説明

クリーニングブレード

【課題】波打ちが生じることのないクリーニングブレードを提供する。
【解決手段】クリーニングブレード (5)は、耐熱性合成樹脂であるポリエチレンテレフタレートよりなる厚さ16μmの基材層(6)と、基材層(6)の片面に設けられかつレーザー光線により溶融可能な合成樹脂であるエチレン酢酸ビニル共重合体よりなる厚さ30μmのヒートシール材層(7)と、基材層(6)とヒートシール材層(7)との間に介在せられかつ温度変化に起因するヒートシール材層(7)および被取り付けポリスチレン製カートリッジ(2)の収縮を吸収し得る弾性を有する合成樹脂であるポリウレタンよりなる厚さ100μmの中間層(8)とを備えているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機等の電子写真式画像形成装置において、感光ドラムに残存したトナーの除去に用いられるクリーニングブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クリーニングブレードをその自由縁が感光ドラムに当接するようにカートリッジの横長開口部縁に固着するため、粘着テープが用いられていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
クリーニングブレードをカートリッジに固着するのに粘着テープを用いると、粘着テープに使用されている粘着剤がにじみ出し、粘着テープにトナーが付着するという問題があるばかりか、離型紙をいちいち剥がしてから粘着テープをクリーニングブレードとカートリッジとの間に介在させねばならず、手間と時間を要するばかりでなく、離型紙がごみにもなるという問題もあった。
【0004】
そこで、上記のような問題の多い粘着テープの使用をすることなく合成樹脂製カートリッジに固着し得るクリーニングブレードとして、合成樹脂よりなる基材層と、基材層の片面に設けられた熱またはレーザー光線により溶融可能な合成樹脂よりなるヒートシール材層とで構成したものが考えられる。ところで、クリーニングブレードの基材層には、耐熱性のあるポリエチレンテレフタレート等を使用する必要がある。その理由は、電子写真式画像形成装置の使用時、カートリッジ内の温度は約50゜Cまで上昇する。すると、クリーニングブレードの基材層に耐熱性のない合成樹脂が用いられていると、回転する感光ドラムとの接触により、クリーニングブレードが磨耗するからである。ところが、基材層に耐熱性のある合成樹脂を使用すると、つぎのような問題が発生する。すなわち、ヒートシール材層に使用されている合成樹脂は、当然のことながら耐熱性のないものであり、これは使用時の高温から使用後の低温になると収縮するのに反し、基材層はほとんど膨張収縮しない。合成樹脂製カートリッジもヒートシール材層と同様に収縮する。クリーニングブレードは帯板状のものであるから、ヒートシール材層の長さ方向の収縮およびカートリッジの横長開口部縁の長さ方向の収縮が、収縮しない基材層ひいてはクリーニングブレードを長さ方向に波を打たせるという現象をもたらす。クリーニングブレードがこのように波を打つと、感光ドラムとクリーニングブレードの波山との間に隙間が生じるため、感光ドラムの残存トナーの除去が不完全となる。
【0005】
本発明の目的は、上記のような波打ちが生じないクリーニングブレードを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明によるクリーニングブレードは、耐熱性合成樹脂よりなる基材層と、基材層の片面に設けられかつ熱またはレーザー光線により溶融可能な合成樹脂よりなるヒートシール材層と、基材層とヒートシール材層との間に介在せられかつ温度変化に起因するヒートシール材層および被取り付け合成樹脂製カートリッジの収縮を吸収し得る弾性を有する合成樹脂よりなる中間層とを備えているものである。
【0007】
上記基材層に用いられる耐熱性合成樹脂の具体例としては、上記趣旨で要求される耐熱性の外にヒートシール時の金型への溶着防止のための耐熱性、さらには回転感光ドラムとの接触による磨耗防止のための耐磨耗性および回転感光ドラム表面の残存トナーの適切な除去のためのこしの強さの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、2軸延伸ポリプロピレンおよび2軸延伸ナイロン等が挙げられる。上記ヒートシール材層に用いられる合成樹脂の具体例としては、エチレン酢酸ビニル系共重合体樹脂、エチレン系共重合樹脂、ポリスチレン系樹脂、ホットメルト樹脂および変性ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。上記中間層に用いられる合成樹脂の具体例としては、エチレン酢酸ビニル系共重合樹脂、エチレン系共重合樹脂、ポリウレタン、エチレン・アクリル酸エチル共重合体および軟質塩化ビニル等が挙げられる。上記カートリッジに用いられる合成樹脂の具体例としては、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレンが一般的であるが、ポリプロピレンおよびポリカーボネイトも使用可能である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載のクリーニングブレードにおいて、基材層の厚さが9〜150μm、ヒートシール材層の厚さが5〜100μm、中間層の厚さが30〜200μmであるものである。
【0009】
上記において、基材層の厚さを9〜150μmに限定したのは、基材層の厚さが9μm未満であると、薄すぎて強度がなく、150μmを超えると、硬くなりすぎてこしの強さがなくなるからである。また,ヒートシール材層の厚さを5〜100μmに限定したのは、5μm未満であると、合成樹脂製カートリッジに対するヒートシール強度が不充分であり、100μmを超えると、不経済となるからである。さらに、中間層の厚さを30〜200μmに限定したのは、中間層の厚さが30μm未満であると、波打ち防止効果がなく、200μmを超えてもその効果は変わらないからである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるクリーニングブレードは、耐熱性合成樹脂よりなる基材層と、基材層の片面に設けられかつ熱またはレーザー光線により溶融可能な合成樹脂よりなるヒートシール材層と、基材層とヒートシール材層との間に介在せられかつ温度変化に起因するヒートシール材層および被取り付け合成樹脂製カートリッジの収縮を吸収し得る弾性を有する合成樹脂よりなる中間層とを備えているから、ヒートシール材層の長さ方向の収縮およびカートリッジの横長開口部縁の長さ方向の収縮は、中間層に吸収せられて基材層に波及しない。したがって、クリーニングブレードは、その長さ方向に波打つことがなく、感光ドラムとクリーニングブレードとの間に隙間が生じないから、感光ドラムの残存トナーの除去が確実となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1および図2は、本発明のクリーニングブレードが合成樹脂製カートリッジに取り付けられた状態を示す模式図である。同図において、感光ドラム(1)を内蔵したカートリッジ(2)は、横長開口部(3)を有し、その対向する両縁のうちの一方の縁に帯板状ドクターブレード(4)が取り付けられており、同他方の縁部に帯板状クリーニングブレード(5)がヒートシールにより取り付けられている。そして、クリーニングブレード(5)の自由縁は、感光ドラム(1)に当接せしめられている。クリーニングブレード (5)の積層状態は、図3に示されている。すなわち、クリーニングブレード (5)は、耐熱性合成樹脂よりなる基材層(6)と、基材層(6)の片面に設けられたレーザー光線により溶融可能な合成樹脂よりなるヒートシール材層(7)と、基材層(6)とヒートシール材層(7)との間に介在せられかつ温度変化に起因するヒートシール材層(7)およびクリーニングブレード(5)がヒートシールにより取り付けられている合成樹脂製カートリッジ(2)の長さ方向の収縮を吸収し得る弾性を有する合成樹脂よりなる中間層(8)とを備えている。
【0012】
図4は、カートリッジ(2)に取り付けられた従来のクリーニングブレード(9)が、そのヒートシール材層の長さ方向の収縮およびカートリッジ(2)の長さ方向の収縮により、長さ方向に波を打ち、感光ドラム(1)とクリーニングブレード(9)の波山(10)との間に隙間(S)が生じている状態を示す。
【実施例】
【0013】
厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートよりなる基材層と、厚さ30μmのエチレン酢酸ビニル共重合体よりなるヒートシール材層と、厚さおよび合成樹脂の種類が下記表1に示す中間層とよりなるクリーニングブレードが、ポリスチレン樹脂よりなるカートリッジに温度150゜C、圧力1MPaおよび加圧時間0.5秒のヒートシール条件でヒートシールすることにより取り付けられた。そして、これを室温25゜Cの低温環境から60゜Cの高温環境に24時間置き、再び室温25゜Cの低温環境に戻したときのクリーニングブレードの波打ちの有無を目視で確認した。波打ちが少しでもあれば、使用不可能として×、波打ちがなければ、使用可能として○とした。
【0014】
本発明の上記実施例とともに、従来例および比較例についての評価試験結果を下記表1に示す。
【0015】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のクリーニングブレードがカートリッジに取り付けられた状態を模式的に示す平面図である。
【図2】図1のII−II線にそう断面図である。
【図3】本発明のクリーニングブレードの詳細拡大断面図である。
【図4】波を打った従来のクリーニングブレードの波山と感光ドラムとの間に隙間が生じている状態を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0017】
(5)クリーニングブレード
(6)基材層
(7)ヒートシール材層
(8)中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性合成樹脂よりなる基材層と、基材層の片面に設けられかつ熱またはレーザ光線により溶融可能な合成樹脂よりなるヒートシール材層と、基材層とヒートシール材層との間に介在せられかつ温度変化に起因するヒートシール材層および被取り付け合成樹脂製カートリッジの収縮を吸収し得る弾性を有する合成樹脂よりなる中間層とを備えているクリーニングブレード。
【請求項2】
基材層の厚さが9〜150μm、ヒートシール材層の厚さが5〜100μm、中間層の厚さが30〜200μmである請求項1記載のクリーニングブレード。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−15172(P2008−15172A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185767(P2006−185767)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(501428187)昭和電工パッケージング株式会社 (110)
【Fターム(参考)】