説明

クリーニング装置

【課題】現像剤に含まれる研磨粒子が少なくても、ブラシローラに担持される研磨粒子を増して感光体から効率的に放電生成物を摺擦除去できるクリーニング装置を提供する。
【解決手段】クリーニング装置5は感光ドラム1にクリーニングブレード45を当接させて転写残トナーを除去する。クリーニングブレード45の上流側にファーブラシ53を配置して、トナーに混合した研磨粒子を付着した状態で回転させ、感光ドラム表面を研磨して放電生成物を除去する。リサイクル手段(51、52)がブラシローラ(53)から研磨粒子及びトナーを回収した後に研磨粒子を分離してブラシローラ(53)に再付着させる。回収ローラ51に当接して研磨粒子及びトナーを掻き取る回収ブレード52を有し、回収ローラ51の表面に、回収ローラの長手方向における十点平均粗さがトナーの平均粒径よりも小さく研磨粒子の平均粒径よりも大きい凹凸を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨粒子を含むトナーを感光体表面から除去するクリーニング装置、詳しくは、トナーに含まれる研磨粒子が少なくても、感光体を研磨粒子で効率的に摺擦して放電生成物を除去できる構造に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体に形成したトナー像を直接的、又は中間転写体を介して間接的に記録材に転写して熱定着させる画像形成装置が広く用いられている。画像形成装置は、感光体の1回転のサイクルの中で、感光体表面の帯電、トナーを用いたトナー像の形成、トナー像の転写、転写後のクリーニングを行っている。そして、感光体の表面のクリーニングに関しては、回転する感光体に対してゴムブレードをカウンタ方向に当接させるクリーニングブレード方式が一般的である。
【0003】
しかし、先端にトナーを担持したクリーニングブレードで連続的に摺擦を受けると、感光体の表面の感光層が摩耗するため、感光層の表面硬度を増して耐摩耗性を高めた感光体が実用化されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、耐摩耗性を高めた感光体では、クリーニングブレードで放電生成物を十分に除去できなくなるため、高湿度環境において、感光体の表面抵抗が低下して画像不良(画像流れ)が発生し易くなる。このため、クリーニングブレードの上流に高速回転するブラシローラを配置し、研磨粒子を含むトナーを担持したブラシローラで感光体を摺擦して、放電生成物を除去する提案がされている(特許文献2)。
【0005】
特許文献3には、電圧を印加した導電性のブラシローラを感光体に摺擦させてトナーを除去する静電ブラシ方式のクリーニング装置が示される。ここでは、クリーニングブレードの上流側に高速回転するブラシローラが配置される。そして、感光体、ブラシローラ、金属ローラの順序に電位勾配を形成して、感光体から回収したトナーが順送りされ、金属ローラに移転したトナーは、金属ローラに当接する回収ブレードによって掻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−166520号公報
【特許文献2】特開2002−182536号公報
【特許文献3】特開2007−132999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
感光層の表面硬度が増して感光体のさらなる長寿命化が実現された結果、特許文献2、3に示される既存のクリーニング装置では、放電生成物の除去がさらに困難になっている。また、単位時間当たりの画像形成枚数を増すために感光体の周速度が高められた結果、感光体に対するトナーの融着や樹脂皮膜汚れ(フィルミング)が発生し易くなっている。
【0008】
そこで、従来よりも現像剤に含まれる研磨粒子の割合を増して、既存のクリーニング装置のクリーニング性能を高めて対処することが提案されたが、現像剤に含まれる研磨粒子が増えると、様々な弊害が発生することが判明した。すなわち、帯電ローラの表面汚れに伴う帯電性能の低下、転写ローラの表面汚れに伴う記録材のスリップ、現像装置内でのトナーの帯電性能の低下等である。
【0009】
本発明は、現像剤に含まれる研磨粒子が少なくても、ブラシローラに担持される研磨粒子を増して感光体から効率的に放電生成物を摺擦除去できるクリーニング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のクリーニング装置は、回転して感光体を摺擦して感光体表面から研磨粒子及びトナーを除去するブラシローラを備えたクリーニング装置において、前記ブラシローラから研磨粒子及びトナーを回収した後に研磨粒子を分離して前記ブラシローラに再付着させるリサイクル手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクリーニング装置では、ブラシローラから回収した研磨粒子及びトナーから研磨粒子を分離してブラシローラに再付着させる。このため、ブラシローラは、感光体から移転した以上の研磨粒子を保持して感光体を摺擦する。
【0012】
従って、現像剤に含まれる研磨粒子が少なくても、ブラシローラに担持される研磨粒子を増して感光体から効率的に放電生成物を摺擦除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】クリーニング装置の構成の説明図である。
【図3】比較例のクリーニング装置の構成の説明図である。
【図4】回収ローラ表面の表面粗さの説明図である。
【図5】トナーの平均粒径と回収ローラ表面の表面粗さの関係の説明図である。
【図6】ファーブラシのファイバー径と回収ローラ表面の表面粗さの関係の説明図である。
【図7】実施例2のクリーニング装置の構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、一般的な金属ローラとゴムブレードの当接部よりも研磨粒子が回収ブレードをすり抜け易い限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0015】
従って、ブラシローラを用いて転写残トナーを感光体から除去するクリーニング装置であれば、どのようなクリーニング装置でも実施できる。研磨粒子を混合した現像剤を用いる画像形成装置に限らず、研磨粒子を現像装置、感光体、クリーニング装置等に直接注入する形式の画像形成装置でも実施できる。中間転写型、記録材搬送型、直接転写型、タンデム型、1ドラム型、フルカラー、モノクロ、一成分現像剤、二成分現像剤の区別なく、ブラシローラを用いたクリーニング装置が搭載される画像形成装置で実施できる。
【0016】
なお、特許文献1〜3に示される画像形成装置、クリーニング装置に関する一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
【0017】
<画像形成装置>
電子写真プロセスを利用して画像形成を行う複写機、レーザービームプリンタ等の画像形成装置は、基本的には、回転ドラム型を一般的とする電子写真感光体(感光体)を有する。また、感光体の面を所定の極性・電位に一様に帯電させる帯電手段と、感光体の帯電処理面に静電像を形成させる画像露光手段と、静電像をトナー像として現像する現像手段とを有する。さらに、感光体面から中間転写体又は記録材へ転写させる転写手段と、記録材側に転写させたトナー像を定着画像として定着処理させる定着手段とを有する。そして、トナー像転写後の感光体面から転写残トナーを除去して感光体面を清掃するクリーニング手段を有する。定着手段で定着処理された記録材が画像形成物(コピー、プリント)として排出され、クリーニング手段で清掃された感光体は繰り返して画像形成に供される。
【0018】
図1は本発明の画像形成装置の構成の説明図である。
【0019】
図1に示すように、画像形成装置100は、感光ドラム1に形成したトナー像を、記録材Pに直接転写するモノクロプリンタである。感光ドラム1を囲んで、帯電ローラ2、露光装置9、現像装置3、転写ローラ4、クリーニング装置5、及び除電露光装置8が配設されている。除電露光装置8は、感光ドラム1の表面を線状に露光して、前回の画像形成の後に残った表面電位のばらつきを解消する。
【0020】
帯電ローラ2は、回転する感光ドラム1に当接して従動回転し、電源D1から直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を印加されることにより、感光ドラム1の表面を一様な負極性の暗部電位VDに帯電させる。露光装置3は、画像データを展開した画像信号に応じてON−OFF変調されたレーザービームを走査して、帯電した感光ドラム1の表面に画像の静電像を書き込む。現像装置4は、現像スリーブ15に帯電した二成分現像剤を担持して感光ドラム1に摺擦させ、感光ドラム1の露光部分にトナーを移転させて静電像をトナー像に現像する。
【0021】
記録材カセット10に収納された記録材Pは、分離ローラ11で1枚ずつに分離してレジストローラ12へ給送される。レジストローラ12は、記録材Pを待機させて、感光ドラム1のトナー像にタイミングを合せて記録材Pを転写部T1へ送り出す。
【0022】
転写ローラ4は、感光ドラム1に当接して転写部T1を形成する。転写ローラ4に正極性の直流電圧が印加されることで、感光ドラム1に担持されたトナー像が転写部T1を通過する記録材Pへ転写される。転写部T1でトナー像を転写された記録材Pは、定着装置6で加熱加圧を受けつつ挟持搬送されて表面に画像を定着される。
【0023】
クリーニング装置5は、転写部T1を通過した感光ドラム1の表面に残留した転写残トナーを除去する。クリーニング装置5には、転写残トナーを排出するための搬送スクリュー48が配設されており、回収トナーは、搬送スクリュー48によって紙面と垂直に画像形成装置100の背面側へ搬送され、回収容器49に排出して回収される。このように構成することで、転写残トナーによってクリーニング装置5内が詰まるようなことがない。
【0024】
<感光ドラム>
感光体には、有機半導体を主体とした有機感光体と無機半導体を主体とする無機感光体とがある。有機感光体は導電性の基板上に電荷注入阻止層、電荷発生層、電荷輸送層等から構成されるものが一般的である。さらに感光体の耐久性能を高めるために、最表層に、耐摩耗性に優れた材料を保護層として設ける場合がある。保護層が無い場合、感光体の耐久性能を高めるには電荷輸送層の膜厚を厚くする必要があり、膜厚を厚くすると解像度や濃度安定性が低下する。これに対して、保護層を設けると高画質化と高耐久化の両立が可能である。
【0025】
無機感光体は、セレン、CdS、α−Siなどの無機半導体を導電性基板上に形成したものであり、特にα−Siは耐摩耗性が高く毒性もないことから、耐久性能が求められる画像形成装置に用いられている。
【0026】
感光ドラム1は、アルミドラム基体上に下引き層、正電荷注入防止層、電荷発生層、表面保護層の順に重ねて塗工された有機感光体である。表面保護層は、電子線硬化樹脂を用いて耐摩耗性を向上させている。耐摩耗性の高い感光ドラム1は、寿命の点で有利な反面、感光ドラム1の表面に吸着した放電生成物を除去しにくく、高湿度での起動時に画像流れが発生し易い。
【0027】
<帯電装置>
感光体の表面を所定の極性・電位に一様に帯電させる帯電手段としてコロナ帯電方式又は接触帯電方式が一般的である。
【0028】
コロナ帯電方式は、被帯電面に非接触に対向配設した金属線に高電圧を印加してコロナ放電を発生させ、放出される荷電粒子に被帯電面を曝して所定の極性・電位に帯電させる。コロナ帯電方式では、コロナ放電に伴う帯電に寄与しないオゾンその他の放電生成物が生成されて感光体に付着し易い。
【0029】
接触帯電方式は、ローラ型(帯電ローラ)、ファーブラシ型、磁気ブラシ型、ブレード型等の導電性帯電部材(帯電部材)に所定の電圧を印加して、被帯電面に接触させることにより被帯電面を所定の極性・電位に帯電させる。接触帯電方式は、被帯電面と直接放電を行なうため、コロナ帯電方式に較べて低オゾン、低消費電力である。
【0030】
帯電部材に対する帯電電圧の印加方式として、直流電圧のみを印加するDC帯電方式と直流電圧に交流電圧を重畳して印加するAC帯電方式とがある。DC帯電方式では印加した直流電圧値から放電閾値Vthを差し引いた電圧に被帯電面が帯電されるが、環境変動等によって放電閾値Vthが変動するため、被帯電面の電位を所望の値に安定させることが難しい。さらに、帯電部材の抵抗変化によって被帯電面の電位が変化し易く、画像濃度の変動が発生することがある。
【0031】
画像形成装置100では、AC帯電方式を採用しており、帯電ローラ2に対して、所望の暗部電位VDに相当する直流電圧に放電閾値Vthの2倍以上のピーク間電圧Vppを持つAC成分を重畳した振動電圧を印加している。これは、AC成分による帯電電位のならし効果を目的としたものであり、被帯電面の電位はAC成分のピークの中央であるVDに収束し、環境等の外乱に影響されにくい。しかし、AC成分による放電を伴って帯電を行うために、画像形成中、帯電ローラ2が感光ドラム1の表面に均等に塗布するように、放電生成物が感光ドラム1に付着する。
【0032】
<現像装置>
現像装置4は、非磁性トナーと磁性キャリアとを混合した現像容器19内の二成分現像剤を攪拌スクリュー21、22で攪拌して、非磁性トナーを負極性に磁性キャリアを正極性に帯電させる。固定磁極のマグネット14の周囲で回転する現像スリーブ15は、規制ブレード18によって層厚を規制された二成分現像剤を担持して穂立ち状態で感光ドラム1に摺擦させる。直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を電源D2から現像スリーブ15へ印加されることで、相対的に正極性となった感光ドラム1の露光部分にトナーが移転して、静電像が反転現像される。
【0033】
現像スリーブ15は直径24mm、感光ドラム1は直径80mm、現像スリーブ15と感光ドラム1とは300μmの対向間隔で対向して現像部を形成する。現像スリーブ15は300mm/sec、感光ドラム1は150mm/secの周速度でウイズ方向に回転している。感光ドラム1の帯電電位(暗部電位VD)は−650V、露光された明部電位は−200Vである。現像スリーブ15に印加される振動電圧は、−500Vの直流電圧Vdcに、ピーク間電圧Vpp=2kV、周波数2kHzの方形波の交流電圧を重畳している。
【0034】
二成分現像剤は、体積平均粒径が8μmの非磁性トナー(トナー)と体積平均粒径が50μmの磁性キャリアとを混合しており、トナー濃度は重量比で5%である。トナー帯電量は、ブローオフ法にて測定したところ、−30μQ/gであった。
【0035】
現像容器19内のトナー濃度は図示しない光学式トナー濃度センサによって検出され、トナー濃度が一定に保たれるように、トナーホッパ20内の補給用トナーが供給ローラ23によって補給される。
【0036】
二成分現像剤には、外添剤としてシリカとチタン酸ストロンチウムが添加されている。シリカは、二成分現像剤の流動性の向上とトナー帯電量の安定化を目的として添加されている。チタン酸ストロンチウムは、研磨粒子としてクリーニングブレード45の先端に滞留したり、ファーブラシ53に付着したりして、感光ドラム1の表面から放電生成物を除去する。帯電の交流放電に伴って発生する放電生成物を除去することによって、感光ドラム1の表面抵抗が低下するのを防止して画像流れの発生を阻止する。クリーニングブレード45でトナーが摩擦によって感光ドラム1に融け付くトナー融着も研磨粒子の研磨効果によって除去される。
【0037】
<クリーニング装置>
図2はクリーニング装置の構成の説明図である。
【0038】
電子写真方式の画像形成装置において、転写後に感光体表面に残った転写残トナー等の異物は、クリーニング手段によって除去される。画像形成装置においては、感光体表面に形成されたトナー像をすべて中間転写体や記録材に転写することは困難であり、10%前後のトナーが転写後の感光体表面に残ってしまう。また、トナーから遊離した外添剤や感光体に記録材が接して発生する粉体(紙粉)なども転写を逃れて感光体に付着して連れ回り易い。このため、転写後の感光体表面に残るトナー、外添剤、紙粉等(転写残トナー)をトナー像の転写ごとに除去する必要がある。
【0039】
クリーニング装置5は、ゴム等の弾性材料からなるクリーニングブレードを使用するブレードクリーニング方式である。ブレードクリーニング方式は、クリーニングブレードのエッジを感光体表面に当接させて転写残トナーを掻き落とすものであり、構成が簡単で低コストでありながら、転写残トナーの除去機能に優れている。
【0040】
図2に示すように、クリーニング装置5のケーシング44は、感光ドラム1に対向する位置に開口部44aを有し、開口部44aには、クリーニングブレード45とファーブラシ53とが配置される。クリーニングブレード45は、ウレタンゴムで形成された厚さ5mmのゴムブレードの1つのエッジ45aを感光ドラム1の回転方向に対してカウンタ方向に当接させている。ファーブラシ53は、感光ドラム1の回転速度の130%の周速度で矢印R5方向に回転する。
【0041】
転写部(T1:図1)で発生した転写残トナーは、回転するファーブラシ53で散らされ、その一部がファーブラシ53に付着する。残りの転写残トナーは、感光ドラム1に付着してファーブラシ53を通過し、クリーニングブレード45のエッジ45aに達して掻き落とされる。
【0042】
ケーシング44の開口部44aの下部を占めるように、すくいシート47が取り付けられている。すくいシート47は、厚さ60μmのウレタンシートである。すくいシート47は、クリーニングブレード45によって感光ドラム1表面から掻き落とされた転写残トナー、又はファーブラシ53から落下した転写残トナーを、ケーシング44内に落下させて、感光ドラム1側へ逆流させない。
【0043】
クリーニングブレード45は、取付け板50に取り付けられており、取付け板50は、ケーシング44の上側の先端位置に固定されて開口部44aの上縁を形成している。ケーシング44は、揺動軸50aを中心にして全体が傾動可能に支持されており、傾き角度を変化させることで、感光ドラム1に対するクリーニングブレード45の当接圧が設定される。
【0044】
ケーシング44を長手方向に挟んだ両外側に一対の引っ張りばね41が配置され、引っ張りばね41の一端はケーシング44に、他端は画像形成装置100のフレームの台座44bに取り付けられている。引っ張りばね41の引っ張り力がケーシング44全体を揺動軸50aの周りで矢印R6方向に回動させて、クリーニングブレード45のエッジ45aを感光ドラム1に当接させている。
【0045】
ファーブラシ53は、開口部44aの反対側で、回転する回収ローラ51に接触して転写残トナーを回収される。回収ローラ51は、外径φ12mmのステンレスパイプで形成され、直径φ20mmのファーブラシ53に対する進入量が1mmになるよう配置されている。回収ローラ51は、矢印R6方向にファーブラシ53の周速に対して110%の周速でウイズ方向に回転している。回収ローラ51、搬送スクリュー48、及びファーブラシ53は、歯車機構43によって連動しており、駆動モータ42に駆動されて一体に回転する。
【0046】
回収ローラ51の表面は、従来は、回収ブレードによって、トナーも研磨粒子もほぼ完全にせきとめて除去できるように鏡面に研磨されていた。しかし、ここでは、本発明のリサイクル手段を構成するために、#100から#1500までのガラスビーズを用いて、表面の最適な粗面化条件を求め、そのようなガラスビーズを用いたブラスト加工によって粗面化されている。
【0047】
回収ローラ51には、ウレタンゴムを用いて厚さ3mmに形成された回収ブレード52がカウンタ方向に当接している。回収ブレード52と回収ローラ51との当接部における回転方向のニップ長さは20μmである。
【0048】
感光ドラム1からクリーニング装置5に入ったトナーは、その一部がファーブラシ53に付着して回収ローラ51に受け渡され、その後回収ブレード52により掻き取られてケーシング44内に落下する。ファーブラシ53に付着したトナーは、ファーブラシ53とともに回転して回収ローラ51に移転した後に、回収ブレード52によって掻き取られる。
【0049】
ファーブラシ53は、従来の静電クリーニング装置に使用されていたものと同じものを転用した。ファーブラシ53は、ファイバーを起毛させたシートをステンレスパイプの外周面に接着して形成される。ナイロンにカーボンを分散して導電性を付与して抵抗を1×10Ω/cmに調整したファイバーを用いており、ファイバーの単糸径は27μm(5D:デニール)である。
【0050】
なお、ファーブラシ53の毛体の別の材質としては、例えばステンレス鋼等の金属ファイバーや、レーヨン、PET樹脂等の合成繊維にカーボンなどの導電性物質を添加して導電化処理したものがある。
【0051】
クリーニング装置5は、クリーニング手段としてクリーニングブレード45を使用し、クリーニング補助手段としてファーブラシ53を使用している。ファーブラシ53は、転写部(T1:図1)における記録材のジャム発生時に、大量の未転写トナーがクリーニングブレード45に直接到達することを防止して、クリーニング不良を防ぐ。
【0052】
また、ファーブラシ53は、クリーニングブレード45で掻き落とされたトナーをファイバーに保持し、その一部を感光ドラム1に再付着させて、感光ドラム1の回転によって再度、クリーニングブレード45のエッジ45aに供給する。粉体であるトナーを、感光ドラム1とクリーニングブレード45のエッジ45aとの間に供給することにより、両者間の摩擦力を低減して、クリーニングブレード45のめくれなどを防止し、安定した良好なクリーニング性能を得るようにする効果も持っている。
【0053】
すなわち、ファーブラシ53は、トナーを保持して少しずつ感光ドラム1に戻すトナーのバッファ手段としても機能する。画像比率が低い画像の出力が続いた場合でも、ファーブラシ53から戻されたトナーがクリーニングブレード45のエッジ45aに供給されるため、クリーニングブレード45のエッジ45aに滞留するトナーが枯渇しないで済む。
【0054】
<比較例>
図3は比較例のクリーニング装置の構成の説明図である。
【0055】
画像形成装置に対する低ランニングコスト化や高画質化への要求の高まりに応答して、耐摩耗性が高い感光ドラムが用いられる傾向が高まっている。耐摩耗性の高い感光ドラムでは、従来は感光ドラムが削れると同時に除去されていた帯電装置からの放電生成物が感光ドラム表面に残存し易くなり、これが原因となって、クリーニング性の低下や画像流れが生じることがある。
【0056】
放電生成物の付着によって感光体表面の摩擦係数や付着力が大きく上昇すると、ブレードクリーニング方式では、摩擦力の上昇によってクリーニングブレード先端で振動、捩れ変形等が発生してクリーニング性が低下することがある。
【0057】
また、放電生成物はイオン性であるため、感光体表面に付着すると空気中の水分を吸着し易くなり、高湿度環境で感光体の表面抵抗が低下する。感光体の表面抵抗が低下すると、静電像を形成する電荷が拡散し易くなって、画像流れと呼ばれる画像ボケが発生することがある。
【0058】
画像流れを防止する1つの方法は、ヒーターによる加熱で感光体表面の水分吸着を回避する手法である。しかし、感光体にヒーターを設けると、感光体の構成が煩雑化するのみならず、温度制御等も必要となってシステムが複雑になり、画像形成装置の小型化、パーソナル化に対処できなくなる。ヒーターの昇温には一定の時間を要するので、電源投入からプリント開始までの時間(ウォームアップタイム)が伸びて消費電力も高まる。近年、省エネの要請からトナーの低融点化が進められているが、ヒーターによって感光体が加熱されると、感光体表面にトナーが融着し易くなる。
【0059】
画像流れを防止する別の方法は、研磨粒子を含む現像剤を用いて感光体表面から放電生成物を削り取る手法である。現像装置から感光ドラムに研磨粒子を供給して、クリーニングブレードの先端やブラシローラの毛体表面に研磨粒子を保持させることで、感光体の摺擦に伴う放電生成物の研磨効果を高めることができる。
【0060】
図3に示すように、比較例のクリーニング装置5Eでは、図2に示す回収ローラ51及び回収ブレード52の代わりに、回収ブレード54が配置される。回収ブレード54は、ファーブラシ53に直接当接して配置され、回転するファーブラシ53に過剰に付着したトナーを掻き落とす。回収ブレード54によってファーブラシ53から掻き落とされたトナーは、すべてケーシング44内に落下して、搬送スクリュー48によってケーシング44から運び出され、回収容器(49:図1)へ回収される。
【0061】
図1に示すように、二成分現像剤に添加された研磨粒子は、現像装置3から、トナーに付着した状態、又は研磨粒子単独で感光ドラム1に供給される。トナーに付着した研磨粒子、又は感光ドラム1に直接付着した研磨粒子が感光ドラム1の回転に伴ってクリーニング装置5に入る。
【0062】
ファーブラシ53に捕捉されることなく感光ドラム1に付着したままファーブラシ53を通過したトナー及び研磨粒子は、クリーニングブレード45にて掻き取られてクリーニングブレード45の先端に滞留する。そして、その状態で研磨粒子が感光ドラム1を摺擦して研磨することで、感光ドラム1に付着した放電生成物が除去される。
【0063】
クリーニングブレード45の先端に滞留していた研磨粒子の一部はクリーニングブレード45をすり抜けて感光ドラム1とともに連れ回る。クリーニングブレード45の先端に滞留していたトナー及び研磨粒子は、成長するとその一部がファーブラシ53上に一部が落下し、別の一部はケーシング44内に落下する。ケーシング44内に落下したトナー及び研磨粒子は、搬送スクリュー48によってケーシング44から運び出され、回収容器(49:図1)へ回収される。
【0064】
ファーブラシ53上に落下してファーブラシ53に捕捉されたトナー及び研磨粒子は、ファーブラシ53の回転に伴って感光ドラム1を摺擦し、研磨粒子は感光ドラム1の表面を研磨して放電生成物を除去する。
【0065】
このような研磨粒子として現像剤に添加される外添剤には、従来からチタン酸ストロンチウムが利用されている。しかし、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化ゲルマニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化タングステンも利用できる。酸化ストロンチウム、酸化ホウ素、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム等も利用できる。
【0066】
比較例のクリーニング装置5Eでは、上述したヒーターを備える必要も無く、構成も簡易で、省エネにも対応した画像形成プロセスが成立する。しかし、現像装置4に補給される現像剤に研磨粒子を添加することは、トナーの帯電特性や耐久特性に少なからず影響を与える場合があり、画像濃度の低下やトナー飛散の要因となる場合がある。
【0067】
このため、現像剤への研磨粒子の添加量は可能な限り少なくすることが好ましく、そのためには研磨粒子を効率よく活用することが重要である。しかし、比較例のクリーニング装置5Eでは、供給される研磨粒子がトナーとともに次々に廃棄されてしまうために、研磨粒子が効率に使われる構成とはいえなかった。
【0068】
そこで、図2に示すように、実施例1のクリーニング装置では、リサイクル手段(51、52)がブラシローラ(53)から研磨粒子及びトナーを回収した後に研磨粒子を分離してブラシローラ(53)に再付着させている。リサイクル手段は、回転してブラシローラに当接して研磨粒子及びトナーを表面に転移される回収ローラ51と、回収ローラ51に当接して研磨粒子及びトナーを掻き取る回収ブレード52とを有する。そして、回収ローラ51と回収ブレード52の当接部が研磨粒子をすり抜けさせつつトナーをせき止める。
【0069】
研磨粒子は、平均粒径がトナーよりも小さいため、回収ローラ51の表面に、回収ローラの長手方向における十点平均粗さがトナーの平均粒径よりも小さく研磨粒子の平均粒径よりも大きい凹凸を形成している。これにより、回収ブレード52によってトナーが掻き取られるほどには研磨粒子が掻き取られなくなる。従来のファーブラシクリーニング装置における回収ローラとして一般的な鏡面仕上げされた金属ローラを用いる場合よりも回収ローラに研磨粒子が連れ回ってブラシローラに再付着する可能性が高まる。その結果、ブラシローラに付着して連れ回る研磨粒子が増える。
【0070】
また、ブラシローラの毛体断面が円形であるため、回収ローラ51からブラシローラへの移転効率を高めるように、回収ローラ51の長手方向における凹凸の凹所の平均曲率半径がブラシローラの毛体断面の半径よりも大きい。そのような凹凸は、ブラシローラの毛体断面の直径よりも大きい平均粒径の球形ガラスビーズを用いてブラスト加工されている。
【0071】
<実施例1>
図4は回収ローラ表面の表面粗さの説明図である。図5はトナーの平均粒径と回収ローラ表面の表面粗さの関係の説明図である。図6はファーブラシのファイバー径と回収ローラ表面の表面粗さの関係の説明図である。
【0072】
図2に示すように、実施例1では、回収ローラ51と回収ブレード52の当接部に、研磨粒子及びトナーが一時的に滞留するトナー溜まりが形成される。トナー溜まりでは、移動する回収ローラ51表面と静止した回収ブレード52間でトナーの回転運動が生じるので、攪拌と摩擦を受けてトナーに付着した研磨粒子がトナーから遊離し易い。トナーから遊離した研磨粒子は、滞留したトナーの間をすり抜けて回収ブレード52の先端に集まり、回収ローラ51表面の凹凸に拘束されて回収ブレード52を通過する。回収ブレード52をすり抜けた研磨粒子は、回収ローラ51の回転に伴ってファーブラシ53に再び接触して付着する。ファーブラシ53に付着した研磨粒子は、感光ドラム1を摺擦して研磨する。研磨粒子の一部は、ファーブラシ53から感光ドラム1へ移動し、クリーニングブレード45の先端に供給され、そこで再び感光ドラム1を研磨する。
【0073】
このような構成により、従来トナーとともに廃棄されていた研磨粒子も、回収ローラ51によってトナーから分離され、再びファーブラシ53に供給されるので、研磨粒子の利用効率が上がる。このため、トナーに添加する研磨粒子を少なくでき、研磨粒子の増加による現像特性の影響を最小限に押さえることができる。
【0074】
実施例1では、回収ローラ51を粗面化して、回収ローラ51に当接した回収ブレード52でトナーに付着した研磨粒子をすり抜けさせる。すり抜けて回収ローラ51に連れ回る研磨粒子をファーブラシ53に再付着させることで、研磨粒子をリサイクルして研磨粒子の有効活用を図っている。
【0075】
研磨粒子の再利用性を高めるためには、回収ローラ51上で如何に研磨粒子のみを選択的にすり抜けさせ、トナーをすり抜けさせないかが重要である。そのために、回収ローラ51表面の粗さと研磨粒子の平均粒径の関係を規定する必要がある。
【0076】
図4の(a)に示すように、通常トナーAと研磨粒子の粒径分布が測定された。通常トナーAは、平均粒径Maを中心とする正規分布の粒子個数分布、研磨粒子は、平均粒径mを中心とする正規分布の粒子個数分布である。従って、通常トナーAに対しては、十点平均粗さRzを上限値Maと下限値Mkと間に設定することが望ましい。
【0077】
図4の(b)に示すように、微粒子トナーAと研磨粒子の粒径分布が測定された。微粒子トナーBは、平均粒径Mbを中心とする正規分布の粒子個数分布、研磨粒子は、平均粒径mを中心とする正規分布の粒子個数分布である。従って、微粒子トナーBに対しては、十点平均粗さRzを上限値Mbと下限値Mkと間に設定することが望ましい。
【0078】
図5に示すように、回収ローラ51と回収ブレード53の当接部において、トナーの平均粒径と回収ローラ51表面の十点平均粗さRzとの関係が規定される。回収ローラ51に付着して移動するトナーを回収ブレード52でせき止めるには、回収ローラ51と回収ブレード52間に生じる隙間がトナーの粒径以下である必要がある。隙間がトナーの粒径以上であると、回収ローラ51上の凹凸の窪みにあるトナーが回収ブレード51に引っ掛からないですり抜けてしまう。
【0079】
回収ローラ51表面の凹凸の深さは十点平均粗さRzを用いて代表的に表すことができる。ここで、σaを通常トナーAの粒径分布の標準偏差とし、σbを微粒子トナーBの粒径分布の標準偏差とする。
【0080】
標準偏差σa、σbは、トナーの粒径分布を正規分布近似することによって得られる。正規分布であれば、図4の(a)に示す平均値Ma±3σaの範囲には、通常トナーAの粒子母数のうち99%以上が含まれる。そして、粒径がMa−3σa以上のトナーをせき止められる隙間であれば、通常トナーAのほぼすべてをせき止めることができる。
【0081】
図5に示すように、回収ローラ51表面の十点平均粗さRzをMa−3σaより小さくすることで、ほぼ完全に通常トナーAをせき止めることができる。
【0082】
一方、回収ローラ51と回収ブレード52の当接部で研磨粒子をすり抜けさせる条件としては、せき止める条件とは逆に、回収ローラ51と回収ブレード52との隙間が研磨粒子の粒径より大きい必要がある。研磨粒子の粒径の標準偏差をσk、平均粒径をMkとするとMk+3σk以下の粒径範囲に研磨粒子の99%以上が含まれる。そして、回収ローラ51表面の十点平均粗さRzをMk+3σkより大きくすることで、研磨粒子の大部分をすり抜けさせることができる。
【0083】
従って、トナー及び研磨粒子の平均粒径M、粒径分布σが異なる場合、トナー及び研磨粒子の平均粒径M、標準偏差σから回収ローラ51の適切な十点平均粗さRzを規定できる。
【0084】
図4の(a)に示す通常トナーAの場合、次式の関係を満たすことによって、回収ローラ51上で通常トナーAをせき止めつつ研磨粒子のみをすり抜けさせて、ファーブラシ53との接触部に研磨粒子を搬送できる。
Mk+3σk<Rz<Ma−3σa ・・(1)
【0085】
図4の(b)に示す微粒子トナーBの場合、次式の関係を満たすことによって、回収ローラ51上で微粒子トナーBをせき止めつつ研磨粒子のみをすり抜けさせて、ファーブラシ53との接触部に研磨粒子を搬送できる。
Mk+3σk<Rz<Mb−3σb ・・(2)
【0086】
ところで、回収ブレード52をすり抜けた研磨粒子の大部分は回収ローラ51表面の凹部に付着している。このため、回収ローラ51表面の研磨粒子を効率よくファーブラシ53へ移行させるには、ファーブラシ53のファイバーの先端が回収ローラ51表面の凹部に入り込む必要がある。そこで、ファーブラシ53のファイバーが回収ローラ51の凹部に入り込むための条件について考察する。
【0087】
ファーブラシの先端は、円柱状にカット処理されるので、ファイバーのカット面は、ほとんどがファイバーの繊維方向に対して垂直な面となる。
【0088】
図6の(a)に示すように、ファイバーのカット面が繊維方向に対して垂直な場合、ファイバー先端が凹部に最も深く入り込むのは、ファイバーのカット面が回収ローラ51に対して90°に立った場合である。
【0089】
図6の(b)に示すように、(a)の状態をファイバーのカット面側から見ると、ファイバーの曲率より、回収ローラ51表面の凹部の曲率が大きければ、ファーブラシ53が回収ローラ51表面の凹部の底まで侵入することが分かる。
【0090】
回収ローラ51表面の凹部の形状は、粗面化処理する方法に左右される。実施例1では、球状のガラス粒子を用いたブラスト処理であるため、ブラスト粒子の粒径に対応して凹部の曲率が決まる。
【0091】
ファーブラシのファイバー単糸径をDfとし、ブラスト粒子の粒径をDbとしたとき、次式の関係を満たすことによって、ファーブラシ53の先端が回収ローラ51の凹部から効率良く研磨粒子を掻き出すことができる。これにより、回収ローラ51上の研磨粒子が効率良くファーブラシ53に付着する。
Db>Df ・・(3)
【0092】
以下の表1〜表5に示すように、上記(1)〜(3)式の関係を実証すべく、画像形成装置100を用いて、回収ローラ51表面の十点平均粗さRz、ファーブラシ53の単糸径Dfを異ならせて画像流れ試験を行なった。画像流れ試験は、30℃、80%RHの高温多湿の試験環境において、10万枚の間欠的な画像形成を行い、出力された画像上の画像流れの度合いを目視で確認して行なった。画像流れの度合いは三段階で評価し、画像流れ無しを〇、画像の一部に画像流れありを△、画像全面に画像流れありを×とした。
【0093】
また、ファーブラシ53に付着した研磨粒子を定量化するために、蛍光X線分析装置による元素解析を行なった。蛍光X線分析は、堀場製作所のXGT−5000を用いて各条件でのファーブラシ53にX線を直接照射し、研磨粒子に含まれる元素のスペクトル強度ピーク値を測定して定量化を行なった。実施例1では研磨粒子としてチタン酸ストロンチウムを用いたので、定量化はストロンチウム(Sr)のスペクトル強度ピーク値で行なった。
【0094】
また、回収ローラ51と回収ブレード52との当接部におけるトナーのすり抜け状態を確認するために、回収ローラ51の回収ブレード52下流位置で、トナー付着量を目視で確認した。回収ローラ51上のトナーの存在状態は、十点平均粗さRz等の条件によって二値的な挙動を示したので、二段階の多、少で評価した。
【0095】
(実験1)
最初に、通常トナーAを用いて十点平均粗さRzを振った。通常トナーAは、平均粒径Ma=6.0μm、標準偏差σa=1.0μmである。通常トナーAには、研磨粒子として平均粒径Mk=0.10μm、標準偏差σk=0.01μmのチタン酸ストロンチウムを1.0重量%の割合で添加し、他に流動性付与剤として中心粒径0.02μmのシリカを添加した。ファーブラシ53のファイバー単糸径Df=27μmとし、ブラスト粒子の粒径Db=40μmに固定した。その実験結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
式(1)に上記数値を代入すれば、図4の(a)に示すように、回収ローラ51の十点平均粗さRzは、0.13μm以上3.0μm以下の範囲が好ましい。表1でも、この範囲入る実施例1−1、1−2、1−3、1−4において画像流れは見られない。そして、回収ローラ51表面の十点平均粗さRzが0.13μm未満の比較例1−1は、ファーブラシ53にリサイクルされる研磨粒子が少な過ぎて画像流れが発生したと考えられる。
【0098】
このことは、ストロンチウムのスペクトル強度ピーク値でも裏付けられている。実施例1−1、1−2、1−3、1−4のようにピーク値が60以上であれば、十分な量の研磨粒子がファーブラシ53にリサイクルされて画像流れが発生しないと推定できる。
【0099】
ファーブラシ53に保持されている研磨粒子の量が多いと、ファーブラシ53による感光ドラム1の研磨効果が高まるからである。これに加えて、ファーブラシ53から感光ドラム1に研磨粒子が十分に供給されてクリーニングブレード45の先端に運ばれ、クリーニングブレード45の先端での研磨効果も高まるからである。
【0100】
一方、回収ローラ51表面の十点平均粗さRzが3.0μmを越える比較例1−2は、回収ローラ51上のトナーが増加して、画像流れが発生した。これは、回収ローラ51と回収ブレード52の当接部でトナーが分離されず、研磨粒子と一緒にトナーが回収ローラ51に連れ回ってファーブラシ53にリサイクルされたためと考えられる。ファーブラシ53のファイバーに付着した大粒径のトナーは、ファイバーに付着した小粒径の研磨粒子と感光ドラム1との接触機会を減らしてしまう。また、クリーニングブレード45で掻き落とされるトナーが増えてクリーニングブレード45の先端に滞留する研磨粒子が減ってしまう。トナーとともにケーシング44に落下して、搬送スクリュー48によって速やかに排出されてしまう研磨粒子の割合が増えてしまう。これらにより、研磨粒子による研磨効果が阻害される。
【0101】
(実験2)
次に、微粒子トナーBを用いて十点平均粗さRzを振った。微粒子トナーBは、平均粒径Mb=5.0μm、標準偏差σb=1.2μmである。微粒子トナーBには、研磨粒子として平均粒径Mk=0.20μm、標準偏差σk=0.02μmのチタン酸ストロンチウムを1.0重量%の割合で添加し、他に流動性付与剤として中心粒径0.02μmのシリカを添加した。ファーブラシ53のファイバー単糸径Df=27μm、ブラスト粒子の粒径Db=40μmは実験1と同一である。その実験結果を表2に示す。
【0102】
【表2】

【0103】
式(2)に上記数値を代入すれば、図4の(b)に示すように、回収ローラ51表面の十点平均粗さRzは、0.26μm以上1.40μm以下の範囲が好ましい。表2でも、この範囲に入る実施例1−5、1−6において画像流れが見られなかい。そして、回収ローラ51表面の十点平均粗さRzが0.26μm未満の比較例1−3、1−4では、ファーブラシ53にリサイクルされる研磨粒子が少な過ぎて画像流れが発生したと考えられる。また、回収ローラ51表面の十点平均粗さRzが1.40μmを越える比較例1−5、1−6では、トナーが回収ブレード52をすり抜けてブラシローラ53に大量に付着した結果、研磨粒子による研磨効果が損なわれて画像流れが発生したと考えられる。
【0104】
(実験3)
次に、図6の(b)に示すように、回転方向から見た回収ローラ51表面の凹部の曲率半径を振った。通常トナーAを用いて、ブラスト粒子の粒径Dbを15、20、27、35、40μmに変化させた。回収ローラ51表面の十点平均粗さRz=0.3μm、ファーブラシ53のファイバー単糸径Df=27μmは共通である。その実験結果を表3に示す。
【0105】
【表3】

【0106】
式(3)にDf=27μmを代入すれば、図6の(b)に示すように、ブラスト粒子の粒径Dbの最適な範囲は27μm以上、凹部の曲率半径は13.5μm以上である。表3でも、Db=27μmの実施例1−7、Db=35μmの実施例1−8、Db=40μmの実施例1−9では画像が流れが発生していない。
【0107】
そして、ブラスト粒子の粒径Dbが27μm未満である比較例1−7、1−8では画像流れが発生した。これは、ファーブラシ53が回収ローラ51の凹部に十分入り込まないために、ファーブラシ53に研磨粒子が十分に移転せず、研磨粒子による研磨効果が不足したためと考えられる。このことは、ストロンチウムのスペクトル強度ピーク値でも裏付けられており、比較例1−7、1−8では、ピーク値が60未満で、ファーブラシ53の研磨粒子量が不足している。
【0108】
(実験4)
次に、ファーブラシ53のファイバー単糸径Df=35μmの場合について、実験3と同様に、ブラスト粒子の粒径Dbを15、20、27、35、40μmに変化させた。回収ローラ51表面の十点平均粗さRz=0.3μm、トナー及び研磨粒子は実験3と共通である。その実験結果を表4に示す。
【0109】
【表4】

【0110】
式(3)にDf=35μmを代入すれば、ブラスト粒子の粒径Dbの最適な範囲は35μm以上、凹部の曲率半径は17.5μm以上である。表4でも、Db=35μm以上の実施例1−10、1−11では画像が流れが発生していない。
【0111】
そして、ブラスト粒子の粒径Dbが35μm未満である比較例1−9、1−10、1−11では、ストロンチウムのスペクトル強度ピーク値が60未満となっている。ファーブラシ53が回収ローラ51の凹部に十分入り込まないために、ファーブラシ53の研磨粒子量が不足して、画像流れが発生している。
【0112】
(実験5)
比較例1−13として、回収ローラ51の回転を停止し、回収ローラ51をファーブラシ53の当接部材としてのみ作用させた場合との比較を行った。この場合、回収ローラ51にトナーは回収されず、回収ローラ51に接触したファーブラシ53の回転に伴って、ファーブラシ53に付着したトナーが弾かれて飛ばされるため、図3に示す比較例に対応する結果となる。その実験結果を表5に示す。
【0113】
【表5】

【0114】
凹凸を形成した回収ローラ51と回収ブレード52とを持たない比較例1−13では、ストロンチウムのスペクトル強度ピーク値が60未満でファーブラシ53上の研磨粒子が十分でなく、画像流れが発生した。
【0115】
以上により、以下の関係が実証された。回収ローラ51の十点平均粗さをRz、トナーの平均粒径をMt、粒径分布の標準偏差をσt、研磨粒子の平均粒径をMk、粒径分布の標準偏差をσk、ファーブラシ53のファイバー単糸径をDf、ブラスト粒子の粒径をDbとする。このとき、実施例1では、以下の条件が満たされれば、画像流れは発生しない。
Mt+3σt<Rz<Mk−3σk
Db>Df
【0116】
これにより、十点平均粗さRzを「Mt<Rz<Mk」とする場合よりもさらに効率的に回収ローラ51上でトナーから研磨粒子を分離して、研磨粒子のみをファーブラシ53へ供給することができる。従って、ファーブラシ53の研磨粒子の付着量がさらに増えて画像流れが防止される。
【0117】
<実施例2>
図7は実施例2のクリーニング装置の構成の説明図である。実施例2は、図1に示す画像形成装置100にクリーニング装置5を置き換えて搭載され、実施例1との違いはファーブラシ53及び回収ローラ51に電圧を印加する手段を有することのみである。従って、図2と共通する構成には共通の符号を付して重複する説明を省略する。
【0118】
実施例1では、回収ローラ51に連れ回る研磨粒子を増やすことで、研磨粒子の濃度差によって回収ローラ51からファーブラシ53へ研磨粒子を移転させた。これに対して、実施例2では、研磨粒子がトナーとの摩擦で帯電することを利用して、濃度差に加えて電気的にも回収ローラ51からファーブラシ53へ研磨粒子を移転させるようにした。
【0119】
図7に示すように、実施例2のクリーニング装置5Aでは、ファーブラシ53と回収ローラ51とに、それぞれ電源D5、D6が接続されている。電源D5は、ファーブラシ53に−50Vの直流電圧を印加する。電源D6は、回収ローラ51に+100Vの直流電圧を印加する。ファーブラシ53及び回収ローラ51は導電性であって、少なくとも回収ローラにトナーの帯電極性と逆極性の直流電圧が印加されている。ファーブラシ53に対して回収ローラ51がトナーの帯電極性と逆極性の電位を持つように、ファーブラシ53と回収ローラ51の少なくとも一方に直流電圧を印加する。
【0120】
図1に示す転写部T1の下流側で感光ドラム1の残留電位を測定したところ、露光部で約−100V、非露光部で約−300Vであった。また、感光ドラム1から転写残トナーを回収して帯電量を測定したところ、約−10μQ/gであった。
【0121】
−50Vの直流電圧を印加したファーブラシ53は、感光ドラム1(約−100V、−300V)に対して正極性のため、ファーブラシ53と感光ドラム1の当接部では、転写残トナーがファーブラシ53へ向かう静電気力を受ける。このため、研磨粒子を付着したトナーが実施例1よりも多く感光ドラム1からファーブラシ53へ移動する。
【0122】
また、+100Vの直流電圧を印加した回収ローラ51は、−50Vの直流電圧を印加したファーブラシ53に対して正極性のため、ファーブラシ53と回収ローラ51の当接部では、回収トナーが回収ローラ51へ向かう静電気力を受ける。このため、回収トナーが実施例1よりも多くファーブラシ53から回収ローラ51へ移動する。
【0123】
ここで、研磨粒子としてのチタン酸ストロンチウムは、トナーとの摩擦によって正帯電する特性をもっている。回収ローラ51と回収ブレード52の当接部では、回収トナーが滞留して攪拌され、このときのトナーと研磨粒子の摩擦によって、研磨粒子(チタン酸ストロンチウム)は正極性に帯電する。そして、実施例1と同様に、攪拌の過程で回収ローラ51と回収ブレード52の当接部をすり抜けた研磨粒子が、回収ローラ51に連れ回ってファーブラシ53に接触する。
【0124】
このとき、−50Vの直流電圧を印加したファーブラシ53は、+100Vの直流電圧を印加した回収ローラ51に対して負極性のため、ファーブラシ53と回収ローラ51の当接部では、研磨粒子がファーブラシ53へ向かう静電気力を受ける。このため、実施例1より多くの研磨粒子が効率よくファーブラシ53に移動する。
【0125】
ファーブラシ53に担持された研磨粒子は、ファーブラシ53と感光ドラムの当接部において、感光ドラム1へ向かう静電気力を受けるため、一部が感光ドラム1へ移動する。トナー及び研磨粒子の物理的な付着力のみに頼った実施例1の構成よりも効率的に感光ドラム1へ移動する。
【0126】
実施例2の構成において実施例1と同様の画像流れ試験を行なって、ファーブラシ53のストロンチウムのスペクトル強度ピーク値を測定したところ、ファーブラシ53上の研磨粒子量が実施例1よりも増加していた。この結果を表6に示す。
【0127】
【表6】

【0128】
これはトナー及び研磨粒子を静電気力によって積極的に制御することによって、研磨粒子の再利用効率が更に高くなったことを意味する。トナーと逆極性に帯電する研磨粒子を用いてファーブラシと回収ローラに電圧を印加することで、現像剤に添加する研磨粒子を最小限にして画像流れを効果的に防止できることを意味する。
【0129】
トナーがマイナス、研磨粒子がプラスの電荷をもつならば、感光体の電圧<ファーブラシの印加電圧<回収ローラの電圧、となるような構成をとることで、研磨粒子の移動を円滑かつ効率よく行なうことができる。
【0130】
なお、チタン酸ストロンチウムと同様な帯電特性を持つものとして、酸化セリウムなど、トナーと反対極性の電荷に帯電するものを実施例2の構成において好適に用いることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0131】
トナー像を形成して記録材に転写する画像形成装置。
【符号の説明】
【0132】
1 感光ドラム
5 クリーニング装置
44 ケーシング
45 クリーニングブレード
47 すくいシート
48 搬送スクリュー
51 回収ローラ
52 回収ブレード
53 ファーブラシ
100 画像形成装置
D5、D6 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転して感光体を摺擦して感光体表面から研磨粒子及びトナーを除去するブラシローラを備えたクリーニング装置において、
前記ブラシローラから研磨粒子及びトナーを回収した後に研磨粒子を分離して前記ブラシローラに再付着させるリサイクル手段を備えたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記リサイクル手段は、回転して前記ブラシローラに当接して研磨粒子及びトナーを表面に転移される回収ローラと、前記回収ローラに当接して研磨粒子及びトナーを掻き取る回収ブレードとを有し、前記回収ローラと前記回収ブレードの当接部が研磨粒子をすり抜けさせつつトナーをせき止めることを特徴とする請求項1記載のクリーニング装置。
【請求項3】
研磨粒子は、平均粒径がトナーよりも小さく、
前記回収ローラの表面に、前記回収ローラの長手方向における十点平均粗さがトナーの平均粒径よりも小さく研磨粒子の平均粒径よりも大きい凹凸が形成されていることを特徴とする請求項2記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記ブラシローラの毛体断面が円形であって、前記凹凸は、前記回収ローラの長手方向における凹所の平均曲率半径が前記ブラシローラの毛体断面の半径よりも大きいことを特徴とする請求項3記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記回収ローラは、前記ブラシローラの毛体断面の直径よりも大きい平均粒径の球形ガラスビーズを用いてブラスト加工されていることを特徴とする請求項4記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記ブラシローラ及び前記回収ローラは導電性であって、前記ブラシローラに対して前記回収ローラがトナーの帯電極性と逆極性の電位を持つように、前記ブラシローラと前記回収ローラの少なくとも一方に直流電圧を印加することを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載のクリーニング装置。
【請求項7】
感光体の回転方向における前記ブラシローラの下流側に位置させて、感光体に当接するクリーニングブレードが配置されることを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載のクリーニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−39427(P2011−39427A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189051(P2009−189051)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】