説明

クリーンな味を産み出す酵素調製物

本発明は、ラクターゼ活性体1NLU当たり40単位未満のアリールスルファターゼ活性体を含む、細胞内産生ラクターゼを記載する。本発明は、また、基質を酵素調整物で処理する工程を含み、その酵素調製物がアリールスルファターゼを実施的に含有しない方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、酵素調製物により基質を処理する方法、新規な酵素調製物、および酵素調製物を調製する方法に関する。本発明は、また、ラクターゼに関する。
【0002】
[発明の背景]
食品グレードの製品の化学的性質、生化学的性質または感覚刺激性を改善するために、酵素が広く使用されている。また、牛乳や他の動物由来の基質の加工において、酵素の使用によって最終製品に大きな価値を付与している。例としては、ミルクをラクトース不耐性の個体が受容できるようにするためにラクターゼとインキュベーションすること、カゼインおよび乳清タンパク質のアレルギー誘発性を抑制し泡立ち特性を改良するためにタンパク質分解性加水分解を行うこと、ベーキング性およびマヨネーズの安定性を改良するために、ホスホリパーゼA2を使用して卵のリン脂質を改質すること、肉および魚製品の硬さと弾力性を改良するためにトランスグルタミナーゼを使用すること、さらにはグルコースオキシダーゼの添加により卵製品または粉チーズから酸素を除去することが挙げられる。さらに、各種動物由来の食品のフレーバーを増進させるために、酵素処理が行われている。例えば、魚および肉製品のフレーバーの醸成を加速させるためにプロテアーゼが使用されている。さらに、チーズのフレーバー醸成を加速させることも、よく知られた対象である。EMC(酵素変性チーズ)が、主として種々のリパーゼを使用する確立された製品であるのに対し、チーズの熟成期間中に生じる風味の微妙な変化を、微量のエキソプロテアーゼ、リパーゼまたはエステラーゼを加えることによって加速させることが、最近開発されている。
【0003】
本発明は、また、ラクターゼに関する。ラクターゼ、すなわちβ−ガラクトシダーゼ(E.C:3.2.1.23)は、ラクトース(二糖類)がその構成成分である単糖類のグルコースおよびガラクトースに加水分解するのを触媒する酵素である。ラクトースは乳製品に、より具体的には、ミルク、スキムミルク、クリームおよび他のミルク製品に含まれる。ラクトースは、人体(および他の哺乳動物)の腸壁で、天然に存在するラクターゼによって分解される。
【0004】
ラクターゼが欠損する人々の大部分に、ラクトースにより引き起こされる栄養および機能上の問題があることはよく知られ、また記載もされている。そのような人々は、ラクトースを加水分解することができず、その場合、ラクトースは大腸に達し、そこで脱水症、カルシウム吸収の低下、下痢、鼓腸、おくびおよび腹痛、そして重症の場合には、水分の多い劇症の下痢をも引き起こす。
【0005】
工業的に重要なラクターゼの用途の一つに、ラクトース不耐性の人々のためのラクトース加水分解ミルク製品の製造がある。そのような加水分解ミルク製品としては、殺菌ミルク、UHTミルクおよび、タンパク質加水分解などの中間処理工程を経るかまたは経ないで、元の成分の全部または一部から還元したミルクが挙げられる。ラクターゼによる処理は、ミルクの熱処理前に行ってもよいし、後に行ってもよい。ラクターゼによる処理は、ミルクに酵素を加えることによって行うことができる。ラクトースの溶解特性は、結晶化するほどのものであるため、生地が砂のようなザラザラしたものになりやすい。そうした望ましくない生地は、コンデンスミルク、濃縮ミルク、粉ミルク、冷凍乳、アイスクリームなどのいくつかの乳製品や、ミルクを高濃度で含有する菓子製品に見られる。ラクターゼによりラクトースの全部または一部を加水分解することにより、この問題を解消し、均一な生地の製品を提供することができ、その結果、顧客受容性を高めることができる。
【0006】
ラクターゼの別の工業的用途は、ミルクまたはヨーグルトのようなラクトース含有製品の甘味を増大させることである。そのような製品のラクトースを加水分解すると、グルコースが生成され、その結果として甘味が増大する。ラクターゼの別の工業的用途は、パンなどの、乳製品成分を含むラクトース製品の加水分解である。ラクトースは、フレーバーの増進、湿分の保持、褐色の付与および焼き特性の改善のために、そうした製品に添加されている。加水分解したラクトースシロップは、例えば、パンの耳の発色促進、フレーバーおよび香りの改善、生地の改質、保存期間の延長、並びにパンの塊構造の強化に関して有望である。
【0007】
ヨーグルトなどの醗酵乳製品において、ラクターゼによりラクトースの加水分解を行うと、甘味が増大する。しかしながら、醗酵処理の開始前にラクターゼを加えると、酸の生成速度が速まり、その結果、処理時間が短縮される。ミルク、または乳清などのミルク由来の製品をラクターゼで処理すれば、猫などのラクトース不耐性動物用の飼料およびペットフードの用途に適したものとすることができる。ラクトースの加水分解により、より濃縮度の高い乳清の製造が可能になり、同時に、ラクトース欠乏患者について先に記載したことと類似の、腸の問題を回避することができる。ラクトース加水分解乳清は、濃縮することにより固形分70〜75%を含有するシロップが製造され、アイスクリーム、パンおよび菓子製品の食品添加物として使用される。
【0008】
ラクターゼは、微生物を含む、非常に広範囲の生物で報告されており、また、そうした生物から単離されている。ラクターゼは、多くの場合、KluyveromycesやBacillusのような微生物の細胞内成分である。Kluyveromyces、特にK.fragilisおよびK.lactis、並びに、Candida属、Torula属およびTorulopsis属の酵母などは、酵母酵素ラクターゼの一般的なソースであり、一方、B.coagulansまたはB.circulansは細菌ラクターゼのよく知られたソースである。Maxilact(登録商標)(K.lactis由来。オランダ、デフルト(Deflt,The Netherlands)のDSM社製。)など、それらの生物に由来するラクターゼ調製物がいくつか商業的に入手可能である。これらラクターゼは全て、最適pHがpH=6〜pH=8であるため、所謂、中性ラクターゼである。生物の中には、Aspergillus nigerやAspergillus oryzaeのように、細胞外ラクターゼを産生するものがあり、米国特許第5,736,374号明細書には、Aspergillus oryzaeにより産生された、そのようなラクターゼの例が記載されている。最適pHや最適温度などのラクターゼの酵素特性は種によって変化する。しかしながら、一般に、排出されたラクターゼは、最適pHがpH=3.5〜pH=5.0と低く、細胞内ラクターゼは、通常、pH=6.0〜pH=7.5の範囲というより高い最適pHを示す。しかし、これらの一般則からの例外も見られる。中性ラクターゼを選択するか、または酸性ラクターゼを選択するかは、用途におけるpHプロファイルに依る。中性pHの用途では、通常、中性ラクターゼが好ましい。そのような用途としては、ミルク、アイスクリーム、乳清、チーズ、ヨーグルト、粉ミルクなどが挙げられる。酸性ラクターゼは、酸性範囲の用途により適している。ラクターゼの適切な濃度は、ラクトースの初期濃度、必要とする加水分解の程度、pH、温度および加水分解時間に依存する。
【0009】
食品の機能面および/または風味面での改良を目的としているものの、酵素処理は時として予期しない、かつ望ましくない副次的作用をもたらすことがある。望ましくない副次的作用の一例は、酵素処理の結果、オフフレーバーが発生することである。
【0010】
メッタール(Mettall)ら、ジ・オーストラリアン・ジャーナル・オブ・デーリー・テクノロジー(The Australian Journal of Dairy Technology)、(1991年)、46−48頁には、ミルクをラクターゼで処理したときに発生するオフフレーバーの問題が記載されている。この刊行物によれば、高濃度のプロテアーゼがオフフレーバーの急激な増強の原因であるとみられる。したがって、オフフレーバー生成のリスクを低減するために、副次的なタンパク質の分解を最小にするよう、製造プロセスを最適化している。K.lactis由来のラクターゼを精製する方法の一例が、国際公開第02/081673号パンフレットに記載されている。
【0011】
プロテアーゼ活性の低いラクターゼ調製物であってもなお、オフフレーバーを生成することがあることが判っている。酵母の細胞質由来の中性ラクターゼの場合、特にそうである。ラクターゼ調製物の使用に伴うオフフレーバーの生成は、ラクトース加水分解UHTミルクで特に問題となる。この場合使用されるラクターゼは、最適pHがミルクに好ましいものであるという理由から、中性ラクターゼである。UHTミルクには、室温で数ヶ月という保存期間を確保するために高温の熱処理が施されている。冷蔵庫外で長期間保存すると、これらの製品はオフフレーバーを生成しやすい。たとえオフフレーバー生成速度が非常に遅かったとしても、数ヶ月の保存の後では、かなりのオフフレーバーが生成される。これはこの製品を消費しようとする魅力を消失させる。
【0012】
[発明の概要]
意外にも、酵素調製物中に不純物として混入した副活性体のアリールスルファターゼの存在が、たとえ非常に低い濃度であっても、その調製物で基質を処理したとき、製品中のオフフレーバーが強く増強されることがあり、また、アリールスルファターゼ活性体が全くないかまたは少ない酵素調製物を使用すると、オフフレーバーの増強が強く抑制されることが判った。
【0013】
したがって、本発明は、一つの態様では、アリールスルファターゼを実質的に含まない酵素調製物で基質を処理することを含む方法を提供するものである。
【0014】
本発明は、また、別の態様では、アリールスルファターゼを実質的に含まない酵素調製物を提供するものである。
【0015】
本発明は、また、特別の態様では、ラクターゼ活性体1NLU当たり40単位未満のアリールスルファターゼ活性体を含むラクターゼを提供するものである。
【0016】
本発明のラクターゼ調製物は、食品および飼料製品において、オフフレーバー化合物を生成せずにラクトースを加水分解するのに有用である。
【0017】
本発明者らは、意外にも、アリールスルファターゼが、オフフレーバー生成の原因として極めて重要な酵素活性体であることを見出した。本発明者らは、UHTミルクにアリールスルファターゼを加えることにより、この単一の酵素が、ラクターゼ処理UHTミルクでしばしば観測されるオフフレーバーを再現できるとの結論に至る確証的証拠を得た。
【0018】
科学的理論に縛られずに言うならば、代謝抱合体、特に硫酸基で置換されたアルキルフェノールのアリールスルファターゼによる加水分解が、オフフレーバーを醸成する1つのメカニズムであると考えられる。したがって、本発明の酵素調製物は、硫酸基で置換されたアルキルフェノールを含有する基質の処理に対して、特に有利である。
【0019】
[発明の詳細な説明]
一つの態様では、本発明は、ラクターゼ活性体1NLU当たり40単位未満のアリールスルファターゼ活性体を含むラクターゼを提供するものである。ラクターゼは、ラクターゼ活性体1NLU当たり30単位未満のアリールスルファターゼ活性体を含むことが好ましく、ラクターゼ活性体1NLU当たり20単位未満のアリールスルファターゼ活性体を含むことがより好ましく、ラクターゼ活性体1NLU当たり10単位未満のアリールスルファターゼ活性体を含むことが特に好ましい。アリールスルファターゼ単位は実施例2で定義され、NLUで表されるラクターゼ活性体に対して正規化されている。これもまた、実施例2で定義されている。
【0020】
ラクターゼは、細胞内産生ラクターゼであってもよいし、または細胞外産生ラクターゼであってもよい。好ましい実施態様では、ラクターゼは細胞内産生ラクターゼである。
【0021】
好ましい実施態様では、ラクターゼは中性ラクターゼである。この中性ラクターゼは、pH=6〜pH=8の最適pHを有していてもよい。
【0022】
中性ラクターゼ調製物は、通常、微生物の細胞質に由来する。それらの製造法としては、(大規模な)微生物の醗酵を行った後、ラクターゼを分離することが挙げられる。後者は、細胞質から酵素を放出させるために細胞壁の破壊を必要とする。細胞の溶解には、オクタノールなどの有機溶媒による細胞壁の透過化、超音波分解またはフレンチプレッシング(French Pressing)などの技術が使用される。プロテアーゼなどのラクターゼ以外の他の酵素も細胞質から同時に放出される。
【0023】
好ましい実施態様では、ラクターゼは、ラクターゼ活性体1NLU当たり0.5RFU/min未満のプロテアーゼ活性体を有する。
【0024】
本発明により精製することができる細胞内ラクターゼは、微生物を含む、非常に広範囲の生物で報告されており、また、そうした生物から単離されている。ラクターゼは、多くの場合、KluyveromycesやBacillusのような微生物の細胞内成分である。Kluyveromyces、特にK.lactis、K marxinusおよびK.fragilis、並びに、Candida属、Torula属およびTorulopsis属の酵母などは、酵母酵素ラクターゼの一般的なソースであり、一方、B.coagulansまたはB.circulansは細菌ラクターゼのよく知られたソースである。Maxilact(登録商標)(K.lactis由来、DSM社製)など、それらの生物に由来するラクターゼ調製物がいくつか商業的に入手可能である。これらラクターゼは全て、最適pHがpH=6〜pH=8であるため、所謂、中性ラクターゼである。
【0025】
細胞内ラクターゼは、様々な種で報告されており、そのうちのいくつかは、アミノ酸配列および/またはDNA配列が知られている。配列情報は、例えば、GenBank(米国メリーランド州、ベセスダ(Bethesda,Maryland USA))、European Molecular Biology LaboratoryのEuropean Bioinfomatics Institute(英国、ヒンクストン(Hinxton,UK)のEMBL−Bank)、日本DNAデータバンク(DNA Data Bank of Japan)(日本国、三島(Mishima,Japan))およびSwissprot(スイス(Switzerland))の配列データベースで公的に入手可能である。ラクターゼは、遺伝子および/またはタンパク質配列の相同性に基づき、ゲノムから同定することができる。細胞内酵素の粗調製物は、細胞の中央代謝に関与する酵素、例えば解糖に関与する酵素など、細胞の細胞質にのみ存在する酵素のいくつかが含まれるという特徴がある。
【0026】
細胞外ラクターゼについても報告がされている。それらは、リーダー配列と呼ばれるペプチド配列を含有していることから、一般に、細胞外酵素であると見られている。このリーダー配列は、細胞外へ酵素を排出すべきであるという信号として、酵素を産生する細胞により、ある方法で認識される。分泌の間に、通常、リーダー配列は除去される。細胞外ラクターゼは、Aspergillus oryzaeなどの様々な種で報告がされている。細胞外酵素の粗調製物は、細胞内酵素を含まず、かつプロテアーゼのような典型的な細胞外酵素を含むという特徴がある。発見された細胞外酵素のタイプは、生物により異なり、その生物に特有なものである。醗酵または処理中に細胞が溶解するために、そのような細胞外酵素調製物中には、低濃度の細胞内酵素を見出すことができる。
【0027】
ラクターゼ酵素は、このように、それらのアミノ酸配列を、他の既知のラクターゼのものと比較することによって、細胞外または細胞内ラクターゼとして分類することができる。原理的には、細胞内ラクターゼはリーダー配列を有することができる。これにより、ラクターゼは細胞から培地中へ排出されよう。このような酵素の粗調製物は、アミノ酸配列に基づき細胞内酵素として分類されたラクターゼが、典型的な細胞外酵素が存在し、かつ、典型的な細胞内酵素が存在しないかまたは低濃度で存在する中で、存在するという特徴を有するであろう。
【0028】
本発明において使用される好ましい細胞内ラクターゼは:http://www.ebi.uniprot.org/entry/BGAL KLULAに記載のアミノ酸配列を有するK.lactisラクターゼ、または、K.lactisのアミノ酸配列に対し、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の類似度のアミノ酸配列を有するラクターゼ、http://www.ebi.uniprot.org/entry/Q6QTF4 KLUMAに記載のアミノ酸配列を有するK.marxianusラクターゼ、または、K.lactisのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の類似度のアミノ酸配列を有するラクターゼ、http://www.ebi.uniprot.org/uniprot−
srv/uniProtView.do?proteinId=O31341 BACCI&pager.offset=0
http://www.ebi.uniprot.org/uniprot−
srv/uniProtView.do?proteinId=Q45092 BACCI&pager.offset=0
http://www.ebi.uniprot.org/uniprot−
srv/uniProtView.do?proteinId=Q45093 BACCI&pager.offset=0に記載のアミノ酸配列を有するB.circulansラクターゼ、または、B.circulansのアミノ酸配列に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の類似度のアミノ酸配列を有するラクターゼである。
【0029】
用語「相同性」または「パーセント類似度」は、ここでは同じ意味で使用される。ここでは、2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント類似度を決定するために、最適比較を目的として配列を配置するものと定める(例えば、第2のアミノ酸または核酸配列と最適配置をとるために、第1のアミノ酸または核酸配列にギャップを挿入することができる)。それから、対応するアミノ酸の位置またはヌクレオチドの位置で、アミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列内の位置が、第2の配列の対応する位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同じもので占められているならば、その分子はその位置で同一である。2つの配列のパーセント類似度は、両配列で共有する同一位置の数の関数である(すなわち、%類似度=同一位置の数/位置の総数(すなわち、オーバーラップする位置)×100)。2つの配列が同じ長さであることが好ましい。当業者であれば、2つの配列間の相同性を決定するために、いくつかの異なるコンピュータプログラムを入手できることを知っているであろう。例えば、配列を比較し、2つの配列のパーセント類似度を決定するには、数学アルゴリズムを使用して行うことができる。好ましい実施態様では、2つのアミノ酸配列のパーセント類似度は、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手可能)に組み込まれているニードルマン(Needleman)およびブンシュ(Wunsch)(ジャーナル・オブ・モリキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol)(48):444−453頁(1970年))のアルゴリズムを使用し、Blossom62マトリックスまたはPAM250マトリックス、並びに、ギャップ重量16、14、12、10、8、6または4および長さ重量1、2、3、4、5または6を使用して決定される。当業者であれば、これら全ての異なるパラメータにより若干異なる結果が得られるものの、異なるアルゴリズムを使用したときの2つの配列の全体的なパーセント類似度は、あまり大きくは変わらないことを認識しているであろう。
【0030】
細胞内ラクターゼの調製には、ラクターゼ酵素を放出させるために細胞を破壊する必要がある。同時に、他の細胞質酵素も放出される。ラクターゼの工業的調製物の品質は、ラクターゼ活性体に対する副活性体の割合によって決定される。プロテアーゼはミルクの凝固またはミルクにおけるオフフレーバーの生成といった用途上望ましくない副次的作用を引き起こすことが知られていることから、特に問題の大きい副酵素である。オフフレーバーの生成は、保存期間が長く、かつ室温で保存される製品にとって、特に重大な問題である。そのような製品の1つにUHTミルクがあり、ラクトース加水分解UHTミルクでは、オフフレーバーの生成は周知の問題である。UHTミルクはオフフレーバーの生成に対して非常に敏感であり、ラクターゼ調製物がUHTミルクでオフフレーバーを発生させないならば、他の用途でも通常はオフフレーバーを発生させないであろう。ミルク、特にUHTミルクのオフフレーバー生成に関係する化合物は、タンパク質分解反応およびメイラード反応(バレロ(Valero)ら、(2001年)、フード・ケミストリー(Food Chem.)、72、51−58頁)の両方に関連している。ラクターゼ調製物中に副活性体として存在するプロテアーゼはいかなるものであっても、オフフレーバーの生成を加速する可能性がある。どの程度のプロテアーゼ濃度が必要であるかは明らかではないが、数ヶ月に及ぶ保存期間では、非常に低いタンパク質分解活性であっても重要である。UHTミルクはオフフレーバーの生成に対して非常に敏感であり、ラクターゼ調製物が、文献に記載されている(例えば、バレロ(Valero)ら、(2001年)、フード・ケミストリー(Food Chem.)、72、51−58頁に記載されている)ようなオフフレーバー以外のオフフレーバーをUHTミルクで発生させないならば、他の用途でも通常はオフフレーバーを発生させないであろう。したがって、UHT適用は、ラクターゼ調製物のオフフレーバー生成能に関して品質評価を行うには、優れた方法である。プロテアーゼは、少なくとも部分的には、オフフレーバー生成の原因であったため、ラクターゼ製品のプロテアーゼ濃度を低下させることに集中的に努力した。しかしながら、本発明者らは、プロテアーゼ濃度を低減しても、UHTミルクのオフフレーバーの生成を完全には抑えられないことを見出した。本発明者らは、意外にも、アリールスルファターゼが、オフフレーバー生成の原因として極めて重要な酵素活性体であることを見出した。本発明者らは、UHTミルクにアリールスルファターゼを加えることにより、この単一の酵素が、ラクターゼ処理UHTミルクでしばしば観測されるオフフレーバーを再現できるという確証的証拠を得た。
【0031】
本発明においては、ラクターゼ酵素からアリールスルファターゼを除去するために、クロマトグラフ法を開示する。ラクターゼ酵素は、K.lactis由来のものであることが好ましい
【0032】
本発明者らは、オフフレーバーを含有しないか、またはオフフレーバーを相当濃度含有している種々のUHTミルクの試料について、詳細な感覚分析を実施した(実施例1)。これらの感覚分析を、試料の化学組成の詳細な分析と組み合わせた。数種類の化合物が、キーとなる芳香化合物として同定され、その大部分はUHTミルクに関係するものとして、既に文献に記載されているものであった。意外にも、p−クレゾールもまた、キーとなるオフフレーバー化合物であることが判った。この化合物は、これまでにはUHTミルク中のオフフレーバー化合物の中に記載されていなかった(バレロ(Valero)ら、(2001年)フード・ケミストリー(Food Chem.)、72、51−58頁)。これは、アリールスルファターゼによって、ミルク中に極めて微量に存在するスルフェート抱合体から生成される(V.ロペス(V.Lopez)、R.C.リンゼイ(R.C.Lindsay)、ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(J Agric.Food Chem.)(1933年)、41、446−454頁;M.キリック(M.Killic)およびR.C.リンゼイ(R.C.Lindsay)、ジャーナル・オブ・デイリー・サイエンス(J Dairy Sci)(2005年)88、7−12頁;M.キリック(M.Kilic)およびR.C.リンゼイ(R.C.Lindsay)、ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(J Agric.Food Chem.)(2005年)53、1707−1712頁)。本発明者らは、意外にも、アリールスルファターゼがラクターゼ調製物中の酵素活性体であり、オフフレーバー生成の原因であることを見出した。本発明者らはこのことを、UHTミルクにアリールスルファターゼを加えることによって確認し、この単一の酵素がラクターゼ処理UHTミルクでしばしば観測されるオフフレーバーを実際に再現できることを見出した。本発明者らは、その後、K.lactis由来のラクターゼ酵素からアリールスルファターゼを除去するためのクロマトグラフ法を開発した。本発明者らは、アリールスルファターゼを除去すると、UHTミルク中のオフフレーバーの生成も抑えられることを見出した。これは味覚パネリストによる試験によって明らかとなったものである。最終ラクターゼ製品中におけるアリールスルファターゼの濃度は、<20アリールスルファターゼ単位であり、好ましくは<10アリールスルファターゼ単位、より好ましくは<8のアリールスルファターゼ単位、最も好ましくは0アリールスルファターゼ単位である。アリールスルファターゼ単位は、実施例2で定義されており、NLUで表され、実施例2で同様に定義されているラクターゼ活性に対して正規化されている)。ラクターゼの精製方法がいくつか文献に記載されているが(例えば、国際公開第02/081673号パンフレット)、これらの精製方法はアリールスルファターゼを除去するためのものではなかった。これらの結果は、ともにK.lactisに由来するアリールスルファターゼとラクターゼの、イオン交換(Q−セファロース)クロマトグラフィおよび疎水性相互作用(ブチル−セファロース)クロマトグラフィにおける溶出挙動が極めて類似していることを示している。したがって、文献に記載された従来の方法では、アリールスルファターゼを含有しないラクターゼ調製物を得ることは期待できない。
【0033】
クロマトグラフィによりラクターゼ調製物中のアリールスルフェート濃度を低下させる以外にも、ラクターゼ調製物からアリールスルファターゼ活性体を低減または除去する方法がある。これらには次のものがある。1)成長培地へのスルフェートの添加。スルフェートはアリールスルファターゼの発現を抑制することが知られており(バイル(Beil)ら、(1995年)ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Eur.J.Biochem.)229、385−394頁)、したがって培地へのスルフェートの添加によって、アリールスルファターゼ濃度が低下することが期待される;2)ランダム突然変異導入法、または、例えば当業者に知られている分子生物学的技術を使用した直接的アプローチによる、生物ゲノムからのアリールスルファターゼ産生遺伝子の除去または破壊;3)アリールスルファターゼ活性体の天然の低産生株または非産生株である菌株のスクリーニングおよび選択;4)酵素抑制剤の添加。例えば、ある分類のアリールスルファターゼは、リン酸イオンによって抑制されることが知られている。
【0034】
スルフェート、グルクロニドおよびホスフェートなどの代謝抱合体は、牛乳などの様々な種からのミルクに含まれている(ロペス(Lopez)ら(1993年)ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(J Agric Food Chem.)41、446−454頁;キリック(Killic)ら(2005年)ジャーナル・オブ・デイリー・サイエンス(J Dairy Sci)88、7−12頁)。哺乳動物では、代謝抱合体は解毒および異物の水への溶解性促進の手段として広く受け入れられている。抱合体は、肝臓および腎臓で最も効率的に生成され、血流中を循環した後、主として尿および胆汁中に排泄される。アルカリフェノールや他の各種化合物の抱合体は、牛、ヤギおよび羊などの乳中に見出されている(ロペス(Lopez)ら(1993年)ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(J Agric Food Chem.)41、446−454頁)。代謝抱合体の種類および多様性は非常に幅広く、チオフェノール、フェノール、o−クレゾールおよびp−クレゾールの抱合体が挙げられる。抱合により、硫酸基、リン酸基またはグルクロニド基の付加が起こる。これらの基は、アリールスルファターゼ、ホスフェートおよびグルクロニダーゼのような酵素により、抱合体から放出され、これにより毒性化合物が放出される。いくつかのタイプの抱合体が牛、羊およびヤギの乳中に存在することが示されており、抱合体の相対量は調製物間で異なり、少なくとも部分的に種が関係している(ロペス(Lopez)ら(1993年)ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(J Agric Food Chem.)41、446−454頁)。牛乳では、スルフェート抱合体が最も多く含まれる抱合体であるが、羊の乳ではホスフェート抱合体がスルフェートより多いことが示されている(ロペス(Lopez)ら(1993年)ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(J Agric Food Chem.)41、446−454頁)。
【0035】
本出願においては、ミルク中に存在する抱合体が中性ラクターゼ調製物における副活性体の基質であることが示される。これらの抱合体の濃度は、種の間で変化し(ロペス(Lopez)ら(1993年)ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(J Agric Food Chem)、41、446−454頁)、また、種の中では時間とともに変化する(キリック(Kilic)ら、(2005年)ジャーナル・オブ・デイリー・サイエンス(J dairy Sci)、88、7−12頁)ことが知られている。このことがラクターゼの調製条件に影響すると予想される。例えば、ホスフェート抱合体の非常に豊富な羊乳では、ラクターゼ調製物のホスフォターゼ濃度の許容度は、同じラクターゼ調製物をホスフェート抱合体濃度が非常に低い牛乳に使用する場合と比較すると、かなり低いと予想される。この点に関しては、細胞内ラクターゼ調製物と細胞外ラクターゼ調製物に差はない。
【0036】
別の態様では、本発明は、基質を酵素調製物で処理する方法を提供する。酵素調製物はアリールスルファターゼを実質的に含まないことが好ましい。
【0037】
ここでは、アリールスルファターゼを実質的に含まない酵素調製物に、アリールスルファターゼ活性体が存在しないか、または、存在しても十分に低濃度であるため、関連する製造プロセスで意図した酵素活性体を有効量加えたときにも、前記製造プロセスで、前述したような負の感覚刺激効果を伴う硫酸化アルキルフェノールの分解が観察されないような酵素調製物であればいかなるものも包含される。
【0038】
ここでは、アリールスルファターゼを実質的に含まない酵素調製物に、アリールスルファターゼの活性を対象とする酵素の活性で除した比が所定の値未満である酵素調製物が包含される。好ましい比は、使用する酵素および用途により変化する場合がある。
【0039】
アリールスルファターゼ活性体とは、EC3.1.6.1に記載されているような、フェノールスルフェートをフェノールとスルフェートの部分に分解することができる硫酸エステルヒドロラーゼ活性体をいう。アリールスルファターゼ単位は、本願の材料および方法の項(および実施例2)で定義されている。他の酵素の活性体についても、本願の材料および方法の項で定義されている。
【0040】
本発明のさらに別の態様では、本発明は、カルボキシペプチダーゼを含む酵素調製物であって、アリールスルファターゼ活性体の含量が、1カルボキシペプチダーゼ単位(CPG)当たり10000単位(ASU)未満である酵素調製物を提供する。酵素調製物は、アリールスルファターゼ活性体の含量が、カルボキシペプチターゼ(CPG)1単位当たり5000単位未満であることが好ましく、より好ましくは1000単位未満であり、より好ましくは500単位未満であり、より好ましくは100単位未満であり、より好ましくは50単位未満であり、より好ましくは10単位未満である。
【0041】
さらに別の態様では、本発明は、プロリン特異性プロテアーゼを含む酵素調製物であって、アリールスルファターゼ活性体の含量が、プロリンプロテアーゼ1単位(PPU)当たり30010E3単位(ASU)未満である酵素調製物を提供する。酵素調製物は、アリールスルファターゼ活性体の含量が、1プロテアーゼ単位(PPU)当たり、10010E3単位未満であることが好ましく、5010E3単位未満であることが好ましく、100E3単位未満であることが好ましく、5000単位未満であることが好ましい。
【0042】
さらに別の態様では、本発明は、(中性)ラクターゼを含む酵素調製物であって、アリールスルファターゼ活性体の含量が、ラクターゼ活性体1NLU当たり40単位(ASU)未満である酵素調製物を提供する。酵素調製物は、アリールスルファターゼ活性体の含量が、ラクターゼ活性体1NLU当たり30単位未満であることが好ましく、ラクターゼ活性体1NLU当たり20単位未満であることがより好ましく、ラクターゼ活性体1NLU当たり10単位未満であることが特に好ましい。
【0043】
さらに別の態様では、本発明は、(酸性)ラクターゼを含む酵素調製物であって、アリールスルファターゼ活性体の含量が、ラクターゼ活性体1ALU当たり400単位(ASU)未満である酵素調製物を提供する。酵素調製物は、アリールスルファターゼ活性体の含量が100単位(ASU)未満であることが好ましく、ラクターゼ活性体1ALU当たり30単位であることが好ましく、ラクターゼ活性体1ALU当たり20単位未満であることがより好ましく、ラクターゼ活性体1ALU当たり10単位未満であることが特に好ましい。
【0044】
さらに別の態様では、本発明は、アミノペプチダーゼを含む酵素調製物であって、アリールスルファターゼ活性体の含量が、1APU当たり1000単位(ASU)未満、好ましくは1APU当たり300単位(ASU)未満、好ましくは1APU当たり100単位(ASU)未満、好ましくは1APU当たり30単位(ASU)未満、好ましくは1APU当たり10単位(ASU)未満である酵素調製物を提供する。
【0045】
さらに別の態様では、本発明は、エステラーゼおよび/またはリパーゼを含む酵素調製物であって、アリールスルファターゼ活性体の含量が、1BGE当たり1010E6単位(ASU)未満、好ましくは1BGE当たり310E6単位(ASU)未満、好ましくは1BGE当たり110E6単位(ASU)未満、好ましくは1BGE当たり30010E3単位(ASU)未満である酵素調製物を提供する。
【0046】
アリールスルファターゼを実質的に含まない酵素調製物による基質の処理には、前記処理過程における基質中のアリールスルファターゼの濃度が所定の値未満である場合の基質処理も包含される。
【0047】
さらに別の態様では、本発明は、酵素調製物による基質の処理方法であって、前記処理過程における基質中のアリールスルファターゼの濃度が、基質1リットル当たり50010E3アリールスルファターゼ単位以下、基質1リットル当たり好ましくは25010E3アリールスルファターゼ単位以下、好ましくは10010E3アリールスルファターゼ単位以下、好ましくは5010E3アリールスルファターゼ単位以下、好ましくは2510E3アリールスルファターゼ単位以下である方法を提供する。アリールスルファターゼ濃度を上記値未満に維持することは、基質が乳、好ましくは牛乳であるとき、特に有利であることが判った。
【0048】
アリールスルファターゼを実質的に含まない酵素調製物には、対象の酵素とアリールスルファターゼとを含有する粗酵素調製物を精製し、アリールスルファターゼを対象の酵素から分離することによって得られる酵素調製物も包含される。
【0049】
したがって、本発明は、また、酵素調製物の調製方法であって、対象の酵素とアリールスルファターゼとを含有する粗酵素調製物を精製し、アリールスルファターゼを対象の酵素から分離することを含む方法を提供する。この方法は、精製された酵素調製物で基質を処理することを含むことが有利である。
【0050】
精製工程は、アリールスルファターゼ活性体を対象の酵素活性体に対し相対的に低減させるという効果を有する。精製によりアリールスルファターゼ活性体が少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%低減されることが好ましい。当業者であれば、このことが、(aAS,pur/aenz,pur)/(aAS,crude/aenz,crude)が好ましくは≦0.5であり、好ましくは≦0.2であり、好ましくは≦0.1であり、好ましくは≦0.05であり、好ましくは≦0.01であることを意味することを理解するであろう。ここで
AS,pur=精製酵素調製物中のアリールスルファターゼ活性体(単位/ml)
enz,pur=精製酵素調製物中の対象酵素活性体(単位/ml)
AS,crude=粗酵素調製物中のアリールスルファターゼ活性体(単位/ml)
enz,crude=粗酵素調製物中の対象酵素活性体(単位/ml)
【0051】
精製は適切ならばいかなる方法で行ってもよい。好ましい実施態様では、精製はクロマトグラフィで行われる。クロマトグラフィを用いて酵素調製物を精製する方法、それ自体は、公知である。最も適切なクロマトグラフ分離法の選択は、存在する関連酵素および関連アリールスルファターゼ活性体の分子特性に依存する。関係する分子特性は、等電点、疎水性、分子表面の電荷分布、関連酵素の分子量および副活性や、その他のたんぱく質化学特性である。適切なクロマトグラフ分離法を選択するにあたって、これらの特性を使用する実践的背景は、エイ・オー・ザ・プロテイン・ピュアリフィケーション・ハンドブック(a.o.the Protein Purification Handbook)(ベルギー(Belgium)、ディーゲム(Diegem)のAmersham Pharmacia Biotech(現在、GE Healthcare Bio−Sciences)から出版)に見出すことができる。適切なクロマトグラフ分離法としては、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフ法、疎水性相互作用クロマトグラフィなどが挙げられる。本発明においては、イオン交換クロマトグラフィまたは疎水性相互作用クロマトグラフィが好ましい。
【0052】
好ましい実施態様では、精製は1回のクロマトグラフ分離工程で行われる。酵素活性体を、汚染アリールスルファターゼ活性体から1回のクロマトグラフ工程で効率良く分離できるという事実は、本発明の方法を工業的に利用するうえで特に有利である。
【0053】
酵素調製物は、適切なものであればいかなる酵素を含んでいてもよい。好ましい実施態様では、酵素(以下、対象酵素ともいう)は、ラクターゼ、プロテアーゼ、リパーゼまたはエステラーゼである。本発明で使用される酵素を以下に記載する。
【0054】
国際的に認められている全ての酵素の分類および命名法の基本はIUMBにより提供されている。最新のEC番号のIUMBテキストは、インターネットサイト:http://www.chem.qmw/ac.uk/iubmb/enzyme/EC3/4/11/で閲覧することができる。このシステムでは、酵素は単一反応を触媒するという事実のもとに定義されている。これは、複数の異なるタンパク質が全て同一の酵素として記載され、また、複数の反応を触媒するタンパク質が複数の酵素として扱われることを意味している。
【0055】
このシステムでは、プロテアーゼは、エンド−およびエキソプロテアーゼにさらに分類される。さらに、所謂ジ−およびトリペプチジルペプチダーゼが存在する。エンドプロテアーゼは、内部ペプチド結合を加水分解する酵素であり、エキソプロテアーゼは、末端α−アミノ基に隣接するペプチド結合(「アミノペプチダーゼ」)、または、末端カルボキシル基と末端から2番目のアミノ酸とのペプチド結合(「カルボキシペプチダーゼ」)を加水分解する酵素である。エンドプロテアーゼは触媒機構に基づいてサブ−サブクラスに分類される。セリンエンドプロテアーゼ(EC 3.4.21)、システインエンドプロテアーゼ(EC 3.4.22)、アスパラギン酸エンドプロテアーゼ(EC 3.4.23)、金属エンドプロテアーゼ(EC 3.4.24)およびスレオニンエンドプロテアーゼ(EC 3.4.25)のサブ−サブクラスがある。チモシン(EC 3.4.23.4)またはムコールペプシン(EC 3.4.23.23)などの、一般にミルクを凝固させてチーズを製造するプロテアーゼは、いずれもアスパルギン酸エンドプロテアーゼのクラスに属する。
【0056】
エキソプロテアーゼの中で、所謂アミノペプチダーゼ(EC 3.4.11)は、タンパク質およびペプチド基質から、単一のアミノ基末端アミノ酸を連続的に除去することができる。エキソプロテアーゼの中で、カルボキシペプチダーゼ(EC 3.4.16、3.4.17および3.4.18)は、タンパク質およびペプチド基質から、単一のカルボキシル基末端アミノ酸を連続的に除去することができる。ジ−およびトリペプチジルペプチダーゼ(EC 3.4.13、3.4.14および3.4.15)は、ペプチドまたはタンパク質のアミノ基末端側またはカルボキシル基末端側からジペプチドまたはトリペプチドを切断除去していくことができる。
【0057】
本発明の実施態様では、酵素は、アスパルギン酸エンドプロテアーゼ(EC 3.4.23)を除いたプロテアーゼである。
【0058】
タンパク質またはペプチドに作用し、かつ本願の範囲において特に関連する他の酵素は、オメガペプチダーゼ(EC 3.4.19)、およびアミノ酸の側鎖を転移させることができる酵素である。そのような転移反応を受ける基質は、フリーのアミノ酸であってもよく、あるいは、たんぱく質またはペプチドに結合したアミノ酸であってもよい。後者の酵素群の例としては、タンパク質結合グルタミンのガンマアミド基を選択的に加水分解することができる酵素、すなわち、ペプチド−グルタミナーゼ(EC 3.5.1.43および3.5.1.44)がある。
【0059】
さらに、トランスグルタミナーゼ(EC 2.3.2.13)およびタンパク質−リシン 6−オキシダーゼ(EC 1.4.3.13)などの、タンパク質またはペプチドを架橋することができる酵素も典型的な例である。
【0060】
ラクターゼ(EC 3.2.1.23)、すなわちラクトースを分解することができる微生物ベータ−ガラクトシダーゼは、本願の範囲において特に関係するものである。
【0061】
リパーゼおよびエステラーゼは、EMC(酵素変性チーズ)の製造で通常使用されており、そして、チーズの熟成が加速されることにより増大する利益を享受できることから、本願の範囲において特に関係を有するものである。したがって、リパーゼおよびエステラーゼは、本発明の方法により精製されるべき最も重要な対象である。IUMBシステムによれば、リパーゼおよびエステラーゼはカルボン酸エステルヒドロラーゼ(EC 3.1.1)に属する。エステラーゼは様々な基質に広く作用することができるのに対して、リパーゼ(EC 3.1.1.3)はトリアシルグリセロールのみを分解する。トリアシルグリセロールから、フォルメート、アセテート、プロピオネートまたはブチレートを除去することができるリパーゼも、しばしば「エステラーゼ」と称される。本願では、「エステラーゼ」という用語は、トリアシルグリセロールから、そのような短鎖カルボン酸を効率的に除去することができる酵素をいう。リパーゼまたはエステラーゼなどの両親媒性酵素の回収は、必要に応じて、胆汁酸または他の食品グレードの乳化剤を使用することにより改善される。リパーゼおよびエステラーゼの活性を決定する方法は、材料および方法の項に示す。
【0062】
工業的に利用可能な食品グレードの酵素調製物は、通常、哺乳動物の組織(例えば膵臓からトリプシン)、あるいは、植物質(例えばパパイヤフルーツからパパイン)から得られる。好ましい実施態様では、酵素は、微生物種、例えば、Bacillus種などの細菌、あるいは、Saccharomyces、KluyveromycesもしくはPichiaなどの酵母、または糸状菌から得られる。食品グレードの酵素調製物を産生することで知られる糸状菌としては、例えば、Aspergillus、Rhizomucor、Rhizopus、TrichodermaおよびTalaromycesが挙げられる。本発明の一実施態様では、酵素調製物は、糸状菌、例えば、Aspergillus nigerまたはAspergillus oryzaeにより製造されるか、またはそれらに由来するものである。ここでは、そのような酵素調製物は、A.nigerまたはA.oryzaeによって製造されたセルフクローン酵素調製物も包含する。
【0063】
対象酵素は、醗酵培地中で対象プロテアーゼを産生、好ましくは分泌する菌類を使用して、微生物による醗酵プロセスにより製造されたものであってもよい。当該技術分野では、そのような醗酵プロセスは公知であり、例えば、国際公開第02/45524号パンフレットを参照されたい。従来技術の方法においては、酵素は、これもまた当該技術分野で知られている方法で醗酵培地から回収することができる。第1工程として、産生生物の細胞を、遠心分離またはろ過により培養液から分離する。細胞を含まない培養液を、例えば限外ろ過により濃縮し、続いてクロマトグラフィにより精製する。菌類の株は、通常、複数のアリールスルファターゼ活性体を産生するので、これらのアリールスルファターゼ活性体から関連する酵素を、クロマトグラフィにより1工程で分離することは重要である。さらなる問題は、特定の微生物が分泌する、異なる種類の酵素活性体、すなわち、求める酵素活性体および各種アリールスルファターゼ活性体が、非常に近い等電点を有することである。所望の酵素活性体と汚染アリールスルファターゼ活性体とをクロマトグラフィで分離したなら、こうして得られた精製酵素調製物は安定化させてもよい。
【0064】
酵素が微生物によって分泌されず細胞内に留まっている場合には、生産微生物をろ過または遠心分離によって回収し、その後、保持された細胞を溶解し、関連する酵素活性体を放出させる。さらにろ過または遠心分離工程を行って細胞の破片を除去した後、液体部分を濃縮し、分泌された酵素に関して上述したように、安定化させる。
【0065】
精製した液体の酵素調製物は濃縮し、グリセロールまたは他のポリオールなどの公知の安定化剤と混合する。あるいは、公知の沈殿および/または蒸発工程の後、よく知られた(スプレー)乾燥技術により、濃縮した酵素溶液から固体調製物を得る。
【0066】
本発明においては、基質を酵素調製物で処理してもよい。基質は、適切なものであればいかなる基質であってもよい。基質は、タンパク質性の基質であることが好ましい。タンパク質性の基質は、タンパク質を含むものであればいかなる基質であってもよい。好ましい実施態様では、基質は、乳タンパク質、例えばカゼインおよび/または乳清タンパク質を含む。好ましい基質の例としては、乳、乳から製造された製品、醗酵乳製品(例えば、ヨーグルト)、乳清および/または加水分解物が挙げられる。基質は、また、肉を含んでいてもよい。
【0067】
加水分解物としては、タンパク質性基質タンパク質、好ましくは動物由来の基質タンパク質を酵素により加水分解することによって生成されるものであればいかなるものであってもよい。乳清タンパク質加水分解物、カゼイン加水分解物およびスキムミルク加水分解物が好ましい。
【0068】
好ましい実施態様では、基質は硫酸基で置換されたアルキルフェノールを含有する。アルキルフェノールとは、少なくとも1個の芳香族プロトンがアルキル基によって置換されたフェノール類をいう。アルキル基の長さは変化してもよく、また、分岐または置換されていてもよい。好ましいアルキルフェノールは、メチルフェノールおよびエチルフェノールである。
【0069】
硫酸化アルキルフェノールとは、ヒドロキシ基の位置で硫酸化によって抱合されているアルキルフェノールをいう。
【0070】
アリールスルファターゼ(EC 3.1.6.1)は、アルキルフェノールスルフェートをアルキルフェノールとスルフェート部分に分解することができる硫酸エステルヒドロラーゼである。
【0071】
基質の処理には、基質を酵素調製物と接触させるプロセスが含まれる。この処理には、基質を酵素調製物の存在下にインキュベートするプロセスが含まれる。酵素調製物は適切な方法で基質に添加される。
【0072】
方法は、製品、例えば栄養食品、好ましくは乳製品が製造される方法であればいかなるものであってもよい。ここでは、乳製品は、乳タンパク質、例えばカゼインおよび/または乳清タンパク質を含有する全ての組成物を包含する。例を挙げれば、乳、乳から作られる製品、醗酵乳製品(例えばヨーグルト)、コンデンスミルク、エバミルク、粉ミルク、冷凍乳、アイスクリーム、乳清、および/またはチーズがある。製品は加水分解物であってもよい。
【0073】
酵素調製物は、あらゆる適切な製品、例えば栄養食品、好ましくは乳製品を調製するために使用することができる。
【0074】
本発明は、また、オフフレーバーの発生を防止または低減するための、本発明の酵素調製物の使用に関する。
【0075】
一態様では、本発明は、アリールスルファターゼ欠損株の宿主細胞を製造する方法であって、アリールスルファターゼを産生する培養物を、その培養物の一部が変質してアリールスルファターゼ欠損宿主細胞を作り出すような条件に置く工程、およびその宿主細胞を分離する工程を含む方法を提供する。
【0076】
好ましい実施態様では、突然変異誘発条件、好ましくは物理的または化学的突然変異誘発などのランダム突然変異誘発条件が使用される。
【0077】
好ましい実施態様では、遺伝子組換え操作技術、好ましくはワンステップの遺伝子破壊、マーカー挿入、部位特異的突然変異誘発、削除、RNA干渉、アンチセンスRNAの技術が使用される。
【0078】
本発明は、さらに、
(a)栄養培地中、ポリペプチドの発現を誘導する条件下で、アリールスルファターゼ欠損宿主細胞を培養する工程、
(b)前記宿主細胞中でポリペプチドを発現させる工程、および
(c)必要に応じて、栄養培地または宿主細胞からポリペプチドを回収する工程
を含む方法により、ポリペプチドを製造する方法を提供する。
【0079】
本発明は、さらに、
(a)ポリペプチドを発現する発現ベクターによりアリールスルファターゼ欠損宿主細胞を形質転換する工程、
(b)栄養培地中、ポリペプチドの発現を誘導する条件下で、宿主細胞を培養する工程、
(c)宿主細胞中でポリペプチドを発現させる工程、および
(d)必要に応じて、栄養培地または宿主細胞からポリペプチドを回収する工程
を含む方法により、ポリペプチドを製造する方法を提供する。
【0080】
本発明は、さらに、
(a)アリールスルファターゼの産生を妨げる栄養培地中で、かつポリペプチドの発現を誘導する条件下で、宿主細胞を培養する工程、
(b)前記宿主細胞中でポリペプチドを発現させる工程、および
(c)必要に応じて、栄養培地または宿主細胞からポリペプチドを回収する工程
を含む方法により、ポリペプチドを製造する方法を提供する。
【0081】
本発明は、さらに、
(a)ポリペプチドを発現する発現ベクターにより宿主細胞を形質転換する工程、
(b)アリールスルファターゼを産生させない栄養培地中で、かつポリペプチドの発現を誘導する条件下で、宿主細胞を培養する工程、
(c)宿主細胞中でポリペプチドを発現させる工程、および
(d)必要に応じて、栄養培地または宿主細胞からポリペプチドを回収する工程
を含む方法により、ポリペプチドを製造する方法を提供する。
【0082】
好ましい実施態様では、ポリペプチドは酵素である。好ましい実施態様では、酵素調製物を調製する方法であって、ここで開示された方法により酵素を調製する工程、および栄養培地または宿主細胞から酵素調製物を回収する工程を含む方法が提供される。
【0083】
以下で、さらに開示する。
【0084】
[醗酵抑制]
好ましい実施態様では、酵素調製物は、アリールスルファターゼの産生が制限ないし抑制された増殖培地中で培養された工業的宿主菌株を使用して製造される。Pseudomonas aeruginosaでは、単一の硫黄源としてスルフェートを過剰に含有する培地で培養すると、有意な濃度のアリールスルファターゼは検出されないが、単一の硫黄源としてエタンスルフォネートを使用すると、有意量のアリールスルファターゼ活性体が産生されることが報告されている(バイル(Beil)ら、(1995年)ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Eur.J.Biochem.)229、385−394頁)。したがって、醗酵培地に過剰のスルフェートを使用することも、工業的により重要な微生物においてアリールスルファターゼ活性体の生産を抑制する効果があると考えられる。したがって、硫黄源としてスルフェートを過剰に含有する培地で酵素産生生物を増殖させると、アリールスルファターゼ活性体量の少ない、好ましい酵素生成物が生産される。培地中に過剰のスルフェートが存在するとは、ここでは、微生物の増殖が完了した後にも、有意な量の遊離スルフェートが培養液中に依然残っていることを意味する。本発明においては、増殖の全期間中、増殖培地中のスルフェートのモル量が他の硫黄含有物質のモル量よりも多い限り、スルフェートが増殖培地中の唯一の硫黄源である必要はない。さらに、アリールスルファターゼ活性体を抑制する好ましい硫黄源として、スルフェートに代えてシステインまたはチオシアネートを使用することもできる。さらに、醗酵が終わった後でも、培養液中のアリールスルファターゼ活性体の抑制が解除されるのを防止するために、洗浄、貯蔵、および他の下流の処理工程における全溶液中で、有意量のスルフェートまたは他の抑制性硫黄源を含有させることは適切である。
【0085】
[古典的菌株の改良]
アリールスルファターゼ欠損菌株は、遺伝子組換え操作技術を使用する遺伝子工学によって、宿主を突然変異誘発にかけることによって、またはその両方によって、得ることができる。本発明の、アリールスルファターゼをコードする遺伝子の修飾ないし不活性化は、親細胞に突然変異誘発法を適用し、親細胞に比べてアリールスルファターゼ発現能の小さい突然変異細胞を選択することによって達成される。特異的またはランダムな突然変異誘発は、例えば、適切な物理的もしくは化学的な突然変異誘発剤の使用、適切なオリゴヌクレオチドの使用、またはDNA配列にPCR利用突然変異誘発法を適用することにより、生起させることができる。さらに、突然変異誘発は、これらの突然変異誘発剤を任意に組み合わせて使用することによって生起させてもよい。
【0086】
本発明の目的に適した物理的もしくは化学的な突然変異誘発剤の例としては、ガンマ線または紫外線(UV)照射、ヒドロキシルアミン、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)、O−メチルヒドロキシルアミン、亜硝酸、エチルメタンスルフォネート(EMS)、亜硫酸水素ナトリウム、蟻酸およびヌクレオチド類似体が挙げられる。そのような誘発剤を使用する場合、突然変異誘発は、選択した突然変異誘発剤の存在下に、突然変異を誘発すべき親細胞を、適切な条件でインキュベートし、遺伝子の発現が抑えられた突然変異細胞を選択することによって、通常、行われる。あるいは、そのような菌株を、ハイブリダイゼーションまたは交配や、プロトプラスト融合または遺伝子多様性を誘起する他の古典的遺伝子技術などの遺伝子技術を使用して、分離してもよい。得られたアリールスルファターゼ欠損菌株は、その後、アリールスルファターゼの発現レベルをモニタリングすることによって選別される。場合により、アリールスルファターゼ欠損菌株は、その後、宿主細胞中で発現する、所定の対象遺伝子の発現レベルを測定することによって選別される。アリールスルファターゼ活性体が低減された菌株の選別は、培養液中、培養上清中、透過した細胞中、または細胞溶解物中のアリールスルファターゼ活性体を直接測定することによって行ってもよい。アリールスルファターゼ活性体の測定に関し、工業的産生菌株の細胞を、必要に応じて透過処理し、蛍光基質(4−メチルウンベリフェロン−スルフェート(MUS)など)とともに、その基質が細胞に取り込まれるまでインキュベートし、蛍光の減少を測定することによってアリールスルファターゼ活性の低い細胞をスクリーニングすることが可能である。そのような測定は、個々の培養物について、既存の蛍光光度計を用いて直接行ってもよく、あるいは、好ましいものであるが、蛍光の弱い細胞を選別し、さらなる培養のために使用するという方法でフローサイトメトリーによって行ってもよい。そのような方法で使用する細胞は、蛍光基質と共にインキュベートされる前に、突然変異誘発が行われていてもよく、いなくてもよい。
【0087】
あるいは、増殖培地中における唯一の硫黄源としてのアルキルエステルのスルフェートエステル(クレシルスルフェートまたはエタンスルフォネートなど)上では増殖することができない菌株を選択することによって、アリールスルファターゼ活性が低減された菌株を分離してもよい。
【0088】
本発明に適した菌株、特に、多くの工業的酵母菌株のように、1倍性でなく2倍性や異数性であるか、または他の倍数性を有する工業的産生菌株、あるいは、糸状菌のようにアリールスルファターゼをコードする複数の遺伝子を含む工業的産生菌株を分離するには、古典的な遺伝子技術を数回用いる必要がある。
【0089】
[DNA組換え技術]
あるいは、アリールスルファターゼ活性体量を低減させた工業的産生菌株は、DNA組換え技術を使用して作製してもよい。ワンステップ遺伝子破壊、マーカー挿入、部位特異的突然変異誘発、削除、RNA干渉、アンチセンスRNA、その他の、遺伝子を不活性化または破壊するいくつかの技術が、当該技術分野では知られており、いずれも、アリールスルファターゼ活性体を低減させた工業的産生菌株を得ることを目的に、アリールスルファターゼ活性体の合成を低減、抑制または阻害するために使用することができる。アリールスルファターゼ産生遺伝子の発現を指令する制御配列を変更することによってアリールスルファターゼを不活性化することも、本発明の一部である。遺伝子破壊によってプロモーター活性を低下させることが、その一例である。
【0090】
近代的な遺伝子修飾技術、好ましくはアリールスルファターゼ活性体をコードする遺伝子を阻害することにより、より好ましくはアリールスルファターゼ活性体をコードする遺伝子にマーカー遺伝子を挿入することにより、最も好ましくはゲノムからアリールスルファターゼのコード領域の一部または全部を除去することにより、組換えアリールスルファターゼ欠損菌株を得ることができる。そのような遺伝子の不活性化を実現する方法は、多くの種類の微生物について報告され、当業者に知られており(例えば欧州特許第357127号明細書を参照)、実施例8にも記載されている。これによって、突然変異細胞内のアリールスルファターゼの発現が低下または消失する。これらの技術を使用して改質する宿主菌株にもよるが、アリールスルファターゼコード配列の全てまたは大部分を除去するためには、この方法を何回か繰り返す必要がある。
【0091】
アリールスルファターゼなどの宿主遺伝子の修飾ないし不活性化は、遺伝子のヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列を使用して、確立されたアンチセンス技術によって行われる。より具体的には、遺伝子の発現は、ヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列を導入することにより、低下または消失させることができる。それは、細胞内で転写され、細胞内で生成されたmRNAにハイブリダイズすることができる。したがって、相補的なアンチセンスヌクレオチド配列がmRNAにハイブリダイズできる条件下では、翻訳されるタンパク質の量は減少するか皆無となる。アンチセンスRNAの発現については、ンギアム(Ngiam)ら(アプライド・アンド・エンバイロメンタル・マイクロバイオロジー(Appl.Environ.Microbiol.)、66:775−782頁、2000年)およびツレナー(Zrenner)ら(プランタ(Planta)、190:247−252頁、1993年)に例示されている。
【0092】
宿主遺伝子の修飾、ダウンレギュレーションまたは不活性化は、RNA干渉(RNAi)技術によって行ってもよい(FEMSマイクロバイオロジー・レターズ(FEMS Microb.Lett.)、237:317−324頁、2004年)。より具体的には、糸状菌細胞による遺伝子の発現を、その発現に影響するヌクレオチド配列の同一のセンス部分およびアンチセンス部分を、互いの後ろにヌクレオチドスペーサを間に挟んでクローニングし、発現ベクターに挿入し、その発現ベクターを細胞に導入することによって、低下または消失させてもよい。その細胞では、二本鎖RNA(dsRNA)が転写され、その後、標的mRNAにハイブリダイズすることができるより短いsiRNAに加工される。dsRNAが転写された後、短い(21〜23)ヌクレオチドsiRNA断片が生成し、影響を受けるべきmRNAの標的分解が生起される。特定のmRNAが消失する程度は一定ではない。宿主遺伝子の修飾、ダウンレギュレーションまたは不活性化に、国際公開第2005/05672号パンフレットおよび国際公開第2005/026356号パンフレットに記載されているRNA干渉技術を使用してもよい。
【0093】
上記のいずれかの方法によって修飾ないし不活性化され、先に定義したのと同じ試験法を使用して測定したときと同一条件で培養した場合のアリールスルファターゼ活性体の産生量が親細胞より少ない、アリールスルファターゼ欠損菌株は、他のヌクレオチド配列を有していてもよい。
【0094】
このような古典的遺伝子技術またはDNA組換え技術により分離または作成されたアリールスルファターゼ活性体を低減させた工業的産生菌株は、最終製品にオフフレーバーがないことが要求される関連の工業プロセスで使用することができる。これらの菌株は、工業的に関連する酵素の製造に使用されることが好ましい。これらの菌株は食品工業で使用される酵素の製造に使用されることが好ましく、これらの菌株は乳製品の加工に使用されることがよりいっそう好ましい。そのようなアリールスルファターゼ活性体を低減させた工業的産生菌株は、ラクターゼの製造に使用されることが特に好ましい。
【0095】
[宿主菌株]
適切な工業的宿主菌株としては、好ましくは細菌などの原核微生物があり、より好ましくは真核生物、例えば、酵母、糸状菌などの菌類、または、植物細胞がある。Bacillus属の細菌は、培地中にタンパク質を分泌することができるので、宿主として非常に適している。宿主として適した他の細菌は、Streptomyces属およびPseudomonas属に含まれるものである。対象酵素をコードするDNA配列の発現に好ましい酵母宿主細胞は、Saccharomyces属、Kluyveromyces属、Hansenula属、Pichia属、Yarrowia属またはSchizosaccharomyces属の中の1つである。酵母宿主細胞は、Saccharomyces cerevisiae種、Kluyveromyces lactis種(Kluyveromyces marxianus var. lactisとしても知られている)、Hansenula polymorpha種、Pichia pastoris種、Yarrowia lipolytica種およびSchizosaccharomyces pombe種からなる群より選択されることがより好ましい。
【0096】
しかしながら、酵素の発現に特に好ましいのは、糸状菌宿主細胞である。好ましい糸状菌宿主細胞は、Aspergillus属、Trichoderma属、Fusarium属、Disporotrichum属、Penicillium属、Acremonium属、Neurospora属、Thermoascus属、Myceliophtora属、Sporotrichum属、Thielavia属およびTalaromyces属からなる群より選択される。糸状菌宿主細胞は、Aspergillus oyzae種、Aspergillus sojae種もしくはAspergillus nidulans種のもの、またはAspergillus niger群(レーパー(Raper)およびフェネル(Fennel)、ザ・ジーナス・アスペルギルス(The Genus Aspergillus)、ザ・ウイリアムズ・アンド・ウィルキンス・カンパニー(The Williams & Wilkins Company)、バルチモア(Baltimore)、293−344頁、1965年で定義されている)のものより好ましい。このようなものとしては、Aspergillus niger、Aspergillus awamori、Aspergillus tubigensis、Aspergillus aculeatus、Aspergillus foetidus、Aspergillus nidulans、Aspergillus japonicus、Aspergillus oryzaeおよびAspergillus ficuumが挙げられ、また、Trichoderma reesei種、Fusarium graminearum種、Penicillium chrysogenum種、Acremonium alabamense種、Neurospora crassa種、Myceliophtora thermophilum種、Sporotrichum cellulophilum種、Disporotrichum dimorphosporum種およびThielavia terrestris種のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
本発明の範囲に含まれる好ましい工業的産生菌株の例は、Aspergillus種(特に、欧州特許出願公開第A−184,438号明細書および欧州特許出願公開第A−284,603号明細書に記載のもの)およびTrichoderma種などの菌類、Bacillus種(特に、欧州特許出願公開第A−134,048号明細書および欧州特許出願公開第A−253,455号明細書に記載のもの)、特に、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Bacillus amyloliquefaciens、Pseudomonas種などの細菌、並びにKluyveromyces種(特に、Kluyveromyces lactisなどの欧州特許出願公開第A−096,430号明細書に記載のもの、および欧州特許出願公開第A−301,670号明細書に記載のもの)、Saccharomyces cerevisiaeなどのSaccharomyces種、またはPichia pastoris、Hansenula polymorpha、Candida utilisもしくはYarrowia lipolyticaなどの酵母である。本発明は、最も好ましくは、Kluyveromyces lactisによる、アリールスルファターゼ活性体を含まないラクターゼの製造に関する。
【0098】
所定のポリペプチドまたは酵素を工業的に製造するのに適したアリールスルファターゼ欠損菌株が分離されており、意外にも、このアリールスルファターゼ欠損菌株は、由来する野生型菌株と、培養条件が同じ場合に、少なくとも同量のポリペプチドまたは酵素を産生する。
【0099】
本発明のアリールスルファターゼ欠損菌株は、検出可能な細胞内または細胞外アリールスルファターゼ活性体が、モデル反応で検出されるそれの50%未満である菌株であることが好ましい(実施例2の実験情報を参照)。本発明のアリールスルファターゼ欠損菌株は、細胞内アリールスルファターゼ活性体が50%未満である菌株であることがより好ましい。本発明のアリールスルファターゼ欠損菌株は、細胞内アリールスルファターゼ活性体が、由来する野生型菌株のモデル反応で検出される細胞内アリールスルファターゼ活性体の25%未満である菌株であることがより好ましい。好ましくは10%未満であり、より好ましくは5%未満であり、より好ましくは1%未満であり、アリールスルファターゼ欠損菌株中にアリールスルファターゼ活性体が検出されないことが特に好ましい。本願においては、K.lactis培養物中で得られる野生型のアリールスルファターゼ濃度の参照として、K.lactis培養物中で得られる野生型のポリペプチド濃度の参照として、およびK.lactis培養物中で得られる細胞内アリールスルファターゼ活性体濃度の参照として、K.lactis株CBS2359を採用している。アリールスルファターゼ欠損K.lactis株は、同一培養条件で、K.lactis株CBS2359よりも、アリールスルファターゼ活性体の産生が少ない菌株であると定義される。アリールスルファターゼ欠損菌株は、細胞内アリールスルファターゼ活性体が、K.lactis株CBS2359のモデル反応で検出されるそれの50%未満であるK.lactis株であることが好ましい。本発明のアリールスルファターゼ欠損K.lactis株は、細胞内アリールスルファターゼ活性体が、由来するK.lactis株CBS2359のモデル反応で検出される細胞内アリールスルファターゼ活性体の25%未満である菌株であることがより好ましい。好ましくは10%未満であり、より好ましくは5%未満であり、より好ましくは1%未満であり、アリールスルファターゼ欠損K.lactis株中にアリールスルファターゼ活性体が検出されないことが特に好ましい。本発明の好ましい実施態様では、本願の後段で定義する方法を使用して得られたアリールスルファターゼ欠損K.lactis株を用いた。
【0100】
当業者には、非常に多くの種類のポリペプチド検出システムが知られている。検出システムには、ポリペプチドまたは酵素活性を検出できるあらゆる分析法が含まれる。例を挙げれば、これらの分析システムには、限定されるものではないが、比色分析、光度分析、蛍光分析、比濁分析、粘度測定、免疫学的分析、生物学的分析、クロマトグラフィおよび他の利用可能な分析法に基づく方法が含まれる。産生されたポリペプチドが酵素であるならば、産生された活性酵素の量は、モデル反応における活性の測定から決定される(実施例2を参照)。
【0101】
他の好ましい実施態様では、本発明のアリールスルファターゼ欠損菌株は、ポリペプチドをコードする遺伝子を含む発現構築体により形質転換されると、少なくとも由来する野生型菌株が、アリールスルファターゼ欠損菌株と同じ発現構築体により形質転換されていて、同じ条件で培養された場合に産生する量のポリペプチドを産生するという点に特徴がある。本発明のアリールスルファターゼ欠損菌株は、由来する野生型菌株が、同じ培養条件で生産するのと同じかまたはそれより多くの量の所定のポリペプチドを生産する菌株であることが好ましい。アリールスルファターゼ欠損菌株は、培養条件が同じ場合に、所定のポリペプチドを由来する野生型菌株より多く生産することがより好ましい。
【0102】
[他の天然または非相同のポリペプチドおよび他の配列の製造]
さらに別の実施態様では、本発明は、宿主細胞中でヌクレオチド配列を転写する方法であって、その転写された配列が所望のポリペプチドをエンコードするか、または機能性核酸分子であり、
(a)栄養培地で、(i)プロモーター、(iv)ポリペプチドをエンコードする下流のヌクレオチド配列、(iii)翻訳停止信号、および(iv)転写停止信号を含む宿主細胞を培養する工程、
(b)宿主細胞中でポリペプチドを発現させる工程、および
(c)必要に応じて、栄養培地または宿主細胞からポリペプチドを回収する工程
を含む方法を提供する。
【0103】
製造されたポリペプチドは、プロテアーゼ分解に対して感受性があることがある。その場合には、プロテアーゼ欠損の突然変異宿主細胞が使用される。アリールスルファターゼ欠損菌株は、本発明の方法で生産されることが好ましい。アリールスルファターゼ欠損菌株は、当該技術分野で知られた方法で、所望のポリペプチドの産生に適した栄養培地で増殖または維持することができる。例えば、細胞は、固体基質に平板培養してもよく、フラスコ中で振盪培養してもよく、実験室または工業的規模の発酵槽で、適切な培地中で、かつ、ポリペプチドが発現および/または分離できる条件で、小規模または大規模発酵(連続式、バッチ式、フェドバッチ式(fedbatch)または固形発酵など)で培養してもよい。培養は、炭素および窒素源と、無機塩とを含む適切な栄養培地で、当該技術分野で知られた方法を用いて行う(例えば、ベネット(Bennett)およびラシュアー(LaSure)編、モア・ジーン・マニピュレーションズ・イン・ファンギ(More Gene Manipulations in Fungi)、アカデミック・プレス(Academic Press)、カリフォルニア州、1991年を参照)。適切な培地は供給業者から入手可能であり、あるいは、公開されている組成物(例えば、ジ・アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(The American Type Culture Collection)のカタログ)を使用して調製してもよい。ポリペプチドが栄養培地に分泌されるならば、ポリペプチドは栄養培地から直接回収することができる。ポリペプチドが分泌されなければ、細胞溶解物から回収することができる。
【0104】
得られたポリペプチドは、当該技術分野で知られた方法で分離することができる。例えば、ポリペプチドは、これらに限定されるものではないが、遠心分離、ろ過、抽出、スプレードライ、蒸発、または沈殿などの従来の方法により栄養培地から分離することができる。分離されたポリペプチドは、その後、これらに限定されるものではないが、クロマトグラフィ(例えば、イオン交換、アフィニティ、疎水性、クロマト分画、サイズ排除)、電気泳動(例えば、予備等電点電気泳動)、溶解度差(例えば、アセトンまたは硫酸アンモニウム沈殿)または抽出(例えば、カオトロープ、塩またはpH)などの、当該技術分野で知られた様々な方法でさらに精製してもよい。例えば、ジャンソン(Janson)およびライデン(Ryden)編、プロテイン・ピュアリフィケーション(Protein Purification)、VCH パブリッシャーズ(VCH Publishers)、ニューヨーク(New York)、1989年を参照されたい。
【0105】
ポリペプチドは、当該技術分野で知られたポリペプチドに特有の方法により検出することができる。これらの検出方法としては、特異抗体の使用、酵素生産物の生成、酵素基質の消滅またはSDS−PAGE法が挙げられる。例えば、ポリペプチド活性の測定に、酵素アッセイが使用される。当該技術分野においては、酵素活性を測定する方法が、多くの酵素について知られている。
【0106】
ポリペプチドは、アリールスルファターゼ欠損菌株に対し、天然または非相同のいずれのポリペプチドであってもよい。「非相同ポリペプチド」という用語は、ここでは、野生型菌株から産生されたものでないポリペプチドと定義される。「ポリペプチド」という用語は、ここでは、特定の長さのエンコードされた生成物を意味するのではなく、したがって、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質を包含する。非相同ポリペプチドをエンコードするヌクレオチド配列は、原核生物、真核生物または他のソースから得てもよく、また、合成遺伝子であってもよい。「から得る」という用語は、ここで所定のソースと共に使用されるときは、ポリペプチドが、そのソース、または、そのソースの遺伝子が挿入された細胞により産生されることを意味する。
【0107】
所望のポリペプチドは、抗体もしくはその抗原結合部、抗原、凝固因子、酵素、ペプチドホルモンもしくはその変形体、受容体もしくはそのリガンド結合部、調節タンパク質、構造タンパク質、レポーター、輸送タンパク、細胞内タンパク質、分泌過程に関与するタンパク質、折りたたみ過程に関与するタンパク質、シャペロン、ペプチド・アミノ酸トタンスポータ、グリコシル化因子、または転写因子であってよい。ポリペプチドは細胞外、培地へ分泌されてもよい。
【0108】
酵素は、特定のものに限定されるものではない。好ましい酵素は、本明細書の残りの部分および実施例で開示する。
【0109】
あるいは、ポリペプチドは、例えばシャペロン、プロテアーゼもしくは転写因子などの、細胞内タンパク質または酵素であってもよい。この例は、プント(Punt)ら(アプライド・マイクロバイオロジー・アンド・バイオテクノロジー(Appl.Microbiol.Biotechnol.50:447−454頁、1998年))により報告されている。これは、例えば、シャペロン、プロテアーゼまたは転写因子などのこのポリペプチドが、タンパク質生成の制限因子であると知られているならば、タンパク質生産体としての宿主細胞の効率を改善するために使用することができる。
【0110】
本発明の方法では、アリールスルファターゼ欠損菌株もまた、細胞に対して天然ポリペプチドを遺伝子組換えで製造するために使用することができる。天然ポリペプチドは、ポリペプチドの発現を促進し、信号配列を使用して対象とする天然ポリペプチドを細胞外に排出することを促進し、かつ、その細胞により通常生産されるポリペプチドをエンコードする遺伝子のコピー数を増加させるために、例えば、ポリペプチドをエンコードする遺伝子を、別のプロモーターの制御下に置くことによって、遺伝子組換え生産することができる。本発明は、そのような細胞に対して天然ポリペプチドの遺伝子組換え生産もまた、「非相同ポリペプチド」という用語の範囲内に、そのような発現のために、細胞に非内在性の遺伝子要素が使用されているか、または、糸状菌細胞では通常起こらない仕方で機能を発現するよう操作が加えられている、内在性の配列要素が使用されている限り、包含する。非相同ポリペプチドをエンコードするヌクレオチド配列を分離またはクローニングするために使用される技術は、当該技術分野では知られており、ゲノムDNAからの分離、cDNAからの調製またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0111】
本発明の方法において、非相同ポリペプチドには、ポリペプチドまたはその断片のN−末端またはC−末端に別のポリペプチドが融合した、融合またはハイブリッドポリペプチドもまた含まれる。融合ポリペプチドは、あるポリペプチドをエンコードするヌクレオチド配列(またはその一部)を、別のポリペプチドをエンコードするヌクレオチド配列(またはその一部)に融合させることによって作られる。
【0112】
融合ポリペプチドを生産する技術は、当該技術分野では知られており、ポリペプチドをエンコードするコーディング配列を、それらがフレームに入り、かつ、融合ポリペプチドが同一のプロモーターおよびターミネータのコントロール下に入るように、ライゲートすることが挙げられる。ハイブリッドポリペプチドは、少なくとも2つの異なるポリペプチド(1つ以上は、突然変異菌類細胞に非相同である)から得られた部分的または完全なポリペプチド配列の組み合わせを含む。対象の非相同ポリペプチドをエンコードする、分離されたヌクレオチド配列は、ポリペプチドを発現させるために、様々の方法で操作することができる。発現は、ポリペプチドの生産に関与するいかなる工程も含むと理解され、これらに限定されるものでないが、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾および分泌が挙げられる。発現ベクターによっては、ポリペプチドをエンコードするヌクレオチド配列の操作を、ベクターへの挿入前に行うことが望ましいかまたは必要である。クローニング法を利用してヌクレオチド配列を修飾する技術は、当該技術分野ではよく知られている。
【0113】
生産するポリペプチドをエンコードするDNA配列を、前記DNA配列の高レベルの発現、好ましくは前記ポリペプチドの高レベルの分泌を確実にするために、適切なDNA調整領域へリンクさせる操作が可能である。生産するポリペプチドがアリールスルファターゼ欠損菌株に対して天然であるならば、その天然分泌信号を使用することが好ましい。あるいは、生産するポリペプチドがアリールスルファターゼ欠損菌株に対して天然でないならば、生産されるべき非相同遺伝子に融合したAspergillus nigerのグルコアミラーゼ遺伝子などを含む融合構築体が作られることが好ましい。本発明の好ましい実施態様では、Aspergillus oryzaeのアルファアミラーゼ遺伝子の調整領域が使用される。本発明のより好ましい実施態様では、A.nigerのグルコアミラーゼ遺伝子の調整領域が使用される。本発明のより好ましい実施態様では、K.lactisのラクターゼ遺伝子の調整領域が使用される。DNA構築体は、選択可能なマーカーを含んでもよい。あるいは、選択可能なマーカーは第2のDNA構築体上に存在してもよい。例示するなら、これらのマーカーとしては、これらに限定されるものではないが、amdS(アセトアミダーゼ遺伝子)、argB、trpCまたはpyrGなどの栄養要求性マーカー遺伝子、および、例えばフレオマイシン、ハイグロマイシンBまたはG418に対して抵抗性を示す抗生物質抵抗性遺伝子が挙げられる。マーカー遺伝子は、Aspergillus nidulansからのアセトアミダーゼ遺伝子であることが好ましい。Aspergillus nidulansからのアセトアミダーゼ遺伝子は、gpdAプロモーターに融合していることがより好ましい。Aspergillus nidulansからのアセトアミダーゼ遺伝子は、Saccharomyces cerevisiae ADH1プロモーターに融合していることがより好ましい。
【0114】
ポリペプチドを高収率で生産するのに適しており、かつ、ポリペプチド生産体として工業装置で使用することができるアリールスルファターゼ欠損菌株を得る方法を開発した。ポリペプチドは、前記アリールスルファターゼ欠損菌株に対して、相同であっても非相同であってもよい。非相同なポリペプチドまたは酵素の場合、本発明が適用される野生型菌株は、本明細書で前述したように、そのようなポリペプチドまたは酵素をコードする遺伝子を発現するよう、前もって形質転換しておいてもよい。そのようなアリールスルファターゼ欠損菌株は、由来する野生型菌株が同一の培養条件で生産するのと少なくとも同量のポリペプチドを生産する。あるいは、アリールスルファターゼ欠損菌株は、本明細書で前述したように、形質転換の前に、そのようなポリペプチドまたは酵素をコードする遺伝子により構築される。
【0115】
本発明の実施態様では、その結果、食品工業で有用な酵素の生産に有用な親細胞の突然変異体である、アリールスルファターゼ表現型が低減された本発明の宿主細胞内で、ポリペプチドが生産される。その親細胞は、アリールスルファターゼをエンコードする1つまたはそれ以上のヌクレオチド配列を含み、かつ、突然変異細胞は、同一条件下で培養したとき、親細胞より少ないアリールスルファターゼ活性体を生産する。
【0116】
本発明の1つの態様で開示された好ましい特徴は、本発明の他の態様にも適用される。
【0117】
以下の実施例を参照して本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0118】
[材料および方法]
アリールスルファターゼ活性試験:ニトロフェニルスルフェート(Sigmaより入手)を基質として用いてアリールスルファターゼ活性を測定した。活性の測定に、0.5mlの基質溶液(pH6.5の100mMNaP緩衝液中に20mMのp−ニトロフェニルスルフェート)を、0.5mlのアリールスルファターゼ活性体含有試料溶液と混合した。この溶液を37℃で3時間、インキュベートした。その後、0.5MのNaOHを1.5ml加えて反応を停止させた。試料溶液の代わりに水を加えたブランク試験と対比して、410nmでのODを測定した(光路長1cm)。参照として、NaOHによる反応停止後に酵素を加えた溶液を調製した。この参照溶液のOD410を、酵素が3時間活性であった溶液について測定したOD410から差し引いた。アリールスルファターゼ単位(ASU)は、OD41010E6/hrの変化で表される。液体生成物では、アリールスルファターゼ活性は、生成物1ml当たりのOD41010E6/hrの変化で表すことができる。固体生成物では、アリールスルファターゼ活性は、生成物1g当たりのOD41010E6/hrの変化で表すことができる。対象酵素の活性が分かっているときは、アリールスルファターゼ活性は、対象酵素の1活性単位当たりのOD41010E6/hrの変化で表すこともできる。
【0119】
酸性ラクターゼ活性試験:酸性ラクターゼをo−ニトロフェニル−ベータ−D−ガラクトピラノシド(Fluka 73660)と共に、pH4.5、37℃で15分間インキュベートし、o−ニトロフェノールを発生させる。10%炭酸ナトリウムを加えてインキュベーションを停止させる。発生したo−ニトロフェノールの消滅を、波長420nmで測定し、酸性ラクターゼ活性を定量する。1酸性ラクターゼ単位(ALU)は、試験条件下で、1分当たり1マイクロモルのo−ニトロフェノールを発生させる酵素の量である。
【0120】
プロリン特異性エンドプロテアーゼ活性試験:国際公開第02/45524号パンフレットに記載されているようにして、Aspergillus nigerからプロリン特異性エンドプロテアーゼを過剰に生産し、クロマトグラフィにより精製した。基質としてCBZ−Gly−Pro−pNA(Bachem、ブーベンドルフ(Bubendorf)、スイス(Switzerland))を使用し、pH4.6のクエン酸塩/リン酸二ナトリウム緩衝液中、37℃で、A.nigerプロリン特異性エンドプロテアーゼ活性を試験した。反応生成物を、405nmで分光光度法によりモニターした。450nmにおける吸収が時間とともに増加することが、酵素活性の尺度である。
【0121】
中性近傍のpHを最適とするプロリン特異性エンドプロテアーゼの活性を、厳密に同じ条件下で決定するが、ここでは、酵素反応はpH7.0で行う。
【0122】
DPP IVなどのプロリン特異性ジペプチジルペプチダーゼの活性を、中性近傍のpHを最適とするプロリン特異性エンドプロテアーゼに特定の条件下で決定するが、ここではGly−Pro−pNAを基質として使用する。
【0123】
プロリンプロテアーゼ単位(PPU)は、特定の条件下、0.37mMの基質濃度で、1分当たり1μmolのp−ニトロアニリドを放出する酵素の量として定義される。
【0124】
カルボキシペプチダーゼ活性試験:A.niger由来カルボキシペプチダーゼ、PepG(「CPG」;ダル・デーガン(Dal Degan)ら、アプライド・アンド・エンバイロメンタル・マイクロバイオロジー(Appl.Env.Microbiol.)、58、(1992年)2144−2152頁)の活性を、合成基質FA−Phe−Ala(Bachem、ブーベンドルフ、スイス)を基質として使用して決定した。この基質の酵素加水分解(1.5mMのFA−Phe−Ala、pH4.5および37℃で)により、340nmの波長でモニターされる吸光度が減少する。1単位(CPGU)は、試験条件で、340nmでの光密度を1分あたり1吸光度単位ずつ減少させるのに必要な酵素の量である。
【0125】
アミノペプチダーゼ活性試験
アミノペプチダーゼの活性を、合成基質X−pNA(ここで、pNAはp−ニトロアニリドを表し、「X」はアミノ酸残基を表す)を使用して決定される。異なるアミノペプチダーゼは異なる選択性を有しうるため、アミノ酸残基「X」の種類は試験されるアミノペプチダーゼの開裂選択性に依存する。したがって「X」は特定のアミノペプチダーゼが最も高い選択性を示す残基である。多くのアミノペプチダーゼはPheに対して最も高い選択性を示すため、Phe−pNAは好ましい基質である。各種のX−pNA基質をBachem(ブーベンドルフ、スイス)から入手することができる。この基質の酵素加水分解(1.5mM、pH6.5および37℃で)により、着色が進むが、これは波長410nmでモニターされる。1単位(APU)は、試験条件で、410nmでの光密度を1分当たり1吸光度単位ずつ増加させるのに必要な酵素の量である。
【0126】
エステラーゼ/リパーゼ活性試験:エステラーゼおよびリパーゼは、トリグリセロールからの遊離脂肪酸の放出を触媒する。本試験では、基質としてグリセロールトリブチレートを使用する。エステラーゼ/リパーゼの活性を決定するために、トリブチレートから放出された酪酸を、水酸化ナトリウムで7.5の一定pHになるまで滴定する。したがって、pHを一定に保つために、1単位時間当たり加えられる水酸化ナトリウムの量は、酵素試料のエステラーゼ活性に直接比例する。
【0127】
測定は、Radiometer pH−stat unitおよび以下の試薬を使用して行われる。
【0128】
アラビアゴム溶液:1L容積のフラスコ中で、約800mLの脱ミネラル水に、100gのアラビアゴム(Sigma)および500mgのThymol(ICN))を、穏やかに攪拌しながら連続して溶解させる。水と混合物で1リットル調製する。4000rpmで15分間、溶液を遠心分離する。得られたアラビアゴム溶液は2ヶ月間冷蔵庫の中で保存できるが、使用の少なくとも1日前には調製しなければならない。
【0129】
水酸化ナトリウム0.02mol/l:0.01mol/LのNaOHを含むアンプルの内容物を、500mL容積のフラスコへ、水と共に定量的に移す。水と混合物とで容器体積とする。
【0130】
SDS/BSA溶液:穏やかに攪拌しながら、1gのSDS(メルク(Merck))および1gのBSA(フラクションV、Sigma)を約40mLの水に溶解する。泡の生成を避ける。SDSおよびBSAを完全に溶解した後、水で体積を1リットルにする。新鮮な調製溶液のみを使用する。
【0131】
基質エマルジョン:50gのグリセロールトリブチレートを秤量して600mLのガラスビーカーに入れ、300mLのアラビアゴム溶液を加える。Ultra Turraxの最大速度で5分間攪拌してエマルジョンを調製する。0.5mol/LのNaOHでpHを7.5に調節する。
【0132】
特別の酵素試料のエステラーゼ/リパーゼ活性を試験するには、酵素試料約1gを秤量し、SDS/BSA溶液に溶解させる。この試料溶液は、約0.2〜0.8NBGE/ml(後述)に等価な最終酵素量を含有するようにしなければならない。測定開始まで、試料溶液を氷の上で保管する。
【0133】
その後、加熱した反応器に、次の溶液:20mLの基質エマルジョン、5.0mLの水(40℃に予備加熱)を移し、15分間予備加熱し、その後、5.0mLの対照試料または試料溶液を加えることによって測定を開始し、Radiometer pH−stat unitのVIT90エステラーゼプログラムをスタートさせることによって測定を行う。
【0134】
エステラーゼ/リパーゼ単位(NBGE)は、以下の手順で、温度40℃、pH7.5において、グリセロールトリブチレートから1分当たり1μmolの遊離脂肪酸を放出する酵素量として定義される。
【0135】
[実施例]
[実施例1]
[UHT−ミルクのオフフレーバー化合物の同定]
無菌状態で、Maxilact LG5000(DSM、オランダ)を、セミスキムUHT−ミルク(Friesche Vlag、オランダ)に加え、1リットル当たり10,000および40,000NLUの濃度とし、室温で4日間インキュベートした。参照実験では、Maxilactを加えなかった。味覚パネリストによる試料評価の前に、セミスキムミルク1リットル当たり40,000NLUを加え、室温で18時間インキュベートすることにより、新鮮なラクターゼ加水分解ミルク試料を調製した。試料の分析は、NIZO Food Research(オランダ)にて、NIZO Food Researchの通常の方法であり、かつ感覚分析および化学分析を含むSOIR法を使用して実施した。感覚分析は調製した試料に対して直接に実施し、各ミルク試料の一定量を、後の化学分析のために、小分けにして−25℃で凍結した。
【0136】
感覚分析は、9人の訓練されたパネリストによって行われた。参照試料は、調理済みと評価され、その他の試料は標準的でないUHTミルクとして分類された。オフフレーバーを表現する主な属性は、化学オフフレーバー、薬剤オフフレーバー、尿/不潔オフフレーバーおよび馬小屋/肥料オフフレーバーであった。
【0137】
揮発性化合物を、室温付近の温度で同時高真空蒸留により分離し、水分の多い試料抽出物を得た。揮発性化合物は、その後、動的ヘッドスペース法を使用して、水分が多い抽出物から分離し、吸着剤で捕集した。分離した化合物は、熱脱着を利用してガスクロマトグラフに注入し、GC−カラム上で分離した。GC−流出物が、2人の訓練を受けた評価者(GC−スニフ)によって評価され、臭いの用語で表現された(臭度測定)。動的ヘッドスペース法サンプリングの間に、2つの異なるパージ時間(30分および24時間)を設けることによって、高濃度および低濃度のGC−スニフ分析を2回行った。その後、臭度分析の間に、ラクターゼ処理UHT試料のオフフレーバー特性に対応すると示唆されたピーク(化合物)を、質量分析によって同定した。オフフレーバーの原因を説明する対象の化合物は、1)エステル(エチルブタノエート);2)硫黄化合物(ジメチルスルフィド、ジメチルトリスルフィドおよびベンゾチアゾール);3)硫黄エステル(メチルチオアセテート、メチルチオブチレート);4)1−オクテン−3−オール;5)2−ノネナール;6)β−ダマセノン;7)ボルネオールおよび8)p−クレゾールと同定された。p−クレゾールは、ミルク中の抱合体由来のものであろう。最も不快感を与える感覚属性である「薬剤オフフレーバー」に関連する唯一の化合物はp−クレゾールである。試料に標準量のp−クレゾールを加え、GC−分析によって、試料中のp−クレゾール濃度を測定した。UHT−ミルク試料(4日間のインキュベーション)中のp−クレゾールの濃度は、1リットル当たり12μgと推定された。これは、空気および水のそれぞれのフレーバー閾値である1ppbおよび2ppbを明らかに超えている(ハ(Ha)ら、(1991年)、ジャーナル・オブ・デイリー・サイエンス(J Dairy Sci)74、3267−3274頁)。それは、また、牛乳中に普通に見られるp−クレゾールの濃度範囲である。この結果は、ミルクで組換え実験を行って確認し、p−クレゾールがラクターゼ処理UHT−ミルクの薬剤オフフレーバーの原因物質であることを確認した。
【0138】
[実施例2]
[アリールスルファターゼおよびβ−ガラクトシダーゼ活性の測定]
基質としてp−ニトロフェニルスルフェート(Sigmaから入手)を使用して、アリールスルファターゼ活性を測定した。活性の測定に、0.5mlの基質溶液(pH6.5、100mMのNaPi緩衝液中に20mMのp−ニトロフェニルスルフェート)を、0.5mlのアリールスルファターゼ活性体含有試料溶液と混合した。この溶液を37℃で3時間、インキュベートした。その後、1.5mlの0.5MNaOHを加えて反応を停止させた。試料溶液の代わりに水を加えたブランク試験と対比して、410nmのODを測定した(光路長1cm)。参照として、NaOHによる反応停止後に酵素を加えた溶液を調製した。この参照溶液のOD410を、酵素が3時間活性であった溶液について測定したOD410から差し引いた。アリールスルファターゼ活性は、1NLU当たりのOD41010E6/hrの変化で表される。試料溶液のラクターゼ活性(NLU)を下記のように測定した。
【0139】
FCC(第4版、1996年7月、801−802頁:ラクターゼ(ニュートラル)β−ガラクトシダーゼ・アクティビティ(Lactase (neutral) β−galactosidaze activity))に記載の手順に従い、基質としてo−ニトリフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)を使用し、中性ラクターゼ単位(NLU)としてラクターゼ活性を測定した。
【0140】
[実施例3]
[UHT−ミルクへのアリールスルファターゼの添加]
商業的に入手できるアリールスルファターゼ(Sigma、Aerobacter aerogenes、タイプVI;4.9mgタンパク質/ml;3.9アリールスルファターゼ単位(Sigmaの定義による)/mgタンパク質)を使用してミルクのオフフレーバー試験を行った。試験では、1mlの酵素溶液と共に、50mlのUHTミルク(Campina、オランダ)を30℃でインキュベートした。試料の臭いを嗅いで、オフフレーバーの進行を追った。ラクターゼと共にインキュベートしたUHT−ミルクで、実施例1でも記載した典型的なオフフレーバー臭が、2時間のインキュベーション後に明確に感知された。インキュベーション17時間後には、臭いはより強くなった。アリールスルファターゼがラクターゼと類似のオフフレーバーを発生させたことは明らかであった。実施例1に記載した知見に基づけば、このことは、ミルク中のp−クレシルスルフェート抱合体からのp−クレゾールの放出で説明することができる。アリールスルファターゼの代わりに、酸性ホスファターゼ(小麦の胚芽、Sigma、40mlのミルク中にSigmaによる定義で6ホスファターゼ単位)またはグルクロニダーゼ(E.coli由来、Sigma、40mlのミルク中にSigmaによる定義で6350グルクロニダーゼ単位)を加えた試験も実施した。これらのインキュベーションでは、典型的なオフフレーバーは生じなかった。このことは、牛乳のオフフレーバー生成には、スルフェート抱合体が最も重要な抱合体であることを示唆している。これは、文献にある知見と一致する(Lopezら(1933年)ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(J Agric Food Chem.)41、446−454頁)。この結果は、グルクロニダーゼまたは酸性ホスファターゼにより発生する他のオフフレーバー化合物の存在を完全に排除するものではないが、これらの化合物がフレーバー閾値より高いレベルに達しないことは明らかである。
【0141】
[実施例4]
[UHT−ミルクのオフフレーバー試験:手順]
20,000NLU/Lミルクと共に、セミスキムUHTミルク(Campina、オランダ)を、30℃で48時間インキュベートした。細菌の感染を避けるために無菌状態で殺菌フィルタを通してラクターゼを加えた。48時間後、訓練された味覚パネリストによりミルクを試験し、ラクターゼを加えなかった以外は同じ条件でインキュベートしたミルク溶液と比較した。テイスティングの少し前に、5000NLU/Lミルクを加え、30℃で2時間インキュベートして、参照溶液を調製した。この甘いミルクが、参照溶液として味覚パネリストに使用された。オフフレーバーは、パネリストにより次のように採点される:ブランクのミルクは「−」とした。感知されるが軽度のオフフレーバーを含む軽度オフフレーバー製品は「+」が与えられ、より強いオフフレーバーを含む製品は「++」または「+++」で表される。「+++」の表示は、非常に不快と感じる高レベルのオフフレーバーを示す。オフフレーバーを特徴付けるために使用される用語は、実施例1に記載したものと同じである。
【0142】
[実施例5]
[K lactisラクターゼの精製:アリールスルファターゼ活性体の除去]
Maxilact LX5000(DSM、オランダ)、すなわち、商業的に入手可能なK.lactisラクターゼを、水で10倍に希釈し、55mMのKP(pH7.0)中で平衡化したQ−Sepharoseカラム(Amersham Biosciences)に適用した。ラクターゼ活性体がカラムの溶出液中で検出されるまで、充填を継続した。その後、カラム容積の4倍量の55mMのKP(pH7.0)でカラムを洗浄し、続いて、0.16MのNaClを含有する65mMのKP(pH7.0)でラクターゼを溶出させた。画分を集めラクターゼ活性を測定した。ラクターゼ含有画分をプールし、1MのNaSOを含有する55mMのKP(pH7.0)中で平衡化したbutyl Sepharoseカラム(Amersham Biosciences)に充填した。ラクターゼ活性体がカラムの溶出液中に検出されるまで、1MのNaSO(pH7.0)が存在するカラムへ、ラクターゼを充填した。カラム容積の4倍量の、1MのNaSOを含有する55mMのKP(pH7.0)で、カラムを洗浄した。カラム容積の15倍量の、1MのNaSOを含有する55mMのKP(pH7.0)から55mMのKP(pH7.0)へと直線的勾配を有する液を使用して、ラクターゼを溶出させた。溶出液のプロファイルを、UV−検出(280nm)によりモニターした。画分を集め、ラクターゼ活性を試験した。ラクターゼ含有画分を、ラクターゼのピーク(OD280nm)が最大ピーク値の50%に減少した後に集められた画分は除いてプールした。これらの画分を除くことは、ラクターゼ調製物のアリールスルファターゼによる汚染を防止する上で重要である。ラクターゼの溶出は、アリールスルファターゼの溶出と部分的にオーバーラップする。生成物を濃縮し、10kdaltonのフィルタ上の限外ろ過により脱塩し、50重量%になるまでグリセロールを添加して保存した。
【0143】
[実施例6]
[精製したラクターゼ中のプロテアーゼ水準]
一般式Glu(EDANS)−Ala−Ala−Xxx−Ala−Ala−Lys(DABCYL)(Xxx:20個の天然アミノ酸のいずれか)で示される一連の基質を使用して、プロテアーゼ活性を測定した。基質は、PEPSCAN(Lelystad、オランダ)から入手したものであり、内部でクエンチされた蛍光基質である。そのようなペプチド基質が開裂すると、蛍光信号を発する。したがって、蛍光の出現は、エンドプロテアーゼ活性体の存在を示す。100mMのTris−Bis(pH6.7)中に50μMの基質を含有する溶液200μlに50μlの酵素溶液を加えることによって、96ウェルのマイクロタイタープレート中で、エンドプロテアーゼ活性を測定した。反応混合物を、TECAN Geniusマイクロタイタープレートリーダー中で、Magellan4ソフトウェアを使用して、40℃で10分間インキュベートした。蛍光の発生を時間的に追跡した(励起フィルタ:340nm、蛍光フィルタ:492nm)。蛍光曲線の傾きにより、プロテアーゼ活性を定量化し、RFU/分/NLUとして表した(RFU:相対蛍光単位(relative fluorescent unit)、Genius製装置により与えられる)。酵素試料のNLU単位は実施例2のようにして測定される。図7は、LX5000をQ−Sepharoseカラムで精製すると、プロテアーゼ活性が飛躍的に低下することを示している。Q−Sepharose後にプールした画分(実施例4)は、出発物質(LX5000)と比較すると、少なくとも5〜10倍低いプロテアーゼ活性を有する。使用した各基質でRFU/分/NLUが<0.5であるラクターゼ試料(図1を参照)は、低水準のプロテアーゼ活性を有する調製物であると定義される。
【0144】
[実施例7]
[非精製ラクターゼと精製ラクターゼとの比較]
数種のラクターゼ調製物を、実施例4に記載のオフフレーバー試験に供した。ラクターゼ調製物は、アリールスルファターゼ含量が異なった。各調製物について、少なくとも2つの試料を使用した。個々の試料はアリールスルファターゼ活性が異なる。活性の範囲を表1の右欄に示す。オフフレーバー試験の結果を表1に示す。明らかに、アリールスルファターゼ活性レベルとオフフレーバーの生成には相関がある。低レベルのアリールスルファターゼ(19以下、表1を参照)はオフフレーバーを生成しないが、レベルが高くなるとオフフレーバーの生成が強くなる。Q−Sepharose後のラクターゼ調製物は、プロテアーゼレベルは低いものの、依然としてオフフレーバーが生成されていることも明らかである(実施例5を参照)。
【0145】
【表1】

【0146】
[実施例8]
[アリールスルファターゼ活性体を含有する、異なる市販の酵素調製物]
異なるソースから製造され、かつ異なる加工経路で回収された各種酵素製品を収集し、材料と方法の項で規定した試験法を用いて、アリールスルファターゼ活性を分析した。得られた結果から(表2を参照)、Aspergillus oryzae、Kluyveromyces lactis、Rhizomucor miehei、Talaromyces emersoniiおよびTrichoderma harzianumなどの各種微生物から得られる酵素調製物は、アリールスルファターゼ活性体による重大な汚染を受けるおそれがあることが明らかである。
【0147】
これらの酵素調製物は、本発明の方法により有利に精製することができる。
【0148】
【表2】

【0149】
[実施例9]
[イオン交換クロマトグラフィを用いる、Aspergillus niger由来プロリン特異性プロテアーゼからのアリールスルファターゼ活性体のクロマトグラフィによる除去]
A.nigerにより分泌されたプロリン特異性エンドプロテアーゼから、アリールスルファターゼ副活性体を除去するために(国際公開第02/046381号パンフレット)、多くのクロマトグラフ用樹脂をスクリーニングした。A.nigerにより分泌された、プロテアーゼと主分泌アリールスルファターゼ活性体との等電点の差が、約0.5pH単位であると判ったことから、大規模な工業的条件下であってさえも、2つの活性体の許容可能な分離を行うクロマトグラフィによる分離を検証することは極めて厳しい。
【0150】
結局、カチオン交換体のSP Sepharose 6FFと、疎水性相互作用(HIC)樹脂のbutyl Sepharose 6FF(Amersham Biosciences Europe)が、その後の試験のために選択された。両樹脂を、Tricorn 5/100カラム(CV=2.2ml)中で、UNICORN 3.20によりコントロールされたAKTA Explorer 100と、UNICORN 3.21によりコントロールされたAKTA Purifierとを使用し、FRAC−950画分回収装置と組み合わせて、試験した。溶出後、得られた全ての画分について、材料と方法の項で規定した方法を用いて、プロリン特異性エンドプロテアーゼ活性およびアリールスルファターゼ活性を試験した。
【0151】
【表3】

【0152】
発色性ペプチドZ−Gly−Pro−pNA(Bachem、ブーベンドルフ、スイス)に対してプロリン特異性活性を示す画分をプールした後、粗酵素調製物とクロマトグラフィ精製酵素組成物のアリールスルファターゼ活性を比較した。全く同じプロリン特異性活性(9PPU/ml)を示す調製物が、アリールスルファターゼ活性では、粗調製物の380010E3単位/mlから、クロマトグラフィ精製調製物の3010E3単位/ml未満へと低下することが明らかとなった。
【0153】
[実施例10]
[疎水性相互作用クロマトグラフィを用いる、Aspergillus niger由来プロリン特異性プロテアーゼからのアリールスルファターゼ活性体のクロマトグラフィによる除去]
次の条件で、HICクロマトグラフィを実施した。出発物質として、10PPU/mlの活性を有する、A.niger由来プロリン特異性エンドプロテアーゼのダイアフィルタ濾液を使用した。このダイアフィルタ濾液を、2MのNaSOを含有する20mMクエン酸塩緩衝液(pH4.2、G=121mS/cm)で2倍に希釈した後、ろ過(0.2μm)により無菌とし、その後、カラムに充填した。
【0154】
【表4】

【0155】
酵素をカラムに充填した後、かなりのテーリングを示すために、ベースラインにまで戻る分離を行うには、長い洗浄操作が必要である。最後に、緩衝液Bにより、プロリン特異性エンドプロテアーゼがカラムから溶出された。プロリン特異性タンパク質分解活性体を含有する画分をプールした。希釈されているが、この精製した物質は、元のタンパク質分解活性体に戻って計算すれば、非常に低いアリールスルファターゼ活性を示しており、プロリン特異性細胞内タンパク質分解活性体およびアリールスルファターゼ活性体が、この疎水性相互作用クロマトグラフィの手順を使用することによって、効率的に分離されたことが実証された。ここで、また、全く同じプロリン特異性活性(9PPU/ml)を示す調製物が、アリールスルファターゼ活性では、粗調製物の380010E3単位/mlから、クロマトグラフィ精製調製物の3010E3単位/ml未満へと低下することが明らかとなった。
【0156】
[実施例11]
[A.niger由来の精製プロリン特異性エンドプロテアーゼは、異臭のないカゼイン加水分解物を生成する]
クロマトグラフィにより精製されたプロリン特異性エンドプロテアーゼの特性を試験するために、クロマトグラフィにより精製したものと、クロマトグラフィにより精製しなかったものを使用して、全く同じ手順で、2つのカゼイン加水分解物を調製した。
【0157】
100g/Lのカゼイン酸ナトリウム(Murray Goldbern、ニュージーランド(New Zealand))および水を含有する溶液へ、スブチリシン(Protex L;25ミリリットル/グラム−タンパク質)を加え、60℃で4時間、pHはそのままでインキュベートした。生成した沈殿物を、攪拌しながらゆっくりと溶解した。最後に、沈殿物を僅かに含む透明な溶液を得た。その後、溶液のpHを4.5に調節し、液体を同じ容積に分割した。これらの分割体の1つに、カゼイン加水分解物1グラム当たり1PPUの粗A.nigerプロリルエンドペプチダーゼを、他の分割体に、1PPUのクロマトグラフィにより精製したA.nigerプロリルエンドペプチダーゼを加えた。55℃で9時間継続してインキュベートした後、両溶液に対し、10kDaの限外ろ過を行った。さらに熱による不活性化工程(5秒、120℃)を行い、冷却時間を置いた後、両液体の味と匂いを、乳加水分解物のオフフレーバーおよび異臭を感知し、ランク付けする訓練を受けた5人のパネリストにより評価した。パネリストらは、全員が、粗プロリン特異性エンドプロテアーゼで調製された加水分解物には、クロマトグラフィにより精製したプロリン特異性エンドプロテアーゼで調製された加水分解物には見られない、特徴的な「家畜小屋」のような臭いおよびフレーバーがあったと結論した。
【0158】
【表5】

【0159】
[実施例12]
[Aspergillus niger由来カルボキシペプチダーゼからのアリールスルファターゼ活性体のクロマトグラフィによる除去]
カルボキシペプチダーゼの等電点(i.e.p.4.5)と、A.nigerからの主な分泌アリールスルファターゼの等電点(i.e.p.5.0および5.4)とは互いに近いため、2つの酵素のクロマトグラフィによる分離は、極めて困難であることが判明した。しかしながら、以下の方法によって、アリールスルファターゼを含まない純粋なカルボキシペプチダーゼを得ることができた。最も重要なことは、この方法が比較的単純であって、工業規模で実施できることである。
【0160】
再度、SP−Sepharose FF樹脂を使用した。次の条件でクロマトグラフィを行った。
【0161】
【表6】

【0162】
粗製酵素をカラムに充填した後、緩衝液Aでカラムを洗浄し、非結合/弱い結合の汚染物を除去した。最後に、緩衝液Bにより、カルボキシペプチダーゼを溶出させる。発色性ペプチドFA−Phe−Ala−OH(Bachem、ブーベンドルフ、スイス)の加水分解活性体を含有するピークを回収した。ほぼ同等のカルボキシペプチダーゼ活性体を含むカルボキシペプチダーゼ調製物(2060CPG/g;活性測定のための材料および方法を参照)が、アリールスルファターゼ活性では、粗酵素中の初期の3120010E3単位/mlから、精製調製物中の1010E3単位/mlへと減少している。
【0163】
[実施例13]
[A.niger由来の精製カルボキシペプチダーゼは、オフフレーバーを発生させることなく、ゴーダ(Gouda)チーズの熟成を加速する。]
乳は規格化されておらず、NIZOのものを集めた。ゴーダチーズはNIZOの方法により製造した。簡単に言えば、開始剤を添加の後、15〜20分間攪拌する。その後、レンネットを加え、3分間攪拌し、固まらせる(約45〜50分)。次第に増大するダイアルを使用して凝固物をカットする。これには10分を要し、最終スピードは8.5となる。ブレードを回転させ、スピード11でさらに10分攪拌する。タンク中に120Lが残るように排出する。スピード16で攪拌しながら、36L(残りの体積の30%)の水を55℃で加えて、タンク内の最終温度を35.5〜35.7℃にする。スピード16で60分間攪拌する。カードを集め、15分間静置する。モールド(重し)上でカードを分割し、満たしたモールドを30分間静置する。0.7barで30分間プレスし(最初のプレスの後、チーズコードを加える)、1.2barで30分間、その後、1.7barで30分間プレスする。各プレス後、カードをひっくり返す。プレス後、圧力を開放し、モールド中でチーズを静置させる(塩水室中、13℃で終夜)。モールドからチーズを取り出し、30分間塩水に沈め、均一な塩水処理となるよう、2回ひっくり返す。13℃、88%の湿度で熟成させる。この方法では、タンパク質に対する脂肪の比を1.05に標準化している(カゼインに対する脂肪の比の約0.85と同等)。殺菌処理後、200Lのチーズタンクに、ポンプでミルクを加えた。Delvo(登録商標)−TEC UX21A(1.5U;DSM Food Specialities、Delft、オランダ)を微生物開始剤として使用し、Maxiren(登録商標)600(55IMCU/Lミルク;DSM Food Specialities、Delft、オランダ)をレンネットとして使用した。チーズを26時間塩水処理し、13℃、88%RHで熟成させた。精製および非精製PepGを、200CPGU/リットルミルクの濃度で、レンネットと共に加えた。
【0164】
6週間および24週間の熟成の後、各チーズタンクからのチーズの代表サンプルについて、内部のパネリストが等級付けを行った。この委員会はラウンド・ザ・プレース方式、すなわち、等級付け委員に、試行の詳細について情報が与えられ、その後、彼らが見出したこと(後に、要約される)について議論するという方式で行われた。
【0165】
【表7】

【0166】
【表8】

【0167】
精製および非精製ともに、PepGに添加により明らかな影響が見られた。非精製が使用されたチーズで、苦味感とバランスの悪さが報告され、これにより、PepGは精製すべきであるとの結論が導き出される。
【0168】
[実施例14〜15]
以下に記載した実施例では、文献(サムブルック(Sambrook)ら(2000年)「モリキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning:a laboratory manual)」、第3版、Cold Spring Harbor Laboratories、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、および、イニス(Innis)ら(編)(1990年)「PCR protocols,a guide to methods and applications」Academic Press、サンディエゴ(San Diego))に記載されているような、核酸の単離および精製、核酸の電気泳動、酵素による核酸の修飾、開裂および/または増幅、E.coliなどの形質転換といった標準的な分子クローニング技術が実施された。
【0169】
[実施例14]
[Kluyveromycesのアリールスルファターゼノックアウト株の構築]
[Kluyveromycesの染色体DNAの単離:]
100mlのYEPD(1%酵母抽出物;1%バクトペプトン(Bacto−peptone);2%グルコース)の振盪フラスコに、単一コロニーのK.lactisCBS2359を植え付け、280rpmで振盪しながら30℃で24時間培養した。計数チャンバーを用いて細胞の数を数え、4.110の細胞に対応する培養物の量を使用した。染色体DNAの抽出を、Q−BIOgeneから供給されたFast DNA Spin Kit(Cat# 6540−600)を使用して行った。イーストプロトコルを使用し、スピード設定6.0で40秒間のFastprep FP120ホモジナイザー(BIO101、Savant)を使用する一段ホモジナイズステップを使用した。その後、氷上で試料を冷却し、その後、同じ条件で再度ホモジナイズした。
【0170】
Nanodrop ND1000分光光度計を使用して、抽出したゲノムDNAの純度および収量を測定した。抽出物の濃度が114ナノグラム/マイクロリットルであることが分かった。A260/A280およびA260/A230の比は、それぞれ1.57および0.77であることが分かった。
【0171】
[5’および3’アリールスルファターゼフランクのPCR増幅:]
[5’フランクアリールスルファターゼプライマー:]
【化1】

【0172】
[3’フランクアリールスルファターゼ:]
【化2】

【0173】
[3’フランクSacIIアリールスルファターゼ:]
【化3】

【0174】
Phusion High−Fidelity DNAポリメラーゼ(Finnzymes、Espoo フィンランド(Finland))を使用して、アリールスルファターゼフランクを増幅した。供給者の指示に従い、Milli−Q水で、K.lactisCBS2359ゲノムDNAを100倍に希釈し、テンプレートとして5μgを、50μlPCR混合物中で使用した。以下のプログラムを使用するHybaid MBS 0.2G PCRブロック:
【0175】
【表9】

【0176】
【表10】

【0177】
【表11】

【0178】
[アリールスルファターゼノックアウトベクターの構築:]
Zero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(Invitrogen;Part.no.45−0245)を使用して、供給者の指示に従い、得られた5’−、3’−および3’SacIIアリールスルファターゼフランクPCRフラグメントを、pCR−Blunt II−TOPOベクターにクローニングした。TOPOクローニング反応を、供給者の指示に従って、One Shot TOP10 Chmically Competent E.coli(Invitrogen;Part.no.44−0301)へとトランスフォームした。5’TOPO、3’TOPOおよび3’SacIITOPOに対してそれぞれ、MunI、SacII、XcmIおよびDraI;MunI、SacII、EcoRIおよびEcoRV;MunI、EcoRI、EcoRVおよびSacIIを使用して、制限パターン解析に基づき正しいクローンを選別した。
【0179】
amdSカセットをpKLAC1ベクター(New England Biolabs)から分離した。pKLAC1プラスミドを、chemically competent dam−Idcm−E.coli細胞(New England Biolabs);Cat.No C2925H)へトランスフォームし、メチル化されていないプラスミドを分離した。
【0180】
GeneElute Plasmid MidiPrep Kit(Sigma;Cat.No.NA0200)を使用して、50μg/mlのカナマイシンを含む終夜のLBC培養物から、5’TOPO、3’TOPO、3’SacIITOPOおよびpKLAC1ベクターのプラスミドDNAバッチを、大量に分離した。
【0181】
pKLAC1ベクターをSalIおよびXbaIで消化させ、5’TOPOベクターをXbaIおよびXhoIで消化させた。Nucleospin ExtractII Kit(Machery Nagel)を使用し、供給者の指示に従って、消化物を精製した。
【0182】
SalI/XbaI消化amdSカセットを、Quick ligation Kit(New England Biolabs);Cat.No.M2200S)を使用し、供給者の指示に従って、XbaI/XhoI消化5’TOPOベクターへライゲートした。ライゲーション混合物を、供給者の指示に従い、One Shot TOP10 Chemically Competent E.coli(Invitrogen;Part.no.44−0301)へトランスフォームした。MunI、EcoRIおよびSacIを使用して、制限パターン解析に基づき正しいクローンを選別した。以上により次のベクター:5’amdSTOPOベクター(図1)を得た。
【0183】
GeneElute Plasmid MidiPrep Kit(Sigma;Cat.No.NA0200)を使用し、供給者の指示に従い、50μg/mlのカナマイシンを含む、終夜のLBC培養物から、5’amdS TOPOプラスミドバッチを、大量に分離した。5’amdS TOPOベクターをMunIおよびAscIで消化させ、3’SacIITOPOベクターをMunIおよびEcoRIで消化させた。
【0184】
MunI/EcoRI 3’SacIITOPOフラグメントを分離し、ゲル抽出により精製した。SYBR Safe DNA Stain(Invitrogen;Part.no.S33102)を含むTAE緩衝液中、1%アガロース上で、供給者の指示に従って電気泳動を行った。ダークリーダートランスイルミネータ(Clare Chemical Research;Cat.No.DR−45M)を使用して、フラグメントを可視化し、ゲルから切り取り、Nucleospin ExtractII kit(Machery Nagel;Cat.No.740 609.250)を使用し、供給者のゲル抽出プロトコルに従って、アガロースから抽出した。
【0185】
5’amdS TOPOベクターをMunIおよびAscIで消化させ、Nucleospin ExtractII kit(Machery Nagel)を使用し、供給者のPCR精製プロトコルに従って精製した。その後、Shrimp Alkaline Phosphatase(Roche;Cat.No.1 758 250)を使用し、供給者の指示に従って、MunI/AscI消化5’amdS TOPOベクターを脱リン酸化した。
【0186】
MunI/EcoRI3’SacII TOPOフラグメントを、Quick ligation Kit(New England Biolabs;Cat.No.M2200S)を使用し、供給者の指示に従って、脱リン酸化されたMunI/AscI消化5’amdS TOPOベクターへライゲートした。ライゲーション混合物を、chemically competent dam−Idcm−E.coli細胞(New England Biolabs;Cat.No C2925H)へ、供給者の指示に従い、トランスフォームした。EcoRIおよびEcoRVを使用して、制限パターン解析に基づき正しいクローンを選別した。以上により、次のベクター:5’amdS 3’SacII TOPOベクターを得た。
【0187】
GeneElute Plasmid MidiPrep Kit(Sigma;Cat.No.NA0200)を使用し、供給者の指示に従い、50μg/mlのカナマイシンを含む終夜のLBC培養物から、5’amdS 3’SacII TOPOベクターのバッチを、大量に分離した。
【0188】
5’amdS 3’SacIIベクターをXbaIで消化させた。3’TOPOベクターをXbaIおよびSpeIで消化させた。Nucleospin ExtractII Kit(Machery Nagel)を使用し、供給者の指示に従って、消化物を精製した。XbaI/SpeI3’TOPOフラグメントを、上述のようにして、ゲル抽出により分離した。Shrimp Alkaline Phosphatase、Roche(Cat.No.1 758 250)を使用し、供給者の指示に従って、XbaI消化5’amdS 3’SacIIベクターを脱リン酸化した。XbaI/SpeI3’フラグメントを、Quick ligation Kit(New England Biolabs;Cat.No.M2200S)を使用し、供給者の指示に従って、脱リン酸化されたXbaI消化5’amdS 3’SacIIベクターへライゲートした。ライゲーション混合物を、One Shot TOP10 Chmically Competent E.coli(Invitrogen;Part.no.44−0301)へトランスフォームした。MfeI、KpnI、EcoRI、SacII、SacIを使用して、制限パターン解析に基づき正しいクローンを選別した。以上により、最終のK.lactisアリールスルファターゼノックアウトベクターを得た(図3)。
【0189】
GeneElute Plasmid MidiPrep Kit(Sigma;Cat.No.NA0200)を使用し、供給者の指示に従い、50μg/mlのカナマイシンを含む終夜のLBC培養物から、アリールスルファターゼノックアウトベクターのバッチを、大量に分離した。K.lactisアリールスルファターゼノックアウトベクターはSacIIで消化させて、TOPOベクター部のないリニアなノックアウトカセットを得た。Nucleospin ExtractII Kit(Machery Nagel)を使用し、供給者の指示に従って、消化物を精製した。
【0190】
[アリールスルファターゼノックアウトベクターによるK.lactisCBS2359の形質転換]
100mlのK.lactisCBS2359のYEPD培養物を、30℃、280rpmで振盪しながら24時間、インキュベートした。この培養物を、同じ条件でOD610が0.5〜0.8に達するまで培養した100mlのYEPD培養物に植え付けるために使用した。
【0191】
細胞を、1559g、4℃で5分間の遠心分離により回収した。50mlの無菌エレクトロポレーション緩衝液(EB)(pH7.5の10mMのTris、9.2%(w/v)のサッカロース、1mMのMgCl、4℃で)で細胞ペレットを洗浄する。細胞ペレットを、室温で、25mMのDTTおよび20mM、pH8.0のHEPES緩衝液を含む50mlYEPDに再懸濁させた。細胞を、振盪せずに30℃で30分間インキュベートした。細胞を、1559g、4℃で、5分間の遠心分離により回収し、氷温度のEB10mlで洗浄した。細胞を、1559g、4℃で、5分間の遠心分離で、再度ペレット化し、0.1mlの氷温度のEBに再度懸濁させた。細胞懸濁液を、1.5mlのエッペンドルフチューブに40マイクロリットルずつ分配した。1つの細胞アリコートに0.2〜1.0マイクログラム(1〜5マイクロリットル)のリニアなノックアウト構築体を加え、ピペット操作で混合し、15分間、氷上でインキュベートした。細胞−DNA混合物を、ギャップサイズ2mmの、冷却したエレクトロポレーションキュベット(BTX;Part.No.45−0125)に加えた。Gene Pulser(BioRad、Model No.1652077)およびPulse Controler(BioRad;Model No.1652098)からなるBioRadエレクトロポレータ上で、次の設定:1000V、400オームおよび25μFにより、エレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーション終了後、直ちに1mlのYEPDを加え、12mlの無菌試験管に細胞を移し、30℃の振盪インキュベータ中で、2時間、インキュベートした。細胞を、1559gで5分間遠心分離してペレット化し、生理食塩水(0.85%(w/v)塩化ナトリウム)中で洗浄した。細胞を再びペレット化し、1mlの生理食塩水中に再懸濁させた。25μl、50μlおよび100μlのアリコートを選択性amdS寒天板(1.25%(w/v)の寒天、1.17%(w/v)の酵母カーボンベース(Yeast Carbon Base)、30mMのpH6.8リン酸緩衝液および5mMのアセトアミド)上で平板培養した。寒天板は30℃で2日間、引き続き、室温で2日間、インキュベートした。
【0192】
単一のコロニーが出現するよう、コロニーを選択し、それをYEPD寒天板上でストリーキングすることによって精製し、そして30℃で24時間インキュベーションした。オリゴヌクレオチドが、amdSカセットに対し、ノックアウト構築体組み込みの下流側でターゲットにするコロニーPCRを用いて、これらの単一コロニーの、ノックアウト構築体の標的組換えについてテストした。コロニー物質を、20mMのNaOH、0.2%(w/v)中に懸濁させ、98℃で5時間インキュベートした。細胞懸濁液を水で2倍に希釈し、Phusion High−Fidelity DNA Polymerase(Finnzymes、Espoo、フィンランド;製品コードF−530S)を使用する、25マイクロリットルPCR反応のテンプレートとして、供給者の指示に従って、2.5マイクロリットルを直接使用した。
【0193】
【化4】

【0194】
【表12】

【0195】
PCRは1%アガロースゲル上で分析し、明確な増幅バンドを示す標的転換体を選択した。アリールスルファターゼノックアウト株を、2359ΔARY1−10と命名し、次回の使用まで保管した。
【0196】
[実施例15]
[2359ΔARY中のアリールスルファターゼ活性体の検出]
マザー菌株CBS2539および菌株2359ΔARYの両者を振盪フラスコ内、100mlYEP+2%ガラクトース中において、30℃で3日間、培養した。バイオマスを、1559g、4℃で5分間遠心分離して回収した。バイオマスを、氷温度の水で2回洗浄し、培地成分を除去した。酵母バイオマスを、Yeast Protein Extraction reagent(Y−PER)を使用し、製造業者(Pierce)の指示通りに処理し、アリールスルファターゼのような細胞内酵素を抽出した。アリールスルファターゼ活性体を抽出するのに、ガラスビーズによる機械的剪断、または、例えばZymolyase(GloverおよびHames、DNA cloning 2−a practical approach、IRL Press 1995年を参照)で細胞壁を溶解する酵素処理などの、他の酵母菌溶解方法が使用できることは、当業者には明らかである。
【0197】
実施例2に記載した方法を使用して、抽出物中のアリールスルファターゼを測定した。この実験から、マザー菌株はかなりの量のアリールスルファターゼ活性体を含んでいるが、2359ΔARY株には、そのような活性体は検出されないことが明らかになった。実施例2に従って、この抽出物のβ−ガラクトシダーゼ(ラクターゼ)活性体を測定すると、野生型菌株CBS2359と突然変異菌株2359ΔARYとで、検出されるラクターゼ活性体に差はなく、突然変異菌株がアリールスルファターゼ活性体を特異的に妨害することを示している。
【0198】
突然変異菌株は、工業的規模で、アリールスルファターゼ活性体を実質的に含まないラクターゼ調製物を製造するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】TOPOベクターにおけるK.lactisアリールスルファターゼ遺伝子の5’−フランクのクローニング。
【図2】TOPOベクターにおけるK.lactisアリールスルファターゼ遺伝子の3’−フランクのクローニング。
【図3】TOPOベクターにおけるSacllサイト欠損K.lactisアリールスルファターゼ遺伝子の3’−フランクのクローニング。
【図4】1つのプラスミドにおける5’−フランクとamdS選択カセットとの結合。
【図5】1つのプラスミドにおける5’−フランク、3’−フランクおよびamdS選択カセットの結合。
【図6】アリールスルファターゼノックアウト構築体の最終的な構築。
【図7】基質としてDabcyl−Edansを使用したエンドプロテアーゼのプロファイルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクターゼ活性体1NLU当たり40単位未満のアリールスルファターゼ活性体を含むラクターゼ。
【請求項2】
ラクターゼ活性体1NLU当たり30単位未満のアリールスルファターゼ活性体、より好ましくはラクターゼ活性体1NLU当たり20単位未満のアリールスルファターゼ活性体、最も好ましくはラクターゼ活性体1NLU当たり10単位未満のアリールスルファターゼ活性体を含む請求項1に記載のラクターゼ。
【請求項3】
細胞内産生ラクターゼである請求項1または2に記載のラクターゼ。
【請求項4】
中性ラクターゼ、好ましくはK.lactisラクターゼである請求項1〜3のいずれか一項に記載のラクターゼ。
【請求項5】
pH=6〜pH=8に最適pHを有する請求項1〜4のいずれか一項に記載のラクターゼ。
【請求項6】
ラクターゼ活性体1NLU当たり0.5RFU/min未満のプロテアーゼ活性体を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のラクターゼ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のラクターゼを含む組成物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のラクターゼまたは請求項7に記載の組成物を含む乳製品。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のラクターゼまたは請求項7に記載の組成物を、ラクトースを含む乳製品に添加する工程を含む、乳製品の製造方法。
【請求項10】
アリールスルファターゼにより生成するオフフレーバーのない乳製品の製造方法であって、請求項1〜6のいずれか一項に記載のラクターゼまたは請求項7に記載の組成物を使用する工程を含む方法。
【請求項11】
ラクターゼ含有酵素調製物を精製する方法であって、クロマトグラフィを用いてラクターゼからアリールスルファターゼを分離する工程を含む方法。
【請求項12】
酵素調製物で基質を処理する工程を含む方法であって、前記酵素調製物がアリールスルファターゼを実質的に含有しない方法。
【請求項13】
前記酵素調製物が請求項36〜43のいずれか一項に記載の酵素調製物である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項23〜25のいずれか一項または請求項34もしくは35に記載の方法により、酵素調製物を得る工程を含む請求項10または13に記載の方法。
【請求項15】
前記基質がタンパク質性基質である請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記基質が、硫酸基で置換されたアルキルフェノールを含む請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記基質が、乳タンパク質、例えばカゼインおよび/または乳清タンパク質を含む請求項10〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記基質が、ミルク、醗酵乳製品、例えばヨーグルト、乳清、加水分解物および/または肉である請求項10〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記処理過程における基質中のアリールスルファターゼ濃度が、基質1リットル当たり50010E3アリールスルファターゼ単位以下、基質1リットル当たり好ましくは25010E3アリールスルファターゼ単位以下、好ましくは10010E3アリールスルファターゼ単位以下、好ましくは5010E3アリールスルファターゼ単位以下、好ましくは2510E3アリールスルファターゼ単位以下である請求項10〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記酵素調製物が、ラクターゼ、プロテアーゼ、リパーゼまたはエステラーゼを含む、請求項10〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
栄養食品(例えば、乳製品)を調製する方法である請求項10〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項10〜21のいずれか一項に記載の方法により得られる製品。
【請求項23】
酵素調製物を調製する方法であって、前記方法は、対象酵素およびアリールスルファターゼを含有する粗酵素調製物を精製する工程を含み、アリールスルファターゼが対象酵素から分離される方法。
【請求項24】
前記精製により、アリールスルファターゼ活性体が、少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%、低減される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記精製が、クロマトグラフィにより、好ましくは1回のクロマトグラフ分離工程で行われる請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
アリールスルファターゼ欠損菌株である宿主細胞を製造する方法であって、アリールスルファターゼを産生する培養物を、その培養物の一部が変質してアリールスルファターゼ欠損宿主細胞を作り出すような条件に置く工程、およびその宿主細胞を分離する工程を含む方法。
【請求項27】
突然変異誘発条件、好ましくは物理的または化学的突然変異誘発などのランダム突然変異誘発条件が使用される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
遺伝子組換え操作技術、好ましくはワンステップの遺伝子破壊、マーカー挿入、部位特異的突然変異誘発、削除、RNA干渉、アンチセンスRNAが使用される請求項26に記載の方法。
【請求項29】
(a)栄養培地中、ポリペプチドの発現を誘導する条件下で、アリールスルファターゼ欠損宿主細胞を培養する工程、
(b)前記宿主細胞中で前記ポリペプチドを発現させる工程、および
(c)必要に応じて、前記栄養培地または前記宿主細胞から前記ポリペプチドを回収する工程
を含む方法によりポリペプチドを製造する方法。
【請求項30】
(a)ポリペプチドを発現する発現ベクターによりアリールスルファターゼ欠損宿主細胞を形質転換する工程、
(b)栄養培地中、前記ポリペプチドの発現を誘導する条件下で、前記宿主細胞を培養する工程、
(c)前記宿主細胞中で前記ポリペプチドを発現させる工程、および
(d)必要に応じて、前記栄養培地または前記宿主細胞から前記ポリペプチドを回収する工程
を含む方法によりポリペプチドを製造する方法。
【請求項31】
(a)アリールスルファターゼの産生を妨げる栄養培地中で、かつポリペプチドの発現を誘導する条件下で、宿主細胞を培養する工程、
(b)前記宿主細胞中で前記ポリペプチドを発現させる工程、および
(c)必要に応じて、前記栄養培地または前記宿主細胞から前記ポリペプチドを回収する工程
を含む方法によりポリペプチドを製造する方法。
【請求項32】
(a)ポリペプチドを発現する発現ベクターにより宿主細胞を形質転換する工程、
(b)アリールスルファターゼの産生を妨げる栄養培地中で、かつ前記ポリペプチドの発現を誘導する条件下で、前記宿主細胞を培養する工程、
(c)前記宿主細胞中で前記ポリペプチドを発現させる工程、および
(d)必要に応じて、前記栄養培地または前記宿主細胞から前記ポリペプチドを回収する工程
を含む方法によりポリペプチドを製造する方法。
【請求項33】
前記ポリペプチドが酵素である請求項29〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
酵素調製物を調製する方法であって、前記方法が、請求項33に記載の方法によって酵素を調整する工程、および栄養培地または宿主細胞から酵素調製物を回収する工程を含む方法。
【請求項35】
前記酵素が、ラクターゼ、プロテアーゼ、リパーゼまたはエステラーゼである請求項23〜25のいずれか一項または請求項33もしくは34に記載の方法。
【請求項36】
請求項23〜25のいずれか一項または請求項35に記載の方法により得られる酵素調製物。
【請求項37】
前記酵素調製物が、ラクターゼ、プロテアーゼ、リパーゼおよび/またはエステラーゼを含む請求項12〜36のいずれか一項に記載の酵素調製物。
【請求項38】
カルボキシペプチダーゼを含む酵素調製物であって、1CPG当たり10000単位未満のアリールスルファターゼ活性体を含む酵素調製物。
【請求項39】
1CPG当たり1000単位未満、好ましくは100単位未満、好ましくは50単位未満、好ましくは10単位未満のアリールスルファターゼ活性体を含む請求項38に記載の酵素調製物。
【請求項40】
プロリン特異性プロテアーゼを含む酵素調製物であって、1PPU当たり30010E3単位未満のアリールスルファターゼ活性体を含む酵素調製物。
【請求項41】
1PPU当たり10010E3単位未満のアリールスルファターゼ活性体を含む請求項40に記載の酵素調製物。
【請求項42】
ラクターゼを含む酵素調製物であって、ラクターゼ活性体1NLU当たり40単位未満のアリールスルファターゼ活性体を含む酵素調製物。
【請求項43】
ラクターゼ活性体1NLU当たり30単位未満のアリールスルファターゼ活性体、より好ましくはラクターゼ活性体1NLU当たり20単位未満のアリールスルファターゼ活性体、最も好ましくはラクターゼ活性体1NLU当たり10単位未満のアリールスルファターゼ活性体を含む請求項42に記載の酵素調製物。
【請求項44】
請求項36〜43のいずれか一項に記載の酵素調製物の、乳製品を調製するための使用。
【請求項45】
請求項36〜43のいずれか一項に記載の酵素調製物の、オフフレーバーの生成を防止または減少させるための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−517061(P2009−517061A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542747(P2008−542747)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068979
【国際公開番号】WO2007/060247
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】