】
したがって、本発明のさらなる態様は、細菌感染の治療のための医薬処方を提供し、該処方は、クラブラン酸塩、例えば上記のもの、詳細にはクラブラン酸カリウムを含んでなり、実質的にt−ブチルアミン、ジエチルアミン、トリ−(低級アルキル)アミン、メチルアニリンまたはN,N'−ジイソプロピルエチレンジアミンのごとき有機アミン(遊離アミンとしてもその誘導体もしくは塩としても)を含まない。
【0038】
適当には、処方は、処方中に存在するクラブラン酸塩の重量に対して0.05重量%未満、例えば0.005重量%未満、好ましくは0.0005重量%未満、望ましくは0.00005重量%未満の有機アミンを含む。
【0039】
処方は、1種またはそれ以上の抗生物質、適当にはペニシリンおよびセファロスポリンのごときβ−ラクタム抗生物質を含んでいてもよい。適当な抗生物質は、既知の抗生物質処方においてクラブラン酸と混合される抗生物質、例えばアモキシシリン(例えば、その三水和物形態)およびチカルシリンを包含する。処方は、クラブラン酸:抗生物質の比がかかる組み合わせを用いる場合に知られている範囲、例えば、もとのクラブラン酸と抗生物質との比が重量比で12:1ないし1:1であってもよい。
【0040】
処方は、既知の添加物および賦形剤、例えば充填剤、結合剤、崩壊剤、発泡剤、着色料、香料、乾燥剤等、例えばGB2005538においてクラブラン酸カリウム含有処方に用いるためにリストされたものを含んでいてもよい。処方は、セルロース誘導体、例えばAvicel(商標)またはSyloid(商標)のごとき微細結晶セルロース、二酸化ケイ素またはショ糖のごとき物質をクラブラン酸カリウムとともに含んでいてもよい。処方は、例えば、セルロース誘導体、二酸化ケイ素またはショ糖とクラブラン酸カリウムとの、例えば1:1の混合物を含んでいてもよい。
【0041】
また本発明は、上記の実質的に有機アミンを含まないクラブラン酸塩の、細菌感染治療のための医薬処方の製造における使用を提供する。
【0042】
下記実施例は本発明を例示説明する。
【実施例1】
【0043】
約20000μg/mlの力価のクラブラン酸粗水溶液を、下記手順のいずれかにより調製する。
a)ブロスのRVF濾過、ついで、発酵ブロスのイオン交換クロマトグラフィー
b)ブロスの限外濾過、ついで、発酵ブロスのRO濃縮
【0044】
硫酸を用いてpHを1.5として酢酸エチルで水溶液を抽出する。活性化粒状炭素のカラムに通す前にクラブラン酸豊富溶媒を冷却し、脱水する。ついで、精製溶媒抽出物を共沸蒸留して含量約20000μg/ml、水分含量0.2%のクラブラン酸溶液を得る。IPA中のヘキサン酸エチルカリウム溶液を濃縮溶液に添加してクラブラン酸をカリウム塩として沈殿させる。単離生成物は、結晶形態を改善するために再結晶が必要であるかもしれない。
【実施例2】
【0045】
上記a)またはb)により調製された力価約20000μg/mlのクラブラン酸粗水溶液を、硫酸でpH1.5としてMIBKで抽出する。活性化粒状炭素のカラムに通す前にクラブラン酸豊富溶媒を冷却し、脱水する。ついで、溶媒中のKEHを用いてpH5.1において精製溶媒抽出物を水で逆抽出する。全操作を連続的に行なう。使用済み溶媒をリサイクルさせてさらなる抽出に使用し、20ないし25重量%の濃度となるまで水性抽出物をリサイクルさせる。クラブラン酸カリウム水溶液をIPAで希釈し、粉末炭素で処理し、ついで、IPAまたはアセトンを添加することにより再結晶させる。この状態において共溶媒を用いてもよい。
【実施例3】
【0046】
クラブラン酸豊富酢酸エチル試料を下記のごとく調製した。
【0047】
クラブラン酸粗試料を水に溶解して力価を約145000μg/mlとし、硫酸でpH1.5とした。これを酢酸エチル中に抽出し、ついで、共沸的に蒸留してクラブラン酸含量21573μg/ml、水分含量0.2%の溶液を得た。100mlの上記溶液に7.5mlのイソプロパノール中2NのKEH溶液を12分かけて添加したところ、沈殿が生じた。生成物であるクラブラン酸カリウムを単離し、湿ケークをアセトンで洗浄し、ついで、10mlのメタノールおよび水の混合物中に溶解した。これに20分かけて100mlのイソプロパノール/混合物を添加したところ、白色のクラブラン酸カリウムが棒状物質および核のある棒状物質として沈澱した。
生成物重量=2.03g
生成物純度=純粋な遊離酸として83.0%
豊富溶媒からの収率=78%
【実施例4】
【0048】
クラブラン酸前ブロスの限外濾過、ついで、RO濃縮によりクラブラン酸粗溶液を調製した。濃度20.3%の水性の逆抽出物を、実施例2の方法と同様にして調製した。この溶液100mlにIPA(100ml)を添加した。得られた油状物質をセライトのベッドによる濾過により除去した。攪拌しながらIPA(2000ml)をゆっくりと濾液に添加した。IPA添加終了時に酢酸エチル(300ml)を添加し、得られたスラリーを冷却し、1時間攪拌してから濾過し、生成物を乾燥させた。
生成物重量=21.0g
結晶化段階での収率=86.3%
生成物純度=純粋な遊離酸として83.2%
生成物水分含量=0.3%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間体アミン塩を形成することによって前精製されていないクラブラン酸をカリウム塩として直接沈殿させることによる、そして、溶液中のクラブラン酸と溶液中のカリウムイオンとの反応による、医薬上許容される品質のクラブラン酸カリウムの製造方法であって、発酵プロセスから生じるクラブラン酸の遊離酸が有機溶媒中に抽出されることにより有機溶媒中でクラブラン酸の溶液を形成させる方法であって、
カリウム塩を有機溶媒中で溶液中のクラブラン酸に添加し、
次いで、かかる形成されたクラブラン酸カリウムを、有機溶媒から水性媒体に逆抽出することにより有機溶媒に対する分離相としての水性媒体中にクラブラン酸カリウムの溶液を形成させ、
次いで、クラブラン酸カリウムの水溶液への有機沈殿溶媒の添加によりクラブラン酸カリウムの生成物を水溶液から沈殿させること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
医薬上許容される品質のクラブラン酸カリウムが、純粋な遊離酸として少なくとも80%の純度を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記カリウム塩が、有機酸のカリウム塩であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記カリウム塩が、2−エチルヘキサン酸カリウムであることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
水性媒体中のクラブラン酸の溶液が濃縮されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
沈殿溶媒が、水不混和性溶媒と混合されてもよい水混和性溶媒であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
沈殿溶媒が、アセトンまたはイソプロパノールであることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
クラブラン酸の力価が、1ミリリットルあたり100,000ないし200,000マイクログラムの範囲であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
クラブラン酸が、全ブロス発酵物より得られることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
全ブロス発酵物が濾過されることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
濾過が、限外濾過によることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
濾過が、逆浸透の前に行われることを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
濾過が、RVF(回転真空濾過)によるものである、請求項11記載の方法。
【請求項14】
濾過が、イオン交換クロマトグラフィーの前に行われることを特徴とする、請求項13記載の方法。

【公開番号】特開2010−13458(P2010−13458A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197755(P2009−197755)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【分割の表示】特願平9−507252の分割
【原出願日】平成8年7月30日(1996.7.30)
【出願人】(595047190)スミスクライン ビーチャム ピー エル シー (34)
【Fターム(参考)】