説明

クレーンのラチスブーム

【課題】多大な重量増加や大きな吊能力の低下を招くことなく、曲げ剛性を増加可能なクレーンのラチスブームを提供する。
【解決手段】4本の主柱材5と、これら4本の主柱材5のうち、相隣り合う主柱材5同士の間に傾斜状態で連結された複数本の補助斜材6とからなるクレーンのラチスブームにおいて、このラチスブームを構成する下部ブーム2の主柱材の横断面の外形寸法D1が、前記ラチスブームを構成する中間ブーム3及び上部ブーム4の主柱材5の横断面の外形寸法D2及びD3を越えて構成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンのラチスブームに関し、更に詳しくは、ブームの大きな重量増加を伴うことなく曲げ剛性を向上可能なラチスブームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
先ず、本発明に係る移動式クレーンの例を、添付図7を参照しながら説明する。図7は従来例に係るラチスブームを有する一般的な移動式クレーンを示す側面図である。
【0003】
この移動式クレーンは、図7に示す様にラチス構造を有するラチスブーム11を備えた、無限軌道(クローラ)で自走可能なクレーンである。このラチスブーム11は、下から下部ブーム12、中間ブーム13及び上部ブーム14と呼ばれる3種の構造部材から構成される。そして、その横断面の外形は矩形状をなし、この矩形状断面の4隅にパイプ部材からなる主柱材15が配設されると共に、相隣り合う前記主柱材15同士の間に複数本の補助斜材16が傾斜状態に連結されて、軽量で圧縮強度の高いブーム11が構成される。
【0004】
そして、前記下部ブーム12は、図示しないブーム基端部をクレーン本体19に回動可能に取り付けられるため、下方に行くに従って側面から見たブーム幅が狭くなる様に形成され、前記ブーム基端部は、左右のボスに回動自在に支承されている。前記中間ブーム13は複数分割、即ち本例では3分割され、分割された各単位ブーム13a,13b,13cは長さが異なるものもあるが、長さ以外は基本的に同一構造を有し、これら単位ブーム13a,13b,13cを必要な長さまで継ぎ足して必要とするブーム長が得られる様に構成されている。また、上部ブーム14には、フック17を吊下げる滑車が取り付けられる様になっている。
【0005】
この様に、下部ブーム12、中間ブーム13及び上部ブーム14と呼ばれる3種類の構造部材を継ぎ足してラチスブーム11の1式が構成される。即ち、前記各構造部材は、主柱材15の端部が後述する様にピン結合して接合される。そして、クレーン作業(荷物を吊下げる作業)時のブーム11には主として圧縮力が生じ、それは主柱材15にかかる軸力(圧縮力)となる。また、前記ブーム11には、自重等の影響により前後方向の曲げ荷重が生じる。更に、ブーム11の旋回加速、停止時には、図7の紙面に直行する横方向にも曲げ荷重が生じる。
【0006】
従って、ブームの各構造部材には、圧縮荷重に耐え得る座屈強度が求められる。また、図7のブーム11が起伏する方向となる前後方向、更には前記横方向の曲げ荷重に対して撓みが大きくならない様に、前後・横両方向の曲げ剛性も必要となる。特に、横方向の曲げ変形に対しては、これが大きくなるとクレーン自体が転倒する危険性があるため、横方向の撓みについては定められた規格がある。そのため、例えば北米であれば、吊荷重の2%の荷重をブームの水平横方向に与えて、ブーム横方向の撓み量をブーム長の2%未満とすべきことが規格SAE J978 REV.JUN2003で定められている。
【0007】
一方、重心位置が本体から高い(遠い)位置にあるブームは、その自重が大きくなると転倒し易くなるため、荷物を吊る能力の低下を招く。そのためブームの荷重はできるだけ軽くする必要がある。この様に、ラチスブームは強度及び曲げ剛性を保持しながら、できるだけ軽量にすることが望まれる。
【0008】
そこで次に、この様な課題に対して提案されている従来技術に関し、以下添付図8〜10を参照しながら説明する。図8は従来技術1に係るラチス型ブームの一部分解斜視図、図9(a)は図8の補助斜材にかかる軸力の分布グラフ、同図(b)は図(a)の軸力分布グラフに対応して補助斜材に番号を付した説明図、図10は従来技術2の実施の形態に係り、図(a)は四角鋼管の横断面図、図(b)はラチスブームの主柱材と補助斜材との溶接部説明斜視図である。
【0009】
従来技術1に係るラチス型ブームはジブを有するクレーンに関するものであって、図8に示す如く、4本の主柱材201と、その主柱材201の隣り合う2本の主柱材201の間にジグザグ状に配設した補助斜材202と、前記4本の主柱材201の両端に設けたジョイントピース206,207とを備えた一単位ブーム200を構成している。
【0010】
そして、この一単位ブーム200を適宜所要数連結してなるラチス型ブームにおいて、前記一単位ブーム200の補助斜材202中、主柱材201の両端部側に配設した補助斜材202(図9(b)中番号h−1,h,h+1,h+6,h+7,h+8,h+9,…)を、中間部側に配設した補助斜材202(図9(b)中番号h+2,h+3,h+4,h+5,h+10,h+11,…)より断面積を増加し、あるいは材質的に強度を大きくしたものである。その結果、ジブを介して発生する捩りモーメントに十分耐えられ得ると共に、できる限り軽量化することが可能となるものである(特許文献1参照)。
【0011】
また、従来技術2に係るラチスブームの主柱材は、四角鋼管21で形成されており、この四角鋼管21の4辺22の外表面は平坦に形成されているが、その横断断面は、図10(b)に示す如く、前記辺22の夫々が、辺端から辺中心側になるほど次第に厚くなる様に、辺22の内面22aがこの四角鋼管21の断面中心Q方向に膨出している。また、この四角鋼管21の相隣り合う内面22aと内面22aとなす内側コーナー部には、所定のR23が形成されている。この様に形成された四角鋼管21を、ラチスブームの主柱材に用いることによって、補助斜材25との接合部における主柱材の辺22の中心部に発生する応力レベルが下がると共に応力レベルが均等化されるものである(特許文献2参照)。
【0012】
しかしながら、上記従来技術1に係るラチス型ブームは、捩りモーメントに十分耐えられ得る構造を有するものの、曲げ剛性に対しては特に配慮されてはいない。また、上記従来技術2に係るラチスブームは、主柱材として特殊な断面形状を有する四角鋼管を用いる必要性があるため、ブームの製作上コスト高を招くことになる。
【0013】
一方、移動式クレーンのブームは、輸送性を考慮して上記の如く幾つかの構造部材に分割する様になっているが、各構造部材に用いられる主柱部材及び補助斜材は、下部ブームでは最も肉厚を厚く、次いで下側に位置する中間ブームの肉厚を厚く形成する場合がある。しかしながら、前記中間ブームは、下記に述べる理由から横断面の外形寸法が同一であって、かつこれを構成する構造部材の肉厚も同一であるのが望まれる。
【0014】
(1)中間ブーム横断面の外形寸法を変えた場合、断面変化の生じる箇所で面外方向の荷重が生じる。また、応力集中の原因にもなるため、強度設計が非常に難しくなる。敢えて採用した場合も、ブーム中間部に支持ケーブルを追加する等構造が複雑になるため、特別に長尺なブームでない限りメリットはない。
(2)また、前記構造部材の肉厚が不均一であると、クレーンの使用者側における管理・組立上、剛性の異なる部材の誤組付けにより強度的な不均衡を生じ、事故を発生する恐れがある。
【0015】
そのため、特に横剛性を向上するには、ブームとクレーン本体との接続部近傍の構造部材の剛性を増加するのが効率的であるが、使用者側からは構造部材同士で互換性があるものが望まれる。使用者側の要望を満足させながら剛性を増加させるには、ブーム横断面の外形寸法増加、或いは全構造部材の部材断面寸法増加となり、結果としてブーム重量の増加を招き、吊能力に影響を生じることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開昭58−139993号公報
【特許文献2】特開平11−180680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の目的は、多大な重量増加や大きな吊能力の低下を招くことなく、曲げ剛性を増加可能なクレーンのラチスブームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
即ち、上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るクレーンのラチスブームが採用した手段は、4本の主柱材と、これら4本の主柱材のうち、相隣り合う主柱材同士の間に傾斜状態で連結された複数本の補助斜材とからなるクレーンのラチスブームにおいて、このラチスブームを構成する下部ブームの主柱材の横断面の外形寸法が、前記ラチスブームを構成する中間ブーム及び上部ブームの主柱材の横断面の外形寸法を越えて構成されてなることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項2に係るクレーンのラチスブームが採用した手段は、4本の主柱材と、これら4本の主柱材のうち、相隣り合う主柱材同士の間に傾斜状態で連結された複数本の補助斜材とからなるクレーンのラチスブームにおいて、このラチスブームを構成する下部ブームの主柱材の肉厚が、前記ラチスブームを構成する中間ブーム及び上部ブームの主柱材の肉厚を越えて構成されてなることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項3に係るクレーンのラチスブームが採用した手段は、4本の主柱材と、これら4本の主柱材のうち、相隣り合う主柱材同士の間に傾斜状に連結された複数本の補助斜材とからなるクレーンのラチスブームにおいて、このラチスブームを構成する下部ブームの主柱材及び補助斜材の横断面の外形寸法が、前記ラチスブームを構成する中間ブーム及び上部ブームの主柱材及び補助斜材の横断面の外形寸法を夫々越えて構成されてなることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の請求項4に係るクレーンのラチスブームが採用した手段は、4本の主柱材と、これら4本の主柱材のうち、相隣り合う主柱材同士の間に傾斜状態で連結された複数本の補助斜材とからなるクレーンのラチスブームにおいて、このラチスブームを構成する下部ブームの主柱材が、この下部ブームの横断面の左右両側に補剛部材を接合されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1に係るクレーンのラチスブームは、4本の主柱材と、これら4本の主柱材のうち、相隣り合う主柱材同士の間に傾斜状態で連結された複数本の補助斜材とからなるクレーンのラチスブームにおいて、このラチスブームを構成する下部ブームの主柱材の横断面の外形寸法が、前記ラチスブームを構成する中間ブーム及び上部ブームの主柱材の横断面の外形寸法を越えて構成されてなるので、下部ブーム構造の簡単な変更によって、ブームの全体重量を大きく増加させることなく曲げ剛性を改善し、ブーム全体の横撓み量を大幅に低減し得る。その結果、特に横撓み量の制限により吊能力を限定されている場合の吊能力の改善が期待できる。
【0023】
本発明の請求項2に係るクレーンのラチスブームが採用した手段は、4本の主柱材と、これら4本の主柱材のうち、相隣り合う主柱材同士の間に傾斜状態で連結された複数本の補助斜材とからなるクレーンのラチスブームにおいて、このラチスブームを構成する下部ブームの主柱材の肉厚が、前記ラチスブームを構成する中間ブーム及び上部ブームの主柱材の肉厚を越えて構成されてなるので、上記同様下部ブーム構造の簡単な変更によって、ブームの全体重量を大きく増加させることなく曲げ剛性を改善し、ブーム全体の横撓み量を大幅に低減し得る。
【0024】
本発明の請求項3に係るクレーンのラチスブームが採用した手段は、4本の主柱材と、これら4本の主柱材のうち、相隣り合う主柱材同士の間に傾斜状に連結された複数本の補助斜材とからなるクレーンのラチスブームにおいて、このラチスブームを構成する下部ブームの主柱材及び補助斜材の横断面の外形寸法が、前記ラチスブームを構成する中間ブーム及び上部ブームの主柱材及び補助斜材の横断面の外形寸法を夫々越えて構成されてなるので、ブームの全体重量を大きく増加させることなく曲げ剛性を改善し、ブーム全体の横撓み量を大幅に低減し得る。
【0025】
本発明の請求項4に係るクレーンのラチスブームが採用した手段は、4本の主柱材と、これら4本の主柱材のうち、相隣り合う主柱材同士の間に傾斜状態で連結された複数本の補助斜材とからなるクレーンのラチスブームにおいて、このラチスブームを構成する下部ブームの主柱材が、この下部ブームの横断面の左右両側に補剛部材を接合されてなるので、下部ブームの簡単な補強によって、ブームの全体重量を大きく増加させることなく曲げ剛性を改善し、ブーム全体の横撓み量を大幅に低減し得る。また、既に使用している移動式クレーンに対しても容易に補剛部材を接合して、同等の効果を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1〜3に係るクレーンのラチスブームであって、各実施の形態に共通しない部分は省略して示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるクレーンのラチスブームに係り、図(a)は図1の矢視X−Xを示す拡大断面図、図(b)は図1の矢視Y−Yを示す拡大断面図、図(c)は図1の矢視Z−Zを示す拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る下部ブームの曲げ剛性改善による非線形撓みに対する影響を説明するため、ブームを後方(図1の矢印方向)から見たモデル図であって、図(a)は撓みのない場合、図(b)は下部ブームの剛性が低い場合の撓み状態、図(c)は下部ブームの剛性が高い場合の撓み状態を夫々示している。
【図4】本発明の実施の形態2におけるクレーンのラチスブームに係り、図(a)は図1の矢視X−Xを示す拡大断面図、図(b)は図1の矢視Y−Yを示す拡大断面図、図(c)は図1の矢視Z−Zを示す拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の形態3におけるクレーンのラチスブームに係り、図(a)は図1の矢視A−Aを示す拡大断面図、図(b)は図1の矢視B−Bを示す拡大断面図、図(c)は図1の矢視C−Cを示す拡大断面図である
【図6】本発明の実施の形態4におけるクレーンのラチスブームに係り、図(a)は図1の矢視X−Xの態様を示す拡大断面図、図(b)は図1の矢視X−Xの他の態様を示す拡大断面図である。
【図7】従来例に係るラチスブームを有する一般的な移動式クレーンを示す側面図である。
【図8】従来技術1に係るラチス型ブームの一部分解斜視図である。
【図9】図(a)は図8の補助斜材にかかる軸力の分布グラフ、図(b)は図(a)の軸力分布グラフに対応して補助斜材に番号を付した説明図である。
【図10】従来技術2の実施の形態に係り、図(a)は四角鋼管の横断面図、図(b)はラチスブームの主柱材と補助斜材との溶接部説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態1に係るクレーンのラチスブームの構成を、添付図1,2を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1〜3に係るクレーンのラチスブームであって、各実施の形態に共通しない部分は省略して示す側面図である。図2は本発明の実施の形態1におけるクレーンのラチスブームに係り、図(a)は図1の矢視X−Xを示す拡大断面図、図(b)は図1の矢視Y−Yを示す拡大断面図、図(c)は図1の矢視Z−Zを示す拡大断面図である。
【0028】
この移動式クレーンのラチスブーム1は、下から下部ブーム2、中間ブーム3及び上部ブーム4と呼ばれる3種の構造部材から構成され、前記下部ブームの下端に設けられたブーム基端部1aが、クレーン本体9に回動可能に取り付けられる。前記中間ブーム3は、第1中間ブーム3a、図示省略した第2中間ブーム及び第3中間ブーム3cに3分割可能に構成されている。
【0029】
上記各構造部材の横断面の外形形状は、図2に示す如く略矩形状をなし、この矩形状断面の4隅にパイプ部材からなる4本の主柱材5が配設されると共に、これら4本の主柱材5のうち、相隣り合う主柱材5同士の間に複数本のパイプ部材からなる補助斜材6が傾斜状態に連結されて、各構造部材が構成されている。そして、前記各構造部材の主柱材5の端部にピン結合して連結可能に構成されている。
【0030】
そして、本発明の実施の形態1に係るクレーンのラチスブーム1は、このラチスブーム1を構成する下部ブーム2の主柱材5の横断面において、この主柱材5の外形寸法である外径D1が、前記ラチスブーム1を構成する中間ブーム3の主柱材5の横断面の外形寸法である外径D2、更には上部ブーム4の主柱材5の横断面の外形寸法である外径D3を越えて構成されている。この様に下部ブーム2のみの左右の曲げ剛性を増加させることによって、ブーム1の全体重量を大きく増加させることなく曲げ剛性を改善し、ブーム1全体の横撓み量を大幅に低減し得る。その結果、特に横撓み量の制限により吊能力を限定されている場合の吊能力の改善が期待できる。
【0031】
尚、上記において、ラチスブーム1を構成する主柱材5がパイプ部材から構成されているため、このブーム1の主柱材5の横断面の外形寸法を外径としたが、前記ラチスブーム1を構成する主柱材5が四角鋼管等の多角鋼管から構成される場合は、このブーム1の主柱材5の横断面の外形寸法としては、前記多角鋼管の辺の寸法とすれば良い。
【0032】
下部ブーム2の係る曲げ剛性の改善によって、ブーム変形の非線形性により生じる横撓みに対する作用について、以下図3を参照しながら説明する。図3は本発明の実施の形態1に係る下部ブームの曲げ剛性改善による非線形撓みに対する影響を説明するため、ブームを後方(図1の矢印方向)から見たモデル図であって、図(a)は撓みのない場合、図(b)は下部ブームの剛性が低い場合の撓み状態、図(c)は下部ブームの剛性が高い場合の撓み状態を夫々示している。尚、図3(b),(c)共、吊荷重Wの2%の荷重をブームの水平横方向に与えている。
【0033】
図3において、吊荷重Wがブーム1の先端1bに荷重点Pとして負荷されるモデルを考える。下部ブームの剛性が低い場合は、下部ブームの変形により撓みが生じたときに、例えば図2(b)に示す如く、荷重点Pがブーム軸線上右方向に変位Δδ1だけずれる。この結果、更にブーム1を曲げるW×Δδ1の曲げモーメントが荷重点1aに作用するため、中間ブーム該当部が弾性変形を生じて、ブーム先端1bの撓み量δ1は変位Δδ1より大幅に増大する(下部ブームの傾き角に比例した値より大幅に上回る)。
【0034】
一方、下部ブームの剛性を高くした場合は、下部ブーム自身の傾き角が小さくなるだけでなく、荷重点1bの変位Δδ2が前記撓み量Δδ1より小さくなるため、結果として、W×Δδ2で表される曲げモーメントが小さくなり、中間ブーム該当部の弾性変形が抑制されるという大きな効果が期待できる。しかも、下部ブームの主柱材は、ブーム最下部の部材であるため、質量が多少増加したとしても、ブーム1の重心位置がややクレーン本体に近づくため、吊能力への影響は極めて少ない。
【0035】
この様に、本発明の実施の形態1に係るクレーンのラチスブーム1は、このラチスブーム1を構成する下部ブーム2の主柱材5の外径D1が、前記ラチスブーム1を構成する中間ブーム3の主柱材5の外径D2及び上部ブーム4の主柱材5の外径D3を越えて構成されてなるので、下部ブーム2構造の簡単な変更によって、ブーム1の全体重量を大きく増加させることなく曲げ剛性を改善し、ブーム1全体の横撓み量を大幅に低減し得る。その結果、特に横撓み量の制限により吊能力を限定されている場合の吊能力の改善が期待できる。
【0036】
次に、本発明の実施の形態2に係るクレーンのラチスブームを、添付図4を参照しながら説明する。図4は本発明の実施の形態2におけるクレーンのラチスブームに係り、図(a)は図1の矢視X−Xを示す拡大断面図、図(b)は図1の矢視Y−Yを示す拡大断面図、図(c)は図1の矢視Z−Zを示す拡大断面図である。
【0037】
但し、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、下部ブームを構成する主柱材に相違があり、この相違以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、上記実施の形態1と同一のものに同一符号を付して、以下その相違する点について説明する。
【0038】
即ち、上記実施の形態1においては、このラチスブーム1を構成する下部ブーム2の主柱材5の横断面において、この主柱材5の外形寸法である外径D1が、前記ラチスブーム1を構成する中間ブーム3の主柱材5の横断面の外形寸法である外径D2、更には上部ブーム4の主柱材5の横断面の外形寸法である外径D3を越えて構成されていた。
【0039】
これに対し、本発明の実施の形態2においては、このラチスブーム1を構成する下部ブーム2の主柱材5の肉厚T1が、前記ラチスブーム1を構成する中間ブーム3の主柱材5の肉厚T2、更には上部ブーム4の主柱材5の肉厚T3を越えて構成されている。下部ブーム2構造のこの様な変更によって、ブーム1の全体重量を大きく増加させることなく曲げ剛性を改善し、ブーム1全体の横撓み量を大幅に低減し得る。
【0040】
次に、本発明の実施の形態3に係るクレーンのラチスブームを、添付図5を参照しながら説明する。図5は本発明の実施の形態3におけるクレーンのラチスブームに係り、図(a)は図1の矢視A−Aを示す拡大断面図、図(b)は図1の矢視B−Bを示す拡大断面図、図(c)は図1の矢視C−Cを示す拡大断面図である。
【0041】
但し、本発明の実施の形態3が上記実施の形態1と相違するところは、下部ブームを構成する補助斜材に相違があり、この相違以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、上記実施の形態1と同一のものに同一符号を付して、以下その相違する点について説明する。
【0042】
即ち、上記実施の形態1においては、このラチスブーム1を構成する下部ブーム2の主柱材5の横断面において、この主柱材5の外形寸法である外径D1が、前記ラチスブーム1を構成する中間ブーム3の主柱材5の横断面の外形寸法である外径D2、更には上部ブーム4の主柱材5の横断面の外形寸法である外径D3を越えて構成されていた。
【0043】
これに対し、本発明の実施の形態3においては、上記下部ブーム2の主柱材5の横断面の外形寸法に加えて、上記下部ブーム2の補助斜材6の横断面の外形寸法である外径d1が、前記ラチスブーム1を構成する中間ブーム3の補助斜材6の横断面の外形寸法である外径d2、更には上部ブーム4の補助斜材6の横断面の外形寸法である外径d3を越えて構成されている。この結果、ブームの全体重量を大きく増加させることなく曲げ剛性を改善し、ブーム全体の横撓み量を大幅に低減し得る。
【0044】
次に、本発明の実施の形態4に係るクレーンのラチスブームを、添付図5を参照しながら説明する。図6は本発明の実施の形態4におけるクレーンのラチスブームに係り、図(a)は図1の矢視X−Xの態様を示す拡大断面図、図(b)は図1の矢視X−Xの他の態様を示す拡大断面図である。
【0045】
但し、本発明の実施の形態4が上記実施の形態1と相違するところは、下部ブームを構成する主柱材に相違があり、この相違以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、上記実施の形態1と同一のものに同一符号を付して、以下その相違する点について説明する。
【0046】
即ち、上記実施の形態1においては、このラチスブーム1を構成する下部ブーム2の主柱材5の横断面において、この主柱材5の外形寸法である外径D1が、前記ラチスブーム1を構成する中間ブーム3の主柱材5の横断面の外形寸法である外径D2、更には上部ブーム4の主柱材5の横断面の外形寸法である外径D3を越えて構成されていた。
【0047】
これに対し、本発明の実施の形態4においては、このラチスブーム1を構成する下部ブーム2の主柱材5が、この下部ブーム2の横断面の左右両側に、図6(a)に示す如くアングル材(補剛部材)7を溶接接合されたり、或いは図6(b)に示す如くパイプ材(補剛部材)8を溶接接合されて補剛されるものである。この場合、前記下部ブーム2の主柱材5は、この下部ブーム2の横断面の左右両側に、前記保剛部材7,8を溶接接合することが、横撓み量を低減する上で肝要である。
【0048】
この様な下部ブーム2の簡単な補強によって、ブーム1の全体重量を大きく増加させることなく曲げ剛性を改善し、ブーム1全体の横撓み量を大幅に低減し得る。また、既に使用している移動式クレーンに対しても容易に補剛部材を接合して、同等の効果を得ることもできる。尚、ラチスブーム1の前後方向の撓みは、このブーム1に掛け回された吊荷用ロープを作業者が操作することによって調整可能であるため、特に設備的な対応は必要としない。
【0049】
以上、本発明の実施の形態1,2においては、下部ブームの主柱材の外径寸法または肉厚が、中間ブーム及び上部ブームの主柱材の外形寸法または肉厚を夫々超えて構成される例で説明したが、下部ブームの主柱材の外径寸法及び肉厚が、中間ブーム及び上部ブームの主柱材の外形寸法及び肉厚を夫々超えて構成されても良い。また、本発明の実施の形態3においては、下部ブームの主柱材及び補助斜材の横断面の外形寸法が、中間ブーム及び上部ブームの主柱材及び補助斜材の横断面の外形寸法を夫々越えて構成される例で説明したが、下部ブームの主柱材及び補助斜材の肉厚が、中間ブーム及び上部ブームの主柱材及び補助斜材の肉厚を夫々越えて構成されても良い。
【符号の説明】
【0050】
D1,D2,D3:主柱材の外径(横断面の外形寸法),
d1,d2,d3:補助斜材の外径(横断面の外形寸法),
T1,T2,T3:主柱材の肉厚,
P:荷重点, W:吊荷重,
δ1,δ2:ブーム先端の撓み量,
Δδ1,Δδ2:荷重点1bの変位,
1:ラチスブーム(ブーム), 1a:ブーム基端部, 1b:ブームの先端,
2:下部ブーム,
3:中間ブーム, 3a:第1中間ブーム, 3c:第3中間ブーム,
4:上部ブーム,
5:主柱材, 6:補助斜材,
7:アングル材(補剛部材), 8:パイプ材(補剛部材),
9:クレーン本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4本の主柱材と、これら4本の主柱材のうち、相隣り合う主柱材同士の間に傾斜状態で連結された複数本の補助斜材とからなるクレーンのラチスブームにおいて、このラチスブームを構成する下部ブームの主柱材の横断面の外形寸法が、前記ラチスブームを構成する中間ブーム及び上部ブームの主柱材の横断面の外形寸法を越えて構成されてなることを特徴とするクレーンのラチスブーム。
【請求項2】
4本の主柱材と、これら4本の主柱材のうち、相隣り合う主柱材同士の間に傾斜状態で連結された複数本の補助斜材とからなるクレーンのラチスブームにおいて、このラチスブームを構成する下部ブームの主柱材の肉厚が、前記ラチスブームを構成する中間ブーム及び上部ブームの主柱材の肉厚を越えて構成されてなることを特徴とするクレーンのラチスブーム。
【請求項3】
4本の主柱材と、これら4本の主柱材のうち、相隣り合う主柱材同士の間に傾斜状に連結された複数本の補助斜材とからなるクレーンのラチスブームにおいて、このラチスブームを構成する下部ブームの主柱材及び補助斜材の横断面の外形寸法が、前記ラチスブームを構成する中間ブーム及び上部ブームの主柱材及び補助斜材の横断面の外形寸法を夫々越えて構成されてなることを特徴とするクレーンのラチスブーム。
【請求項4】
4本の主柱材と、これら4本の主柱材のうち、相隣り合う主柱材同士の間に傾斜状態で連結された複数本の補助斜材とからなるクレーンのラチスブームにおいて、このラチスブームを構成する下部ブームの主柱材が、この下部ブームの横断面の左右両側に補剛部材を接合されてなることを特徴とするクレーンのラチスブーム。


























【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−254398(P2010−254398A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104212(P2009−104212)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】