説明

クリーニングブレード、画像形成装置、プロセスカートリッジ

【課題】経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、先端稜線部のめくれを抑制し、かつ、先端稜線部の被清掃部材に対する追随性を良好にでき当接圧を維持することが可能なクリーニングブレード、画像形成装置、及び、プロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】弾性ブレード622の先端稜線部62cが感光体3に当接するクリーニングブレード62において、弾性ブレードは、tanδピーク温度が0℃以上、且つ、JIS−A硬度の23℃から10℃における変化量が5°以上であるウレタンゴムであり、弾性ブレードの先端稜線部を含む部分にマルテンス硬度が250〜500N/mm、弾性仕事率が75%以下の紫外線硬化樹脂が含浸され、且つ、先端稜線部を含む弾性ブレードの表面に弾性ブレードよりも硬い表面層623を1μm以下の厚みで設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングブレード、画像形成装置、及び、プロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真式の画像形成装置では、被清掃部材たる感光体などの像担持体について、転写紙や中間転写体へトナー像を転写した後の表面に付着した不必要な転写残トナーはクリーニング手段たるクリーニング装置によって除去している。
このクリーニング装置のクリーニング部材として、一般的に構成を簡単にでき、クリーニング性能も優れていることから、短冊形状のクリーニングブレードを用いたものがよく知られている。このクリーニングブレードは、ポリウレタンゴムなどの弾性体で構成されている。そして、クリーニングブレードの基端を支持部材で支持して先端稜線部を像担持体の周面に押し当て、像担持体上に残留するトナーをせき止めて掻き落とし除去する。
【0003】
また、近年の高画質化の要求に応えるべく、重合法等により形成された小粒径で球形に近いトナー(以下、重合トナー)を用いた画像形成装置が知られている。この重合トナーは、従来の粉砕トナーに比べて転写効率が高いなどの特徴があり、上記要求に応えることが可能である。しかし、重合トナーは、クリーニングブレードを用いて像担持体表面から除去しようとしても十分に除去することが困難であり、クリーニング不良が発生してしまうという問題を有している。これは、小粒径で且つ球形度に優れた重合トナーが、ブレードと像担持体との間に形成される僅かな隙間をすり抜けるからである。
【0004】
かかるすり抜けを抑えるには、像担持体とクリーニングブレードとの当接圧力を高めてクリーニング能力を高める必要がある。しかし、クリーニングブレードの当接圧を高めると、図8(a)に示すように、像担持体123とクリーニングブレード62との摩擦力が高まり、クリーニングブレード62が像担持体123の移動方向に引っ張られて、クリーニングブレード62の先端稜線部62cがめくれてしまう。このめくれたクリーニングブレード62が、そのめくれに抗して原形状態に復元する際に異音が発生することがある。さらに、クリーニングブレード62の先端稜線部62cがめくれた状態でクリーニングをし続けると、図8(b)に示すように、クリーニングブレード62のブレード先端面62aの先端稜線部62cから数[μm]離れた箇所に局所的な摩耗が生じてしまう。このような状態で、さらにクリーニングを続けると、この局所的な摩耗が大きくなり、最終的には、図8(c)に示すように、先端稜線部62cが欠落してしまう。先端稜線部62cが欠落してしまうと、トナーを正常にクリーニングできなくなり、クリーニング不良を生じてしまう。
【0005】
特許文献1には、ポリウレタンエラストマーからなるクリーニングブレードの少なくとも先端稜線部に、鉛筆硬度B〜6Hの皮膜硬度を有する樹脂からなる表面層を設けたものが記載されている。ゴム部材よりも硬い鉛筆硬度B〜6Hの皮膜硬度を有する表面層を設けることで、クリーニングブレード当接部の摩擦係数を下げることができ、クリーニングブレードの耐摩耗性を高めることができる。また、像担持体とクリーニングブレードとの摩擦力を低減させることができ、クリーニングブレードの先端稜線部のめくれを良好に抑制することができる。さらに、鉛筆硬度B〜6Hの鉛筆硬度の表面層は、硬くて変形しにくいので、クリーニングブレードの先端稜線部のめくれをより一層抑制することができる。
【0006】
また、特許文献2には、シリコーンを含有した紫外線硬化材料を弾性ブレードのゴム部材に含浸させて膨潤させた後、紫外線照射処理してこの紫外線硬化材料を硬化させたクリーニングブレードが記載されている。このクリーニングブレードでは、ゴム部材の表面に含浸させた紫外線硬化材料によって表面が覆われている。このように、弾性ブレードよりも高硬度の紫外線硬化材料で表面を覆うことでも、耐摩耗性を向上でき、クリーニングブレードの先端稜線部のめくれを抑制することができる。さらに、ゴム部材に紫外線硬化材料を含浸させて硬化させることで、経時使用において弾性ブレードの表面を覆う紫外線硬化材料の層が摩耗しても、ゴム部材の基材と紫外線硬化材料とが混在したゴム部材よりも硬度が高い含浸部分が像担持体と接触する。これにより、硬度の低いゴム部材のみの部分が像担持体の表面に直接接触することに起因してクリーニングブレードと像担持体表面との摩擦係数が大きくなって異常摩耗や異音が発生する、という不具合を経時で抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の表面層を設けたクリーニングブレードや特許文献2の含浸部分を設けたクリーニングブレードでも、像担持体に形成される粉体量が非常に多い連続的なベタ画像形成時等のクリーニングに対して厳しい条件では、クリーニング不良を生じてしまうことがあった。これは、以下の理由によるものと考えられる。
すなわち、上記ゴム部材の先端面の長手方向にわたって表面層や含浸部分を設けているため、表面層や含浸部分の影響によりゴム部材の弾性が阻害されることがある。ゴム部材の弾性が阻害されると、像担持体が偏心していたり、像担持体表面に微小なうねりがあったりした場合、像担持体表面に当接するクリーニングブレードの長手方向で当接圧が変動し、クリーニングブレードの先端稜線部の像担持体表面への追随性が低下してしまう。連続的なベタ画像形成時など、クリーニングブレードによって、多くのトナーが堰き止められているとき、堰き止められているトナーによるクリーニングブレードへの押圧力が高くなる。そのため、クリーニングブレードの像担持体に対する当接圧が低い部分では、クリーニングブレードが当接する力よりも像担持体上のトナーによるクリーニングブレードへの押圧力が勝ると、その部分で当接状態が維持できなくなり、クリーニングブレードをトナーがすり抜けてしまう。その結果、像担持体に形成される粉体量が非常に多い連続的なベタ画像形成時等の厳しい条件では、クリーニング不良が生じてしまったと考えられる。
【0008】
そして、特許文献1に記載の表面層のみを設ける構成で硬度が高い表面層の層厚が高いと、表面層の剛性によってゴム部材の弾性が阻害され、先端稜線部の像担持体表面への追随性が低下する。このため、表面層のみを設ける構成では、先端稜線部の像担持体表面への追随性を維持するために硬度が高い表面層の層厚を薄くする必要がある。表面層を薄くすると、経時使用において短時間で弾性ブレードの基材であるゴム部材が露出する程度に表面層が摩耗する。硬度の低いゴム部材が露出して像担持体の表面に直接接触すると、クリーニングブレードと像担持体表面との摩擦係数が大きくなり、異常摩耗や異音が発生する。
【0009】
また、特許文献2に記載の紫外線硬化材料をゴム部材に含浸させ、紫外線照射処理をして含浸部分を形成する構成では、次のような課題がある。すなわち、先端稜線部の最表面の硬度が表面層をゴム部材の表面に設ける構成と同等となるように、含浸部分を形成しようとすると、ゴム部材の表面を覆うことが出来る程度に多量の紫外線硬化材料を含浸させる必要がある。このように多量の紫外線硬化材料を含浸させると、ゴム部材の内部に染み込んだ紫外線硬化材料の量も多くなる。多量の紫外線硬化材料が染み込んだゴム部材に紫外線を照射すると、含浸部分が過剰に硬く且つ過剰に深く形成されて、ゴム部材の弾性が阻害されることにより、先端稜線部の像担持体表面への追随性が低下する。一方、先端稜線部の像担持体表面への追随性を維持するために、ゴム部材に対する紫外線硬化材料の含浸量を少なくすると、ゴム部材の表面を紫外線硬化材料で覆い切れなくなり、先端稜線部の最表面がゴム部材の基材と紫外線硬化樹脂とが混在した状態となり、表面層を設けるものに比べて使用開始当初の先端稜線部の最表面の硬度が低くなって、クリーニングブレードと像担持体との摩擦力が大きくなる。像担持体との摩擦力が大きくなると、クリーニングブレードの先端稜線部にめくれが生じ易くなる。
【0010】
そこで、本発明者は、特願2010−204704号にて、弾性ブレードの先端稜線部を含む部分に紫外線硬化樹脂が含浸され、且つ、先端稜線部を含む該弾性ブレードの表面に弾性ブレードよりも硬い表面層を設けたことを特徴とするクリーニングブレードを提案した。このクリーニングブレードでは、先端稜線部を含む表面に弾性ブレードよりも硬い表面層を設けているため、先端稜線部を含む部分に含浸させる紫外線硬化樹脂の量を先端稜線部の最表面の硬度に関係無く調節することが出来る。これにより、含浸量を少なくすることが可能となり、含浸部分が過剰に硬く且つ過剰に深く形成されることに起因して先端稜線部の像担持体表面への追随性が低下することを抑制できる。また、表面層を薄くして、経時使用において短時間で弾性ブレードが被清掃部材に接触しても、弾性ブレードの基材と紫外線硬化樹脂とが混在した弾性ブレードよりも硬度が高い含浸部分が被清掃部材と接触するため、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制することができる。これにより、表面層を薄くすることが可能となり、表面層を厚くすることに起因して、先端稜線部の像担持体表面への追随性が低下することを抑制できる。
【0011】
さらに、本発明者の検討の結果、上記先願の構成においても、弾性ブレードのゴム特性や、弾性ブレードに含浸される紫外線効果樹脂の特性、表面層の厚さによって、上記効果を得やすい条件があることを見出した。
【0012】
本発明は以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、先端稜線部のめくれを抑制し、かつ、先端稜線部の被清掃部材に対する追随性を良好にでき当接圧を維持することが可能なクリーニングブレード、画像形成装置、及び、プロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、短冊形状の弾性ブレードで構成され、該弾性ブレードの先端稜線部を表面移動する被清掃部材の表面に当接して、該被清掃部材表面から粉体を除去するクリーニングブレードにおいて、
上記弾性ブレードは、tanδピーク温度が0℃以上、且つ、JIS−A硬度の23℃から10℃における変化量が5°以上であるウレタンゴムであり、該弾性ブレードの上記先端稜線部を含む部分にマルテンス硬度が250〜500N/mm、弾性仕事率が75%以下の紫外線硬化樹脂が含浸され、且つ、該先端稜線部を含む該弾性ブレードの表面に該弾性ブレードよりも硬い表面層を1μm以下の厚みで設けたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明においては、弾性ブレードに紫外線硬化樹脂を含浸処理すると、ゴム内部に紫外線硬化樹脂の網目鎖が形成されることで、ゴム自体の架橋密度が擬似的に増加し、耐摩耗性が向上すると考えられる。
弾性ブレードとして、tanδピーク温度が0℃以上、且つ、JIS−A硬度の23℃から10℃における変化量が5°以上であるウレタンゴムを用いている。この条件を満たさないものは、ゴムの架橋密度が低いため、大量の紫外線硬化樹脂を含浸させないと、充分な改質効果か得られない。しかしながら、大量の紫外線硬化樹脂の含浸処理では、ゴムが膨潤して先端稜線部が直角形状を保てなくなり、クリーニング性能が低下するなどの副作用の虞がある。また、少量の紫外線硬化樹脂の含浸処理による改質をして、その表面に表面層を形成しても、耐久性能が充分ではなく、長期の使用によって稜線部の摩耗が大幅に進み、その結果、クリーニング性が低下するおそれがある。これに対して、上記条件を満たす架橋密度の高いウレタンゴムでは、比較的少量の紫外線硬化樹脂の含浸処理により、充分な改質効果が得られ、その表面に表面層を形成することで、良好に耐摩耗性を向上させることができる。
紫外線硬化樹脂としては、マルテンス硬度が250〜500N/mm、弾性仕事率が75%以下の特性を有するものを用いて改質を行なう。マルテンス硬度これより大きいものでは、架橋密度が上がりすぎてしまい、ゴムというよりガラスに近い状態となるため、先端稜線部の動きが抑制されすぎて、逆に耐摩耗性を悪化させる。また、マルテンス硬度がこれ以上小さいものでは、耐磨耗性を向上させる充分な効果が得られない。
弾性仕事率は、マルテンス硬度の測定時の積算応力から、以下のようにして求められる特性値である。マルテンス硬度は、ガラス板上に紫外線硬化樹脂層を塗布し、ビッカース圧子を一定の力で、例えば30秒で押し込み、5秒保持し、一定の力で30秒間で抜く動作をおこないながら微小硬度計を用いて計測する。ここで、ビッカース圧子を押し込むときの積算応力をWplast、試験荷重除荷寺の積算応力をWelastとすると、弾性仕事率は、Welast/Wplast×100%の式で定義される特性値である。弾性仕事率が高いほど、塑性変形が少ない、すなわちゴム性が高いことをあらわしている。弾性仕事率が低すぎると、ゴムというよりガラスに近い状態であり、先端稜線部の動きが抑制されすぎて、逆に耐摩耗性を悪化させる。通常、紫外線硬化樹脂は、上記マルテンス硬度の範囲では、弾性仕事率がある程度高く、ゴムの状態が得られる。しかしながら、紫外線硬化樹脂の構造によっては弾性仕事率が高くなりすぎて、クリーニングブレードとしての姿勢を適度に保てないことがある。本発明は、後述する実験に示すように、弾性仕事率が75%以下の紫外線硬化性樹脂を含浸処理することにより、クリーニングブレードとしての適度な姿勢を保ち、良好なクリーニング性を保つようにしている。
さらに、先端稜線部を含む表面に弾性ブレードよりも硬い表面層を1μm以下の厚みで設ける。これにより、表面層を厚くすることに起因して、先端稜線部の像担持体表面への追随性の低下して、均一な当接状態が得られずトナーのすり抜けが増大してクリーニング不良が発生し易くなったり、異音の発生を生じ易くなったりすることを抑制できる。このように表面層を薄くして、経時使用において短時間で弾性ブレードが被清掃部材に接触しても、弾性ブレードの基材と紫外線硬化樹脂とが混在した弾性ブレードよりも硬度が高い含浸部分が被清掃部材と接触するため、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制することができる。
すなわち、上記条件を満たす弾性ブレードに上記条件を満たす紫外線硬化樹脂を含浸処理して弾性ブレードの改質を行い、弾性ブレードよりも硬い表面層を1μm以下の厚みの表面層を設けることにより、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、先端稜線部のめくれを抑制し、かつ、先端稜線部の被清掃部材に対する追随性を良好にでき当接圧を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、先端稜線部のめくれを抑制し、かつ、先端稜線部の被清掃部材に対する追随性を良好にでき当接圧を維持することが可能となるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係る、クリーニングブレードの拡大断面図、(a)は、クリーニングブレードが感光体表面に当接している状態の説明図、(b)は、クリーニングブレード62の先端稜線部62c近傍の拡大説明図。
【図2】本発明の実施形態1に係るプリンタの概略構成図。
【図3】本発明の実施形態1に係るの作像ユニットの概略構成図。
【図4】(a)及び(b)は、トナーの円形度の測定方法を説明するための説明図。
【図5】実施形態1に係るクリーニングブレードの斜視図。
【図6】弾性ブレードの摩耗幅の測定箇所を示した模式図。
【図7】実施例と比較例とを比較する概念図。
【図8】(a)は、クリーニングブレード先端稜線部がめくれた状態を示す図、(b)は、クリーニングブレードの先端面の局所的な摩耗について説明する図、(c)は、クリーニングブレードの先端稜線部が欠落した状態を示す図。
【図9】弾性仕事率の説明図。
【図10】実施形態2に係る、弾性ブレードの摩耗断面積の測定箇所を示した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態1]
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタ500という)の一実施形態(以下、実施形態1という)について説明する。まず、本実施形態1に係るプリンタ500の基本的な構成について説明する。
図2は、プリンタ500を示す概略構成図である。プリンタ500は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、C、M、Kと記す)用の四つの作像ユニット1Y,C,M,Kを備えている。これらは、画像を形成する画像形成物質として、互いに異なる色のY,C,M,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。
【0018】
四つの作像ユニット1の上方には、中間転写体としての中間転写ベルト14を備える転写ユニット60が配置されている。詳細は後述する各作像ユニット1Y,C,M,Kが備える感光体3Y,C,M,Kの表面上に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト14の表面上に重ね合わせて転写される構成である。
また、四つの作像ユニット1の下方に光書込ユニット40が配設されている。潜像形成手段たる光書込ユニット40は、画像情報に基づいて発したレーザ光Lを、各作像ユニット1Y,C,M,Kの感光体3Y,C,M,Kに照射する。これにより、感光体3Y,C,M,K上にY,C,M,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット40は、光源から発したレーザ光Lを、モータによって回転駆動されるポリゴンミラー41によって偏向せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体3Y,C,M,Kに照射するものである。かかる構成のものに代えて、LDEアレイによる光走査を行うものを採用することもできる。
【0019】
光書込ユニット40の下方には、第一給紙カセット151、第二給紙カセット152が鉛直方向に重なるように配設されている。これら給紙カセット内には、それぞれ、記録媒体である転写紙Pが複数枚重ねられた紙束の状態で収容されており、一番上の転写紙Pには、第一給紙ローラ151a、第二給紙ローラ152aがそれぞれ当接している。第一給紙ローラ151aが図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動せしめられると、第一給紙カセット151内の一番上の転写紙Pが、カセットの図中右側方において鉛直方向に延在するように配設された給紙路153に向けて排出される。また、第二給紙ローラ152aが図示しない駆動手段によって図2中反時計回りに回転駆動せしめられると、第二給紙カセット152内の一番上の転写紙Pが、給紙路153に向けて排出される。
【0020】
給紙路153内には、複数の搬送ローラ対154が配設されている。給紙路153に送り込まれた転写紙Pは、これら搬送ローラ対154のローラ間に挟み込まれながら、給紙路153内を図2中下側から上側に向けて搬送される。
【0021】
給紙路153の搬送方向下流側端部には、レジストローラ対55が配設されている。レジストローラ対55は、転写紙Pを搬送ローラ対154から送られてくる転写紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、転写紙Pを適切なタイミングで後述の二次転写ニップに向けて送り出す。
【0022】
図3は、四つの作像ユニット1のうちの一つの概略構成を示す構成図である。
図3に示すように、作像ユニット1は、像担持体としてのドラム状の感光体3を備えている。感光体3はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
感光体3の周囲には、帯電ローラ4、現像装置5、一次転写ローラ7、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10及び不図示の除電ランプ等が配置されている。帯電ローラ4は、帯電手段としての帯電装置が備える帯電部材であり、現像装置5は、感光体3の表面上に形成された潜像をトナー像化する現像手段である。一次転写ローラ7は、感光体3の表面上のトナー像を中間転写ベルト14に転写する一次転写手段としての一次転写装置が備える一次転写部材である。クリーニング装置6は、トナー像を中間転写ベルト14に転写した後の感光体3上に残留するトナーをクリーニングするクリーニング手段である。潤滑剤塗布装置10は、クリーニング装置6がクリーニングした後の感光体3の表面上に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段である。不図示の除電ランプは、クリーニング後の感光体3の表面電位を除電する除電手段である。
【0023】
帯電ローラ4は、感光体3に所定の距離を持って非接触で配置され、感光体3を所定の極性、所定の電位に帯電するものである。帯電ローラ4によって一様帯電された感光体3の表面は、潜像形成手段である光書込ユニット40から画像情報に基づいてレーザ光Lが照射され静電潜像が形成される。
現像装置5は、現像剤担持体としての現像ローラ51を有している。この現像ローラ51には、図示しない電源から現像バイアスが印加されるようになっている。現像装置5のケーシング内には、ケーシング内に収容された現像剤を互いに逆方向に搬送しながら攪拌する供給スクリュ52及び攪拌スクリュ53が設けられている。また、現像ローラ51に担持された現像剤を規制するためのドクタ54も設けられている。供給スクリュ52及び攪拌スクリュ53の二本スクリュによって撹拌・搬送された現像剤中のトナーは、所定の極性に帯電される。そして、現像剤は、現像ローラ51の表面上に汲み上げられ、汲み上げられた現像剤は、ドクタ54により規制され、感光体3と対向する現像領域でトナーが感光体3上の潜像に付着する。
【0024】
クリーニング装置6は、ファーブラシ101、クリーニングブレード62などを有している。クリーニングブレード62は、感光体3の表面移動方向に対してカウンタ方向で感光体3に当接している。なお、クリーニングブレード62の詳細については後述する。
潤滑剤塗布装置10は、固形潤滑剤103や潤滑剤加圧スプリング103a等を備え、固形潤滑剤103を感光体3上に塗布する塗布ブラシとしてファーブラシ101を用いている。固形潤滑剤103は、ブラケット103bに保持され、潤滑剤加圧スプリング103aによりファーブラシ101側に加圧されている。そして、感光体3の回転方向に対して連れまわり方向に回転するファーブラシ101により固形潤滑剤103が削られて感光体3上に潤滑剤が塗布される。感光体への潤滑剤塗布により感光体3表面の摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持される。
【0025】
本実施形態1の帯電装置は、帯電ローラ4を感光体3に近接させた非接触の近接配置方式であるが、帯電装置としては、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)を始めとする公知の構成を用いることができる。これらの帯電方式のうち、特に接触帯電方式、あるいは非接触の近接配置方式がより望ましく、帯電効率が高くオゾン発生量が少ない、装置の小型化が可能である等のメリットを有する。
【0026】
光書込ユニット40のレーザ光Lの光源や除電ランプ等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザは照射エネルギーが高く、また600〜800[nm]の長波長光を有するため、良好に使用される。
【0027】
転写手段たる転写ユニット60は、中間転写ベルト14の他、ベルトクリーニングユニット162、第一ブラケット63、第二ブラケット64などを備えている。また、四つの一次転写ローラ7Y,C,M,K、二次転写バックアップローラ66、駆動ローラ67、補助ローラ68、テンションローラ69なども備えている。中間転写ベルト14は、これら8つのローラ部材に張架されながら、駆動ローラ67の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。四つの一次転写ローラ7Y,C,M,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト14を感光体3Y,C,M,Kとの間に挟み込んでそれぞれ一次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト14の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する。中間転写ベルト14は、その無端移動に伴ってY,C,M,K用の一次転写ニップを順次通過していく過程で、そのおもて面に感光体3Y,C,M,K上のY,C,M,Kトナー像が重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト14上に四色重ね合わせトナー像(以下、四色トナー像という)が形成される。
【0028】
二次転写バックアップローラ66は、中間転写ベルト14のループ外側に配設された二次転写ローラ70との間に中間転写ベルト14を挟み込んで二次転写ニップを形成している。先に説明したレジストローラ対55は、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pを、中間転写ベルト14上の四色トナー像に同期させ得るタイミングで、二次転写ニップに向けて送り出す。中間転写ベルト14上の四色トナー像は、二次転写バイアスが印加される二次転写ローラ70と二次転写バックアップローラ66との間に形成される二次転写電界や、ニップ圧の影響により、二次転写ニップ内で転写紙Pに一括二次転写される。そして、転写紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
【0029】
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト14には、転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、ベルトクリーニングユニット162によってクリーニングされる。なお、ベルトクリーニングユニット162は、ベルトクリーニングブレード162aを中間転写ベルト14のおもて面に当接させており、これによって中間転写ベルト14上の転写残トナーを掻き取って除去するものである。
【0030】
転写ユニット60の第一ブラケット63は、図示しないソレノイドの駆動のオンオフに伴って、補助ローラ68の回転軸線を中心にして所定の回転角度で揺動するようになっている。プリンタ500は、モノクロ画像を形成する場合には、前述のソレノイドの駆動によって第一ブラケット63を図中反時計回りに少しだけ回転させる。この回転により、補助ローラ68の回転軸線を中心にしてY,C,M用の一次転写ローラ7Y,C,Mを図中反時計回りに公転させることで、中間転写ベルト14をY,C,M用の感光体3Y,C,Mから離間させる。そして、四つの作像ユニット1Y,C,M,Kのうち、K用の作像ユニット1Kだけを駆動して、モノクロ画像を形成する。これにより、モノクロ画像形成時にY,C,M用の作像ユニット1を無駄に駆動させることによる作像ユニット1を構成する各部材の消耗を回避することができる。
【0031】
二次転写ニップの図中上方には、定着ユニット80が配設されている。この定着ユニット80は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加圧加熱ローラ81と、定着ベルトユニット82とを備えている。定着ベルトユニット82は、定着部材たる定着ベルト84、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱ローラ83、テンションローラ85、駆動ローラ86、図示しない温度センサ等を有している。そして、無端状の定着ベルト84を加熱ローラ83、テンションローラ85及び駆動ローラ86によって張架しながら、図中反時計回り方向に無端移動せしめる。この無端移動の過程で、定着ベルト84は加熱ローラ83によって裏面側から加熱される。このようにして加熱される定着ベルト84の加熱ローラ83への掛け回し箇所には、図中時計回り方向に回転駆動される加圧加熱ローラ81がおもて面側から当接している。これにより、加圧加熱ローラ81と定着ベルト84とが当接する定着ニップが形成されている。
【0032】
定着ベルト84のループ外側には、図示しない温度センサが定着ベルト84のおもて面と所定の間隙を介して対向するように配設されており、定着ニップに進入する直前の定着ベルト84の表面温度を検知する。この検知結果は、図示しない定着電源回路に送られる。定着電源回路は、温度センサによる検知結果に基づいて、加熱ローラ83に内包される発熱源や、加圧加熱ローラ81に内包される発熱源に対する電源の供給をオンオフ制御する。
【0033】
上述した二次転写ニップを通過した転写紙Pは、中間転写ベルト14から分離した後、定着ユニット80内に送られる。そして、定着ユニット80内の定着ニップに挟まれながら図中下側から上側に向けて搬送される過程で、定着ベルト84によって加熱され、押圧されることによりフルカラートナー像が転写紙Pに定着される。
【0034】
このようにして定着処理が施された転写紙Pは、排紙ローラ対87のローラ間を経た後、機外へと排出される。プリンタ500本体の筺体の上面には、スタック部88が形成されており、排紙ローラ対87によって機外に排出された転写紙Pは、このスタック部88に順次スタックされる。
【0035】
転写ユニット60の上方には、Y,C,M,Kトナーを収容する四つのトナーカートリッジ100Y,C,M,Kが配設されている。トナーカートリッジ100Y,C,M,K内のY,C,M,Kトナーは、作像ユニット1Y,C,M,Kの現像装置5Y,C,M,Kに適宜供給される。これらトナーカートリッジ100Y,C,M,Kは、作像ユニット1Y,C,M,Kとは独立してプリンタ本体に脱着可能である。
【0036】
次に、プリンタ500における画像形成動作を説明する。
図示しない操作部などからプリント実行の信号を受信したら、帯電ローラ4及び現像ローラ51にそれぞれ所定の電圧または電流が順次所定のタイミングで印加される。同様に、光書込ユニット40及び除電ランプなどの光源にもそれぞれ所定の電圧または電流が順次所定のタイミングで印加される。また、これと同期して、駆動手段としての感光体駆動モータ(不図示)により感光体3が図中矢印方向に回転駆動される。
【0037】
感光体3が図中矢印方向に回転すると、まず感光体3表面が、帯電ローラ4によって所定の電位に一様帯電される。そして、光書込ユニット40から画像情報に対応したレーザ光Lが感光体3上に照射され、感光体3表面上のレーザ光Lが照射された部分が除電され静電潜像が形成される。
静電潜像の形成された感光体3の表面は、現像装置5との対向部で現像ローラ51上に形成された現像剤の磁気ブラシによって摺擦される。このとき、現像ローラ51上の負帯電トナーは、現像ローラ51に印加された所定の現像バイアスによって、静電潜像側に移動し、トナー像化(現像)される。各作像ユニット1において、同様の作像プロセスが実行され、各作像ユニット1Y,C,M,Kの各感光体3Y,C,M,Kの表面上に各色のトナー像が形成される。
このように、プリンタ500では、感光体3上に形成された静電潜像は、現像装置5によって、負極性に帯電されたトナーにより反転現像される。本実施形態1では、N/P(ネガポジ:電位が低い所にトナーが付着する)の非接触帯電ローラ方式を用いた例について説明したが、これに限るものではない。
【0038】
各感光体3Y,C,M,Kの表面上に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト14の表面上で重なるように、順次一次転写される。これにより、中間転写ベルト14上に四色トナー像が形成される。
中間転写ベルト14上に形成された四色トナー像は、第一給紙カセット151または第二給紙カセット152から給紙され、レジストローラ対55のローラ間を経て、二次転写ニップに給紙される転写紙Pに転写される。このとき、転写紙Pはレジストローラ対55に挟まれた状態で一旦停止し、中間転写ベルト14上の画像先端と同期を取って二次転写ニップに供給される。トナー像が転写された転写紙Pは中間転写ベルト14から分離され、定着ユニット80へ搬送される。そして、トナー像が転写された転写紙Pが定着ユニット80を通過することにより、熱と圧力の作用でトナー像が転写紙P上に定着されて、トナー像が定着された転写紙Pはプリンタ500装置外に排出され、スタック部88にスタックされる。
【0039】
一方、二次転写ニップで転写紙Pにトナー像を転写した中間転写ベルト14の表面は、ベルトクリーニングユニット162によって表面上の転写残トナーが除去される。
また、一次転写ニップで中間転写ベルト14に各色のトナー像を転写した感光体3の表面は、クリーニング装置6によって転写後の残留トナーが除去され、潤滑剤塗布装置10によって潤滑剤が塗布された後、除電ランプで除電される。
【0040】
プリンタ500の作像ユニット1は、図3に示すように感光体3と、プロセス手段として帯電ローラ4、現像装置5、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10などとが枠体2に収められている。そして、作像ユニット1は、プロセスカートリッジとしてプリンタ500本体から一体的に着脱可能となっている。プリンタ500では、作像ユニット1がプロセスカートリッジとしての感光体3とプロセス手段とを一体的に交換するようになっているが、感光体3、帯電ローラ4、現像装置5、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10のような単位で新しいものと交換するような構成でもよい。
【0041】
次に、本発明を適用したプリンタ500に好適なトナーについて説明する。
プリンタ500に用いるトナーとしては、画質向上のために、高円形化、小粒径化がし易い懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法により製造された重合トナーを用いるのが好ましい。特に、円形度が0.97以上、体積平均粒径5.5[μm]以下の重合トナーを用いるのが好ましい。平均円形度が0.97以上、体積平均粒径5.5[μm]のものを用いることにより、より高解像度の画像を形成することができる。
【0042】
ここでいう「円形度」は、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子株式会社製、商品名)により計測した平均円形度である。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150[ml]中に、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜0.5[ml]加え、更に測定試料(トナー)を0.1〜0.5[g]程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理し、分散液濃度が3000〜1[万個/μl]となるようにしたものを上述の分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。そして、この測定結果に基づき、図4(a)に示す実際のトナー投影形状の外周長をC1、その投影面積をSとし、この投影面積Sと同じ図4(b)に示す真円の外周長をC2としたときのC2/C1を求め、その平均値を円形度とした。
【0043】
体積平均粒径については、コールターカウンター法によって求めることが可能である。具体的には、コールターマルチサイザー2e型(コールター社製)によって測定したトナーの個数分布や体積分布のデータを、インターフェイス(日科機社製)を介してパーソナルコンピューターに送って解析するのである。より詳しくは、1級塩化ナトリウムを用いた1%NaCl水溶液を電解液として用意する。そして、この電解水溶液100〜150[ml]中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5[ml]加える。更に、これに被検試料としてのトナーを2〜20[mg]加え、超音波分散器で約1〜3[分間]分散処理する。そして、別のビーカーに電解水溶液100〜200[ml]を入れ、その中に分散処理後の溶液を所定濃度になるように加えて、上記コールターマルチサイザー2e型にかける。アパーチャーとしては、100[μm]のものを用い、50,000個のトナー粒子の粒径を測定する。チャンネルとしては、2.00〜2.52[μm]未満;2.52〜3.17[μm]未満;3.17〜4.00[μm]未満;4.00〜5.04[μm]未満;5.04〜6.35[μm]未満;6.35〜8.00[μm]未満;8.00〜10.08[μm]未満;10.08〜12.70[μm]未満;12.70〜16.00[μm]未満;16.00〜20.20[μm]未満;20.20〜25.40[μm]未満;25.40〜32.00[μm]未満;32.00〜40.30[μm]未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00[μm]以上32.0[μm]以下のトナー粒子を対象とする。そして、「体積平均粒径=ΣXfV/ΣfV」という関係式に基づいて、体積平均粒径を算出する。但し、「X」は各チャンネルにおける代表径、「V」は各チャンネルの代表径における相当体積、「f」は各チャンネルにおける粒子個数である。
【0044】
このような重合トナーにおいては、従来の粉砕トナーを感光体3表面から除去するときと同じようにしてクリーニングブレード62で除去しようとしても、その重合トナーを感光体3表面から十分に除去しきれず、クリーニング不良が発生する。そこで、クリーニングブレード62の感光体3への当接圧を高めて、クリーニング性をアップしようとすると、クリーニングブレード62が早期に摩耗してしまうという問題があった。また、クリーニングブレード62と感光体3との摩擦力が高まって、クリーニングブレード62の感光体3と当接している先端稜線部が感光体3の移動方向に引っ張られて、先端稜線部がめくれてしまう。クリーニングブレード62の先端稜線部がめくれると、異音や振動、先端稜線部の欠落などの様々な問題が生じてしまう。
【0045】
図5は、クリーニングブレード62の斜視図であり、図1は、クリーニングブレード62の拡大断面図である。図1(a)は、クリーニングブレード62が感光体3の表面に当接している状態の説明図であり、図1(b)は、クリーニングブレード62の先端稜線部62c近傍の拡大説明図である。
クリーニングブレード62は、金属や硬質プラスチックなどの剛性材料からなる短冊形状のホルダー621と、短冊形状の弾性ブレード622とで構成されている。弾性ブレード622は先端稜線部62cに詳細は後述する含浸処理がなされている。また、ブレード先端面62aとブレード下面62bには、ブレード長手方向にわたって表面層623が形成されている。
弾性ブレード622は、ホルダー621の一端側に接着剤などにより固定されており、ホルダー621の他端側は、クリーニング装置6のケースに片持ち支持されている。
【0046】
弾性ブレード622としては、感光体3の偏心や感光体3の表面の微小なうねりなどに追随できるように、高い反発弾性体率を有するものが好ましく、ウレタンゴムなどが好適である。
また、弾性ブレード622の硬度としては、SII社製DMS6100などで測定したゴムのtanδピーク温度が0[℃]以上、且つ、23[℃]と10[℃]におけるそれぞれの硬度(JIS−A)の差が5℃以上あるウレタンゴムが好ましい。この条件を満たさないものは、ゴムの架橋密度が不足し、後述するように、含浸処理による改質をして、その表面に表面層623を形成しても、耐久性能が充分ではなく、長期の使用によって稜線部の摩耗が大幅に進み、その結果、クリーニング性が低下するおそれがある。
なお、弾性ブレード622の硬さは含浸処理によるウレタンゴムそのものの改質で変化し、さらに表面層623の形成によっても影響を受けるので、各々の効果を調整することが必要である。
【0047】
弾性ブレード622の先端稜線部62cへの含浸処理は、ハケ塗り、スプレー塗工、ディップ塗工などによって、紫外線硬化樹脂を含浸させることで可能である。紫外線硬化樹脂賭しては、マルテンス硬度250〜500N/mm、弾性仕事率75%以下、好ましくは50〜75%の材料を用いる。これにより、当接する弾性ブレード622の先端稜線部62cが感光体3表面移動方向に変形するのを抑制することができる。さらに、経時表面層摩耗によって内部が露出したときも内部への含浸作用により、同様に変形を抑制することができる。
【0048】
なお、マルテンス硬度の硬度は、ガラス板上に紫外線硬化樹脂を塗布し、層厚20[μm]として、フィシャー・インストルメンツ社製、微小硬度計 HM−2000を用いて、ビッカース圧子9.8[mN]の力で30秒で押し込み、5秒保持し、9.8[mN]の力で30秒間で抜き、マルテンス硬度を計測する。また、弾性仕事率は、マルテンス硬度の計測時の積算応力から、以下のようにして求められる特性値である。ビッカース圧子を押し込むときの積算応力をWplast、試験荷重除荷寺の積算応力をWelastとすると、弾性仕事率は、Welast/Wplast×100%の式で定義される特性値である(図9参照)。弾性仕事率が高いほど、ヒステリシスロス(塑性変形)が少ない、すなわちゴム性が高いことをあらわしている。弾性仕事率が低すぎると、ゴムというよりガラスに近い状態である。
【0049】
表面層623は、弾性ブレード622に紫外線硬化樹脂を含浸させて所定時間風乾させた後に、スプレー塗工、ディップ塗工、あるいはスクリーン印刷等によって、クリーニングブレード62の先端稜線部62cを被覆する。表面層623としては、マルテンス硬度250〜500N/mm、弾性仕事率75%以下、好ましくは50〜75%の材料を0.05〜1μmの厚さで被覆するのが好ましい。より好ましくは0.1〜1μmの厚さで被覆する。また、表面層623は、弾性ブレード622よりも硬度が高い部材とすることで、剛直なため、変形し難く、クリーニングブレード62の先端稜線部62cのめくれを抑制することができる。
紫外線硬化樹脂を含浸させた後、または、表面層623による被覆を行った後に、紫外線を照射することで、図1に示す含浸部分62dを形成し、先端稜線部62cの硬度上昇を図る改質効果を生じさせることができる。特許文献3に記載の弾性ブレードでは、イソシアネート化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物等の含浸をさせて改質を行っているが、本実施形態1のように紫外線硬化樹脂を含浸させて紫外線を照射することで、さらに耐久性の向上を図ることができる。これは以下の理由によるものと考えられる。
【0050】
まず考えられるのは、ゴム内部に紫外線硬化樹脂の網目鎖が形成されることで、ゴム自体の架橋密度が擬似的に増加し、耐摩耗性が向上している可能性である。この場合、紫外線硬化樹脂とウレタンゴムが化学的にほとんど結合しないであろう点がポイントである。一般的にウレタンゴムを含浸操作で強化しようとする場合、含浸材料としてイソシアネートを用いることが多いが、イソシアネートはウレタンゴムと化学的に反応するので、架橋密度が上がりすぎてしまい、ゴムというよりガラスに近い状態となるため、エッジの動きが抑制されすぎて逆に耐摩耗性を悪化させることが考えられる。
もう一つの可能性として、含浸した紫外線硬化樹脂が、表面に追加された紫外線硬化樹脂に対し、いわゆる「アンカー効果」を発揮して、樹脂膜とゴムの密着性を増大させていることが考えられる。これにより紫外線硬化樹脂自体の耐久性が底上げされていると考えることもできる。
【0051】
上述のように、弾性ブレード622として、tanδピーク温度が0℃以上、且つ、JIS−A硬度の23℃から10℃における変化量が5°以上であるウレタンゴムを用いている。この条件を満たさないものは、ゴムの架橋密度が低いため、大量の紫外線硬化樹脂を含浸させないと、充分な改質効果か得られない。しかしながら、大量の紫外線硬化樹脂の含浸処理では、ゴムが膨潤して先端稜線部が90°を保てなくなり、クリーニング性能が低下するなどの副作用の虞がある。少量の紫外線硬化樹脂の含浸処理による改質をして、その表面に表面層623を形成しても、耐久性能が充分ではなく、長期の使用によって稜線部の摩耗が大幅に進み、その結果、クリーニング性が低下するおそれがある。これに対して、上記条件を満たす架橋密度の高いウレタンゴムでは、比較的少量の紫外線硬化樹脂の含浸処理により、充分な改質効果が得られ、耐摩耗性を向上させることができる。
【0052】
含浸処理を行う紫外線硬化樹脂としては、マルテンス硬度が250〜500N/mm、弾性仕事率75%以下、好ましくは50〜75%の材料を用いて、弾性ブレード622の改質を行っている。マルテンス硬度がこれより大きいものでは、架橋密度が上がりすぎてしまい、ゴムというよりガラスに近い状態となるため、先端稜線部の動きが抑制されすぎて、逆に耐摩耗性を悪化させる。また、マルテンスンテルス硬度がこれ以上小さいものでは、耐磨耗性を向上させる充分な効果が得られない。また、弾性変形率は、その値が高いほど、ゴムというよりガラスに近い状態であり、先端稜線部の動きが抑制されすぎて、逆に耐摩耗性を悪化させる。通常、紫外線硬化樹脂は、上記マルテンス硬度の範囲では、弾性仕事率がある程度より高く、ゴムの状態が得られる。しかしながら、紫外線硬化樹脂の構造によっては弾性仕事率が高くなりすぎて、クリーニングブレード62としての姿勢を適度に保てないことがある。そこで、弾性仕事率が75%以下の紫外線硬化性樹脂を含浸処理することにより、クリーニングブレード62としての適度な姿勢を保ち、良好なクリーニング性を保つようにしている。
【0053】
さらに、先端稜線部を含む表面に弾性ブレード622よりも硬い表面層623を1μm以下の厚みで設けることにより、表面層623を厚くすることに起因して、先端稜線部の感光体3への追随性が低下することを抑制できる。このように表面層622を薄くして、経時使用において短時間で弾性ブレード622が感光体3に接触しても、弾性ブレード622の基材と紫外線硬化樹脂とが混在した弾性ブレード622よりも硬度が高い含浸部分が感光体3と接触するため、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制することができる。
すなわち、上記条件を満たす弾性ブレードに上記条件を満たす紫外線硬化樹脂を含浸処理して弾性ブレードの改質を行い、弾性ブレードよりも硬い表面層を1μm以下の厚みの表面層を設けることにより、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、先端稜線部のめくれを抑制し、かつ、先端稜線部の被清掃部材に対する追随性を良好にでき当接圧を維持することが可能となる。
【0054】
本実施形態1のクリーニングブレード62では、ウレタンゴムからなる弾性ブレード622の基材に対してディップ塗工により紫外線硬化樹脂を含浸させ、さらに表面層623を形成する紫外線硬化樹脂をスプレー塗工した後、紫外線照射により樹脂を硬化させている。
含浸させた紫外線硬化樹脂を硬化させるために外線を照射するタイミングとしては、弾性ブレード622に紫外線硬化樹脂を含浸させた後、表面層623を被覆する前に、紫外線を照射してもよい。弾性ブレード622の基材となるウレタンゴムに紫外線硬化樹脂を含浸させた後、一度、紫外線を照射して含浸させた紫外線硬化樹脂を硬化させた後に、表面層623を形成する樹脂で被覆する構成であれば、表面層623を形成する前にウレタンゴムに対して紫外線硬化樹脂の含浸状態を固定し、後から表面層623を形成する紫外線硬化樹脂を塗布しても、含浸状態が変化しないため、所望の含浸状態の弾性ブレード622を作成できる。
【0055】
本実施形態1のクリーニングブレード62は、図1(b)中の矢印で示すように、含浸部分62dにおける弾性ブレード622の内部ほどウレタンゴムに対して紫外線硬化樹脂の含有量が少なくなるような傾斜性が生じるように含浸させている。具体的には、短時間の含浸操作や含浸し難い条件で含浸操作を行うことで、含浸する紫外線硬化樹脂の量を少なくして、含浸させた部分の弾性ブレード622の外側は含浸量を多く、内側に向かうほど含浸量が少なくなるように含浸操作を行う。この時、ゴム切削断面の微小硬度をFischer社HM−8000で測定し、ゴムのマルテンス硬度変化量が5[%]以下となる含浸改質量が適切であり、本実施形態1では、紫外線硬化樹脂の希釈溶剤としてゴムへの浸透速度が遅いシクロヘキサノンを用い、且つ、含浸操作としては、ディッピング方式で行い、含浸時間を30[秒]とした。
希釈溶剤にゴムへの浸透速度が速いものを用いる、含浸操作を長時間行うなど、基材(弾性ブレード622のウレタンゴム)の内部まで充分に含浸素材(紫外線硬化樹脂)が浸透する条件で実施すれば、一種の平衡状態となり、全体は均一組成となって傾斜性をもたない状態も作り出すことは可能である。しかし、本実施形態1では、含浸操作で紫外線硬化樹脂の含浸する量を抑制することで、弾性ブレード622のウレタンゴムに対する紫外線硬化樹脂の含有量に傾斜性を持たせている。
【0056】
本実施形態1のクリーニングブレード62では、弾性ブレード622よりも硬い表面層623を設け、先端稜線部62cと感光体3表面との摩擦係数の低減を図っている。
ここで、弾性ブレード622の基材に紫外線硬化樹脂を含浸させず、この基材よりも硬度の硬い表面層623のみを備える構成について説明する。表面層623を設けて摩擦係数を低減させても、経時で表面層623は摩耗し減少する。このとき、長期使用に耐え得るように、表面層623を厚くすると、弾性ブレード622の先端稜線部62cにおける弾性変形を阻害して、クリーニング不良となるおそれがある。一方、弾性ブレード622の先端稜線部62cにおける弾性変形を阻害しないように、表面層623を薄くすると、短時間で基材が露出する程度に表面層623が摩耗する。硬度の低い基材が露出して感光体3の表面に直接接触すると、クリーニングブレード62と感光体3表面との摩擦係数が大きくなり、異常摩耗や異音が発生する。
【0057】
本実施形態1のクリーニングブレード62は、硬度の高い表面層623の内側の弾性ブレード622の基材に対して紫外線硬化樹脂が傾斜性を持つように存在する。これにより、基材となる弾性ゴム(ウレタンゴム)の機械強度や剛性が適度に強化され、感光体3表面との摺動においてブレード先端部の挙動を適度に抑えることで良好なクリーニングを行うことができ、異常摩耗や異音の発生を抑えることで、高い耐摩耗性を発揮させることが可能となる。
また、弾性ブレード622の基材に硬度の高い表面層623のみを設けると、高硬度層と基材層との境目で硬度が急激に変化して応力が集中し、弾性ブレード622が破損するおそれがある。これに対して、弾性ブレード622の基材に含有量に傾斜性を生じさせることで、高硬度層と基材層との境目で硬度が急激に変化することを抑制し、応力集中に起因して弾性ブレード622が破損することを防止できる。
【0058】
上記特許文献1には、表面層のみを設ける構成、または、弾性ブレードの基材に樹脂材料を含浸させるのみの構成が記載されている。表面層のみを設ける構成であると、上述した不具合が生じる。また、樹脂材料を含浸させるのみの構成であると、使用開始当初のクリーニングブレードの感光体と当接する部分の硬度が表面層を設けるものほどの硬度を得ることが出来ず、耐磨耗性が不十分となる。また、使用する樹脂が鉛筆硬度B〜6Hのものであり、これを表面層として用いても鉛筆硬度が十分ではなく、耐久性に劣る。この耐久性を補うために、表面層を厚膜にすると、エッジ(先端稜線部)の姿勢制御が損なわれ、耐久性が低下する。
【0059】
上記特許文献2には、弾性ブレードの基材にシリコーン含有紫外線硬化樹脂が傾斜性をもって含浸され、弾性ブレードの表面が同樹脂で覆われた構成が記載されている。特許文献2に記載のクリーニングブレードは、含浸させる紫外線硬化樹脂で弾性ブレードの表面を覆っているため、含浸させるものとは、別に、表面層を設ける本実施形態1のクリーニングブレード62とは異なる。また、シリコーン含有紫外線硬化樹脂は、本実施形態1の表面層に用いる樹脂に比べ、耐久性に劣る。さらに、特許文献2に記載の含浸操作のように、含浸を12時間も行うと、紫外線硬化樹脂の含浸量が過剰となり、基材ゴムが膨潤しすぎてゴムの網目構造が破壊され、機械強度が低下し、耐久性が低下する。
【0060】
本実施形態1のクリーニングブレード62は、表面をマルテンス硬度が250〜500N/mmの紫外線硬化樹脂からなる表面層623で覆い、さらに、弾性ブレード622の基材であるウレタンゴムの内部に紫外線硬化樹脂が傾斜性をもちつつ含浸している。弾性ブレード622に紫外線硬化樹脂を含有させて硬度上昇させているため、表面層623の厚みを薄くしても経時の耐久性を確保することができる。表面層623についての非常に薄い膜厚と、高いマルテンス硬度および適度な弾性仕事率により、先端稜線部62cの姿勢制御と耐久性付与とを同時に発現することが可能となる高耐久化を図ることができる。また、弾性ブレード622に含有させる紫外線硬化樹脂の含浸量を抑制することで、基材ゴムの膨潤によるゴム機械強度低下と、高硬度な樹脂材料の浸潤による網目構造強化との両立を図ることができる。
【0061】
上述したように、本実施形態1においては、弾性ブレード622の先端稜線部62cを含浸処理により硬度上昇させているため、弾性ブレード622の先端稜線部62cが変形し難くなっている。
このため、弾性ブレード622のブレード下面62bの全面に弾性ブレード622よりも硬度が高い表面層623を形成すると、ブレード下面62bに形成した表面層623が、弾性ブレード622の先端稜線部62cの感光体表面への弾性変形を阻害してしまい、先端稜線部62cにおいて感光体3表面への当接圧を高める向きに働く弾性変形に対する復元力がほとんど得られなくなってしまう。その結果、先端稜線部62cが感光体3の偏心や微小なうねりに対して追随できなくなってしまう。従って、感光体3に対する当接圧が変動してしまい、連続的なベタ画像形成時等、先端稜線部62cに堰きとめたトナーから大きな押圧力を受けるなどの厳しい条件において、当接圧が低下したときに、トナーがクリーニングブレード62からすり抜けてクリーニング不良を生じるおそれがある。
このような問題に対して、弾性ブレード622のブレード下面62bに表面層623を形成しないことも考えられる。しかし、ブレード下面62bに表面層623を形成しなかった場合は、弾性ブレード622の先端稜線部62cが感光体3の表面移動方向へ大きく弾性変形して、先端稜線部62cがめくれてしまい、めくれ摩耗が生じるおそれがある。
【0062】
そこで、本実施形態1においては、ブレード先端面62aおよびブレード下面62bの両方に、先端稜線部62cから50[μm]の位置において膜厚が1[μm]以下、より好ましくは1[μm]未満となるように表面層623を形成する。これにより、ブレード先端面62aにのみ表面層623を形成したものに比べて、弾性ブレード622の先端稜線部62cにおける弾性変形を阻害するのを抑制し、先端稜線部62cがめくれない程度に、弾性ブレード622の先端稜線部62cを感光体3表面移動方向へ弾性変形させることができる。これにより、感光体3に偏心などがあった場合でも、弾性ブレード622の先端稜線部62cの弾性変形に対する復元力により、先端稜線部62cを感光体3の表面に対して追随させることができ、良好なクリーニング性を維持することができる。
【0063】
また、表面層623の材質としては、樹脂が好ましく、紫外線硬化樹脂がより好ましい。紫外線硬化樹脂を用いることで、クリーニングブレード62の先端稜線部62cに付着した樹脂に紫外線を照射させるだけで、所望の硬度を有する表面層623を得ることができ、クリーニングブレード62を安価に製造することができる。
【0064】
紫外線硬化樹脂としては、官能基当量分子量350以下、官能基数3〜6のペンタエリスリトール・トリアクリレートを主要骨格とするモノマーを用いることが好ましい。官能基当量分子量が350を越えるか、またはペンタエリスリトール・トリアクリレート骨格以外の材料を用いると、表面層623は脆弱になり過ぎるおそれがある。表面層623が脆弱になると、クリーニングブレード62の先端稜線部62cがめくれて図8(b)のような先端面摩耗を生じてしまい、長期に渡るクリーニング性を保持できなくなる。
【0065】
また表面層623の材料として、上記ペンタエリスリトール・トリアクリレート骨格材料の他、官能基当量分子量100〜1000、官能基数1乃至2のアクリレート材料を適宜混合することが好ましい。これにより表面層623に可撓性を付与することが可能であり、クリーニングブレード62を搭載するマシンの特性に合わせて表面層623の性質をカスタマイズすることが可能となる。よって、特定環境での異音が発生した時などにブレード挙動を微調整するなど、環境特性等を向上させることも可能となる。
【0066】
また、表面層623の層厚は、先端稜線部62cから50[μm]の距離において測定した際、1[μm]以下、より好ましくは1[μm]未満であることが好ましい。層厚が1[μm]を超えてしまうと、表面層623の剛性が強くなりすぎ、クリーニングブレード62の先端稜線部62cの感光体3表面との摺動における挙動が小さくなりすぎるおそれがある。その結果、先端稜線部62cに振動エネルギーが集中することにより、不快な異音が発生しやすくなる他、摩耗速度も大きくなってしまい、早期に使用不可能となるおそれがある。
【0067】
次に、本出願人らが行った検証実験について説明する。
弾性ブレード622の材質、表面層623の材質、含浸処理方法、ブレード下面62bにおける表面層623の形成をそれぞれ変化させて、耐久試験を行った。
[弾性ブレード]
弾性ブレード622としては、表1のtanδピーク温度、23℃硬度、10℃硬度の物性となっている4つのウレタンゴムを用意した。なお、それぞれのJIS−A硬度と反発弾性率を示している。
【表1】

ウレタンゴムのtanδピーク温度は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DMS6100を用いて測定した。試料は2×2×40[mm]とし、引張りモード、1Hzにて、−50℃から+100℃まで、3℃/分の温度上昇をさせながら、連続的に測定した。
ウレタンゴムの当接面側および裏側の硬度は、高分子計器社製MD−1を用い、試料は2[mm]のシート1枚とした。このMD−1を用いる利点は、極薄いサンプルの表層わずかな部分の硬度を測定できる点で、ウレタンゴムNo.3のような多層ゴムの、それぞれの層の硬度が測定可能である。
ウレタンゴムの硬度/JIS−Aは、島津製作所製デュロメーターを用いて測定した。試料は厚さ12[mm]以上となるように約2[mm]のシートを重ね合わせたものとした。
ウレタンゴムの反発弾性率は、東洋精機製作所製No.221レジリエンステスタを用い、JIS K6255に準じて測定した。試料は厚さ4[mm]以上となるように約2[mm]のシートを重ね合わせたものとした。
【0068】
上記ウレタンゴム1〜4のうち、ウレタンゴム3は、JIS−A硬度の異なるゴムを、遠心成型などで一体的に積層した二層構成である。ウレタンゴム3では、先端稜線部62cとなる当接面側に架橋密度の高い層、裏面側に適度な架橋密度、すなわち、高い反発弾性を持つ層を配して、これにより、高耐久かつ、低温領域でのクリーニング性能低下を抑制を図るものである。以下、ウレタンゴム3に関しては、JIS−A硬度23℃、10℃の物性としては、表1中当接面側の物性がこれに当てはまるものとする。
【0069】
[硬化材料]
含浸処理や表面層623の形成処理に用いる硬化材料としては、以下の硬化材料1〜7のものを用いた。
<硬化材料1>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック PETIA 8部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック IBOA 2部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 1部
溶媒 :シクロヘキサノン 89部
<硬化材料2>
紫外線硬化樹脂1:日本化薬 DPCA−120 8部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック IBOA 2部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 1部
溶媒 :シクロヘキサノン 89部
<硬化材料3>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック PETIA 8部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック ODA−N 2部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 1部
溶媒 :シクロヘキサノン 89部
<硬化材料4>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック PETIA 8部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック HDDA 2部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 1部
溶媒 :シクロヘキサノン 89部
<硬化材料5>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック PETIA 6部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック EBECRYL11 4部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 1部
溶媒 :シクロヘキサノン 89部
<硬化材料6>
紫外線硬化樹脂 :ダイセルサイテック PETIA 10部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 1部
溶媒 :シクロヘキサノン 89部
<硬化材料7>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック PETIA 5部
紫外線硬化樹脂2:根上工業 UN−2700 5部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 1部
溶媒 :シクロヘキサノン 89部
【0070】
上記硬化材料に用いる紫外線硬化樹脂のアクリル材料、主要骨格、官能基数及び官能基当量を表2に示す。
【表2】

【0071】
また、上記硬化材料1〜7のマルテンス硬度[N/mm]と弾性仕事率を測定した結果を、表3に示す。
【表3】

【0072】
マルテンス硬度は、上述のように、ガラス板上に紫外線硬化樹脂を塗布し、層厚20[μm]として、フィシャー・インストルメンツ社製、微小硬度計 HM−2000を用いて、ビッカース圧子9.8[mN]の力で30秒で押し込み、5秒保持し、9.8[mN]の力で30秒間で抜き、計測した。
また、弾性仕事率は、マルテンス硬度の計測時のビッカース圧子を押し込むときの積算応力をWplast、試験荷重除荷寺の積算応力をWelastとすると、弾性仕事率は、Welast/Wplast×100%の式から求めた。
【0073】
次に、検証実験を行った画像形成装置の構成について説明する。
上記ウレタンゴム1〜4のいずれかを用いて、厚さ1.8[mm]の短冊形状の弾性ブレードを作成し、この弾性ブレードを含浸材料として、上記硬化材料1〜7のいずれかに所定時間(30[秒])浸漬したのち、3分間風乾する。さらにスプレー塗工法とスクリーン印刷法により上記硬化材料1〜5のいずれかからなる表面層623を形成した。具体的には、適宜含浸処理を行った各々のウレタンゴムからなる弾性ブレードに対し、まずスプレー塗工によりブレード先端面から10[mm/s]のスプレーガン移動速度にて所定の層厚になるように先端面全面に重ね塗りを行った。3分間指触乾燥後、ブレード下面にスクリーン印刷によりブレード稜線部から所定の非形成領域をはさんで先端約3[mm]幅に表面層623が形成されるように塗工した。ブレード下面62bへのパターン塗工は、太陽精機製シルクスクリーン230メッシュを用い、UV露光により非形成領域を規制する所定のパターンを形成したのち、表面層材料として用いる硬化材料を溶媒量により粘度調節して塗工した。その後さらに3分間指触乾燥を行い、紫外線露光(140[W/cm]×5[m/min]×5パス)を行った。
【0074】
表面層が形成された弾性ブレード622をリコー製カラー複合機 imagio MP C4500に搭載できる板金ホルダーに接着剤により固定し、試作のクリーニングブレード62とした。これを同じくリコー製カラー複合機 imagio MP C4500(プリンタ部は図2に示すプリンタ500と同様の構成)に取り付け、実施例1〜実施例10、比較例1〜比較例5の画像形成装置を作製した。なお、クリーニングブレード62は、線圧:20[g/cm]、クリーニング角:79[°]となるように取り付けた。また、本実験で用いる装置は感光体3表面への潤滑剤塗布装置10を備えており、潤滑剤塗布により感光体3表面の静止摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持される。なお、感光体3表面の静止摩擦係数の測定方法については、オイラーベルトの方法で、例えば、特開平9−166919号公報の段落番号0046に記載されている。
【0075】
検証実験には、重合法により作製したトナーを用いた。なお、トナーの物性は、以下のとおりである。
トナー母体:円形度0.98、平均粒径4.9[μm]
外添剤 :小粒径シリカ1.5部(クラリアント製H2000)
小粒径酸化チタン0.5部(テイカ製MT−150AI)
大粒径シリカ1.0部(電気化学工業製UFP−30H)
検証実験は、実験室環境:21[℃]・65[%RH]、通紙条件:画像面積率5%チャートを3プリント/ジョブで、50,000枚(A4横)で行った。そして、以下の項目を評価した。
【0076】
〔評価項目〕
クリーニング不良発生:有無(目視観察)
評価時画像:縦帯パターン(紙進行方向に対して)43[mm]幅、3本チャート
出力20枚(A4横)
ブレードエッジ摩耗幅:図6に示すようにブレード先端面側からみた摩耗幅
ブレードエッジ摩耗深さ:摩耗幅と90°反対側の摩耗幅
【0077】
以下に実施例1〜実施例10、比較例1〜比較例5のクリーニングブレード62の構成及び検証実験の結果を示す。なお、表面層の層厚は、キーエンス製マイクロスコープVHX−100を用い、別途同様に塗工した弾性ブレードの断面により測定した。試料は日進EM製SEM試料作製用トリミングカミソリを用い断面を切断したものとした。
【0078】
<実施例1>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料1
表面層材料:硬化材料1
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.5[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:10[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:6[μm]
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0079】
<実施例2>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料2
表面層材料:硬化材料2
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.5[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:11[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:5[μm]
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0080】
<実施例3>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料3
表面層材料:硬化材料3
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.9[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:9[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:4[μm]
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0081】
<実施例4>
ベースゴム:ウレタンゴム2
含浸材料 :硬化材料4
表面層材料:硬化材料4
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.7[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:11[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:6[μm]
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0082】
<実施例5>
ベースゴム:ウレタンゴム2
含浸材料 :硬化材料5
表面層材料:硬化材料5
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.4[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:13[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:6[μm]
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0083】
<実施例6>
ベースゴム:ウレタンゴム3
含浸材料 :硬化材料5
表面層材料:硬化材料5
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.8[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:8[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:4[μm]
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0084】
<実施例7>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料1
表面層材料:硬化材料2
エッジ部より50[μm]での表面層厚:1.0[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:10[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:5[μm]
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0085】
<実施例8>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料1
表面層材料:硬化材料6
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.5[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:5[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:5[μm]
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0086】
<実施例9>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料4
表面層材料:硬化材料2
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.05[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:7[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:2[μm]
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0087】
<実施例10>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料4
表面層材料:硬化材料6
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.1[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:10[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:6[μm]
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0088】
<比較例1>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料6
表面層材料:硬化材料6
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.5[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:10[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:30[μm]
クリーニング不良発生:全面
異音発生:なし
【0089】
<比較例2>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料7
表面層材料:硬化材料7
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.9[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:8[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:20[μm]
クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良が2箇所
異音発生:なし
先端面えぐれ摩耗
【0090】
<比較例3>
ベースゴム:ウレタンゴム4
含浸材料 :硬化材料1
表面層材料:硬化材料1
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.3[μm]
ブレードエッジ摩耗幅:25[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:25[μm]
クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良が5箇所
異音発生:ビビリ
【0091】
<比較例4>
ベースゴム:ウレタンゴム3
含浸材料 :−
表面層材料:−
ブレードエッジ摩耗幅:10[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:15[μm]
クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良が2箇所
異音発生:なし
先端面えぐれ摩耗
<比較例5>
ベースゴム:ウレタンゴム4
含浸材料 :−
表面層材料:−
ブレードエッジ摩耗幅:30[μm]
ブレードエッジ摩耗深さ:30[μm]
クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良が7箇所
異音発生:なし
先端面えぐれ摩耗
【0092】
実施例1〜実施例10、比較例1〜比較例5の検証実験の結果をまとめたものを表4に示す。
【表4】

また、実施例と比較例とを比較する概念図を図7に示す。
【0093】
実施例1〜実施例10においては、いずれも、経時にわたり良好なクリーニング性を維持することができ、異音の発生も抑えることができた。
実施例1〜実施例10においては、弾性ブレード622として、tanδピーク温度が0℃以上、且つ、JIS−A硬度の23℃から10℃における変化量が5°以上のウレタンゴムを用い、マルテンス硬度が250〜500N/mm、弾性仕事率75%以下の紫外線硬化樹脂を用いて、その先端稜線部を含む部分に含浸処理を行い、先端稜線部を含む弾性ブレードの表面に弾性ブレードよりも硬い表面層623を1μm以下の厚みで設けたものである。含浸処理による硬度上昇を図り、先端稜線部の動きが抑制され過ぎず、且つ、クリーニングブレードとしての姿勢を適度に保つことができるレベルで、先端稜線部62cの改質処理がなされている。このため、ブレード先端面62aに表面層623を設けた構成において、経時的な異音発生を回避することができたと考えられる。さらに、感光体3と先端稜線部62cとの間で生じる摩擦力を低減することができ、先端稜線部62cのめくれを抑制することができるとともに、弾性ブレード622の摩耗も抑制することができたと考えられる。表面層623は感光体3との接触部近傍の弾性体部分を補強する効果を有しており、それにより先端稜線部62cの運動を適度に制御することができ、異音発生を生じることなく、めくれを抑制できたと考えられる。
【0094】
また、実施例1〜実施例10においては、表面層623が紫外線硬化樹脂からなることで、クリーニングブレード62の先端稜線部62cに付着させた樹脂に紫外線を照射させるだけで、所望の硬度を有する表面層623を得ることができ、クリーニングブレード62を安価に製造することができる。
表面層623を形成する被膜樹脂としては、実施例1〜6に示すように、含浸処理をおこなう紫外線硬化樹脂と同一処方のものを用いることができる。また、実施例7〜10に示すように、表面層623を形成する被膜樹脂が、含浸処理をおこなう紫外線硬化樹脂とが異なるものであってもよい。表面層623としては、弾性ブレード622より硬い樹脂であれば、上記効果を得ることができる。
【0095】
一方、比較例1においては、クリーニング評価において、全面にクリーニング不良が発生した。これは、比較例1では、含浸処理に用いた紫外線硬化樹脂が上記範囲を満たしておらず、硬く、且つ、可撓性がない。このため、先端稜線部62cの運動性が制御されすぎ、大きく摩耗して稜線部全体に渡って稜線が損耗した結果、トナーすり抜けによりクリーニング不良が発生したと考えられる。
また、比較例2においては、クリーニング評価において、帯状にクリーニング不良が発生した。これは、比較例2では、含浸処理に用いた紫外線硬化樹脂が上記範囲を満たしておらず、柔らかすぎる。このため、先端稜線部62cの運動性を抑制できず、含浸処理および表面層を設けていない基材ウレタンゴムと同様の先端面えぐれ摩耗が発生し、摩耗進行とともに露出した基材ウレタンゴムが不快なビビリ音を発生させると共に、トナーすり抜けによるクリーニング不良が発生したと考えられる。
比較例3においては、弾性ブレード622に用いるウレタンゴムのtanδピーク温度が低い、即ち架橋密度が低いゴムを用いたため、耐久性の高い表面層で被覆しても長期的な摩耗進行によるゴム露出後の摩耗速度が速く、トナーすり抜けによるクリーニング不良が発生したと考えられる。
また、比較例4および5においては、クリーニング評価において、帯状クリーニング不良が発生した。これは、含浸処理および表面層を設けていないことから、先端摩擦係数が高く、先端稜線部62cの運動性を適度に制御できていないため、先端面えぐれ摩耗が発生し、局所的なトナーすり抜けによりクリーニング不良が発生したと考えられる。
【0096】
以上、本実施形態1では、本発明の特徴部を有するクリーニングブレード62を被清掃部材が感光体3であるクリーニング装置6に適用した構成について説明したが、被清掃部材としては感光体3に限るものではない。例えば、被清掃部材が中間転写ベルト14であるベルトクリーニングユニット162のベルトクリーニングブレード162aとしても本発明のクリーニングブレードを適用可能である。
【0097】
[実施形態2]
本発明を適用した画像形成装置の他の実施形態(以下、実施形態2という)について説明する。ここで、本実施形態2に係るプリンタの基本的な構成は、実施形態1に係るプリンタの構成と同様なので、その説明は省略する。また、実施形態1と本実施形態2とでは、弾性ブレード622の先端稜線部を含む部分に浸透させる紫外線硬化樹脂にフッ素系アクリルモノマーを含んでいることに係る点のみ異なる。したがって、実施形態1と同様な構成部材については、同一の符号を付して説明するとともに、同一な構成・動作、及び効果については、適宜、省略して説明する。また、上述した実施形態1の説明で用いた図についても、適宜、流用して説明する。また、図10は、本実施形態2に係る、弾性ブレードの摩耗断面積の測定箇所を示した模式図である。
【0098】
本実施形態2のクリーニングブレード62も、図1(a),(b)、及び図5を用いて説明した実施形態1と同様に、クリーニングブレード62は、金属や硬質プラスチックなどの剛性材料からなる短冊形状のホルダー621と、短冊形状の弾性ブレード622とで構成されている。弾性ブレード622は先端稜線部62cに詳細は後述する含浸処理がなされている。また、ブレード先端面62aとブレード下面62bには、ブレード長手方向にわたって表面層623が形成されている。
弾性ブレード622は、ホルダー621の一端側に接着剤などにより固定されており、ホルダー621の他端側は、クリーニング装置6のケースに片持ち支持されている。
【0099】
弾性ブレード622としては、実施形態1と同様に、感光体3の偏心や感光体3の表面の微小なうねりなどに追随できるように、高い反発弾性体率を有するものが好ましく、ウレタンゴムなどが好適である。そして、弾性ブレード622の硬度等の物性についても、実施形態1で説明したものと同様なものが好ましい。
【0100】
また、弾性ブレード622の先端稜線部62cへの含浸処理は、実施形態1と同様に、ハケ塗り、スプレー塗工、ディップ塗工などによって、紫外線硬化樹脂を含浸させることで可能である。加えて、本実施形態2では、紫外線硬化樹脂を先端稜線部62cのゴム表面より100μm以上内部まで含浸させている。これにより、当接する弾性ブレード622の先端稜線部62cが感光体3表面移動方向に変形するのを抑制することができる。さらに、経時表面層摩耗によって内部が露出したときも内部への含浸作用により、同様に変形を抑制することができる。
【0101】
表面層623は、実施形態1と同様に、弾性ブレード622に紫外線硬化樹脂を含浸させて所定時間風乾させた後に、スプレー塗工、ディップ塗工、あるいはスクリーン印刷等によって、クリーニングブレード62の先端稜線部62cを被覆する。表面層623としては、マルテンス硬度250〜500N/mm、弾性仕事率75%以下、好ましくは50〜75%の材料を0.05〜1μmの厚さで被覆するのが好ましい。より好ましくは0.1〜1μmの厚さで被覆する。また、表面層623は、弾性ブレード622よりも硬度が高い部材とすることで、剛直なため、変形し難く、クリーニングブレード62の先端稜線部62cのめくれを抑制することができる。
紫外線硬化樹脂を含浸させた後、または、表面層623による被覆を行った後に、紫外線を照射することで、図1に示す含浸部分62dを形成し、先端稜線部62cの硬度上昇を図る改質効果を生じさせることができる。特許文献3に記載の弾性ブレードでは、イソシアネート化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物等の含浸をさせて改質を行っているが、本実施形態2のように紫外線硬化樹脂を含浸させて紫外線を照射することで、さらに耐久性の向上を図ることができる。これは実施形態1で説明した理由と同様なものと考えられる。
【0102】
本実施形態2のクリーニングブレード62でも、実施形態1と同様にウレタンゴムからなる弾性ブレード622の基材に対してディップ塗工により紫外線硬化樹脂を含浸させ、さらに表面層623を形成する紫外線硬化樹脂をスプレー塗工した後、紫外線照射により樹脂を硬化させている。また、含浸させた紫外線硬化樹脂を硬化させるために外線を照射するタイミングも、実施形態1と同様に弾性ブレード622に紫外線硬化樹脂を含浸させた後、表面層623を被覆する前に、紫外線を照射してもよい。
これらのように紫外線硬化樹脂を硬化させることで、実施形態1と同様に所望の含浸状態の弾性ブレード622を作成できる。
【0103】
本実施形態2のクリーニングブレード62も、実施形態1のクリーニングブレードと同様に、図1(b)中の矢印で示すように、含浸部分62dにおける弾性ブレード622の内部ほどウレタンゴムに対して紫外線硬化樹脂の含有量が少なくなるような傾斜性が生じるように含浸させている。しかし、実施形態1と異なり、浸透させる紫外線硬化樹脂にフッ素系アクリルモノマーを含んでいることから、ゴム切削断面の微小硬度を規定することに加え、所定の値以下となるゴム表面からの距離も規定している。具体的には、本実施形態2においては含浸操作を行う際、ゴム切削断面の微小硬度をFischer社HM−8000で測定し、ゴムのマルテンス硬度変化量が5[%]以下となり、かつ同変化量が1[%]以下となるゴム表面からの距離が100μm以上となる含浸改質量が適切であり、本実施形態2では、紫外線硬化樹脂の希釈溶剤としてゴムへの浸透速度が遅いシクロヘキサノンを用い、且つ、含浸操作としては、ディッピング方式で行い、含浸時間を30〜180[秒]の範囲で適宜設定した。
【0104】
また、本実施形態2において、クリニングブレード62に設ける表面層623の層厚や塗布範囲等に関する構成は、用いる紫外線硬化樹脂の配合が異なるのみで、実施形態1で図1,5,と同様である。また、実施形態1で奏することができる効果も同様に奏することができる。したがって、本実施形態2のクリニングブレード62に設ける表面層623の層厚や塗布範囲等に関する構成、及びその効果についての説明は省略する。
【0105】
以下、本実施形態2の特徴である、紫外線硬化樹脂にフッ素系アクリルモノマーを含んでいるの配合に係る構成と、本出願人らが行った検証実験についてついて説明する。
【0106】
弾性ブレード622の材質、表面層623の材質、含浸処理方法、ブレード下面62bにおける表面層623の形成をそれぞれ変化させて、耐久試験を行った。
[弾性ブレード]
弾性ブレード622としては、表1のtanδピーク温度、23℃硬度、10℃硬度の物性となっている5つのウレタンゴムを用意した。なお、それぞれのJIS−A硬度と反発弾性率を示している。
【表5】

ウレタンゴムのtanδピーク温度、ウレタンゴムの当接面側および裏側の硬度は、ウレタンゴムの硬度は、及びウレタンゴムの反発弾性は、実施形態1と同様な機器、及び方法で測定を行った。
【0107】
[硬化材料]
含浸処理や表面層623の形成処理に用いる硬化材料としては、以下の硬化材料1〜10のものを用いた。
<硬化材料1>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック PETIA 8部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック ODA−N 2部
紫外線硬化樹脂3:ダイキン OPTOOL DAC−HP 0.1部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 0.5部
溶媒 :シクロヘキサノン 89.4部
<硬化材料2>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック PETIA 7部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック EBECRYL11 3部
紫外線硬化樹脂3:ダイキン OPTOOL DAC−HP 0.1部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 0.5部
溶媒 :シクロヘキサノン 89.4部
<硬化材料3>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック PETIA 8部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック IBOA 2部
紫外線硬化樹脂3:ダイキン OPTOOL DAC−HP 0.1部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 0.5部
溶媒 :シクロヘキサノン 89.4部
<硬化材料4>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック PETIA 7部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック HDDA 3部
紫外線硬化樹脂3:DIC RS−75 0.1部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 0.5部
溶媒 :シクロヘキサノン 89.4部
<硬化材料5>
紫外線硬化樹脂1:日本化薬 DPCA−120 8部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック IBOA 2部
紫外線硬化樹脂3:DIC RS−75 0.1部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 0.5部
溶媒 :シクロヘキサノン 89.4部
<硬化材料6>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック PETIA 7部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック EBECRYL11 3部
紫外線硬化樹脂3:DIC RS−75 0.1部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 0.5部
溶媒 :シクロヘキサノン 89.4部
<硬化材料7>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック PETIA 8部
紫外線硬化樹脂2:根上工業 UN−2700 2部
紫外線硬化樹脂3:DIC RS−75 0.1部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 0.5部
溶媒 :シクロヘキサノン 89.4部
<硬化材料8>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック PETIA 8部
紫外線硬化樹脂2:ダイセルサイテック ODA−N 2部
紫外線硬化樹脂3:シルセスキオキサン系表面改質剤 0.1部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 0.5部
溶媒 :シクロヘキサノン 89.4部
<硬化材料9>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック PETIA 10部
紫外線硬化樹脂2:ダイキン OPTOOL DAC−HP 0.1部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 0.5部
溶媒 :シクロヘキサノン 89.4部
<硬化材料10>
紫外線硬化樹脂1:ダイセルサイテック PETIA 5部
紫外線硬化樹脂2:根上工業 UN−2700 5部
紫外線硬化樹脂3:DIC RS−75 0.1部
重合開始剤 :チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 0.5部
溶媒 :シクロヘキサノン 89.4部
【0108】
上記硬化材料に用いる紫外線硬化樹脂のアクリル材料、主要骨格、官能基数及び官能基当量を表6に示す。
【表6】

【0109】
また、硬化材料1、2、3、及び9の紫外線硬化樹脂3に用いたDAC−HP、及び硬化材料4、5、6、7、及び10の紫外線硬化樹脂3に用いたRS−75が、フッ素系アクリルモノマーである。つまり、硬化材料8を除く硬化材料がフッ素系アクリルモノマーを含んでいる。このように、フッ素系アクリルモノマーを含む紫外線硬化樹脂を弾性ブレード622に含浸される紫外線硬化樹脂や表面層623を形成する紫外線硬化樹脂として、本実施形態2のクリーニングブレード62では用いている。そして、硬化後のマルテンス硬度が250〜500N/mm、弾性仕事率が75%以下になるように、表面より100μm以上内部まで含浸される。このように浸透させることで、紫外線硬化樹脂を含む表面層が剛直すぎず、また脆弱すぎずに、適度にブレード先端稜線部62cの挙動を抑制できる。したがって、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、先端稜線部62cのめくれを抑制し、かつ、先端稜線部62cの被清掃部材である感光体3に対する追随性を良好にでき当接圧を維持することができる。
【0110】
また、DAC−HP、及びRS−75は、いずれもパーフルオロポリエーテル骨格を有しており、いずれも官能基数2以上のアクリレートである。このようなアクリレートをクリーニングブレード62の弾性ブレード622に含浸される紫外線硬化樹脂に混合することで、表面層の摩擦係数を低減して像担持体との摺動ストレスを低減するとともに、ブレード表面にトナーが固着することを防止し、固着トナーの脱落によるストレスも低減することで、より高い耐摩耗性を発揮する。したがって、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、先端稜線部62cのめくれを抑制し、かつ、先端稜線部62cの被清掃部材である感光体3に対する追随性を良好にでき当接圧を維持することができる。
【0111】
また、上記硬化材料1〜10のマルテンス硬度[N/mm]と弾性仕事率を測定した結果を、表7に示す。
【表7】

また、マルテンス硬度は実施形態1と同様な方法で計測し、弾性仕事率も実施形態1と同様な方法求めた。
【0112】
次に、検証実験を行った画像形成装置の構成について説明する。
上記ウレタンゴム1〜5のいずれかを用いて厚さ1.8[mm]の短冊形状の弾性ブレードを作成し、この弾性ブレードを含浸材料として上記硬化材料1〜10のいずれかに所定時間浸漬したのち、3分間風乾する。さらにスプレー塗工法とスクリーン印刷法により上記硬化材料1〜10のいずれかからなる表面層623を形成した。具体的な表面層623を形成する方法は、実施形態1と同様である。
【0113】
表面層が形成された弾性ブレードをリコー製カラー複合機 imagio MP C4500に搭載できる板金ホルダーに接着剤により固定し、試作のクリーニングブレード62とした。これを同じくリコー製カラー複合機 imagio MP C4500(プリンタ部は図2に示すプリンタ500と同様の構成)に取り付け、実施例1〜実施例10、比較例1〜比較例7の画像形成装置を作製した。なお、クリーニングブレード62は、線圧:20[g/cm]、クリーニング角:79[°]となるように取り付けた。また、本実験で用いる装置は感光体3表面への潤滑剤塗布装置10を備えており、潤滑剤塗布により感光体3表面の静止摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持される。なお、感光体3表面の静止摩擦係数の測定方法については、オイラーベルトの方法で、例えば、特開平9−166919号公報の段落番号0046に記載されている。
【0114】
検証実験には、重合法により作製したトナーを用いた。なお、トナーの物性は、以下のとおりである。
トナー母体:円形度0.98、平均粒径4.9[μm]
外添剤 :小粒径シリカ1.5部(クラリアント製H2000)
小粒径酸化チタン0.5部(テイカ製MT−150AI)
大粒径シリカ1.0部(電気化学工業製UFP−30H)
検証実験は、実験室環境:21[℃]・65[%RH]、通紙条件:画像面積率5%チャートを3プリント/ジョブで、50,000枚(A4横)で行った。そして、以下の項目を評価した。
【0115】
〔評価項目〕
クリーニング不良発生:有無(目視観察)
評価時画像:縦帯パターン(紙進行方向に対して)43[mm]幅、3本チャート
出力20枚(A4横)
ブレードエッジ摩耗断面積:図10に示すようにブレード先端部の摩耗損失部分
【0116】
以下に実施例1〜実施例10、比較例1〜比較例7のクリーニングブレード62の構成及び検証実験の結果を示す。なお、表面層の層厚は、実施形態1と同様に、キーエンス製マイクロスコープVHX−100を用い、別途同様に塗工した弾性ブレードの断面により測定した。試料は日進EM製SEM試料作製用トリミングカミソリを用い断面を切断したものとした。
【0117】
<実施例1>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料1
表面層材料:硬化材料1
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.75[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:2[μm
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0118】
<実施例2>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料3
表面層材料:硬化材料3
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.5[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:3[μm
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0119】
<実施例3>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料6
表面層材料:硬化材料6
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.7[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:2[μm
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0120】
<実施例4>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料7
表面層材料:硬化材料7
エッジ部より50[μm]での表面層厚:1.0[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:4[μm
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0121】
<実施例5>
ベースゴム:ウレタンゴム2
含浸材料 :硬化材料2
表面層材料:硬化材料2
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.1[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:5[μm
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0122】
<実施例6>
ベースゴム:ウレタンゴム2
含浸材料 :硬化材料4
表面層材料:硬化材料4
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.07[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:2[μm
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0123】
<実施例7>
ベースゴム:ウレタンゴム2
含浸材料 :硬化材料5
表面層材料:硬化材料5
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.25[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:3[μm
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0124】
<実施例8>
ベースゴム:ウレタンゴム2
含浸材料 :硬化材料6
表面層材料:硬化材料6
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.15[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:5[μm
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0125】
<実施例9>
ベースゴム:ウレタンゴム3
含浸材料 :硬化材料4
表面層材料:硬化材料4
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.05[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:2[μm
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0126】
<実施例10>
ベースゴム:ウレタンゴム4
含浸材料 :硬化材料1
表面層材料:硬化材料1
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.35[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:4[μm
クリーニング不良発生:なし
異音発生:なし
【0127】
<比較例1>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :−
表面層材料:−
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:73[μm
クリーニング不良発生:全面
異音発生:なし
先端面えぐれ摩耗
【0128】
<比較例2>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料8
表面層材料:硬化材料8
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.6[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:49[μm
クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良が3箇所
異音発生:なし
【0129】
<比較例3>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料1
表面層材料:硬化材料1
エッジ部より50[μm]での表面層厚:5[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:23[μm
クリーニング不良発生:全面クリーニング不良
異音発生:なし
【0130】
<比較例4>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料1
表面層材料:硬化材料1
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.8[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:35[μm
クリーニング不良発生:全面クリーニング不良
異音発生:なし
【0131】
<比較例5>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :−
表面層材料:硬化材料9
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.5[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:15[μm
クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良が2箇所
異音発生:なし
先端面えぐれ摩耗
【0132】
<比較例6>
ベースゴム:ウレタンゴム1
含浸材料 :硬化材料10
表面層材料:硬化材料10
エッジ部より50[μm]での表面層厚:5[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:18[μm
クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良が4箇所
異音発生:不快なビビリ音
先端面えぐれ摩耗
【0133】
<比較例7>
ベースゴム:ウレタンゴム5
含浸材料 :硬化材料1
表面層材料:硬化材料1
エッジ部より50[μm]での表面層厚:0.6[μm]
ブレードエッジ摩耗断面積:65[μm
クリーニング不良発生:全面クリーニング不良
異音発生:なし
先端面えぐれ摩耗
【0134】
実施例1〜実施例10、比較例1〜比較例7の検証実験の結果をまとめたものを表8に示す。
【表8】

また、実施例と比較例とを比較すると、実施形態1の図7の概念図と同様になる。
【0135】
実施例1〜実施例10においては、いずれも、経時にわたり良好なクリーニング性を維持することができ、異音の発生も抑えることができた。
実施例1〜実施例10においては、含浸処理による硬度上昇を図り、先端稜線部62cの改質処理がなされている。さらに、潤滑剤塗布装置10による潤滑剤塗布により感光体3表面の摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持されている。このため、ブレード先端面62aに表面層623を設けた構成において、経時的な異音発生を回避することができたと考えられる。さらに、感光体3と先端稜線部62cとの間で生じる摩擦力を低減することができ、先端稜線部62cのめくれを抑制することができるとともに、弾性ブレード622の摩耗も抑制することができたと考えられる。表面層623は感光体3との接触部近傍の弾性体部分を補強する効果を有しており、それにより先端稜線部62cの運動を適度に制御することができ、異音発生を生じることなく、めくれを抑制できたと考えられる。
【0136】
一方、比較例1においては、クリーニング評価において、全面にクリーニング不良が発生した。これは、含浸操作をせず、表面層も形成しないゴムでは耐摩耗性が充分ではなく、大きく摩耗して稜線部全体に渡って稜線が損耗した結果、トナーすり抜けによりクリーニング不良が発生したと考えられる。
また、比較例2においては、クリーニング評価において、帯状にクリーニング不良が発生した。これは、ゴム表面からの紫外線硬化樹脂の含浸深さが充分ではないため、部分的に改質部が損耗して非改質部が露出し、そこが大きく摩耗してクリーニング不良が発生したと考えられる。
また、比較例3においては、クリーニング評価において、全面にクリーニング不良が発生した。これは表面層の膜厚を厚く設定したため、先端稜線部の挙動が抑制されすぎた結果、像担持体との摺擦エネルギーがブレードの先端稜線部62cに部分的に集中し損耗した結果、トナーすり抜けによりクリーニング不良が発生したと考えられる。
【0137】
比較例4においては、クリーニング評価において、全面にクリーニング不良が発生した。これは、ゴム内部のマルテンス硬度変化量が大きすぎる、すなわち紫外線硬化樹脂によってゴム内部が必要以上に改質されたため、先端稜線部の挙動が抑制されすぎた結果、像担持体との摺擦エネルギーがブレードの先端稜線部62cに部分的に集中し損耗した結果、トナーすり抜けによりクリーニング不良が発生したと考えられる。
また、比較例5においては、クリーニング評価において、帯状にクリーニング不良が発生した。これは含浸処理をせず、表面層のみ形成したため、ゴム内部に紫外線硬化樹脂がほとんど含浸せず、ゴム内部の改質が行われなかったため耐摩耗性が充分でなく、先に表面層が損耗してゴムが露出した先端稜線部62cに像担持体との摺動エネルギーが集中し大きく損耗した結果、トナーすり抜けによりクリーニング不良が発生したと考えられる。
【0138】
比較例6においては、クリーニング評価において、帯状にクリーニング不良が発生した。これは表面層のマルテンス硬度が充分高くないため、先端稜線部62cの運動性を抑制できず、樹脂被覆を行なっていないゴムと同様の先端面えぐれ摩耗が発生し、摩耗進行とともに露出した基材ゴムが不快なビビリ音を発生させると共に、トナーすり抜けによるクリーニング不良が発生したと考えられる。
また、比較例7においては、ゴムのtanδピーク温度が低い、即ち架橋密度が低いゴムを用いたため、耐久性の高い表面層で被覆しても長期的な摩耗進行によるゴム露出後の摩耗速度が速く、トナーすり抜けによるクリーニング不良が発生したと考えられる。
【0139】
また、比較例4および5においては、クリーニング評価において、帯状クリーニング不良が発生した。これは、含浸処理および表面層を設けていないことから、先端摩擦係数が高く、先端稜線部62cの運動性を適度に制御できていないため、先端面えぐれ摩耗が発生し、局所的なトナーすり抜けによりクリーニング不良が発生したと考えられる。
【0140】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
短冊形状の弾性ブレード622で構成され、弾性ブレードの先端稜線部62cを表面移動する感光体3等の被清掃部材の表面に当接して、被清掃部材表面から粉体を除去するクリーニングブレード62において、弾性ブレードは、tanδピーク温度が0℃以上、且つ、JIS−A硬度の23℃から10℃における変化量が5°以上であるウレタンゴムであり、弾性ブレードの先端稜線部を含む部分にマルテンス硬度が250〜500N/mm、弾性仕事率が75%以下の紫外線硬化樹脂が含浸され、且つ、先端稜線部を含む弾性ブレードの表面に弾性ブレードよりも硬い表面層を1μm以下の厚みで設ける。これによれば、上記各実施形態について説明したように、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、先端稜線部のめくれを抑制し、かつ、先端稜線部の被清掃部材に対する追随性を良好にでき当接圧を維持することができる。
(態様B)
(態様A)において、表面層623として、弾性ブレード622を紫外線硬化樹脂で被覆している。これによれば、上記各実施形態について説明したように、所望の硬度を有する表面層623を容易に得ることができ、クリーニングブレード62を安価に製造することができる。
(態様C)
(態様A)または(態様B)において、紫外線硬化樹脂が、官能基当量分子量350以下、官能基数3〜6のペンタエリスリトール・トリアクリレートを主要骨格とする材料である。これにより、上記各実施形態について説明したように、紫外線硬化樹脂を含む層が脆弱になり過ぎることを防止して、先端稜線部のめくれや先端面摩耗をさらに良好に抑制することができる。
(態様D)
(態様A)、(態様B)または(態様C)において、紫外線硬化樹脂として、官能基当量分子量100〜1000、官能基数1〜2のアクリレート材料を混合する構成とする。これによれば、上記各実施形態について説明したように、表面層623に可撓性を付与することが可能であり、特定環境での異音が発生した時などにブレード挙動を微調整するなど、環境特性等を向上させることも可能となる。
(態様E)
(態様A)、(態様B)、(態様C)または(態様D)において、クリーニングブレード62の弾性ブレード622に紫外線硬化樹脂を含浸させ硬化させた後のマルテンス硬度変化率を5%以下とする。これにより、上記各実施形態について説明したように、架橋密度が必要以上に上昇することが抑制され、先端稜線部62cは適度にスティックスリップ運動することで応力集中を防ぎ、高い耐摩耗性を発揮することができる
(態様F)
(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)または(態様E)において、クリーニングブレード62は、弾性ブレード622として、硬度の異なるゴムを遠心成型などで一体的に積層する。これによれば、上記各実施形態について説明したように、先端稜線部62cとなる側に架橋密度の高い層、反対側に適度な架橋密度、すなわち、高い反発弾性を持つ層を配し、高耐久かつ、低温領域でのクリーニング性能低下を抑制できる。
(態様G)
(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)または(態様F)のいずれかにおいて、クリーニングブレード62の上記先端稜線部を含む部分に浸透させる紫外線硬化樹脂が、フッ素系アクリルモノマーを含む紫外線硬化樹脂であり、該弾性ブレードの表面より100μm以上内部まで含浸されている。これによれば、上記実施形態2について説明したように、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、先端稜線部62cのめくれを抑制し、かつ、先端稜線部62cの被清掃部材である感光体3に対する追随性を良好にでき当接圧を維持することができる。
(態様H)
(態様G)において、フッ素系アクリルモノマーが、パーフルオロポリエーテル骨格を持ち、官能基数2以上のアクリレートである。これによれば、上記実施形態2について説明したように、経時使用時の異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、先端稜線部62cのめくれを抑制し、かつ、先端稜線部62cの被清掃部材である感光体3に対する追随性を良好にでき当接圧を維持することができる。
(態様I)
感光体3等の像担持体と、像担持体の表面を帯電する帯電ローラ4等の帯電手段と、帯電した像担持体表面に静電潜像を形成する光書込ユニット40等の潜像形成手段と、像担持体表面に形成された静電潜像を現像してトナー像化する現像装置5等の現像手段と、像担持体表面のトナー像を転写体である転写紙Pに転写する転写ユニット60等の転写手段と、像担持体表面に当接して像担持体表面に付着した残トナーを除去するクリーニング部材を有するクリーニング装置6等のクリーニング手段とを備えたプリンタ500等の画像形成装置である。このような画像形成装置において、クリーニング部材として、(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)、(態様F)、(態様G)または(態様H)のクリーニングブレードを用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、経時使用時においても、異常摩耗及び異音の発生を抑制しつつ、良好なクリーニング性能を維持でき、高品位な画像を形成することができる。
(態様J)
感光体3等の像担持体と、少なくとも像担持体表面に付着した残トナーを除去するクリーニング部材を有するクリーニング装置6とを一体に支持し、プリンタ500等の画像形成装置本体に対して本体に対して着脱自在な作像ユニット1等のプロセスカートリッジである。このようなプロセスカートリッジのクリーニング部材として、(態様A)、(態様B)、(態様C)、(態様D)、(態様E)、(態様F)、(態様G)または(態様H)のクリーニングブレードを用いる。これによれば、上記実施形態について説明したように、経時使用時においても、クリーニング性が良好なプロセスカートリッジを提供することができる。
【符号の説明】
【0141】
1 作像ユニット
3 感光体
6 クリーニング装置
10 潤滑剤塗布装置
14 中間転写ベルト
60 転写ユニット
62 クリーニングブレード
62a ブレード先端面
62b ブレード下面
62c 先端稜線部
62d 含浸部分
80 定着ユニット
101 ファーブラシ
103 固形潤滑剤
162 ベルトクリーニングユニット
162a ベルトクリーニングブレード
500 プリンタ
621 ホルダー
622 弾性ブレード
623 表面層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0142】
【特許文献1】特許第3602898号公報
【特許文献2】特開2004−233818号公報
【特許文献3】特開2010−152295号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短冊形状の弾性ブレードで構成され、該弾性ブレードの先端稜線部を表面移動する被清掃部材の表面に当接して、該被清掃部材表面から粉体を除去するクリーニングブレードにおいて、
上記弾性ブレードは、tanδピーク温度が0℃以上、且つ、JIS−A硬度の23℃から10℃における変化量が5°以上であるウレタンゴムであり、該弾性ブレードの上記先端稜線部を含む部分にマルテンス硬度が250〜500N/mm、弾性仕事率が75%以下の紫外線硬化樹脂が含浸され、且つ、該先端稜線部を含む該弾性ブレードの表面に該弾性ブレードよりも硬い表面層を1μm以下の厚みで設けたことを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項2】
請求項1のクリーニングブレードにおいて、上記表面層は、上記弾性ブレードを紫外線硬化樹脂で被覆して形成されたものであることを特徴とクリーニングブレード。
【請求項3】
請求項1または2のクリーニングブレードにおいて、上記紫外線硬化樹脂が、官能基当量分子量350以下、官能基数3〜6のペンタエリスリトール・トリアクリレートを主要骨格とする材料であることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項4】
請求項1、2または3のいずれかのクリーニングブレードにおいて、上記紫外線硬化樹脂に、官能基当量分子量100〜1000、官能基数1〜2のアクリレート材料を混合することを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項5】
請求項1、2、3または4のいずれかのクリーニングブレードにおいて、上記紫外線硬化樹脂を含浸し硬化後のゴム内部マルテンス硬度変化率が5%以下であることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5のいずれかのクリーニングブレードにおいて、上記弾性ブレードはJIS−A硬度の異なる2種類以上のゴムが一体成型によって積層されたものであることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6のいずれかのクリーニングブレードにおいて、上記弾性ブレードの上記先端稜線部を含む部分に浸透、及び上記弾性ブレードを被覆させる紫外線硬化樹脂が、フッ素系アクリルモノマーを含む紫外線硬化樹脂であり、該弾性ブレードの表面より100μm以上内部まで含浸されていることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項8】
請求項7のクリーニングブレードにおいて、フッ素系アクリルモノマーが、パーフルオロポリエーテル骨格を持ち、官能基数2以上のアクリレートであることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項9】
表面移動部材である像担持体上に形成した画像を最終的に記録媒体に転移させる画像形成装置において、上記像担持体の表面に接触し、その表面上に付着した不要な付着物を除去するためのクリーニング部材として、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のクリーニングブレードを用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
表面移動する潜像担持体上に形成した画像を最終的に記録媒体に転移させる画像形成装置の本体に着脱自在に構成され、該潜像担持体を上記被清掃部材としてその表面に接触し、その表面上に付着した不要な付着物を除去するクリーニング部材を有するクリーニング手段と、該潜像担持体とを一体に支持したプロセスカートリッジにおいて、上記クリーニング部材として、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のクリーニングブレードを用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−76970(P2013−76970A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88370(P2012−88370)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】