説明

クリーニングブレード

【課題】小粒径、球形トナーであっても、低温において良好にクリーニングができるクリーニングブレードを提供する。
【解決手段】像担持体に残留するトナーを除去するためのクリーニングブレードであって、像担持体が回転する時に、該クリーニングブレードのブレード部材が像担持体に当接する部位(面a及び面b)が下記条件を満たしていることを特徴とするクリーニングブレードである。
(1)当接する部位にある、該当接する部位の表面粗さRz−jisより大きな凹みの内の最深の凹みが深さc 10μm以下であること。
(2)該最深の凹みの深さcを測定した点を通り、面a又は面bに対し垂直に切り取る、該面での凹みの橋渡し長さdが最短になる平面において、深さcを高さ、橋渡し長さdを底辺として形成される三角形の底角θ1及びθ2が何れも45°以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置において、像担持体に残るトナーを除去するために用いられるクリーニングブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真装置には、トナー像転写後に像担持体上に残るトナーを除去するために、該像担持体に当接して、クリーニングブレードが設けられている。このクリーニングブレードは、通常、装置に取り付ける金属製のホルダーと、像担持体に当接し、残存トナーを除去するための弾性体からなるブレード部材からなっている。そして、このブレード部材としては、耐摩耗性が良く、永久歪みが小さいことから、通常は、ポリウレタンエラストマーから形成されている。
【0003】
近年、電子写真複写機、レーザービームプリンターの高画質化に伴い、従来よりも粒径が小さく、かつ形状がより球形であるトナーが使用されるようになった。これに伴い、トナーが像担持体とブレード部材の間をすり抜け易くなり、クリーニング不良が発生し易くなっている。つまり、ブレード部材のエッジの精度不良や欠け、表面、特にエッジへの異物や汚れ、内部の泡等が僅かであっても不良発生の原因となる。これら欠陥がないものを使用するために精度の高い検査を行い、クリーニングブレードとしての機能を高めることが必要となっている。
【0004】
しかしながら、検査を合格したクリーニングブレードであっても、連続使用すると、残存トナーが十分にクリーニングされない場合が発生することがあった。そこで、クリーニングブレードが像担持体に接するエッジ部の凹凸や真直度等の精度をさらに規定したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、如何にブレードエッジ寸法精度を厳しくしても、使用環境が低温になると残存トナーのすり抜けが生じる問題が依然として発生している。
【特許文献1】特開2006−301578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、小粒径、球形トナーであっても、低温において良好にクリーニングができるクリーニングブレードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、球形トナーに対しても良好なクリーニング性能を有するクリーニングブレードを得るため、種々の検討を行った。その結果、クリーニングブレード機能検査項目として、ブレードエッジ寸法、ブレードエッジ欠け、ウレタン部の外観に加え、像担持体当接部位の凹みが重要であることを突き止めた。さらに、その凹みの深さと凹みの形状を見出し、小粒径かつ球形トナーに対しても良好なクリーニング性能を有するクリーニングブレードを完成し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、像担持体に残留するトナーを除去するためのクリーニングブレードであって、像担持体が回転する時に、該クリーニングブレードのブレード部材が像担持体に当接する部位(面a及び面b)が下記条件を満たしていることを特徴とするクリーニングブレードである。
(1)当接する部位にある、該当接する部位の表面粗さRz−jisより大きな凹みの内の最深の凹みが深さc 10μm以下であること。
(2)該最深の凹みの深さcを測定した点を通り、面a又は面bに対し垂直に切り取る、該面での凹みの橋渡し長さdが最短になる平面において、深さcを高さ、橋渡し長さdを底辺として形成される三角形の底角θ1及びθ2が何れも45°以下であること。
【0009】
該クリーニングブレードにおいて、ブレード部材の硬さが国際ゴム硬さ(IRHD)で65度以上80度以下であることが好ましい。
【0010】
また、該クリーニングブレードは、ブレード部材がウレタンエラストマーから形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクリーニングブレードは、ブレード部材の表面のうち、使用時に像担持体に当接する部位にある凹みについて、深さと形状を規定したものであり、小粒径、球状トナーを用いた場合、低温で用いられても、良好なクリーニング性を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、電子写真装置に配置される、像担持体に当接して、トナー像転写した後の像担持体に残留するトナーを除去するクリーニングブレードに関する。
【0013】
本発明のクリーニングブレードは、像担持体が回転する時に、該クリーニングブレードのブレード部材が像担持体に当接する部位(面a及び面b)が下記条件を満たしていることを特徴とする。
(1)当接する部位にある、該当接する部位の表面粗さRz−jisより大きな凹みの内の最深の凹みが深さc 10μm以下であること。
(2)該最深の凹みの深さcを測定した点を通り、面a又は面bに対し垂直に切り取る、該面での凹みの橋渡し長さdが最短になる平面において、深さcを高さ、橋渡し長さdを底辺として形成される三角形の底角θ1及びθ2が何れも45°以下であること。
【0014】
クリーニングブレードは、通常、図1に示す斜視図のような形状、すなわち、装置に取り付ける金属製のホルダー1と、像担持体に当接し、残存トナーを除去するための弾性体からなるブレード部材2からなっている。クリーニングブレードは、図1において、ブレード部材2の下面側が像担持体側になり、その先端におけるほぼ垂直な面が像担持体の回転に対して対抗する様に用いられる。そして、両面により形成される線(エッジ先端3)で、一義的には、クリーニングブレードは像担持体に当接する。
【0015】
像担持体が回転して、残留トナーが除去されるとき、クリーニングブレードのブレード部材のエッジ先端3が像担持体表面を摺擦して、残留トナーを掻が取られる(クリーニングされる)。しかし、エッジ先端3は、像担持体に線状で当接しているのではなく、エッジ先端3を挟む両面のエッジ先端3近傍で像担持体に当接しており、これによりトナーをせき止め、押し返すことを繰り返しながらクリーニングしている。なお、本出願では、この当接している部分を当接する部位といい、下面側を面a、像担持体の回転方向に対抗する面側を面bという。
【0016】
クリーニングブレードのクリーニング性は、この当接する部位の性状が大いに影響することから、従来は、表面粗さ、真直度等が検討されてきた。しかしながら、上記したように、表面粗さや真直度が満足されたクリーニングブレードにおいて、低温での連続使用でのクリーニング不良が発生することがあった。このクリーニング不良は、この当接する部位にある凹みに掻き取ったトナーや紙粉がはまり込むことに原因があった。
【0017】
そこで、本発明では、この当接する部位にある、該当接する部位の表面粗さRz−jisより大きな凹みの内、最深の凹みが深さc10μm以下である。また、この凹みの最深部を通る凹みがある面(面a又は面b)に垂直な平面で、面a(面b)での凹みの橋渡し長さdが最小である平面での最深部(頂点)と橋渡し箇所の3点で形成される三角形の底角θ1、θ2がいずれも45°以下である。この関係を図2の凹みの模式的断面図に示してある。また、本発明では、当接する部位に形成された凹凸のうち、表面粗さ(十点平均粗さRz−jis)より大きな凹みを、「当接する部位にある凹み」という。なお、表面粗さRz−jisは通常5μm以下であり、これより大きいと、深さcが10μmを超える凹みが多くなる。また、深さcが10μmを超える凹みが殆どなくても表面凹凸が多くなりすぎて、クリーニング不良が起きやすい。
【0018】
当接する部位にある凹みが、その深さcが10μm以下であり、かつ、上記底角θ1及びθ2の両方が45°以下であると、この凹みにはまり込んだトナーや紙粉が、その場に固着する(溜る)ことなく、像担持体表面をクリーニングすることができる。すなわち、当接する部位に凹みがある場合でも、深さcが10μm以下であれば、幅が広く浅ければトナー等が溜まらずに、出ていき易い。一方、幅が狭いと表面から凹みの深さc方向への変化が急激であるため、浅い凹みでもトナーが溜まりやすいとが考えられる。
【0019】
なお、ブレード部材としては、クリーニング性の関係から、通常、その硬さが国際ゴム硬さ(IRHD)で65度以上80度以下であることが好ましい。なお、硬さが65度未満では、ブレードエッジが柔らかくトナーがすり抜けやすい。また硬さが80度超では、ブレードエッジが硬くなりすぎ、像担持体の摩耗が早くなる。
【0020】
そのようなブレード部材の硬さを達成するために、エラストマーで形成されるのが普通であるが、本発明では、加工性、耐久性等からポリウレタンエラストマーで形成されていることが好ましい。つまり、従来クリーニングブレードに用いられているポリウレタンエラストマーであれば、耐摩耗性等の機械的強度に優れ、かつ永久変形等の少ないクリーニングブレードを得ることができる。
【0021】
ポリウレタンエラストマーのブレード部材を有してなるクリーニングブレードは、従来から以下のような方法で製造されている。まず、ポリイソシアネートとポリオールを用いてプレポリマーを調製し、このプレポリマーにポリオール、鎖延長剤、触媒からなる硬化剤を添加したのち、これを成形用の金型に注入して硬化させ、硬化物を脱型し、場合によっては切断することにより製造されている。なお、機能等を担保するために、上記したような表面粗さ、真直度、硬さ等が検査される。
【0022】
また、クリーニングブレードとしての機能を高めるため、ウレタン処方を改良するだけではなく、製造工程においても、以下のようなことが実施されている。
[1]金型の汚れを常時除去していつも金型表面を鏡面状態に保つ。
[2]ポリウレタンエラストマーの脱型のために塗布する離型剤の塗布を均一にする。
[3]金型が汚れないような離型剤を使用する。
本願発明でも、これらを実施すると、実施例に示すように、良好な成形性が達成される。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0024】
実施例1
(クリーニングブレードの成形)
ブレード部材が電子写真装置中で使用時に像担持体に当接する部位となる部分の表面に10μm以上の凹凸がないクリーニングブレード用成形型を用意した。支持部材としてSUS製のホルダーを用意し、ブレード部材が形成される部分に接着剤を塗布したものをクリ−ニングブレード用成形型に、ホルダーが接着剤を塗布した部分がキャビティ内に突出した状態で配置した。
【0025】
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)296.1gと数平均分子量2000のエチレンアジペートポリエステルポリオール703.9gを80℃で3時間反応し、NCO%が8.00%であるプレポリマーを得た。これに1,4−ブタンジオール43.8g、トリメチロールプロパン23.6g、DABCO P15(酢酸カリウムのEG溶液、エアープロダクツジャパン社製)0.05g及びTEDA0.20gからなる硬化剤を混合し、成形型に注入し、硬化反応させた。なお、硬化反応は2分間、130℃であった。その後、脱型して、クリーニングブレードを得た。得られたクリーニングブレードの各種測定及び使用評価を下記により行った。結果を表1に示す。
【0026】
(当接する部位での表面粗さRz−jis)
表面粗さは、KEYENCE社製の超深度形状測定顕微鏡[VK−8500]にて、当接する部位を任意の5箇所を測定し、その平均値を当該クリーニングブレードの表面粗さRz−jisとした。
【0027】
(当接する部位の凹み形状)
凹み形状は、KEYENCE社製の超深度形状測定顕微鏡[VK−8500]にて、上記で得た表面粗さRz−jisより大きな凹みについて、深さが最大であるものを測定した。
【0028】
(硬さ試験)
ブレード部材の国際ゴム硬さは、H.W.WALLACE社製の硬度計を用い、JIS K−6253に基づいて測定した。
【0029】
(実機評価)
得られたクリーニングブレードを、レーザービームプリンター「キヤノンLBP2510」(商品名、キヤノン株式会社製)にクリーニングブレードとして組み込み、15℃、50%RHの環境下で、標準チャートを20枚の連続出力した。なお、トナーとして、平均粒径6μmの球形トナーを用いた。得られたコピーの20枚目を目視により、クリーニング不良に基づく不良が発生していないかどうかを確認し、以下の基準で、低温でのクリーニング性の評価を行った。
〇:クリーニング不良がないと判断できる。
△:クリーニング不良が発生していると判断されるが、実用上問題なし。
×:クリーニング不良が明らかに発生していると判断される。
【0030】
実施例2
清掃せずに連続して原料を5回注入した成形型を用いる以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。得られたクリーニングブレードを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0031】
実施例3
清掃せずに連続して原料を10回注入した成形型を用いる以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。得られたクリーニングブレードを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0032】
実施例4
清掃せずに連続して原料を15回注入した成形型を用いる以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。得られたクリーニングブレードを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0033】
実施例5
清掃せずに連続して原料を20回注入した成形型を用いる以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。得られたクリーニングブレードを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0034】
実施例6
清掃せずに連続して原料を25回注入した成形型を用いる以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。得られたクリーニングブレードを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0035】
比較例1
清掃せずに連続して原料を550回注入した成形型を用いる以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。得られたクリーニングブレードを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0036】
比較例2
清掃せずに連続して原料を530回注入した成形型を用いる以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。得られたクリーニングブレードを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0037】
比較例3
清掃せずに連続して原料を510回注入した成形型を用いる以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。得られたクリーニングブレードを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0038】
比較例4
清掃せずに連続して原料を440回注入した成形型を用いる以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。得られたクリーニングブレードを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0039】
比較例5
清掃せずに連続して原料を420回注入した成形型を用いる以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。得られたクリーニングブレードを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0040】
比較例6
清掃せずに連続して原料を400回注入した成形型を用いる以外は、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製した。得られたクリーニングブレードを実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に見られるように、実施例1〜6においては、クリーニング不良が発生せず良好なクリーニング性能を示す。クリーニングブレードの成形、脱型の繰り返しを重ねる毎に成形型の表面が汚れ、成形型清掃をせずに連続して注型するとクリーニングブレードに転写される。比較例1〜3においては、凹み深さが10μm超で、トナーが溜まり易く融着が発生した。また、比較例4〜6においては、凹み深さが10μm以下であっても、底角θ1、θ2の一方又は両方が45°以上であったので、トナーがはき出されにくく、凹みにトナーが溜まり、クリーニング不良が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のクリーニングブレードの模式的斜視図である。
【図2】当接する部位に存在する凹みの模式的断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ホルダー(支持部材)
2 ブレード部材
3 エッジ先端
a ブレード部材が像担持体に当接する部位(下面)
b ブレード部材が像担持体に当接する部位(像担持体の回転方向に対抗する面側)
c 最深凹みの最大深さ
d 最深凹みの最短橋渡し長さ
θ1、θ2 最深凹みの深さcの位置を通る平面上に、該位置を頂点とする三角形の底角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に残留するトナーを除去するためのクリーニングブレードであって、像担持体が回転する時に、該クリーニングブレードのブレード部材が像担持体に当接する部位(面a及び面b)が下記条件を満たしていることを特徴とするクリーニングブレード:
(1)当接する部位にある、該当接する部位の表面粗さRz−jisより大きな凹みの内の最深の凹みが深さc 10μm以下であること。
(2)該最深の凹みの深さcを測定した点を通り、面a又は面bに対し垂直に切り取る、該面での凹みの橋渡し長さdが最短になる平面において、深さcを高さ、橋渡し長さdを底辺として形成される三角形の底角θ1及びθ2が何れも45°以下であること。
【請求項2】
ブレード部材の硬さが国際ゴム硬さ(IRHD)で65度以上80度以下であることを特徴とする請求項1記載のクリーニングブレード。
【請求項3】
ブレード部材が、ウレタンエラストマーから形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のクリーニングブレード。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−192813(P2009−192813A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33336(P2008−33336)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】