説明

クリーニングブレード

【課題】重合トナーを使用した場合であっても長期に画像不良を発生しない耐摩耗性に優れたクリーニングブレードを提供すること。
【解決手段】静電転写プロセスを利用した画像形成装置に使用するポリウレタン弾性体を備えるクリーニングブレードにおいて、ジイソシアネート化合物および数平均分子量(Mw)が2000〜4000であるポリカプロラクトンジオール(P1)を反応させて得られたイソシアネート基含有擬似プレポリマーと、少なくともポリカプロラクトンジオール(P1)および数平均分子量(Mw)が500〜1000であるポリカプロラクトンジオール(P2)を混合してなり、混合後の数平均分子量(Mw)が1500〜1950であるポリオール化合物と、硬化剤成分と、を反応させることにより得られたポリウレタン弾性体を備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、普通紙複写機、普通紙ファクシミリ、レーザービームプリンターなどの静電方式の画像形成装置において感光体表面の残存トナーを除去するクリーニングブレードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置において画像の鮮明化のために微粒子トナーである重合トナーが使用され、重合トナーを使用した場合に、クリーニングブレードのわずかな摩耗によりクリーニング不良が発生するため、クリーニングブレードにおいては、従来よりもはるかに厳しい耐摩耗性が要求されている。
【0003】
下記特許文献1では、ジイソシアネート化合物および分子量が1000〜3000である高分子量ポリオールを反応させて得られたイソシアネート基含有擬似プレポリマーと、分子量が1000〜3000である高分子量ポリオールおよび分子量60〜250の低分子量ポリオールからなる硬化剤と、を反応させることにより得られたポリウレタンを備えるクリーニングブレードが記載されている。しかしながら、かかるクリーニングブレードでは、耐摩耗性が十分に向上しているとは言えず、市場においてはさらなる耐摩耗性の向上が要求されているのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−150697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、重合トナーを使用した場合であっても長期に画像不良を発生しない耐摩耗性に優れたクリーニングブレードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係るクリーニングブレードは、静電転写プロセスを利用した画像形成装置に使用するポリウレタン弾性体を備えるクリーニングブレードであって、前記ポリウレタン弾性体が、ジイソシアネート化合物および数平均分子量(Mw)が2000〜4000であるポリカプロラクトンジオール(P1)を反応させて得られたイソシアネート基含有擬似プレポリマーと、少なくとも前記ポリカプロラクトンジオール(P1)および数平均分子量(Mw)が500〜1000であるポリカプロラクトンジオール(P2)を混合してなり、混合後の数平均分子量(Mw)が1500〜1950であるポリオール化合物と、硬化剤成分と、を反応させることにより得られたポリウレタンであることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るクリーニングブレードは、優れた耐摩耗性を備えることから、重合トナーを使用した場合であっても長期に画像不良を発生しない。かかるクリーニングブレードが優れた耐摩耗性を備える理由としては明らかではないが、以下のように推定される。
【0008】
イソシアネート基含有擬似プレポリマーと反応させるポリオール化合物が、例えば数平均分子量(Mw)が500〜1000程度の低分子量ポリカプロラクトンジオールである場合は、反発弾性が低くなり、クリーニングブレードのクリーニング性能の低下が懸念される。しかしながら、本発明においては、イソシアネート基含有擬似プレポリマーと反応させるポリオール化合物が、少なくともポリカプロラクトンジオール(P1)および数平均分子量(Mw)が500〜1000であるポリカプロラクトンジオール(P2)を混合してなり、混合後の数平均分子量(Mw)が1500〜1950であることから、得られるポリウレタン中のソフトセグメントの結晶性が乱れることに起因し、これによりポリウレタン弾性体の耐摩耗性が向上する。その結果、本発明に係るクリーニングブレードの耐摩耗性が向上するものと推定される。
【0009】
また、本発明に係るクリーニングブレードの製造方法は、静電転写プロセスを利用した画像形成装置に使用するポリウレタン弾性体を備えるクリーニングブレードの製造方法であって、ジイソシアネート化合物および数平均分子量(Mw)が2000〜4000であるポリカプロラクトンジオール(P1)を反応させて、イソシアネート基含有擬似プレポリマーを製造するプレポリマー製造工程と、前記イソシアネート基含有擬似プレポリマーと、少なくとも前記ポリカプロラクトンジオール(P1)および数平均分子量(Mw)が500〜1000であるポリカプロラクトンジオール(P2)を混合してなり、混合後の数平均分子量(Mw)が1500〜1950であるポリオール化合物と、硬化剤成分と、を反応させて、ポリウレタン弾性体を製造するポリウレタン製造工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
上記クリーニングブレードの製造方法によれば、重合トナーを使用した場合であっても長期に画像不良を発生しない耐摩耗性に優れたクリーニングブレードを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】耐摩耗評価後のクリーニングブレードの摩耗断面積、最大摩耗深さを示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るクリーニングブレードは、金属板からなる支持体と、ポリウレタン弾性体と、支持体およびポリウレタン弾性体を接着する接着剤層と、を備える。本発明においては、かかるポリウレタン弾性体が、ジイソシアネート化合物および数平均分子量(Mw)が2000〜4000であるポリカプロラクトンジオール(P1)を反応させて得られたイソシアネート基含有擬似プレポリマーと、少なくともポリカプロラクトンジオール(P1)および数平均分子量(Mw)が500〜1000であるポリカプロラクトンジオール(P2)を混合してなり、混合後の数平均分子量(Mw)が1500〜1950であるポリオール化合物と、硬化剤成分と、を反応させることにより得られたポリウレタンである点が特徴である。
【0013】
ポリカプロラクトンポリオールは、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール,1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールなどの直鎖状グリコール;1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどの側鎖含有グリコールなどを開始剤として、ε−カプロラクトンを開環付加させることにより得ることができる。これらの開始剤を使用したポリカプロラクトンポリオールは、周知の方法により製造することができる。
【0014】
本発明においては、ポリカプロラクトンポリオールを使用することにより、耐摩耗性に優れたポリウレタン弾性体からなるクリーニングブレードを製造することができる。ただし、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリカプロラクトンポリオールに加えて他のポリオール化合物を限定なく使用することができ、ポリカプロラクトンポリオール以外のラクトン系ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが例示される。ただし、これらのポリオールの使用量は、ポリカプロラクトンポリオールの合計の10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
【0015】
ジイソシアネート化合物は、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの公知のジイソシアネートを使用することができる。
【0016】
硬化剤成分としては、当業者に公知の架橋剤および/または鎖延長剤が使用できる。架橋剤としては、具体的にはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトールなどの3官能ないし4官能の多価アルコールを例示することができる。また鎖延長剤としては、ポリウレタンの技術分野において公知の鎖延長剤を使用することができ、具体的にはエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのグリコールを例示することができる。
【0017】
上述したポリカプロラクトンポリオール、ジイソシアネート化合物、および硬化剤成分を原料として、ポリウレタン弾性体を製造することができる。以下にポリウレタン弾性体の製造方法について説明する。
【0018】
(1)プレポリマー製造工程
まず、ジイソシアネート化合物および数平均分子量(Mw)が2000〜4000であるポリカプロラクトンジオール(P1)を反応させて、イソシアネート基含有擬似プレポリマーを製造する。イソシアネート基含有擬似プレポリマーを製造するためのポリカプロラクトンジオール(P1)は、数平均分子量(Mw)が2000〜3000であることがより好ましい。また、かかるイソシアネート基含有擬似プレポリマーにおけるNCO/OH当量比(NCOインデックス)は、4〜6であることが好ましい。
【0019】
(2)ポリウレタン製造工程
つぎに、ジイソシアネート化合物およびポリカプロラクトンジオール(P1)の一部を反応させたイソシアネート基含有擬似プレポリマーと、残りのポリカプロラクトンジオール(P1)およびポリカプロラクトンジオール(P2)を含有するポリオール化合物と、硬化剤成分と、を反応させる擬似プレポリマー法によりポリウレタン弾性体を製造する。イソシアネート基含有擬似プレポリマーと反応させるポリオール化合物は、少なくともポリカプロラクトンジオール(P1)および数平均分子量(Mw)が500〜1000であるポリカプロラクトンジオール(P2)を混合することにより、数平均分子量(Mw)を1500〜1950となるように調整する。混合後のポリオール化合物は、数平均分子量(Mw)が1500〜1800であることがより好ましい。また、上述したイソシアネート基含有擬似プレポリマー、ポリオール化合物、および硬化剤成分を含有する反応原液組成物の硬化反応におけるNCO/OH当量比(NCOインデックス)は、0.95〜1.2であることが好ましく、1.05〜1.10であることがより好ましい。
【0020】
本発明に係るクリーニングブレードは、例えば以下の成形工程を有する製造方法により製造することができる。
【0021】
<1>シート成形法
1)反応原液組成物をシート状に注型して反応硬化させて原反シートとし、該原反シートを裁断して(裁断工程)ブレードとする。シート成形においては、一般に遠心成形法が使用される。
2)ブレードを画像形成装置に装着するための基材(金具など)に接着などにより装着してブレードユニットとする。
【0022】
<2>直接成形法
成形すべきブレードの形状のキャビティーを有する金型に必要に応じてブレードを画像形成装置に装着するための基材(金具など)を配設し、成形キャビティーに反応原液組成物を注型してブレードないしブレードと基材が一体化されたブレードユニットを成形する。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。なお、実施例などにおける評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0024】
(1)耐摩耗性
下記にて製造したポリウレタン弾性体を、所定の金具に接着してクリーニングブレードとした。このクリーニングブレードを、重合トナーを使用した静電転写プロセス方式のフルカラーのプリンターであるIPSIO SP C811(リコー社製)に装着して耐摩耗性評価を行った。評価は23℃、54%Rh環境にて行った。
耐摩耗性評価は、連続15,000枚画像形成を行った後にクリーニングブレードを取り外し、両端と中央部の3箇所を、感光体との当接部の断面が見えるように幅方向に裁断し,断面をデジタルマイクロスコープVHX100(キーエンス社)にて観察し、クリーニングブレードの摩耗断面積(μm)および最大摩耗深さ(μm)に基づいて評価した。結果は表1の下段に示す。
【0025】
(摩耗断面積、最大摩耗深さの測定)
上記評価後のクリーニングブレードを、両端と中央部の3箇所を、感光体との当接部の断面が見えるように幅方向に裁断し,断面をデジタルマイクロスコープVHX100(キーエンス社)にて観察した。摩耗断面積は、図1のエッジの摩耗により形成された三角形Aの面積(μm)の平均値であり、最大摩耗深さは図1のY(μm)の最大値である。tはクリーニングブレードの厚さである。
【0026】
(2)硬度
ポリウレタンの硬度(°)は、JIS−K 6253に準拠して、23℃にて測定した。
【0027】
(3)反発弾性
ポリウレタンの反発弾性(%)は、JIS−K 6255に準拠して、23℃にて測定した。
【0028】
(4)機械物性
ポリウレタンのヤング率(MPa)および25%モジュラス(M25)(MPa)についてはJIS K6254に準拠し、100%モジュラス(M100)(MPa)、300%モジュラス(M300)(MPa)、引張強度(MPa)および伸び(%)についてはJIS K6251に準拠し、引裂強度(N/mm)についてはJIS K6252に準拠し、永久伸び(%)についてはJIS K6273に準拠し、それぞれ23±3℃にて測定した。
【0029】
(5)数平均分子量
数平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)にて測定し、標準ポリスチレンにより換算した。
GPC装置:島津製作所製、LC−10A
カラム:Polymer Laboratories社製、(PLgel、5μm、500Å)、(PLgel、5μm、100Å)、及び(PLgel、5μm、50Å)の3つのカラムを連結して使用
流量:1.0ml/min
濃度:1.0g/l
注入量:40μl
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
【0030】
実施例1〜5、比較例1〜2
表1上段に記載の配合比率にて、イソシアネート基含有擬似プレポリマーを製造した。かかるイソシアネート基含有擬似プレポリマーと、残りのポリカプロラクトンジオール(P1)およびポリカプロラクトンジオール(P2)を含有するポリオール化合物と、硬化剤成分と、を反応させる擬似プレポリマー法によりポリウレタン弾性体を製造した。なお、イソシアネート基含有擬似プレポリマーと反応させるポリオール化合物は、実施例1ではMw=1900、実施例2ではMw=1750、実施例3ではMw=1500、実施例4ではMw=1500、実施例5ではMw=1750となるように、ポリカプロラクトンジオール(P1)およびポリカプロラクトンジオール(P2)を混合することにより調整した。
【0031】
使用した原料ポリオールは以下のとおりである。
【0032】
PCL220N;直鎖状グリコールを開始剤とするポリカプロラクトンジオール(数平均分子量2000、水酸基価56.1;ダイセル化学工業)
PCL205;直鎖状グリコールを開始剤とするポリカプロラクトンジオール(数平均分子量530、水酸基価214;ダイセル化学工業)
PCL210N;直鎖状グリコールを開始剤とするポリカプロラクトンジオール(数平均分子量1000、水酸基価112.2;ダイセル化学工業)
BD:1,4−ブタンジオール(鎖延長剤)
TMP:トリメチロールプロパン(架橋剤)
MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
【0033】
【表1】

【0034】
表1の結果から、実施例1〜5に係るクリーニングブレードは、比較例1〜2に係るクリーニングブレードに比べて、耐摩耗性の点で特に優れることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電転写プロセスを利用した画像形成装置に使用するポリウレタン弾性体を備えるクリーニングブレードであって、
前記ポリウレタン弾性体が、ジイソシアネート化合物および数平均分子量(Mw)が2000〜4000であるポリカプロラクトンジオール(P1)を反応させて得られたイソシアネート基含有擬似プレポリマーと、少なくとも前記ポリカプロラクトンジオール(P1)および数平均分子量(Mw)が500〜1000であるポリカプロラクトンジオール(P2)を混合してなり、混合後の数平均分子量(Mw)が1500〜1950であるポリオール化合物と、硬化剤成分と、を反応させることにより得られたポリウレタンであることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項2】
静電転写プロセスを利用した画像形成装置に使用するポリウレタン弾性体を備えるクリーニングブレードの製造方法であって、
ジイソシアネート化合物および数平均分子量(Mw)が2000〜4000であるポリカプロラクトンジオール(P1)を反応させて、イソシアネート基含有擬似プレポリマーを製造するプレポリマー製造工程と、
前記イソシアネート基含有擬似プレポリマーと、少なくとも前記ポリカプロラクトンジオール(P1)および数平均分子量(Mw)が500〜1000であるポリカプロラクトンジオール(P2)を混合してなり、混合後の数平均分子量(Mw)が1500〜1950であるポリオール化合物と、硬化剤成分と、を反応させて、ポリウレタン弾性体を製造するポリウレタン製造工程と、を含むことを特徴とするクリーニングブレードの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−108314(P2012−108314A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257029(P2010−257029)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】