説明

クリーニング装置および画像形成装置

【課題】複写機、ファクシミリ、プリンターなどの電子写真方式で採用される、残留トナー等の残留物を除去するクリーニング装置、およびそのクリーニング装置を備えた画像形成装置に関し、像担持体表面から、放電生成物や外添剤等の微細な残留物を像担持体の中心軸の延在方向に均一かつ十分に長期にわたって除去する。
【解決手段】像担持体10の、被転写面Pにトナー像が転写された後の表面110に残留した残留トナーを表面110から除去するクリーニング手段71と、クリーニング手段71よりも像担持体表面110の循環移動方向上流側で像担持体10の、被転写面Pにトナー像が転写された後の表面110に接した複数の繊維752を有する繊維体75と、中心軸10aの延在方向に、繊維体75と像担持体表面110とを相対的に往復動させる往復動機構76とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンターなどの電子写真方式で採用される、残留トナー等の残留物を除去するクリーニング装置、およびそのクリーニング装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式では、中心軸の周りを所定方向に循環移動する像担持体表面を帯電器によって帯電し帯電後の像担持体表面に露光光を照射することにより像担持体表面に静電潜像を形成しその静電潜像を現像器によってトナーで現像して像担持体表面にトナー像を形成するトナー像形成サイクルによって、像担持体表面に形成されたトナー像を、所定の被転写面(記録媒体や中間転写体)に転写し最終的に記録媒体上に定着することにより該記録媒体上に定着トナー像からなる画像を形成する。
【0003】
所定の被転写面に転写を終えた像担持体表面には、未転写のトナーや外添剤、紙粉、あるいは帯電において生じた放電生成物など複数種類の異物が残留するため、これらを次のトナー像形成サイクルに先立ってクリーニング手段により除去することが必要になる。
【0004】
トナー等の残留物を除去するクリーニング方式としては、種々の方式が提案されているが、像担持体表面との摺擦によって機械的に残留物を除去する方式が有効である。
【0005】
ところが、この機械的な除去方式を採用すると、像担持体表面に機械的な外力が加えられる。また、像担持体表面には、帯電器、現像器、転写手段等によっても電気的、機械的な外力が直接加えられる。このため、像担持体の表面には磨耗や傷に対する耐久性が要求され、この耐久性を確保するため、表面が硬い像担持体(例えば、特許文献1等参照)を用いる傾向にある。
【0006】
しかしながら、表面が硬い像担持体を用いると、今度は、像担持体表面から残留物を機械的に除去することが困難になり、帯電の際に生じた放電生成物や外添剤等の微細な残留物が除去しにくくなる。特に、放電生成物が吸湿すると画像流れが引き起こされるため、放電生成物は十分に除去しなくてはならない。
【0007】
そこで、従来では、像担持体表面に複数の繊維を有する繊維体を接触させ、その繊維体によって放電生成物や外添剤等の微細な残留物を除去する技術が提案されている(特許文献2〜4参照)。
【特許文献1】特許第3264218号公報
【特許文献2】特開平1−161279号公報
【特許文献3】特開平5−107993号公報
【特許文献4】特開2002−244522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの特許文献2〜4に記載された技術では、繊維体によって像担持体表面から微細な残留物を掻き取ることを狙った技術であるが、いずれの技術においても、繊維体による掻取性が像担持体の中心軸の延在方向で不均一になってしまうといった問題がある。また、繊維体による掻取能力を高めようとして、繊維体を像担持体表面に強く押し付ければ押し付けるほど、像担持体表面に対する機械的なストレスが上昇し、表面が硬い像担持体とはいってもその表面に必要以上の磨耗や傷が生じ、繊維体自身の劣化も加速される。特に、特許文献2および3に記載された技術は、繊維体を、クリーニング手段よりも像担持体表面の循環移動方向下流側に配置した技術であり、繊維体による掻取能力不足が懸念される。このため、繊維体を像担持体表面に強く押し付ける必要が生じ、像担持体表面が必要
以上に磨耗したり傷ついたり、繊維体自身も劣化しやすい。また、繊維体を像担持体表面に強く押し付け微細な残留物を掻き取ったとしても、繊維に掻取物が飽和しやすく、長期にわたって良好な掻取性を維持することが困難である。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、像担持体表面から、放電生成物や外添剤等の微細な残留物を像担持体の中心軸の延在方向に均一かつ十分に長期にわたって除去することができるクリーニング装置、およびそのクリーニング装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決する本発明のクリーニング装置は、所定の転写領域で被転写面に転写するトナー像を表面に担持し該表面を中心軸の周りで循環移動させることにより該トナー像を該転写領域まで搬送する像担持体の、該被転写面にトナー像が転写された後の表面に残留した残留物を該表面から除去するクリーニング装置において、
前記像担持体の、前記被転写面にトナー像が転写された後の表面に残留した残留トナーを該表面から除去するクリーニング手段と、
前記クリーニング手段よりも前記像担持体表面の循環移動方向上流側で前記像担持体の、前記被転写面にトナー像が転写された後の表面に接した複数の繊維を有する繊維体と、
前記中心軸の延在方向に、前記繊維体と前記像担持体表面とを相対的に往復動させる往復動機構とを備えたことを特徴とする装置。
【0011】
ここにいう像担持体とは、一様に帯電された後に露光を受け静電潜像が形成される感光体であってもよいし、その感光体からトナー像が1次転写され、記録媒体への2次転写の際に剥離放電が生じる中間転写体であってもよい。すなわち、本発明のクリーニング装置は、感光体表面のクリーニング装置としても、中間転写体表面のクリーニング装置としても適用することができる。
【0012】
本発明のクリーニング装置によれば、残留トナーを除去するクリーニング手段よりも上流側に上記繊維体を配置したため、像担持体表面が循環することで上記繊維体に向けて残留トナーや、トナーに外添剤が外添されていればその外添剤の粒子も運ばれてくる。残留トナーや外添剤粒子(以下、これらを総称して残留トナー成分と称する)は、上記繊維体の繊維によって捕捉され、その繊維に保持される。像担持体表面に付着した放電生成物等の付着物は、上記繊維体の繊維に保持された残留トナー成分によって像担持体表面から掻き取られる。こうして掻き取られた残留物は、繊維に捕捉された残留トナー成分に付着する。ここで、繊維に捕捉されていた残留トナー成分は、上記繊維体に新たに運ばれてきた像担持体表面上の残留トナー成分と入れ替わり、像担持体表面へ戻る。像担持体表面に戻った残留トナー成分は、像担持体表面が循環することで下流側のクリーニング手段に向かい、クリーニング手段によって像担持体表面から除去される。すなわち、上記繊維体に一端捕捉され微細な残留物が付着した残留トナー成分は、最終的にクリーニング手段によって像担持体表面から除去される。このように、本発明のクリーニング装置では、上記繊維体の繊維によって捕捉された残留トナー成分の入れ替えが行われるので、上記繊維体に掻取物が飽和してしまうことが抑えられる。しかも、上記往復動機構を備えるため、繊維体と像担持体表面との相対的な往復動により、繊維体を像担持体表面に強く押し付けなくとも繊維体の掻取能力は高められ、微細な残留物が十分に除去される。また、繊維体による掻取性が、像担持体の中心軸の延在方向で不均一になることも抑えられる。したがって、本発明のクリーニング装置によれば、像担持体表面から、微細な残留物が像担持体の中心軸の延在方向に均一かつ十分に長期にわたって除去することができる。
【0013】
上記目的を解決する本発明の画像形成装置は、中心軸の周りを所定方向に循環移動する感光体表面を帯電器によって帯電し帯電後の感光体表面に露光光を照射することによりその感光体表面に静電潜像を形成しその静電潜像をトナーで現像してその感光体表面にトナー像を形成するトナー像形成サイクルによってその感光体表面に形成されたトナー像を、所定の被転写面に転写し最終的に記録媒体上に定着することによりその記録媒体上に定着トナー像からなる画像を形成する画像形成装置において、
上記感光体の、上記被転写面にトナー像が転写された後の表面に残留した残留トナーをその表面から除去するクリーニング手段と、
上記クリーニング手段よりも上記感光体表面の循環移動方向上流側で上記感光体の、上記被転写面にトナー像が転写された後の表面に接した複数の繊維を有する繊維体と、
上記中心軸の延在方向に、上記繊維体と上記感光体表面とを相対的に往復動させる往復動機構とを備えたことを特徴とする。
【0014】
ここにいう被転写面とは、中間転写体の、上記感光体表面に接する面であってもよいし、あるいは記録媒体の記録面であってもよい。
【0015】
本発明の画像形成装置によれば、上記本発明のクリーニング装置を備えているため、感光体表面から、放電生成物や外添剤等の微細な残留物を感光体の中心軸の延在方向に均一かつ十分に長期にわたって除去することができる。
【0016】
また、本発明の画像形成装置において、上記繊維体が、太さが10μm以下の複数の繊維を有し、上記感光体表面の循環移動方向に1.5mm以上の幅をもったものであることが好ましい。
【0017】
こうすることで、上記繊維体の、上記感光体表面に接した面がポーラス形状面になり、感光体表面が、このポーラス形状面で往復動摺擦される。その結果、太さが10μm以下の複数の繊維に残留トナー成分が安定して保持され、感光体表面から、微細な残留物が感光体の中心軸の延在方向により均一かつより十分に長期にわたって除去される。
【0018】
また、本発明の画像形成装置において、上記往復動機構が、上記トナー像形成サイクルが実行されている間を避けて、上記繊維体と上記感光体の表面とを相対的に往復動させるものである態様も好ましい。
【0019】
この態様によれば、上記繊維体と上記感光体の表面との相対的な往復動によるトナー像形成への影響が抑えられ好ましい。
【0020】
さらに、本発明の画像形成装置において、上記往復動移動機構による上記繊維体と上記感光体の表面との相対的な往復動の速度を制御する制御部や、あるいは、
上記往復動移動機構による上記繊維体と上記感光体の表面との相対的な往復動の振幅幅を制御する制御部を備えたことも好ましい。
【0021】
上記いずれの制御部を備えることで、上記繊維体による掻取能力が調整され、過剰な掻き取りによる感光体表面に生じる必要以上の磨耗や傷、さらには繊維体自身の劣化が抑えられる。すなわち、上記制御部が、上記往復動の速度を低下させたり、あるいは上記往復動の振幅幅を低減させたりすることで過剰な掻き取りが抑えられる。反対に高い掻取能力が必要なときには、上記制御部が、上記往復動の速度を上昇させたり、あるいは上記往復動の振幅幅を増加させたりする。
【0022】
また、本発明の画像形成装置において、上記往復動移動機構による上記繊維体と上記感光体の表面との相対的な往復動がなされている間、上記帯電器の帯電動作を停止させる制御部を備えた態様も好ましい。
【0023】
上記帯電器は、放電生成物の発生源であるため、この態様では、感光体の、上記クリーニング手段を通過した表面における放電生成物の残留率が一段と低下する。
【0024】
さらに、本発明の画像形成装置において、この画像形成装置内の湿度もしくは温度、または湿度および温度を検知する環境検知センサと、
上記環境検知サンセの検知結果を用いて算出された画像形成装置内の絶対水分量、その環境検知サンセの検知結果に基づく温度、およびその環境検知サンセの検知結果に基づく湿度のいずれかが所定値を越えているか否かを判定し、越えていれば、上記往復動移動機構による上記繊維体と上記感光体の表面との相対的な往復動の速度を上昇させるもしくは振幅幅を増加させる、またはその速度を上昇させかつその振幅幅を増加させる制御部とを備えたことも好ましい。
【0025】
放電生成物に起因した画像流れは高湿条件で発生しやすく、高湿条件下で高い掻取能力が最も必要になる。また、上記繊維体の繊維による残留トナーの保持には静電付着力が寄与しているが、高温高湿条件下では、その静電付着力が低下するため、上記繊維体の掻取能力も低下する傾向にある。このため、上記制御部は、上記絶対水分量、検知結果に基づく温度、および検知結果に基づく湿度のいずれかのパラメータを用いて、上記繊維体の掻取能力を高める必要があることを検知し対応する。
【0026】
一方、低温低湿下では、上記静電付着力が増加し、さらに、上記複数の繊維が弾性体に保持されているとその弾性体の弾性率も上昇して、繊維体の掻取能力が過剰気味になる。そこで、上記制御部に、上記繊維体の掻取能力を低下させる必要があることを、上記いずれかのパラメータを用いて検知させ対応させるようにしてもよい。
【0027】
こうすることで、本発明の画像形成装置がどのような環境下で用いられても、長期に渡り高画質を維持し、感光体および繊維体両者の長寿命化を得ることができる。
【0028】
なお、制御部が、温湿度両方のテーブルを持ち予め決められた条件の組合せで上記速度や上記振幅幅を制御するものであってもよい。
【0029】
また、本発明の画像形成装置において、上記感光体が、最表面に、電荷輸送機能を有する構造単位と架橋構造とを持った樹脂を含有した保護層を有するものであることも好ましい。
【0030】
上記感光体が上記保護層を有するものであることで、上記繊維体の往復動摺擦によって感光体表面が磨耗したり傷ついたりすることが抑えられ、感光体の長寿命化が得られる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、像担持体表面から、放電生成物や外添剤等の微細な残留物を像担持体の中心軸の延在方向に均一かつ十分に長期にわたって除去することができるクリーニング装置、およびそのクリーニング装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成を示す図である。
【0034】
図1に示す画像形成装置1は、回転軸10aを中心にして時計回りに回転するドラム状の感光体10を備え、この感光体10の周囲には、帯電器20、露光器30、現像器40、転写ロール50、クリーニング前帯電器61、クリーニング前除電器62、クリーニング装置70、および除電ランプ80も備えられている。
【0035】
図1に示す感光体10は、円筒上の導電性支持体の上に、下引層、電荷発生層と電荷輸送層を含む感光層、および保護層101を積層してなるものである。保護層101は、この感光体10の最表層になる層であって、この図1では、この保護層101が模式的に示されている。感光体10が回転軸10aを中心にして回転することで、最表層(感光体10の表面110)は、回転軸10aの周りを循環移動する。ここでは感光体10についてのこれ以上の説明は省略し、詳細については後述する。
【0036】
帯電器20は、非接触帯電方式のコロトロン帯電器である。この帯電器20には、帯電器制御部21による制御のもと、帯電器高圧電源22から帯電バイアスが印加される。また帯電器は接触型の帯電ロールなど公知の帯電方式を採用してもよい。露光器30は、感光体10の表面110に向けて、画像情報に基づくレーザ光を照射するものである。現像器40は、トナー粒子およびトナー粒子よりも微粒子の研磨効果等を発揮する外添剤を含む現像剤を収容した現像剤収容体41と、現像剤収容体41中のトナー粒子を担持して感光体10の表面に対向した状態で回転する現像ロール42を有する。トナー粒子は、現像器40内で所定極性に帯電され、感光体10の表面110に静電的に移行する。
【0037】
図1に示す画像形成装置1において画像形成が行われる際には、まず、感光体表面110にトナー像を形成するトナー像形成サイクルが実行される。このトナー像形成サイクルでは、感光体10の表面110が、帯電器20によって一様に帯電された後、露光器30によって画像情報に基づくレーザー光が照射され、感光体10の表面110に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像器40によって現像され、感光体10の表面110にはトナー像が形成され、トナー像形成サイクルが終了する。
【0038】
図1では、記録用紙Pが図の右から左に向かって搬送されてくる。搬送されてきた記録用紙は、感光体10と転写ロール50の間に送り込まれる。図1に示す画像形成装置1では、感光体10と転写ロール50によって挟み込まれた領域が転写領域になる。転写ロール50には、トナー粒子の帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加されており、トナー像形成サイクルによって感光体表面110に形成されたトナー像は、この転写領域において、感光体10の表面110から記録用紙Pに転写される。本実施形態の画像形成装置1では、記録用紙Pの表面が本発明にいう所定の被転写面に相当する。なお、図1に示す画像形成装置1では、転写ロール50を用いた直接転写方式が採用されているが、転写ロール50に代えて転写コロトロンを用いてもよい。また、記録用紙Pを静電的に吸着して搬送し感光体上のトナー像を転写する転写ベルト方式を採用してもよい。さらに、中間転写ベルトや中間転写ドラム等の中間転写体を用いた中間転写方式を採用してもよい。
【0039】
また、図1に示す画像形成装置1は、転写領域よりも用紙搬送方向下流側に定着器90を備えている。この定着器90は、加熱機構を有する定着ロール91と、定着ロール91に対向するように設けられた圧力ロール92とを備えている。互いに対向する定着ロール91と圧力ロール92の間には、転写領域を通過した記録用紙Pが搬送されてくる。記録用紙P上のトナー像を構成するトナーは、定着ロール91の加熱機構により溶融され圧力ロール92からの圧力を受けて記録用紙Pに定着し、定着トナー像からなる画像が形成される。
【0040】
一方、感光体10の、転写領域を通過した表面110には、転写領域において記録用紙Pへ移行することができなかった残留トナーや、その残留トナーに付着していた研磨効果等を発揮する外添剤粒子が残留している。さらに、帯電器20における放電現象に伴い、感光体表面110にはO3やNOxに代表される放電生成物が付着し、感光体10の、転写領域を通過した表面110には、この放電生成物も残留している。放電生成物が感光体表面110に多く残留していると、残留している放電生成物が雰囲気中の水分とイオン結合して感光体表面10の電気抵抗が低下し、所謂白抜けという現象や画像流れという現象が引き起こされる。
【0041】
図1に示すクリーニング装置70は、これらの残留物を除去するための装置であって、転写領域よりも感光体回転方向(感光体表面の循環移動方向)下流側であって帯電器20よりも感光体回転方向上流側の位置に配備されたものである。このクリーニング装置70は、本発明のうちのクリーニング装置の一実施形態に相当する。また、このクリーニング装置70の手前には、クリーニング前帯電器61とクリーニング前除電器62が配備されている。感光体10の、転写領域を通過した表面110には両極性の残留トナーが存在するため、これら両極性の残留トナーをクリーニング前帯電器61によって一方の極性に揃え、クリーニング前除電器62によって感光体表面上の残留電位レベルを落とし、残留トナーが、クリーニング装置70によって除去されやすいようにする。
【0042】
図1に示すクリーニング装置70は、クリーニングブラシ71、回収ロール72、スクレーパ部材73、廃トナー搬送オーガ74、およびクリーニング補助部材75を備えている。クリーニングブラシ71は、感光体10の回転軸10aと平行に延びた中心軸711から放射状に延びた導電性の毛712を有するものである。このクリーニングブラシ71は、毛712の先端が感光体表面110および回収ロール72の周面の双方に食い込んだ状態で中心軸711を中心にして回転する。クリーニングブラシ71には、感光体表面110に残留した残留トナーを引き寄せる回収バイアスが印加されており、残留トナーは、この回収バイアスの作用によってクリーニングブラシ71の毛712に引き寄せられるとともにこの毛712によって掻き取られる。すなわち、クリーニングブラシ71は、感光体の、転写領域を通過した表面110に残留した残留トナーをその表面110から除去するものであり、本発明にいうクリーニング手段の一例に相当する。また、トナーから離脱して感光体表面110に残留した研磨効果等を発揮する外添剤粒子も、このクリーニングブラシ71によってその表面110から除去される。クリーニングブラシ71は、クリーニング性能の経時劣化が少なく、板状のクリーニングブレードを用いるよりも、特に高速機においては有利である。また図1に示すクリーニングブラシ71は積極的に電界を利用するクリーニング方式であるため、電気的作用を利用せず機械的に掻き取るクリーニングブレードでは困難である球状トナーのクリーニングに対しても優位性をがある。クリーニングブラシ71の毛712に移行した残留トナーや外添剤粒子(以下、これらを総称して残留トナー成分と称する)は回収バイアスの作用によってその毛712に保持される。回収ロール72も、感光体10の回転軸10aと平行に延びた中心軸721を中心にして回転するものであり、クリーニングブラシ71の毛712に保持された残留トナー成分を回収する。スクレーパ部材73は、回収ロール72によって回収された残留トナー成分を回収ロール72から掻き落とす。スクレーパ部材73によって掻き落とされた残留トナー成分は、廃トナー搬送オーガ74によってクリーニング装置70の外まで搬送される。
【0043】
クリーニング補助部材75は、クリーニングブラシ71よりも、感光体回転方向上流側に配備されたものである。このクリーニング補助部材75は、感光体10の回転軸10aの延在方向に延びた保持部材751に多数の微細繊維752が保持されたものであり、本発明にいう繊維体の一例に相当する。多数の微細繊維752それぞれは、太さが10μm以下でのものであり、感光体表面110に接している。クリーニング補助部材75の、感光体表面110に接した面は、多数の微細繊維752によってポーラス状になっている。またクリーニング補助部材75の幅(感光体回転方向の長さ)は1.5mm以上あり、微細繊維752は、感光体回転方向に1.5mm以上の当接幅をもって接している。クリーニング補助部材75は、残留トナー成分を除去するクリーニングブラシ71よりも上流側に配置されているため、感光体10が回転することでこのクリーニング補助部材75に向けて残留トナー成分が運ばれてくる。残留トナー成分は、クリーニング補助部材75の微細繊維752によって捕捉されて保持される。感光体表面110に付着した放電生成物等の付着物や、放電に伴う感光体10の表面劣化層は、微細繊維752に保持された残留トナー成分によって感光体表面110から掻き取られる。こうして掻き取られた放電生成物等は、微細繊維752に捕捉された残留トナー成分に付着する。従来の一般的なクリーナであるクリーニングブレードでは、感光体表面への接触が線接触であるため残留トナー成分が接触部(ブレードエッジ先端部)より離脱しやすく研磨効果は向上しないが、このクリーニング補助部材75は感光体表面110に対して、感光体回転方向に1.5mm以上にわたって接触し、しかもクリーニング補助部材75の、感光体表面110に接した面が、多数の微細繊維752によってポーラス状になっているため、捕捉された残留トナー成分は、その面に安定して保持され、十分な研磨効果が発揮される。残留トナー成分は、クリーニング補助部材75に安定して保持されてはいるものの、新たな残留トナー成分がクリーニング補助部材75に運ばれてくると、クリーニング補助部材75に保持されている残留トナー成分と、新たに運ばれてきた感光体表面110上の残留トナー成分との間で入れ替わりが起こり、クリーニング補助部材75に保持されている残留トナー成分の一部が感光体表面110に戻る。感光体表面110に戻った残留トナー成分は、感光体10が回転することで下流側のクリーニングブラシ71に向かい、そのクリーニングブラシ71によって感光体表面110から除去される。すなわち、クリーニング補助部材75に一端捕捉され、微細な残留物が付着した残留トナー成分は、最終的にクリーニングブラシ71によって感光体表面110から除去される。このように、本実施形態では、クリーニング補助部材75の微細繊維752によって捕捉された残留トナー成分の入れ替えが行われるので、クリーニング補助部材75に掻取物が飽和してしまうことが抑えられる。
【0044】
また、図1では図示省略したが、本実施形態におけるクリーニング装置60は、往復動機構76と制御部77と環境検知センサ78も備えている。
【0045】
図2は、本実施形態におけるクリーニング装置が備える往復動機構と制御部を示す図である。
【0046】
この図2には、延在方向を図の左右方向にしてクリーニング補助部材75も示されている。図2に示すクリーニング補助部材75の保持部材751の長手方向(図2の左右方向)の両側それぞれはガイド755に固定されており、これらのガイド755には、ガイドピン756が挿通されている。クリーニング補助部材75は、このガイドピン756に案内されて、クリーニング補助部材75の長手方向、すなわちここでは不図示の感光体10の回転軸10aの延在方向に往復動自在なものである。図2に示すクリーニング補助部材75の長手方向の長さは、感光体表面110の画像形成最大領域の長さ(感光体の回転軸10aの延在方向の長さ)より短いが、クリーニング補助部材75が往復動することで、感光体の回転軸10aの延在方向に関し、その画像形成最大領域全域をカバーする。なお、クリーニング補助部材75の長手方向の長さを、感光体表面110の画像形成最大領域の長さに一致させてもよい。保持部材751の一端側(図2では右端側)には圧縮スプリングバネ757が配備されており、保持部材751は他端側(図2では左端)に向かって付勢されている。保持部材751のその他端側には、突き出しピン758が設けらている。
【0047】
往復動機構76は図2の左側に示されている。この往復動機構76は、クリーニング補助部材75を往復動するものであり、傾斜カム761と、その傾斜カム761を回転駆動する駆動モータ762を有する。保持部材751に設けられた突き出しピン758の突出端は、傾斜カム761のカム面の、その傾斜カム761の回転中心Lから偏心した位置に圧縮スプリングバネ757の付勢力によって当接している。そのため、駆動モータ762によって傾斜カム761が回転駆動されると、クリーニング補助部材75は図2の左右方向に往復動する。図2には、傾斜カム761のカム面によって最も右側へ移動した状態のクリーニング補助部材75が示されており、この状態から傾斜カム761が回転すると、クリーニング補助部材75は左側に移動し、その後再び図2に示す状態に戻る。このような往復動作によって、クリーニング補助部材75と感光体表面110とが、感光体10の回転軸10aの延在方向に相対的に往復動し、感光体表面110がクリーニング補助部材75によって揺動摺擦される。この揺動摺擦によって、クリーニング補助部材75を感光体表面110に強く押し付けなくともクリーニング補助部材75の掻取能力は高められ、微細な残留物が十分に除去される。また、クリーニング補助部材75による掻取性が感光体10の回転軸10aの延在方向で不均一になることも抑えられる。したがって、本実施形態においては、微細な残留物が、感光体表面110から、感光体10の回転軸10aの延在方向に均一かつ十分に長期にわたって除去される。
【0048】
往復動機構76によるクリーニング補助部材75の移動距離(往復動の振幅幅)は2mm〜10mmの範囲にあるのが好ましい。移動距離が2mmより少ないと効果が見られず、10mm以上は効果が変わらず、クリーニング装置70の大型化を招く。また往復動機構76によるクリーニング補助部材75の往復動の速度は感光体1周に対し0.5往復〜20往復の範囲にあるのが好ましく、1往復〜10往復の範囲にあることがさらに好ましい。0.5往復よりも小さい場合は十分な効果が見られず、反対に20往復を超えると、微細繊維752に残留トナー成分を安定保持するクリーニング補助部材75であっても、摺擦運動による振動で残留トナー成分を保持しきれなくなったり、また微細繊維752の劣化を招く場合が生じる。さらに、感光体10の1回転に対して、0.5往復〜20往復の範囲内で非整数倍とし、感光体摺擦を非同期化/ランダム化させることで、感光体10の研磨均一性をより向上させることができ、好ましい。なお、図2に示す傾斜カム761と駆動モータ762の組合せに代えて直動モータを用いてもよい。また、ここでは、制御容易であることより往復動機構76によってクリーニング補助部材75を往復動させているが、クリーニング補助部材75を所定位置に留めたまま感光体10を回転軸10aの延在方向に往復動させてもよく、あるいはクリーニング補助部材75と感光体10との双方を、上記延在方向にタイミングをずらして往復動させてもよい。
【0049】
ここで、クリーニング補助部材75の往復動動作を行うと感光体10に振動が伝わることは免れず、トナー像形成サイクルが実行されている間にも往復動動作を行うと、露光器30によるレーザ光の照射の際に、往復動動作による振動によってレーザ光のスポットの位置がブレて静電潜像に乱れが生じる恐れがある。このため、図2に示す往復動機構76は、この往復動作を、トナー像形成サイクルが実行されていない間に行う。トナー像形成サイクルが実行されていない間とは、画像形成装置電源投入後の立ち上げ動作時、画像形成Jobの前サイクル動作時、作像間のインターイメージ、画像形成Jobの後サイクル動作時、感光体10の回転停止時、あるいは電源をオフしてから所定時間経過後などがあげられるが、これらの中でも画像形成速度の影響の少ない、画像形成装置電源投入後の立ち上げ動作時、画像形成Jobの後サイクル動作時、後サイクル動作後の感光体回転停止時に往復動作を行うことが好ましい。
【0050】
図2に示す環境検知センサ78は、画像形成装置内の湿度および温度を検知するものである。また、図2に示す制御部77は、クリーニング補助部材75の往復動がなされている間、図1に示す帯電器20の帯電動作を停止させる。帯電器20は、放電生成物の発生源であるため、制御部77が帯電器20の帯電動作を停止させることで、感光体10の、クリーニングブラシ71を通過した表面110における放電生成物の残留率が一段と低下する。さらに、この制御部77は、環境検知サンセ78の検知結果に基づいてクリーニング補助部材75の往復動の速度や、その往復動の振幅幅を制御する。すなわち、制御部77は、駆動モータ762の回転速度や、回転方向及び回転角度を制御する。この制御部77によってクリーニング補助部材75による掻取能力が調整され、過剰な掻き取りによる感光体表面110に生じる必要以上の磨耗や傷、さらにはクリーニング補助部材75の微細繊維自身の劣化が抑えられる。すなわち、制御部77が、往復動の速度を低下させたり、あるいは往復動の振幅幅を低減させたりすることで過剰な掻き取りが抑えられる。反対に高い掻取能力が必要なときには、制御部77が、往復動の速度を上昇させたり、あるいは往復動の振幅幅を増加させたりする。放電生成物に起因した画像流れは高湿条件で発生しやすく、高湿条件下で高い掻取能力が最も必要になる。また、微細繊維712による残留トナー成分の保持には静電付着力が寄与しているが、高温高湿条件下では、その静電付着力が低下するため、クリーニング補助部材75の掻取能力も低下する傾向にある。制御部77には、画像形成装置1内が高温高湿下にあることを表す第1の所定値が設定されており、制御部77は、環境検知サンセ78の検知結果がこの第1の所定値を越えているか否かを判定する。検知結果が第1の所定値を越えていれば、駆動モータ762を正回転させ続けその回転速度を上昇させる。こうすることで、クリーニング補助部材75の往復動の速度は速くなりその振幅幅も最大になる。
【0051】
一方、低温低湿下では、上記静電付着力が増加し、さらに、保持部材751の弾性率も上昇して、クリーニング補助部材75の掻取能力が過剰気味になる。制御部77には、画像形成装置1内が低温低湿下にあることを表す第2の所定値が設定されており、制御部77は、環境検知サンセ78の検知結果がこの第2の所定値を下回ったか否かを判定する。検知結果が第2の所定値を下回っていれば、駆動モータ762の回転軸が1回転する前に回転軸の回転を逆方向に切り替えその回転速度を低下させる。すなわち、駆動モータ762の回転軸の回転角度を360°未満に抑えて正逆回転させることで、傾斜カム761のカム面の一部しか使われずに、クリーニング補助部材75の往復動の振幅幅が小さくなる。また、駆動モータ762の回転速度を低下させることで、クリーニング補助部材75の往復動の速度は遅くなる。
【0052】
以上説明したような制御が制御部77によって実行されることで、本実施形態の画像形成装置1がどのような環境下で用いられても、長期に渡り高画質を維持し、感光体10およびクリーニング補助部材75双方の長寿命化を得ることができる。
【0053】
なおここでは、環境検知センサ78が画像形成装置内の湿度および温度の双方を検知するものであり、制御部77が、環境検知センサ78の検知結果である湿度および温度の双方に基づいて制御を行うものであったが、環境検知センサ78が画像形成装置内の湿度および温度のいずれか一方のみを検知するものであり、制御部77が、その環境検知センサ78によって検知されたいずれか一方のパラメータに基づいて制御を行うものであっってもよい。また、制御部77が、環境検知センサ78の検知結果を用いて画像形成装置内の絶対水分量を算出し、その絶対水分量に基づいて制御を行うものであってもよい。さらに、制御部77が、温湿度両方のテーブルを持ち予め決められた条件の組合せで往復動の速度や振幅幅を制御するものであってもよい。
【0054】
ここで、クリーニング補助部材75の微細繊維712を構成する繊維の太さは1μm以上10μm以下であることが好ましく、2μm以上8μm以下であることがより好ましい。繊維太さが10μmよりも大きくなると、残留トナー成分の均一保持性が低下するとともに、揺動摺擦動作時に残留トナー成分の、微細繊維からの離脱や繊維間への埋没が発生しやすくなり、揺動摺擦による感光体のリフレッシュ性能の低下が生じる。反対に、1μmより細い場合は揺動摺擦によるストレスで繊維自体の損傷が生じやすくなる。またクリーニング補助部材75の、感光体表面110への当接幅があまり大きくなりすぎると、揺動摺擦動作時のメカニカルな刺激によって残留トナー成分が微細繊維から離脱したすくなる。このため、当接幅の上限としては特に限定はないが、画像形成装置の大型化の観点より10mm以下とすることが好ましい。微細繊維712の材質としては、例えばポリエステル系繊維、ナイロン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、アクリル系繊維、またはこれらの各合成繊維の樹脂を用いた複合繊維、アセテート系繊維等の半合成繊維、レーヨン等の再生繊維、などが用いられる。これらの微細繊維をシート状にする加工方法としては、糸を編み二次元的材料を構成する方法と、繊維から直接布を作る方法とがあり、後者は繊維を相互に接着させたり、機械的に絡ませたりしてシート状に加工するものであり、これを不織布と呼んでいる。いずれの方法を用いてもよいが、微細繊維の密度が大きく柔軟性に富み、繊維間にトナーを良好に保持出来るという点で不織布が望ましい。
【0055】
また、保持部材751は、微細繊維712のバックアップ材として用いることが好ましく、微細繊維712を保持部材751の表面に貼り付けて、その表面が感光体表面110に所定の圧力で押し当てられていることが望ましい。保持部材751としては、発砲ウレタン、ウレタンゴム、シリコーンゴム、などの弾性体があげられる。尚微細繊維712のバックアップ材の形状としては特に限定されず、像担持体表面の循環移動方向に1.5mm以上の幅をもったものであればかまわない。保持部材751によって感光体表面110に微細繊維752を押し付ける圧力としては、4.9〜58.8mN/mmの範囲であることが好ましい。更に好ましい範囲は9.8〜39.2mN/mmである。押し付け圧が4.9mN/mmより低いと充分な摺擦機能を発揮することが出来ず、58.8mN/mmより高いと感光体10との摺擦が強すぎて微細繊維752自体および感光体10の劣化を招き、さらには却ってフィルミング等を誘発する。
【0056】
続いて、図1に示す感光体に使用することができる感光体について詳述する。
【0057】
図3は、図1に示す感光体の断面構造を示す模式図である。
【0058】
図3には、円筒上の導電性支持体102の表面に形成された下引層103、その下引層103の表面に形成された電荷発生層104、その電荷発生層104の表面に形成された電荷輸送層105、および保護層101が示されている。
【0059】
本実施形態の感光体としては、有機感光体や、アモルファスシリコン感光体やセレン系感光体などの無機系の感光体など公知の感光体を用いる事ができるが、コスト、製造性および廃棄性等の点で優れた利点を有する有機感光体が好適に用いられる。更に、感光体には、揺動摺擦による感光体表面の傷などに対する耐性を持たせたるため、高強度表面保護層を設けることが好ましく、保護層を構成する材料として電荷輸送能を有する構造単位と架橋構造とを有する樹脂を含有することが更に好ましい。
【0060】
以下、保護層について説明する。保護層を構成する材料としては、耐磨耗性を向上させ十分な硬度を確保するために、架橋構造を有する樹脂が少なくとも用いられる。このような材料を用いない場合には、表面の硬度が低く十分な耐磨耗性が得られないため、傷が発生したり磨耗が進行し易く、高速で使用する場合や、非常に長期に渡って画像形成を行う場合、高品質の画質を得られない。
【0061】
なお、保護層には、架橋構造を有する樹脂以外にも必要に応じて、架橋構造を有さないバインダー樹脂や、導電性微粒子、また、フッ素樹脂やアクリル樹脂などからなる潤滑性微粒子が含まれていてもよく、保護層の形成に際しては、必要に応じてシリコンや、アクリルなどのハードコート剤を使用することができる。
【0062】
保護層の形成方法の詳細については後述するが、保護層の形成には架橋構造を有する樹脂を構成する前駆体を少なくとも含む最表面層形成用溶液が用いられる。なお、架橋構造を有する樹脂としては、保護層の硬度を確保する点から種々の材料を用いることができるが、特性上、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン系樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができ、これらの中でもフェノール系樹脂とシロキサン系樹脂が耐久性の点で好ましい。さらに好ましくはメチロール基を有するフェノール誘導体を架橋したフェノール系樹脂、および、架橋構造を有するシロキサン系樹脂から選択される少なくとも1種である。
【0063】
さらに、電気特性や画質維持性などの観点からは、架橋構造を有する樹脂は、電荷輸送性を有している(電荷輸送能を有する構造単位を含む)ことが好ましい。この場合、積層構成型の感光体では、保護層が電荷輸送層の一部として機能することもできる。このような電荷輸送能を有する構造単位としては、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基及びアミノ基から選択される少なくとも1種を有する電荷輸送材料であることが好ましい。
【0064】
水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基及びアミノ基から選択される少なくとも1種を有する電荷輸送材料としては下記一般式(I)〜(V)で示される化合物又はその誘導体が強度、安定性に優れ特に好ましい。
F−[D−Si(R1(3-a)ab (I)
上記一般式(I)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、Dは可とう性を有する2価の基を、R1は水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)又は置換若しくは未置換のアリール基(炭素数は6〜20が好ましく、6〜15がより好ましい)を、Qは加水分解性基を、aは1〜3の整数を、bは1〜4の整数を示す。また、上記可とう性を有する2価の基Dとしては、具体的には、光電特性を付与するためのFの部位と、3次元的な無機ガラス質ネットワークの構築に寄与する置換ケイ素基とを結びつける働きを担う2価の基である。また、Dは、堅い反面もろさも有する無機ガラス質ネットワークの部分に適度な可とう性を付与し、膜としての機械的強靱さを向上させる働きを担う有機基構造を表す。Dとして具体的には、−CαH2α−、−CβH2β-2−、−CγH2γ-4−で表わされる2価の炭化水素基(ここで、αは1〜15の整数を表し、βは2〜15の整数を表し、γは3〜15の整数を表す)、−COO−、−S−、−O−、−CH2−C64−、−N=CH−、−(C64)−(C64)−、及び、これらの特性基を任意に組み合わせた構造を有する特性基、更にはこれらの特性基の構成原子を他の置換基と置換したもの等が挙げられる。また、上記加水分解性基Qとしては、アルコキ シ基が好ましく、炭素数1〜15のアルコキシ基がより好ましい。
F−[(X1n12−ZH]n2 (II)
上記一般式(II)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X1は酸素原子又は硫黄原子を、R2はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、n1は0又は1を、n2は1〜4の整数を、ZHは水酸基、チオール基、アミノ基又はカルボキシル基を示す。
F−[(X2n3−(R3n4−(Z)n5G]n6 (III)
上記一般式(III)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、X2は酸素原子又は硫黄原子を、R3はアルキレン基(炭素数は1〜15が好ましく、1〜10がより好ましい)を、Zは酸素原子、硫黄原子、NH又はCOOを、Gはエポキシ基を、n3、n4及びn5はそれぞれ独立に0又は1を、n6は1〜4の整数を示す。
【0065】
【化1】

【0066】
上記一般式(IV)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、Tは2価の基を、Yは酸素原子又は硫黄原子を、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基を、R7は1価の有機基を、m1は0又は1を、n7は1〜4の整数を、それぞれ示す。但し、R6とR7は互いに結合してYをヘテロ原子とする複素環を形成してもよい。Tの具体例としては、炭素数1のアルキレン基などが挙げられる。
【0067】
【化2】

【0068】
上記一般式(V)中、Fは正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基を、Tは2価の基を、R8は1価の有機基を、m2は0又は1を、n8は1〜4の整数を、それぞれ示す。Tの具体例としては、炭素数1のアルキレン基などが挙げられる。
【0069】
上記一般式(I)〜(V)で示される化合物における正孔輸送能を有する化合物から誘導される有機基Fとしては、下記一般式(VI)で示される化合物が好ましい。
【0070】
【化3】

【0071】
上記一般式(VI)中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4はそれぞれ独立に置換又は未置換のアリール基を示し、Ar5は置換若しくは未置換のアリール基又はアリーレン基を示し、且つAr1〜Ar5のうち1〜4個は、上記式(I)〜(V)で示される化合物における−D−Si(R1(3-a)Qa、−(X1n12−ZH、−(X2n3−(R3n4−(Z)n5G、−(T)m1−O−CR4(CHR56)(Y−R7)、−(T)m2−OCOO R8で示される部位と結合手を有する。kは0又は1を示す。
【0072】
また、保護層が、メチロール基を有するフェノール誘導体と、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、チオール基及びアミノ基から選択される少なくとも1種を有する電荷輸送材料とを含有することが好ましい。
【0073】
上記メチロール基を有するフェノール誘導体としては、モノメチロールフェノール類、ジメチロールフェノール類若しくはトリメチロールフェノール類のモノマー、それらの混合物、それらがオリゴマー化されたもの、又はそれらモノマーとオリゴマーの混合物が挙げられる。このようなメチロール基を有するフェノール誘導体は、レゾルシン、ビスフェノール等、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール等の水酸基を1個含む置換フェノール類、カテコール、レゾルシノール、ドロキノン等の水酸基を2個含む置換フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールZ等のビスフェノール類、ビフェノール類等、フェノール構造を有する化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等とを、酸触媒又はアルカリ触媒下で反応させることで得られるもので、一般にフェノール樹脂として市販されているものも使用できる。なお、本明細書では、分子の構造単位の繰り返しが2〜20程度の比較的大きな分子をオリゴマーといい、それ以下のものをモノマーという。
【0074】
上記酸触媒としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸、リン酸等が用いられる。また、アルカリ触媒としては、NaOH、KOH、Ca(OH)2、Ba(OH)2等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物やアミン系触媒が用いられる。アミン系触媒としては、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩基性触媒を使用した場合には、残留する触媒によりキャリアが著しくトラップされ、電子写真特性を悪化させる傾向がある。そのため、酸で中和するか、シリカゲル等の吸着剤や、イオン交換樹脂等と接触させることにより不活性化又は除去することが好ましい。また、メチロール基を有するフェノール誘導体としては、フェノール樹脂が好ましく、レゾール型フェノール樹脂がより好ましい。
【0075】
また、保護層には、残留電位を下げるために導電性粒子を添加してもよい。導電性粒子としては、金属、金属酸化物及びカーボンブラック等が挙げられる。これらの中でも、金属又は金属酸化物がより好ましい。金属としては、アルミニウム、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、銀及びステンレス等、又はこれらの金属をプラスチックの粒子の表面に蒸着したもの等が挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズ、及びアンチモンをドープした酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。2種以上を組み合わせて用いる場合は、単に混合しても、固溶体や融着の形にしてもよい。導電性粒子の体積平均粒子径は保護層の透明性の観点から、0.3μm以下が好ましく、0.1μm以下が特に好ましい。
【0076】
また、保護層には、保護層の強度、膜抵抗等の種々の物性をコントロールするために、下記一般式(VII−1)で示される化合物を添加することもできる。
Si(R30(4-c)c (VII−1)
上記一般式(VII−1)中、R30は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、cは1〜4の整数を示す。
【0077】
上記一般式(VII−1)で示される化合物の具体例としては以下のようなシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の四官能性アルコキシシラン(c=4);メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、3−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロアルキルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリエトキシシラン等の三官能性アルコキシシラン(c=3);ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン等の二官能性アルコキシシラン(c=2);トリメチルメトキシシラン等の1官能アルコキシシラン(c=1)等を挙げることができる。膜の強度を向上させるためには3及び4官能のアルコキシシランが好ましく、可とう性、成膜性を向上させるためには1及び2官能のアルコキシシランが好ましい。
【0078】
また、主にこれらのカップリング剤より作製されるシリコン系ハードコート剤も用いることができる。市販のハードコート剤としては、KP−85、X−40−9740、X−40−2239(以上、信越シリコーン社製)、及びAY42−440、AY42−441、AY49−208(以上、東レダウコーニング社製)等を用いることができる。
【0079】
また、保護層には、その強度を高めるために、一般式(VII−2)に示すような2つ以上のケイ素原子を有する化合物を用いることも好ましい。
B−(Si(R31(3-d)d2 (VII−2)
上記一般式(VII−2)中、Bは2価の有機基を、R31は水素原子、アルキル基又は置換若しくは未置換のアリール基を、Qは加水分解性基を、dは1〜3の整数を示す。
【0080】
また、保護層には、ポットライフの延長、膜特性のコントロール、塗布膜表面の均一性向上のため、下記一般式(VII−3)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物、若しくはその化合物からの誘導体を含有させることもできる。
【0081】
【化4】

【0082】
上記一般式(VII−3)中、A1及びA2は、それぞれ独立に一価の有機基を示す。
【0083】
一般式(VII−3)で示される繰り返し構造単位を持つ環状化合物としては、市販の環状シロキサンを挙げることができる。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシクロシロキサン類、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等の環状メチルフェニルシクロシロキサン類、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン等の環状フェニルシクロシロキサン類、3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシクロトリシロキサン等のフッ素原子含有シクロシロキサン類、メチルヒドロシロキサン混合物、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、フェニルヒドロシクロシロキサン等のヒドロシリル基含有シクロシロキサン類、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン等のビニル基含有シクロシロキサン類等の環状のシロキサン等を挙げることができる。これらの環状シロキサン化合物は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0084】
更に、感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性、硬度等を制御するために、各種微粒子を添加することもできる。それらは、単独で用いることもできるが、2種以上を併用してもよい。
【0085】
微粒子の一例として、ケイ素原子含有微粒子を挙げることができる。ケイ素原子含有微粒子とは、構成元素にケイ素を含む微粒子であり、具体的には、コロイダルシリカ及びシリコーン微粒子等が挙げられる。ケイ素原子含有微粒子として用いられるコロイダルシリカは、体積平均粒子径が好ましくは1〜100nm、より好ましくは10〜30nmであり、酸性若しくはアルカリ性の水分散液、或いはアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒中に分散させたものから選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。保護層中のコロイダルシリカの固形分含有量は、特に限定されるものではないが、成膜性、電気特性、強度の面から保護層の固形分全量を基準として好ましくは0.1〜50質量%の範囲、より好ましくは0.1〜30質量%の範囲で用いられる。ケイ素原子含有微粒子として用いられるシリコーン微粒子は、球状で、体積平均粒子径が好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜100nmであり、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子及びシリコーン表面処理シリカ粒子から選ばれ、一般に市販されているものを使用することができる。
【0086】
シリコーン微粒子は、化学的に不活性で、樹脂への分散性に優れる小径粒子であり、さらに十分な特性を得るために必要とされる含有量が低いため、架橋反応を阻害することなく、感光体の表面性状を改善することができる。即ち、強固な架橋構造中に均一に取り込まれた状態で、感光体表面の潤滑性、撥水性を向上させ、長期間にわたって良好な耐摩耗性、耐汚染物付着性を維持することができる。保護層中のシリコーン微粒子の含有量は、保護層の固形分全量を基準として好ましくは0.1〜30質量%の範囲であり、より好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。
【0087】
また、その他の微粒子としては、4弗化エチレン、3弗化エチレン、6弗化プロピレン、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のフッ素系微粒子や“第8回ポリマー材料フォーラム講 演予稿集p89”に示される様な、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーを共重合させた樹脂からなる微粒子、ZnO−Al23、SnO2−Sb23、In23−SnO2、ZnO−TiO2、ZnO−TiO2、MgO−Al23、FeO−TiO2、TiO2、SnO2、In23、ZnO、MgO等の半導電性金属酸化物を挙げることができる。また、同様な目的でシリコーンオイル等のオイルを添加することもできる。
【0088】
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノール変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル等を挙げることができる。これらは、保護層形成用塗布液に予め添加してもよいし、感光体を作製後、減圧、或いは加圧下等で含浸処理してもよい。
【0089】
また、可塑剤、表面改質剤、酸化防止剤、光劣化防止剤等の添加剤を使用することもできる。可塑剤としては、例えば、ビフェニル、塩化ビフェニル、ターフェニル、ジブチルフタレート、ジエチレングリコールフタレート、ジオクチルフタレート、トリフェニル燐酸、メチルナフタレン、ベンゾフェノン、塩素化パラフィン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種フルオロ炭化水素等が挙げられる。保護層にはヒンダートフェノール、ヒンダートアミン、チオエーテル又はホスファイト部分構造を持つ酸化防止剤を添加することができ、環境変動時の電位安定性・画質の向上に効果的である。
【0090】
酸化防止剤としては以下のような化合物が挙げられる。例えば、ヒンダートフェノール系としては、「Sumilizer BHT−R」、「Sumilizer MDP−S」、「Sumilizer BBM−S」、「Sumilizer WX−R」、「Sumilizer NW」、「Sumilizer BP−76」、「Sumilizer BP−101」、「Sumilizer GA−80」、「Sumilizer GM」、「Sumilizer GS」以上住友化学社製、「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1141」、「IRGANOX1222」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425WL」、「IRGANOX1520L」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」以上チバスペシャリティーケミカルズ社製、「アデカスタブAO−20」、「アデカスタブAO−30」、「アデカスタブAO−40」、「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」、「アデカスタブAO−70」、「アデカスタブAO−80」、「アデカスタブAO−330」以上旭電化製。ヒンダートアミン系としては、「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」以上三共ライフテック株式会社製、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」、「スミライザーTPS」、チオエーテル系としては、「スミライザーTP−D」、ホスファイト系としては、「マーク2112」、「マークPEP・8」、「マークPEP・24G」、「マークPEP・36」、「マーク329K」、「マークHP・10」が挙げられ、特にヒンダートフェノール、ヒンダートアミン系酸化防止剤が好ましい。さらに、これらは架橋膜を形成する材料と架橋反応可能な例えばアルコキシシリル基等の置換基で変性してもよい。
【0091】
また、保護層には、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノールAとフタル酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等の絶縁性樹脂を含有させてもよい。この場合、絶縁性樹脂は、所望の割合で添加することができ、これにより、電荷輸送層との接着性、熱収縮やハジキによる塗布膜欠陥等を抑制することができる。
【0092】
保護層は、上述した構成材料を含有する保護層形成用塗布液を、電荷輸送層上に塗布して硬化させることで形成される。保護層形成用塗布液には触媒を添加すること、又は保護層形成用塗布液作製時に触媒を用いることが好ましい。用いられる触媒としては、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸等の無機酸、蟻酸、プロピオン酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸等の有機酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、トリエチルアミン等のアルカリ触媒、さらに系に不溶な固体触媒を用いることもできる。
【0093】
また、メチロール基を有するフェノール誘導体から、合成時の触媒を除去するために、フェノール誘導体をメタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル等の適当な溶剤に溶解させ、水洗、貧溶剤を用いた再沈殿等の処理を行うか、イオン交換樹脂、又は無機固体を用いて処理を行うことが好ましい。
【0094】
例えば、イオン交換樹脂としては、アンバーライト15、アンバーライト200C、アンバーリスト15E(以上、ローム・アンド・ハース社製);ダウエックスMWC−1−H、ダウエックス88、ダウエックスHCR−W2(以上、ダウ・ケミカル社製);レバチットSPC−108、レバチットSPC−118(以上、バイエル社製);ダイヤイオンRCP−150H(三菱化成社製);スミカイオンKC−470、デュオライトC26−C、デュオライトC−433、デュオライト−464(以上、住友化学工業社製);ナフィオン−H(デュポン社製)等の陽イオン交換樹脂;アンバーライトIRA−400、アンバーライトIRA−45(以上、ローム・アンド・ハース社製)等の陰イオン交換樹脂が挙げられる。
【0095】
また、無機固体としては、Zr(O3PCH2CH2SO3H)2,Th(O3PCH2CH2COOH)2等のプロトン酸基を含有する基が表面に結合されている無機固体;スルホン酸基を有するポリオルガノシロキサン等のプロトン酸基を含有するポリオルガノシロキサン;コバルトタングステン酸、リンモリブデン酸等のヘテロポリ酸;ニオブ酸、タンタル酸、モリブデン酸等のイソポリ酸;シリカゲル、アルミナ、クロミア、ジルコニア、CaO、MgO等の単元系金属酸化物;シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、ゼオライト類等複合系金属酸化物;酸性白土、活性白土、モンモリロナイト、カオリナイト等の粘土鉱物;LiSO4,MgSO4等の金属硫酸塩;リン酸ジルコニア、リン酸ランタン等の金属リン酸塩;LiNO3,Mn(NO32等の金属硝酸塩;シリカゲル上にアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて得られた固体等のアミノ基を含有する基が表面に結合されている無機固体;アミノ変性シリコーン樹脂等のアミノ基を含有するポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0096】
保護層形成用塗布液には、必要に応じてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の他、種々の溶媒が使用できる。なお、感光体の生産に一般的に使用されるディップコーティング法を適用するためには、アルコール系溶剤、トン系溶剤、又はそれらの混合系溶剤が好ましい。また、使用される溶媒の沸点は50〜150℃のものが好ましく、それら任意に混合して使用することができる。
【0097】
なお、溶剤としてアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、又はそれらの混合系溶剤が好ましいことから、使用される保護層の形成に使用される電荷輸送材料としては、それらの溶剤に可溶であることが好ましい。
【0098】
また、溶媒量は任意に設定できるが、少なすぎると構成材料が析出しやすくなるため、保護層形成用塗布液中に含まれる固形分の合計1質量部に対し好ましくは0.5〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部である。
【0099】
保護層形成用塗布液を用いて保護層を形成する際の塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。ただし、1回の塗布により必要な膜厚が得られない場合、複数回重ね塗布することにより必要な膜厚を得ることができる。なお、複数回の重ね塗布を行なう場合、加熱処理は塗布の度に行なってもよいし、複数回重ね塗布した後でもよい。
【0100】
電荷輸送層上に保護層形成用塗布液を塗布後には、硬化処理を行う。通常、硬化処理の際には、フェノール誘導体の架橋反応を促進し、保護層の機械強度を上げるためには硬化温度は高く、硬化時間は長いほど好ましい。
【0101】
硬化処理の際の硬化温度は100〜190℃が好ましく、110〜170℃がより好ましく、130〜160℃がさらに好ましい。また、硬化時間は、30分〜2時間が好ましく、30分〜1時間がより好ましい。また、硬化処理(架橋反応)を行う雰囲気としては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の、いわゆる酸化に対して不活性なガス雰囲気(不活性ガス雰囲気)下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下で架橋反応を行う場合には、空気雰囲気(酸素含有雰囲気)下よりも硬化温度を高く設定することができ、硬化温度は100〜160℃(好ましくは110〜150℃)とすることが可能である。また、硬化時間は30分〜2時間(好ましくは30分〜1時間)とすることが可能である。また、上記一般式(II)で示される化合物において、(−(X1n12−ZH)で示される部位が−CH2−OHの場合が最も硬化温度による電気特性の影響が大きい傾向があり、酸化に対して敏感であるので、上記好ましい温度範囲で硬化処理を行うことが好ましい。
【0102】
さらに、硬化処理の際には、硬化触媒を使用することが好ましい。硬化触媒としては、例えば、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタンのようなビススルホニルジアゾメタン類、メチルスルホニルp−トルエンスルホニルメタンのようなビススルホニルメタン類、シクロヘキシルスルホニルシクロヘキシルカルボニルジアゾメタンのようなスルホニルカルボニルジアゾメタン類、2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルホニル)プロピオフェノンのようなスルホニルカルボニルアルカン類、2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネートのようなニトロベンジルスルホネート類、ピロガロールトリスメタンスルホネートのようなアルキル及びアリールスルホネート類、ベンゾイントシレートのようなベンゾインスルホネート類、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミドのようなN−スルホニルオキシイミド類、(4−フルオロベンゼンスルホニルオキシ)−3,4,6−トリメチル−2−ピリドンのようなピリドン類、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチル−1−(3−ビニルフェニル)−エチル−4−クロロベンゼンスルホネートのようなスルホン酸エステル類、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネートのようなオニウム塩類等の光酸発生剤や、プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、オニウム化合物、無水カルボン酸化合物等が挙げられる。
【0103】
プロトン酸或いはルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、ハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノ及びジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノ及びジエステル類等を、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種アミン若しくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイトで中和した化合物、さらには酸−塩基ブロック化触媒として市販されているネイキュア2500X、4167、X−47−110、3525、5225(商品名、キングインダストリー社製)等が挙げられる。また、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、例えば、BF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2等のルイス酸を上記のルイス塩基で中和した化合物が挙げられる。
【0104】
オニウム化合物としては、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
【0105】
無水カルボン酸化合物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水ラウリン酸、無水オレイン酸、無水ステアリン酸、無水n−カプロン酸、無水n−カプリル酸、無水n−カプリン酸、無水パルミチン酸、無水ミリスチン酸、無水トリクロロ酢酸、無水ジクロロ酢酸、無水モノクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水ヘプタフルオロ酪酸等が挙げられる。ルイス酸の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化第一チタン、塩化第二チタン、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一スズ、塩化第二スズ、臭化第一スズ、臭化第二スズ等の金属ハロゲン化物、トリアルキルホウ素、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルハロゲン化アルミニウム、モノアルキルハロゲン化アルミニウム、テトラアルキルスズ等の有機金属化合物、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジブチル・ビス (アセチルアセトナト)スズ、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(アセチルアセ トナト)ロジウム、ビス(アセチルアセトナト)亜鉛、トリス(アセチルアセトナト)コバルト等の金属キレート化合物、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズエステルマレート、ナフテン酸マグネシウム、ナフテン酸カルシウム、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マンガン、オクチル酸鉄、オクチルコバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸スズ、オクチル酸鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛等の金属石鹸が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
これら硬化触媒の使用量は特に制限されないが、保護層形成用塗布液に含まれる固形分の合計100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜10質量部が特に好ましい。
【0107】
また、保護層を形成する際に、有機金属化合物を触媒として用いる場合には、ポットライフ、硬化効率の面から、多座配位子を添加することが好ましい。このような多座配位子としては、以下に示すようなもの及びそれらから誘導されるものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。具体的には、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ジピバロイルメチルアセトン等のβ−ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアセト酢酸エステル類;ビピリジン及びその誘導体;グリシン及びその誘導体;エチレンジアミン及びその誘導体;8−オキシキノリン及びその誘導体;サリチルアルデヒド及びその誘導体;カテコール及びその誘導体;2−オキシアゾ化合物等の2座配位子;ジエチルトリアミン及びその誘導体;ニトリロトリ酢酸及びその誘導体等の3座配位子;エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びその誘導体等の6座配位子;等を挙げることができる。さらに、上記のような有機系配位子の他、ピロリン酸、トリリン酸等の無機系の配位子を挙げることができる。多座配位子としては、特に2座配位子が好ましく、具体例としては、上記の他、下記一般式(VII−4)で示される2座配位子が挙げられる。
【0108】
【化5】

【0109】
上記一般式(VII−4)中、R32及びR33はそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、フッ化アルキル基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。
【0110】
多座配位子としては、上記の中でも、一般式(VII−4)で示される2座配位子がより好ましく、一般式(VII−4)中のR32とR33とが同一のものが特に好ましい。R32とR33とを同一にすることで、室温付近での配位子の配位力が強くなり、保護層形成用塗布液のさらなる安定化を図ることができる。 多座配位子の配合量は、任意に設定することができるが、有機金属化合物の使用量1モルに対し、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上、さらに好ましくは1モル以上である。
【0111】
保護層の25℃における酸素透過係数は、4×1012fm/s・Pa以下であることが好ましく、3.5×1012fm/s・Pa以下であることがより好ましく、3×1012f m/s・Pa以下であることがさらに好ましい。ここで、酸素透過係数は層の酸素ガス透過のし易さを表す尺度であるが、見方を変えると、層の物理的な隙間率の代用特性ととらえることもできる。なお、ガスの種類が変われば透過率の絶対値は変わるものの、検体となる層間で大小関係の逆転は殆どない。したがって、酸素透過係数は、一般的なガス透過のし易さを表現する尺度と解釈して良い。つまり、保護層の25℃における酸素透過係数が上記条件を満たす場合には、保護層においてガスが浸透しにくい。したがって、ヨナー像形成プロセスにより生じる放電生成物の浸透が抑制され、保護層に含有される化合物の劣化が抑制され、電気特性を高水準に維持することができ、高画質化、長寿命化に有効である。
【0112】
保護層の膜厚は、0.1〜6μmが好ましく、1〜5μmがさらに好ましい。
【0113】
続いて、本発明の第2実施形態の画像形成装置について説明する。以下、図1に示す画像形成装置の構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して説明し、重複した説明は省略する。
【0114】
図4は、本発明の第2実施形態の画像形成装置の概略構成を示す図である。
【0115】
図4に示す画像形成装置1と図1に示す画像形成装置とを比較すると、クリーニング装置70の構成が異なっている。すなわち、図1に示す画像形成装置のクリーニング装置には、クリーニング補助部材75の下流に、クリーニングブラシ71が配備されているが、図4に示す画像形成装置1のクリーニング装置70には、クリーニングブラシ71に代えて板状のクリーニングブレード79が配備されている。図4に示すクリーニングブレード79は、感光体10の表面110に先端エッジ部791を接触させた状態で、感光体10の回転軸10aの延在方向に延びるものである。このクリーニングブレード79は、感光体10の表面110に残留した残留トナーやトナーから離脱した外添剤粒子(残留トナー成分)を感光体10が回転することで、電気的作用を利用せず機械的に掻き取る。したがって、図4に示すクリーニング装置70では、積極的に電界を利用するクリーニング方式ではない。このため、図4に示す画像形成装置1からは、このクリーニング装置70の手前に配備される図1に示すクリーニング前除電器62が省略されている。
【0116】
図4に示す画像形成装置1にも、図1に示すクリーニング補助部材と同じクリーニング補助部材75や、図2に示す往復動機構と同じ往復動機構(図4では不図示)が配備されており、図4に示すクリーニングブレード79が、本発明にいうクリーニング手段の一例に相当する。したがって、転写で感光体表面110に残留した残留トナー成分を最終的に除去するクリーニングブレード79の上流で感光体表面110に圧接配置された微細繊維752があることで、除去前の残留トナー成分を微細繊維752へ供給/保持し、保持した残留トナー成分で感光体表面110を揺動摺擦し、放電生成物・フィルミング物質などの微細な残留物や、放電に伴う感光体10の表面劣化層を均一に除去する事が出来る。特に微細繊維752における残留トナー成分の保持に不均一が生じた場合においてもクリーニング補助部材75を往復動させることにより、感光体表面110の微細繊維752での摺擦場所の拡散効果(微細繊維上の複数の部分で摺擦する)、及び微細繊維752に保持された残留トナー成分が揺動動作によりならされ均一化される効果により除去性の均一性を向上させることができる。
【0117】
なお、クリーニングブラシやクリーニングブレード等の残留トナー成分を除去するクリーニング手段として、磁気ブラシなど公知のクリーニング手段を広く用いることができる。
【0118】
以上、感光体10をクリーニングする例をあげて説明してきたが、本発明のうちのクリーニング装置は、中間転写体のクリーニング装置にも適用することができる。中間転写体にも、2次転写の際に生じる用紙の剥離放電によって放電生成物が付着する。そこで、2次転写されずに残った残留トナー成分を保持した微細繊維と中間転写体表面とを相対的に往復動させながら放電生成物を中間転写体から除去するクリーニング装置が有効である。
(実施例)
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「重量部」を意味する。
[感光体Aの作製]
4重量部のポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−S、積水化学社製)を溶解したn−ブチルアルコール170重量部に、有機ジルコニウム化合物(アセチルアセトンジルコニウムブチレート)30重量部および有機シラン化合物(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)3重量部を添加、混合撹拌して下引き層形成用の塗布液を得た。この塗布液を、ホーニング処理により粗面化された外径84mmのアルミニウム支持体の上に浸漬塗布し、室温で5分間風乾を行った後、支持体を10分間で50℃に昇温し、50℃、85%RH(露点47℃)の恒温恒湿槽中に入れて、20分間加湿硬化促進処理を行った。その後、熱風乾燥機に入れて170℃で10分間乾燥を行い下引層を形成した。
【0119】
電荷発生材料として、塩化ガリウムフタロシアニンを用い、その15重量部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10重量部およびn−ブチルアルコール300重量部からなる混合物をサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液を、上記下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。次に、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルベンジジン40部とビスフェノールZポリカーボネート樹脂(分子量40,000)60重量部とをテトロヒドロフラン230重量部及びモノクロロベンゼン100重量部に十分に溶解混合して得られた塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、130°で40分乾燥することにより、膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。得られた感光体を感光体Aとした。すなわち、感光体Aは、表面が電荷輸送層によって構成されたものである。
[感光体Bの作製]
下記に示す化合物1を2部、およびレジトップPL4852(群栄化学製)を2部、イソプロピルアルコール10部に溶解させ、保護層形成用塗布液を得た。この保護層形成用塗布液を、感光体Aと同様に作製した感光体の電荷輸送層上に浸漬塗布し、室温で30分風乾した後、140℃で45分乾燥させ、膜厚4μmの保護層を形成した。得られた感光体を感光体Bとした。すなわち、感光体Bは、表面が保護層によって構成されたものである。
【0120】
【化6】

【0121】
[実施例1]
試験機として、富士ゼロックス社製DocuCenter1010を図1に示す画像形成装置のように改造したものを用いた。すなわち、感光体には、表面が電荷輸送層によって構成された感光体Aを組み込んだ。また、クリーニング装置には、クリーニングブラシ、回収ロール、スクレーパ部材、クリーニング補助部材、および往復動機構を備えた図1に示すクリーニング装置を用いた。詳細を以下に示す。
(1)クリーニングブラシ
ブラシ材質:導電性ナイロン、繊維太さ:2デニール(約17μm)、電気抵抗:1×108Ω、毛足長さ:3mm、繊維密度:120,000本/inch2、感光体への食い込み量:約0.75mm、周速:60mm/s、回転方向:感光体の回転方向に対して逆方向、ブラシ印加バイアス:+250V
(2)回収ロール
材質:導電性カーボンを分散したフェノール樹脂、電気抵抗:1×108Ω、曲げ弾性率(JIS K7203):100MPa、磨耗量(JIS K6902):2mg、ロックウェル硬度(JIS K7202、Mスケール):120、クリーニングブラシへの食い込み量:1.0mm、周速:70mm/s、回転方向:クリーニングブラシの回転方向に対して同方向、印加バイアス:+640V
(3)スクレーパー部材
材質:SUS304、厚み:80μm、回収ロールへの食い込み量:1.3mm、フリーレングス(自由長):8.0mm
(4)クリーニング補助部材
微細繊維布として水流絡合法で作製した繊維径(太さ)6μmの不織布(ポリエステル/ナイロン、日本バイリーン製WP8085)を、保持部材として用意した高さ3mmのパッド状の発泡ウレタンに貼り付け、感光体への食いこみ量を1.5mmに設定し、感光体表面へのクリーニング補助部材の押し付け圧力は25℃の測定環境下において19.6mN/mmとした。また、クリーニング補助部材の、感光体回転方向の当接幅は、5mmとした。
(5)往復動機構
往復動機構は、図3に示す傾斜カムと回転モータ部を有するものから直動モータに置換し、往復動の速度及び振幅幅を外部から自在に制御できるように改造した。ここでは、クリーニング補助部材を、トナー像形成サイクル実施中もトナー像形成サイクル不実施中も、すなわち常時往復動させた。往復動の振幅幅は5mmであり、速度は感光体が1回転する間にクリーニング補助部材が2.9往復する速度とした。ここで用いた画像形成装置の仕様を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
以上説明した画像形成装置に、現像剤としてDocu−Center Color 500の製品現像剤を用いて、低温低湿(10℃、20%RH)及び高温高湿(28℃、80%)でそれぞれ10万枚の耐久試験を行い、感光体摩耗、および感光体傷(感光体粗さ)の評価を実施した。また、低温低湿条件下ではフィルミングの発生を評価し、高温高湿条件下では像流れの発生を評価した。これらの結果を総合評価とともに表2に示す。
【0124】
【表2】

【0125】
各評価に関する詳細は以下の通りである。
〔感光体摩耗量〕
感光体の磨耗に関しては試験前と試験後の感光体の膜厚を試験環境毎に渦電流式の膜厚計で計測しその差分にて判断した。表2に示す値は感光体1000回転あたりの摩耗量を示す。
〔感光体傷〕
感光体傷は、表面粗さ計(東京精密(株)製Surfcom1400A)を用いて10点平均粗さ(Rz)を測定し評価した。Rzの値が小さいほど、感光体の傷は少ない。判断基準は以下の通りである。
◎:Rzが1.5μm以下
○:Rzが1.5μmを超え2.5μm未満(画質的に問題ないレベル)
×:Rzが2.5μm以上(画像上に白筋発生)
〔フィルミング〕
低温低湿(10℃、20%RH)環境における耐久試験後の感光体上の付着物の有無を観察し、目視による官能評価を行った。また画像密度30%のハーフトーン画像を採取し画質への影響の有無の官能評価を行った。判断基準は以下の通りである。
◎→感光体付着物がなく、画質上も未発生
○→感光体付着物はあるが、画質上は未発生
×→感光体付着物があり、画質上も発生
〔像流れ〕
高温高湿環境(28℃、80%RH)で2万枚プリント毎に12時間以上放置後、水溶性である放電生成物を除去するため感光体表面の一部分のみを水拭きした。その後、ハーフトーン画像をプリントし、反射型濃度測定機(X−rite)により、感光体表面の水拭きした箇所と水拭きしていない箇所とに対応する画像部分の濃度差(ΔSAD)を測定し、以下の判断基準で評価した。ΔSADの値が小さいほど、像流れが生じていないことになる。尚、ハーフトーン画像は像流れの検出精度を通常よりも向上させるため画像密度30%の300線の万線スクリーンのハーフトーン画像にて判断した。
◎:ΔSADが0.15以下
○:ΔSADが0.15を超え0.3未満
×:ΔSADが0.3を超え0.4未満
××:ΔSADが0.4以上
【0126】
[実施例2]
感光体を表面が保護層によって構成された感光体Bに代えた以外は、実施例1と同じ画像形成装置(表1参照)を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表2に示す。
【0127】
[実施例3]
クリーニング補助部材の、感光体回転方向の当接幅を4mmに変え、さらに、クリーニング補助部材を、トナー像形成サイクル実施中には、往復動の振幅幅を5mmとし、速度を、感光体が1回転する間にクリーニング補助部材が2.9往復する速度にして往復動させ、500枚毎の後サイクルでは、振幅幅はトナー像形成サイクル実施中と同じにしたものの速度は感光体が1回転する間にクリーニング補助部材が10往復するように速め、感光体が30回転するまで往復動させた以外は、実施例2と同じ画像形成装置(表1参照)を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表2に示す。
【0128】
[実施例4]
クリーニング補助部材を、500枚毎の後サイクルでは、速度はトナー像形成サイクル実施中と同じにしたものの振幅幅を10mmに拡げ、感光体が30回転するまで往復動させた以外は、実施例3と同じ画像形成装置(表1参照)を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表2に示す。
【0129】
[実施例5]
クリーニング補助部材の、感光体回転方向の当接幅を5mmに変え、さらに、後サイクル動作中に代えて実施例2と同条件で走行し放置した後の朝のみ(画像形成装置電源投入後の立ち上げ動作時)に、クリーニング補助部材を、往復動の振幅幅を10mmとし、速度を、感光体が1回転する間にクリーニング補助部材が10往復する速度にして、感光体が200回転するまで往復動させた以外は、実施例4と同じ画像形成装置(表1参照)を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表2に示す。
【0130】
[実施例6]
環境検知センサの検知結果に基づいて低温低湿環境下では常時、クリーニング補助部材を、往復動の振幅幅を5mmとし、速度を、感光体が1回転する間にクリーニング補助部材が1.5往復する速度に落として往復動させ、同じく環境検知センサの検知結果に基づいて高温高湿環境下では常時、クリーニング補助部材を、往復動の振幅幅は低温低湿環境下と同じにしたもの、速度を、感光体が1回転する間にクリーニング補助部材が2.9往復する速度に上げて往復動させた以外は、実施例1と同じ画像形成装置(表1参照)を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表2に示す。
【0131】
[実施例7]
感光体を表面が保護層によって構成された感光体Bに代え、さらに高温高湿環境下では常時、クリーニング補助部材を、往復動の振幅幅を7mmに拡げて往復動させた以外は、実施例6と同じ画像形成装置(表1参照)を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表2に示す。
【0132】
[実施例8]
クリーニング補助部材の、感光体回転方向の当接幅を1.4mmに変えた以外は、実施例7と同じ画像形成装置(表1参照)を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表2に示す。
【0133】
[実施例9]
クリーニング補助部材を、繊維径3μmの不織布を用いたものに代えるとともに、クリーニング補助部材の、感光体回転方向の当接幅を4mmに変えた以外は、実施例8と同じ画像形成装置(表1参照)を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表2に示す。
【0134】
[実施例10]
クリーニング補助部材を、繊維径11μmの不織布を用いたものに代えた以外は、実施例9と同じ画像形成装置(表1参照)を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表2に示す。
【0135】
[実施例11]
クリーニング補助部材を、繊維径2μmの超極細繊維編物、トレシー(東レ(株)社製)を用いたものに代えた以外は、実施例7と同じ画像形成装置(表1参照)を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表2に示す。
【0136】
[比較例1]
クリーニング装置からクリーニング補助部材と往復動機構との双方を取り外した以外は、実施例1と同じ画像形成装置(表1参照)を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表2に示す。
[比較例2]
感光体を表面が保護層によって構成された感光体Bに代えた以外は、比較例1と同じ画像形成装置(表1参照)を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表2に示す。
[比較例3]
クリーニング補助部材を、繊維径20μmの不織布(セルロース繊維、日本バイリーン製8830CR)を用いたものに代えるとともに、クリーニング装置から往復動機構を取り外した以外は、実施例3と同じ画像形成装置(表1参照)を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表2に示す。
[比較例4]
クリーニング補助部材の、感光体回転方向の当接幅を1mmに変えるとともに、クリーニング装置から往復動機構を取り外した以外は、実施例2と同じ画像形成装置(表1参照)を用いて、実施例1と同様な試験および評価を行った。結果を表2に示す。
【0137】
いずれの比較例でも、クリーニング装置から往復動機構を取り外し、クリーニング補助部材の揺動摺擦を行わなかった。その結果、低温低湿環境下では比較例4を除いてフィルミングが発生し、高温高湿環境下ではいずれの比較例でも像流れが発生した。特に、クリーニング補助部材を配備した比較例3および4でも、高温高湿環境下では像流れが発生した。この像流れは、放電生成物の除去が不十分であり、残った放電生成物が吸湿して引き起こされたものと考えられる。これに対して、いずれの実施例でも、往復動機構によってクリーニング補助部材の揺動摺擦を行った。各実施例では、低温低湿環境下でのフィルミングや高温高湿環境下での像流れの発生が抑えられている。以上のことから、クリーニング補助部材を単に配備しただけでは放電生成物の除去が不十分であり、クリーニング補助部材を往復動させて揺動摺擦を行うことで初めて、放電生成物や外添剤等の微細な残留物を長期にわたって十分に除去することができるといえる。
【0138】
また、各実施例を詳細に分析すると、保護層が設けられていない感光体Aを用いた実施例1および6に比べて、保護層が設けられた感光体Bを用いた残りの実施例では、感光体の磨耗や傷が抑えられている。このことから、感光体には保護層を有するものを用いることが好ましいといえる。さらに、常時同じ往復動動作条件で揺動摺擦を行った実施例2に比べて、振幅幅を拡げたり速度を速めたりして掻取能力を高めた後サイクル等の制御サイクルを入れた実施例3〜5の方が、高温高湿環境下での像流れの発生が抑えられている。この結果から、振幅幅を拡げたり速度を速めたりして掻取能力を高めた制御サイクルを入れることで、放電生成物をより長期にわたって十分に除去することができるといえる。また、クリーニング補助部材の、感光体回転方向の当接幅を1.4mmにした実施例8に比べて当接幅を1.5mm以上にした実施例7では、フィルミングや像流れの発生がより抑えられており、当接幅を1.5mm以上にすることが好ましいといえる。さらにまた、クリーニング補助部材の繊維径(太さ)を11μmにした実施例10に比べて繊維径を10μm以下にした実施例9でも、フィルミングや像流れの発生がより抑えられており、繊維径(太さ)を10μm以下にすることが好ましいといえる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の一実施形態である画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態におけるクリーニング装置が備える往復動機構と制御部を示す図である。
【図3】図1に示す感光体の断面構造を示す模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態の画像形成装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0140】
1 画像形成装置
10 感光体
101 保護層
110 表面
20 帯電器
30 露光器
40 現像器
50 転写ロール
61 クリーニング前帯電器
62 クリーニング前除電器
70 クリーニング装置
71 クリーニングブラシ
72 回収ロール
73 スクレーパ部材
74 廃トナー搬送オーガ
75 クリーニング補助部材
751 保持部材
752 繊維
76 往復動機構
761 傾斜カム
762 駆動モータ
77 制御部
78 環境検知センサ
80 除電ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の転写領域で被転写面に転写するトナー像を表面に担持し該表面を中心軸の周りで循環移動させることにより該トナー像を該転写領域まで搬送する像担持体の、該被転写面にトナー像が転写された後の表面に残留した残留物を該表面から除去するクリーニング装置において、
前記像担持体の、前記被転写面にトナー像が転写された後の表面に残留した残留トナーを該表面から除去するクリーニング手段と、
前記クリーニング手段よりも前記像担持体表面の循環移動方向上流側で前記像担持体の、前記被転写面にトナー像が転写された後の表面に接した複数の繊維を有する繊維体と、
前記中心軸の延在方向に、前記繊維体と前記像担持体表面とを相対的に往復動させる往復動機構とを備えたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
中心軸の周りを所定方向に循環移動する感光体表面を帯電器によって帯電し帯電後の感光体表面に露光光を照射することにより該感光体表面に静電潜像を形成し該静電潜像をトナーで現像して該感光体表面にトナー像を形成するトナー像形成サイクルによって該感光体表面に形成されたトナー像を、所定の被転写面に転写し最終的に記録媒体上に定着することにより該記録媒体上に定着トナー像からなる画像を形成する画像形成装置において、
前記感光体の、前記被転写面にトナー像が転写された後の表面に残留した残留トナーを該表面から除去するクリーニング手段と、
前記クリーニング手段よりも前記感光体表面の循環移動方向上流側で前記感光体の、前記被転写面にトナー像が転写された後の表面に接した複数の繊維を有する繊維体と、
前記中心軸の延在方向に、前記繊維体と前記感光体表面とを相対的に往復動させる往復動機構とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−33616(P2007−33616A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214075(P2005−214075)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】