説明

クリーニング装置及び画像形成装置

【課題】撹拌部材を駆動するための新たな駆動手段や駆動伝達部材を設けることなく、貯留空間内に貯留されたトナーの撹拌を促進し、像担持体上にトナーの固着が発生することを抑制することが出来るクリーニング装置を提供すること。
【解決手段】像担持体7に接触して前記像担持体上のトナーを除去するクリーニング部材6A1と、前記クリーニング部材により除去されたトナーが貯留されるとともに前記像担持体に接触する領域を有する貯留空間の一部を画定する回転可能な貯留部材6A3と、前記貯留空間内に移動自在に配設され前記貯留部材の回転に伴って前記貯留空間内を移動して貯留されたトナーを撹拌する撹拌部材6A2と、を有することを特徴とするクリーニング装置6A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上のトナーを除去するクリーニング装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体上にトナー像が形成され、そのトナー像が転写材に転写された後、像担持体上の転写残トナーがクリーニング装置によりクリーニングされる。クリーニング装置にはクリーニングブレードを用いるものがよく知られているが、クリーニングブレードは、トナーを除去する効果が大きく、機構的にもコンパクトな構成にできるため、広く用いられている。
【0003】
クリーニングブレードを用いたクリーニング装置においては、トナーを確実にスクレープするため、クリーニングブレードの先端をある大きさ以上の力で像担持体に圧接させるために、像担持体とクリーニングブレードとの間には大きな摩擦を発生させる。この摩擦、あるいはこの摩擦の増大により、クリーニングブレードの捲れ、クリーニングブレードエッジの損傷、トナーフィルミング、あるいは、画像のピッチムラ等の問題が発生する。
【0004】
一方、トナーは潤滑剤(摩擦軽減剤)として機能することが知られており、この機能を有効に利用して、圧接位置でクリーニングブレードにより像担持体上から除去されたトナーを圧接位置より上流側に一時的に貯留する貯留空間を形成し、貯留されたトナーの一部を潤滑剤として像担持体に積極的に供給することで上記の問題を解決させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載のクリーニング装置では、貯留空間は、像担持体である中間転写体と、クリーニングブレードの上流側で中間転写体に当接する回転可能なスポンジローラと、先端がスポンジローラに当接するトナー排出規制部材とで囲まれて形成され、スポンジローラの回転により貯留空間内の余剰トナーを排出し、貯留されるトナー量を一定にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−249915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のクリーニング装置は、貯留トナーの撹拌能力が低いため、例えば、用紙幅サイズの短い画像を連続プリントする場合、貯留空間に新たなトナーが供給されない非画像領域では、像担時体に接する部分の貯留トナーが滞留して、像担持体との摩擦熱等により、像担持体上にトナーの溶融固着(以下、固着と記す)が発生する。
【0008】
トナーの固着は、クリーニングブレードでも除去できず、核として発生した時点では画像不良に指摘されないが、その面積と厚みは次第に成長し最終的に画像不良に至るものである。
【0009】
このようなトナー固着を抑制するには、非画像領域に対応する貯留空間の像担時体に接する部分のトナーと、貯留空間内部のトナーや画像領域の像担持体から除去されたトナーとを撹拌してトナーの入れ替わりを促進する必要がある。
【0010】
例えば、撹拌スクリューのような撹拌部材を貯留空間内に固定的に配設し、この部材を回転させることで撹拌することも考えられるが、撹拌部材を回転駆動するための新たな駆動手段や駆動伝達部材を設ける必要があるという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、上記のような問題を解決し、撹拌部材を駆動するための新たな駆動手段や駆動伝達部材を設けることなく、貯留空間内に貯留されたトナーの撹拌を促進し、像担持体上にトナーの固着が発生することを抑制することが出来るクリーニング装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的は下記の発明により達成される。
1.
像担持体に接触して前記像担持体上のトナーを除去するクリーニング部材と、
前記クリーニング部材により除去されたトナーが貯留されるとともに前記像担持体に接触する領域を有する貯留空間の一部を画定する回転可能な貯留部材と、
前記貯留空間内に移動自在に配設され前記貯留部材の回転に伴って前記貯留空間内を移動して貯留されたトナーを撹拌する撹拌部材と、
を有することを特徴とするクリーニング装置。
2.
前記貯留部材は前記貯留空間の底部を画定し、前記撹拌部材の比重が前記トナーの比重よりも大きいことを特徴とする1に記載のクリーニング装置。
3.
前記撹拌部材は、回転している前記貯留部材に接触して弾かれることにより前記貯留空間内を移動して貯留されたトナーを撹拌することを特徴とする1または2に記載のクリーニング装置。
4.
前記貯留部材は回転により前記貯留空間に貯留されたトナーの一部を前記貯留空間から排出し、
前記撹拌部材は前記貯留空間から排出されない大きさを有することを特徴とする1から3のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
5.
前記撹拌部材の材質は前記貯留部材の材質と同じであることを特徴とする1から4のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
6.
前記撹拌部材の材質は前記クリーニング部材の材質と同じであることを特徴とする1から4のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
7.
前記撹拌部材は表面に凹凸を有することを特徴とする1から6のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
8.
前記撹拌部材は前記貯留空間内に複数配設されることを特徴とする1から7のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
9.
1から8のいずれか1項に記載のクリーニング装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、撹拌部材を駆動するための新たな駆動手段や駆動伝達部材を設けることなく、貯留空間内に貯留されたトナーの撹拌を促進し、像担持体上にトナーの固着が発生することを抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るクリーニング装置6Aを有するカラー画像形成装置Aの全体構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るクリーニング装置6Aの要部断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るクリーニング装置6Aの中間転写体7、クリーニングブレード6A1、貯留空間TS、貯留部材6A3、及びトナー排出規制部材6A4の幅方向における長さ関係を示す平面図である。
【図4】用紙幅サイズの短い画像をプリントする場合の中間転写体7上に画像が形成された画像領域と、全く形成されなかった非画像領域の一例を示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る攪拌部材6A2の構成の例を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るクリーニング装置6Aにおける他の実施形態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を、実施の形態を用いて説明するが、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るクリーニング装置6Aを有するカラー画像形成装置Aの全体構成を示す断面図である。
【0017】
このカラー画像形成装置Aはタンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数の画像形成部10Y、10M、10C、10K、ベルト状の中間転写体7、クリーニング装置6A、一次転写手段5Y、5M、5C、5K、二次転写手段8、定着装置11、及び給紙装置20等を有する。
【0018】
カラー画像形成装置Aの上部の原稿台上に載置された原稿は、画像読取装置Bの原稿画像走査露光装置の光学系により画像が走査露光され、ラインイメージセンサに読み込まれる。ラインイメージセンサにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、露光手段3Y、3M、3C、3Kに入力される。
【0019】
イエロー(Y)色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としての感光体ドラム1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y及びクリーニング手段6Yを有する。マゼンタ(M)色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としての感光体ドラム1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M及びクリーニング手段6Mを有する。シアン(C)色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としての感光体ドラム1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C及びクリーニング手段6Cを有する。黒(K)色の画像を形成する画像形成部10Kは、第1の像担持体としての感光体ドラム1K、帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K及びクリーニング手段6Kを有する。帯電手段2Yと露光手段3Y、帯電手段2Mと露光手段3M、帯電手段2Cと露光手段3C及び帯電手段2Kと露光手段3Kとは、潜像形成手段を構成する。
【0020】
感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kとしては、OPC感光体やaSi感光体等の周知のものが用いられるが、本実施の形態では、負帯電性のOPCが用いられている。帯電手段2Y、2M、2C、2Kとしては、スコロトロン、コロトロン等のコロナ放電手段が用いられるが、スコロトロン放電手段が好ましく用いられる。露光手段3Y、3M、3C、3Kとしては、レーザ、LEDアレイ等、画像データに従って発光する発光素子が用いられる。
【0021】
本発明に係る像担持体(第2の像担持体)としてのベルト状の中間転写体(以下、単に中間転写体という)7は、半導電性を有し、複数の支持ローラ71、72、及びバックアップローラ75等により巻回され、循環移動可能に支持される。本実施の形態では、中間転写体7は、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに接する面が鉛直になるように支持されている。
【0022】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色のトナー像は、回転する中間転写体7の表面に一次転写手段5Y、5M、5C、5Kにより逐次転写されて(一次転写)、合成されたカラー画像が形成される。
【0023】
給紙装置20の給紙カセット21に収容された転写材Pは、給紙手段(第1給紙部)22により給紙され、給紙ローラ23、24、25、レジストローラ(第2給紙部)26を経て、二次転写手段8に搬送され、転写材P上にカラー画像が転写される(二次転写)。カラー画像が転写された転写材Pは、定着装置11により熱と圧力とを加えられ、転写材P上のカラートナー画像(或いは単色トナー像)が定着されて転写材P上に固定され、排紙ローラ27から排出され、機外の排紙トレイ28上に載置される。
【0024】
一方、二次転写手段8により転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した中間転写体7は、クリーニング装置6Aにより残留トナーが除去される。
【0025】
符号の12は、カラー画像形成装置Aを動作させるための操作部であり、13は、カラー画像形成装置Aの各部の動作を制御する制御手段である。操作部12は、図示しないプリントスタートボタン、プリント枚数設定ボタン等を有している。画像形成(プリント)を開始させる動作は、プリント枚数設定ボタンにプリント枚数が入力され、その他図示しないボタンにより必要な設定がなされた後、プリントスタートボタンのオンにより開始される。
【0026】
次に、クリーニング装置6Aの詳細について、図2を用いて説明する。
【0027】
図2はクリーニング装置6Aの要部断面図である。
【0028】
6A6はケーシングで、中間転写体7側に開口を有する箱形形状を呈し、クリーニング装置6Aを構成する各部材を取り付け、かつ、中間転写体7から除去したトナーを収容する収容部を有する。
【0029】
6A1は、ウレタンゴム等の弾性体からなるクリーニングブレード(クリーニング部材)で、ケーシング6A6に接着剤等により固定され、先端が、中間転写体7の回転方向R1と反対方向(カウンター方向)に向いた状態で、中間転写体7に圧接位置P1で圧接するように配設されている。
【0030】
6A3は、クリーニングブレード6A1により除去されたトナーが貯留される貯留空間TSの一部を画定する回転可能な貯留部材である。本実施形態の貯留部材6A3は、スポンジローラ、ゴムローラ、樹脂ローラ等のローラからなり、中間転写体7の回転方向R1にみて、クリーニングブレード6A1と中間転写体7との圧接位置P1よりも上流側で、中間転写体7に当接するように配設され、貯留空間TSの底部を画定している。
【0031】
貯留部材6A3は、ケーシング6A6に回転自在に支持され、図示しない駆動手段により、中間転写体7との当接位置において、中間転写体7と同方向(図2において矢印R2で示す方向)に回転し、その周速が中間転写体7の周速よりも遅くなるように駆動される。
【0032】
6A4は、弾性を有するシート部材からなるトナー排出規制部材であり、本実施形態ではPET(ポリエチレンテレフタレート)シートからなり、その一端は、貯留部材6A3の表面に、貯留部材6A3と中間転写体7との当接位置と反対側の位置P2で当接し、他端は、貯留部材6A3の上方に位置するケーシング6A6に両面テープ等により固定されている。
【0033】
この様な構成により、ケーシング6A6、中間転写体7、クリーニングブレード6A1、貯留部材6A3、及び、トナー排出規制部材6A4は、貯留空間TSを形成する。貯留空間TSは、中間転写体7の回転方向R1にみて、クリーニングブレード6A1と中間転写体7との圧接位置P1の上流側に、圧接位置P1から貯留部材6A3と中間転写体7の当接位置までの間で中間転写体7との接触領域が形成される。
【0034】
6A2は、貯留空間TS内に移動自在に配設され貯留部材6A3の回転に伴って貯留空間TS内を移動して貯留されたトナーを撹拌する攪拌部材である。本実施形態の攪拌部材6A2は後で詳しく説明するが、図2及び図5(a)に示すような球体の形態を有する。
【0035】
6A5はケーシング6A6の底部に設けられた回収スクリューであり、貯留部材6A3の回転により貯留空間TSから排出されてケーシング6A6の底部に貯溜したトナーを図の紙面に対し垂直方向に搬送し、ケーシング6A6外へ排出する。
【0036】
図3は、中間転写体7、クリーニングブレード6A1、貯留空間TS、貯留部材6A3、及びトナー排出規制部材6A4の幅方向における長さ関係を示す平面図である。
【0037】
本実施形態においては、図3に示すように、幅方向にみて、中間転写体7の長さL1=362mm、クリーニングブレード6A1の長さL2=340mm、貯留空間TSの長さL3=340mm、貯留部材6A3の長さL4=340mm、トナー排出規制部材6A4の長さL5=340mmであり、各々の長さは、L1>L2=L3=L4=L5の関係になるように構成されている。なお、貯留空間TSの幅方向の側面はケーシング6Aにより画定されている。
【0038】
また、クリーニングブレード6A1の長さL2は最大用紙幅(本実施形態ではA3幅で297mm)よりも大きくなるように構成され、最大印字幅に対応した長さに設定されている。
【0039】
上述した構成のクリーニング装置6Aの動作について説明する。
【0040】
工場からの画像形成装置出荷直後や、メンテナンス作業でのクリーニング装置交換後の使用開始前に、あらかじめ最大印字幅L2でベタのトナー画像を形成し、強制的に貯留空間TSにトナーを送り込んでおく。これにより、中間転写体面のクリーニングブレード6A1の長さL2幅に対応する全面に適切な量のトナーが供給された状態となるので、装置の使用が開始されたときに、中間転写体面とクリーニングブレードとの摩擦抵抗は抑えられ、クリーニングブレードの巻き込み現象を防ぐことができる。
【0041】
画像形成開始時は、始めに操作部12におけるプリント枚数設定ボタンが設定され、次にプリントスタートボタンがオンされ、制御手段13は、中間転写体7を回転方向R1に回転させるともに、貯留部材6A3を回転方向R2に回転させる。同時に制御手段13は、カラー画像形成装置Aの各部に指令を発し、画像形成動作を開始させる。
【0042】
画像形成が開始され、中間転写体7上のトナー像が二次転写位置で用紙に転写された後、中間転写体7上に残留したトナーは、前述した貯留空間TSに一時的に貯留される。
【0043】
貯留部材6A3は、画像形成動作中は常時回転し、貯留空間TSに貯留されるトナーが一定量を超えると、その圧力によりトナー排出規制部材6A4が貯留部材6A3との当接部P2から離間するように変形し、形成された開口から余剰トナーが排出され、貯留されるトナー量が一定になるように維持される。余剰トナーが排出されるとトナー排出規制部材6A4は、貯留トナーから受ける圧力が小さくなり、その弾性によって貯留部材6A3に当接する状態に戻る。
【0044】
換言すると、貯留空間TSに貯留されるトナー量が増加すると、トナー排出規制部材6A4は、弾性を有するPETシートで構成されているため、所謂、圧力調整弁のような働きをし、貯留空間TSにトナーを一定量を維持するように作用する。
【0045】
従って、印字率が高い状態で連続して画像形成が行われた場合でも、貯留空間TSに保持されたトナーがパッキング状態になったり、クリーニングブレードからすり抜けてしまうことを防止できる。
【0046】
なお、トナーは貯留部材6A3の回転に伴って排出されるものであり、開口が形成されても貯留部材6A3が回転しないとトナーは排出されない。前述のように貯留部材6A3はその周速が中間転写体7の周速よりも遅くなるように駆動される。これにより、貯留部材6A3のトナー排出能力を適正に設定し貯留空間に安定的にトナーを貯留できる。
【0047】
図4は、用紙幅サイズの短い画像をプリントする場合の中間転写体7上に画像が形成された画像領域と、全く形成されなかった非画像領域の一例を示す、平面図である。
【0048】
RGは、A4縦置き用紙が中間転写体7に二次転写部で対向して接触する領域である。
【0049】
中間転写体7における画像領域は、図示の破線S2と破線S3の間の領域である。Lgは中間転写体7における画像領域における幅方向の長さで、中間転写体7におけるA4縦置き用紙における幅方向の長さに対応し、Lg=210mmである。前述のようにL1は中間転写体における幅方向の長さで、L1=362mmであり、L2はブレードにおける幅方向の長さで、L2=340mmである。
【0050】
中間転写体7の非画像領域は、クリーニングブレード6A1が圧接する範囲であり、且つ画像領域の外側に位置する領域である。図示の破線S1と破線S2の間、及び破線S3と破線S4の間の領域である。図示のLngが非画像領域における幅方向の長さで、Lng=65mmである。
【0051】
前述の特許文献1のクリーニング装置のように貯留トナーの撹拌能力が低い場合は、このような用紙幅サイズの短い画像を連続プリントする場合、貯留空間に新たなトナーが供給されない非画像領域では、中間転写体に接する部分の貯留トナーが滞留して、中間転写体上にトナーの固着が発生する。
【0052】
本実施形態では、貯留空間TS内のトナーの攪拌手段として移動自在な攪拌部材6A2を貯留空間TS内に配設させておくことにより、非画像領域に対応する貯留空間TSの中間転写体7に接する部分のトナーと、貯留空間内部のトナーや画像領域の中間転写体7から除去されたトナーとを撹拌してトナーの入れ替わりを促進してトナーの固着を抑制することができる。
【0053】
貯留空間TS内にトナーが貯留した状態で貯留部材6A3を回転させることにより、攪拌部材6A2は貯留部材6A3の回転に伴って貯留空間TS内を移動して貯留されたトナーを撹拌する。
【0054】
具体的には、貯留部材6A3の回転により貯留されたトナーと攪拌部材6A2が流動することで、攪拌部材6A2は貯留空間TS内を移動して貯留されたトナーを撹拌する。また、攪拌部材6A2は貯留部材6A3の表面に接触して弾かれて貯留空間TS内を移動する動作を繰り返すことにより、トナーが貯留した貯留空間TS内を移動し、トナーを攪拌する。攪拌部材6A2の大きさは当接部P2に形成される開口から排出されない大きさとし、個数は1つでも複数でも良いが、撹拌効果を高めるため複数とすることが好ましい。
【0055】
本実施形態では、当接部P2に形成される開口は略長方形形状であるので、その短辺の長さを、トナーの粒径より大きく、攪拌部材6A2の大きさ(図5(a)に示す球体の場合はその直径d1)より小さくすることで、トナーだけが当接部P2の開口を超えて貯留空間TS外に排出される。攪拌部材6A2は、開口を超えられず、貯留空間TS内に留まり、再び撹拌する。
【0056】
また、攪拌部材6A2は図5(a)に示す球体の形状を有しているが、これに限定されるものではない。例えば、図5(b)に示す複数個の球体が連なった連球体の形状や図5(c)に示す十字型の形状の他、棒状、多面体形状でもよい。
【0057】
図5(b)や(c)は表面に凹凸を設けた撹拌部材の例であり、トナーの撹拌をより一層促進することができる。また、貯留部材の周面全面あるいは一部に凹凸を設けることでもトナーの撹拌を促進することができる。
【0058】
固定的に配設された撹拌スクリューのような従来の撹拌部材は、駆動手段や駆動伝達部材が必要になるだけでなく、撹拌部材によって撹拌できる範囲は限られる。
【0059】
本実施形態のクリーニング装置6Aでは、移動自在に配設された撹拌部材6A2が、貯留部材6A3の回転に伴って貯留空間TS内を移動するため、撹拌部材6A2を移動させるための駆動手段や駆動伝達部材を設けることなく、貯留空間TS内のトナーを撹拌し、トナー固着が発生することを抑制することが出来る。また、移動自在に配設された撹拌部材6A2によりトナーを撹拌することで従来の構成よりも広い範囲を撹拌でき、トナー撹拌性能を向上させることができる。
【0060】
また、攪拌部材6A2の材質としては、貯留部材6A3やクリーニングブレード6A1の材質と同じものを用いることが好ましい。これにより、撹拌部材6A2が中間転写体7に接触しても傷をつけることがほとんどなく、中間転写体7の損傷を防ぐことができる。
【0061】
また、攪拌部材6A2として、トナーより比重の重いものを使用すると、トナーより重いので、自重により沈降して貯留空間TSの底部を構成する貯留部材6A3と接触しやすくなり、攪拌部材6A2は貯留部材6A3の表面に接触して弾かれて貯留空間TS内を移動する動作を繰り返すことにより、撹拌効果を高めることが可能になる。
【0062】
具体的には、トナーの比重は通常1.05g/cmであるので、撹拌部材の材質は、NBR(アクリルニトリルーブタジエンゴム:比重1.21〜1.28g/cm)やポリウレタン(比重1.22g/cm)が好ましい。
【0063】
NBRはスポンジローラとして貯留部材6A3に、ポリウレタンはクリーニングブレード6A1にそれぞれ好適に用いられる。
【0064】
図6は本発明に係るクリーニング装置6Aにおける他の実施形態を示す要部断面図である。
【0065】
ここでは、図2に示す本発明に係るクリーニング装置6Aと異なる点について詳しく説明する。
【0066】
貯留空間TSの底部を画定する貯留部材6A3は、その形態が図2に示すローラと大きく異なり、ベルトとなっている。ベルト状の貯留部材6A3は、複数の支持ローラ6A7、6A8等により巻回され、回転可能に支持される。
【0067】
撹拌部材6A2は、ベルト状の貯留部材6A3の回転に伴って貯留空間TS内を移動して貯留されたトナーを撹拌する。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【0069】
例えば、本実施の形態においては、クリーニング装置を中間転写体に適用したが、これに拘ることなく、中間転写体にトナー像を転写する感光体、あるいは、転写材に直接トナー像を転写する感光体に適用しても良い。また、像担持体の形状は、ベルトに限らず、ドラムでもよい。
【0070】
また、本発明に係るクリーニング装置は、前記した複写機の他、プリンタ及びファクシミリ等の種々の画像形成装置に組み込むことができる。また、カラー画像形成装置に適用した実施形態について説明したが、モノクロの画像形成装置についても適用できることは言うまでもない。
【実施例】
【0071】
以下に、実施例を挙げることにより、本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
実験方法:図2に示すクリーニング装置6Aを備えるカラー画像形成装置Aを用い、環境条件を温度30℃、湿度80%に設定し、A4縦置き用紙内に平均印字率5%の画像を形成するプリントを連続して出力する。そして、連続プリントの間に1000プリント(1kp)毎にA3サイズの用紙にブラックトナーの全面ベタの画像をプリントするテスト画像を出力する。テスト画像の出力後に中間転写体上の画像領域(通紙領域)、非画像領域(非通紙領域)を観察し、トナー固着の発生状況を評価する。また、出力されたテストサンプルの画質も同時に評価される。
【0072】
この評価実験で中間転写体7上の画像領域と、全く形成されなかった非画像領域は図4に示す通りであり、実施形態において説明済みのため詳細な説明は省略する。
【0073】
中間転写体、クリーニング装置及びトナーの基本構成を表1に示す。連続プリント中は、中間転写体7は、プロセス速度300mm/secの周速で常時回転し、貯留部材6A3は、180mm/secの周速で常時回転している。なお、トナー排出規制部材は、厚さ0.05mmのPETシートを用いた。
【0074】
【表1】

【0075】
撹拌部材の構成を表2及び図5(a)に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
トナー固着の評価方法は表3に示す評価基準に基づき目視判定した。×、△×では実用に耐えない。△でも実用上問題ないが○△が好ましく、○がより好ましい。
【0078】
【表3】

【0079】
実施例1の実験に関する評価結果を表4に示す。
【0080】
【表4】

【0081】
以上の評価結果に示すように、実施例1のクリーニング装置を有する画像形成装置では、全くトナー像のない非画像領域を連続10kp継続させるような過酷な画像形成に対し、8kpの時点で非画像領域にわずかにトナー固着が発生したが実用上問題なく優れた耐久性能を有するクリーニング装置であることが確認できた。
(比較例1)
撹拌部材を配設しない点以外は実施例1と同様の実験を行い、同様の方法で評価した。
【0082】
比較例1の実験に関する評価結果を表5に示す。
【0083】
【表5】

【0084】
以上の評価結果に示すように、比較例1のクリーニング装置を有する画像形成装置では、非画像領域では3kpの時点で小さなトナー固着が発生し、6kpの時点でトナー固着による画像不良が発生した。このように比較例1のクリーニング装置を有する画像形成装置では、全くトナー像のない非画像領域が連続して6kp以上に継続させるような実施環境では、トナー固着による画像不良の問題が発生することが確認された。
【0085】
また、画像領域でも、8kpの時点でトナー固着による画像不良が発生した。これは、印字率が低いため画像領域でもトナー像が形成されず貯留空間に新たなトナーが供給されない領域が存在し、この領域の像担時体に接する貯留トナーが滞留して、トナーの固着と画像不良が発生したものである。
(実施例2)
以下の表6及び図5(b)に示す撹拌部材を配設した以外は実施例1と同様の実験を行い、同様の方法で評価した。
【0086】
【表6】

【0087】
実施例2の実験に関する評価結果を表7に示す。
【0088】
【表7】

【0089】
以上の評価結果に示すように、実施例2のクリーニング装置を有する画像形成装置では、全くトナー像のない非画像領域を連続10kp継続させるような過酷な画像形成に対し、9kpの時点で非画像領域にわずかにトナー固着が発生したが実用上問題なく優れた耐久性能を有するクリーニング装置であることが確認できた。
(実施例3)
以下の表8及び図5(c)に示す撹拌部材を配設した以外は実施例1と同様の実験を行い、同様の方法で評価した。
【0090】
【表8】

【0091】
実施例3の実験に関する評価結果を表9に示す。
【0092】
【表9】

【0093】
以上の評価結果に示すように、実施例3のクリーニング装置を有する画像形成装置では、全くトナー像のない非画像領域を連続10kp継続させるような過酷な画像形成に対し、トナー固着を全く発生させない優れた耐久性能を有するクリーニング装置であることが確認できた。
(実施例4)
図6に示すベルト状の貯留部材を有するクリーニング装置を用い、撹拌部材の個数を10個に増やした以外は実施例1と同様の実験を行い、同様の方法で評価した。なお、ベルトの材質はポロビニリデンフルオライド(PVDF)である。
【0094】
実施例4の実験に関する評価結果を表10に示す。
【0095】
【表10】

【0096】
以上の評価結果に示すように、実施例1とほぼ同様の効果が得られた。
【0097】
以上の結果をまとめると、移動自在な撹拌部材を配設した実施例1〜4は、配設していない比較例1と比べてトナー固着の発生が抑制されている。
【0098】
また、表面に凹凸を有する撹拌部材を用いた実施例2、3は実施例1,4と比べても、トナー固着の発生がさらに抑制されている。これは、撹拌部材の表面に設けられた凹凸形状にトナーが引っ掛かることによって、トナーを撹拌する機能が向上したことと、撹拌部材の貯留部材との接触による回転運動が凹凸形状で促進されたことによるものであると推察される。
【符号の説明】
【0099】
1Y、1M、1C、1K 感光体ドラム(第1の像担持体)
6A クリーニング装置
6A1 クリーニングブレード
6A2 撹拌部材
6A3 貯留部材
7 中間転写体(像担持体、第2の像担持体)
8 二次転写手段
12 操作部
13 制御手段
A カラー画像形成装置
R1 中間転写体回転方向
R2 貯留部材回転方向
TS 貯留空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に接触して前記像担持体上のトナーを除去するクリーニング部材と、
前記クリーニング部材により除去されたトナーが貯留されるとともに前記像担持体に接触する領域を有する貯留空間の一部を画定する回転可能な貯留部材と、
前記貯留空間内に移動自在に配設され前記貯留部材の回転に伴って前記貯留空間内を移動して貯留されたトナーを撹拌する撹拌部材と、
を有することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記貯留部材は前記貯留空間の底部を画定し、前記撹拌部材の比重が前記トナーの比重よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記撹拌部材は、回転している前記貯留部材に接触して弾かれることにより前記貯留空間内を移動して貯留されたトナーを撹拌することを特徴とする請求項1または2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記貯留部材は回転により前記貯留空間に貯留されたトナーの一部を前記貯留空間から排出し、
前記撹拌部材は前記貯留空間から排出されない大きさを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記撹拌部材の材質は前記貯留部材の材質と同じであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記撹拌部材の材質は前記クリーニング部材の材質と同じであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項7】
前記撹拌部材は表面に凹凸を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項8】
前記撹拌部材は前記貯留空間内に複数配設されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のクリーニング装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−133267(P2012−133267A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287158(P2010−287158)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】