説明

クリーン容器包装用ポリエチレン樹脂組成物

【課題】微粒子や溶出成分が少なく、成形機等の金属の腐食を抑え、かつ成形品の変色を抑えたクリーン容器包装用ポリエチレン樹脂組成物およびクリーン性に優れた容器包装を提供する。
【解決手段】密度が890kg/m以上975kg/m以下、メルトフローレートが0.01g/10分以上30g/10分以下であり、添加剤として、実質的に塩基点を有する無機固体のみを含み、該添加剤量がポリエチレン樹脂1kgに対し5重量ppm以上500重量ppm以下であるクリーン容器包装用ポリエチレン樹脂組成物および該樹脂組成物を成形してなるクリーン容器包装。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子や溶出成分が少なく、成形機等の金属の腐食を抑え、かつ成形した容器、フィルムの変色を抑え、更に容器に充填あるいはフィルムで包装した内容物の腐食や変色を抑えたポリエチレン樹脂組成物に関するものである。また、本発明のポリエチレン樹脂組成物はクリーン性を要求される容器包装用の樹脂材料として好適である。
【背景技術】
【0002】
半導体やハードディスクを始めとした電子材料分野においては、製品あるいは構成部品に何らかの汚染物質が付着することにより様々な不良が発生し、歩留りや信頼性が低下する。特に、近年の電子材料分野の著しい発展によって、製品が精密化するにつれ、より微量の汚染が問題視されるようになってきた。これらの汚染に関しては、その製造プロセスに用いられる高純度薬品、あるいは構成部品、さらに高純度薬品を充填するための容器や構成部品の梱包保管時における包装材料からの汚染も問題視されるようになっている。
【0003】
高純度薬品の例としては、ウエハー洗浄・エッチング用、配線・絶縁膜エッチング用、治具洗浄用、現像液、レジスト希釈液、レジスト剥離液、乾燥用等の用途として、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、過酸化水素水、2−プロパノール、キシレン、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、メタノール、酢酸、リン酸、アンモニア水、PGMEA(酢酸プロピレングリコールメチルエーテル)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、NMP(N−メチルピロリジノン)、ECA(シアノアクリル酸エチル)、乳酸エチル等が用いられている。
【0004】
従来、これらの高純度薬品用容器用材料として、耐薬品性、耐衝撃性、価格等の点から、ポリエチレン樹脂が使用されている。しかしながら、従来のポリエチレン樹脂製の容器では、薬品による該樹脂からの溶出物や劣化物等による内容物への汚染問題があり、高純度薬品容器用として限界があった。すなわち、超LSIの微細化に伴い、従来では金属不純物濃度は1PPB以下が要求されていたが、現在では0.1PPB以下が要求されている。また、従来、0.5μm以上の微粒子が問題であったものが、分野によっては0.2μm以上の微粒子が100個/ml以下と厳しい品質が要求されるようになってきているが、いずれも満足できていない。一方、ポリエチレン樹脂には、一般的な容器に要求される特性、例えば、ESCR(耐環境応力亀裂特性)等の長期特性、落下時の安全性の指標である衝撃強度、等も併せて要求されている。
【0005】
粒子径が0.2μm以上の微粒子の発生が500個/ml以下であるクリーンなポリエチレン樹脂製の容器が開示されている(例えば、特許文献1参照)が、これらは0.2μm以上の微粒子の発生数が十分に抑制されていない恐れがあった。
また、大型高純度薬品容器用ポリエチレン樹脂および容器が開示されている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。これらの樹脂および容器は、ポリエチレン樹脂に含まれる灰分および塩化物イオンを低減させることにより、脂肪酸金属塩等の中和剤の使用量を低減させ、成形機および金型の金属の腐食および成形品の変色を抑制した非常に優れたものである。しかし、使用される中和剤の使用量が、ポリエチレン樹脂に含まれる塩化物イオンに対して十分とはいえず、長期間成形された場合には、成形機および金型の金属の腐食が発生する恐れがあり、さらには成形後の容器包装から発生する塩化物イオンによって内容物の腐食や変色が発生するおそれもあった。また、ポリエチレン樹脂に添加する中和剤を含む添加剤の量を灰分として規定しているのみであり、使用する中和剤および添加剤の種類および添加量については言及されていなかった。また、ポリエチレン樹脂に要求される特性であるESCR等の長期特性については全く規定されていなかった。
【0006】
一方、半導体やハードディスク等の関連部品、精密機械等の包装材料は、サブミクロンレベルのパーティクルや揮発成分、溶出イオンによる汚染が歩留りに多大な影響を与えることが分かっており、これら汚染物質の少ない材料が求められている。実際には、クリーン性と物性、価格等の点から、無添加ポリエチレン袋が広く使用されている。
【0007】
クリーン容器包装材料にポリエチレンを用いた場合、添加剤の溶出によるクリーン性の低下を避けるために中和剤や熱安定剤等の添加剤を無添加とすることが行われてきている(例えば、特許文献6参照)。しかし該発明はポリエチレンを重合する触媒がメタロセン触媒であり触媒中に塩化物イオンを含まないため塩化物イオンを中和するための添加剤を添加する必要がない。また、チーグラー系触媒によるポリエチレン樹脂組成物では、触媒に由来する塩化物イオンを中和するための添加剤が無添加である系は広く知られているものの、大きな問題を抱えながら使用されている。この問題とは、添加剤を無添加とすることによりクリーン度は基準を達成するものの、チーグラー系触媒由来の塩化水素として存在する塩化物イオンにより押出機や金型、さらには供給先で製品が腐食することや、樹脂や成形した容器包装が赤みを呈し時には市販に耐えないほどの強度の赤色変色を起こすことがしばしば発生することによる。赤色変色の原因ははっきりしないが、チーグラー系触媒に由来する塩化物イオンがチタン触媒残渣や系内の添加剤残留物と反応して赤色を呈するものと推定されている。通常は中和剤としてステアリン酸カルシウム等ステアリン酸金属塩を用いて塩化物イオンを中和することにより、腐食や赤色に変色することはないが、これら中和剤はクリーン容器包装用途ではパーティクルの発生源となってクリーン度が低下しこれらの用途に使用することはできない。
【0008】
このような状況の中で、中和剤として、ハイドロタルサイトを使用した技術は公知である(例えば、特許文献4参照)。しかし、成形加工性を維持するためには、ハイドロタルサイトを脂肪酸金属塩等と併用することが必須であり、このような系ではクリーン度を達成することができない。また、フィルム用の樹脂組成物に関する発明(例えば特許文献5参照)では、ハイドロタルサイトはフィルムの保湿性を高めるために添加されているに過ぎず、中和剤としては使用されていなかった。
【0009】
【特許文献1】特開平7−257540号公報
【特許文献2】特開平11−80449号公報
【特許文献3】特開2003−96133号公報
【特許文献4】特開平5−295185号公報
【特許文献5】特開2000−109623号公報
【特許文献6】国際公開第2003/031512号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ポリエチレン樹脂由来および添加剤による微粒子や溶出成分が少なく、成形品の変色を抑え、なおかつポリエチレン樹脂に含まれる塩化物イオンによる成形機および金型、さらには包装後の製品の腐食・劣化を抑制できるクリーン容器包装用ポリエチレン樹脂組成物を提供することである。
なお本明細書においては「容器包装」という用語は「容器及び包装材料」を意味する用語として用いる。
また、本明細書において「クリーン」とは、容器包装に液体を収容したとき、容器包装の構成成分が液体中に微粒子として混入したり溶出したりすることが少ないことを意味する用語として用いる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、塩基点を有する無機固体のみを実質的に添加することにより、ポリエチレン樹脂の物性を損なわず、成形品の変色も起こさず、なおかつ成形機および金型、さらには包装後の内容物の腐食・劣化を抑制できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は以下に記載する通りのポリエチレン樹脂組成物及びこれを用いたクリーン容器包装である。
【0012】
(1)下記の(A)、(B)及び(C)の要件を満足するクリーン容器包装用ポリエチレン樹脂組成物。
(A)密度(JIS K7112−1997)が890kg/m以上975kg/m以下である。
(B)メルトフローレート(JIS K7210−1999、コードD)が0.01g/10分以上30g/10分以下である。
(C)添加剤として、実質的に塩基点を有する無機固体のみを含み、該添加剤量がポリエチレン樹脂1kgに対し5重量ppm以上500重量ppm以下である。
(2)該無機固体が、ハイドロタルサイト類化合物であることを特徴とする、上記(1)に記載のクリーン容器包装用ポリエチレン樹脂組成物。
(3)上記(1)または(2)に記載のクリーン容器包装用ポリエチレン樹脂組成物を成形してなるクリーン容器包装。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ポリエチレン樹脂由来および添加剤による微粒子や溶出成分が少なく、成形品の変色を抑え、なおかつポリエチレン樹脂に含まれる塩化物イオンによる成形機および金型、さらには包装後の内容物の腐食・劣化を抑制できるクリーン容器包装用ポリエチレン樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明におけるポリエチレン樹脂組成物はチーグラー系触媒を用いて製造されたポリエチレン樹脂組成物において好適であるが、クロム系触媒やメタロセン(シングルサイト)触媒で製造されたポリエチレン樹脂組成物や前記触媒系によるポリエチレン樹脂組成物を2つ以上混合することによるポリエチレン樹脂組成物にも適用できる。
【0015】
本発明におけるチーグラー触媒とは、塩化チタン化合物とアルキルアルミニウム化合物とを必須成分とするオレフィン重合用触媒のことである(例えば、理化学辞典第5版(岩波書店)のP.836参照)。本発明においては、チーグラー触媒の製造方法については特に制限はないが、下記の製造方法により製造されるチーグラー触媒であることが好ましい。
【0016】
すなわち、本発明におけるチーグラー触媒は、固体触媒成分[A]および有機金属化合物成分[B]からなり、固体触媒成分[A]が、下記一般式(1)で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物(A−1)と下記一般式(2)で表される塩素化剤(A−2)との反応により調製された担体(A−3)に下記一般式(3)で表されるチタン化合物(A−4)を担持することにより製造されるオレフィン重合用チーグラー触媒であることが好ましい。
(M(Mg)(R(R(OR ・・・・・(1)
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、RおよびRはそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、a、b、c、dおよびeは次の関係を満たす実数である。0≦a、0<b、0≦c、0≦d、0≦e、0<c+d、0≦e/(a+b)≦2、f×a+2b=c+d+e(ただし、fはMの原子価))
SiCl(4−(h+i)) ・・・・・(2)
(式中、Rは炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、hとiは次の関係を満たす実数である。0<h、0<i、0<h+i≦4)
Ti(OR(4−j) ・・・・・(3)
(式中、jは0以上4以下の実数であり、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
【0017】
まず、有機マグネシウム化合物(A−1)について説明する。(A−1)は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジヒドロカルビルマグネシウム化合物およびこの化合物と他の金属化合物との錯体のすべてを包含するものである。一般式1の記号a、b、c、dおよびeは関係式f×a+2b=c+d+eを満たし、これは金属原子の原子価と置換基との化学量論性を示している。
【0018】
上記式中、RないしRで表される炭化水素基は、それぞれアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、プロピル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、好ましくはRおよびRは、それぞれアルキル基である。a>0の場合、金属原子Mとしては、周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子が使用でき、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等が挙げられるが、アルミニウム、ホウ素、ベリリウム、亜鉛が特に好ましい。
【0019】
金属原子Mに対するマグネシウムの比b/aには特に制限は無いが、0.1以上30以下であることが好ましく、0.5以上10以下であることがさらに好ましい。また、a=0である或る種の有機マグネシウム化合物を用いる場合、例えば、Rが1−メチルプロピル等の場合には不活性炭化水素溶媒に可溶であり、このような化合物も本発明に好ましい結果を与える。一般式1において、a=0の場合のR、Rは次に示す三つの群(1)、(2)、(3)のいずれか一つであることが推奨される。
【0020】
(1)R、Rの少なくとも一方が炭素数4以上6以下である二級または三級のアルキル基であること、好ましくはR、Rがともに炭素数4以上6以下であり、少なくとも一方が二級または三級のアルキル基であること。
(2)RとRとが炭素数の互いに相異なるアルキル基であること、好ましくはRが炭素数2または3のアルキル基であり、Rが炭素数4以上のアルキル基であること。
(3)R、Rの少なくとも一方が炭素数6以上の炭化水素基であること、好ましくはR、Rに含まれる炭素数の和が12以上になるアルキル基であること。
【0021】
以下、これらの基を具体的に示す。(1)において炭素数4以上6以下である二級または三級のアルキル基としては、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、2−メチルブチル、2−エチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2−メチル−2−エチルプロピル基等が用いられ、1−メチルプロピル基が特に好ましい。次に(2)において炭素数2または3のアルキル基としてはエチル、1−メチルエチル、プロピル基等が挙げられ、エチル基が特に好ましい。また炭素数4以上のアルキル基としては、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられ、ブチル、ヘキシル基が特に好ましい。さらに、(3)において炭素数6以上の炭化水素基としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、2−ナフチル基等が挙げられる。炭化水素基の中ではアルキル基が好ましく、アルキル基の中でもヘキシル、オクチル基が特に好ましい。一般に、アルキル基に含まれる炭素原子数が増えると不活性炭化水素溶媒に溶けやすくなるが、溶液の粘度が高くなるために必要以上に長鎖のアルキル基を用いることは取り扱い上好ましくない。なお、上記有機マグネシウム化合物は不活性炭化水素溶液として使用されるが、該溶液中に微量のエーテル、エステル、アミン等のルイス塩基性化合物が含有され、あるいは残存していても差し支えなく使用できる。なお、本発明における不活性炭化水素溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素およびシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素等が挙げられる。
【0022】
次にアルコキシ基(OR)について説明する。Rで表される炭化水素基としては、炭素原子数1以上12以下のアルキル基またはアリール基が好ましく、3以上10以下のアルキル基またはアリール基が特に好ましい。具体的には、たとえば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、ヘキシル、2−メチルペンチル、2−エチルブチル、2−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−エチル−4−メチルペンチル、2−プロピルヘプチル、2−エチル−5−メチルオクチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、ナフチル基等が挙げられ、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルペンチルおよび2−エチルヘキシル基が特に好ましい。
【0023】
本発明においては、(A−1)の合成方法には特に制限は無いが、一般式RMgXおよびRMg(Rは前述の意味であり、Xはハロゲン原子である。)からなる群に属する有機マグネシウム化合物と、一般式MおよびM(f−1)H(M、Rおよびfは前述の意味)からなる群に属する有機金属化合物とを不活性炭化水素溶媒中、25℃以上150℃以下の温度で反応させ、必要な場合には続いてR(Rは前述の意味である。)で表される炭化水素基を有するアルコールまたは不活性炭化水素溶媒に可溶なRで表される炭化水素基を有するアルコキシマグネシウム化合物、および/またはアルコキシアルミニウム化合物と反応させる方法が好ましい。
【0024】
このうち、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとを反応させる場合、反応の順序については特に制限は無く、有機マグネシウム化合物中にアルコールを加えていく方法、アルコール中に有機マグネシウム化合物を加えていく方法、または両者を同時に加えていく方法のいずれの方法も用いることができる。本発明において不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウム化合物とアルコールとの反応比率については特に制限はないが、反応の結果、得られるアルコキシ基含有有機マグネシウム化合物における、全金属原子に対するアルコキシ基のモル組成比e/(a+b)は0≦e/(a+b)≦2であり、0≦e/(a+b)<1であることが好ましい。
次に、塩素化剤(A−2)について説明する。(A−2)は一般式2で表される、少なくとも一つはSi−H結合を有する塩化珪素化合物である。
SiCl(4−(h+i)) ・・・・・(2)
(式中、Rは炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、hとiは次の関係を満たす実数である。0<h、0<i、0<h+i≦4)
【0025】
一般式(2)においてRで表される炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、中でも炭素数1以上10以下のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル基等の炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。また、hおよびiはh+i≦4の関係を満たす0より大きな数であり、iが2以上3以下であることが好ましい。
【0026】
これらの化合物としては、HSiCl、HSiClCH、HSiCl、HSiCl(C)、HSiCl(2−C)、HSiCl(C)、HSiCl(C)、HSiCl(4−Cl−C)、HSiCl(CH=CH)、HSiCl(CH)、HSiCl(1−C10)、HSiCl(CHCH=CH)、HSiCl(CH)、HSiCl(C)、HSiCl(CH、HSiCl(C、HSiCl(CH)(2−C)、HSiCl(CH)(C)、HSiCl(C等が挙げられ、これらの化合物またはこれらの化合物から選ばれた二種類以上の混合物からなる塩化珪素化合物が使用される。中でも、トリクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、エチルジクロロシランが好ましく、トリクロロシラン、モノメチルジクロロシランがさらに好ましい。
【0027】
次に(A−1)と(A−2)との反応について説明する。反応に際しては(A−2)をあらかじめ不活性炭化水素溶媒、1,2−ジクロルエタン、o−ジクロルベンゼン、ジクロルメタン等の塩素化炭化水素、もしくはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系媒体、あるいはこれらの混合媒体を用いて希釈した後に利用することが好ましく、触媒の性能上、不活性炭化水素溶媒がさらに好ましい。(A−1)と(A−2)との反応比率には特に制限はないが、(A−1)に含まれるマグネシウム原子1モルに対する(A−2)に含まれる珪素原子が0.01モル100モル以下であることが好ましく、0.1モル以上10モル以下であることがさらに好ましい。
【0028】
(A−1)と(A−2)との反応方法については特に制限は無く、(A−1)と(A−2)とを同時に反応器に導入しつつ反応させる同時添加の方法、(A−2)を事前に反応器に仕込んだ後に(A−1)を反応器に導入させる方法、または(A−1)を事前に反応器に仕込んだ後に(A−2)を反応器に導入させる方法のいずれの方法でも良いが、(A−2)を事前に反応器に仕込んだ後に(A−1)を反応器に導入させる方法が好ましい。上記反応により得られる担体(A−3)は、ろ過あるいはデカンテーション法により分離した後、不活性炭化水素溶媒を用いて充分に洗浄し、未反応物あるいは副生成物等を除去することが好ましい。
【0029】
(A−1)と(A−2)との反応温度については特に制限は無いが、25℃以上150℃以下であることが好ましく、40℃以上150℃以下であることがより好ましく、50℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。(A−1)と(A−2)とを同時に反応器に導入しつつ反応させる同時添加の方法においては、あらかじめ反応器の温度を所定温度に調節し、同時添加を行いながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、反応温度は所定温度に調節することが好ましい。(A−2)を事前に反応器に仕込んだ後に(A−1)を反応器に導入させる方法においては、該塩化珪素化合物を仕込んだ反応器の温度を所定温度に調節し、該有機マグネシウム化合物を反応器に導入しながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、反応温度は所定温度に調節することが好ましい。(A−1)を事前に反応器に仕込んだ後に(A−2)を反応器に導入させる方法においては、(A−1)を仕込んだ反応器の温度を所定温度に調節し、(A−2)を反応器に導入しながら反応器内の温度を所定温度に調節することにより、反応温度は所定温度に調節される。
【0030】
(A−1)と(A−2)との反応を固体の存在下に行うこともできる。この固体は無機固体、有機固体のいずれでもよいが、無機固体を用いるほうが好ましい。無機固体として、下記のものが挙げられる。
(i)無機酸化物
(ii)無機炭酸塩、珪酸塩、硫酸塩
(iii)無機水酸化物
(iv)無機ハロゲン化物
(v)(i)〜(iv)からなる複塩、固溶体ないし混合物
【0031】
無機固体の具体例としては、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、水和アルミナ、マグネシア、トリア、チタニア、ジルコニア、リン酸カルシウム・硫酸バリウム、硫酸カルシウム、珪酸マグネシウム、マグネシウム・カルシウム、アルミニウムシリケート[(Mg・Ca)O・Al・5SiO・nHO]、珪酸カリウム・アルミニウム[KO・3Al・6SiO・2HO]、珪酸マグネシウム鉄[(Mg・Fe)2SiO]、珪酸アルミニウム[Al・SiO]、炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、よう化マグネシウム等が挙げられるが、特に好ましくは、シリカ、シリカ・アルミナないし塩化マグネシウムが好ましい。無機固体の比表面積は、好ましくは20m/g以上特に好ましくは90m/g以上である。
【0032】
次にチタン化合物(A−4)について説明する。本発明において、(A−4)は前述の一般式3で表されるチタン化合物である。
Ti(OR(4−j) ・・・・・(3)
(式中、jは0以上4以下の実数であり、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)
で表される炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、アリル基等の脂肪族炭化水素基、シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、シクロペンチル基等の脂環式炭化水素基、フェニル、ナフチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられるが、脂肪族炭化水素基が好ましい。Xで表されるハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、塩素が好ましい。上記から選ばれた(A−4)を、2種以上混合して使用することが可能である。
【0033】
(A−4)の使用量には特に制限は無いが、担体(A−3)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.01以上20以下が好ましく、0.05以上10以下が特に好ましい。
(A−4)の反応温度については、特に制限はないが、25℃以上150℃以下の範囲で行うことが好ましい。
本発明においては、(A−3)に対する(A−4)の担持方法については特に制限が無く、(A−3)に対して過剰な(A−4)を反応させる方法や第三成分を使用することにより(A−4)を効率的に担持する方法を用いても良いが、(A−4)と有機金属化合物(A−5)との反応により担持する方法が好ましい。
【0034】
次に、有機金属化合物(A−5)について説明する。(A−5)としては、下記一般式(4)および一般式(5)で表されるものが好ましい。
(M(Mg)(R(R ・・・・・(4)
(式中、M、R、R、a、b、c,d,eは前述のとおりであり、Yはアルコキシ、シロキシ、アリロキシ、アミノ、アミド、−N=C−R,R、−SR(ただし、R、RおよびRは炭素数1以上20以下の炭化水素基を表す。eが2以上の場合には、Yはそれぞれ異なっていてもよい。)、β−ケト酸残基のいずれかであり、a、b、c、dおよびeは次の関係を満たす実数である。0≦a、0<b、0≦c、0≦d、0≦e、0<c+d、0≦e/(a+b)≦2、f×a+2b=c+d+e(ただし、fはMの原子価))
(m−k) ・・・・・(5)
(式中Mは周期律表第1族、第2族、第12族、第13族からなる群に属する金属原子、Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、QはOR10、OSiR111213、NR1415、SR16およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16は水素原子または炭化水素基であり、kは0より大きな実数であり、mはMの原子価である)
【0035】
以下では、上記一般式(4)及び一般式(5)で表される有機金属化合物をそれぞれ(A−5a)、(A−5b)という。
まず、(A−5a)について説明する。
(A−5a)の使用量は、(A−4)に含まれるチタン原子に対する(A−5a)に含まれるマグネシウム原子のモル比で0.1以上10以下であることが好ましく、0.5以上5以下であることがさらに好ましい。(A−4)と(A−5a)との反応の温度については特に制限はないが、−80℃以上150℃以下であることが好ましく、−40℃以上100℃以下の範囲であることがさらに好ましい。
(A−5a)の使用時の濃度については特に制限は無いが、(A−5a)に含まれるマグネシウム原子基準で0.1モル/l以上2モル/l以下であることが好ましく、0.5モル/l以上1.5モル/l以下であることがさらに好ましい。なお、(A−5a)の希釈には不活性炭化水素溶媒を用いることが好ましい。
【0036】
(A−3)に対する(A−4)と(A−5a)の添加順序には特に制限は無く、(A−4)に続いて(A−5a)を加える、(A−5a)に続いて(A−4)を加える、(A−4)と(A−5a)とを同時に添加する、のいずれの方法も可能であるが、(A−4)と(A−5a)とを同時に添加する方法が好ましい。(A−4)と(A−5a)との反応は不活性炭化水素溶媒中で行われるが、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いることが好ましい。かくして得られた触媒は、不活性炭化水素溶媒を用いたスラリー溶液として使用される。
次に、(A−5b)について説明する。(A−5b)は下記一般式5で表される有機金属化合物である。
【0037】
上記一般式(5)において、Mは周期律表第1族、第2族、第12族、第13族からなる群に属する金属原子であり、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム、亜鉛、等が挙げられるが、マグネシウム、ホウ素、アルミニウムが好ましい。Rで表される炭化水素基はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル基等が挙げられ、アルキル基であることが好ましい。
【0038】
QはOR10、OSiR111213、NR1415、SR16およびハロゲンからなる群に属する基を表し、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16は水素原子または炭化水素基であり、Qがハロゲンであることが好ましい。(A−5b)の化合物名としては、メチルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムアイオダイド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムアイオダイド、ブチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムアイオダイド、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、トリエチルホウ素、トリメチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムメトキシド、メチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ(2−メチルプロピル)アルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等が挙げられ、中でも有機アルミニウム化合物が好ましい。また、これらの化合物を混合して使用することも可能である。kは0より大きな実数であり、0.5より大きな実数であることが好ましい。
【0039】
(A−5b)の使用量は、(A−4)に含まれるチタン原子に対する(A−5b)に含まれるM原子のモル比で0.1以上10以下であることが好ましく、0.5以上5以下であることがさらに好ましい。(A−4)と(A−5b)との反応の温度については特に制限はないが、20℃以上150℃以下であることが好ましく、40℃以上100℃以下であることがさらに好ましい。
(A−5b)の使用時の濃度については特に制限は無いが、(A−5b)に含まれるM原子基準で0.1モル/l以上2モル/l以下であることが好ましく、0.5モル/l以上1.5モル/l以下であることがさらに好ましい。なお、(A−5b)の希釈には不活性炭化水素溶媒を用いることが好ましい。
【0040】
(A−3)に対する(A−4)と(A−5b)の添加方法には特に制限は無く、まず(A−4)を添加し、これに続いて(A−5b)を添加する方法、まず(A−5b)を添加し、これに続いて(A−4)を添加する方法、(A−4)と(A−5b)とを同時に添加する方法、のいずれの方法も可能であるが、まず(A−5b)を添加し、これに続いて(A−4)を添加する方法が好ましい。(A−4)と(A−5b)との反応は不活性炭化水素溶媒中で行われるが、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒を用いることが好ましい。かくして得られた触媒は、不活性炭化水素溶媒を用いたスラリー溶液として使用される。
(A−5b)が使用される場合には、(A−3)に対して(A−4)と(A−5b)とを添加する前に、(A−3)をあらかじめアルコールと反応させ、さらに(A−5b)と反応させておくことが好ましい。
【0041】
アルコールとしては、炭素数が1以上10以下のものが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、デカノール、等が挙げられる。アルコールとしては、炭素数が2以上6以下のものがさらに好ましく、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノールがさらに好ましい。アルコールの使用量については特に制限はないが、(A−3)に含まれるマグネシウム原子に対するモル比で0.01以上1以下であることが好ましく、0.05以上0.5以下であることがさらに好ましい。アルコールの使用時の濃度については特に制限はないが、不活性炭化水素溶媒を用いて0.1M以上2M以下に希釈して使用することが好ましい。(A−3)とアルコールとの反応の温度については特に制限はないが、25℃以上150℃以下であることが好ましく、40℃以上80℃以下であることがさらに好ましい。
【0042】
アルコールと反応させた後の(A−3)と(A−5b)との反応について説明する。(A−5b)の使用量については特に制限はないが、使用したアルコールに対するモル比で0.1以上10以下であることが好ましく、0.5倍以上5倍以下であることがさらに好ましい。(A−5b)の使用時の濃度については特に制限は無いが、(A−5b)に含まれるM原子基準で0.1モル/l以上2モル/l以下であることが好ましく、0.5モル/l以上1.5モル/l以下であることがさらに好ましい。なお、(A−5b)の希釈には不活性炭化水素溶媒を用いることが好ましい。アルコールと反応させた後の(A−3)と(A−5b)との反応の温度については特に制限はないが、25℃以上150℃以下であることが好ましく、40℃以上80℃以下であることがさらに好ましい。
【0043】
次に、本発明における有機金属化合物成分[B]について説明する。本発明の固体触媒成分[A]は、有機金属化合物成分[B]と組み合わせることにより、高活性な重合用触媒となる。有機金属化合物成分[B]としては、周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属する金属を含有する化合物であることが好ましく、特に有機アルミニウム化合物および/又は有機マグネシウム化合物が好ましい。
【0044】
有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(6)で表される化合物を単独または混合して使用することが好ましい。
AlR17(3−n) ・・・・・(6)
(式中、R17は炭素数1以上20以下の炭化水素基、Zは水素、ハロゲン、アルコキシ、アリロキシ、シロキシ基からなる群に属する基であり、nは2以上3以下の数である。)上記の一般式6において、R17で表される炭素数1以上20以下の炭化水素基は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素を包含するものであり、たとえばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリ(2−メチルプロピル)アルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリ(3−メチルブチル)アルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ビス(2−メチルプロピル)アルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド等のハロゲン化アルミニウム化合物、ジエチルアルミニウムエトキシド、ビス(2−メチルプロピル)アルミニウムブトキシド等のアルコキシアルミニウム化合物、ジメチルヒドロシロキシアルミニウムジメチル、エチルメチルヒドロシロキシアルミニウムジエチル、エチルジメチルシロキシアルミニウムジエチル等のシロキシアルミニウム化合物およびこれらの混合物が好ましく、トリアルキルアルミニウム化合物が特に好ましい。
【0045】
有機マグネシウム化合物としては、前述の一般式1で表される不活性炭化水素溶媒に可溶である有機マグネシウム化合物が好ましい。
(M(Mg)(R(R(OR・・・・・式1
(式中、Mは周期律表第1族、第2族、第12族および第13族からなる群に属するマグネシウム以外の金属原子であり、RおよびRはそれぞれ炭素数2以上20以下の炭化水素基であり、Rは炭素数1以上20以下の炭化水素基であり、a、b、c、dおよびeは次の関係を満たす実数である。0≦a、0<b、0≦c、0≦d、0≦e、0<c+d、0≦e/(a+b)≦2、f×a+2b=c+d+e(ただし、fはMの原子価))
【0046】
この有機マグネシウム化合物は、不活性炭化水素溶媒に可溶な有機マグネシウムの錯化合物の形として示されているが、ジアルキルマグネシウム化合物およびこの化合物と他の金属化合物との錯体の全てを包含するものである。この有機マグネシウム化合物は、不活性炭化水素溶媒に対する溶解性が高い化合物が好ましいため、b/aは0.5以上10以下であることが好ましく、またMがアルミニウムである化合物がさらに好ましい。
【0047】
固体触媒成分[A]および有機金属化合物成分[B]を重合条件下である重合系内に添加する方法については特に制限は無く、両者を別々に重合系内に添加しても良いし、あらかじめ両者を反応させた後に重合系内に添加しても良い。また組み合わせる両者の比率には特に制限は無いが、固体触媒成分[A]1gに対し有機金属化合物[B]は1ミリモル以上3000ミリモル以下であることが好ましい。
【0048】
次に、本発明におけるポリエチレン樹脂組成物の密度について説明する。本発明においては、該ポリエチレン樹脂組成物の密度は、JIS K7112−1999に従って測定されたものであり、890kg/m以上975kg/m以下である。該ポリエチレン樹脂組成物の密度が890kg/m以上であれば溶出する低密度成分が充分に少なく、密度が975kg/m以下であれば該ポリエチレン樹脂組成物の長期特性が充分に高い。該ポリエチレン樹脂組成物の密度は910kg/m以上970kg/m以下であることが好ましく、包装袋としては910kg/m以上940kg/m以下であることがより好ましく、915kg/m以上935kg/m以下であることがとりわけ好ましい。一方、高純度薬品用容器としては940kg/m以上970kg/m以下であることがより好ましく、945kg/m以上970kg/m以下であることがさらに好ましく、950kg/m以上965kg/m以下であることがとりわけ好ましい。
【0049】
次に、本発明におけるポリエチレン樹脂組成物の分子量について説明する。本発明においては、該ポリエチレン樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)(JIS K7210−1999、コードD)は0.01g/10分以上30g/10分以下である。該ポリエチレン樹脂組成物のMFRが0.01g/10分以上であれば成形加工性が良好であり、MFRが30g/10分以下であれば該樹脂組成物を用いて製造された包装材料の力学特性、たとえばESCRや衝撃強度が充分に高い。包装袋に関しては、該ポリエチレン樹脂組成物のMFRは0.1g/10分以上10g/10分以下であることが好ましく、0.3g/10分以上5g/10分以下であることがさらに好ましい。一方、高純度薬品用容器に関しては、該ポリエチレン樹脂組成物のMFRは0.03g/10分以上10g/10分以下であることが好ましく、0.05g/10分以上2g/10分以下であることがさらに好ましく、0.05g/10分以上0.6g/10分以下であることがとりわけ好ましい。
【0050】
チーグラー触媒を用いて製造されたポリエチレン樹脂の場合は、ポリエチレン樹脂成分は少なくとも低分子量成分と高分子量成分とからなる多段重合法によりチーグラー触媒を用いて製造されたポリエチレン樹脂であることが好ましく、多段重合法で製造される場合は、該低分子量成分のメルトフローレート(JIS K7210−1999、コードD)が3g/10分以上50g/10分以下、密度(JIS K7112−1999)が960kg/m以上974kg/m以下であるエチレンの単独重合体もしくはエチレンと炭素数3以上20以下のα−オレフィンとの共重合体であり、該高分子量成分の該ポリエチレン樹脂に対する質量分率が0.40以上0.46以下であることがクリーン性を維持し良成形性を付与するために好ましい。
【0051】
次に、本発明ではゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定した分子量1000以下の量が0.5w%以下が好ましく、0.4w%以下がさらに好ましく、0.3w%以下がより好ましい。該量はポリエチレンに含まれる低分子量成分やワックスの量を示しており、該低分子量成分やワックスは高純度薬品中に溶出して微粒子の原因となりクリーン度を悪化させる。該量を0.5w%以下とすることでクリーン度を満足することができる。
【0052】
本発明では添加剤として、実質的に塩基点を有する無機固体のみを含み、該添加剤量がポリエチレン1kgに対し5重量ppm以上500重量ppm以下であり、好ましくは20重量ppm以上300重量ppm以下であり、さらに好ましくは25重量ppm以上200重量ppm以下であり、とりわけ好ましくは150重量ppm以上200重量ppm以下である。5重量ppm以上とすることでポリエチレン樹脂に含まれる塩化物イオンを吸収して、内容液との反応や機器の金属腐食である錆の発生を抑えることや樹脂の赤色変色を抑えることができ、500重量ppm以下とすることで該添加剤が溶出して、クリーン性が低下することも無い。
【0053】
添加剤として実質的に塩基点を有する無機固体のみを含むとは、塩基点を有する無機固体以外には内容物に溶出あるいは付着する可能性のある添加剤を恣意的に加えないことを意味する。本発明においては、内容物に溶出あるいは付着する可能性のある添加剤全てが含まれ、具体的には熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などがあげられる。他方、内容物に溶出あるいは付着しない顔料、遮光剤などは所期の効果を阻害しない範囲で使用することができる。
【0054】
本発明における塩基点とは、ルイス塩基性を示す、すなわち非共有電子対を化合物に与えることにより該化合物を吸着できるサイトのことである。この塩基点を有する無機固体としては、周期律表第1族に属する元素であり、かつ金属である元素の酸化物、周期律表第2族に属する元素であり、かつ金属である元素の酸化物、周期律表第4族に属する元素であり、かつ金属である元素の酸化物、周期律表第1族に属する元素であり、かつ金属である元素を担持した金属酸化物、周期律表第2族に属する元素であり、かつ金属である元素の酸化物、KFを担持した周期律表第13族に属する元素であり、かつ金属である元素を担持した金属酸化物、前述の酸化物同士の複合酸化物、周期律表第1族に属する元素であり、かつ金属である元素の水酸化物を担持した、周期律表第13族に属する元素であり、かつ金属である元素を担持した金属酸化物、周期律表第2族に属する元素であり、かつ金属である元素の水酸化物と周期律表第13族に属する元素であり、かつ金属である元素の水酸化物との複合水酸化物、等が挙げられる。具体的には、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、KFを担持したアルミナ、ハイドロタルサイト類化合物、等が挙げられ、ハイドロタルサイト類化合物が好ましい。ハイドロタルサイト類化合物には天然物(MgAl(OH)16CO・4HO)や合成物があるが、より好ましくは合成物のうちの(Mg4.3Al(OH)12.6CO・mHO)であらわされるものである。
【0055】
ハイドロタルサイト類化合物の添加量は、ポリエチレン重合時に使用されて残留している塩素量に左右される。例えば、残留塩素濃度が20重量ppmである時、ハイドロタルサイト類化合物の必要量は140重量ppmである。しかしながら、ハイドロタルサイト類化合物量の大小によって影響されるのはクリーン度、呈色および未反応塩素量であって、成形性は上記の5〜500重量ppmの範囲であれば、全く問題はない。すなわち、ハイドロタルサイト類化合物の量が5重量ppm以上であれば呈色を示すことがなく、500重量ppm以下であればクリーン度に影響することもない。未反応塩素量とは、ハイドロタルサイト類化合物とは未反応のままにポリエチレン中に存在し、成形機や金型を腐食させるおそれのある塩素の量のことである。これらクリーン度、呈色および未反応塩素量を管理し、必要とするクリーン度や呈色度合いなどの条件をふまえることで、残留塩素濃度に関わらず、添加量の最適条件を判断することができる。
ここでいう残留塩素とは、チーグラー触媒に由来する塩素であり、触媒の加水分解に由来する塩化水素のほか、三塩化チタンや四塩化チタン等加水分解により酸性を示す塩化物イオンがある。
【0056】
これらの塩基点を有する無機固体は微粒子や溶出成分を発生することが無く、逆に微粒子や溶出成分を吸着する場合がある。上記のハイドロタルサイト類化合物は塩基点にある炭酸イオンが塩化物イオンに置き換わり、置換された塩化物イオンを強力に吸着する性質を持つため、極めて好ましい無機固体である。
また、これらの塩基点を有する無機固体は、チーグラー触媒から発生する塩化物イオンを吸着するため、クリーン容器包装用ポリエチレン樹脂組成物に添加することにより成形機および金型、さらには内容物の腐食・劣化を抑制できる。また塩化物イオンと触媒残渣や添加剤残留物等との反応により発生する赤色変色物の発生を抑制できる。結果的に溶融成形によって得られる成形品に、樹脂変色物の混入が減少する。
一方、内容物に溶出あるいは付着しない顔料、遮光剤などはクリーン性を阻害しない範囲で使用することができる。
【0057】
塩基点を有する無機固体の添加は、重合機から出てきたパウダーに無機固体を混合してから押出し機で押出す方法、パウダーを溶融してから無機固体を添加する方法、ペレタイズした後に固体と混合しさらに押出す方法、無機固体を別途樹脂と混練してマスターバッチ(MB)としてから重合機から出てきたパウダーと混合の後に押出機で押出す方法、パウダーを溶融してからマスターバッチを添加する方法、パウダーをペレタイズの後にマスターバッチを混合して押出機で押出す方法、パウダーをペレタイズしてからマスターバッチを混合する方法があげられ、適宜選択することができる。
本発明の樹脂組成物は容器包装より内容物へのパーティクルの溶出が少ないことから、クリーン性を要求される用途に適している。例えば電子工業分野の高純度薬品用容器、医療用容器、食品用容器、半導体・ハードディスク等の包装に適したものである。
【0058】
本発明の樹脂組成物を容器等に成形加工する際の成形方法としては、成形品が汚染されないような施策を講じれば一般的に知られている方法を用いることができ、そのような成形方法としては、例えば水冷式または空冷式インフレーション成形、ブロー成形、押出パイプ成形、回転成形、射出成形、射出成形品の溶着成形、射出(2軸延伸)ブロー成形、押出シート成形及び真空成形、等の成形法が用いられる。また、これらの成形法を用いて、単層容器包装、多層容器包装としてもよい。多層容器包装とする際には、本発明の樹脂組成物を内容物に接する最内層に好適に用いることができるが、着色や装置類の腐食等に関しては他層に用いても良い。本発明の樹脂組成物以外の層にはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステル、エチレン−ビニルアルコール共重合体等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【実施例】
【0059】
本発明の実施例に基づいて説明する。
まず、実施例において用いた測定方法について述べる。
1)密度測定
JIS K7112−1999(D法)に準拠して測定した。190℃で標準メルトインデクサ−から押出したストランドを冷却後、窒素雰囲気下120℃オイルバス中で1時間浸漬し、23℃恒温室で1時間冷却後密度勾配管にて測定を行った。
2)メルトフローレート(MFR)測定
JIS K7210−1999、条件コードDに準拠して測定した。
3)クリーン度測定
(i)ボトル成形
50mm径スクリュー付きブロー成形機を用い、シリンダー温度180℃にて樹脂を押出し、金型温度20℃にて容量が200mlの円柱形容器を成形した。
(ii)フィルム成形
50mm径スクリュー付きインフレーション成形機を用い、シリンダー温度180℃にて樹脂を押し出し、チューブ状フィルムを成形した。
(iii)測定方法
成形した容器包装に超純水(トレピュアLV−10T(東レ(株)製)(登録商標)を用いて精製)100mlを入れ、15秒間振とう洗浄して排水した。この振とう洗浄を5回繰り返した。この容器包装にあらためて100mlの超純水を充填し、そのまま常温で4週間保管した。4週間後、この充填水から5mlを採取し、その中に浸出した0.2μm以上の微粒子の数をパーティクルカウンター(KL−22(リオン株式会社製))により測定した。水中に含まれる微粒子数は次式(7)で求められるが、これをクリーン度とする。
【0060】
【数1】

【0061】
このクリーン度が500個/ml以下の時、判定を〇とした。
4)色調観察
上記(3)(i)、(ii)と同条件にて樹脂を押出し、樹脂塊を得た。固化した直後の樹脂塊を比較品と比較し、赤味を感じた場合は×、同等の白さである場合は〇とした。比較品は市販のポリエチレン樹脂サンテック−HD B871(旭化成ケミカルズ株式会社製(登録商標))を押出したものを使用した。
【0062】
5)鉄板腐食試験
鉄板腐食試験は塩基点を有する無機固体による塩化物イオン吸着の効果を測定する試験であり、中和剤がない状態では樹脂に含まれる遊離塩化物イオンにより高温高湿下金属が腐食して錆が発生するが、塩化物イオンが塩基点を有する無機固体に吸収されることにより錆が生じなくなることにより効果を測定することができる。
上記ボトル成形と同条件にて樹脂を押出し、樹脂塊を得た。脱脂処理した鉄板に該樹脂を固定し、プレス成形した。180℃で5分間予熱した後に9.8MPaで25分間加熱した。次に、恒温恒湿槽中60℃90%RHで24時間加熱後、鉄板上の錆の出具合を観察した。試験後鉄板の光沢が保たれたものを〇、全体的に錆が発生したものを×とした。
6)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定
ウォーターズ社製GPCV2000型を用い、溶媒として140℃の1,2,4−トリクロロベンゼンを使用し、流速1.0ml/分、試料濃度20mg/15ml、注入量413μl、試料溶解温度140℃、試料溶解時間2時間の条件で行った。カラムは昭和電工社製Shodex UT−807が1本、東ソー社製TSK−GEL GMHHR−H(S) HTが2本を上流側から直列につないで使用した。
この条件で測定した時、分子量1000以下の量が0.5wt%以下の時に判定を〇とした。
【0063】
[ポリエチレンの重合]
・ チタン触媒の合成
充分に窒素置換された15リットルの反応器に、トリクロルシランを2モル/リットルのヘプタン溶液として4リットル仕込み、攪拌しながら65℃に保ち、組成式AlMg(C(C6.4(OC5.6で示される有機マグネシウム成分のヘプタン溶液9リットル(マグネシウム換算で6.5モル)を1時間かけて加え、更に65℃にて1時間攪拌下反応させた。反応終了後、上澄み液を除去し、ヘキサン7リットルで4回洗浄を行い、固体物質スラリーを得た。この固体を分離・乾燥して分析した結果、固体1グラム当たり、マグネシウム7.42ミリモルを含有していた。
このうち固体500gを含有するスラリーをヘキサンで13リットルに液量調節し、ブタノール1モル/リットルのヘキサン溶液0.93リットルとともに、攪拌下50℃で1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのヘキサンで1回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1モル/リットルのヘキサン溶液0.84リットルを攪拌下加えて1時間反応させた。反応終了後上澄みを除去し、7リットルのヘキサンで2回洗浄した。このスラリーを50℃に保ち、ジエチルアルミニウムクロリド1モル/リットルのヘキサン溶液60ミリリットルおよび四塩化チタン1モル/リットルのヘキサン溶液60ミリリットルを加えて、2時間反応した。反応終了後上澄みを除去し、固体触媒を単離し、遊離のハロゲンが検出されなくなるまでヘキサンで洗浄した。この固体触媒は0.6重量%のチタンを有していた。
【0064】
(2−1)ポリエチレン樹脂の重合
最初に1段目の重合で低分子量成分を製造するために、反応容積300リットルのステンレス製重合器1を用い、重合温度83℃、重合圧力1MPaの条件で、触媒は上記の固体触媒をTi原子換算で4.2ミリモル/hr、トリエチルアルミニウムをAl原子換算で20ミリモル/hr、またヘキサンは40リットル/hrの速度で導入した。分子量調節剤としては水素を用い、エチレンと水素との和に対する水素の気相モル濃度(水素/(エチレン+水素))が54モル%になるように供給し重合を行った。重合器1で生成した低分子量成分のメルトフローレートは、40g/10分、密度は964kg/mであった。
重合器1内のポリマースラリー溶液を圧力0.1MPa、温度75℃のフラッシュドラムに導き、未反応のエチレン、水素を分離した後反応容積250リットルのステンレス製重合器2にスラリーポンプで昇圧して導入した。重合器2では、温度80℃、圧力0.2MPaの条件下で、トリエチルアルミニウムを7.5ミリモル/hr、ヘキサンは40リットル/hrの速度で導入した。これに、エチレン、水素、1−ブテンを、エチレンと水素との和に対する水素の気相モル濃度(水素/(エチレン+水素))が2.6モル%、エチレンと1−ブテンとの和に対する1−ブテンの気相モル濃度(1−ブテン/(エチレン+1−ブテン))が1.5モル%になるように導入して、重合器1で生成した低分子量成分の質量と重合器2で生成した高分子量成分の質量との和に対する重合器2で生成した高分子量成分の質量の比(重合器2で生成した高分子量成分の質量/(重合器1で生成した低分子量成分の質量+重合器2で生成した高分子量成分の質量)が0.42となるように高分子量成分を重合し、メルトフローレートが0.15g/10分、密度が957kg/mのポリエチレン樹脂を製造した。
【0065】
(2−2)ポリエチレン樹脂の重合
エチレンと水素との和に対する水素の気相モル濃度(水素/(エチレン+水素))を13モル%にした以外は上記(2−1)と同じように重合し、メルトフローレートが0.35g/10分、密度が956kg/mのポリエチレン樹脂を製造した。
【0066】
[実施例1]
チーグラー系触媒によって重合した密度が957kg/m、MFRが0.15g/10分のポリエチレンに、成形物中のハイドロタルサイト(協和化学工業製:DHT−4A(登録商標))の濃度が160重量ppmとなるように同ポリエチレンをベース樹脂としたハイドロタルサイトマスターバッチをブレンドし、ブロー成形機により該樹脂からなる容器を得た。
測定の結果、クリーン度、色調観察、鉄板腐食試験、GPC測定のいずれにおいても、合否判定は〇であった。
測定結果を表1に示す。
【0067】
[実施例2]
成形物中のハイドロタルサイト濃度が480重量ppmとなるようにした以外は実施例1と同様にしてブロー成形容器を得た。
測定の結果、クリーン度、色調観察、鉄板腐食試験、GPC測定のいずれにおいても、合否判定は〇であった。
測定結果を表1に示す。
【0068】
[実施例3]
ポリエチレンの密度が956kg/m、MFRが0.35g/10分、成形物中のハイドロタルサイト濃度が28重量ppmとなるようにした以外は実施例1と同様にしてブロー成形容器を得た。
測定の結果、クリーン度、色調観察、鉄板腐食試験、GPC測定のいずれにおいても、合否判定は〇であった。
測定結果を表1に示す。
【0069】
[実施例4]
クロム系触媒によって重合した密度が951kg/m、MFRが0.20g/10分のポリエチレンに、成形物中のハイドロタルサイト(協和化学工業製:DHT−4A(登録商標))の濃度が5重量ppmとなるように同ポリエチレンをベース樹脂としたハイドロタルサイトマスターバッチをブレンドし、ブロー成形機により該樹脂からなる容器を得た。
測定の結果、クリーン度、色調観察、鉄板腐食試験、GPC測定のいずれにおいても、合否判定は〇であった。
測定結果を表1に示す。
【0070】
[実施例5]
チーグラー系触媒によって重合した密度が922kg/m、MFRが1.5g/10分のポリエチレンにフィルム中のハイドロタルサイト(協和化学工業製:DHT−4A(登録商標))の濃度が200重量ppmとなるように同ポリエチレンをベース樹脂としたハイドロタルサイトマスターバッチをブレンドし、インフレーション成形機により該樹脂からなる容器を得た。
測定の結果、クリーン度、色調観察、鉄板腐食試験、GPC測定のいずれにおいても、合否判定は〇であった。
測定結果を表1に示す。
【0071】
[実施例6]
ハイドロタルサイトの代わりに高純度酸化マグネシウム(タテホ化学工業製:高純度酸化マグネシウムRSG(登録商標))を使用した以外は実施例1と同様にしてブロー成形容器を得た。
測定の結果、クリーン度、色調観察、鉄板腐食試験、GPC測定のいずれにおいても、合否判定は〇であった。
測定結果を表1に示す。
【0072】
[実施例7]
ハイドロタルサイトの代わりに酸化ジルコニウム(第一稀元素化学工業製:酸化ジルコニウムRC−100(登録商標))を使用した以外は実施例1と同様にしてブロー成形容器を得た。
測定の結果、クリーン度、色調観察、鉄板腐食試験、GPC測定のいずれにおいても、合否判定は〇であった。
測定結果を表1に示す。
【0073】
[比較例1]
チーグラー系触媒によって重合した密度が957kg/m、MFRが0.15g/10分のポリエチレンに、成形物中のハイドロタルサイト(協和化学工業製:DHT−4A(登録商標))の濃度が640重量ppmとなるように同ポリエチレンをベース樹脂としたハイドロタルサイトマスターバッチをブレンドし、ブロー成形機により該樹脂からなる容器を得た。
測定の結果、クリーン度が500個/mlを超えて×であった。その他の色調観察、鉄板腐食試験、GPC測定の合否判定は〇であった。
測定結果を表1に示す。
【0074】
[比較例2]
チーグラー系触媒によって重合した密度が957kg/m、MFRが0.15g/10分のポリエチレンを無添加のまま、ブロー成形機により該樹脂からなる容器を得た。
測定の結果、クリーン度、GPC測定の判定は〇であった。しかし、色調観察および鉄板腐食試験は×であった。
測定結果を表1に示す。
【0075】
[比較例3]
チーグラー系触媒によって重合した密度が922kg/m、MFRが1.5g/10分のポリエチレンを無添加のまま、インフレーション成形機により該樹脂からなる袋を得た。
測定の結果、GPC測定及びクリーン度の何れにおいても判定は〇であった。しかし、色調観察および鉄板腐食試験は×であった。
測定結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の組成物は、半導体、電子材料や高純度薬品容器等のクリーン性が要求される用途に供される容器包装に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)、(B)及び(C)の要件を満足する、クリーン容器包装用ポリエチレン樹脂組成物。
(A)密度(JIS K7112−1999)が890kg/m以上975kg/m以下である。
(B)メルトフローレート(JIS K7210−1999、コードD)が0.01g/10分以上30g/10分以下である。
(C)添加剤として、実質的に塩基点を有する無機固体のみを含み、該添加剤量がポリエチレン樹脂1kgに対し5重量ppm以上500重量ppm以下である。
【請求項2】
該無機固体が、ハイドロタルサイト類化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のクリーン容器包装用ポリエチレン樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクリーン容器包装用ポリエチレン樹脂組成物を成形してなるクリーン容器包装。

【公開番号】特開2008−179774(P2008−179774A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298170(P2007−298170)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【出願人】(000100849)アイセロ化学株式会社 (20)
【Fターム(参考)】