説明

クリップ

【課題】異なる直径のボルトに取り付け可能であり、取り付けた際のボルトに対するぐらつきを抑制するクリップを提供する。
【解決手段】異なる直径のボルトに取り付け可能な筒状に形成されたクリップ10において、ボルトを挿入する挿入孔が設けられる。一対の係止爪14は、挿入孔に挿入されたボルトを係止する。内壁16は、係止爪14が対向する第1方向と略直交する第2方向に弾性変形可能である。内壁は、取り付け対象であるボルトのうち最大径のボルトが挿入された場合に、第2方向に弾性変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる直径のボルト等の棒状体に取り付け可能なクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のワイヤーハーネスを結束した状態で、突出するボルトに固定されるクリップが用いられている。このようなクリップはボルトの直径に応じて提供されることが一般的である。しかしながらボルトの直径にあわせてクリップを製造する場合より、異なる直径のボルトに取り付け可能なクリップを製造した方が製造コストを抑えられる。
【0003】
たとえば特許文献1には、異なる直径のボルトに取り付けられるボルトクランプが開示されている。特許文献1に記載のボルトクランプは、筒状本体の内側に、対向する二つの側壁と、これら側壁間で対向し、可撓腕にそれぞれ弾性支持された二つの係止爪とを一体成形した構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−179523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、側壁の間隔が取り付け対象となるボルトのうち最大径のボルトに対応するように設定してあるため、取り付け対象の最小径のボルトを挿入した場合にボルトに対する筒状本体のぐらつきが問題となる。とくに自動車に用いる場合、多くの振動が発生するため、ボルトに取り付けられたボルトクランプが結束したハーネスとともにぐらつき、周囲の部品に接触するハーネスが摩耗するおそれがある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なる直径のボルト等の棒状体に取り付け可能であり、取り付けた際の棒状体に対するぐらつきを抑制するクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のクリップは、異なる直径の棒状体に取り付け可能な筒状に形成されたクリップであって、棒状体を挿入する挿入孔と、挿入孔に挿入された棒状体を係止する一対の係止爪と、係止爪が対向する第1方向と略直交する第2方向に弾性変形可能な内壁と、を備える。このクリップの内壁は、取り付け対象である棒状体のうち最大径の棒状体が挿入された場合に、第2方向に弾性変形する。この態様によると、挿入された最大径の棒状体に対する第2方向のぐらつきを抑えることができる。また、取り付け対象である最大径の棒状体を弾性変形して支持できる内壁を設けたことで、最小径の棒状体に対してもぐらつきを少なくすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、異なる直径のボルト等の棒状体に取り付け可能であり、取り付けた際の棒状体に対するぐらつきを抑制することができる。また、取り付け対象である最大径の棒状体を弾性変形して支持できる内壁を設けたことで、最小径の棒状体に対してもぐらつきを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るクリップの上面側の斜視図である。
【図2】実施形態に係るクリップの下面側の斜視図である。
【図3】実施形態に係るクリップの上面図である。
【図4】実施形態に係るクリップの断面図である
【図5】実施形態に係るクリップの断面図である。
【図6】実施形態に係るクリップの内壁の作用を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係るクリップ10の上面側の斜視図である。また、図2は、実施形態に係るクリップ10の下面側の斜視図である。また、図3は、実施形態に係るクリップ10の上面図である。また、図4および図5は、実施形態に係るクリップ10の断面図である。図4は図3に示すクリップ10のA−A断面図であり、図5は図3に示すクリップ10のB−B断面図である。
【0011】
クリップ10は、たとえば自動車のワイヤーハーネスを結束バンド(不図示)により結束した状態で、車体パネルなどの部材から突出するスタッドタイプのボルトに取り付けられる。クリップ10は、筒状に形成され、異なる直径のボルトに取り付け可能に樹脂材料により一体成形される。
【0012】
一対の側壁28a,28b(これらを区別しない場合は「側壁28」という)が平行に対向して台座部24に立設される。一対の外壁18a,18b(これらを区別しない場合は「外壁18」という)が平行に対向して台座部24に立設される。側壁28aおよび側壁28bは第1方向に対向し、外壁18aおよび外壁18bは第1方向に略直交する第2方向に対向する。側壁28および外壁18は、端部が互いに連結されており、ボルトが挿入される空間である挿入孔40を囲繞するように配置される。台座部24の下面の中央に、開口した挿入口38が形成される。挿入口38から上方に伸びる空間が挿入孔40であり、挿入孔40はボルトの受け入れ空間として形成されている。また台座部24の下面には、成形用抜き孔36が形成される。外壁18bの外側にはバックル26が設けられ、バックル26はたとえば結束バンドを係止するための留め具として機能する。なお、バックル26以外にも別の種類の留め具を外壁18に取り付けてよい。
【0013】
一対の可撓腕12a,12b(これらを区別しない場合は「可撓腕12」という)は、一対の側壁28の間に第1方向に対向して台座部24に立設されている。可撓腕12aおよび可撓腕12bの対向面は、クリップ10の上面視において、挿入されるボルトの形状に応じて円弧状に形成される。図4に示すように可撓腕12は、第1方向の厚さについて上端部が下端部より薄くなっており、第1方向に撓む弾性を有する。
【0014】
一対の可撓腕12のそれぞれには係止爪14aおよび係止爪14b(これらを区別しない場合は「係止爪14」という)が突設されており、一対の係止爪14は、可撓腕12と同様に第1方向に対向して配置される。係止爪14aおよび係止爪14bの対向面はボルトを囲むようボルトの形状に応じた円弧状に形成され、ボルトのねじ部に嵌るよう薄くなっている。係止爪14は挿入孔40に挿入されたボルトを係止する。具体的には、挿入孔40にボルトが挿入されると、一対の可撓腕12が第1方向にて離れる方向に動かされる。そのとき、可撓腕12は一対の係止爪14をボルトに向かって付勢し、ボルトのねじ部に嵌った一対の係止爪14がボルトを挟持する。可撓腕12および係止爪14により、取り付けたボルトに対する第1方向のぐらつきを抑える。
【0015】
内壁16aおよび内壁16b(これらを区別しない場合は「内壁16」という)は、外壁18の内側に、外壁18に対向して平行に配置される。内壁16は、弾性を有するように薄く形成され、第2方向に弾性変形可能である。内壁16と外壁18との間には内外壁空間22が形成される。
【0016】
内壁16aと内壁16bとの間隔は、取り付け対象となるボルトの直径に応じて定められる。たとえば、内壁16aと内壁16bとの間隔は、取り付け対象である最大径のボルトの直径より狭く、取り付け対象である最小径のボルトの直径以上の幅に定められる。これにより、取り付け対象であるボルトのうち最大径のボルトが挿入された場合に、内壁16は最大径のボルトによって第2方向にて間隔を広げる向きに弾性変形する。なお、内壁16aと内壁16bとの間隔は、最小径のボルトの直径より狭く設定されてもよい。
【0017】
内壁16aと内壁16bとの間隔が最小径のボルトの直径と同じ場合、取り付け対象であるボルトのうち最小径のボルトが取り付けられる際に、内壁16は最小径のボルトに接触する。つまり内壁16は挿入されたボルトを支持し、挿入されたボルトに対する第2方向のぐらつきを抑えることができる。また、内壁16がボルトを線接触で支持することにより、ボルトを点接触で支持する場合と比べて安定して支持することができる。このように、可撓腕12および係止爪14により第1方向にて支持し、内壁16により第2方向にて支持することで、ボルトを四方から安定して支持することができる。
【0018】
図2および図4に示すように、可撓腕12の下方の台座部24には傾斜部42が形成されている。傾斜部42を設けることでボルトの挿入を容易にすることができる。なお内壁16は、図5に示すようにボルトの挿入を阻害しないよう台座部24の下面の位置には形成されていない。図2に示すようにガイド部34a、ガイド部34b、ガイド部34cおよびガイド部34d(とくに区別しない場合は「ガイド部34」という)が、台座部24の下面から配設されており、ボルトをスムーズに挿入孔40の上方に導く。実施形態のガイド部34は、台座部24と内壁16とを連結している。このようにガイド部34で内壁16の下端を支持することで内壁16を補強して内壁16の挟持力を高めることができ、挿入されたボルトに対する第2方向のぐらつきを抑えることができる。また、ボルトの挿入時にボルトが内壁16の下端に接触せず、スムーズな挿入孔40への挿入を補助することができる。
【0019】
外壁18aの内側には第1張出部20aが設けられ、外壁18bの内側には第1張出部20bが設けられる。第1張出部20aおよび第1張出部20b(これらを区別しない場合は「第1張出部20」という)は、上面視にて挿入孔40に挿入されたボルトの中心軸を通る第2方向において中心軸に向かって張り出す。この挿入孔40に挿入されたボルトの中心軸は、挿入孔40の中心軸であり、以下では単に中心軸という場合がある。第1張出部20は、中心軸と平行して凸状に形成されたリブであってよい。第1張出部20は、内壁16が過度に第2方向外向きに変形しないように内壁16の変形を止めることができる。これにより、ボルトに対する第2方向へのクリップ10の過度のぐらつきを抑え、係止爪14とボルトのねじ部との嵌合がはずれる可能性を低減することができる。
【0020】
図2および図5に示すように、外壁18の内側に第2張出部32aおよび第2張出部32b(とくに区別しない場合は「第2張出部32」という)が設けられる。第2張出部32は、ボルトの挿入口38側に設けられ、第1張出部20とつながっており、第2張出部32の上端は内壁16の下端より下に位置する。第2張出部32は、中心軸と平行して凸状に形成されたリブであってよい。
【0021】
第2張出部32は、上面視にて挿入孔40に挿入されたボルトの中心軸を通る第2方向において中心軸に向かって張り出し、第1張出部20より内側に張り出している。これにより挿入したボルトの根元におけるクリップ10の第2方向へのぐらつきを抑えることができる。クリップ10は挿入されたボルトに対して係止爪14に係止された箇所を基点としてぐらつくため、ボルトの根元でのぐらつきを抑えることは非常に効果的である。
【0022】
図1および図3に示すように、内壁16aの内側に接触部30aおよび接触部30bが中心軸と平行に設けられ、内壁16bの内側に接触部30cおよび接触部30dが中心軸と平行に設けられる。接触部30a、接触部30b、接触部30cおよび接触部30dを区別しない場合は「接触部30」という。接触部30は、中心軸と平行して延伸し、凸状に形成されたリブであってよい。4つの接触部30は挿入されるボルトを囲むように配置され、接触部30aおよび接触部30bは中心軸を通る第2方向の直線に対して線対称の位置に配置される。接触部30aと接触部30bとの間隔は、たとえば取り付け対象である最小径のボルトの直径より短くなるよう定められる。接触部30cおよび接触部30dも接触部30aおよび接触部30bと同様に配置される。接触部30は、挿入孔40に挿入されたボルトに接触する。接触部30を中心軸と平行に延伸するように設けることで、ボルトを線接触で支持することができ、ボルトに対する第1方向のぐらつきを抑えることができる。また、接触部30は弾性体である内壁16に設けられているため、異なる直径のボルトに対しても機能を発揮することができる。
【0023】
図2に示すようにガイド部34が接触部30に連結されている。これにより、ボルトの挿入時にスムーズにボルトを挿入孔40の上部まで、挿入孔40の中心軸にボルトの中心軸が略一致するように導くことができる。ガイド部34の間には第2張出部32が設けられている。
【0024】
図6は、実施形態に係るクリップ10の内壁16の作用を示す模式図である。図6(a)は取り付け対象である最小径のボルト44を挿入した際の上面図を示し、図6(b)は取り付け対象である最大径のボルト46を挿入した際の上面図を示す。なお、ボルトを係止する係止爪14等の図示は省略している。
【0025】
図6(a)では、内壁16aと内壁16bとの間隔が最小径のボルトの直径と同じに設定されており、内壁16がボルト44に接触している。したがって取り付け対象である最小径のボルトであっても、内壁16が第2方向からボルト44を支持することができる。また、接触部30がボルト44に接触し、ボルト44に対する第1方向のぐらつきを抑えている。
【0026】
図6(b)では内壁16がボルト46により第2方向に大きく弾性変形させられている。第1方向についても可撓腕12および係止爪14により弾性変形して係止でき、ボルトを第1方向および第2方向に弾性変形して支持することができるため異なる直径のボルトに対して取り付け可能となる。第1張出部20はボルトに対して過度にぐらついた際のストッパーとして機能するため、最大径のボルトを挿入した場合でも、内壁16と第1張出部20との間に隙間が設けられる。
【0027】
なお、実施形態ではクリップの取り付け対象をボルトとして説明したが、棒状体であればよい。棒状体は周溝またはねじ部が形成され、係止爪14により係止可能に形成される。
【0028】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0029】
実施形態では外壁18に第1張出部20が設けられる態様を示したが、第1張出部20は内壁16に外側に向かって張り出すように設けられてよい。実施形態では第1張出部20および接触部30が軸方向に沿って連続して設けられているが、軸方向に沿って部分的に設けられてよい。また、図1では第1張出部20が凸状に形成される態様を示したが、たとえば外壁18全体が内側に盛り上がるような形状であってもよい。この場合、外壁から盛り上がって内側に張り出している部分を第1張出部20とする。
【0030】
実施形態では、内壁16が対向して設けられる態様を示したが、内壁が一つであってもよい。すなわち、一方の内外壁空間22が埋まって単なる壁となった状態である。これにより製造が容易となる。
【符号の説明】
【0031】
10 クリップ、 12a,12b 可撓腕、 14a,14b 係止爪、 16a,16b 内壁、 18a,18b 外壁、 20a,20b 第1張出部、 22 内外壁空間、 24 台座部、 26 バックル、 28a,28b 側壁、 30a〜30d 接触部、 32a,32b 第2張出部、 34a〜34d ガイド部、 36 成形用抜き孔、 38 挿入口、 40 挿入孔、 42 傾斜部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる直径の棒状体に取り付け可能な筒状に形成されたクリップであって、
棒状体を挿入する挿入孔と、
前記挿入孔に挿入された棒状体を係止する一対の係止爪と、
前記係止爪が対向する第1方向と略直交する第2方向に弾性変形可能な内壁と、を備え、
前記内壁は、取り付け対象である棒状体のうち最大径の棒状体が挿入された場合に、前記第2方向に弾性変形することを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記内壁の外側に、外壁を設け、
前記外壁には、前記挿入孔に挿入された棒状体の中心軸を通る前記第2方向において前記中心軸に向かって張り出す第1張出部が形成されることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記内壁の内側に設けられ、前記挿入孔に挿入された棒状体に接触する接触部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のクリップ。
【請求項4】
棒状体の挿入口側に設けられ、前記挿入孔に挿入された棒状体の中心軸を通る前記第2方向において前記中心軸に向かって張り出し、前記第1張出部より大きく張り出した第2張出部を備えることを特徴とする請求項2に記載のクリップ。
【請求項5】
棒状体の挿入口側に設けられ、前記内壁に連結されたガイド部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクリップ。
【請求項6】
前記内壁は、取り付け対象である棒状体のうち最小径の棒状体が取り付けられる場合に前記最小径の棒状体に接触することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のクリップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−231909(P2011−231909A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105194(P2010−105194)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】