説明

クリーニングブレード

【課題】重合トナーを使用した場合であっても長期に画像不良を発生しない耐摩耗性に優れたクリーニングブレードの製造方法を提供すること。
【解決手段】静電転写プロセスを利用した画像形成装置に使用するポリウレタン弾性体を備えるクリーニングブレードにおいて、ポリウレタン弾性体を、エッジ層と、少なくとも1層以上の基材層と、を有する2層以上の積層構造を有するものとする。エッジ層を、数平均分子量500〜1200のポリオールをポリオール成分として得られたポリウレタンで構成し、基材層を、数平均分子量1200〜2500のポリオールをポリオール成分として得られたポリウレタンで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、普通紙複写機、普通紙ファクシミリ、レーザービームプリンターなどの静電方式の画像形成装置において感光体表面の残存トナーを除去するクリーニングブレードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置において画像の鮮明化のために微粒子トナーである重合トナーが使用され、重合トナーを使用した場合に、クリーニングブレードのわずかな摩耗によりクリーニング不良が発生するため、クリーニングブレードにおいては、従来よりもはるかに厳しい耐摩耗性が要求されている。
【0003】
下記特許文献1では、基材層に低反発弾性のポリウレタン、エッジ層に基材層よりも高反発弾性であるポリウレタン、を積層してなるクリーニングブレードが記載されている。このクリーニングブレードでは、基材層に低反発弾性のポリウレタンを使用することで、エッジ層にかかる応力を抑制し、摩耗を抑制することを目的としている。しかしながら、このクリーニングブレードでは、エッジ層自体の耐摩耗性が十分でないことから、クリーニングブレードの耐摩耗性の点でさらなる改良の余地があった。また、さらに下記特許文献2〜6でも、2層以上のウレタン弾性体からなるクリーニングブレードが記載されているが、耐摩耗性の点でさらなる改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−268494号公報
【特許文献2】特開2008−268301号公報
【特許文献3】特開2008−268302号公報
【特許文献4】特開2008−268303号公報
【特許文献5】特開2008−268304号公報
【特許文献6】特開2008−268649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、重合トナーを使用した場合であっても長期に画像不良を発生しない耐摩耗性に優れたクリーニングブレードの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、室温下での耐摩耗性が高いポリウレタン、具体的には数平均分子量が500〜1200のポリオールをポリオール成分として得られたポリウレタンをエッジ層として使用し、エッジ層と基材層とで数平均分子量の異なるポリウレタンを積層して使用することで、室温下だけでなく低温下においてもクリーニングブレードの耐摩耗性を向上できることを見出した。本発明は、上記の検討の結果なされたものであり、下記の如き構成により上述の目的を達成するものである。
【0007】
すなわち、本発明に係るクリーニングブレードは、静電転写プロセスを利用した画像形成装置に使用するポリウレタン弾性体を備えるクリーニングブレードであって、前記ポリウレタン弾性体が、エッジ層と、少なくとも1層以上の基材層と、を有する2層以上の積層構造を有し、前記エッジ層が、数平均分子量500〜1200のポリオールをポリオール成分として得られたポリウレタンであり、前記基材層が、数平均分子量1200〜2500のポリオールをポリオール成分として得られたポリウレタンであることを特徴とする。なお、本発明においては、数平均分子量の異なる複数のポリオールを混合使用して、エッジ層および基材層を構成するポリウレタンを製造しても良い。この場合、ポリオールの数平均分子量は、使用した各ポリオールの数平均分子量と使用モル%との積の総和を意味する。例えば、数平均分子量が1500のポリオールを50モル%、2000のポリオールを50モル%混合して使用する場合、この混合ポリオールの数平均分子量は1750である。また、本発明においては、基材層を1層で構成してもよく、2層以上で構成しても良い。基材層を2層以上で構成する場合は、各層を構成するポリウレタンの各々が、数平均分子量1200〜2500のポリオールをポリオール成分として得られたポリウレタンであることを意味する。
【0008】
上記クリーニングブレードでは、エッジ層が、数平均分子量500〜1200のポリオールをポリオール成分として得られたポリウレタンで構成される。このポリウレタンは、特に室温下にて耐摩耗性に優れることから、このポリウレタンをエッジ層として有するクリーニングブレードは、室温下での耐摩耗性に優れる。但し、このエッジ層単独では、低温下では耐摩耗性が悪化することが予想される。しかしながら、本発明のクリーニングブレードは、数平均分子量1200〜2500のポリオールをポリオール成分として得られたポリウレタンを基材層として有するため、エッジ層における低温下での耐摩耗性の悪化を防止することができる。その結果、本発明に係るクリーニングブレードは、使用環境の温度を問わず耐摩耗性に優れる。
【0009】
上記クリーニングブレードにおいて、前記エッジ層および前記基材層を構成するポリウレタンが、ポリカプロラクトンポリオールをポリオール成分として得られたものであることが好ましい。エッジ層および基材層を、ともにポリカプロラクトンポリオールをポリオール成分として得られたポリウレタンで構成することにより、クリーニングブレードの耐摩耗性をより向上することができる。
【0010】
上記クリーニングブレードにおいて、前記エッジ層の23℃における反発弾性Reが5〜15であり、前記基材層の23℃における反発弾性Rbが5〜60であり、かつRe<Rbであることが好ましい。かかる構成によれば、低温下での耐摩耗性を維持しつつ、室温下での耐摩耗性をさらに向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るクリーニングブレードは、金属板からなる支持体と、ポリウレタン弾性体と、支持体およびポリウレタン弾性体を接着する接着剤層と、を備える。本発明においては、特にポリウレタン弾性体として、エッジ層と、少なくとも1層以上の基材層と、を有する2層以上の積層構造を有するものを使用する。画像形成装置にて、残留トナーをクリーニングブレードによりクリーニングする場合は、上記エッジ層のエッジが像担持体に当接し、残留トナーを掻き取ることでトナーのクリーニングが行われる。
【0012】
本発明においては、エッジ層を構成するポリオール成分として、数平均分子量500〜1200のポリオールを使用する。特に室温下での耐摩耗性を考慮した場合、エッジ層を構成するポリオール成分として、数平均分子量900〜1100のポリオールを使用することが好ましい。
【0013】
エッジ層を構成するポリオールとしては、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオールあるいはポリテトラメチレングリコールなどを使用可能であるが、クリーニングブレードの耐摩耗性を考慮すると、ポリカプロラクトンポリオールを使用することが好ましい。
【0014】
ポリカプロラクトンポリオールは、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール,1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールなどの直鎖状グリコール;1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどの側鎖含有グリコールを開始剤として、ε−カプロラクトンを開環付加させることにより得ることができる。これらの開始剤を使用したポリカプロラクトンジオールは、周知の方法により製造することができる。
【0015】
また、本発明においては、基材層を構成するポリオール成分として、数平均分子量1200〜2500のポリオールを使用する。本発明においては、基材層を1層で構成してもよく、2層以上で構成しても良い。基材層を2層以上で構成する場合は、数平均分子量の最も小さいポリオールを使用したポリウレタンをエッジ層に最も近い側に積層し、次いで数平均分子量の小さいポリオールを使用したポリウレタンから順番に積層し、エッジ層に最も遠い側に、数平均分子量の最も大きいポリオールを使用したポリウレタンを積層することが好ましい。このように、基材層を2層以上で構成し、かつ基材層を構成するポリウレタンの原料となるポリオールの数平均分子量を傾斜(Graduation化)させることで、低温下での耐摩耗性を維持しつつ、室温下での耐摩耗性を特に向上することができる。基材層の製造コストを考慮しつつ、低温下および室温下での耐摩耗性を考慮した場合、基材層を3層とすること(エッジ層と基材層とで、計4層構造)が好ましい。
【0016】
エッジ層と同様、基材層を構成するポリオールとしては、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオールあるいはポリテトラメチレングリコールなどを使用可能であるが、クリーニングブレードの耐摩耗性を考慮すると、ポリカプロラクトンポリオールを使用することが好ましい。
【0017】
エッジ層および基材層を構成するポリウレタンは、上記ポリオール成分およびイソシアネート成分を反応させることにより製造することができる。これらのポリウレタンは、必要に応じて架橋剤や鎖延長剤を添加して製造しても良い。
【0018】
イソシアネート成分としては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの公知のジイソシアネートを使用することができる。
【0019】
架橋剤としては、具体的にはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトールなどの3官能ないし4官能の多価アルコールを例示することができる。また鎖延長剤としては、ポリウレタンの技術分野において公知の鎖延長剤を使用することができ、具体的にはエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのグリコールを例示することができる。
【0020】
上記ポリオール成分、イソシアネート成分、架橋剤および鎖延長剤を含有するポリウレタン原液中のNCO/OH等量比(NCOインデックス)は、0.90〜1.20であることが好ましく、1.00〜1.10であることがより好ましい。
【0021】
エッジ層および基材層を構成するポリウレタンは、必要に応じて架橋剤や鎖延長剤を添加した上で、ポリオール成分とイソシアネート成分とをそのまま反応させることにより製造することができるが、ポリオール成分の少なくとも一部とイソシアネート成分とで予めプレポリマーを作成し、このプレポリマーと、残りのポリオール成分、架橋剤および鎖延長剤を含有する硬化剤成分と、を反応させるものであっても良い。
【0022】
本発明に係るクリーニングブレードにおいては、エッジ層の23℃における反発弾性Reが5〜15であり、基材層の23℃における反発弾性Rbが5〜60であり、かつRe<Rbであることが好ましい。かかる構成によれば、低温下での耐摩耗性を維持しつつ、室温下での耐摩耗性をさらに向上することができる。基材層を2層以上で構成する場合は、反発弾性の最も小さいポリウレタンをエッジ層に最も近い側に積層し、次いで反発弾性の小さいポリウレタンから順番に積層し、エッジ層に最も遠い側に、反発弾性の最も大きいポリウレタンを積層することが好ましい。このように、基材層を2層以上で構成し、かつ基材層を構成するポリウレタンの反発弾性を傾斜(Graduation化)させることで、低温下での耐摩耗性を維持しつつ、室温下での耐摩耗性を特に向上することができる。
【0023】
また、本発明に係るクリーニングブレードにおいては、エッジ層の23℃における硬度が65〜70であり、かつ基材層の23℃における硬度が68〜73であることが好ましい。かかる構成によれば、低温下での耐摩耗性を維持しつつ、室温下での耐摩耗性をさらに向上することができる。
【0024】
また、本発明に係るクリーニングブレードにおいては、エッジ層のtanδのピーク温度が5〜25℃であり、かつ基材層のtanδのピーク温度が−15〜10℃であることが好ましい。かかる構成によれば、低温下での耐摩耗性を維持しつつ、室温下での耐摩耗性をさらに向上することができる。基材層を2層以上で構成する場合は、tanδのピーク温度が最も大きいポリウレタンをエッジ層に最も近い側に積層し、次いでtanδのピーク温度が大きいポリウレタンから順番に積層し、エッジ層に最も遠い側に、tanδのピーク温度が最も小さいポリウレタンを積層することが好ましい。このように、基材層を2層以上で構成し、かつ基材層を構成するポリウレタンのtanδのピーク温度を傾斜(Graduation化)させることで、低温下での耐摩耗性を維持しつつ、室温下での耐摩耗性を特に向上することができる。
【0025】
本発明に係るクリーニングブレードは、例えば以下の成形工程を有する製造方法により製造することができる。
【0026】
1)ポリオール成分、イソシアネート成分、架橋剤および鎖延長剤を含有するポリウレタン原液をシート状に注型して反応硬化させて原反シートとし、該原反シートを裁断してポリウレタン弾性体とする。シート成形においては、一般に遠心成形法が使用される。
【0027】
2)ポリウレタン弾性体を画像形成装置に装着するための支持体(金具など)に接着剤などにより接着してクリーニングブレードとする。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。なお、実施例などにおける評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0029】
(1)耐摩耗性
下記にて製造したポリウレタン弾性体を、所定の金具に接着してクリーニングブレードとした。このクリーニングブレードを、重合トナーを使用した静電転写プロセス方式のフルカラーのプリンター/複写機複合機であるIPSIO SP C811(リコー社製)に装着して耐摩耗性評価を行った。評価は室温下にて行った。
【0030】
耐摩耗性評価は、連続15,000枚画像形成を行った後にクリーニングブレードを取り外し、両端と中央部の3箇所を、感光体との当接部の断面が見えるように幅方向に裁断し,断面をデジタルマイクロスコープVHX100(キーエンス社)にて観察し、クリーニングブレードの摩耗断面積(μm)に基づいて評価した。結果は表1の下段に示す。
【0031】
(2)硬度
ポリウレタンの硬度(°)は、JIS−K 6253に準拠して、23℃にて測定した。
【0032】
(3)反発弾性
ポリウレタンの反発弾性(%)は、JIS−K 6255に準拠して、23℃にて測定した。
【0033】
実施例1〜4
表1に記載の配合比率(数値は、プレポリマー全量を100重量部としたときの重量部)にて、ポリオール成分の一部とイソシアネート成分とで予めプレポリマーを製造し、このプレポリマーと残りのポリオール成分、架橋剤であるトリメチロールプロパンおよび鎖延長剤である1,4−ブタンジオールと、を混合してポリウレタン原液とした。このポリウレタン原液を、遠心成形法により、表2に記載の厚みを有するエッジ層および基材層を有し、かつ2〜4層の積層構造を有するポリウレタン弾性体を備えるクリーニングブレードを製造した。なお、表2において基材層は、エッジ層に近い側から、第1基材層、第2基材層、第3基材層の順で積層した。
【0034】
参考例
実施例1〜4で使用したエッジ層のみでクリーニングブレードを製造した。
【0035】
使用した原料ポリオールは以下のとおりである。
【0036】
PCL210N;直鎖状グリコールを開始剤とするポリカプロラクトンジオール(数平均分子量1000;ダイセル化学工業)
PCL220N;直鎖状グリコールを開始剤とするポリカプロラクトンジオール(数平均分子量2000;ダイセル化学工業)
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表2の結果から、エッジ層を構成するポリウレタンのみをポリウレタン弾性体として備えるクリーニングブレード(参考例)に比べて、基材層を1層および2層(エッジ層と基材層とで、計2層構造および3層構造)としたクリーニングブレード(実施例1〜3)では、エッジ層の厚みが薄くなることで、室温下における耐摩耗性が悪化する傾向にあることがわかる。しかしながら、基材層を3層(エッジ層と基材層とで、計4層構造)としたクリーニングブレード(実施例4)では、参考例に係るクリーニングブレードの室温下における耐摩耗性と同等の結果を示した。
【0040】
なお、低温下では、エッジ層および基材層全体(ポリウレタン積層構造全体)での反発弾性が高いほど、クリーニング性が向上する傾向にある。したがって、実施例1〜4に係るクリーニングブレードは、参考例に係るクリーニングブレードに比べて、クリーニング性が向上した。
【0041】
上記結果から、低温下および室温下での耐摩耗性を考慮した場合、計4層構造としたクリーニングブレード(実施例4)が、最もバランスが取れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電転写プロセスを利用した画像形成装置に使用するポリウレタン弾性体を備えるクリーニングブレードであって、
前記ポリウレタン弾性体が、エッジ層と、少なくとも1層以上の基材層と、を有する2層以上の積層構造を有し、
前記エッジ層が、数平均分子量500〜1200のポリオールをポリオール成分として得られたポリウレタンであり、前記基材層が、数平均分子量1200〜2500のポリオールをポリオール成分として得られたポリウレタンであることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項2】
前記エッジ層および前記基材層を構成するポリウレタンが、ポリカプロラクトンポリオールをポリオール成分として得られたものである請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項3】
前記エッジ層の23℃における反発弾性Reが5〜15であり、前記基材層の23℃における反発弾性Rbが5〜60であり、かつRe<Rbである請求項1または2に記載のクリーニングブレード。

【公開番号】特開2011−141449(P2011−141449A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2285(P2010−2285)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】