説明

クランプ式電流センサの磁気コア構造

【課題】クランプセンサ内に導入された、被測定導体に流されている微小電流の計測誤差を少なくする。
【解決手段】磁気コア10A,10Bに対して、それぞれの第1合わせ端部11,第2合わせ端部12に、基準端面部11a,12aの端面よりも突出する磁束収束用突起11b,12bを設け、右センサ部3および左センサ部4を閉止させて被測定導体Lを挟み込むと、第1,第2合わせ端部11,12それぞれの磁束収束用突起11b,12bがホール素子5a,5bに正対することとなり、磁気コア10内部の磁束密度が、ホール素子5a,5bのセンサ部に集中するため、結果、ホール素子5a,5bにて検出される磁束変化量も大きくなり、被測定導体Lに流されている電流が微小であった場合でも、計測誤差を少なくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉自在に形成されたクランプセンサが、その閉止時に接触する磁気コアの合わせ端部相互間に、すき間が介在する場合であっても、前記すき間から受ける計測上の悪影響を抑制することができるようにしたクランプセンサの磁気コア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、開閉自在なクランプセンサを備えてなるクランプ式電流計は、活線状態にある被測定導体をそのままクランプセンサ内に導入して電流値を計測することができることから、各種の分野において広く利用されている。そして、直流電流と交流電流を計測することができるクランプ式電流計として、閉止時に電流センサの合わせ端部相互間に生じるすき間に挟まれるようにホール素子を配置し、電流センサ内の磁束密度の変化を検知でるよう形成されたものも知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−43073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された従来のクランプ式電流計においては、その閉止時に電流センサの合わせ端部相互間にすき間が生じるのは、その構造上からも不可避的であるから、クランプセンサ内に被測定導体を導入して被測定導体に流れる微小の電流を計測する場合には、電流センサの合わせ端部相互間に生じる磁束密度の量が小さいため、計測誤差が大きくなることもあり、例えば磁束変化を検出するために使用するホール素子の厚さを薄く形成することで、閉止時に電流センサの合わせ端部相互間に生じるすき間を小さくしなければならないという設計上の煩雑さがあった。
【0005】
また、従来のクランプ式電流計における磁気コアでは、ホール素子による効率的な磁束検知が困難であるという問題もある。例えば、図6(イ)は従来の磁気コア1000の側面図、図6(ロ)は従来の磁気コア1000を合わせ端部1001面側から見た正面図、図6(ハ)は従来の磁気コア1000を閉止させ電流センサを形成した状態で、被測定導体をクランプセンサ内に導入し電流値を計測した場合に、合わせ端部1001の面に生じる磁束密度の分布を等高線のグラフで示したものである。
【0006】
図6(ハ)より分かるように、従来の合わせ端部1001の面における磁束密度の分布は、外側の磁束密度量が大きく、中心に向かうにつれて磁束密度量が小さくなっており、合わせ端部1001の中央に磁束密度検知用のホール素子を配置した場合、ホール素子のセンサ部を通る磁束密度量が十分とはいえないために、誤差要因となる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、クランプセンサ内に導入された被測定導体に流されている電流の大小に関わらず計測誤差を少なくして計測することができるクランプ式電流センサを実現し得る磁気コア構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、計器本体に開閉自在に軸支される左右一対の左側センサ部と右側センサ部とからなり、かつ、両センサ部の閉止時に磁気コアが略円環形状となって被測定導体を挟み込み、それぞれの合わせ端部を介して相互の直接的もしくは間接的な接触による閉磁路が形成され、被測定導体を流れる電流により生ずる磁束をホール素子で検知することにより、被測定導体に流れる電流を検出するクランプ式電流センサの磁気コア構造であって、少なくともホール素子に対向する一方のセンサ部における磁気コアの合わせ端部には、ホール素子のセンサ部よりも面積が大である基準端面部より突出する磁束収束用突起を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載のクランプ式電流センサの磁気コア構造において、前記磁束収束用突起は、ホール素子に対向する左右両方の磁気コアの合わせ端部に設けるものとし、左側磁気コアの磁束収束用突起と右側磁気コアの磁束収束用突起を結ぶ仮想磁路中にホール素子のセンサ部を配置するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、前記請求項2に記載のクランプ式電流センサの磁気コア構造において、前記左側磁気コアの磁束収束用突起と右側磁気コアの磁束収束用突起の形状は、ホール素子のセンサ部と同一形状としたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、前記請求項1に記載のクランプ式電流センサの磁気コア構造において、前記磁束収束用突起は、ホール素子に対向する左右両方の磁気コアの合わせ端部に設けるものとし、左側磁気コアの磁束収束用突起と右側磁気コアの磁束収束用突起の形状は、互いに異なる形状としたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、前記請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のクランプ式電流センサの磁気コア構造において、磁束収束用突起形成凸部を設けた同一形状の透磁性板材を積層処理することにより、透磁性板材の積層方向に同一形状となる磁束収束用突起が形成されるようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に係る発明は、前記請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のクランプ式電流センサの磁気コア構造において、前記左側センサ部および/または右側センサ部にゼロフラックス方式用の帰還コイルを設けるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係るクランプ式電流センサの磁気コア構造によれば、計器本体に開閉自在に軸支される左右一対の左側センサ部と右側センサ部とからなり、かつ、両センサ部の閉止時に磁気コアが略円環形状となって被測定導体を挟み込み、それぞれの合わせ端部を介して相互の直接的もしくは間接的な接触による閉磁路が形成され、被測定導体を流れる電流により生ずる磁束をホール素子で検知することにより、被測定導体に流れる電流を検出するクランプ式電流センサの磁気コア構造であって、少なくともホール素子に対向する一方のセンサ部における磁気コアの合わせ端部には、ホール素子のセンサ部よりも面積が大である基準端面部より突出する磁束収束用突起を設けたので、磁気コア内部の磁束密度が磁束収束用突起に集中するため、ホール素子のセンサ部に検出される磁束密度の変化量を効果的に大きくすることが出来る。
【0015】
また、請求項2に係るクランプ式電流センサの磁気コア構造によれば、前記磁束収束用突起は、ホール素子に対向する左右両方の磁気コアの合わせ端部に設けるものとし、左側磁気コアの磁束収束用突起と右側磁気コアの磁束収束用突起を結ぶ仮想磁路中にホール素子のセンサ部を配置するようにしたので、左右両側の磁束収束用突起によって磁束が集中した磁路中に配置されたホール素子のセンサ部にて検出される磁束密度の変化量も大きくなり、被測定導体に流されている電流が微小であった場合でも、計測誤差を少なくできる。
【0016】
また、請求項3に係るクランプ式電流センサの磁気コア構造によれば、前記左側磁気コアの磁束収束用突起と右側磁気コアの磁束収束用突起の形状は、ホール素子のセンサ部と同一形状としたので、ホール素子のセンサ部にて検出される磁束密度の変化量を効果的に高めることが出来る。
【0017】
また、請求項4に係るクランプ式電流センサの磁気コア構造によれば、前記磁束収束用突起は、ホール素子に対向する左右両方の磁気コアの合わせ端部に設けるものとし、左側磁気コアの磁束収束用突起と右側磁気コアの磁束収束用突起の形状は、互いに異なる形状としたので、双方の磁束収束用突起の形状に応じた磁路が生ずることとなり、ホール素子の配設位置に応じた好適な検知状態となるような設計を高い自由度で行える。
【0018】
また、請求項5に係るクランプ式電流センサの磁気コア構造によれば、磁束収束用突起形成凸部を設けた同一形状の透磁性板材を積層処理することにより、透磁性板材の積層方向に同一形状となる磁束収束用突起が形成されるようにしたので、一種類の抜き型で磁気コアを作成することが可能となり、初期投資費用を少なくできる。
【0019】
また、請求項6に係るクランプ式電流センサの磁気コア構造によれば、前記左側センサ部および/または右側センサ部にゼロフラックス方式用の帰還コイルを設けるようにしたので、磁気コアの磁束変化量が小さくなり、これにより、より確度の向上及び、測定電流範囲と測定周波数帯域を広げることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明に係るクランプ式電流センサの磁気コア構造の最良の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
本発明を適用可能なクランプ式電流センサ1は、例えば、直流電流と交流電流を計測することができるものであり、計器本体2に開閉自在に軸支される左右一対の左側センサ部3と右側センサ部4とからなり、かつ、両センサ部3,4の閉止時に、内部の磁気コア10A,10Bが略円環形状となって被測定導体L(例えば、活線状態の電線)を挟み込み、それぞれの合わせ端部を介して相互の直接的もしくは間接的な接触による閉磁路が形成され、被測定導体Lを流れる電流により生ずる磁束をホール素子5a,5bで検知することにより、被測定導体Lに流れる電流を検出するものである。左側センサ部3および右側センサ部4の両方、或いはどちらか一方にゼロフラックス方式用の帰還コイルを設ければ、より確度の向上及び、測定電流範囲と測定周波数帯域を広げることもできる。
【0022】
なお、本実施形態においては、左側センサ部3に設ける左側磁気コア10Aと右側センサ4に設ける右側磁気コア10Bは、同一のものを用いるものとしたので、以下では、特に区別する必要のない場合は、左側磁気コア10Aと右側磁気コア10Bを総称して単に磁気コア10とよぶ。
【0023】
磁気コア10は、図2(イ)の側面図に示すような半円弧状で、図2(ロ)の正面図に示すような厚さを有するもので、ホール素子5aに対向する第1合わせ端部11と、ホール素子5bに対向する第2合わせ端部12を備える。そして、磁気コア10の第1合わせ端部11は、ホール素子5aのセンサ部よりも面積が大である基準端面部11aより突出する磁束収束用突起11bを設けたものであり、第2合わせ端部12は、ホール素子5bのセンサ部よりも面積が大である基準端面部12aより突出する磁束収束用突起12bを設けたものである。
【0024】
第1,第2合わせ端部11,12の磁束収束用突起11b,12bは、それぞれホール素子5a,5bに対向させて設けるもので、左側磁気コア10Aの磁束収束用突起11bと右側磁気コア10Bの磁束収束用突起11bを結ぶ仮想磁路中(概ね、基準端面部11aに直交する仮想線上)にホール素子5aのセンサ部を配置し、左側磁気コア10Aの磁束収束用突起12bと右側磁気コア10Bの磁束収束用突起12bを結ぶ仮想磁路中にホール素子5bのセンサ部を配置する。
【0025】
これにより、磁気コア10内部の磁束密度の変化量が微小であっても、磁束が流出あるいは流入する第1,第2合わせ端部11,12においては、磁束収束用突起11b,12bに磁束を効果的に集中させることができるため、左側磁気コア10Aの磁束収束用突起11bと右側磁気コア10Bの磁束収束用突起11bを結ぶ仮想磁路中に配置したホール素子5aおよび左側磁気コア10Aの磁束収束用突起12bと右側磁気コア10Bの磁束収束用突起12bを結ぶ仮想磁路中に配置したホール素子5bで検出される磁束変化量が大きくなり、計測誤差を抑制できる。
【0026】
図2(ハ)は、磁気コア10を閉止させ電流センサを形成した状態で、被測定導体をクランプセンサ内に導入し電流値を計測した場合に、縦5mm横4mmの合わせ端部11,12に生じる磁束密度の分布を等高線で示した特性図である。合わせ端部11に設ける磁束収束用突起11bは、高さ0.5mm、幅1.1mmである。図2(ハ)の特性図より、合わせ端部11での磁束密度の分布は、磁束収束用突起11b上で最も大きくなることが明らかであるから、左右の磁気コア10A,10Bの磁束収束用突起11bに挟まれるように配置したホール素子5aにて検出される磁束密度の変化量も大きくなり、被測定導体Lに流されている電流が微小であっても、計測誤差を少なくできる。
【0027】
なお、本実施形態の磁気コア10においては、第1,第2合わせ端部11,12の両方に磁束収束用突起11b,12bを設けるものとしたが、ホール素子5が片側にしかない場合は、一方の合わせ端部に磁束収束用突起を設けておけばよい。また、ホール素子5の両側に磁束収束用突起を設けるものに限らず、一方にのみ磁束収束用突起を設けるだけでも、ホール素子5のセンサ部で検出できる磁束密度を高めることが出来る。さらに、ホール素子5の両側に設ける磁束収束用突起は必ずしも同一形状である必要はなく、ホール素子5の両側で各々異なる形状の磁束収束用突起を設けても構わない。
【0028】
次に、上述した第1実施形態に係る磁気コア10の製造工程の一例を、図3に基づき説明する。
【0029】
例えば、図3(イ)に示すように、半円弧状の薄い透磁性板材であるパーマロイ材13の一方の第1端部131には、磁気コア10の合わせ端部11における基準端面部11aとなる凹端部131aと、磁束収束用突起11bとなる凸端部131bを設け、他方の第2端部132には、磁気コア10の合わせ端部12における基準端面部12aとなる凹端部132aと、磁束収束用突起12bとなる凸端部132bを設けてあり、複数枚のパーマロイ材13を接着または、溶接、かしめ、などで積層処理することにより、図3(ロ)に示すように、挟み込む被測定導体導と同一方向に、直線形状になった磁束収束用突起11b,12bが形成される。
【0030】
このように、同一形状のパーマロイ材13を積層することで磁気コア10を製造する場合には、磁束収束用突起11b,12bを形成することが容易であると共に、一種類の抜き型で磁気コア10を製造できることから、初期投資費用を抑制できるという利点もある。
【0031】
なお、同一形状のパーマロイ材13を積層することで磁気コア10を製造する方法は、あくまでも製造方法の一例であり、特に、この製造方法に限定されるものではない。例えば、透磁性板材として、パーマロイ材の変わりにフェライト、珪素鋼板、アモルファス等を使用しても良いし、磁気コア生成後に端部を研磨、または切断することで、それぞれの磁気コアに磁束収束用突起を形成するようにしてもよい。その他、従来形状の磁気コアの平坦な合わせ端部に対して、別途作成した磁束収束用突起形状の部材を接着する等して磁束収束用突起を形成することもできる。
【0032】
次に、第2実施形態に係る磁気コア20の構造と、その製造工程の一例を、図4に基づき説明する。
【0033】
例えば、図4(イ)に示すように、半円弧状の薄い短パーマロイ材23と、同じく半円形状の薄い長パーマロイ材24とを適宜に積層処理することで、図4(ロ)に示すように、ホール素子5aに対向する第1合わせ端部21と、ホール素子5bに対向する第2合わせ端部22を備える磁気コア20を製造する。
【0034】
この磁気コア20は、第1合わせ端部21の基準端面部21aを短パーマロイ材23の第1端面231により生ぜしめ、第1合わせ端部21の磁束収束用突起21bを長パーマロイ材24の第1端面241により生ぜしめ、第2合わせ端部22の基準端面部22aを短パーマロイ材23の第2端面232により生ぜしめ、第2合わせ端部22の磁束収束用突起22bを長パーマロイ材24の第2端面242により生ぜしめたものである。
【0035】
本実施形態の磁気コア20においては、長パーマロイ材24の突出する端部(短パーマロイ材23よりも突出する部分)がそのまま磁束収束用突起21b,22bとなるので、上述した第1実施形態の磁気コア10のように、薄いパーマロイ材13に磁束収束用突起11b,12bとなる凸端部131b,132bを設けておく必要がないので、簡単な形状の抜き型で短パーマロイ材23および長パーマロイ材24を作成できるという利点がある。
【0036】
また、本実施形態の磁気コア20における磁束収束用突起21b,22bは、挟み込む被測定導体導と直交する方向に、直線状に形成されるので、上述した第1実施形態の磁気コア10の磁束収束用突起11b,12bとは直交する向きに磁束収束用突起21b,22bが形成されることとなる。従って、クランプ式電流センサにおける一方のセンサ部に磁気コア10を、他方のセンサ部に磁気コア20を用いれば、磁気コア10の磁束収束用突起11b(又は12b)と磁気コア20の磁束収束用突起21b(又は22b)が直交して正対するような配置となるため、磁気コア10,20内部の磁束密度が磁束収束用突起11b(又は12b)と磁束収束用突起21b(又は22b)が直交する一点に集中することとなり、この直交点にホール素子5a(又は5b)のセンサ部が位置するような配置構造に設定しておけば、左側センサ部3と右側センサ部4に各々同じ磁気コアを用いた場合(ホール素子5a,5bを挟んで対向する磁束収束用突起の形状が同じ場合)よりも、ホール素子5a,5bのセンサ部にて検出される磁束密度の変化量が大きくなり、被測定導体に流されている電流が微小であった場合でも、計測誤差を一層少なくできる。
【0037】
次に、第3実施形態に係る磁気コア30の構造と、その製造工程の一例を、図5に基づき説明する。
【0038】
例えば、図5(イ)に示すように、半円弧状の無突起パーマロイ材33と、同じく半円形状の薄い有突起パーマロイ材32とを適宜に積層処理することで、図5(ロ)に示すように、ホール素子5aに対向する第1合わせ端部31と、ホール素子5bに対向する第2合わせ端部32を備える磁気コア30を製造する。
【0039】
この磁気コア30は、第1合わせ端部31の基準端面部31aを無突起パーマロイ材33の第1端面331および有突起パーマロイ材34の第1端部341における凹端部341aにより生ぜしめ、第1合わせ端部31の磁束収束用突起31bを有突起パーマロイ材34の第1端面341における凸端部341bにより生ぜしめ、第2合わせ端部32の基準端面部32aを無突起パーマロイ材33の第2端面332および有突起パーマロイ材34の第2端部342における凹端部342aにより生ぜしめ、第2合わせ端部32の磁束収束用突起32bを有突起パーマロイ材34の第2端面342における凸端部342bにより生ぜしめたものである。
【0040】
本実施形態の磁気コア30においては、有突起パーマロイ材34の第1,第2端部341,342における凸端部341b,342bが積層された部分のみが磁束収束用突起31b,32bとなるので、上述した第1,第2実施形態の磁気コア10,20の磁束収束用突起11b,12b,21b,22bよりも小さく形成することができる。これにより、本実施形態の磁気コア30では、磁気コア30内部の磁束密度が、磁束収束用突起31b,32bに集中するため、結果として、磁束収束用突起31b(又は32b)に挟まれるように配置したホール素子5a(又は5b)にて検知される磁束密度の変化量も大きくなり、被測定導体に流されている電流が微小であった場合でも、計測誤差をより少なくできる。加えて、磁気コア30の磁束収束用突起31b,32bを、ホール素子5a,5bのセンサ部と同一形状としておけば、ホール素子5a,5bにて検知される磁束密度の変化量を効果的に高めることが出来る。
【0041】
なお、本実施形態の磁気コア30は、上述のように無突起パーマロイ材33と有突起パーマロイ材34の2種類の板材を積層処理して製造する場合、前述した第1実施形態の磁気コア10よりも製造工程が煩雑となり、また、有突起パーマロイ材34には複雑な形状の抜き型が必要であるから、前述した第2実施形態の磁気コア20よりもコストアップとなるため、左右センサ部3,4の両方に磁気コア30を用いると、クランプ式電流センサのコストアップが懸念される。そこで、左右センサ部3,4の一方に磁気コア30を用い、他方には前述した磁気コア10又は磁気コア20を用いるようにしても良い。片側のみ磁気コア30を採用した場合でも、磁気コア30内部の磁束密度が磁束収束用突起31b(又は32b)の一点に集中するので、この磁束収束用突起31b(又は32b)にホール素子5a(又は5b)のセンサ部が近接する配置構造に設定しておけば、磁束密度の変化量を大きくすることが可能であり、被測定導体に流されている電流が微小であった場合でも、計測誤差を少なくできる。
【0042】
以上、本発明に係るクランプ式電流センサの磁気コア構造の実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明の包摂範囲は、これらの実施形態に限定されるものではなく、公知既存の手法を適宜転用することで実現しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る磁気コア構造の第1実施形態を適用したセンサ部の動作説明図である。
【図2】(イ)は第1実施形態に係る磁気コアの側面図、(ロ)は第1実施形態に係る磁気コアの正面図、(ハ)は第1実施形態に係る磁気コア一対を閉止させて電流センサを形成した状態で電流値を計測したときに合わせ端部に生ずる磁束密度の分布を示す特性図である。
【図3】第1実施形態に係る磁気コア構造の製造工程を示す説明図である。
【図4】第2実施形態に係る磁気コア構造の製造工程を示す説明図である。
【図5】第3実施形態に係る磁気コア構造の製造工程を示す説明図である。
【図6】(イ)は従来の磁気コアの側面図、(ロ)は従来の磁気コアの正面図、(ハ)は従来の磁気コア一対を閉止させて電流センサを形成した状態で電流値を計測したときに合わせ端部に生ずる磁束密度の分布を示す特性図である。
【符号の説明】
【0044】
1 クランプ式電流センサ
2 計器本体
3 左側センサ部
4 右側センサ部
10 磁気コア(第1実施形態)
11 第1合わせ端部
11a 基準端面部
11b 磁束収束用突起
12 第2合わせ端部
12a 基準端面部
12b 磁束収束用突起
13 パーマロイ材
131 第1端部
131a 凹端部
131b 凸端部
132 第2端部
132a 凹端部
132b 凸端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計器本体に開閉自在に軸支される左右一対の左側センサ部と右側センサ部とからなり、かつ、両センサ部の閉止時に磁気コアが略円環形状となって被測定導体を挟み込み、それぞれの合わせ端部を介して相互の直接的もしくは間接的な接触による閉磁路が形成され、被測定導体を流れる電流により生ずる磁束をホール素子で検知することにより、被測定導体に流れる電流を検出するクランプ式電流センサの磁気コア構造であって、
少なくともホール素子に対向する一方のセンサ部における磁気コアの合わせ端部には、ホール素子のセンサ部よりも面積が大である基準端面部より突出する磁束収束用突起を設けたことを特徴とするクランプ式電流センサの磁気コア構造。
【請求項2】
前記磁束収束用突起は、ホール素子に対向する左右両方の磁気コアの合わせ端部に設けるものとし、左側磁気コアの磁束収束用突起と右側磁気コアの磁束収束用突起を結ぶ仮想磁路中にホール素子のセンサ部を配置するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のクランプ式電流センサの磁気コア構造。
【請求項3】
前記左側磁気コアの磁束収束用突起と右側磁気コアの磁束収束用突起の形状は、ホール素子のセンサ部と同一形状としたことを特徴とする請求項2に記載のクランプ式電流センサの磁気コア構造。
【請求項4】
前記磁束収束用突起は、ホール素子に対向する左右両方の磁気コアの合わせ端部に設けるものとし、左側磁気コアの磁束収束用突起と右側磁気コアの磁束収束用突起の形状は、互いに異なる形状としたことを特徴とする請求項1に記載のクランプ式電流センサの磁気コア構造。
【請求項5】
磁束収束用突起形成凸部を設けた同一形状の透磁性板材を積層処理することにより、透磁性板材の積層方向に同一形状となる磁束収束用突起が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のクランプ式電流センサの磁気コア構造。
【請求項6】
前記左側センサ部および/または右側センサ部にゼロフラックス方式用の帰還コイルを設けるようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のクランプ式電流センサの磁気コア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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